JP7526108B2 - 高分子電解質組成物及び全固体リチウムイオン二次電池 - Google Patents

高分子電解質組成物及び全固体リチウムイオン二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、高分子電解質組成物及びそれを用いた全固体リチウムイオン二次電池に関する。
近年、環境保護のため二酸化炭素排出量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が鋭意行われている。二次電池としては、高エネルギー密度、高出力密度が達成できるリチウムイオン電池に注目が集まっている。
なかでも、有機溶媒が揮発する可能性がなく、充放電時の副反応である有機溶媒の分解反応が進行することよって電池内部にガスが発生して電池を膨脹させる問題のない電池として、固体電解質を用いたリチウムイオン二次電池が検討されている。
固体電解質について、カーボネート構造やピロリドン構造を有する高分子化合物に電解質を加えることで電池を起動するに十分なイオン伝導性を発現する高分子電解質組成物が報告されている(特許文献1及び2)。
特開平10-67849号公報 特開2018-85331号公報
しかし、カーボネート構造やピロリドン構造を有する高分子は局所的に結晶を形成することが多く、固くて脆いため成型性に課題があった。また、繰り返しの充放電に伴う電極の膨張収縮に追随できないため、長期使用時に電池容量の著しい低下が見られるという課題もあった。これらを受けて、成型性に優れ、サイクル特性が良好な電池を得ることができる高分子電解質組成物の開発が望まれていた。
本発明は、成型性に優れ、サイクル特性が良好な電池を得ることができる高分子電解質組成物であり、前記高分子電解質組成物を使用した全固体リチウムイオン二次電池である。
本発明者らは、これらの課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、下記発明である。
一般式1で表示される単量体(m1)及び/又は一般式2で表示される単量体(m2)と一般式3で表示される単量体(m3)とを含む単量体組成物の重合体(P)及びリチウム塩を含む高分子電解質組成物であって、
前記単量体組成物における前記(m1)と前記(m2)との合計重量割合が前記単量体組成物の重量を基準として10~60重量%であり、
前記単量体組成物における前記(m3)の重量割合が前記単量体組成物の重量を基準として40~90重量%であり、
前記(P)の重量割合が前記高分子電解質組成物の重量を基準として70~90重量%であり、
前記リチウム塩の重量割合が前記高分子電解質組成物の重量を基準として10~30重量%である高分子電解質組成物。
Figure 0007526108000001

[一般式1中、Rは水素原子又はメチル基を表す。]
Figure 0007526108000002

[一般式2中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは炭素数1~2のアルキレン基を表す。]
Figure 0007526108000003

[一般式3中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~12の飽和アルキル基を表す。]
本発明の高分子電解質組成物は成型性に優れ、サイクル特性が良好な電池を得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸又はメタクリル酸」を、「(メタ)アクリロイル基」とは「アクリロイル基又はメタクリロイル基」を意味する。
本発明は、一般式1で表示される単量体(m1)及び/又は一般式2で表示される単量体(m2)と一般式3で表示される単量体(m3)とを含む単量体組成物の重合体(P)及びリチウム塩を含む高分子電解質組成物である。
Figure 0007526108000004
一般式1中、Rは水素原子又はメチル基を表す。
一般式1で表示される単量体(m1)としては、ビニルピロリドン及びα-メチルビニルピロリドン等が挙げられる。
Figure 0007526108000005
一般式2中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは炭素数1~2のアルキレン基を表す。
一般式2で表示される単量体(m2)としては、(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルメタクリレート、(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)エチルアクリレート及び(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)エチルメタクリレート等が挙げられる。
Figure 0007526108000006
一般式3中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~12の飽和アルキル基を表す。
一般式3で表示される単量体(m3)としては、(メタ)アクリル酸、2-エチルヘキシルメタクリレート、アクリル酸-2-エチルヘキシル、ドデシルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルメタアクリレート及びイソボルニルメタクリレート等が挙げられる。
前記単量体組成物における前記単量体(m1)及び/又は(m2)と(m3)との組合せとしては、イオン伝導性の観点から、前記単量体(m1)と前記単量体(m3)のうちRが炭素数4~12の飽和アルキル基であるものとの組み合わせが好ましく、また、前記単量体(m2)と前記単量体(m3)のうちRが水素原子であるものとの組み合わせが好ましい。
本発明の高分子電解質組成物は前記単量体(m1)及び/又は前記単量体(m2)と前記単量体(m3)とを含む単量体組成物の重合体(P)を含む。
前記単量体組成物における前記(m1)と前記(m2)との合計重量割合が前記単量体組成物の重量を基準として10~60重量%である。前記単量体組成物における前記(m1)と前記(m2)との合計重量割合が前記単量体組成物の重量を基準として10重量%未満であると重合体(P)のイオン伝導性が悪化し、60重量%を超えると重合体(P)の成型性が悪化する。成型性の観点から、前記単量体組成物における前記(m1)と前記(m2)との合計重量割合は前記単量体組成物の重量を基準として20~50重量%であることが好ましい。
前記単量体組成物における前記(m3)の重量割合が前記単量体組成物の重量を基準として40~90重量%である。前記単量体組成物における前記(m3)の重量割合が前記単量体組成物の重量を基準として40重量%未満であると前記重合体(P)が硬くなりイオン伝導性が悪化し、90重量%を超えると後述するリチウム塩が部分析出し重合体(P)のイオン伝導性が悪化する。
イオン伝導性の観点から、前記単量体組成物における前記(m3)の重量割合は前記単量体組成物の重量を基準として50~80重量%であることが好ましい。
前記単量体組成物はイオン伝導性の観点から、さらにビニル基を有するスルホン酸塩(m4)を含むことが好ましい。前記(m4)としては、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸リチウム及び2-スルホエチルメタアクリレートナトリウム等が挙げられる。
イオン伝導性の観点から、前記単量体組成物における前記(m4)の重量割合は前記単量体組成物の重量を基準として1重量%以下であることが好ましく、0.5重量%以下であることがより好ましい。
前記単量体組成物は、物性を損なわない範囲で、前記単量体(m1)、(m2)、(m3)及び(m4)以外の単量体を含んでもよい。イオン伝導性及び成型性の観点から、前記単量体組成物における前記単量体(m1)、(m2)、(m3)及び(m4)以外の単量体の重量割合は前記単量体組成物の重量を基準として5重量%以下であることが好ましい。
前記単量体(m1)、(m2)、(m3)及び(m4)以外の単量体は、重合性を有するものであれば特に制限はないが、具体的には1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート及びトリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられる。
本発明の高分子電解質組成物に含まれる前記重合体(P)の絶対分子量は、高分子電解質組成物の強度と柔軟性の観点から、15,000~100,000であることが好ましい。
絶対分子量の測定には例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の多角度光散乱検出器(MALS)や静的光散乱(SLS)を使用することができる。本願においてはSLSを用いて絶対分子量を測定した。絶対分子量の測定条件は以下の通りである。
なお、本測定で用いられる溶媒は前記重合体(P)が溶解するものであれば特に限定されない。また各サンプルの屈折率濃度勾配(dn/dc)はDLS-8000DLS付属の示差屈折率測定DRM-3000を用いて測定することができる。
装置:DLS-8000DSL[大塚電子(株)製]
測定モード:SLS
測定セル:円筒セル
測定温度:25℃
検体数:4個(濃度違い)
本発明の高分子電解質組成物に含まれる前記重合体(P)の重量割合は、前記高分子電解質組成物の重量を基準として70~90重量%である。前記高分子電解質組成物に含まれる前記重合体(P)の重量割合が、前記高分子電解質組成物の重量を基準として70重量%未満であると高分子電解質組成物の成型性が悪化し、90重量%を超えると高分子電解質組成物のイオン伝導性が悪化する。
成型性及びイオン伝導性の観点から、前記高分子電解質組成物に含まれる前記重合体(P)の重量割合は75~85重量%であることが好ましい。
前記重合体(P)は、前記単量体組成物を公知の重合開始剤{アゾ系開始剤[2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等]、パーオキサイド系開始剤(ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等)等}を使用して公知の重合方法(塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等)により重合して製造することができる。
重合開始剤の使用量は、絶対分子量を好ましい範囲に調整する等の観点から、モノマーの全重量に基づいて好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.05~2重量%、さらに好ましくは0.1~1.5重量%であり、重合温度及び重合時間は重合開始剤の種類等に応じて調整されるが、重合温度は好ましくは-5~150℃、(より好ましくは30~120℃)、反応時間は好ましくは0.1~50時間(より好ましくは2~24時間)で行われる。
溶液重合の場合に使用される溶媒としては、例えばエステル(炭素数2~8、例えば酢酸エチル及び酢酸ブチル)、アルコール(炭素数1~8、例えばメタノール、エタノール及びオクタノール)、炭化水素(炭素数4~8、例えばn-ブタン、シクロヘキサン及びトルエン)、アミド(例えばN,N-ジメチルホルムアミド)及びケトン(炭素数3~9、例えばメチルエチルケトン)が挙げられ、絶対分子量を好ましい範囲に調整する等の観点から、その使用量はモノマーの合計重量に基づいて好ましくは5~900重量%、より好ましくは10~400重量%、さらに好ましくは30~300重量%である。モノマー濃度としては、好ましくは10~95重量%、より好ましくは20~90重量%、さらに好ましくは30~80重量%である。
乳化重合及び懸濁重合における分散媒としては、水、アルコール(例えばエタノール)、エステル(例えばプロピオン酸エチル)、軽ナフサ等が挙げられ、乳化剤としては、高級脂肪酸(炭素数10~24)金属塩(例えばオレイン酸ナトリウム及びステアリン酸ナトリウム)、高級アルコール(炭素数10~24)硫酸エステル金属塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、エトキシ化テトラメチルデシンジオール、メタクリル酸スルホエチルナトリウム、メタクリル酸ジメチルアミノメチル等が挙げられる。さらに安定剤としてポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を加えてもよい。
溶液又は分散液のモノマー濃度は好ましくは5~95重量%、より好ましくは10~90重量%、さらに好ましくは15~85重量%であり、重合開始剤の使用量は、モノマーの全重量に基づいて好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.05~2重量%である。
重合に際しては、公知の連鎖移動剤、例えばメルカプト化合物(ドデシルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン等)及び/又はハロゲン化炭化水素(四塩化炭素、四臭化炭素、塩化ベンジル等)を使用することができる。
本発明の高分子電解質組成物はリチウム塩を含む。
前記リチウム塩としては、LiSCN、LiN(CN)、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CFSOC、LiSbF、Li(FSON、LiCSO、LiN(SOCFCF、LiPF(CFCF、LiPF(C、LiPF(CF、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiB(C、リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート及びリチウムビス(オキサレート)ボレート等が挙げられる。
前記リチウム塩は、1種であっても2種以上の混合物であってもよい。
前記高分子電解質組成物に含まれる前記リチウム塩の重量割合は前記高分子電解質組成物の重量を基準として10~30重量%である。前記高分子電解質組成物に含まれる前記リチウム塩の重量割合が前記高分子電解質組成物の重量を基準として10重量%未満であると前記高分子電解質組成物がイオン伝導しなくなり、30重量%を超えると塩が部分析出し対向面の電池反応が不均一になる。
イオン伝導性の観点から、前記高分子電解質組成物に含まれる前記リチウム塩の重量割合は前記高分子電解質組成物の重量を基準として15~25重量%であることが好ましい。
本発明の高分子電解質組成物は、公知の高分子化合物に使用される可塑剤、安定剤、酸化防止剤あるいは離型剤等の添加剤を、本発明の目的に反しない範囲内でさらに含んでもよい。
本発明の高分子電解質組成物のガラス転移温度は、-60~20℃であることが好ましく、さらに好ましくは-50~0℃である。前記高分子電解質組成物のガラス転移温度が前記範囲であると、高分子電解質組成物の成型性と柔軟性のバランスが良好となる。高分子電解質組成物のガラス転移温度は高分子電解質組成物に含まれるリチウム塩の重量割合で調節することができる。
高分子電解質組成物及び重合体(P)等のガラス転移温度の測定は例えば示差走査熱量測定(DSC)を使用することができる。本願においては、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)で測定した。測定条件を以下に記載する。
装置:Q2000[TA-インスツルメンツ社製]
サンプルパン:アルミニウム
測定雰囲気:窒素 50mL/min
温度プログラム:
(1)50℃まで10℃/分で昇温
(2)50℃で10分間保持
(3)10℃/分で-80℃まで冷却
(4)-80℃で10分間保持
(5)10℃/分で50℃まで昇温
上記測定によって得られた示差走査熱量曲線から、縦軸を吸発熱量、横軸を温度とするグラフを描き、そのグラフの低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
本発明の高分子電解質組成物の製造方法は、特に制限されないが、例えば前記重合体(P)と前記リチウム塩と、前記重合体(P)と前記リチウム塩の両方を溶解可能な有機溶媒を所定の割合で混合した後、必要であれば脱溶剤して得ることができる。
前記混合は従来公知の方法、例えばホモミキサー、ホモディスパー、ウエーブローター、ホモジナイザー、ディスパーサー、ペイントコンディショナー、ボールミル、マグネチックスターラー、メカニカルスターラーなどの混合機を用いて行うことが好ましい。
前記重合体(P)と前記リチウム塩の両方を溶解可能な有機溶媒としては特に限定されないが、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のN-アルキルピロリドン類、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の非プロトン性極性溶媒、γ-ブチロラクトン、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、あるいはイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、水及びこれらの混合物が好適に用いられる。中でも非プロトン性極性溶媒が最も溶解性が高く好ましい。
本発明の高分子電解質組成物は、特に、高分子電解質組成物成型体として好適に用いられる。高分子電解質組成物成型体は、膜状の他、板状、繊維状、中空糸状、粒子状、塊状、微多孔状、発泡体状など、使用用途によって様々な形態で有り得る。
本発明の全固体リチウムイオン二次電池は、正極と負極との間に介在された前記高分子電解質組成物を有する。
本発明の全固体リチウムイオン二次電池は、正極と高分子電解質組成物と負極とを電池外装容器(ラミネート容器等)内に積層し、集電体に接続した電流取り出し用端子を容器の外側に出した状態で電池外装容器を封止する方法等で得ることができる。
本発明の全固体リチウムイオン二次電池において、高分子電解質組成物を膜状に成形して用いても良い。
なお、全固体リチウムイオン二次電池において正極と負極との間に配置される高分子電解質組成物の膜をセパレータという場合もある。
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限り本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特記しない限り部は重量部、%は重量%を意味する。
<製造例1:重合体(P-1)の合成>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口コルベンに重合溶媒としてトルエン300部を仕込み75℃に昇温した。次いで、N-ビニルピロリドン(以下VPと略記)30部、2-エチルヘキシルメタアクリレート(以下EHMAと略記)65部、アクリル酸4.5部及び1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート(以下HDMAと略記)0.5部を配合したモノマー配合液と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.03部をトルエン5部に溶解した開始剤溶液とを4つ口コルベン内に窒素を吹き込みながら、撹拌下、滴下ロートで2時間かけて連続的に滴下してラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃に昇温し反応を1時間継続した。次いで2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.01部をトルエン1部に溶解した開始剤溶液を滴下ロートで投入しさらに反応を3時間継続して重合体(P-1)のトルエン溶液を得た。得られた重合体(P-1)のトルエン溶液をメタノール/イオン交換水(1/1体積比)中に滴下して再沈殿を行い、白色塊状の重合体(P-1)を得た。得られた重合体(P-1)のメタノール溶液での光散乱法を用いて測定した絶対分子量は69000、ガラス転移温度は-25℃であった。
<製造例2、3及び21~27:重合体(P-2)(P-3)及び重合体(P-21)~(P-27)の合成>
製造例1において、モノマー配合液の配合を表1の通り変更した他は同様にして重合体(P-2)、(P-3)及び重合体(P-21)~(P-27)を得た。それぞれの絶対分子量及びガラス転移温度は表1に記載した。
<製造例4~20:重合体(P-4)~(P-20)の合成>
製造例1において、重合溶媒をN,N-ジメチルホルムアミド(以下DMFと略記)300部に、モノマー配合液の配合を表1の通り変更した他は同様にして重合体(P-4)~(P-20)のDMF溶液を得た。得られたDMF溶液をアセトン中に滴下して再沈殿を行い、重合体(P-4)~(P-20)を得た。それぞれの絶対分子量及びガラス転移温度は表1に記載した。
Figure 0007526108000007
表1中の単量体を以下に示す。
VP:N-ビニルピロリドン
PCMA:(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルメタクリレート
EHMA:2-エチルヘキシルメタクリレート
EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
DMA:ドデシルメタクリレート
BMA:ブチルメタアクリレート
MMA:メチルメタアクリレート
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
NaSS:スチレンスルホン酸ナトリウム
LiSS:スチレンスルホン酸リチウム
NaSEMA:2-スルホエチルメタアクリレートナトリウム
HDMA:1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
<実施例1>
重合体(P-1)20部とリチウムビス(スルホニル)イミド(以下LiFSIと略記)3.7部をアセトン76.3部に溶解させ、高分子電解質組成物(D-1)のアセトン溶液を作製した。アセトン溶液をキャストし、その後脱アセトンして高分子電解質組成物のフィルムを得た。フィルムは薄黄色透明のフィルムとなり、ガラス転移温度は-9℃、イオン伝導度は4.6×10-3mS/cmを示した。イオン伝導度は後述の方法で測定した。
<実施例2、15~20及び比較例1、8>
実施例1において、重合体とリチウム塩を表2の通り変更した他は同様にして高分子電解質組成物(D-2)、(D-22)~(D-26)、(D-28)、(D-3)、(D-27)のアセトン溶液を作製した。アセトン溶液をキャストしたフィルムのガラス転移温度及びイオン伝導度は表2に記載した。
<実施例3~14及び比較例2~7>
実施例1において、重合体とリチウム塩を表2の通り変更し、溶媒をメタノールに変更した他は同様にして高分子電解質組成物(D-4)~(D-21)のメタノール溶液を作製した。メタノール溶液をキャストし、その後脱メタノールして高分子電解質組成物のフィルムを得た。フィルムのガラス転移温度及びイオン伝導度は表2に記載した。
<成型性の評価>
実施例1~19、比較例1~8で得たフィルムを目視して、全体として均一かどうか評価した。
<イオン伝導度の測定>
得られたフィルムのイオン伝導度を以下の方法で測定した。
得られたフィルムの両側をスパッタ装置「JFC-1600(JEOL製)」で20mV,60秒間プラチナでスパッタしイオンブロッキング電極を得た。次に、交流インピーダンス装置「ソーラトロン1260」に成型した電極で作成したセルを繋ぎ、10μHz~10MHzの範囲でインピーダンス測定を行った。次にボード線図を作成し、1Hz以降に見られるプラトーな領域の|Z|からイオン伝導度を算出した。
Figure 0007526108000008
<実施例21>
高分子電解質組成物(D-1)のアセトン溶液100部(固形分濃度20%)と、活物質粒子としてリチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物(NCA)60部及び導電助剤としてアセチレンブラック[電気化学工業(株)製 デンカブラック]20部を自転・公転式ミキサー あわとり練太郎[(株)シンキー製]の専用容器に投入し、同ミキサーを用いて撹拌速度2000rpmで混合を5分間行いスラリーを得た。得られたスラリーをアルミニウム集電箔上にスラリー厚みが100μmになるようにフィルムアプリケーターで塗工し、60℃の乾燥器で10分間乾燥をおこない、プレス器[SA-302:テスター産業(株)製]で2MPaでプレスをおこない、厚み76μmの電極を得た。
得られた電極の上にさらに実施例1で用いた高分子電解質組成物(D-1)のアセトン溶液を塗布し60℃の乾燥器で10分間乾燥をおこない、厚み10μmの電解質層を形成した。対極にはリチウムおよび銅集電箔を載せて全固体リチウムイオン二次電池(C-1)を作成した。
<実施例22~40及び比較例9~16>
実施例21において、高分子電解質組成物の溶液を表3の通り変更した他は同様にして全固体リチウムイオン二次電池(C-2)~(C-28)を作成した。
<充放電試験:サイクル特性の評価>
45℃下、充放電測定装置「HJ-SD8」[北斗電工(株)製]を用いて以下の方法により全固体リチウムイオン二次電池(C-1)~(C-20)について充放電試験を行った。
定電流定電圧方式(0.01C)で4.2Vまで充電した後、10分間の休止後、定電流方式(0.01C)で2.6Vまで放電した。
このサイクルを20回繰り返し、1回目と20回目での各サイクルで取りだせた放電容量の比の百分率(100×20回目の放電容量/1回目の放電容量)をサイクル特性とした。結果を表3に示す。
Figure 0007526108000009
本発明の高分子電解質組成物及びそれを用いた全固体リチウムイオン二次電池は、携帯電話、パーソナルコンピューター、ハイブリッド自動車及び電気自動車用として有用である。

Claims (3)

  1. 一般式1で表示される単量体(m1)及び/又は一般式2で表示される単量体(m2)と
    一般式3で表示される単量体(m3)とを含む単量体組成物の重合体(P)及びリチウム
    塩を含む高分子電解質組成物であって、
    前記単量体組成物における前記(m1)と前記(m2)との合計重量割合が前記単量体組
    成物の重量を基準として10~60重量%であり、
    前記単量体組成物における前記(m3)の重量割合が前記単量体組成物の重量を基準とし
    て40~90重量%であり、
    前記(P)の重量割合が前記高分子電解質組成物の重量を基準として70~90重量%で
    あり、
    前記リチウム塩の重量割合が前記高分子電解質組成物の重量を基準として10~30重量
    %である高分子電解質組成物。

    [一般式1中、Rは水素原子又はメチル基を表す。]

    [一般式2中、Rは水素原子又はメチル基を表し、 は炭素数1~2のアルキレン基
    を表す。]

    [一般式3中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~12
    の飽和アルキル基を表す。]
  2. さらに前記単量体組成物が、ビニル基を有するスルホン酸塩(m4)を含む請求項1に記
    載の高分子電解質組成物。
  3. 正極と負極との間に介在された請求項1又は2に記載の高分子電解質組成物を有する全固
    体リチウムイオン二次電池。
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