JP7516017B2 - 三次元成形された形状を有する接着フィルム - Google Patents

三次元成形された形状を有する接着フィルム Download PDF

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本開示は、三次元成形された形状を有し、その接着面が、低圧力下で高いスライド性を有する一方、一定以上の圧力をかけた場合には接着力を発揮する構成を備えた接着フィルム、及びその製造方法に関する。
低い圧力では対象に接着せず、スライドさせて位置決めが可能である(すなわちスライド性を有する)一方、一定以上の圧力をかけた場合には十分な接着力を発揮できるような感圧接着剤面を提供することが試みられてきた。例えば、接着剤層の表面に、中空ガラスマイクロスフェアを分散させる手法や、非接着性の突起物を一定間隔で設ける手法が知られている。特許文献1には、接着剤層が表面から外側に突出している複数のペグを有し、且つそのペグが非接着性のキャップで被覆されるようにする等して、接着剤層が少なくとも二段階の接着レベルを有するように製造された接着剤シートが開示されている。しかし、そのような従来の接着フィルムは、感圧接着剤面のスライド性が依然として十分なものではない。
また、三次元形状を有する対象に接着フィルムを貼り付ける際には、接着フィルムを引き伸ばしながら貼り付けることが従来行われているが、作業効率の面において劣る上、接着フィルムの破損などのリスクも存在する。例えば、特許文献2には、剥離層と、剥離層の表面に配置される粘着層と、粘着層の表面に配置される表皮層とを備えた加飾シートにおいて、剥離層が備える形状保持層を所定の材料かつ所定の厚みとすること、予め加熱成形することを可能としたものが開示されている。
特表2000-500514号公報 特開2016-203434号公報
しかし、特許文献2のようなシートを、予め接着対象に対応する三次元形状に成形しておいても、粘着層を接着対象に当てながらスライドさせることができないため、対象へのはめ込みは困難である。特に、対象が複雑な形状を有している場合や、サイズが大きい場合などでは、はめ込むことは著しく困難である。
三次元形状を有する対象への接着フィルムの貼り付け手法として、インモールド成形や、真空条件を利用して接着フィルムを引き伸ばしながら貼り付ける真空圧空成形等も知られているが、貼り付けを実施する現場に専用の装置が必要であるため、場所や貼り付け対象の大きさ等が制約される。また別の手法として、水などの溶媒を感圧接着剤面に介在させることにより、若干の位置合わせやエア抜けなどを可能にする技術も知られているが、貼り付け対象の形状や場所が制約される上、作業者の技量にも依存する。それゆえ、貼り付けの容易性、効率性、利便性等の面から、接着フィルム自体を予め接着対象と同じ三次元形状に成形しておき、感圧接着面を接着対象に当てながらスライドさせてはめ込み、一定以上の圧力をかけた場合には接着力を発揮させることへの潜在的ニーズがあると、本発明者は考えた。
本発明者は、低圧力下において非常に高いスライド性を有する一方、一定以上の圧力をかけた場合には十分な接着力を発揮できる接着剤層と、それを覆うライナー層とを含む接着フィルムを、予め貼り付け対象に対応した三次元形状に成形できること、そしてこの接着フィルムが、対象への貼り付けの容易性、効率性、利便性等が良いことを見出した。本開示の要旨は以下のとおりである。
(1)基材層と、
表面に微細構造を有する接着剤層と、
前記接着剤層を覆うライナー層と
を含む、三次元成形された形状を有する接着フィルムであって、
前記接着剤層の微細構造は、複数のコンベックス体を含み、
前記コンベックス体は、界面を介して互いに接合した2以上の部分を有し、前記コンベックス体の頂部に存在する第1の部分は、非接着性または弱接着性材料からなり、前記第1の部分よりも下側に存在する第2の部分は、強接着性材料からなる、接着フィルム。
(2)前記コンベックス体の側面と底面がなす角度θが8°以上である、(1)に記載の接着フィルム。
(3)前記コンベックス体の高さを100%とした場合、前記第1の部分の高さが、前記コンベックス体の10%~90%の範囲である、(1)または(2)に記載の接着フィルム。
(4)前記微小構造において、隣接する二つのコンベックス体の中心間の最長距離が300μm以下である、(1)~(3)のいずれかに記載の接着フィルム。
(5)前記コンベックス体が錐体又は錐台であり、前記接着剤層の表面1mmあたり、前記錐体または錐台が16個以上存在する、(1)~(4)のいずれかに記載の接着フィルム。
(6)前記コンベックス体の第1の部分が、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート、セルロース、シリコーン、アミン系樹脂、フッ素系樹脂、またはポリ塩化ビニルを含む、(1)~(5)のいずれかに記載の接着フィルム。
(7)前記コンベックス体の第1の部分が、常温下、1Hzの周波数で測定して得られた貯蔵弾性率(G’)が3×10Pa以上である材料を含む、(1)~(6)のいずれかに記載の接着フィルム。
(8)金属製の滑り片をそのまま用いた以外はJIS K 7125に従って試験した際の動的摩擦係数が1.10以下である、(1)~(7)のいずれかに記載の接着フィルム。
(9)温度23℃、引張速度200mm/分の条件下で試験した際の180°剥離接着強度が、接着48時間後において1.0N/10mm以上である、(1)~(8)のいずれかに記載の接着フィルム。
(10)前記三次元成形された形状が延伸を伴って形成されたものであり、前記接着フィルムが延伸率の異なる部分を有する、(1)~(9)のいずれかに記載の接着フィルム。
(11)前記ライナー層を除去した後の厚さが0.1mm~10.0mmの範囲である、(1)~(10)のいずれかに記載の接着フィルム。
(12)前記ライナー層を除去した後の曲げ剛性が200mgf~85000mgfの範囲である、(1)~(11)のいずれかに記載の接着フィルム。
(13)表面に微細構造を有する接着剤層と、
前記接着剤層を覆う第1ライナー層と、
前記第1ライナー層を覆う第2ライナー層と
を有し、
前記接着剤層の微細構造は、複数のコンベックス体を含み、
前記コンベックス体は、界面を介して互いに接合した2以上の部分を有し、前記コンベックス体の頂部に存在する第1の部分は、非接着性または弱接着性材料からなり、前記第1の部分よりも下側に存在する第2の部分は、強接着性材料からなる、接着シート。
(14)前記第1ライナー層と前記第2ライナー層の間の剥離接着力が、温度23℃、引張速度200mm/分の条件下で試験した際の180°剥離接着強度で、1N/25mm以下である、(13)に記載の接着シート。
(15)前記第2ライナー層の硬度が前記第1ライナー層の硬度よりも高い、(13)又は(14)に記載の接着シート。
(16)前記第2ライナー層の鉛筆硬度が8B以上である、(13)~(15)のいずれかに記載の接着シート。
(17)前記第2ライナー層の曲げ剛性が50mgf以上である、(13)~(16)のいずれかに記載の接着シート。
(18)前記第2ライナー層を除去した後の最大延伸率が190%以上である、(13)~(17)のいずれかに記載の接着シート。
(19)三次元成形された形状を有する接着フィルムの製造方法であって、
複数のコンベックス体を含む微細構造を有する型を準備する工程、
前記型の微細構造を、互いに剥離可能に積層された第1ライナー層と第2ライナー層を有するライナーの、前記第1ライナー層側に転写して、微細構造を有するライナーを作製する工程、
前記ライナーの微細構造を有する表面に、非接着性または弱接着性材料を含む溶液を適用し、次いで固化させて、非接着性または弱接着性材料からなる第1の部分を形成する工程、
前記第1の部分が形成されたライナーの表面に、強接着性材料またはその前駆体を適用して、強接着性材料からなる第2の部分を形成する工程、
前記ライナーの微細構造を有する表面上に基材層を積層する工程、
前記第2ライナー層を前記第1ライナー層から剥離し、次いで得られた基材層と第1ライナー層を含む積層体を三次元成形する工程、
を含む、方法。
本開示の接着フィルムは、三次元成形された形状を有しており、接着剤層の表面が低圧力下で高いスライド性を有するため、三次元形状を有する貼り付け対象にはめ込むことができる。また、はめ込み後に一定以上の圧力をかけることで、貼り付け対象に十分な強度で貼り付けを行うことができる。本開示の接着フィルムは、複雑な形状を有していたり、接着面積が大きかったりするなどで、従来の技術では貼り付けが困難であった三次元形状を有する対象にも、容易に貼り付けることができる。
「錐体」に包含される立体図形の断面図の例を示した図である。 「錐台」に包含される立体図形の断面図の例を示した図である。 接着剤層の表面の微細構造の一例を示す図である。(a)は俯瞰図であり、(b)は(a)中にA-A’で示した箇所の断面図である。 接着剤層の表面の微細構造の別の例を示す図である。(a)は俯瞰図であり、(b)は(a)中にB-B’で示した箇所の断面図である。 接着剤層の表面の微細構造の別の例を示す図である。(a)は俯瞰図であり、(b)は(a)中にC-C’で示した箇所の断面図である。 図3に示した接着剤層の表面の微細構造に含まれる四角錐の一つを拡大した図である。(a)は俯瞰図であり、(b)は(a)中にX-X’で示した箇所の断面図である。 型の一部の断面形状を模式的に示した図である。 ライナーに型を押し当てて、型の表面の微細構造をライナーに転写する手順を模式的に示した図である。 ライナーの表面に形成された微細構造に、非接着性または弱接着性材料を含む溶液を適用し、余剰な溶液を掻き落とす手順を模式的に示した図である。 微細構造の凹部に貯留した溶液が乾燥して、第1の部分となる固体の非接着性または弱接着性材料となる様子を模式的に示した図である。 第1の部分が形成されたライナーに、強接着性材料またはその前駆体を適用し、さらに基材層を積層する手順を模式的に示した図である。 ライナーから第2ライナー層のみを剥離する手順を模式的に示した図である。 真空圧空成形機による三次元成形の手順を模式的に示した図である。 ライナーから剥離した接着フィルムを対象に接着させた際の微細構造面の挙動を模式的に示した図である。 ライナーを剥離した接着フィルムを対象にはめ込む手順を模式的に示した図である。 本明細書で言及する「三次元形状」の一例であり、実施例における三次元成形に用いた型を模式的に示す図である。
[接着フィルム]
本開示の接着フィルムは、基材層と、表面に微細構造を有する接着剤層と、その接着剤層を覆うライナー層とを含み、三次元成形された形状を有することを特徴の一つとする。接着剤層の表面に設けられた微細構造は、後述するように、低圧力下におけるスライド性と、一定以上の圧力をかけた場合の接着力、すなわちコントロールされた接着力をもたらす。
本明細書において「三次元成形された形状」又は「三次元形状」とは、X軸方向およびY軸方向のみならず、Z軸方向にも実質的な大きさ(例えば、1mm以上、又は5mm以上)を有する、立体的な形状を意味する。そのような形状は、具体的には、X軸方向およびY軸方向の寸法を有する平面状の物品を、Z軸方向に屈曲させることにより、連続的に屈曲する面を有する物品の形状により例示されるものである。図15にその一例を示す。
三次元成形は、例えば、平面状の接着フィルムを、三次元形状を有する型を用いて、公知の真空圧空成形技術に供することにより実施することができる。その場合、得られる接着フィルムの三次元形状は、延伸を伴って形成されたものであり、接着フィルム上のある1点における延伸率が、他の点における延伸率と異なり、材料の厚さや密度が異なることがある。好ましい実施形態において、本開示の接着フィルムは、真空圧空成形技術により成形可能な特性を有する。そのような特性は、例えば、耐熱性や伸展性により特徴付けることができる。一実施形態において、本開示の接着フィルムは、60℃、100℃、140℃、℃、又は160℃までの温度に耐熱性を有し、その温度において、基材層、接着剤層およびライナー層が変質することがない。また、一実施形態において、本開示の接着フィルムは、伸展前の状態を100%とした場合、190%以上、200%以上、250%以上、300%、又は400%の伸展性を有し、その範囲内であれば破損等することがない。本開示の接着フィルムは、成形後に型から外して、例えば平面上に静置した状態で、その三次元形状を実質的に保持することができる。
(接着剤層)
本開示の接着フィルムの接着剤層は、表面に微細構造を有し、その微細構造は複数のコンベックス体を含む。本明細書において「コンベックス体」とは、概して、任意の平面図形を底面とし、底面の辺のすべての点と、その平面状にない別の任意の平面図形又は直線(最頂部)の辺のすべての点とを結んで構成される立体図形である。好ましくは、コンベックス体の最頂部の面積は、底面の面積よりも小さい。より好ましくは、コンベックス体は底面から最頂部に向かって先細りとなる形状を有する。コンベックス体の例として、錐体、錐台、リブ形状が挙げられる。
「錐体」とは、円(楕円を含む)または多角形などの任意の平面図形を底面とし、底面の辺のすべての点と、その平面上にない一点(頂点)とを結んで構成される立体図形である。錐体の典型例としては、円錐、三角錐、および四角錐などが挙げられる。図1に、本明細書において「錐体」に包含される立体図形の断面図の例を示す。(a)は典型的な錐体の断面図である。しかし、(a)のようなものだけではなく、(b)~(d)のような側面が歪んだものも、(e)のように頂点の位置が底面の中心から外れているものも、本明細書でいう「錐体」に包含される。従って、(f)のように、側面が歪み、かつ頂点の位置が底面の中心から外れているものも「錐体」に包含される。なお、錐体の頂点を通る断面は必ずしも全て同じ形状ではなく、断面ごとに違う形状を有していてもよい。
「錐台」とは、ある錐体から、頂点を含む最上部を部分的に取り除いた立体図形である。錐台の典型例としては、円錐台、三角錐台、四角錐台などが挙げられる。図2に、本明細書において「錐台」に包含される立体図形の断面図の例を示す。(a)は典型的な錐台の断面図である。しかし、(a)のようなものだけではなく、(b)~(d)のような側面が歪んだものも、本明細書でいう「錐台」に包含される。また、錐台の頂面は、底面と平行でなくとも、または平面でなくてもよく、従って(d)~(f)のようなものも「錐台」に包含される。
「リブ形状」とは、平面上の任意の軸方向(x軸方向)における長さが、その軸に直交する軸方向(y軸方向)における長さよりも長い平面図形を底面とし、底面の辺のすべての点と、その平面上にない、x軸方向と実質的に並行である方向に延びる線又は矩形の辺のすべての点とを結んで構成される立体図形である。リブ形状の断面は、「錐体」および「錐台」と同様に、図1(a)~(f)および図2(a)~(f)に例示されるような任意の形状を有することができる。リブ形状の底面のx軸方向の長さとy軸方向の長さの比、すなわちアスペクト比は、例えば、2:1以上、3:1以上、4:1以上、5:1以上、10:1以上、50:1以上、100:1以上、500:1以上、1000:1以上、又は10000:1以上、である。リブ形状は、接着フィルムの全面に渡って、任意の軸方向に沿って連続していてもよい。
微細構造は、複数のコンベックス体が、好ましくは平面上に、規則的に、あるいは不規則的に並んだ構造を有する。一実施形態において、微細構造は、コンベックス体が、底面同士の間に間隔をあけて、あるいは底面同士の間に間隔をあけずに、規則的に並んだ構造を有する。コンベックス体のそれぞれの形状は、同一であっても異なっていてもよいが、実質的に同一の高さ(例えば、差が±5%以内、±3%以内、または±1%以内)を有することが好ましく、全て実質的に同一の形状を有することがより好ましい。形状が異なるコンベックス体が存在する場合、微細構造は、10種以下、9種以下、8種以下、7種以下、6種以下、5種以下、4種以下、3種以下、または2種以下のコンベックス体から構成されることが好ましい。錐体、錐台およびリブ形状の任意の組み合わせが共存していてもよい。図3、図4および図5に、本開示の微細構造を有する接着剤層の表面近傍の例を模式的に示す。図3は四角錐が間隔をあけずに並んだ構造を有する接着剤層の表面であり、図4は四角錐台が間隔をあけずに並んだ構造を有する接着剤層の表面である。図5はリブ形状が並んだ構造を有する接着剤層の表面である。
それぞれのコンベックス体は、界面を介して互いに接合した2以上の部分を有する。「界面を介して接合する」とは、互いに組成が異なる二つのマトリックス相が、明確な境界面を介して接している状態を意味する。本開示においては、第1の部分(マトリックス相)と第2の部分(マトリックス相)とが、図3~図5に示されるように層分離しており、それにより界面を介して接合している。なお、例えば、樹脂中に微粒子が分散された組成物であれば、基質となる樹脂がマトリックス相に相当し、その一方、微粒子は分散相に相当する。マトリックス相が共通し分散相のみが異なる二つの相の接合、あるいは材質が連続的に変化するような接合態様、例えば、微粒子が樹脂中に分散された材料において、微粒子の密度のみがある方向において連続的に変化するようなものは、界面を介した接合に含まれない。界面は、コンベックス体の底面と平行な平面であっても、非平行な平面であってもよい。界面は、製造誤差や後述する製造方法における表面張力等に由来する程度の曲面を有していてもよい。コンベックス体は、場合により第3の部分をさらに有していてもよく、あるいはそれ以上の多層構造を有していてもよい。
コンベックス体は、少なくとも頂部側に存在する第1の部分と、それよりも下側(すなわち底面側)に存在する第2の部分とを有する。「頂部」とは、コンベックス体の最も高い位置にある領域(本開示の接着フィルムが被着体に近づいたときに、コンベックス体の中で最初に被着体に接する部分)を実質的に占めている部分を意味する。頂部は、好ましくは錐体の頂点、錐台の頂面、又はリブ形状の最頂部の線または矩形を含む。実質的に占めるとは、ごく一部に異なる材料が付着または混入している場合も許容する意味である。例えば、第1の部分は、コンベックス体の最も高い位置にある領域の大部分(例えば、90%以上、または95%以上)を占めていればよい。その領域に少量のフィラー等が含まれていたとしても、そのフィラー等は第1の部分に該当しない。第1の部分は、非接着性または弱接着性材料からなり、第2の部分は強接着性材料からなる。コンベックス体が二つの部分からなる場合、非接着性または弱接着性材料からなる第1の部分と、その下側に存在する強接着性材料からなる第2の部分とが、界面を介して互いに接合している。非接着性または弱接着性材料からなる第1の部分は、接着フィルムにかかる圧力が低い際に接着フィルムを支え、それにより接着フィルムにスライド性をもたらす。強接着性材料からなる第2の部分は、接着フィルムにかかる圧力が一定以上となった際に、第2の部分自体が変形したり、第1の部分が変形したり、あるいは第1の部分が第2の部分内に取り込まれたりするなどにより、接着対象に接触し、接着性をもたらす。なお、「非接着性」、「弱接着性」および「強接着性」とは、同一の接着対象に対する相対的な接着性の強度を意味する。接着性は、動的粘弾性測定や180°剥離強度試験などの公知の手法により評価することができる。
コンベックス体の第1の部分を構成する非接着性または弱接着性材料としては、接着対象に対して接着性を全く有しないか、接着性を有するものの容易に再剥離が可能なものが好ましい。一実施形態において、非接着性または弱接着性材料は、動的粘弾性測定により算出される貯蔵弾性率(G’)が常温下、1Hzの周波数で測定して3×10Pa以上、4×10Pa以上、5×10Pa以上、6×10Pa以上、7×10Pa以上、8×10Pa以上、9×10Pa以上、または1×10以上の樹脂である。具体例としては、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート、セルロース、シリコーン、アミン系樹脂、フッ素系樹脂、またはポリ塩化ビニルなどが挙げられる。非接着性または弱接着性材料は、鋼材(例えばSS400材、クロムメッキなどのメッキを有していてもよい)などの金属製の滑り片をそのまま用いた以外はJIS K 7125に従って試験した際の動的摩擦係数が1.10以下、1.05以下、1.00以下、0.95以下、または0.90以下であることが好ましい。非接着性または弱接着性材料は、水、アルコールなどの水混和性溶媒、または炭化水素などの水非混和性溶媒の、いずれかの汎用される溶媒に対する溶解性および/または分散性が高いものであることが好ましい。また、非接着性または弱接着性材料を溶解および/または分散させる溶媒は、比較的蒸気圧が低く、乾燥が容易なものが好ましい。さらに、型に対する濡れ性も考慮することが好ましい。濡れ性が低すぎると微細構造の内側に溶媒が入りきらない可能性があり、高すぎると微細構造と微細構造の間に溶媒が残留してしまう可能性がある。
第2の部分を構成する強接着性材料としては、感圧接着剤の製造に用いられる公知の材料を用いることができる。中でも、接着対象に対して比較的強い接着力を発揮し、容易に再剥離ができないものが好ましい。一実施形態において、強接着性材料は、いわゆるダルキスト基準、具体的には、常温下、1Hzの周波数で測定して得られた貯蔵弾性率(G’)が約3×10Pa未満との条件に合致する材料であると定義することができる。具体例としては、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤、またはシリコーン系接着剤が挙げられる。強接着性材料には、粘着付与剤がブレンドされていてもよい。非接着性または弱接着性材料、および強接着性材料はいずれも、微細構造を維持することができるよう、一定以上の硬さを備えていることが好ましい。例えば、tanδが常温下、1Hzの周波数で測定して0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、または0.3以下である材料が好ましい。
第1の部分と第2の部分の組み合わせは限定されないが、それら同士の接着力を考慮して材料を選択することがより好ましい。例えばポリマー構造の親和性等の観点から、第1の部分がシリコーンであれば、第2の部分もシリコーン系接着剤が好ましい。ただし、第1の部分と第2の部分が同じ構造を有するポリマー同士である必要は必ずしもない。
本開示の接着フィルムの接着剤層は、表面の微細構造より下の部分に、基部を有していてもよい。基部は、微細構造のコンベックス体の底面と接合または連続している。基部の材料は、第2の部分と同一であってもよいし、あるいは異なっていてもよい。一実施形態において、コンベックス体は第1の部分と第2の部分の二つの部分からなり、基部は第2の部分と同じ材料からなり、かつ第2の部分と連続している。例えば、図3~5に示した実施形態では、接着剤層の表面(31)の下に基部(32)を有し、基部は、第1の部分(4)の下にある第2の部分(5)と同じ材料からなり、かつ第2の部分と連続している。基部の厚さは、所望の接着剤層の厚さに応じて任意に設定することができる。基部の材料が弾性を有するものである場合、微細構造中のコンベックス体が基部に沈み込むことができるため、コンベックス体の第2の部分が接着対象により接触しやすくなり、接着フィルムの接着性が向上する場合がある。
第1の部分を構成する非接着性または弱接着性材料、および第2の部分を構成する強接着性材料、ならびに存在する場合にはその他の部分を構成する材料がいずれも透明である場合、接着剤層全体を透明にすることができる。その際、各部分が接合する界面が視認できないようにするためには、各部分を構成する材料の屈折率の差が1%以内であることが好ましい。具体的には、コンベックス体の第1の部分と第2の部分が隣接しており、第1の部分を構成する材料の屈折率と、第2の部分を構成する材料の屈折率の差が1%以内、0.9%以内、0.8%以内、0.7%以内、または0.6%以内である場合、一般的に、両部分の界面は視認できない。例えば、第1の部分をアクリル系透明樹脂から構成し、第2の部分をアクリル系透明接着剤から構成するようにすると、そのような要件を満たし、完全に透明な接着剤層を提供することが可能となる。なお、透明とは、例えばJIS K 7136に従って測定したヘーズが40%以下であることにより定義することができる。
図6は、図3に示した接着剤層の表面の微細構造に含まれる四角錐の一つを拡大した図である。(a)は俯瞰図であり、(b)は(a)中にX-X’で示した箇所の錐体の頂点を含む断面の図である。図6に例示されるように、錐体は、底面(1)と、底面の辺と頂点(2)とを結んでなる側面(3)とから構成され、底面(1)と側面(3)は角度θをなす。錐体の最上部を部分的に取り除いた図形である錐台でも同様に、底面と側面がなす角度θを定義することができる。図5に例示されるようなリブ形状においても、その断面について、底面と側面がなす角度θを定義することができる。一実施形態において、コンベックス体の側面と底面がなす角度θは、第1の部分の形成の容易さ、または接着フィルムのスライド性などの観点から、頂点又は最頂部を含む任意の断面において、8°以上、10°以上、15°以上、20°以上、または25°以上であってよい。また、ライナーからの接着フィルムの剥離をスムーズにする等の観点から、角度θは、頂点又は最頂部を含む任意の断面において、90°未満、85°以下、80°以下、または70°以下であってよい。
一実施形態において、コンベックス体の頂部に存在する第1の部分は、コンベックス体の全体の高さを100%とした場合、全体の高さの10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、または30%以上であって、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、または70%以下の高さを有する。なお、高さは、コンベックス体の底面の法線方向を基準とする。第1の部分とその下の部分との界面が底面と非平行な平面または曲面である場合は、底面の法線方向を基準として求めた界面の高さの平均値から算出する。第1の部分が比較的小さい場合、接着フィルムのスライド性が低減し、摩擦力が増加するが、一定以上の圧力を加えた際に発揮される接着力が向上する傾向にある。一方、第1の部分が比較的大きい場合は、その逆となる。
一実施形態において、後述する接着フィルムの製造方法において、第1の部分の形成を容易にする等の観点から、微細構造に含まれるコンベックス体は、隣接する二つのコンベックス体の中心間の最長距離が、300μm以下、260μm以下、220μm以下、180μm以下、140μm以下、または100μm以下であってよい。なお、コンベックス体の中心とは、錐体であれば頂点を、錐台であれば対応する錐体の頂点を、リブ形状であれば断面の最頂部を意味するものとする。
一実施形態において、後述する接着フィルムの製造方法において、第1の部分の形成を容易にする等の観点から、コンベックス体が錐体または錐台である場合、底面のサイズは、500μm以下、450μm以下、400μm以下、350μm以下、300μm以下、250μm以下、200μm以下、150μm以下、100μm以下、95μm以下、90μm以下、85μm以下、80μm以下、75μm以下、70μm以下、65μm以下、60μm以下、55μm以下、または50μm以下であってよい。ここで底面のサイズとは、底面の辺上の任意の2点を結んだ直線で最長のものの長さを意味する。コンベックス体がリブ形状である場合、リブ形状の底面のy軸方向のサイズは、500μm以下、450μm以下、400μm以下、350μm以下、300μm以下、250μm以下、200μm以下、150μm以下、100μm以下、95μm以下、90μm以下、85μm以下、80μm以下、75μm以下、70μm以下、65μm以下、60μm以下、55μm以下、または50μm以下であってよい。
一実施形態において、後述する接着フィルムの製造過程で不都合が生じたり、あるいは完成した接着フィルムからライナーを剥離したりするのが困難となったりすることを防ぐ等の観点から、コンベックス体の高さは、5μm以上であり、且つ100μm以下、95μm以下、90μm以下、85μm以下、80μm以下、75μm以下、70μm以下、65μm以下、60μm以下、55μm以下、または50μm以下であってよい。
一実施形態において、コンベックス体が錐体または錐台である場合、その数は、十分なスライド性をもたらす観点から、接着剤層の表面1mmあたり16個以上、25個以上、36個以上、49個以上、64個以上、81個以上、または100個以上存在することが好ましい。錐体または錐台の個数は、単位面積内に存在する錐体または錐台の中心の数に対応する。錐体または錐台の密度が高いことも、スライド性の向上に寄与する。なお、型をエッチング加工で形成したり、粘着剤の上に異物(非接着性のビーズや樹脂等)を滴下または配置したりするような従来技術では、このような密度の実現は困難である。
隣接する二つのコンベックス体の底面は、近接していてよい。例えば、コンベックス体が四角錐もしくは四角錐台、または六角錐もしくは六角錐台の場合、隣接する二つの錐体または錐台の底面は、一辺を共有していてもよく、あるいは隣接する辺同士が、例えば250μm以下、200μm以下、150μm以下、100μm以下、50μm以下、または10μm以下の幅で離れていてもよい。コンベックス体がリブ形状である場合、隣接する底面は辺を共有していてもよく、あるいは隣接する辺同士が、例えば250μm以下、200μm以下、150μm以下、100μm以下、50μm以下、または10μm以下の幅で離れていてもよい。なお、型をエッチング加工で形成したり、粘着剤の上に異物(非接着性のビーズや樹脂等)を滴下または配置したりするような従来技術では、このような近接配置の実現は困難である。
コンベックス体が錐台を含む場合、後述する接着フィルムの製造方法において、第1の部分の形成を容易にする等の観点から、錐台の頂面のサイズは、例えば50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、または10μm以下である。ここで頂面のサイズとは、円錐台の場合は頂面の直径を、角錐台またはその他の形状の錐台の場合は、頂面の辺上の任意の2点を結んだ直線で最長のものの長さを意味する。また、底面に対して頂面のサイズが過度に大きすぎないようにすることで、一定以上の圧力を加えた際に発揮される接着力が低減するのを防ぐことができる。
接着剤層の厚さは、用いる接着性材料や、接着フィルムの使用目的などに応じて任意に設定することができ、例えば15μm~10mmの範囲とすることができる。接着剤層の厚さは、コンベックス体の底面の法線方向を基準とし、コンベックス体の最も高い部分と、微細構造を有する表面とは反対側の基部の端部との距離を意味する。
接着剤層は、接着剤以外の追加的な材料、例えば接着性を調節する目的の中空または中実のガラススフェアなどの微粒子を含んでいてもよい。しかし、本開示の接着フィルムは、そのような追加的な材料を含まなくても所望の性質を達成することができる。一実施形態において、接着剤層は微粒子を含まない。
(基材層)
本開示の接着フィルムの基材層の材質は、真空圧空成形などの三次元成形技術により成形可能なものであれば特に限定されない。例えば、ABS、ASA、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、フッ素系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、若しくは塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、又はそれらの組み合わせを含む樹脂フィルムを好適に用いることができる。なお、基材層にアクリルフォームのような弾性を有する材料を用いると、微細構造中のコンベックス体が基材層に沈み込むことができるため、コンベックス体の第2の部分が接着対象により接触しやすくなり、接着フィルムの接着性が向上する場合がある。基材層の特性は、例えば可塑剤などを用いることにより適宜調節することができる。基材層と接着剤層の間に、プライマーなどを含む任意の層を有していてもよい。また、基材層の、接着剤層とは反対の表面には、さらに着色した樹脂や金属蒸着などにより形成された意匠層や、その意匠層を保護するカバー層など、任意の層が設けられていてもよい。基材層の厚さは、真空圧空成形などの三次元成形技術により成形可能であれば特に限定されないが、典型的には、10μm以上、25μm以上、50μm以上、又は100μm以上であり、300μm以下、600μm以下、900μm以下、又は1200μm以下である。
(ライナー層)
本開示の接着フィルムのライナー層の材質も、真空圧空成形などの三次元成形技術により成形可能なものであれば特に限定されず、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ABS樹脂、ASA樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などからなるフィルムを好適に用いることができる。ライナー層の表面には、必要に応じてシリコーン溶液の塗布などにより、接着剤層からの剥離を容易にするための剥離コーティングが施されていてもよい。なお、ここでいう「ライナー層」は、後述する接着フィルムの作製方法で言及するライナーの第1ライナー層及び第2ライナー層のうち、第1ライナー層に相当する。
[接着フィルムの作製方法]
本開示の接着フィルムの表面に微細構造を有する接着剤層は、一実施形態において、複数のコンベックス体を含む微細構造を有する型を準備する工程、その型の微細構造を転写して微細構造を有するライナーを作製する工程、微細構造を有するライナーに、非接着性または弱接着性材料を含む溶液を適用し、次いで固化させて、非接着性または弱接着性材料からなる第1の部分を形成する工程、および第1の部分が形成されたライナーに、強接着性材料またはその前駆体を適用して、強接着性材料からなる第2の部分を形成する工程を経て作製することができる。ライナーは、互いに剥離可能に積層された第1ライナー層と第2ライナー層とを有し、微細構造は第1ライナー層側に転写される。従って、この段階では、下から順に、第2ライナー層、第1ライナー層、非接着性または弱接着性材料からなる第1の部分、及び強接着性材料からなる第2の部分が積層されている。本開示の三次元成形された形状を有する接着フィルムは、その後にさらに、ライナーの微細構造を有する表面上に基材層を積層する工程、及び第2ライナー層を前記第1ライナー層から剥離し、次いで得られた基材層と第1ライナー層を含む積層体を三次元成形する工程を経て作製することができる。
(型の準備)
まず、表面に複数のコンベックス体を含む微細構造を有する型を準備する。図7は、型の一部の断面形状を模式的に示したものである。型(61)は、例えば金属または樹脂などの材料からなる平板を、ダイヤモンドカッターやレーザーを用いた方法により加工して作製することができる。型の表面に形成された微細構造は、接着剤層の表面に形成される微細構造と実質的に同一となる。両者の微細構造のサイズの差異は±5%以内、±3%以内、または±1%以内であることが好ましい。ただし、コンベックス体の高さに関しては、第2の部分の収縮や重力の影響により、それよりも大きな差異が生じる場合がある。なお、接着剤層の表面の微細構造のサイズは、ライナー(第1ライナー層)を剥離した直後、例えば5分以内、あるいは3分以内のものを意味する。
(ライナーの作製)
次に、ライナーに型を押し当てて、型の表面の微細構造をライナーに転写する。図8は、その手順を模式的に示したものである。ライナー(71)は、少なくとも、互いに剥離可能に積層された第1ライナー層(73)と第2ライナー層(74)とを有する。第1ライナー層(73)は、本開示の三次元成形された接着フィルムを対象に貼り付ける直前まで接着剤層の表面を覆うライナーとなる。一方、第2ライナー層(74)は、後述するように、接着フィルムの三次元成形よりも前に、第1ライナー層から剥離して取り除かれる。第1ライナー層と第2ライナー層との間には、プライマー層など、任意の追加の層が設けられていてもよい。ライナーが有する第1ライナー層と第2ライナー層のうち、微細構造は主に第1ライナー層に転写される。しかし、型の表面の微細構造と比べて第1ライナー層が非常に薄い場合などでは、第2ライナー層にもその微細構造の転写が及んでいてもよい。
第1ライナー層を接着剤層表面に残したまま第2ライナー層を剥離するためには、第1ライナー層と第2ライナー層の間の剥離接着力は、温度23℃、引張速度200mm/分の条件下で試験した際の180°剥離接着強度で、1N/25mm以下、0.5N/25mm以下、又は0.2N/25mm以下であることが好ましい。なお、ここでいう「第1ライナー層と第2ライナー層の間の剥離接着力」とは、第1ライナー層を把持して第2ライナー層から剥離させる際の180°剥離接着強度を測定した場合の値を意味する。第1ライナー層と第2ライナー層の間の剥離接着力は、型の微細構造を転写する工程の前後で実質的に変化することはない。
ライナーは、全体として、微細構造を転写可能であり、かつそれを保持可能であるものである必要がある。第2ライナー層は、後述するように三次元成形を行う前に除去されるため、上述の要件を充足できるものであればよく、その材質を比較的自由に選択できる。第2ライナー層は、例えば鉛筆硬度が8B以上、7B以上、又は6B以上であるか、曲げ剛性が50mgf以上、100mgf以上、又は150mgf以上であると、第1ライナー層への微細構造の転写が効率よく行えるため好ましい。第2ライナー層の材質の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)といったポリエステル樹脂などの樹脂材料や、紙などのセルロース材料など、又はそれらを組み合わせた材料が挙げられる。一方、第1ライナー層は、接着フィルムのライナーについて既に述べたように、真空圧空成形などの三次元成形技術により成形可能なものであれば特に限定されず、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ABS樹脂、ASA樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などからなるフィルムを好適に用いることができる。第1ライナー層(73)の、第2ライナー層(74)と反対側の表面には、シリコーンなどにより剥離コーティング(72)を施して剥離表面を設けていてもよい。第1ライナー層は、三次元成形可能な性質を有する必要があるため、比較的柔らかい材料から構成されていなければならず、それ単独では、微細構造を付与することが困難であったり、あるいは接着層形成時の溶液の適用および乾燥を経て変形してしまったりする。しかし、そのような第1ライナー層を、比較的硬い材料から構成された第2ライナー層と積層することにより、ライナーへの微細構造の転写や各種溶液の適用と乾燥が可能となる。
ライナー(71)への微細構造の転写は、例えば、ライナーの表面に型を当て、ヒートプレスすることにより行うことができる。転写により、ライナーの表面には型が有する微細構造に対して相補的な構造、すなわち、コンベックス体に対応する形の凹部を複数有する構造が形成される。微細構造は、少なくとも第1ライナー層(73)の表面に転写され、場合により、第2ライナー層(74)の、第1ライナー層(73)との界面にも及んでいてもよい。
(接着層:第1の部分の形成)
次に、ライナーの表面に形成された微細構造に、非接着性または弱接着性材料を含む溶液を塗布またはスプレーなどにより適用し、余剰な溶液をドクターブレードまたはスキージーにより掻き落とす。図9は、ライナーの表面に形成された微細構造に、非接着性または弱接着性材料を含む溶液を適用し、余剰な溶液を掻き落とす手順を模式的に示したものである。ライナーの表面に形成された微細構造において、凹部と凹部との間隔が近接していると、溶液を掻き落とし、溶液がライナーの表面に形成された凹部のそれぞれに貯留した状態とし易くなるため好ましい。次いで、それを乾燥させて溶媒を除去すると、それぞれの凹部の最下部に、第1の部分となる固体の非接着性または弱接着性材料が配置されたライナーが得られる。
図10は、凹部に貯留した溶液(81)が乾燥して、第1の部分(4)を構成する固体の非接着性または弱接着性材料となる様子を模式的に示したものである。乾燥後、必要に応じて、紫外線や電子線などを照射して非接着性または弱接着性材料を硬化させても良い。一実施形態において、図10に示されるように、第1の部分となる固体の非接着性または弱接着性材料は、型の最下部から途中までを占め、かつ乾燥させる際の型の置き方により定まる水平面と略平行な面を上部側に有する。なお、用いた非接着性または弱接着性材料や溶媒などによっては、第1の部分となる固体の非接着性または弱接着性材料は、球状になる場合もある。ライナーを作製する際に用いた型において、コンベックス体の側面と底面がなす角度θが小さすぎる場合、あるいはコンベックス体の底面間の距離が大きすぎる場合、非接着性または弱接着性材料を含む溶液を凹部の最下部に落とし込むことが難しくなり、それにより第1の部分の形成が困難になる場合がある。溶液は、例えばポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート、またはセルロース、シリコーン、アミン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ塩化ビニルなどの樹脂を適切な溶媒に溶解および/または分散させたものである。溶液に用いる溶媒は、上述した溶液の掻き落としにも影響を与える場合がある。例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの溶媒を用いる場合、型におけるコンベックス体の底面間の距離は、より近接していたほうが好ましい(例えば50μm以下)。
(接着層:第2の部分の形成)
第1の部分が形成されたライナーに、強接着性材料またはその前駆体を適用することにより、第2の部分を形成し、それにより接着剤層を形成する。第1の部分と第2の部分の間に、それ以外の任意の部分が存在する場合には、第2の部分の形成は、第1の部分を形成後、その任意の部分を形成した後に行う。強接着性材料の適用は、種々の方法で行うことができる。例えば、既にシート状などに成型した強接着性材料をライナーの微細構造面に貼り付け、熱および/または圧力をかけて、あるいは常温常圧下で一定時間以上静置することにより、強接着性材料を流動させてライナーの表面の凹部に入り込ませ、凹部の最下部にある第1の部分と接合させることにより行うことができる。また、他の例では、紫外線や電子線などのエネルギー線の照射により硬化して強接着性材料となる前駆体を、ライナーの微細構造面に塗布して凹部に入り込ませ、次いでエネルギー線を照射することにより行うことができる。また、他の例では、強接着性材料の溶液を、ライナーの微細構造面に塗布して凹部に入り込ませ、次いで必要に応じて加熱し、乾燥させて溶媒を除去することにより行うことができる。
(基材層の積層)
上述の工程に沿って得られる、ライナーの微細構造面上に第1の部分と第2の部分を有する接着剤層が形成された物品の上に、さらに基材層を積層すると、片面に接着剤面を備え、その接着剤面がライナーに覆われた接着シートが得られる。図11は、第1の部分が形成されたライナーに、強接着性材料またはその前駆体(101)を適用し、さらに基材層(102)を積層する手順を模式的に示したものである。
(第2ライナー層の剥離と三次元形成)
得られた接着シートのライナーは、互いに剥離可能に積層された第1ライナー層と第2ライナー層とを有する。そのうち、第2ライナー層を第1ライナー層から剥離すると、下から順に、第1ライナー層、非接着性または弱接着性材料からなる第1の部分、強接着性材料からなる第2の部分、及び基材層が積層された接着シートが得られる。図12は、ライナーから第2ライナー層のみを剥離する手順を模式的に示した図である。第2ライナー層を剥離した後の接着シートは、三次元成形可能な材質からなる基材層と第1ライナー層とが接着剤層を挟み込んだ構造を有するため、真空圧空成形などの三次元成形技術により、所望の三次元形状に成形することができる。
図13は真空圧空成形機による三次元成形の手順を模式的に示した図である。図13(A)において、真空圧空成形機(120)の下部真空室(121)、上部真空室(122)は大気圧に開放されており、間に接着フィルム(110)がセットされている。下部真空室(121)には型(124)が昇降台(125)にセットされている。図13(B)では、下部真空室(121)、上部真空室(122)を閉鎖し、両方とも真空引きして、内部を真空(例えば-1MPa)にする。次いで、図13(C)のように、接着フィルム(110)を加熱しつつ、昇降台(125)で型(124)を上部真空室(122)まで押し上げると、接着フィルム(110)は型(124)に沿って延びる。図13(D)のように、接着フィルム(110)を加熱した上で、上部真空室(122)内を適当な圧力(例えば2MPa)に加圧すると、接着フィルム(110)は型(124)の表面に押圧され、さらに表面に沿って延びて、表面に密着する。このとき、接着フィルム(110)は型(124)の側面はもちろん裏側まで廻り込んで、表面をきれいに被覆し、皺は見られない。しかし、接着フィルム(110)の接着面はライナーにより覆われているため、型(124)から容易に剥がすことができる。接着フィルム(110)を十分冷却された後に型(124)から取り外すことにより、三次元成形された接着フィルムが得られる。
[接着フィルムの特性]
本開示の得られた接着フィルムをライナーから剥離して接着対象に接触させると、感圧接着剤面にかかる圧力が低い間は、第1の部分が接着フィルムを支え、第2の部分は接着対象に全くまたはわずかしか接触しない。これにより、接着フィルムは低圧力下ではスライド性を有する。一方、一定以上の圧力がかかると、第2の部分自体が変形したり、第1の部分が変形したり、あるいは第1の部分が第2の部分内に取り込まれたりするなどにより、第2の部分は接着対象に接触し、これにより接着フィルムは接着力を発揮する。図14は、ライナーから剥離した接着フィルムを被着体に接着させた際の微細構造面の挙動を模式的に示したものである。
本開示の接着フィルムは、または低圧力下、例えば、接着剤層の表面にかかる圧力が100g/cm以下、50g/cm以下、10g/cm、または5g/cm以下の場合において、十分なスライド性を有する。好ましい実施形態において、本開示の接着フィルムは、鋼材(例えばSS400材、クロムメッキなどのメッキを有していてもよい)などの金属製の滑り片を用いる以外はJIS K 7125に従って試験した際の動摩擦係数(μ)が1.10以下、1.05以下、1.00以下、0.95以下、または0.90以下である。そのような低い摩擦力であれば、接着フィルムを接着対象に軽く接触させた状態で容易にスライドさせて位置合わせをすることができる。
本開示の接着フィルムは、接着剤層の表面にまたは比較的高い圧力をかけた際に、接着対象に対して十分な接着力を発揮する。一実施形態において、比較的高い圧力とは、JIS Z 0237の10.2.4に規定される圧着装置を用いて、2kgのローラーを300mm/分の速さで一往復させることによりかかる圧力に相当する圧力と定義することができる。別の実施形態では、比較的高い圧力とは、200g/cm以上、300g/cm以上、400g/cm以上、500g/cm以上、600g/cm以上、または700g/cm以上の圧力と定義することができる。好ましい実施態様において、本開示の接着フィルムは、メラミン樹脂などの材料に対して圧着させた際、温度23℃、引張速度200mm/分の条件下で試験した際の180°剥離接着強度が、接着48時間後において1.0N/10mm以上、2.0N/10mm以上、3.0N/10mm以上、または4.0N/10mm以上である。そのような接着力であれば、接着フィルムを貼り付けた後に剥がれなどが生じにくい。
本開示の接着フィルムは、接着剤層の表面に微細構造を有するため、接着対象に貼り付けた際に接着面に気泡を取り込みにくく、また気泡を取り込んでしまっても容易に逃がすことができる。本明細書では、そのような性質を「エア抜け性」と称する。一実施形態において、接着剤層の表面は、上述した微細構造とは別に、エア抜け性を向上させるための溝状の追加的構造をさらに有していてもよい。
本開示の接着フィルムは、一実施形態において、ライナー層を除去した後の厚さが0.1mm以上、0.2mm以上、又は0.3mm以上であって、10.0mm以下、8.0mm以下、5.0mm以下、2.0mm以下、1.8mm以下、又は1.6mm以下である。また、本開示の接着フィルムは、一実施形態において、ライナー層を除去した後の曲げ剛性が200mgf以上、250mgf以上、又は300mgf以上であって、85000mgf以下、68000mgf以下、42500mgf以下、17000mgf以下、16000mgf以下、または15000mgf以下である。
[接着フィルムの使用態様]
本開示の接着フィルムは、予め接着対象に対応する三次元形状を有する型を用いて成形しておき、それをライナー(第1ライナー層)が付着した状態で、接着対象の近傍まで搬送する。そして、接着を実施する直前にライナーを剥離し、三次元形状が一致するよう位置あわせを行いつつ、接着フィルムを対象にはめ込む。なお、本明細書において「はめ込む」とは、典型的には、接着対象に対応する三次元形状を有する接着フィルムを、接着対象の表面上で接着剤層の表面をスライドさせながら、接着対象の形状に沿って移動させることを含む。接着フィルムの接着層は、低圧力下では接着力を発揮しないので、位置あわせやはめ込みは、対象の表面を滑らせながら容易に行うことができる。そして、正しい位置に接着フィルムを配置した後に、接着フィルム表面をスキージーで擦るなどして強い圧力をかけると、接着力が発揮され、一定以上の強度をもって接着フィルムを対象に貼り付けることができる。図15に、ライナーを剥離した接着フィルムを被着体にはめ込む手順を模式的に示す。
本開示は、別の実施形態において、剥離表面に微細構造を有するライナーと、そのライナーの微細構造と相補的な微細構造を接着剤層の表面に有する接着フィルムとを含む物品に関する。また、本開示は、別の実施態様において、剥離表面に微細構造を有するライナーであって、微細構造が複数のコンベックス体からなる凹部を含むものに関する。剥離表面に微細構造を有するライナーは、その凹部の最下部に、非接着性または弱接着性材料が配置されていてもよい。また、本開示は、別の実施態様において、そのようなライナーを製造するための型であって、表面に複数のコンベックス体を含む微細構造を有するものに関する。微細構造などの詳細については、上述のとおりである。
以下、実施例を用いて本開示をより詳細に説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
[評価方法]
(スライド性)
約2.5cm×約7.5cmのサイズにカットし、ライナーを剥離したサンプルの一端を把持し、感圧接着剤面が接触するように、水平に置いた平らなガラス板の上に垂らしながら置いた。その状態を約10秒間維持した後、サンプルの端を持ち上げて水平方向に引っ張った。その際の挙動を以下の基準により評価し、評点1以上をスライド性ありと判断した。
3:サンプルは自由に滑った
2:若干の抵抗があるものの、サンプルは容易に滑った
1:抵抗が強く、サンプルを滑らせるのがやや困難だった
0:サンプルを滑らせることができなかった
(180°剥離接着強度)
幅10mmおよび長さ100mmにカットしたサンプルを用意した。ライナーを剥離し、表面にメラミン塗装が施された板に、感圧接着剤面が接触するように、スキージーを用いて圧着した。常温下で48時間静置した後、温度23℃、引張速度200mm/分の条件下で180°剥離試験を行った。
(第1の部分のサイズ)
ライナーを剥離したサンプルの感圧接着剤面を高精度の顕微鏡で観察し、感圧接着剤面に形成された正四角錐または正四角錐台構造について、最も明確な像が観察可能なものを一つ選択し、全体の高さ(法線方向)、全体の底面サイズ、および第1の部分の底面サイズを1点測定した。測定したデータに基づいて、第1の部分の高さが全体の高さに対して占める割合を算出した。
(動摩擦係数に基づくスライド性評価)
滑り片以外はJIS K 7125に従って測定した。幅80mmおよび長さ150mmにカットしたサンプルを用意した。スリップ/剥離試験機(TSH-1202-50N,IMASS社)のテーブルの上に、ライナーを剥離したサンプルを、感圧接着剤面が上になるように載せ、さらにその上に200gの一般構造圧延鋼板(SS400、クロムメッキ仕上げ)を滑り片として載せた。滑り片を1000mm/分の速度で引張り、ロードセルによって動摩擦力(F)を測定した。測定結果から、動摩擦係数(μ)を下記の式に従って算出した。
μ=F/F
:動摩擦力(N)
:法線力(N)(=1.96N)
(曲げ剛性測定)
サンプルのMD方向が長さ(L)となるよう、サンプルから試験片を所定の幅(W)と長さ(L)で切り出した。試験片をガーレー剛軟度試験機にセットし、試験片のMD方向について、試験片が振子から離れるときの目盛(mgf)を測定した。測定は、必要であれば試験片に応じて荷重を変え、試験片の両面についてそれぞれ3回ずつ行い、平均値を算出した。得られた平均値と、試験片のサイズ及び荷重の条件から、試験片の両面について曲げ剛性値を算出し、その両面の平均を試験片の曲げ剛性値(mgf)として採用した。
(鉛筆硬度測定)
JIS K 5600-5-4、第5部-第4節:引っかき硬度(鉛筆法)に従って測定を行った。鉛筆の芯にかかる荷重は750g、速度は60mm/分とした。
[サンプル製造および評価]
(製造例1)
(1)微細構造を有する型の作製
樹脂または金属の平板を加工することにより、均等に配置された複数の正四角錐または正四角錐台構造を有する型を作製した。樹脂の場合にはレーザー加工を、金属の場合にはダイヤモンドカッターによる加工を、それぞれ行った。各型における正四角錐または正四角錐台構造のサイズを表1に示す。なお、サイズは型の表面を高精度の顕微鏡で観察し、最も明確な像が観察可能な正四角錐または正四角錐台構造を一つ選択して測定した。
Figure 0007516017000001
(2)微細構造を有するライナーの作製
厚さ75μmのポリカーボネート(PC)シートの片面に、厚さ33μmの低密度ポリエチレン(LDPE)シートが積層されたベースフィルムを用意した。PCシートとLDPEシートの間の180°剥離接着力は、温度23℃、引張速度200mm/分の条件下で測定して0.09N/25mmであった。また、PCシートの鉛筆硬度は6B、曲げ剛性は154mgfであった。ベースフィルムのLDPEシート側表面に、シリコーン溶液(KS-3601(信越化学工業)を含むトルエン溶液)を塗布した後に乾燥させて、剥離表面が設けられているベースライナーを作成した。ベースライナーの剥離表面に型を当て、ヒートプレスにより型の微細構造をベースライナーに転写し、微細構造を有するライナーを作製した。ライナー上の微細構造は、型が有する微細構造と実質的に同一のサイズを有していた。
(3)第1の部分の形成
ライナーの微細構造面上に水系ポリウレタン溶液(PUR-1:レザミンD-6260(大日精化工業)を主成分とする溶液、又はPUR-2:レザミンD6260(大日精化工業)、イソプロパノール及び蒸留水を含む溶液)を塗布した後、ドクターブレードまたはスキージーにより余剰な溶液を掻き落とした。80~100℃のオーブンで加熱して、溶液に含まれる水、アルコールもしくは他の有機溶媒、またはそれらの混合物からなる溶媒を揮発させることにより、固体のウレタン樹脂が微細構造の正四角錐または正四角錐台構造の底部に配置されるようにした。
(4)第2の部分(接着剤)の形成
固体のポリウレタン樹脂が、微細構造の正四角錐または正四角錐台構造の底部に配置されたライナーの微細構造面に、熱硬化型アクリル系接着剤前駆体(メチルエチルケトンを溶媒として含有)を塗布した後、オーブンに入れて乾燥させた。形成された接着剤層の厚さは約35μmであった。
(5)トップフィルムの作製
厚さ300μmの黒色のABS樹脂フィルム(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂フィルム、JSR)、厚さ300μmの黒色のASA樹脂フィルム(アクリレート/スチレン/アクリロニトリル樹脂フィルム、JSR)、又は厚さ90μmのPP樹脂フィルム(表面がコロナ処理されたポリプロピレン樹脂フィルム、ダイアプラスフィルム)を用意し、その一方の表面にプライマー溶液(NK-350(日本触媒)を含むトルエン/イソプロパノール溶液)を塗布し乾燥させた。樹脂フィルムのもう一方の表面には、着色した透明コーティング樹脂溶液を塗布し乾燥させた。
(6)トップフィルムの積層
工程(4)で準備した第1及び第2の部分が形成された微細構造を有するライナーの接着剤側に、工程(5)で作製したトップフィルムを、プライマー溶液を塗布した面が接するように積層して接着させ、積層体を得た。
(7)三次元成形
工程(6)で得られた積層体からポリカーボネートシートを剥離し、それにより現れたLDPEシート表面が、図15に示すような、半円筒状(かまぼこ状)の三次元形状を有する型に接触するように真空圧空成形装置(DVT:Dual Vacuum Thermoforming)にセットし、95℃で成形した。型を取り外し、三次元成形された接着フィルムを得た。
(製造例2)
製造例1の工程(2)において、ベースフィルムとして、厚さ51μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートの片面に、厚さ32μmの低密度ポリエチレン(LDPE)シートが積層されたものを用いた以外は、製造例1と同様とした。ベースフィルムの、PETシートとLDPEシートの間の180°剥離接着力は、温度23℃、引張速度200mm/分の条件下で測定して0.13N/25mmであった。また、PETシートの鉛筆硬度はB、曲げ剛性は222mgfであった。このベースフィルムを用いた場合でも、ライナー上の微細構造は、型が有する微細構造と実質的に同一のサイズを有していた。
製造例1又は2に従って作製した実施例1~13の各接着フィルムの構成を、表2に示す。
Figure 0007516017000002
(曲げ剛性評価)
工程(7)に従って三次元成形を行い、さらにライナーを剥離した後の実施例1、5または6の接着フィルムから試験片を切り出し、曲げ剛性の評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 0007516017000003
(スライド性評価)
実施例3および9の接着フィルムについて、ライナーを剥離した後に、動摩擦係数に基づくスライド性評価を行った。実施例9については、三次元成形を行う前の接着フィルムについても動摩擦係数を測定した。結果を表4に示す。
Figure 0007516017000004
(作業性評価)
実施例1~13の接着フィルムからLDPEシートを剥離し、成形に用いた型と同じ半円筒状(かまぼこ状)の三次元形状を有する被着体に載せた。接着フィルムはスムーズに被着体の形状にフィットした。また、被着体に押し付ける力を加えない限り、接着フィルムは比較的容易に被着体から取り外すことが可能であった。しかし、スキージーを用いて、加飾フィルムの上から被着体に押し付ける力を加えたところ、接着フィルムは被着体に接着し、容易には取り外せなくなった。なお、その際に接着フィルムと被着体の間に気泡が残ることはなかった。
(比較製造例1)
製造例1の工程(5)と同様にしてトップフィルムを作製した。その一方の表面に製造例1の工程(4)で用いたものと同じ熱硬化型アクリル系接着剤前駆体を塗布し乾燥させることにより、微細構造を有しない接着層を有する接着フィルムを得た。接着層の表面にLDPEシートを積層した後、製造例1の工程(7)と同様にして、接着フィルムを三次元成形した。得られた接着フィルムの作業性評価を行ったところ、接着フィルムは被着体に接触した箇所から接着して、被着体の形状にスムーズに沿わせることができず、接着フィルムと被着体との間に大きな空気溜まりが発生した。
(比較製造例2)
接着面に、セラミックビーズを含有する非接着性の突起物を約300μm間隔で、エア抜け性の向上を目的とした溝を約200μm間隔でそれぞれ有する、従来のコントロールタック接着フィルムを用意した。なお、突起物は、界面を介して互いに接合した2以上の部分を有するようなものではなかった。接着面にLDPEフィルムを積層した後、製造例1の工程(7)と同様に三次元成形した。得られた接着フィルムの作業性評価を行ったところ、接着フィルムを被着体にスムーズに接着させることができず、接着フィルムと被着体との間に容易に視認可能な気泡の噛み込みが発生した。
(比較製造例3)
製造例1の工程(7)において、積層体からポリカーボネートシートを剥離せずに、真空熱成形装置を用いた三次元成形を行った。しかし、フィルムは型に沿った形状とはならず、広域にわたってシワが発生し、所望の成形は行えなかった。ベースフィルムを変更した製造例2のフィルムについても、PETシートを剥離せずに三次元成形を試みたが、やはり同様に所望の成形は行えなかった。
(比較製造例4)
製造例1の工程(2)において、ベースフィルムとして、ポリカーボネートにLDPEシートが積層されたシートに代えて、LDPEのみからなるシートを用いて、微細構造を有するライナーの作成を試みた。しかし、工程(4)で接着剤を乾燥させた後に、ライナーに多数のシワの発生が観察された。そのライナーを用いて工程(7)の三次元成形まで行し、得られた接着フィルムの作業性評価を行ったが、接着フィルム表面にシワが生じ、被着体にきれいに接着させることができなかった。
(参考製造例1)
製造例1の工程(2)において、ベースフィルムとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)または紙からなるシートの両面にポリエチレン(PE)からなる層が設けられおり、両者が容易に剥離されない強度で接着されているものを用いたこと、及び工程(7)の三次元成形を行わなかったこと以外は、製造例1と同様とした。一部については、型の微細構造を転写する工程、及び第1の部分の形成する工程も省略した。参考製造例に従って作製した参考例1~10の各接着フィルムの構成とスライド性評価の結果を、表5に示す。
Figure 0007516017000005
(参考製造例2)
型ID:Fの型を用いて、参考製造例1と同様に接着フィルムを製造した。ただし、第1の部分を形成する際、ポリウレタン溶液を繰り返し塗布するか、またはポリウレタン溶液の固形分を調整することにより、第1の部分の大きさを調節した。得られた参考例1~18の接着フィルムと、その他の参考例19~21の接着フィルムについて、第1の部分のサイズ、スライド性、および剥離強度を評価した。結果を表6に示す。
Figure 0007516017000006
1:底面
2:頂点
3:側面
4:第1の部分
5:第2の部分
31:接着剤層表面
32:接着剤層基部
61:型
71:ライナー
72:剥離コーティング
73:第1ライナー層
74:第2ライナー層
81:非接着性または弱接着性材料を含む溶液
82:ドクターブレードまたはスキージー
101:強接着性材料またはその前駆体
102:基材層
103:ローラー
110:接着フィルム
111:被着体
120:真空圧空成形機
121:下部真空室
122:上部真空室
124:型
125:昇降台
127:仕切り

Claims (13)

  1. 基材層と、
    表面に微細構造を有する接着剤層と、
    前記接着剤層を覆うライナー層と
    を含む、着フィルムであって、
    前記接着フィルムは、真空成形により型に沿って延伸を伴って三次元成形された形状を有し、それにより延伸率の異なる部分を有し、
    前記接着剤層の微細構造は、複数のコンベックス体を含み、
    前記コンベックス体は、界面を介して互いに接合した2以上の部分を有し、前記コンベックス体の頂部に存在する第1の部分は、非接着性または弱接着性材料からなり、前記第1の部分よりも下側に存在する第2の部分は、強接着性材料からなる、接着フィルム。
  2. 前記コンベックス体の側面と底面がなす角度θが8°以上である、請求項1に記載の接着フィルム。
  3. 前記コンベックス体の高さを100%とした場合、前記第1の部分の高さが、前記コンベックス体の10%~90%の範囲である、請求項1または2に記載の接着フィルム。
  4. 前記微構造において、隣接する二つのコンベックス体の中心間の最長距離が300μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の接着フィルム。
  5. 前記コンベックス体が錐体又は錐台であり、前記接着剤層の表面1mmあたり、前記錐体または錐台が16個以上存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の接着フィルム。
  6. 前記コンベックス体の第1の部分が、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート、セルロース、シリコーン、アミン系樹脂、フッ素系樹脂、またはポリ塩化ビニルを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の接着フィルム。
  7. 前記コンベックス体の第1の部分が、常温下、1Hzの周波数で測定して得られた貯蔵弾性率(G’)が3×10Pa以上である材料を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の接着フィルム。
  8. 金属製の滑り片をそのまま用いた以外はJIS K 7125に従って試験した際の動的摩擦係数が1.10以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の接着フィルム。
  9. 温度23℃、引張速度200mm/分の条件下で試験した際の180°剥離接着強度が、接着48時間後において1.0N/10mm以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の接着フィルム。
  10. 表面に微細構造を有する接着剤層と、
    前記接着剤層を覆う第1ライナー層と、
    前記第1ライナー層を覆う第2ライナー層と
    を有し、
    前記第1ライナー層と前記第2ライナー層の間の剥離接着力は、温度23℃、引張速度200mm/分の条件下で試験した際の180°剥離接着強度で、1N/25mm以下であり、
    前記接着剤層の微細構造は、複数のコンベックス体を含み、
    前記コンベックス体は、界面を介して互いに接合した2以上の部分を有し、前記コンベックス体の頂部に存在する第1の部分は、非接着性または弱接着性材料からなり、前記第1の部分よりも下側に存在する第2の部分は、強接着性材料からなる、接着シート。
  11. 前記第2ライナー層の硬度が前記第1ライナー層の硬度よりも高い、請求項10に記載の接着シート。
  12. 前記第2ライナー層の鉛筆硬度が8B以上である、請求項10又は11に記載の接着シート。
  13. 三次元成形された形状を有する接着フィルムの製造方法であって、
    複数のコンベックス体を含む微細構造を有する型を準備する工程、
    前記型の微細構造を、互いに剥離可能に積層された第1ライナー層と第2ライナー層を有するライナーの、前記第1ライナー層側に転写して、微細構造を有するライナーを作製する工程、
    前記ライナーの微細構造を有する表面に、非接着性または弱接着性材料を含む溶液を適用し、次いで固化させて、非接着性または弱接着性材料からなる第1の部分を形成する工程、
    前記第1の部分が形成されたライナーの表面に、強接着性材料またはその前駆体を適用して、強接着性材料からなる第2の部分を形成する工程、
    前記第2の部分が形成されたライナーの基材層を積層する工程、
    前記第2ライナー層を前記第1ライナー層から剥離し、次いで得られた基材層と第1ライナー層を含む積層体を三次元成形する工程、
    を含む、方法。
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