JP7514442B2 - ウィック、蒸発器、ループ型ヒートパイプ、冷却装置、電子機器及びウィック製造方法 - Google Patents

ウィック、蒸発器、ループ型ヒートパイプ、冷却装置、電子機器及びウィック製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ウィック、蒸発器、ループ型ヒートパイプ、冷却装置、電子機器及びウィック製造方法に関するものである。
従来、液相の作動流体を気相へと変化させる蒸発器の内部に設けられ、液相の作動流体が浸透する多孔質弾性体のウィックが知られている。
特許文献1には、上記ウィックとして、多孔質弾性体たる発泡シリコーンゴムを用いたものが記載されている。また、特許文献1には、作動流体として、水を用いることが記載されている。
しかしながら、作動流体として水、又は親水性の流体を用いた場合において、蒸発器の冷却効率に改善の余地があった。
上述した課題を解決するために、本発明は、液相の作動流体を気相へと変化させる蒸発器の内部に設けられ、前記液相の作動流体が浸透する多孔質体のウィックであって、前記多孔質体の外表面および内部の空隙の表面に親水処理を施し、前記多孔質体の空隙の表面の元素組成において、酸素の比率最も高くしたことを特徴とするものである。
本発明によれば、蒸発器の冷却効率を高めることができる。
本実施形態に係るループ型ヒートパイプの一例を示した概略説明図。 図1における破線で示すa―a断面で切断したときの仮想的な断面を示す図。 従来の一般的なループ型ヒートパイプの概略説明図。 本実施形態に係る電子機器に備えるループ型ヒートパイプの別例を示した概要説明図。 冷却性能試験に用いる実施例、及び比較例のサンプルの諸元、及び試験結果の説明図。 実施例1のウィックのサンプルをレーザー顕微鏡で気泡状態を観察(撮影)した図。 気泡径分布の一例を示すグラフ。 実施例1のウィックのサンプルを走査型電子顕微鏡で観察した画像の一例を示す図。 実施例1に用いるウィックの代表的なサンプルの表面元素をX線光電子分光法(XPS)で解析したときのSi(ケイ素):C(炭素):O(酸素)の比率を現した図。
以下、本発明を適用したウィックを内部に設けた蒸発器と、凝縮機とを備えた冷却手段として、ループ型ヒートパイプ(以下、ループ型ヒートパイプ1という)の一実施形態について、適宜、図を用いて説明する。
ここで、本実施形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付す。また、同一符号を付した構成要素について、一度説明した後では、その説明を適宜、省略する。
図1は、本実施形態に係るループ型ヒートパイプ1の一例を示した概略説明図であり、図2は、図1における破線で示すa―a断面で切断したときの仮想的な断面を示す図である。
図1に示すループ型ヒートパイプ1は、内部に凝縮性流体からなる作動流体が封入されており、次のようなものを備えている。発熱部から熱を吸収して作動流体を液相から気相へと蒸発させる蒸発部2と、蒸発部2から導かれた気相の作動流体を液相へと凝縮させる凝縮部3を備えている。また、蒸発部2から凝縮部3へ気相の作動流体を流通させる蒸気管4と、凝縮部3から蒸発部2へ液相の作動流体を流通させる液管5も備えている。
蒸発部2は、内部にウィック6が収容された受熱部7と、液相の作動流体を貯留するリザーバ部8とで構成されている。
受熱部7には蒸気管4の一端部が連結され、リザーバ部8には液管5の一端部が連結されている。また、蒸気管4と液管5のぞれぞれの他端部は凝縮部3に連結されている。凝縮部3は、外周面にアルミニウム製の薄板状のフィン32が多数設けられたステンレス製のパイプ31で構成されている。
ウィック6は多孔質体である。また、ウィック6の図1図中の底面には、蒸気管4側の端部から反対側の方向に渡って複数のグルーブ(溝)10が設けられている。
複数のグルーブ10は、図1における破線で示すa―a断面で切断したときの仮想的な断面を示す図2のように、ウィック6の底部に等間隔に設けられている。ここで、図2においては、グルーブ10の寸法は実寸より大きな比率で描かれている。また、ウィック6の厚みは、蒸発部2の受熱部7の筐体の内寸よりも若干大きい寸法に設定されている。
上述したようにウィック6の厚みを設定することで、受熱部7内にウィック6が収容された状態では、ウィック6が受熱部7の内面に対して密着する。また、ウィック6が受熱部7に対して密着していることで、発熱部の熱が受熱部7の筐体を通してウィック6に効率良く伝達される。一方、グルーブ10が設けられた部分においては、受熱部7の筐体との間に空間部が形成されている。
ウィック6は多孔質体、つまり多孔質材料で構成されているため、リザーバ部8内に貯留される液相の作動流体は毛細管現象によってウィック6内に浸透する。この毛細管現象によってウィック6は液相の作動流体を凝縮部3から蒸発部2へ送るポンプの役割も果たす。
作動流体としては、水、アルコール、アセトン、代替フロン等の凝縮性流体が用いられる。特に、潜熱の高い水を作動流体として用いることで、高い冷却性能が得られ、好ましい。また、作動流体はウィック6に浸透しやすいようにウィック6との濡れ性が良好なものが良い。濡れ性はウィック6と作動流体との接触角で測定することができる。接触角が40[°]以上であると、作動流体がウィック6に浸透することができないため、接触角は40[°]未満である必要がある。接触角が10[°]未満であると、毛細管現象がさらに効果的になり、より好ましい。
本実施形態に係るループ型ヒートパイプ1においては、発熱部からの熱が蒸発部2(受熱部7)の筐体を通してウィック6内の液相の作動流体に伝達されると、その熱で作動流体が蒸発して気相に変化する。蒸発して気相に変化した作動流体はグルーブ10を通って蒸気管4へと送られる。そして、気相の作動流体は蒸気管4を通って凝縮部3へと送られる。
凝縮部3においては、内部(パイプ31)を通過する作動流体の熱がフィン32を介して外部に放出されることで、作動流体の温度が低下して凝縮し、気相から液相へと変化する。液相に変化した作動流体は液管5を通って蒸発部2へ移動し、毛細管現象によってリザーバ部8から再び受熱部7の内部に設けたウィック6内に浸透する。このような作動流体の循環が行われることで、発熱部の熱が連続して外部に放出され、冷却対象が冷却される。
ここで、従来の蒸発器の内部にウィックが設けられたループ型ヒートパイプの問題に関して、図を用いて説明しておく。
図3は、従来の一般的なループ型ヒートパイプ100の概略説明図である。
一般的に、ループ型ヒートパイプ100は、図3に示すように、外部から受熱して作動流体を液相から気相に蒸発させる蒸発部102と、外部に放熱して作動流体を気相から液相に凝縮させる凝縮部103を備えている。また、蒸発部102から凝縮部103へ気相の作動流体を流通させる蒸気管104と、凝縮部103から蒸発部102へ液相の作動流体を流通させる液管105も備えている。
蒸発部102の内部には、多孔質体(多孔質材)で構成されたウィック106が収容されており、液管105から送られた液相の作動流体がウィック106の微細な孔を毛細管現象によって浸透してウィック106の外表面に染み出す。このとき、蒸発部102と接触する発熱部(冷却対象)からの熱が蒸発部102の筐体を通してウィック106に伝達されることにより、その熱で作動流体が蒸発して気相に変化する。そして、気相に変化した作動流体は蒸気管104を通って凝縮部103へ移動する。
凝縮部103においては、作動流体の熱が外部に放出されることで、作動流体の温度が低下し液相へと変化する。そして、液相に変化した作動流体は液管105を通って蒸発部102へ移動し、再びウィック106内に浸透する。このように、ループ型ヒートパイプ100においては、作動流体の相変化を利用し、作動流体を循環させ、蒸発部102で吸収した熱を凝縮部103へと移送することで、冷却対象を効率良く冷却することができる。
ここで、冷却効率を良くするためには蒸発部102との密着性を確保し、ウィック106の毛細管力で作動流体を循環させ、且つ圧力損失を最小限にするためにウィック106には高い浸透性が必要である。
ウィックとして、例えば、アルミ繊維を充填して成形された多孔質焼結成形体、および、発泡シリコーンゴム等の多孔質弾性体を用いることができる。ウィックを多孔質焼結成形体により構成する場合、筐体に対する密着性を確保するためには、高い寸法精度が必要になるため、コスト高となる。そのため、ウィック6を多孔質弾性体により構成するのが好ましい。ウィック6を多孔質弾性体により構成することで、高い弾性力が得られるので、寸法精度が高くなくとも、蒸発部2の筐体(受熱部7)に良好に密着させることができ、装置のコストダウンを図ることができる。また、ウィック6を多孔質弾性体により構成することで、高い密着性を得ることができる。これにより、蒸発部2の筐体からウィック6への熱伝達効率が良好に得られるようになり、ループ型ヒートパイプ1の冷却性能が向上する。
また、上述したように、ウィック6の高い密着性の確保と局所的な空孔のつぶれ抑制を、ウィック6を多孔質弾性体にするだけの対策で実現することができる。このため、作動流体(蒸発冷媒)を輸送するグルーブ10等の輸送溝(溝)の後加工を省略できれば、さらなる製造コストの低減も可能となる。
ところで、高い冷却性能が必要な用途にループ型ヒートパイプ1を用いる場合は、作動流体として潜熱の高い水を用いるのが好ましい。しかし、作動流体として水を用いた場合、発泡シリコーンゴム等の多孔質体では親水性が不足し、作動流体がウィックに浸透し難く、冷却性能が低下するおそれがあった。
そこで、本実施形態では、プラズマ処理などの親水処理によって、親水基である「-OH基」を多孔質体の内部まで付与し、多孔質体の空隙の表面の元素組成比率において、酸素の比率を最も高くするようにした。酸素の比率が、好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上となるように、親水処理を行うことで、水の作動流体を効率よく循環させることができ、高い冷却性能を得ることができる。なお、水と同様に親水性を有する流体、例えば親水性の置換基を有するエタノール等のアルコールを用いた場合でも作動流体を効率よく循環させることもできる。
以下、本実施形態の特徴部であるウィック6の一例について詳しく説明する。
上述したように本実施形態に係るループ型ヒートパイプ1に用いられるウィック6は、発泡シリコーンゴム等の多孔質弾性体により構成されている。
このような弾性のある多孔質弾性体から構成されるウィックの製造方法は様々な工法が考えられるが、本実施形態における多孔質弾性体は、例えば水発泡シリコーンゴムとして提案された技術を応用して得ることができる。
具体的には、水発泡シリコーンゴム組成物を用い、採取的に形成される発泡体を切断したときに得られる断面に存在する球状の空隙である気泡が、次のように存在するように攪拌を行う。断面に存在する気泡が、0.1[μm]以上50[μm]以下の範囲の大きさであって、かつ、5[μm]以上10[μm]以下の大きさの気泡が最も多く存在するように攪拌を行う。
より具体的には、上述した多孔質弾性体は、市販されている2液型の液状シリコーンゴムに触媒、界面活性剤、架橋剤を混合する。そこに、(必要に応じてアルコールを加えた)水に添加剤、充填剤、分散剤等を混ぜ液状シリコーンゴムと同等の粘度にした混合溶液と合わせて攪拌してエマルジョン組成物を調製する。液状シリコーンゴムは水との乳化性を考慮し、比重が1.00~1.05[g/cm]が好ましい。
ここで、液状シリコーンゴムと混合溶液との配合比率は、得たい空孔率により変わる。例えば、液状シリコーンゴムと混合溶液との配合比率を1:1にすると、エマルジョン中の微粒子状の水分が蒸発し空隙となるので空孔率50[%]の発泡体を得ることができる。
エマルジョンは、ホモジナイザーや、必要に応じて超音波処理を伴う攪拌機を用い、上述した条件を満足するような気泡径分布が得られるよう攪拌手段、攪拌時間、攪拌速度(例えば300~1500[rpm])などの各種攪拌条件を調整する。
その後、調製されたエマルジョン組成物を金型に充填し、加熱することでエマルジョン組成物内の水分を蒸発させずにシリコーンゴムを硬化させる1次加熱を行う。
ここで、加熱温度は80~130[℃]の範囲、加熱時間は30~120分の範囲で行う。加熱温度は90~110[℃]、加熱時間は60~90分が望ましい。次に、1次加熱後の発泡体から水分を除去するために2次加熱を行う。加熱温度は150~300[℃]、加熱時間は1~24時間の範囲で行う。加熱温度は200~250[℃]、加熱時間は3~8時間が望ましい。このような2次加熱を行うことで、多孔質弾性体から水分を除去し、球状の気泡が互いに部分的に重なり合って形成される複合気泡となるように、気泡を連泡タイプとするとともに、シリコーンゴムの最終的な硬化を終了させる。
次に、必要に応じて寸法精度出しやスキン層を除去する目的で、ウィックの外表面を数[μm]~数[mm]削る。例えば、砥石による研削やテープ研磨などで削る。その後、削り粉や不純物を除去する目的で洗浄をする。例えば、超音波洗浄やベーキングなどがある。
さらに、親水性を付与するために、親水処理をする。親水処理としては、例えば、コロナやプラズマ、UVオゾンなどの処理や、新水性コーティングなどがある。または、材料に親水性を付与する添加剤を加えておくのでもよい。シリコーンゴムの外表面だけでなく、内部の空隙の表面を含めた作動流体が通る経路に親水性が付与されるように処理をする。特に、経時的に安定した親水性を実現するために、コロナやプラズマ、UVオゾンなどの手法で内部まで処理をしたのち、親水性コーティングを組合せるのが好ましい。
次に、最終的な硬化が終了した多孔質弾性体である水発泡シリコーンゴムを切断したときに得ることができる断面の諸元(仕様、製造時の条件)について、さらに詳しく説明する。
(気泡径ピーク)
ウィック6に用いられる多孔質弾性体はその毛細管力によって作動流体を移動させてループ型ヒートパイプ1を駆動させる機能を担うことから、より大きな毛細管力が得られるように多孔質弾性体の気泡の径は小さい方が好ましい。
ウィック6に用いられる多孔質弾性体の気泡の径(ウィックの気泡の半径:rwick)と毛細管力(毛細管圧:ΔPcap)は、次の式1を用いて表される。
ΔPcap=2σcosθ/rwick ・・・ (式1)
ここで、σは作動流体の表面張力、θはウィックと作動流体との接触角である。
上述した式1からわかるように、ウィックの気泡の半径が小さいほど毛細管圧は大きくなる。また、ループ型ヒートパイプ1を動作させるには、毛細管力(毛細管圧:ΔPcap)と全圧力損失:ΔPtotalが、次の式2を満たす必要がある。
ΔPcap≧ΔPtotal ・・・ (式2)
さらに、全圧力損失:ΔPtotalは、次に式3を用いて求められる。
ΔPtotal=ΔPwick+ΔPgroov+ΔPVL+ΔPcond+ΔPLL+ΔPgrav ・・・ (式3)
ここで、ΔPwickはウィックの圧力損失、ΔPgroovはグルーブの圧力損失、ΔPVLは蒸気管の圧力損失、ΔPcondは凝縮部の圧力損失、ΔPLLは液管の圧力損失、ΔPgravは重力による圧力損失である。
上述したように、より大きな毛細管力を得られるようにするために、多孔質弾性体の気泡の最大径は小さい方が好ましく、具体的には50[μm]以下であるのが良い。気泡の最大径が50[μm]より大きいと、ループ型ヒートパイプを駆動させる十分な毛細管力が得られ難くなるからである。好ましくは気泡の最大径が30[μm]以下であり、より好ましくは気泡の最大径が10[μm]以下である。
ウィックの厚みが極めて薄い場合には気泡の最大径が1[μm]以下や0.1[μm]以下でも機能させることはできるが、下限の値としては0.1[μm]以上が好ましい。
ここで、気泡の最大径は、多孔質弾性体の断面をレーザー顕微鏡で撮影し、得られた画像を画像処理して空孔の面積を測定することで求めることができる。
(空孔率)
ウィック6に用いられる多孔質弾性体の空孔率は、高いほどループ型ヒートパイプ1を駆動させるのに有利である。具体的には、多孔質弾性体の空孔率は20[%]以上が好ましい。空孔率が20[%]未満になると、ループ型ヒートパイプ1の駆動が困難になる。より好ましくは空孔率が50[%]以上である。空孔率は、次の式4により算出できる。
空孔率([%])=(ソリッドの比重-多孔質弾性体の比重)/(ソリッドの比重)×100 ・・・(式4)
(連通孔径)
ウィック6の連通孔は気泡間(セル間)が連通している部分で、作動流体を駆動させるための毛細管力が働く部分を指す。冷却性能を得るためには、連通孔の径(連通孔径)は好ましくは10[μm]以下であり、さらに好ましくは5[μm]以下である。また、連通孔の平均孔径を3[μm]以下とすることが好ましく、ウィック6自体で高い毛細管力と浸透性を、より好適に両立できる。
但し、連通孔の径は、ウィック6の厚みが極めて薄い場合には1[μm]以下や0.1[μm]以下でも機能させることはできる。
連通孔径はバブルポイント法にて測定し、得られた最大径を連通孔径とする。
ここで、試験液に完全に浸漬した多孔質弾性体にガス圧を加え、気泡の出現が認められたときの圧力を、バブルポイントとする。また、表面張力がわかっている試験液を用いることで、連通孔径(最大径)は次の式5を用いて算出する。
d=4σcosθ/ΔP ・・・ 式5
ここで、dは連通孔径(最大径)、σは作動流体の表面張力、θはウィックと作動流体との接触角、ΔPは圧力損失(バブルポイント圧)である。
連通孔の平均径も、バブルポイント法にて求めることができる。連通孔の平均径は、多孔質弾性体を浸漬した状態の圧力一流量曲線と乾燥した状態で測定した流量の1/2とする圧力一流量曲線(ハーフドライ曲線)とが交わる圧力(ΔP)を求め、上述の式5を使って、連通孔平均径を求める。
(親水性評価)
ウィック6の親水性は、受熱部7の発熱部(冷却対象)が当接する面を有する壁部の内周面に密着する受熱側の外表面と、この受熱側の外表面と反対側の外表面と、カットした断面中央との3点の元素組成比率で評価する。元素分析はX線光電子分光法(XPS)にて、Si(ケイ素)、C(炭素)、O(酸素)の3元素の定量解析し、O(酸素)の比率で評価する。なお、本実施形態では、シリコーンゴムの主要な2元素であるC(炭素)とSi(ケイ素)と、親水処理によって付与されるO(酸素)の3元素の定量解析し、O(酸素)の比率で評価しているが、O(酸素)を含む4元素以上の定量解析し、O(酸素)の比率で評価してもよい。いずれの定量解析においても、気泡表面におけるO(酸素)の比率を一番高くすることで、気泡表面の親水性を良好にでき、ウィックへの水の浸透性を高めることができる。
(冷却性能試験)
次に、上述したウィック6の条件の主要な数値範囲内の実施例、及び数値範囲外の比較例を設定して行った冷却性能の試験について、適宜、図を用いて説明する。
(1)冷却性能試験で用いるウィックを好適に備えることができる電子機器(プロジェクタ)20の説明。
図4は、本実施形態に係る電子機器20に備えるループ型ヒートパイプ1の別例を示した概要説明図である。
また、図4に示したループ型ヒートパイプ1の別例は、図1に示した例とは異なり、蒸発部2の筐体(ケース)に有する円柱形状の内部空間の内径よりも少し大きなウィックを蒸発器の筐体内に圧入しているものである。
但し、本実施形態に係る電子機器の冷却手段としては、図4に示したループ型ヒートパイプに替えて図1に示したループ型ヒートパイプ1を用いることができるが、後述する各実施例、及び各比較例の冷却性能の試験については、図4に示したものを用いている。
図4に示す電子機器20は、光学ユニット21を備えるプロジェクタであり、このプロジェクタは、本実施形態を適用する電子機器の一例である。
ここで、本実施形態に係るループ型ヒートパイプ1を適用可能な電子機器はプロジェクタに限られない。例えば、プリンタ、複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置、パーソナルコンピュータ、サーバ、電子黒板、テレビ、ブルーレイレコーダ、ゲーム機等の種々の電子機器に適用可能である。
また、本実施形態に係るループ型ヒートパイプ1や冷却装置は、電子機器以外のものにも適用可能である。例えば、反応炉を備える化学プラント等を冷却する冷却装置や、サーバーラック等の電子機器に付随した容器や建物に、本実施形態に係るループ型ヒートパイプ1や冷却装置を適用しても良い。
図4に示すループ型ヒートパイプ1の蒸発部2(特に受熱部7)は、光学ユニット21の発熱部に対して接触するように配置されている。蒸発部2は発熱部から熱を吸収して冷却対象(発熱部、光学ユニット又はプロジェクタ)を冷却する。
凝縮部3は、プロジェクタ本体の筐体側面に設けられた排気ファン22の近傍に配置されている。排気ファン22が外部に空気を排出することで、凝縮部3の周囲に気流が発生し、当該気流によって凝縮部3が冷却され、凝縮部3における放熱効果が向上する。
また、排気ファン22が設けられた筐体側面とは反対側の側面には給気口23が設けられており、給気口23から吸気された空気がプロジェクタ内を通って排気ファン22から排出される。この図4に示す例では、プロジェクタを冷却する冷却装置として、ループ型ヒートパイプ1と、ループ型ヒートパイプ1の放熱効果を高めるための排気ファン22とを備えているが、排気ファン22の替わりに凝縮部3へ空気を送風する送風ファンを設けても良い。また、ファンを備えず、ループ型ヒートパイプ1のみ備える冷却装置であっても良い。
(2)詳細な実施例、及び比較例の説明。
図5は、冷却性能試験に用いる実施例、及び比較例のサンプルの諸元、及び試験結果の説明図である。
本試験では、図5に示すように、ウィック6の実施例のサンプルを水発泡シリコーンゴムによって複数作製した。また、ウィック6の比較例のサンプルを連泡(複合)、独泡それぞれの水発泡シリコーンゴム、焼結間連結のアルミを作製した。そして、作製した各サンプルを図4に示すようにプロジェクタに搭載されたループ型ヒートパイプ1に用い冷却性能試験を行った。
気泡形態は、レーザー顕微鏡で気泡状態を観察(撮影)し、気泡が隣り合い複合形状になっていることが確認された場合は「複合」、確認できないときは「独泡」と評価した。図6は、実施例1のウィック6のサンプルをレーザー顕微鏡で気泡状態を観察(撮影)した図であり、気泡が隣り合い複合形状になっていることが確認できる。従って、実施例1の気泡状態は「複合」となる。このような評価を、実施例1、2、3、比較例1、2、3について行った。
気泡の径範囲および気泡径の最頻値は、レーザー顕微鏡で観察した画像を画像処理して算出した気泡径分布などから求めた。
図7は、気泡径分布の一例を示すグラフである。太い実線が複合気泡である実施例1、2、3の水発泡シリコーンゴムの分布を示し、細い実線が独泡(単独気泡)である比較例1の水発泡シリコーンゴムの分布を示している。ここで、気泡径[μm]の分布は確率密度関数で表しており、横軸Xの気泡径[μm]に対し、縦軸Yの確率密度の関係になる。画像処理は、ある気泡径範囲[μm]の個数(頻度)をふるいにかけるように算出している。画処理範囲に存在する全気泡内において、ある気泡径範囲[μm]に存在する気泡の個数(確率)となる。この気泡径分布から、気泡径の最頻値が求められる。
なお、図7においては、気泡径32[μm]までの気泡径分布を示しているが、気泡径32[μm]以上の個数についても算出を行ってもよい。気泡径範囲の最小値は、算出された気泡径分布に基づいて求め、最大値は、上述したように、レーザー顕微鏡で撮影した画像を画像処理により空孔の面積を測定することで求めた。
また、図7からわかるように、複合気泡である実施例1の気泡の径最頻値は5[μm]であり、10[μm]以下の気泡が多く存在しているのに対し、比較例1の水発泡(独泡)シリコーンゴムの気泡径最頻値は20[μm]であり、15[μm]以上の気泡が多く存在していることがわかる。
空孔率は、上述した式4に基づき算出した。連通孔の径は、上述したようにバブルポイント法にてバブルポイント圧を測定し、式5に基づいて求めた。具体的には、連通孔の径の測定はJIS K3832に準拠したバブルポイント法を測定できるガス透過法細孔径分布測定器(株式会社アントンパール・ジャパン製POROMETER 3G)を使用した。測定サンプルはΦ25、湿潤流体はPOLOFILを使用した。連通孔の平均孔径は、上述したようにバブルポイント法にて測定した圧力一流量曲線と乾燥した状態で測定した流量の1/2とする圧力一流量曲線(ハーフドライ曲線)とが交わる圧力(ΔP)を求め、上述の式5に基づいて求めた。
図8は、実施例1のウィックのサンプルを走査型電子顕微鏡で観察した画像の一例を示す図である。この図8は、図6で示したレーザー顕微鏡で観察した画像をさらに拡大した画像である。図8の黒い孔が連通孔であり、これら連通孔が5[μm]以下であることが確認できる。
外表面親水性および内部親水性は、ウィックを外表面と厚み方向に2分割したときの断面を内部として、2か所のSi(ケイ素)、C(炭素)、O(酸素)の比率分析を実施した。これは、ウィック内部の空隙の表面まで親水性が付与できていないと、作動流体を効率よく運ぶことができないためである。XPS分析はThermo Fisher社製のK-alphaを使用し、解析エリアは約Φ400[μm]である。サンプルは適当な大きさにカットし、受熱側の外表面と、受熱側の外表面と反対側の外表面と内部の空隙の表面を3か所ずつ分析した。外表面親水性は、受熱側の外表面3か所、受熱側の外表面と反対側の外表面3か所の計6か所のSi:C:Oの比率の平均値である。内部親水性は、内部3か所のSi:C:Oの比率の平均値である。
図9は、実施例1に用いるウィック6の代表的なサンプルの表面元素をX線光電子分光法(XPS)で解析したときのSi(ケイ素):C(炭素):O(酸素)の比率を現した図であり、O(酸素)比率が一番高いことが確認できる。
冷却性能試験としては、冷却性能、ウィックの密着性、ウィックの耐熱性について、評価した。
冷却性能は、プロジェクタに100[W]の電力を印加し、10分間保持後の蒸発部温度を計測して評価をした。蒸発部温度の低い順番に順位を付けた。
総合判定は、冷却性能や密着性、断熱性、コストの視点で〇、△、×と判定付けした。
ウィック6の密着性は、ウィック6を組付けた受熱部7をX線CTにて観察し、受熱部7(ケース)とウィック6との間に隙間がなければ密着性「〇」、隙間があれば密着性「×」と評価した。
また、耐熱性は、ヒーターに印加電圧200[W]を印加して受熱部7を加熱し、100[h]耐久試験後に、ウィック6を受熱部7から取り外して目視で観察する。そして、ウィック6に破損や隙間が生じるほどの塑性変形がなければ、耐熱性「〇」と評価し、ウィック6に破損や隙間が生じるほどの塑性変形が確認された場合は、耐熱性「×」と評価した。
(実施例1、2、3)
実施例1、2、3は、いずれも複合気泡(複合)になるように活性剤やポリマーを選定した水発泡シリコーンゴム材料を使用し、親水処理としてプラズマ処理のみのものが実施例1、2、プラズマ処理に合わせて二酸化ケイ素のコーティング剤を含浸させたが実施例3である。実施例1、2はエマルジョン作製時の攪拌条件を変えることで、気泡径最頻値がそれぞれ5[μm]、10[μm]となるように調整した。
実施例1、2、3については、いずれも、冷却性能試験において、非常に良好な冷却性能が得られた。特に、プラズマ処理に合わせて二酸化ケイ素のコーティング剤を含侵させた実施例3は、冷却性能順位が1位であり、実施例1、2の冷却性能順位は同等であった。
このような、良好な冷却性能が得られた理由は、次のことが考えられる。まず、実施例1、2、3の水発泡シリコーンゴムは二次加熱時にゴムの架橋と同時に水相の脱水反応をさせるが、複合気泡であることで気泡間の連通孔が効率よく形成され空孔率が高い。そのため、作動流体を良好にウィック6へ浸透させることができる。また、実施例1、2、3は、気泡径最頻値が10[μm]以下であり、連通孔平均孔径が3[μm]以下であることから、微細な連通孔が多数形成されていると考えられ、毛細管力が高いウィックとなっていると考えられる。これらのことから、作動流体を良好に循環させることができ、冷却効率を高めることができ、冷却性能を高めることができたと考えられる。
さらに、作動流体として潜熱の高い水を用いたことで、液相から気相へ変化する際に多くの熱を奪うことができ、冷却性能を高めることができたと考えられる。さらに、実施例1、2、3は、ウィック6における作動流体の経路である連通孔の表面まで親水処理をして、連通孔表面における酸素(O)の比率を最も高くしている。このように、連通孔表面における酸素(O)の比率を最も高くすることで、水の作動流体がウィックに浸透しやすくなる。その結果、作動流体を良好に循環させることができ高い冷却効率が得られ、冷却性能を高めることができたと考えられる。
また、プラズマ処理のみの実施例1、2の内部のO(酸素)の比率が5割程度なのに対し、二酸化ケイ素コーティングを組み合わせた実施例3の内部のO(酸素)の比率は6割であった。このように、実施例3では、ウィックの内部とウィックの外表面とでO(酸素)の比率の差が少なくなっており、ウィックの内部の気泡表面までしっかりと親水処理が施されていることがわかる。このように、プラズマ処理と二酸化ケイ素コーティングなどの処理膜とを組合せることで、内部の気泡表面までしっかりと親水化できる。これにより、作動流体の浸透性をさらに高めることができ、さらに高い冷却効率を実現できた。その結果、実施例1、2に比べて、蒸発部2の温度を低く抑えることができ、冷却性能順位が1位になったと考えらえる。また、実施例3のように、二酸化ケイ素コーティングなどの処理膜と組合せことで経時安定化も期待できる。
また、実施例1、2、3ともに、密着性評価は、「〇」であった。これは、ウィックとして、多孔質弾性体であるシリコーンゴムを用い、かつ、ウィック6を蒸発部2の受熱部7の筐体(ケース)の内寸に対し少し大きめに作製したことで、高い密着性が得られたと考えられる。また、このように、高い密着性が得られることで、ウィック6への熱伝達効率を高めることができ、冷却効率が高められる。このことも、実施例1、2、3の冷却性能を高めることができた一要因と考えらえる。
また、実施例1、2、3では、ウィック6がシリコーンゴムから構成されているので、耐熱試験後に、破損や隙間が生じるほどの塑性変形はウィック6に確認されず、耐熱性評価は「〇」であった。冷却性能、コスト両面を踏まえても、実施例1、2,3は総合判定は[○]である。
(実施例4)
実施例4は、ウィックとして、アルミ焼結サンプル(焼結間連結)を使用した。焼結条件や粒子径をコントロールして、実施例1と同様の空孔率[%]、細孔径範囲0.1[μm]以上50[μm]を得た。また、気泡径最頻値は、10[μm]と少し大きめであった。
実施例4については、ケース(受熱部7)とウィック6との間に隙間が確認され、密着性評価は「×」となった。これは、ケースとウィック6の両方が硬質材料のためであると考えられる。このよう硬質材料同士において、隙間なく密着させるには、ケース、ウィックの両方について、非常に高い高精度が要求され、空隙を潰さないように加工することが困難、且つ量産をするためには単価が高くなってしまう。
また、実施例4は、冷却性能においても、実施例1、2、3よりは悪い結果であった。これは、実施例4は、ケースとの密着性の悪さから冷却効率が下がったことで、実施例1、2、3よりは冷却性能が悪いものになったと考えられる。しかし、実施例4においても、気泡径最頻値が10[μm]以下であり、連通孔平均孔径が3[μm]以下であり、連通孔表面における酸素(O)の比率が最も高くなっている。その結果、比較例1~3よりも冷却性能では、良い結果が得られ、使用に問題ない冷却性能が得られた。実施例4では、冷却性能については、良好であったが、密着性を得るにはコスト高となるため、総合判定は[△]とした。
(比較例1)
比較例1は、ウィックが、独泡気泡(独泡)になるように水発泡シリコーンゴム材料である。気泡は0.1[μm]以上50[μm]以下の範囲の大きさであるが、気泡径の最頻値は20[μm]と実施例1、2、3と比較して大きかった。また、空孔率を60[%]までしか上げられなかった。このように、空孔率が実施例1、2、3よりも低いことから、作動流体のウィックへの浸透性が実施例1、2、3よりも低いと考えられる。さらに、気泡径が実施例より2倍程度大きいことから、毛細管力も低いと考えられる。
さらに、比較例1では、実施例1、2と同条件でプラズマ処理を行ったが、図5の内部親水性からわかるように、内部はSi(ケイ素)の比率が最も高く、O(酸素)の比率が一番高くなるまで、内部に対して親水処理が施せなかった。これは、独泡の場合、気泡間の距離が遠く、且つ空孔率が低いため、複合気泡で且つ空孔率が高い実施例1、2と比較すると、親水処理が内部まで十分に効果が出なかったと考えられる。そのため、気泡表面と作動流体である水との親水性が不十分であり、ウィック6への作動流体の浸透性が実施例1、2に比べて低下していると考えらえる。
これらのことから、比較例1では、作動流体を良好にウィックに浸透させることができず、作動流体の循環効率が実施例に比べて劣り、冷却性能が著しく悪いため総合判定を「×」とした。
但し、この比較例1においても、ウィック6は、多孔質弾性体であるシリコーンゴムから構成されているので、シリコーンゴムの弾性を利用して、ウィック6を蒸発部2の受熱部7の筐体の内寸に対し少し大きめに作製することで、密着性評価は「○」であり、耐熱性評価も「○」であった。
(比較例2)
比較例2のウィックは、親水処理行っていない以外は、実施例2と同様の構成である。そして、比較例2では、作動流体としてエタノールを用いた。エタノールは、水よりも潜熱が小さいため、液相から気相へ変化する際に奪う熱量が少ない。そのため、実施例に比べて冷却効率が低くなり、冷却性能試験において著しく悪いため、総合判定を「×」とした。なお、比較例2では、作動流体として、エタノールを使用しているため、親水処理を施していないことによる影響はないと思われる。
(比較例3)
比較例3のウィックは、比較例2同様に、親水処理行っていない以外は、実施例2と同様の構成である。そして、比較例3では、作動流体として水を用いた。しかし、親水処理を行っていない場合、シリコーンゴムの空隙の表面は疎水性のため、毛細管力では内部に水を通すことができない。したがって、冷却性能試験において作動流体を動作させることができないため、冷却性能においては最下位であった。従って、総合判定も「×」とした。
上述した実施例1~4、及び比較例1~3のサンプルを用いた冷却性能試験の結果から、本実施形態のウィック6を構成する多孔質体を切断したときに得られる断面に存在する気泡や連通孔、内部の酸素の比率等の諸元に応じて、次のような効果を奏することが確認できた。
第一、第二諸元:(実施例1~4の諸元)
実施例1~4は、気泡や連通孔の表面組成において、O(酸素)の比率が一番高い(第一諸元)。また、断面に存在する気泡が0.1[μm]以上50[μm]以下の範囲の大きさであり、複合気泡が存在し、複合気泡のうち、径が5[μm]以上10[μm]以下の大きさの気泡が最も多く存在し、且つ、気泡と気泡の間に5[μm]以下の連通孔を有する(第二諸元)。
(実施例1~4の効果)
上記第一諸元を有することで、作動流体として水を用いたときのウィックへの浸透性を高めることができ、ループ型ヒートパイプ1の冷却性能のさらなる向上が実現可能となる。さらに、第二諸元を有することで、毛細管力やウィックへの浸透性を高めることができる。その結果、上述した冷却性能評価において、高い冷却性能を得ることができる。
ここで、比較例1は独泡で有る点が第二諸元から外れ、気泡や連通孔の表面組成において、O(酸素)の比率が一番でない点が第一諸元から外れている。比較例2、3は、O(酸素)の比率が一番でない点が第一諸元から外れている。また、比較例2では、作動流体として、エタノールを使用していることも実施例1、2とは異なる。比較例3は作動流体として、水を使用したため、O(酸素)の比率が低いことが悪影響となっている。そのため、冷却性能順位は比較例1が5位、比較例2が6位、比較例3が最下位であった。
これらの比較から、親水性を表すO比率と水の組合せであることが、冷却性能順位に影響することが確認できた。また、実施例1、2と比較例1とから、複合気泡の方が、親水処理を効果的に施せることが分かった。
実施例4においても、多孔質弾性体でない点を除ければ、第一諸元(気泡や連通孔の表面組成において、O(酸素)の比率が一番高い)、第二諸元(断面に存在する気泡が0.1[μm]以上50[μm]以下の範囲の大きさであり、複合気泡が存在し、複合気泡のうち、径が5[μm]以上10[μm]以下の大きさの気泡が最も多く存在し、且つ、気泡と気泡の間に5[μm]以下の連通孔を有する。)を満たしている。そのため、第一諸元を満たさない比較例2、3や、第一諸元と第二諸元を満たさない比較例1に比べて、冷却性能が良い結果が得られた。このことからも、第一諸元、第二諸元を満たすことで、満たさない場合に比べて、良好な冷却性能が得られることがわかる。
第三諸元:(実施例1~3、比較例1~3の諸元)
多孔質体が多孔質弾性体として発泡シリコーンゴム、詳しくは実施例1~3と比較例1~3全てが水発泡シリコーンゴムから構成されている点が第三諸元である。
(実施例1~3、比較例1~3の効果)
ウィック6が、発泡シリコーンゴム等の多孔質弾性体であることで、ケース(受熱部7)との密着性を確保することができる。さらに、ウィックが、発泡シリコーンゴムであることで、耐熱性を付与することができる。
ここで、実施例4は金属(アルミ)から構成されており、耐熱性はあるものの、弾性に乏しく密着性を良好にするには、高精度な加工が必要となる。
以上、本実施形態について、図面を参照しながら説明してきたが、具体的な構成は、上述した本実施形態のウィック6を備えたループ型ヒートパイプ1の構成に限られるものではなく、要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等を行っても良い。
例えば、図1、図2、図4を用いて説明した本実施形態のループ型ヒートパイプ1は、いずれも蒸発部2、及び凝縮部3を1つ備えた構成について説明したが、本実施形態のループ型ヒートパイプの構成は、このような構成に限定されるものではない。蒸発部2、及び凝縮部3の少なくともいずれかを2以上備えるループ型ヒートパイプにも適用可能である。
また、図1、図2、図4を用いて説明した本実施形態のループ型ヒートパイプ1は、いずれも蒸発部2の内部にウィック6を1つ設けた構成について説明したが、複数のウィックを並列に備える構成にも適用可能である。
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
液相の作動流体を気相へと変化させる蒸発器の内部に設けられ、液相の作動流体が浸透する多孔質体のウィックであって、多孔質体の空隙の表面の元素組成において、酸素の比率が最も高い。
これによれば、上述した冷却性能試験で説明したように、多孔質体の空隙の表面の元素組成において、酸素の比率が最も高いことで良好な親水性を得ることができ、水等の親水性の作動流体をウィックに良好に浸透させることができる。これにより、作動流体の循環性を高めることができ、水を用いた場合の蒸発器の冷却効率を高めることができる。
(態様2)
態様1において、多孔質体の空隙の表面の炭素とケイ素と酸素の3つの元素組成の比率において、酸素の比率が最も高い。
これによれば、実施形態で説明したように、水等の親水性の作動流体を良好にウィックに浸透させることができる。
(態様3)
態様1または2において、多孔質体は、気泡などの複数の球状の空隙が互いに部分的に重なり合う部分に連通孔を有する複合空隙を有する。
これによれば、実施形態で説明したように、作動流体を良好にウィックに浸透させることができる。さらに、親水処理を効果的に施せることができる。
(態様4)
態様3において、連通孔の最大孔径が5[μm]以下である。
これによれば、実施形態で説明したように、ウィックの毛細管力を高めることができる。
(態様5)
態様3または4において、連通孔の平均孔径が3[μm]以下である。
これによれば、実施形態で説明したように、ウィックの毛細管力を高めることができる。
(態様6)
態様3乃至5いずれかであって、気泡などの球状の空隙の直径が0.1[μm]以上、50[μm]以下である。
これによれば、実施形態で説明したように、良好な毛細管力を得ることができる。
(態様7)
態様3乃至6いずれかにおいて、気泡などの球状の空隙の直径の分布における最頻値が5[μm]以上かつ10[μm]以下である。
これによれば、実施形態で説明したように、良好な毛細管力を得ることができる。
(態様8)
態様1乃至7いずれかであって、多孔質体は発泡シリコーンである。
これによれば、実施形態で説明したように、ウィックを良好に密着させることができ、かつ、良好な耐熱性を得ることができる。
(態様9)
内部にウィックを収納し、液相の作動流体を気相へと変化させる蒸発部2などの蒸発器であって、ウィックとして、態様1乃至8いずれかのウィックを用いた。
これによれば、良好な冷却性能を得ることができる。
(態様10)
外部からの熱を受けて作動流体を液相から気相へと蒸発させる蒸発部2などの蒸発器と、蒸発器から排出された気相の作動流体を液相へと凝縮させる凝縮部3などの凝縮器とを備えたループ型ヒートパイプにおいて、蒸発器として、態様9の蒸発器を用いた。
これによれば、良好な冷却性能を得ることができる。
(態様11)
態様10において、作動流体が、水である。
これによれば、潜熱の高い水を作動流体として用いることで、高い冷却性能を得ることができる。
(態様12)
ループ型ヒートパイプを備えた冷却装置において、ループ型ヒートパイプとして、態様10または11のループ型ヒートパイプを用いた。
これによれば、冷却対象を良好に冷却することができる。
(態様13)
冷却手段を備えたプロジェクタ等の電子機器20において、冷却手段として、態様12の冷却装置を用いた。
これによれば、プロジェクタ等の電子機器20の発熱部を良好に冷却することができる。
(態様14)
液相の作動流体を気相へと変化させる蒸発部2などの蒸発器の内部に設けられ、液相の作動流体が浸透する多孔質体のウィックを製造するウィック製造方法において、多孔質体の空隙の表面の元素組成において、親水処理などの酸素の比率が最も高くなるように処理する工程を含む。
これによれば、空隙表面の親水性を高めることができ、水の作動流体を良好に浸透させることができるウィックを製造することができる。
(態様15)
態様14において、多孔質体に気泡などの複数の球状の空隙が互いに部分的に重なり合う部分に連通孔を有する複合空隙を形成する工程を含む。
これによれば、毛細管力が高いウィックを製造することができる。
1 ループ型ヒートパイプ
2 蒸発部
3 凝縮部
4 蒸気管
5 液管
6 ウィック
7 受熱部
20 電子機器(プロジェクタ)
特開2020-20495号公報

Claims (15)

  1. 液相の作動流体を気相へと変化させる蒸発器の内部に設けられ、前記液相の作動流体が浸透する多孔質体のウィックであって、
    前記多孔質体の外表面および内部の空隙の表面に親水処理を施し、前記多孔質体の空隙の表面の元素組成において、酸素の比率最も高くしたことを特徴とするウィック。
  2. 請求項1に記載のウィックであって、
    前記多孔質体の空隙の表面の炭素とケイ素と酸素の3つの元素組成の比率において、前記酸素の比率が最も高いことを特徴とするウィック。
  3. 請求項1または2に記載のウィックであって、
    前記多孔質体の前記空隙は、複数の球状の気泡が互いに部分的に重なりあって気泡間が連通する連通孔を形成する複合気泡からなることを特徴とするウィック。
  4. 請求項3に記載のウィックであって、
    前記連通孔の最大孔径が5[μm]以下であることを特徴とするウィック。
  5. 請求項3または4に記載のウィックであって、
    前記連通孔の平均孔径が3[μm]以下であることを特徴とするウィック。
  6. 請求項3乃至5いずれか一項に記載のウィックであって、
    前記球状の気泡の直径が0.1[μm]以上、50[μm]以下であることを特徴とするウィック。
  7. 請求項3乃至6いずれか一項に記載のウィックであって、
    前記球状の気泡の直径の分布における最頻値が5[μm]以上かつ10[μm]以下であることを特徴とするウィック。
  8. 請求項1乃至7いずれか一項に記載のウィックであって、
    前記多孔質体は発泡シリコーンゴムであることを特徴とするウィック。
  9. 内部にウィックを収納し、液相の作動流体を気相へと変化させる蒸発器であって、
    前記ウィックとして、請求項1乃至8いずれか一項に記載のウィックを用いたことを特徴とする蒸発器。
  10. 外部からの熱を受けて作動流体を液相から気相へと蒸発させる蒸発器と、
    前記蒸発器から排出された気相の作動流体を液相へと凝縮させる凝縮器とを備えたループ型ヒートパイプにおいて、
    前記蒸発器として、請求項9に記載の蒸発器を用いたことを特徴とするループ型ヒートパイプ。
  11. 請求項10に記載のループ型ヒートパイプにおいて、
    前記作動流体が、水であることを特徴とするループ型ヒートパイプ。
  12. ループ型ヒートパイプを備えた冷却装置において、
    前記ループ型ヒートパイプとして、請求項10または11に記載のループ型ヒートパイプを用いたことを特徴とする冷却装置。
  13. 冷却手段を備えた電子機器において、
    前記冷却手段として、請求項12に記載の冷却装置を用いたことを特徴とする電子機器。
  14. 液相の作動流体を気相へと変化させる蒸発器の内部に設けられ、前記液相の作動流体が浸透する多孔質体のウィックを製造するウィック製造方法において、
    前記多孔質体の空隙の表面の元素組成において、酸素の比率が最も高くなるように、前記多孔質体の外表面および内部の空隙の表面に親水処理する工程を含むウィック製造方法。
  15. 請求項14に記載のウィック製造方法において、
    前記多孔質体に複数の球状の気泡が互いに部分的に重なり合って気泡間を連通する連通孔を形成する複合気泡からなる空隙を形成する工程を含むことを特徴とするウィック製造方法。
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