JP7516862B2 - 電機子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電機子の製造方法に関する。
従来、回転電機のステータは、複数のスロットを有する鉄心と、スロット内に配置されるコイルとを備えている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のコイルは平角線からなり、その断面形状は、長辺及び短辺を有する矩形状をなしている。同コイルは、スロット内に配置される配置部と、スロットから突出して周方向の一方側に屈曲される屈曲部とを有している。配置部は、上記長辺が径方向に沿うようにスロット内に配置されている。屈曲部は、上記短辺が延びる方向に屈曲されている。
特開2004-88993号公報
ところで、スロット内には、複数の配置部が径方向に並んだ状態で配置される。この場合、配置部の径方向における厚さを小さくすることで、スロット内により多くの配置部を並べることができる。しかしながら、配置部の径方向における厚さを小さくすべく、上記短辺が径方向に沿うようにスロット内に配置部を並べた場合、屈曲部の屈曲される方向は、上記長辺の延びる方向となる。これにより、屈曲部の曲げ半径が大きくなり、屈曲部の鉄心からの突出量が増大するおそれがある。こうした屈曲部の鉄心からの突出量の増大は、電機子の体格が増大する一因となっている。
本発明の目的は、コイルの占積率を高めつつ体格の増大を抑制できる電機子の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するための電機子の製造方法は、径方向に延びる複数のスロットが周方向に互いに間隔をおいて形成された鉄心と、前記スロット内に配置される配置部、及び前記配置部に連なるとともに前記スロットから突出して前記周方向に屈曲される屈曲部を有するコイルと、を備える電機子の製造方法である。同方法は、前記コイルの長さ方向に直交する方向における厚さを第1厚さとし、前記第1厚さの厚さ方向と前記長さ方向との双方に直交する方向における厚さを第2厚さとするとき、前記第1厚さの厚さ方向が前記径方向に沿うように前記配置部を前記スロット内に配置する配置工程と、前記スロット内に配置された前記配置部を押圧することで、前記配置部の前記第1厚さを減少させるとともに前記第2厚さを増大させるように前記配置部を塑性変形させる押圧工程と、前記屈曲部を前記周方向に屈曲させる屈曲工程と、を備える。
同方法によれば、鉄心の径方向に沿った厚さである第1厚さを減少させるように配置部を塑性変形させるため、配置部の径方向の体格を小さくできる。また、第2厚さが増大するように配置部を塑性変形させることで、スロットの内面と配置部との隙間を小さくできる。このため、スロット内において、複数の配置部を径方向に並べた際に同配置部が占める割合を高めることができる。一方、屈曲部においては、上述した塑性変形が生じないため、その曲げ方向における厚さが塑性変形後の配置部の第2厚さよりも小さくなる。このため、屈曲工程において、屈曲部の曲げ半径を小さくすることができる。以上のことから、コイルの占積率を高めつつ電機子の体格の増大を抑制できる。
一実施形態におけるステータの断面図。 ステータの拡大平面図。 ステータの縦断面図。 図2の4-4線に沿った断面図。 配置工程を示すステータの断面図。 押圧工程を示すステータの断面図。 屈曲工程を示すステータの平面図。 比較例のステータの縦断面図。
以下、図1~図8を参照して、電機子の製造方法をステータの製造方法として具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、ステータ10は、中心孔20aを有する円筒状のステータコア20と、ステータコア20に巻回されたコイル30とを備えている。本実施形態のステータ10は、三相同期型の回転電機に用いられるものであり、ロータ100を取り囲むように設けられている。なお、ステータコア20は、鉄心の一例である。
以降において、ステータコア20の軸線方向を単に軸線方向と称し、ステータコア20の軸線を中心とするステータコア20の周方向を単に周方向と称し、同軸線を中心とするステータコア20の径方向を単に径方向と称する。また、図1において、時計回りに向かう側を周方向の一方側とし、反時計回りに向かう側を周方向の他方側として説明する。
<ステータコア20>
図1に示すように、ステータコア20は、環状のヨーク21、及びヨーク21から径方向の内側に向かって延在するとともに周方向に互いに間隔をおいて形成された複数のティース22を有している。ステータコア20は、図示しない複数の鋼板が積層されることにより構成されている。
周方向において互いに隣り合うティース22同士の間には、径方向の内側に開口するとともに径方向に沿って延びるスロット23が形成されている。上述したようにティース22は周方向に互いに間隔をおいて複数形成されていることから、これらの間に形成されるスロット23も周方向に互いに間隔をおいて複数形成されている。本実施形態のステータコア20は、都合48個のスロット23を有している。なお、各スロット23の内面には、図示しない絶縁紙が設けられている。
各ティース22の先端面は、周方向に沿って円弧状に湾曲しており、ロータ100の外周面に対向している。
<コイル30>
図2及び図3に示すように、コイル30は、アルミニウム合金などの金属材料により形成された平角線と、平角線の外周面を覆う絶縁被膜とを有している。なお、各図においては、絶縁被膜の図示を省略している。本実施形態のコイル30の長さ方向に直交する断面形状は、長辺及び短辺を有する長方形状をなしている。
コイル30は、スロット23内に配置される配置部31と、配置部31に連なるとともに軸線方向の両側においてスロット23から突出して周方向に屈曲される第1屈曲部32a及び第2屈曲部32bとを有している。
各屈曲部32a,32bは、配置部31から離れるほど断面形状が徐々に変化する徐変部33と、徐変部33に連なり、断面形状が略一定で直線状に延びる直線部34とを有している。なお、図3において、第1屈曲部32aは同図の上側に向かって突出しており、第2屈曲部32bは同図の下側に向かって突出している。第1屈曲部32aと第2屈曲部32bとは、周方向において互いに逆向きに屈曲している。
配置部31の断面形状における長辺は、スロット23の幅方向に沿っており、配置部31の断面形状における短辺は、径方向に沿っている。なお、スロット23の幅方向は、軸線方向と径方向との双方に直交する方向である。
図4に示すように、各屈曲部32a,32bにおける直線部34の断面形状における長辺は、径方向に沿っており、直線部34の断面形状における短辺は、軸線方向に沿っている。
図2に示すように、各スロット23内には、複数の配置部31が径方向に並んで設けられている。本実施形態では、8つの配置部31が径方向に隣接して設けられている。
各配置部31のうち、径方向の外側から数えて偶数番目に位置する配置部31に連なる第1屈曲部32aは、周方向の一方側に屈曲されており、径方向の外側から数えて奇数番目に位置する配置部31に連なる第1屈曲部32aは、周方向の他方側に屈曲されている。
なお、本実施形態では、U相、V相、及びW相を構成するコイル30が、複数のティース22に跨がって分布巻きにより巻回されている。1つのスロット23内に設けられるコイル30は、U相、V相、及びW相のいずれか1つの相を構成するものであってもよいし、各相のうち2つの相を構成するものであってもよい。
次に、ステータ10の製造方法について説明する。
以降において、コイル30の長さ方向に直交する方向における厚さを第1厚さt1とし、第1厚さt1の厚さ方向と上記長さ方向との双方に直交する方向における厚さを第2厚さt2として説明する。すなわち、本実施形態では、コイル30の配置部31において、断面形状における長辺の延びる方向での厚さを第1厚さt1とし、同断面形状における短辺の延びる方向での厚さを第2厚さt2としている。なお、第1厚さt1は、第2厚さt2よりも大きい。また、第2厚さt2は、スロット23の幅よりも小さい。
図5に示すように、まず、第1厚さt1の厚さ方向が径方向に沿うように配置部31をスロット23内に配置する(配置工程)。なお、各屈曲部32a,32bは、配置工程に先立ち、後述する屈曲工程において自身が屈曲される側に僅かに屈曲されている。
図6に示すように、次に、配置部31を押圧するための治具60をスロット23内に挿入する。ここで、治具60の押圧面60aは、軸線方向におけるスロット23の全体にわたって延びている。また、押圧面60aの幅は、スロット23の幅と略同一である。
次に、スロット23内に配置された配置部31を、治具60により径方向の外側に向けて押圧する。これにより、第1厚さt1を減少させるとともに第2厚さt2を増大させるように配置部31を塑性変形させる(押圧工程)。このとき、第2厚さt2が、スロット23の幅と同一となるまで配置部31が押圧される。本実施形態では、この状態において、第1厚さt1が第2厚さt2よりも小さくなる。
図7に示すように、次に、第1屈曲部32aを周方向の他方側に屈曲させるとともに、第2屈曲部32bを周方向の一方側に屈曲させる。これにより、スロット23内における径方向の最外側にコイル30が配置される。なお、次にスロット23内に配置されるコイル30においては、第1屈曲部32aを周方向の一方側に屈曲させるとともに、第2屈曲部32bを周方向の他方側に屈曲させる。
こうした手順を繰り返してスロット23内にコイル30を順次配置することで、ステータコア20にコイル30を巻回する。
このようにして、ステータ10が製造される。
本実施形態の作用について説明する。
押圧工程では、径方向に沿った厚さである第1厚さt1を減少させるように配置部31を塑性変形させるため、配置部31の径方向の体格を小さくできる。また、第2厚さt2が増大するように配置部31を塑性変形させることで、スロット23の内面と配置部31との隙間を小さくできる。このため、スロット23内において、複数の配置部31を径方向に並べた際に同配置部31が占める割合を高めることができる。一方、各屈曲部32a,32bにおいては、上述した塑性変形が生じないため、その曲げ方向における厚さが塑性変形後の配置部31の第2厚さt2よりも小さくなる。このため、屈曲工程において、各屈曲部32a,32bの曲げ半径を小さくすることができる。
ここで、図8に比較例のステータ110を示す。なお、比較例においては、本実施形態と同一の構成については同一の符号を付すとともに、本実施形態と対応する構成については、本実施形態の符号「**」に「100」を加算した「1**」を付すことにより、重複する説明を省略する。
比較例では、第1厚さt1の厚さ方向がスロット23の幅方向に沿うように、且つ第2厚さt2の厚さ方向が径方向に沿うように配置部131がスロット23内に配置されている。すなわち、比較例の配置部131は、本実施形態の配置部31を周方向に90度回転させた姿勢にてスロット23内に配置されている。そして押圧工程を行うことなく、各屈曲部132a,132bを周方向に屈曲させる。こうしたステータ110においては、各屈曲部132a,132bの曲げ方向における厚さが、配置部131の第1厚さt1と同一となる。この場合、本実施形態における各屈曲部132a,132bの曲げ方向における厚さは、本実施形態における各屈曲部32a,32bの曲げ方向における厚さよりも大きくなる。したがって、本実施形態と比較して、各屈曲部132a,132bの曲げ半径が大きくなる。
本実施形態の効果について説明する。
(1)配置工程では、第1厚さt1の厚さ方向が径方向に沿うように配置部31をスロット23内に配置する。押圧工程では、スロット23内に配置された配置部31を押圧することで、配置部31の第1厚さt1を減少させるとともに第2厚さt2を増大させるように配置部31を塑性変形させる。屈曲工程では、各屈曲部32a,32bを周方向に屈曲させる。
こうした方法によれば、上述した作用を奏することから、コイル30の占積率を高めつつステータ10の体格の増大を抑制できる。
(2)第1厚さt1が第2厚さt2よりも大きいコイル30を用いる。
上記コイル30を屈曲させる場合、第1厚さt1の厚さ方向よりも、第2厚さt2の厚さ方向において屈曲させやすくなる。
上記方法によれば、各屈曲部32a,32bが第2厚さt2の厚さ方向において屈曲されるため、各屈曲部32a,32bの曲げ半径を容易に小さくすることができる。
(3)押圧工程では、第1厚さt1が、第2厚さt2よりも小さくなるまで配置部31を押圧する。
こうした方法によれば、配置部31の第1厚さt1が第2厚さt2よりも小さくなることで、配置部31における径方向の体格が一層小さくなる。したがって、コイル30の占積率を一層高めることができる。
(4)押圧工程では、第2厚さt2が、スロット23の幅と同一となるまで配置部31を押圧する。
こうした方法によれば、配置部31がスロット23の幅方向の全体にわたって配置されるようになる。したがって、コイル30の占積率をより一層高めることができる。
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・押圧工程後の配置部31の第2厚さt2は、スロット23の幅よりも小さくてもよい。
・押圧工程において、第1厚さt1が第2厚さt2よりも小さくなるまで配置部31を押圧しなくてもよい。この場合であっても、上記(1)に準じた効果を奏することができる。
・第1厚さt1が第2厚さt2よりも小さいコイル30を用いることもできる。この場合であっても、押圧工程において、第1厚さt1が減少するとともに第2厚さt2が増大するため、上記効果(1)に準じた効果を奏することができる。なお、この場合、第2厚さt2は、スロット23の幅よりも小さいことが好ましい。
・第1厚さt1と第2厚さt2は同一であってもよい。すなわち、コイル30の断面形状は、正方形であってもよい。また、コイル30の断面形状は、多角形状、楕円形状、扁平形状などであってもよい。
・複数の配置部31をスロット23内に配置するとともに、これら配置部31を治具60により一括して押圧することもできる。
・コイル30は、例えば銅合金などのアルミニウム合金以外の金属からなるものであってもよい。
・ステータコア20に集中巻きにより巻回されたコイルを有するステータに対しても本発明を適用することができる。
・本実施形態では、電機子の製造方法の一例として回転電機のステータの製造方法を例示したが、回転電機のロータの製造方法に対しても本発明を適用することができる。
t1…第1厚さ
t2…第2厚さ
10,110…ステータ
20…ステータコア
20a…中心孔
21…ヨーク
22…ティース
23…スロット
30,130…コイル
31,131…配置部
32a,132a…第1屈曲部
32b,132b…第2屈曲部
33…徐変部
34…直線部
60…治具
60a…押圧面
100…ロータ

Claims (4)

  1. 径方向に延びる複数のスロットが周方向に互いに間隔をおいて形成された鉄心と、前記スロット内に配置される配置部、及び前記配置部に連なるとともに前記スロットから突出して前記周方向に屈曲される屈曲部を有するコイルと、を備える電機子の製造方法であって、
    前記コイルの長さ方向に直交する方向における厚さを第1厚さとし、前記第1厚さの厚さ方向と前記長さ方向との双方に直交する方向における厚さを第2厚さとするとき、
    前記第1厚さの厚さ方向が前記径方向に沿うように前記配置部を前記スロット内に配置する配置工程と、
    前記スロット内に配置された前記配置部を押圧することで、前記配置部の前記第1厚さを前記屈曲部の前記第1厚さよりも減少させるとともに前記配置部の前記第2厚さを前記屈曲部の前記第2厚さよりも増大させるように前記配置部を塑性変形させる押圧工程と、
    前記屈曲部を前記周方向に屈曲させる屈曲工程と、を備える、
    電機子の製造方法。
  2. 前記第1厚さが前記第2厚さよりも大きい前記コイルを用いる、
    請求項1に記載の電機子の製造方法。
  3. 前記押圧工程では、前記第1厚さが、前記第2厚さよりも小さくなるまで前記配置部を押圧する、
    請求項2に記載の電機子の製造方法。
  4. 前記押圧工程では、前記第2厚さが、前記スロットの幅と同一となるまで前記配置部を押圧する、
    請求項2または3に記載の電機子の製造方法。
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