JP2021099176A - 蒸発器及びループ型ヒートパイプ - Google Patents
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Abstract
Description
このような冷却方法の一つとして、蒸発器と凝縮器との間に管を介して流体を循環させて冷却するループ型ヒートパイプが知られている。
かかるループ型ヒートパイプは、一般に液相の流体を蒸発器に流入させることで蒸発器内部のウィックと呼ばれる多孔質体に毛細管現象によって浸透させ、ウィック表面に染み出た流体に冷却対象からの熱を受熱させることで、流体を液相から気相へと相転移する。そして、この相転移する際の気化熱を用いて、冷却対象を冷却する。
気化された流体は、凝縮器において冷却されてまた液相に戻るとともに、気化した流体の圧力によって蒸発器側へ再度遷移することで循環する。
冷却装置100は、蒸発器10と、凝縮器20と、蒸発器10と凝縮器20とを連結するパイプ状の管部30と、蒸発器10よりも循環方向上流側に配置された液溜部40と、を有し、内部に流れる冷媒としての作動流体Qが、気相と液相とを相転移しながら循環することで冷却対象である熱源200を冷却する循環型のヒートパイプである。
なお、以降の説明では、図1の上側をZ方向、Z方向に垂直な紙面垂直方向をY方向、Z方向に垂直な紙面右手方向をX方向として説明を行う。
蒸発器10と凝縮器20とを結ぶ管部30のうち、特に蒸発器10から凝縮器20へと作動流体Qが気相で移動するパイプを蒸気管31、凝縮器20から液溜部40を経由して蒸発器10へと至るまでのパイプを液管32と呼称する。
凝縮器20は、所謂ラジエータであって、作動流体Qの熱を放熱することで作動流体Qを気相から液相へと相変化させる。液相となった作動流体Qは、気相側からの圧力によって循環方向へと押されるため、液管32を伝わって液溜部40へと移動する。
蒸発器10は本実施形態では図3に示すように断面が円形の円柱形状であり、受熱部1が形成される面は円柱の側面を構成する曲面形状である。
蒸発器10は、筐体11内部に配置された多孔質部材たる多孔質ウィック4と、多孔質ウィック4と受熱部1との間に形成された溝部たる蒸気溝3と、多孔質ウィック4によって受熱部1と隔てられて作動流体Qを筐体11内部に保持するための滞留部5と、を有している。特に図2、図3においては、作動流体Qで占められた液相作動流体流入空間が滞留部5に相当する部分である。
また、本実施形態においては、蒸気溝3は少なくとも多孔質ウィック4と受熱部1との間には形成されているが、その他の場所にも形成されるとしても良い。
蒸発器10の受熱部1の内壁面12には、図5に拡大して図示するように、内側に向かって突出した凸部13が複数形成されており、多孔質ウィック4が蒸発器10に挿入されることで、筐体11と多孔質ウィック4とに囲まれた通気路が蒸気溝3として機能する。
すなわち受熱部1における蒸発器10の内壁面12は、対向する多孔質ウィック4の外側面に形成された凹部の幅よりも小さい幅を有する凸部13を少なくとも1箇所以上有している。
多孔質ウィック4の材料には例えばシリコンゴムのような熱伝導率の低いゴムや、PTFE等の樹脂を用いることが好ましい。あるいは、金属を用いる場合には、熱伝導率の比較的低いステンレス粉末の焼結体等を用いても良い。
多孔質ウィック4は、可撓性を持った材料であることがより好ましく、このような場合には、筐体11に圧入されて密着性が向上する。
多孔質ウィック4が筐体11に挿入された状態において、図3あるいは図5に示すように凸部13の間に多孔質凸部41が入り込むことで、多孔質凸部41の両側に空隙部43が形成される。言い換えれば空隙部43は多孔質凸部41の側面と、凸部13の側面と、内壁面12と、多孔質凹部42と、で囲まれた空間を示している。
このとき、多孔質凹部42の底面部42aには、凸部13の頂部が突き当たるように当接して配置される。
同様に、多孔質凸部41の頂部41aは、筐体11の内壁面12に突き当たるように当接して配置される。
このように、多孔質凹部42の深さdと、凸部13の高さとが一致するように設けられることが最も好ましい。また、同様に多孔質凸部41の高さと、凸部13の高さとが一致するように設けられることがさらに好ましい。
滞留部5は、液溜部40と液管32を介して接続されている。
蒸発器10’は、熱源200と当接して取り付けられる筐体11’と、多孔質部材4’と、筐体11’の熱源200と当接した側の壁面に形成された蒸気溝3’と、を有している。
通常、作動流体Qは、液管32’から液相で流入すると、多孔質部材4’の微細孔に毛細管現象によって浸透し、筐体11’からの熱によって蒸発する。気相となった作動流体Qは蒸気管31’から排出される。
このとき、多孔質部材4’の熱源200側の面と、筐体11’との間に間隙すなわち蒸気溝3’があることによって、多孔質部材4’に浸透した液相の作動流体Qが蒸発しやすくなり、熱交換効率が向上する。
しかしながら、本実施形態のように発泡ゴムで構成されるような多孔質ウィック4には、細かい蒸気溝3の加工形成が難しく、溝幅やピッチを1mm以下のレベルで加工することが非常に難しい。
また、単位面積当たりの溝数を増やせないことで、冷却効率と小型化との両立が難しいという問題が知られている。
また、筐体11’は内圧に対しての耐圧性が必要となるため、蒸気溝3’の凹部を構成する内壁面の薄肉部の厚みd1は、設計上所定の厚み以上に抑えることは難しい。
さらに、内壁面の厚肉部の厚みd2とすると、熱源200から作動流体Qまでの距離が広くなってしまう。
このような筐体11’の厚肉部である凸部13’の頂部までの厚みd2によって生じる温度差は、例えば熱源200として10W/cm2以上の高発熱密度の物体を仮定して試算した場合には、10度以上にも達する場合があり、好ましくない。
また、内壁面12に形成された凸部13の先端が、多孔質凹部42の底部に当接し、かつ凸部13の両側に多孔質凹部42の側壁との間で空隙部43が形成される。
このように、蒸発器10の内壁面12に複数の凸部13を有するとともに、多孔質ウィック4にも多孔質凸部41と多孔質凹部42とを形成することによって、図9に示すように、多孔質ウィック4と筐体11との間で形成される空隙部43が蒸発溝3として機能するため、蒸発溝3の単位面積当たりの本数を向上させることができて、熱交換効率の向上に寄与する。
また、作動流体Qの蒸発を、図9に一点鎖線で囲って示すように、厚みd1の薄肉部(すなわち凹部12の底面部)と、厚みd2の厚肉部(すなわち凸部13の頂部)との両方で行うことができるので、熱源200に近接した位置で熱交換が行えるので筐体11の熱抵抗の影響を小さく抑え、冷却性能の向上に寄与する。
図10(a)に示すように、凸部13の高さdが、多孔質凸部41の高さd’よりも長い場合(d>d’)には、図10(b)に示すように組み付け時に圧力がかかることで、多孔質凹部42が凸部13によって押圧されて多孔質ウィック4の形状が不安定となり、想定した接触状態が得られない虞がある。
かかる構成によれば、図8に示した理想的な構成に近い状態で熱交換がなされるので、熱交換効率の低下を防ぐことができる。
なお、このとき図8で説明したように、多孔質凸部41が過度に潰されてしまうほどの差が生じると好ましくないため、多孔質ウィック4の微細組織を潰さない程度に、具体的には多孔質凸部41の押し潰し量が20%以内に収まるようにd、d’のそれぞれの数値をd’≧dの範囲内で適宜設定することが望ましい。
かかる構成によれば、図8に示した理想的な構成に近い状態で熱交換がなされるので、熱交換効率の低下を防ぐことができる。
また、多孔質ウィック4に形成された多孔質凸部41と多孔質凹部42との数と、筐体11に形成された凸部13の数とは、多孔質ウィック4が筐体11に圧入された時に互いに噛み合うように交互に設けられても良いが、図13に示すように多孔質凹部42に複数の凸部13が当接したり、あるいは図14に示すように複数の多孔質凸部41が凸部13の間の内壁面12に当接することとしても良い。
また、図10〜図14においては説明の簡素化のため多孔質ウィック4の一部を抜き出し、平板形状での組み合わせを述べたが、図3に示したように円筒形状であっても同様の構成で形成することができる。
具体的には、多孔質凹部42の側壁(あるいは多孔質凸部41の側壁)の間に凸部13が位置するように位置関係を調整することが望ましい。
しかしながら、本実施形態のように、1mm以下のピッチで蒸気溝3を設けたいような場合には、目視で組付けすることは難しい。
また、かかる構成とした場合には、内壁面12の平坦部12aの幅Lは、多孔質凸部41の頂部41aの平坦部の幅L’と一致するように傾斜部13aの斜度を定めることがより好ましい。
また、言うまでもないが、蒸発器10の形状を円柱形状とした場合には、「内壁面12に対して垂直な方向」は円柱の中心軸へ向かう方向となり、当該方向に対して傾斜して傾斜部が形成される。
また、上述した各変形例を適宜組み合わせて用いたとしても良い。
3 蒸気溝
4 多孔質部材(多孔質ウィック)
5 滞留部
10 蒸発器
11 筐体
20 凝縮器
30 管部
31 蒸気管
32 液管
41 多孔質凸部
42 多孔質凹部
43 空隙部
100 冷却装置
Q 作動流体
Claims (6)
- 筐体の受熱部が受熱することで筐体内部の流体を液相から気相へと相転移させる蒸発器であって、
前記受熱部における前記蒸発器の内壁と前記流体との間において溝部を形成された多孔質部材を有し、
前記内壁は、前記溝部の凹部の幅よりも小さい幅を有する凸部を少なくとも1箇所以上有し、
前記蒸発器の前記内壁に形成された前記凸部の先端部が前記溝部の前記凹部の底部に当接し、かつ前記凸部の両側に前記凹部の側壁との間で形成される空隙部を有する蒸発器。 - 請求項1に記載の蒸発器であって、
前記受熱部において内壁側に設けられた前記凸部の高さは前記凹部の深さと同等以下であり、
前記多孔質部材の前記凹部の形成部分の縦弾性係数が、前記凸部の縦弾性係数よりも小さいことを特徴とする蒸発器。 - 請求項1または2に記載の蒸発器であって、
前記多孔質部材に設けられた前記凹部の側壁と、前記凸部の側面とのうち、少なくとも何れか一方が前記受熱部の前記内壁に対して垂直な方向から傾斜して起立することを特徴とする蒸発器。 - 請求項1乃至3の何れか1つに記載の蒸発器であって、
前記受熱部は平面形状の受熱面を備えることを特徴とする蒸発器。 - 請求項1乃至3の何れか1つに記載の蒸発器であって、
前記受熱部は曲面形状の受熱面を備えることを特徴とする蒸発器。 - 請求項1乃至5の何れか1つに記載の蒸発器と、
前記流体が気相となって流れ込み冷却される凝縮器と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続してループを形成する管と、
前記蒸発器と前記凝縮器と前記管との間を気相と液相に変化しながら循環する作動流体と、
を有することを特徴とするループ型ヒートパイプ。
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