JP2018109497A - ウィック、ループ型ヒートパイプ、冷却装置、電子機器、多孔質ゴムの製造方法、及びループ型ヒートパイプ用ウィックの製造方法 - Google Patents

ウィック、ループ型ヒートパイプ、冷却装置、電子機器、多孔質ゴムの製造方法、及びループ型ヒートパイプ用ウィックの製造方法 Download PDF

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Kiyomasa Kato
清正 加藤
平澤 友康
Tomoyasu Hirasawa
友康 平澤
安瀬 徳彦
Norihiko Yasuse
徳彦 安瀬
剛史 遠藤
Takashi Endo
剛史 遠藤
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Abstract

【課題】構造が複雑化することなく、筐体に対するウィックの密着性の確保と局所的な空孔のつぶれ抑制とを実現する。【解決手段】外部から熱を吸収して作動流体を液相から気相へと蒸発させる蒸発部2と、蒸発部2から導かれた気相の作動流体を液相へと凝縮させる凝縮部3と、を備え、凝縮した液相の作動流体を蒸発部2に還流させるループ型ヒートパイプのウィック6であって、ウィック6が多孔質ゴムにより構成されている。【選択図】図1

Description

本発明は、ウィック、ループ型ヒートパイプ、冷却装置、電子機器、多孔質ゴムの製造方法、及びループ型ヒートパイプ用ウィックの製造方法に関する。
近年、電子機器等において、発熱部からの熱による昇温を抑制する冷却手段として、小型で高効率のループ型ヒートパイプが用いられるようになってきている。
一般的に、ループ型ヒートパイプは、図5に示すように、外部から受熱して作動流体を液相から気相に蒸発させる蒸発部100と、外部に放熱して作動流体を気相から液相に凝縮させる凝縮部200と、蒸発部100から凝縮部200へ気相の作動流体を流通させる蒸気管300と、凝縮部200から蒸発部100へ液相の作動流体を流通させる液管400とを備える。
蒸発部100の内部には、多孔質材で構成されたウィック500が収容されており、液管400から送られた液相の作動流体がウィック500の微細な孔を毛細管現象によって浸透してウィック500の外表面に染み出す。このとき、蒸発部100と接触する発熱部(冷却対象)からの熱が蒸発部100の筐体を通してウィック500に伝達されることにより、その熱で作動流体が蒸発して気相に変化する。気相に変化した作動流体は蒸気管300を通って凝縮部200へ移動する。凝縮部200においては、作動流体の熱が外部に放出されることで、作動流体の温度が低下し液相へと変化する。そして、液相に変化した作動流体は液管400を通って蒸発部100へ移動し、再びウィック500内に浸透する。このように、ループ型ヒートパイプにおいては、作動流体の相変化を利用し、作動流体を循環させ、蒸発部で吸収した熱を凝縮部へと移送することで、冷却対象を効率良く冷却することができる。
ここで、発熱部の熱を蒸発部内のウィックに効率良く伝達するには、ウィックが蒸発部の筐体に対して密着していることが重要である。筐体に対するウィックの密着性が十分でないと、ウィックへの熱伝達効率が低下するため、作動流体の蒸発効率が低下し、その結果、ループ型ヒートパイプの冷却性能が低下する。
このような課題に対して、下記特許文献1(特許第5699452号公報)では、ウィックの外表面に金属パターンを形成し、この金属パターンと蒸発器の筐体内壁とを拡散接合することで、ウィックと筐体とを一体化し、熱的あるいは機械的応力によって接合面に隙間が生じるのを防止するループ型ヒートパイプが提案されている。
また、筐体に対するウィックの密着性を良好に確保するために、ウィックを樹脂材料で構成し、ウィックの外径を筐体の内径よりも僅かに大きく形成することが一般的に行われている。しかしながら、製造誤差によってウィックの外径が過度に大きくなってしまうと、ウィックが筐体内に収容されて圧縮された際に、ウィックの外周面近傍における空孔がつぶれることで、作動流体の流れが阻害され、冷却性能が低下することがある。
これに対して、下記特許文献2(特開2011−190996号公報)では、ウィックの内周面に長さ方向に延びる内側溝を形成し、ウィックが蒸発器の筐体内に収容された際に内側溝が閉じられるように変形することで、ウィックの外径寸法に製造誤差が生じても外周面近傍における空孔のつぶれを抑制する方法が提案されている。
上記のように、従来では、筐体に対するウィックの良好な密着性や作動流体の円滑な流れを確保するために種々の対策が提案されている。しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載のように、ウィックの外表面に金属パターンを形成したり、ウィックの内周面に内側溝を形成したりする対策は、いずれもウィックの加工が複雑になり、製造コストが高くなるといった課題がある。さらに、特許文献2に記載のウィックにおいては、内側溝の寸法精度が低いと、ウィックを筐体内に収容した際にウィックの変形が不均一になり、筐体に対するウィックの接触が部分的に不十分となって熱伝達効率が低下する虞がある。
上記課題を解決するため、本発明は、外部から熱を吸収して作動流体を液相から気相へと蒸発させる蒸発部と、前記蒸発部から導かれた気相の作動流体を液相へと凝縮させる凝縮部と、を備え、凝縮した液相の作動流体を前記蒸発部に還流させるループ型ヒートパイプのウィックであって、多孔質ゴムにより構成されていることを特徴とする。
本発明によれば、ウィックが多孔質ゴムにより構成されていることで、高い弾性力が得られるようになり、蒸発部の筐体に対するウィックの密着性が高まる。これにより、蒸発部の筐体からウィックへの熱伝達効率が良好に得られるようになる。また、ウィックが多孔質ゴムにより構成されていることで、ウィックの弾性領域が大きくなるため、製造時の寸法誤差などによる局所的な空孔のつぶれを抑制することができる。すなわち、ウィックが蒸発部の筐体内で圧縮されたとしても、ウィックの圧縮変形に伴う空孔のつぶれが広い範囲に渡って分散するため、空孔が外周面近傍などの局所的な領域で大きくつぶされるのを抑制できる。このように、本発明によれば、ウィックの高い密着性の確保と局所的な空孔のつぶれ抑制を、ウィックを多孔質ゴムにするだけの対策で実現することができる。
本発明に係るループ型ヒートパイプの実施の一形態を示す図である。 ループ型ヒートパイプにおける蒸発部の断面図である。 ウィックが筐体内で圧縮された状態を拡大して示す断面図である。 本実施形態に係るループ型ヒートパイプを備える電子機器の一例を示す図である。 一般的なループ型ヒートパイプの構成を示す図である。
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
図1は、本発明に係るループ型ヒートパイプの実施の一形態を示す図である。
図1に示すループ型ヒートパイプ1は、内部に作動流体が封入されており、発熱部から熱を吸収して作動流体を液相から気相へと蒸発させる蒸発部2と、蒸発部2から導かれた気相の作動流体を液相へと凝縮させる凝縮部3と、蒸発部2から凝縮部3へ気相の作動流体を流通させる蒸気管4と、凝縮部3から蒸発部2へ液相の作動流体を流通させる液管5とを備える。
蒸発部2は、銅や銅合金等の熱伝導性の良好な金属で形成された円筒状部材であり、内部にウィック6が収容された受熱部7と、液相の作動流体を貯留するリザーバ部8とで構成されている。受熱部7には蒸気管4の一端部が連結され、リザーバ部8には液管5の一端部が連結されている。また、蒸気管4と液管5のぞれぞれの他端部は凝縮部3に連結されている。凝縮部3は、外周面にアルミニウム製の薄板状のフィンが多数設けられたステンレス製のパイプで構成されている。
ウィック6は、多孔質材から成る中空部材であり、蒸気管4側が閉塞され、リザーバ部8側は開放されている。また、ウィック6の外周面には、蒸気管4側の端部からリザーバ部8側の端部の手前までの領域に渡って長手方向に延びる複数のグルーブ(溝)11が設けられている。図2に示すように、複数のグルーブ11は、ウィック6の周方向に渡って等間隔に設けられている。また、ウィック6のグルーブ11が設けられていない部分の外径は、蒸発部2の筐体2aの内径よりも若干大きい寸法に設定されている。このため、蒸発部2内にウィック6が収容された状態では、グルーブ11が設けられていない部分においてウィック6が蒸発部2の筐体2aの内周面に対して密着する。このように、ウィック6が蒸発部2の筐体2aに対して密着していることで、発熱部の熱が蒸発部2の筐体2aを通してウィック6に効率良く伝達される。また、ウィック6は、液相と気相とを分離して気相の作動流体がリザーバ部8に逆流するのを防止する機能も果たす。一方、グルーブ11が設けられた部分においては、蒸発部2の筐体2aとの間に空間部が形成されている。
ウィック6は多孔質材で構成されているため、リザーバ部8内に貯留される液相の作動流体は毛細管現象によってウィック6内に浸透する。この毛細管現象によってウィック6は液相の作動流体を凝縮部3から蒸発部2へ送るポンプの役割も果たす。作動流体としては、水、アルコール、アセトン、代替フロン、フッ素系溶剤等の凝縮性流体が用いられる。また、作動流体はウィックに浸透しやすいようにウィックとの濡れ性が良好なものが良い。濡れ性はウィックと作動流体との接触角で測定することができる。接触角が90°以上であると、作動流体がウィックに浸透することができないため、接触角は90°未満である必要がある。
また、作動流体とウィック材料としては、ウィック材料が作動流体に溶解しにくい組み合わせを選択することが好ましい。作動流体に対するウィック材料の溶解性は、溶解性パラメータ(SP値)を目安にすることができる。SP値は、物質の極性を示す値であり、2つの物質のSP値の差が大きいほど2つの物質は互いに溶解しにくい。ループ型ヒートパイプに用いられる作動流体とウィック材料との組み合わせは、溶解性の観点から、作動流体のSP値がウィック材料のSP値より大きくなるような組み合わせとすることが好ましい。
本実施形態に係るループ型ヒートパイプにおいては、発熱部からの熱が蒸発部2の筐体を通してウィック6内の液相の作動流体に伝達されると、その熱で作動流体が蒸発して気相に変化する。蒸発して気相に変化した作動流体はグルーブ11を通って蒸気管4へと送られる。そして、気相の作動流体は蒸気管4を通って凝縮部3へと送られる。凝縮部3においては、内部を通過する作動流体の熱がフィンを介して外部に放出されることで、作動流体の温度が低下して凝縮し、気相から液相へと変化する。液相に変化した作動流体は液管5を通って蒸発部2へ移動し、毛細管現象によってリザーバ部8から再びウィック6内に浸透する。このような作動流体の循環が行われることで、発熱部の熱が連続して外部に放出され、冷却対象が冷却される。
次に、ウィックについて詳しく説明する。
上記本実施形態に係るループ型ヒートパイプに用いられるウィックは、多孔質ゴムにより構成されている。このように、本発明においては、ウィックを多孔質ゴムにより構成することで、多孔質樹脂に比べて高い弾性力が得られるようになるので、蒸発部の筐体に対するウィックの密着性が高まる。これにより、蒸発部の筐体からウィックへの熱伝達効率が良好に得られるようになり、ループ型ヒートパイプの冷却性能が向上する。
また、ウィックが多孔質ゴムにより構成されていることで、ウィックの弾性領域が大きくなるため、製造時の寸法誤差などによる局所的な空孔のつぶれを抑制することができる。すなわち、ウィックが蒸発部の筐体内に収容された際にウィックが圧縮されたとしても、図3に示すように、ウィック6の圧縮変形に伴う空孔6aのつぶれが広い範囲に渡って分散するため、空孔6aが外周面近傍などの局所的な領域で大きくつぶされるのを抑制できる。これにより、空孔が局所的に大きくつぶされることによる作動流体の流れ阻害が生じにくくなるので、作動流体の円滑な流れを確保することができ、冷却性能をより確実に発揮することができるようになる。
このように、本発明によれば、ウィックの高い密着性の確保と局所的な空孔のつぶれ抑制を、ウィックを多孔質ゴムにするだけの対策で実現することができるため、構造が複雑化することなく、製造コストの増大も回避できる。
ウィックに用いられる多孔質ゴムとしては、発泡シリコーンゴム又は発泡ウレタンゴムが挙げられる。これらの多孔質ゴムは、内部に作動流体を浸透させ作動流体に対して毛細管力を良好に生じさせるために、連通した複数の空孔が形成されている。多孔質ゴムの平均空孔径、空孔率、連泡率は、それぞれ下記の範囲に設定されることが好ましい。
〔平均空孔径〕
ウィックに用いられる多孔質ゴムはその毛細管力によって作動流体を移動させてループ型ヒートパイプを駆動させる機能を担うことから、より大きな毛細管力が得られるように多孔質ゴムの平均空孔径は小さい方が好ましい。
ウィックに用いられる多孔質ゴムの平均空孔径(ウィックの空孔半径rwick)と毛細管力(毛細管圧ΔPcap)は、下記数式1を用いて表される。
Figure 2018109497
ここで、σは作動流体の表面張力、θはウィックと作動流体との接触角である。
数式1からわかるように、ウィックの空孔半径が小さいほど毛細管圧は大きくなる。
また、ループ型ヒートパイプを動作させるには、毛細管力(毛細管圧ΔPcap)と全
圧力損失ΔPtotalが下記数式2を満たす必要がある。
Figure 2018109497
さらに、全圧力損失ΔPtotalは下記数式3を用いて求められる。
Figure 2018109497
ここで、ΔPwickはウィックの圧力損失、ΔPgroovはグルーブの圧力損失、ΔPVL
は蒸気管の圧力損失、ΔPcondは凝縮部の圧力損失、ΔPLLは液管の圧力損失、ΔPgr
avは重力による圧力損失である。
上記のように、より大きな毛細管力を得られるようにするために、多孔質ゴムの平均空孔径は小さい方が好ましく、具体的には50μm以下であるのがよい。平均空孔径が50μmより大きいと、ループ型ヒートパイプを駆動させる十分な毛細管力が得られ難くなるからである。好ましくは平均空孔径が10μm以下であり、より好ましくは平均空孔径が5μm以下である。平均空孔径は、多孔質ゴムの断面をレーザ顕微鏡で撮影し、得られた画像を画像処理により空孔の面積を測定することで求めることができる。
〔空孔率〕
ウィックに用いられる多孔質ゴムの空孔率は、高いほどループ型ヒートパイプを駆動させるのに有利である。具体的に、多孔質ゴムの空孔率は20%以上が好ましい。空孔率が20%未満になると、ループ型ヒートパイプの駆動が困難になる。より好ましくは空孔率が50%以上である。空孔率は下記数式4により算出できる。
Figure 2018109497
〔連泡率〕
ウィックに用いられる多孔質ゴムの連泡率は、高いほど液相の作動流体がウィックに浸透するのに有利である。具体的に、多孔質ゴムの連泡率は25%以上であるのがよい。好ましくは連泡率が50%以上であり、より好ましくは連泡率が75%以上である。連泡率はメタノール浸漬重量増加率を測定することで得られる。
具体的には、JIS 6249の圧縮永久歪測定に用いられる試験片(直径約29mm、厚さ約12.5mmの円柱形状)を作成し、これをメタノール500gを満たした容量約1Lの金属缶に浸漬し、蓋をして25℃の雰囲気中で放置する。なお、比重が小さく浮いてしまうサンプルについては、金属メッシュでメタノール上部を覆う。そして、浸漬前及び浸漬24時間後の重量から、下記数式5で重量増加率を算出する。
Figure 2018109497
〔多孔質ゴムの製造方法〕
ウィックに用いられる多孔質ゴムは、化学発泡法又は水発泡法によって製造することができる。化学発泡法は、発泡剤を添加することにより発泡構造を形成する方法である。これに対して、水発泡法は、水を主成分とする溶媒と液状ゴムとを乳化させ、溶媒を除去することで発泡構造を形成する方法である。特に、水発泡法は化学発泡法に比べて高い空孔率で微細な空孔を均一に形成することが可能である。このため、多孔質ゴムの発泡状態を上述の好ましい範囲(平均空孔径が50μm以下、空孔率が20%以上80%以下、連泡率が25%以上100%以下)に調整するには、水発泡法を用いることが好ましい。
以下、水発泡法を用いてウィック用の発泡シリコーンゴムを製造する方法について説明する。
〔水発泡シリコーンゴムの製造方法〕
水発泡法により発泡シリコーンゴムを製造するには、市販されている2液型の液状シリコーンゴムに触媒、界面活性剤、架橋剤を添加し、混合する。そして、溶媒としての水(必要に応じてアルコール混合)に必要に応じて添加剤、充填剤、分散剤等を混ぜ、液状シリコーンゴムと同等の粘度にした混合溶液と合わせて撹拌してエマルション組成物を調整する(乳化工程)。
ここで、液状シリコーンゴムと混合溶液との配合比率は、所望の空孔率により調整する。エマルション中の微粒子状の水分が蒸発してセルとなるので、例えば、液状シリコーンゴムと混合溶液との配合比率を1:1にすると、空孔率50%の多孔質体を得ることができる。
エマルションは、ホモジナイザーや、必要に応じて超音波処理を伴う攪拌機を用い、上記条件を満足するような気泡分布が得られるよう撹拌手段、撹拌時間、撹拌速度(例えば300〜1500rpm)などの各種撹拌条件を調整する。
その後、調整されたエマルション組成物を金型に注入し、一次加熱することでエマルション組成物内の水分を蒸発させずにシリコーンゴムを硬化させて所定の形状に成型する(一次加熱・成型工程)。ここで、一次加熱は、加熱温度が80〜130℃の範囲、加熱時間が30〜120分の範囲で行う。特に、加熱温度が90〜110℃、加熱時間が60〜90分であることが好ましい。
次に、一次加熱後の多孔質体から水分を除去するために二次加熱を行う(二次加熱工程)。二次加熱は、加熱温度が150〜300℃、加熱時間が1〜24時間の範囲で行う。特に、加熱温度が200〜250℃、加熱時間が3〜5時間であることが好ましい。このような二次加熱を行うことで、多孔質体から水分を除去し、シリコーンゴムの最終的な硬化を完了させる。
続いて、水発泡法によりシリコーンゴムを製造する際の、平均空孔径、空孔率、連泡率の調整方法について説明する。
〔平均空孔径の調整方法〕
平均空孔径は、乳化工程における撹拌手段の撹拌強度を変更することで調整することができる。乳化工程においては、水を主成分とする溶媒が撹拌手段によって撹拌されることにより細かい微粒子状セルとなり、その後の二次加熱工程でその溶媒の水分が蒸発することで空孔が形成される。すなわち、乳化工程において溶媒がより細かい微粒子状セルとなるように撹拌することで、平均空孔径を小さくすることができる。具体的には、撹拌時間を長く、撹拌速度を速くするなど、撹拌強度を高くする撹拌条件を選択することで平均空孔径を小さく調整することが可能である。
〔空孔率の調整方法〕
空孔率は、液状シリコーンゴムと混合溶液との配合比を変更することによって調整することができる。これは、混合溶液中の水分が蒸発することで空孔が形成されるためである。混合溶液の比率を高くすると空孔率を大きくすることができる。
〔連泡率の調整方法〕
連泡率は、シリコーンゴム組成物の界面活性剤の量又は種類を選択することで調整することが可能である。
次に、水発泡法を用いてウィック用の発泡ウレタンゴムを製造する方法について説明する。
〔水発泡ウレタンゴムの製造方法〕
水発泡ウレタンゴムは、上述の水発泡シリコーンゴムの製造方法における液状シリコーンゴムに代えて液状ウレタンゴムを用いることで製造することができる。液状ウレタンゴムとしては市販の1液もしくは2液型の液状ウレタンゴムを用いることができる。耐水性の観点からウレタン材料はエーテル系が好ましい。また、耐熱性の観点から一次加熱温度及び二次加熱温度はウレタン材料の耐久温度よりも低いことが望ましい。一次加熱温度は70〜110℃の範囲、二次加熱温度は80〜110℃の範囲で材料が劣化しない温度を選択することが好ましい。また、水発泡ウレタンゴムの平均空孔径、空孔率、連泡率は、上述の水発泡シリコーンゴムに関する調整方法と同様の方法で調整が可能である。
以下、ループ型ヒートパイプの冷却性能試験について説明する。
〔冷却性能試験〕
本試験では、下記表1に挙げられる複数のウィックサンプルを水発泡シリコーンゴムによって作成し、各サンプルをループ型ヒートパイプに用いた場合の冷却性能試験を行った。
Figure 2018109497
サンプル1のウィックは、以下の条件で製造した。
まず、液状シリコーンゴムに架橋剤及び界面活性剤を添加し、水を体積比1:1になるように混合し、シリコーンゴム組成液を調合した。次いで、調合した組成液をPRIMIX社製ホモミキサーにて1500rpmで10分間撹拌し、エマルション組成物を得た。そして、このエマルション組成物を金型に注入し、100℃で1時間加熱する一次加熱及び230℃で4時間加熱する二次加熱を行った。これにより、平均空孔径が8μm、空孔率が47%、連泡率が78%の水発泡シリコーンゴムを得た。また、成型後の水発泡シリコーンゴムは、外径φ18mm、内径φ14mmの一端部側が開口し他端部側が閉塞された円筒状で、外周面に幅3mm、深さ1mm、長さ70mmのグルーブが周方向に渡って8箇所形成された形状であった。
また、他のサンプル2〜11は、上記サンプル1と同様の金型を用い、平均空孔径、空孔率、連泡率の各条件を上述の調整方法によって適宜調整して製造した。
そして、各サンプルのウィックを図1に示すループ型ヒートパイプと同様の構成のループ型ヒートパイプに用いた。具体的に、蒸発部は、内部にウィックが収容される受熱部と液相の作動流体を貯留するリザーバ部とが一体となったもので、受熱部を、外径φ20mm、内径φ18mm、長さ80mmの円筒とし、リザーバ部を、外径φ70mm、内径φ68mm、長さ40mmの円筒とした。凝縮部は、外径φ10mmのステンレス管に厚さ0.3mm、1辺100mmのアルミニウム製のフィンを10mm間隔で80枚取り付けたものとした。蒸気管は、外径φ4mm、内径φ2mm、長さ600mmのステンレス管で構成し、液管も、外径φ4mm、内径φ2mm、長さ600mmのステンレス管で構成した。また、作動流体として、エタノール又はアセトンを100ml封入した。サンプル4を用いたループ型ヒートパイプのみアセトンを封入し、それ以外のサンプルを用いたループ型ヒートパイプにはエタノールを封入した。なお、各サンプルのウィックと作動流体の接触角は、いずれも90°未満であった。
〔接触角の測定〕
接触角の測定は、協和界面科学株式会社製の接触角計DropMaster100で測定した。作動流体をウィック材料に滴下してから500ms後に測定を行った。付属のソフト「固液海面解析システムDropMaster700」で、液滴法(θ/2法を採用。 曲率補正はなし。)で解析し接触角を算出した。
上記のように作成したループ型ヒートパイプを蒸発部と凝縮部とが水平になるように設置し、蒸発部にヒータを接触させた。そして、ヒータへの印加電力を調整して100Wの熱量を10分間付与し、蒸発部の温度を測定した。
また、蒸発部の温度、室温及び付与される熱量から下記数式6を用いて熱抵抗を求めた。
Figure 2018109497
さらに、蒸発部が凝縮部よりも高い位置に配置して水頭差を与えた状態、すなわちトップヒートの状態でループ型ヒートパイプが駆動するか否かを確認し、駆動可能な最大水頭差を測定した。なお、水頭差が500mmとなっても駆動が確認されたものについては、駆動可能な最大水頭差を500mm以上とした。
下記表2に本試験の結果を示す。
Figure 2018109497
表2に示す結果によれば、各サンプルを用いたループ型ヒートパイプにおいては、蒸発部の温度が50〜55℃の範囲で、熱抵抗が0.25〜0.30℃/Wの範囲の比較的低い値となり、良好な冷却性能が得られた。すなわち、表1に示す各サンプルのように、ウィック(水発泡シリコーンゴム)の平均空孔径が50μm以下、空孔率が20%以上80%以下、連泡率が25%以上100%以下の範囲であれば、発熱部を効果的に冷却することができた。ただし、サンプル3、サンプル6、サンプル10、サンプル11のように、平均空孔径が10μmより大きい場合は、平均空孔径が10μm以下の他のサンプルに比べて、駆動可能な最大水頭差が低くなった。特に、サンプル6、サンプル10、サンプル11を比べると、空孔率と連泡率とがほぼ一緒であるが、平均空孔径が大きくなるほど最大水頭差が小さくなっていることがわかる。これは、平均空孔径が大きいことで、得られる毛細管力が小さくなったからと考えられる。従って、本試験結果によれば、ウィックがその毛細管力によって作動流体を移動させてループ型ヒートパイプを駆動させる機能をより大きく発揮するには、平均空孔径が10μm以下であることが好ましいと言える。
また、上述の試験と同様の試験を、水発泡ウレタンゴムをウィックとして用いたループ型ヒートパイプにおいても行った。
下記表3に、試験に用いたウィックの各サンプルを示す。
Figure 2018109497
サンプル12のウィックは、以下の条件で製造した。
まず、液状ウレタンゴムに架橋剤及び界面活性剤を添加し、水を体積比1:1になるように混合し、ウレタンゴム組成液を調合した。次いで、調合した組成液をPRIMIX社製ホモミキサーにて1500rpmで10分間撹拌し、エマルション組成物を得た。そして、このエマルション組成物を金型に注入し、80℃で20分加熱する一次加熱及び110℃で1時間加熱する二次加熱を行った。これにより、平均空孔径が8μm、空孔率が45%、連泡率が78%の水発泡ウレタンゴムを得た。また、成型後の水発泡ウレタンゴムは、外径φ18mm、内径φ14mmの一端部側が開口し他端部側が閉塞された円筒状で、外周面に幅3mm、深さ1mm、長さ70mmのグルーブが周方向に渡って8箇所形成された形状であった。
また、他のサンプル13〜22は、上記サンプル12と同様の金型を用い、平均空孔径、空孔率、連泡率の各条件を上述の調整方法によって適宜調整して製造した。
そして、各サンプルのウィックを上述の試験と同様のループ型ヒートパイプに用いた。また、作動流体として、エタノール又はアセトンを100ml封入した。サンプル15を用いたループ型ヒートパイプのみアセトンを封入し、それ以外のサンプルを用いたループ型ヒートパイプにはエタノールを封入した。なお、各サンプルのウィックと作動流体の接触角は、いずれも90°未満であった。
下記表4に水発泡ウレタンゴムを用いた場合の冷却性能試験の結果を示す。
Figure 2018109497
表4に示す結果によれば、水発泡ウレタンゴムを用いた場合も、平均空孔径が50μm以下、空孔率が20%以上80%以下、連泡率が25%以上100%以下の範囲であれば、蒸発部の温度が55〜60℃の範囲で、熱抵抗が0.30〜0.35℃/Wの範囲の比較的低い値となり、良好な冷却性能が得られた。ただし、サンプル14、サンプル17、サンプル21、サンプル22のように、平均空孔径が10μmより大きい場合は、平均空孔径が10μm以下の他のサンプルに比べて、駆動可能な最大水頭差が低くなった。これは、上述の水発泡シリコーンゴムを用いた試験の場合と同様に、水発泡ウレタンゴムを用いた場合も、平均空孔径が大きいことで、得られる毛細管力が小さくなったからと考えられる。従って、表4に示す結果によれば、発泡ウレタンゴムを用いた場合は、ウィックがその毛細管力によって作動流体を移動させてループ型ヒートパイプを駆動させる機能をより大きく発揮するには、平均空孔径が10μm以下であることが好ましいと言える。
さらに、化学発泡法で製造した多孔質ゴムのサンプルを用意し、上記の試験と同様の試験を行った。
下記表5に、化学発泡法で製造した多孔質ゴムの各サンプルを示す。
Figure 2018109497
この場合も、各サンプルのウィックを上述の各試験と同様のループ型ヒートパイプに用いた。作動流体としてエタノールを100ml封入し、各サンプルのウィックと作動流体の接触角は、いずれも90°未満であった。
下記表6に化学発泡多孔質ゴムを用いた場合の冷却性能試験の結果を示す。
Figure 2018109497
表6に示すように、サンプル23、サンプル24を用いた場合は、平均空孔径が大きいために毛細管力がループ型ヒートパイプの全圧力損失より小さくなってループ型ヒートパイプが駆動せず、冷却性能を確認することができなかった。サンプル25を用いた場合は、ループ型ヒートパイプが駆動できたものの、上述の水発泡シリコーンゴムや水発泡ウレタンゴムの各サンプルを用いた場合に比べて蒸発部温度と熱抵抗が高くなった。これは、サンプル25の多孔質ゴムの平均空孔径、空孔率、連泡率のいずれもが、上述の好ましい範囲(平均空孔径が50μm以下、空孔率が20%以上80%以下、連泡率が25%以上100%以下の範囲)から外れているためと考えられる。
以上のように、水発泡法は化学発泡法に比べて高い空孔率で微細な空孔を均一に形成することができるため、特に水発泡法で製造されたウィック(水発泡シリコーンゴム又は水発泡ウレタンゴム)を用いた場合は、良好な冷却性能を安定して発揮することが可能である。すなわち、水発泡法によれば、多孔質ゴムの発泡状態を上述の好ましい範囲(平均空孔径が50μm以下、空孔率が20%以上80%以下、連泡率が25%以上100%以下)に調整することができるので、作動流体が浸透しやすく大きな毛細管力を発揮できるウィックを製造することが可能である。また、水発泡法によれば、ウィック用の多孔質ゴム(水発泡シリコーンゴム又は水発泡ウレタンゴム)の量産化にも好適である。
また、ウィックのSP値と作動流体のSP値との相対的関係、及びウィックと作動流体との接触角が、ループ型ヒートパイプの冷却性能に与える影響を確認する試験を行った。
下記表7に、本試験に用いられた各ウィックサンプルの材料、製法、平均空孔径、空孔率、連泡率と、作動流体の種類、作動流体とウィックとの各SP値及びその差、ウィックと作動流体との接触角を示す。作動流体としては、フッ素系溶剤の1つであるHFE−347(旭硝子社製AE−3000)又は純水を用いた。本試験での水発泡法による各サンプルの製造条件、及び平均空孔径、空孔率、連泡率の各調整方法は、上記の試験における水発泡法と同様である。また、本試験では、ループ型ヒートパイプとして、上記の試験で用いられたものと同様のループ型ヒートパイプを用いた。
Figure 2018109497
下記表8に、本試験の結果を示す。
本試験での蒸発部温度、熱抵抗、最大水頭差のそれぞれの測定方法は、上記の試験と同様である。
Figure 2018109497
表8に示すように、サンプル26においては、ループ型ヒートパイプが良好に駆動し、冷却性能を発揮することができた。しかしながら、その他のサンプル27〜29においては、冷却性能を評価又は確認することができなかった。
詳しくは、サンプル27の場合、ウィックの溶解が見られたため性能評価を行うことができなかった。これは、作動流体のSP値がウィックのSP値よりも小さいことが原因と考えられる。このことから、ループ型ヒートパイプに用いられる作動流体とウィック材料との組み合わせは、作動流体のSP値がウィック材料のSP値より大きくなるような組み合わせとすることが好ましいと言える。
また、サンプル28又は29の場合は、作動流体がウィックに浸透しなかったため、ループ型ヒートパイプが駆動せず、冷却性能を確認することができなかった。これは、ウィックと作動流体との接触角が90°以上となっていたことが原因と考えられる。よって、作動流体がウィックに浸透して冷却性能が発揮されるようにするには、ウィックと作動流体との接触角が90°未満となっていることが好ましいと言える。
図4に、本実施形態に係るループ型ヒートパイプを備える電子機器を示す。
図4に示す電子機器20は、光学ユニット21を備えるプロジェクタである。なお、プロジェクタは、本発明を適用する電子機器の一例である。本発明は、プロジェクタに限らず、プリンタ、複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置、パーソナルコンピュータ、サーバ、電子黒板、テレビ、ブルーレイレコーダ、ゲーム機等の種々の電子機器に適用可能である。
ループ型ヒートパイプ1の蒸発部2(特に受熱部7)は光学ユニット21の発熱部に対して接触するように配置されている。蒸発部2は発熱部から熱を吸収して冷却対象(発熱部、光学ユニット又はプロジェクタ)を冷却する。凝縮部3はプロジェクタ本体の筐体側面に設けられた排気ファン22の近傍に配置されている。排気ファン22が外部に空気を排出することで、凝縮部3の周囲に気流が発生し、当該気流によって凝縮部3が冷却され、凝縮部3における放熱効果が向上する。また、排気ファン22が設けられた筐体側面とは反対側の側面には給気口23が設けられており、給気口23から吸気された空気がプロジェクタ内を通って排気ファン22から排出される。この例では、プロジェクタを冷却する冷却装置として、ループ型ヒートパイプ1と、ループ型ヒートパイプ1の放熱効果を高めるための排気ファン22とを備えているが、排気ファン22の代わりに凝縮部3へ空気を送風する送風ファンを設けてもよい。また、ファンを備えず、ループ型ヒートパイプのみ備える冷却装置であってもよい。
また、本発明に係るループ型ヒートパイプや冷却装置は、電子機器以外のものにも適用可能である。例えば、反応炉を備える化学プラント等を冷却する冷却装置に、本発明に係るループ型ヒートパイプや冷却装置を適用してもよい。
1 ループ型ヒートパイプ
2 蒸発部
3 凝縮部
4 蒸気管
5 液管
6 ウィック
20 電子機器
特許第5699452号公報 特開2011−190996号公報

Claims (11)

  1. 外部から熱を吸収して作動流体を液相から気相へと蒸発させる蒸発部と、
    前記蒸発部から導かれた気相の作動流体を液相へと凝縮させる凝縮部と、
    を備え、
    凝縮した液相の作動流体を前記蒸発部に還流させるループ型ヒートパイプのウィックであって、
    多孔質ゴムにより構成されていることを特徴とするウィック。
  2. 前記多孔質ゴムは発泡シリコーンゴム又は発泡ウレタンゴムである請求項1に記載のウィック。
  3. 前記多孔質ゴムは水発泡シリコーンゴム又は水発泡ウレタンゴムである請求項1に記載のウィック。
  4. 前記多孔質ゴムは、
    平均空孔径が50μm以下、
    空孔率が20%以上80%以下、
    連泡率が25%以上100%以下
    である請求項1から3のいずれか1項に記載のウィック。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載のウィックを備えることを特徴とするループ型ヒートパイプ。
  6. 前記ウィックと前記作動流体との接触角が90°未満である請求項5に記載のループ型ヒートパイプ。
  7. 前記作動流体のSP値が、前記ウィックのSP値より大きい請求項5又は6に記載のループ型ヒートパイプ。
  8. 請求項5から7のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプを備えることを特徴とする冷却装置。
  9. 請求項5から7のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプを備えることを特徴とする電子機器。
  10. 液状ゴム及び溶媒を乳化させ、前記溶媒を除去することで発泡構造を形成する多孔質ゴムの製造方法であって、
    平均空孔径が50μm以下、
    空孔率が20%以上80%以下、
    連泡率が25%以上100%以下
    であることを特徴とする多孔質ゴムの製造方法。
  11. ループ型ヒートパイプ用ウィックの製造方法であって、
    液状ゴム及び溶媒を乳化させる乳化工程と、
    所定の形状に成型する成型工程と、
    前記溶媒を除去して発泡構造を形成する工程と
    を有し、
    平均空孔径が50μm以下、
    空孔率が20%以上80%以下、
    連泡率が25%以上100%以下
    であることを特徴とするループ型ヒートパイプ用ウィックの製造方法。
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