JP7501841B2 - 低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法、組成物、及び、低分子量ポリテトラフルオロエチレン - Google Patents

低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法、組成物、及び、低分子量ポリテトラフルオロエチレン Download PDF

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Description

本開示は、低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法、組成物、及び、低分子量ポリテトラフルオロエチレンに関する。
分子量数千から数十万の低分子量ポリテトラフルオロエチレン(「ポリテトラフルオロエチレンワックス」や「ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダー」とも呼ばれる)は、化学的安定性に優れ、表面エネルギーが極めて低いことに加え、フィブリル化が生じにくいので、滑り性や塗膜表面の質感を向上させる添加剤として、プラスチックス、インク、化粧品、塗料、グリース等の製造に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法としては、重合法、放射線分解法、熱分解法等が知られている。放射線分解法では、従来、空気雰囲気下で高分子量ポリテトラフルオロエチレンに放射線を照射して低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得るのが一般的である。
また、放射線分解法によって副生し得るパーフルオロカルボン酸及びその塩を低減する方法の検討も行われている(例えば、特許文献2及び3参照)。
特開平10-147617号公報 国際公開第2018/026012号 国際公開第2018/026017号
本開示は、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸及びその塩を生成させにくい低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法を提供することを目的とする。
本開示は、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sである低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法であって、実質的に酸素の不存在下で高分子量ポリテトラフルオロエチレンに放射線を照射することにより、上記高分子量ポリテトラフルオロエチレンを低分子量化する工程(1)、及び、上記照射により生成した主鎖ラジカル及び末端ラジカルの少なくとも一部を実質的に酸素の不存在下で失活させることにより、上記低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得る工程(2)を含むことを特徴とする低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法に関する。
本開示は、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sである低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法であって、実質的に酸素の不存在下で高分子量ポリテトラフルオロエチレンに放射線を照射することにより、上記高分子量ポリテトラフルオロエチレンを低分子量化する工程(1)、及び、工程(1)で得られた低分子量化物を実質的に酸素の不存在下、ポリテトラフルオロエチレンの室温転移温度(β分散温度である19℃)以上の温度で加温又は加熱処理することにより、上記低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得る工程(2a)を含むことを特徴とする低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法にも関する。
工程(2a)における加温又は加熱処理を、70℃以上の温度で行うことが好ましい。
工程(2a)における加温又は加熱処理を、10分以上の時間行うことが好ましい。
本開示は、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sである低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法であって、実質的に酸素の不存在下で高分子量ポリテトラフルオロエチレンに放射線を照射することにより、上記高分子量ポリテトラフルオロエチレンを低分子量化する工程(1)、及び、工程(1)で得られた低分子量化物を、実質的に酸素が不存在である環境下に5分間以上保持することにより、上記低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得る工程(2b)を含むことを特徴とする低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法にも関する。
工程(2b)における保持を、10時間以上行うことが好ましい。
本開示は、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sである低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法であって、実質的に酸素の不存在下で高分子量ポリテトラフルオロエチレンに放射線を照射することにより、上記高分子量ポリテトラフルオロエチレンを低分子量化する工程(1)、及び、上記照射により生成した主鎖ラジカル及び末端ラジカルの少なくとも一部を実質的に酸素の不存在下で失活させることにより、上記低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得る工程(2)を含み、工程(1)及び(2)を同時に実施することを特徴とする低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法にも関する。
工程(1)における放射線の線量が100kGy以上であることが好ましい。
工程(1)における放射線の線量が250kGy以上であることも好ましい。
工程(1)における放射線の線量が300kGy以上であることも好ましい。
工程(1)における放射線の線量が100~1000kGyであることも好ましい。
工程(1)における放射線の線量が150~750kGyであることも好ましい。
工程(1)における放射線の線量が250~500kGyであることも好ましい。
工程(1)を、実質的に添加剤の不存在下で実施することも好ましい。
工程(1)を、実質的に、連鎖移動可能な物質の不存在下で実施することも好ましい。
工程(1)を、実質的に、水素原子及び連鎖移動可能なハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種を含む有機化合物、並びに、ハロゲンガスの不存在下で実施することも好ましい。
工程(1)において、添加剤の存在量が上記高分子量ポリテトラフルオロエチレンに対し0.001質量%未満であることも好ましい。
工程(1)において、連鎖移動可能な物質の存在量が上記高分子量ポリテトラフルオロエチレンに対し0.001質量%未満であることも好ましい。
工程(1)において、水素原子及び連鎖移動可能なハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種を含む有機化合物、並びに、ハロゲンガスの存在量が上記高分子量ポリテトラフルオロエチレンに対し0.001質量%未満であることも好ましい。
工程(1)の開始から工程(2)の終了までの期間中、実質的に酸素が不存在の状態を維持することも好ましい。
工程(1)を実施する雰囲気中の酸素濃度が2.0体積%未満であることも好ましい。
工程(2)を実施する雰囲気中の酸素濃度が2.0体積%未満であることも好ましい。
工程(1)の開始から工程(2)の終了までの期間中、雰囲気中の酸素濃度を2.0体積%未満に維持することも好ましい。
工程(1)を実施する雰囲気中の酸素濃度が1.0体積%未満であることも好ましい。
工程(2)を実施する雰囲気中の酸素濃度が1.0体積%未満であることも好ましい。
工程(1)の開始から工程(2)の終了までの期間中、雰囲気中の酸素濃度を1.0体積%未満に維持することも好ましい。
工程(1)、工程(2)、又は、工程(1)及び(2)の両方を実施する雰囲気中の酸素濃度を、酸素吸着剤により1.0体積%未満に維持することも好ましい。
工程(2)を、ラジカル捕捉能を有する物質の存在下で実施することも好ましい。
上記ラジカル捕捉能を有する物質が、遊離水素原子を生成し得る物質であることも好ましい。
上記ラジカル捕捉能を有する物質が、水素ガス、フッ素ガス、塩素ガス、臭素ガス、ヨウ素ガス、アルカンガス、アルケンガス、アルキンガス、フルオロアルカン、テトラフルオロエチレン、一酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、水、アミン類、アルコール類及びケトン類からなる群より選択される少なくとも1種であることも好ましい。
上記ラジカル捕捉能を有する物質が、水素ガスであることも好ましい。
上記ラジカル捕捉能を有する物質が、水であることも好ましい。
工程(2)を、酸素吸着剤の存在下で実施し、上記ラジカル捕捉能を有する物質が、上記酸素吸着剤から発生した水であることも好ましい。
上記低分子量ポリテトラフルオロエチレンは、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sであることも好ましい。
上記高分子量ポリテトラフルオロエチレンは、標準比重が2.130~2.230であることも好ましい。
上記高分子量ポリテトラフルオロエチレン及び上記低分子量ポリテトラフルオロエチレンがいずれも粉末であることも好ましい。
上記製造方法は、工程(1)の前に、更に、上記高分子量ポリテトラフルオロエチレンを、その一次融点以上に加熱することにより成形品を得る工程(3)を含み、上記成形品は、比重が1.0g/cm以上であることも好ましい。
本開示は、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sである低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法であって、放射線照射時の試料温度がポリテトラフルオロエチレンの室温転移温度(β分散温度である19℃)以上、320℃以下、線量率が0.1kGy/s以上の条件下で高分子量ポリテトラフルオロエチレンに放射線を照射することにより、上記低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得る工程(X)を含むことを特徴とする低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法にも関する。
本開示は、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sである低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法であって、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sであるポリテトラフルオロエチレンに実質的に酸素の不存在下で放射線を照射することにより、上記ポリテトラフルオロエチレンを低分子量化する工程(Y1)、及び、上記照射により生成した主鎖ラジカル及び末端ラジカルの少なくとも一部を実質的に酸素の不存在下で失活させることにより、上記低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得る工程(Y2)を含むことを特徴とする低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法にも関する。
本開示は、上記のいずれかの製造方法により得られる低分子量ポリテトラフルオロエチレンにも関する。
本開示は、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sであり、大気下での電子スピン共鳴測定により得られるピークが以下の関係式(1)及び(2)を充足し、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が25質量ppb未満である低分子量ポリテトラフルオロエチレンにも関する。
関係式(1):Peak M2/Peak A1≧1.0
(式中、Peak M2は低分子量ポリテトラフルオロエチレンの分子鎖末端に捕捉された過酸化ラジカルに対応する負のピーク強度の絶対値を表し、Peak A1は低分子量ポリテトラフルオロエチレンの主鎖上に捕捉されたアルキル型過酸化ラジカルに対応する負のピーク強度の絶対値を表す。)
関係式(2):Peak M2/Peak M3<1.0
(式中、Peak M2は低分子量ポリテトラフルオロエチレンの分子鎖末端に捕捉された過酸化ラジカルに対応する負のピーク強度の絶対値を表し、Peak M3は低分子量ポリテトラフルオロエチレンの分子鎖末端に捕捉された過酸化ラジカルに対応する正のピーク強度の絶対値を表す。)
本開示は、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sであり、=CHF、-CHF-、-CHF、-CHF及び-CHからなる群より選択される少なくとも1種の水素原子を含む分子構造と、分子鎖末端のCF-と、-CF=CF-、-CF=CF及び-CF=CF-CFからなる群より選択される少なくとも1種の二重結合を含む分子構造とを含み、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が25質量ppb未満である低分子量ポリテトラフルオロエチレンにも関する。
本開示は、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sであり、-CFCF(CF)CF-及び-CF(CFからなる群より選択される少なくとも1種の分子構造と、分子鎖末端のCF-と、-CF=CF-、-CF=CF及び-CF=CF-CFからなる群より選択される少なくとも1種の二重結合を含む分子構造とを含み、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が25質量ppb未満である低分子量ポリテトラフルオロエチレンにも関する。
上記低分子量ポリテトラフルオロエチレンが、上記のいずれかの製造方法により得られることも好ましい。
上記低分子量ポリテトラフルオロエチレンは、分子鎖末端に主鎖炭素数10個あたり5個以下のカルボキシル基を有することも好ましい。
本開示によれば、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸及びその塩を生成させにくい低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法を提供することができる。
実施例1-3において、真空下、150℃で熱処理した試料の電子スピン共鳴(ESR)スペクトルを示す図である。 実施例1-3において、真空下、各温度で熱処理した試料のESRスペクトルの収量の、0時間を100%としたときの減衰率を示す図である。 真空下での電子スピン共鳴(ESR)測定で得られるピークの一例を示す図である。 大気下での電子スピン共鳴(ESR)測定で得られるピークの一例を示す図である。
以下、本開示を具体的に説明する。
本開示は、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sである低分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の製造方法であって、実質的に酸素の不存在下で高分子量PTFEに放射線を照射することにより、上記高分子量PTFEを低分子量化する工程(1)、及び、上記照射により生成した主鎖ラジカル及び末端ラジカルの少なくとも一部を実質的に酸素の不存在下で失活させることにより、上記低分子量PTFEを得る工程(2)を含むことを特徴とする低分子量PTFEの製造方法に関する。
従来の低分子量PTFEを製造する方法の一般的な条件である空気雰囲気下で高分子量PTFEに放射線を照射すると、高分子量PTFEよりも結晶化熱量の高く、溶融粘度の小さい低分子量PTFEが生成すると同時に、副生成物として炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸又はその塩が生成する。これらの副生成物の化合物は、自然界には存在せず分解され難い物質であり、更には、生物蓄積性が高いことが指摘されている炭素数が8のパーフルオロオクタン酸又はその塩、炭素数が9のパーフルオロノナン酸又はその塩、及び炭素数が10、11、12、13、14の、それぞれパーフルオロデカン酸パーフルオロウンデカン酸、パーフルオロドデカン酸、パーフルオロトリデカン酸、パーフルオロテトラデカン酸、又はそれぞれの塩、が含まれている。
従来の製造方法における照射条件で高分子量PTFEに放射線を照射した場合、酸素による酸化分解反応が起きており、主鎖切断が効率的に起き、炭素数が8のパーフルオロオクタン酸又はその塩が25ppb以上生成してしまう。
また、実質的に酸素の不存在下での室温での放射線の照射によって生成した主鎖ラジカル及び末端ラジカルが、照射後に空気中の酸素と反応することによっても、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸又はその塩が25ppb以上生成し得ることが、本発明者らにより見出された。
本開示の製造方法では、実質的に酸素の不存在下で上記高分子量PTFEに放射線を照射し、照射によって生成したラジカルを酸素と反応させることなく失活させるので、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸及びその塩が生成しない、あるいは、生成しにくい。
本開示の製造方法は、系内を均等に実質的に酸素不在の環境にすることが可能なので、一度に10kg以上の高分子量PTFEの処理を行う等のスケールアップした系に適用した場合であっても、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸又はその塩が生成しない、あるいは生成しにくい。
工程(1)では、実質的に酸素の不存在下で高分子量PTFEに放射線を照射することにより、上記高分子量PTFEを低分子量化する。
上記低分子量化は、上記放射線の照射により、上記高分子量PTFEの主鎖が切断されることによって達成されると考えられる。
上記放射線としては、電離性放射線であれば特に限定されず、電子線、ガンマ線、X線、中性子線、高エネルギーイオン等が挙げられるが、電子線、ガンマ線、あるいは、X線が産業利用上好ましい。
電子線は、例えば、電子加速器から発生させることができる。
ガンマ線は、例えば、ラジオアイソトープから発生させることができる。
X線は、例えば、粒子加速器からの粒子線を金属等のターゲットに照射することにより発生させることができる。また、高エネルギー電子線にレーザー光を衝突させ、逆コンプトン散乱(レーザーコンプトン散乱)により準単色性のX線を発生させることができる。更には、シンクロトロン放射によってX線を発生させることができるほか、粒子加速器の下段にアンジュレータやウィグラーを設置してX線を発生させてもよい。
上記放射線の吸収線量は、例えば、100kGy以上であることが好ましく、150kGy以上であることがより好ましく、200kGy以上であることが更に好ましく、250kGy以上であることが特に好ましく、300kGy以上であることが最も好ましい。また、上記吸収線量は、1000kGy以下であることが好ましく、750kGy以下であることがより好ましく、500kGy以下であることが更に好ましい。
上記数値範囲は、例えば、室温(25℃)での照射において好適に採用できる。
また、放射線照射は、所望の吸収線量に到達するまで連続で行ってもよいし、累計で所望の吸収線量に到達するまで断続的に繰り返し行ってもよい。
吸収線量を上記範囲内とすることにより、実質的に酸素不存在下であっても、上記高分子量PTFEを低分子量化することができる。吸収線量は目標の分子量に応じて最適化することが好ましい。
上記放射線の照射の際の吸収線量率は、特に限定されないが、例えば、コバルト60等から放出されるγ線においては、0.1kGy/h以上が好ましく、1kGy/h以上がより好ましくは、2kGy/h以上が更に好ましい。
電子加速器からの電子線においては、0.1kGy/s以上が好ましく、1kGy/s以上がより好ましく、10kGy/s以上が更に好ましい。あるいは、0.1kGy/pass以上が好ましく、1kGy/pass以上がより好ましく、10kGy/pass以上が更に好ましい。
粒子加速器からの粒子線、特に電子加速器からの電子線をX線発生用のターゲットに照射して発生させたX線においては、0.1kGy/s以上が好ましく、1kGy/s以上がより好ましく、10kGy/s以上が更に好ましい。あるいは、0.1kGy/pass以上が好ましく、1kGy/pass以上がより好ましく、10kGy/pass以上が更に好ましい。
上記放射線照射にあたっては、PTFE試料全体に均一に反応が起きるように、また、均一な吸収線量分布になるように、照射を行うことが好ましい。例えば、コバルト60からのγ線の場合、γ線の透過力は距離の2乗で減衰するため、試料の厚みがある場合、γ線が照射される表面と裏面で分布が生じる。このため、当該PTFE試料を定期的に反転させる、あるいは、回転させる等の措置を行うことが好ましい。ただし、特に試料に厚みがある場合、反転させても外周部と中央部で20%~30%程度の線量分布が生じることもあるため、線量分布を均一にするためには、照射試料の密度分布や照射形状を工夫することが好ましい。
また、電子加速器からの電子線の場合、電子の加速電圧/試料表面での電子の加速エネルギーにより、浸透する深さが変化するので、均一な吸収線量分布とするため、試料を電子の透過深度以下の厚みにする、定期的に試料を反転させる等の措置を行うことが好ましい。
更に、電子加速器からの電子線をX線発生用のターゲットに照射して発生させたX線の場合、X線の透過力は距離の2乗で減衰するため、試料の厚みがある場合、X線が照射される表面と裏面で分布が生じる。このため、当該PTFE試料を定期的に反転させる、あるいは、回転させる等の措置を行うことが好ましい。ただし、特に試料に厚みがある場合、反転させても外周部と中央部で20%~30%程度の線量分布が生じることもあるため、線量分布を均一にするためには、照射試料の密度分布や照射形状を工夫することが好ましい。
上記放射線の照射における試料の温度は、-80℃近傍のγ分散温度以上、高分子量PTFEの融点以下であれば特に限定されない。融点近傍付近では高分子量PTFEの分子鎖が架橋することも知られており、低分子量PTFEを得る上では、320℃以下が好ましく、310℃以下がより好ましく、300℃以下が更に好ましい。経済的には常温から50℃程度までの温度範囲で照射することが好ましいが、放射線による分解効率を上げるため、温度を昇温して照射してもよい。
また、放射線照射継続中に試料温度が-80℃から320℃の間で変化してもよい。
以下に、照射時の試料温度及び吸収線量の組み合わせを例示するが、これらに限定されない。
上記放射線の吸収線量は、-80℃での照射においては、100kGy以上であることが好ましく、200kGy以上であることがより好ましく、250kGy以上であることが更に好ましく、300kGy以上であることが最も好ましい。また、上記吸収線量は、1200kGy以下であることが好ましく、1000kGy以下であることがより好ましく、800kGy以下であることが更に好ましい。
上記放射線の吸収線量は、50℃での照射においては、60kGy以上であることが好ましく、120kGy以上であることがより好ましく、140kGy以上であることが更に好ましく、160kGy以上であることが最も好ましい。また、上記吸収線量は、700kGy以下であることが好ましく、600kGy以下であることがより好ましく、500kGy以下であることが更に好ましい。
上記放射線の吸収線量は、100℃での照射においては、50kGy以上であることが好ましく、100kGy以上であることがより好ましく、120kGy以上であることが更に好ましく、150kGy以上であることが最も好ましい。また、上記吸収線量は、600kGy以下であることが好ましく、500kGy以下であることがより好ましく、400kGy以下であることが更に好ましい。
上記放射線の吸収線量は、150℃での照射においては、40kGy以上であることが好ましく、80kGy以上であることがより好ましく、100kGy以上であることが更に好ましく、120kGy以上であることが最も好ましい。また、上記吸収線量は、550kGy以下であることが好ましく、450kGy以下であることがより好ましく、350kGy以下であることが更に好ましい。
上記放射線の吸収線量は、200℃での照射においては、30kGy以上であることが好ましく、60kGy以上であることがより好ましく、80kGy以上であることが更に好ましく、100kGy以上であることが最も好ましい。また、上記吸収線量は、500kGy以下であることが好ましく、400kGy以下であることがより好ましく、300kGy以下であることが更に好ましい。
上記放射線照射時の温度は、工程を実施する雰囲気の温度を、熱電対、白金抵抗体等により計測する方法、試料表面又は試料内部の温度を熱電対、白金抵抗体等により接触式で計測する方法、あるいは試料表面からの赤外放射を赤外放射温度計により計測する方法等により簡便に測定できる。
工程(1)は、実質的に酸素の不存在下で実施する必要がある。
本明細書において、実質的に酸素が不存在であるとは、工程を実施する雰囲気中の酸素濃度が2.0体積%未満であることを意味する。炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸又はその塩の生成を一層抑制することができる点で、上記酸素濃度は1.0体積%以下であることが好ましく、1.0体積%未満であることがより好ましく、0.5体積%以下であることが更に好ましく、0.1体積%以下であることが更により好ましく、0.01体積%以下であることが特に好ましい。上記酸素濃度の下限は、検出限界未満の値であってよい。なお、この時の主成分ガスは、不活性ガスであってよい。上記不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、これらの混合ガス等が挙げられる。産業利用上は窒素ガスが好ましい。
上記酸素濃度は、工程を実施する雰囲気、例えば上記高分子量PTFEを配置する容器内の気相部分をガスクロマトグラフィーにて分析する方法や、酸素濃度測定機を用いる方法、上記容器内に設置した酸素検知剤の色調を調べる方法により簡便に測定できる。
また、工程(1)を実施する環境は、加圧下、大気圧下、減圧環境のいずれであってもよい。工程(1)における分解ガスの発生による作業環境の安全対策上は、減圧環境が好ましい。ここでいう、減圧環境とは、ダイヤフラムポンプや、油回転ポンプ、スクロールポンプ等の真空ポンプで真空度100Pa以下に脱気した環境を意味する。炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸又はその塩の生成を一層抑制することができる点で、真空度は、10Pa以下が好ましく、1Pa以下がより好ましい。
上記工程(1)中の減圧環境を維持する方法として、減圧用密閉容器を用いてもよいし、真空ポンプにより容器内を常時真空排気しながら減圧環境を維持してもよく、断続的に真空ポンプのオン・オフを繰り返して容器内の減圧環境を維持してもよい。
環境内に存在する酸素を除去し、実質的な酸素不在の環境とするため、酸素吸着剤を使用してもよい。酸素吸収剤は、脱酸素剤とも呼ばれ、同義である。もちろん酸素吸着剤は上記の方法と併用して用いてもよい。併用の方法としては、上記密閉容器内に上記高分子量PTFEと一緒に酸素吸着剤を入れておくほか、当該密封容器の内側に酸素吸着剤を均一、あるいは不均一にコートしておいてもよい。
工程(1)を実質的に酸素の不存在下で実施する方法としては、例えば、内部に実質的に酸素が存在しない空間内で工程(1)を実施する方法が挙げられる。
上記内部に実質的に酸素が存在しない空間とは、工程(1)及び工程(2)の実施中、当該空間内の酸素濃度を局所的に調整できるような空間を意味する。
例えば、内部空間の酸素濃度を調整できるように密閉が可能な容器(以下、密閉容器という)が挙げられる。
あるいは、工程(1)及び工程(2)を実施する空間を、局所的に、不活性ガスによるガスシャワーや真空ポンプシステムによる差動排気により、実質的に酸素が存在しない空間としてもよい。
また、上記工程(1)中の実質的に酸素が存在しない状態を、不活性ガスを用いて維持する方法として、密閉容器を用いてもよいし、不活性ガスを流通しながら維持してもよく、断続的に不活性ガスの流通のオン・オフを繰り返して維持してもよい。
上記密閉容器には、後述する不活性ガス等を吸排気したり、上記密閉容器内のガスを排気したりするための配管が接続されていてもよく、他の配管、蓋、バルブ、フランジ等が接続されていてもよい。また、その形状は特に限定されず、円柱状、角柱状、球状等であってよく、内容積可変な袋であってもよい。また、その素材も特に限定されず、金属、ガラス、ポリマー、それらを積層した複合材料等であってよい。上記密閉容器は、放射線を透過し、かつ放射線の照射によって劣化しない材質・構造のものが好ましいが、それに限定されるものではない。また、上記密閉容器は耐圧容器に限定されない。
上記密封容器において、特に内容積可変な袋の素材としては、エチレン-プロピレンゴム、テトラフルオロエチレン-プロピレンゴム、クロロプレンゴム、ポリエステルエラストマー等の物理的な応力による密閉が可能なラバー素材の他、熱融着やエポキシ系等の接着剤による密閉が可能な素材が好ましい。その中でも熱融着による密閉が可能な熱可塑性有機材料が特に好ましい。工程(1)の放射線照射に耐えられる点で、上記熱可塑性有機材料のなかでも、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリアミドイミド(PAI)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリビニリデンフルオライド、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)等が好ましい。また、これらの材料は、2層、3層等の多層膜状材料であってもよく、更には、アルミホイル等と組み合わせた有機及び無機の複合多層膜状材料であってもよい。
上記密閉容器内に実質的に酸素が存在しない状態は、例えば、上記密閉容器内を実質的に真空にするか、又は不活性ガスで満たすことにより実現できる。ここで、実質的に真空であるとは、容器内の圧力が100Pa以下、好ましくは50Pa以下、より好ましくは10Pa以下であることを意味する。
上記不活性ガスは、放射線照射による高分子量PTFEの低分子量化反応、及び、上記照射によって生成した主鎖ラジカル及び末端ラジカルに対して不活性なガスであることが必要である。上記不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等のガスが挙げられる。なかでも、窒素が好ましい。
上記不活性ガスは、酸素の含有量が2.0体積%未満であることが好ましく、1.0体積%以下であることがより好ましく、1.0体積%未満であることが更に好ましく、0.5体積%以下であることが更により好ましく、0.1体積%以下であることが更により好ましく、0.01体積%以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。上記不活性ガス中の酸素の含有量が上記範囲内にあると、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸及びその塩が一層生成しにくくなる。
上記酸素の含有量は、ガスクロマトグラフィーでの分析の他、ガルバニ電池式の酸素濃度計、ジルコニア式酸素濃度計、酸素検知紙等により確認できる。
上記酸素吸着剤は、酸素を吸着する機能を有するものであれば特に限定されず、鉄系、亜鉛系、ハイドロサルファイト系等の無機系の酸素吸着剤、アスコルビン酸系、多価アルコール系、活性炭系等の有機系の酸素吸着剤等の、公知の酸素吸着効果を示す吸着剤を使用することができる。上記酸素吸着剤は、酸素との反応時に水分を必要とする水分依存型であっても、水分を必要としない自力反応型であってもよいが、自力反応型であることが好ましい。上記酸素吸着剤としては、鉄系の自力反応型酸素吸着剤、生石灰等が好ましく、なかでも、鉄系の自力反応型酸素吸着剤が好ましい。
本開示の製造方法は、工程(1)の前に、上記高分子量PTFEを実質的に酸素の不存在下で密閉容器に投入する工程を含むことが好ましい。
上記高分子量PTFEを実質的に酸素の不存在下で密閉容器に投入する方法としては、例えば、上記密閉容器内に上記高分子量PTFEを設置した後、必要に応じて酸素吸着剤を上記密閉容器に投入の上、上記密閉容器内を真空脱気する方法、上記高分子量PTFEと、不活性ガス及び酸素吸着剤からなる群より選択される少なくとも1種とを上記密閉容器に投入する方法、それらの方法の併用等が挙げられる。
より具体的には、上記密閉容器内に上記高分子量PTFEを設置した後、上記密閉容器内を真空ポンプにより減圧環境下へと脱気し、上記密閉容器を密閉する減圧脱気方法、上記密閉容器内に上記高分子量PTFEを設置し、必要に応じて上記密閉容器内を真空引きした後、上記密閉容器内を上記不活性ガスで満たすガス置換方法、更には、減圧脱気方法とガス置換方法等を繰り返すことで実質的な酸素不在にする方法、あるいは、上記密閉容器内に上記高分子量PTFEを設置し、上記密閉容器内に上記不活性ガスを流通させ続けることで酸素濃度を徐々に低下させ所望する実質的に酸素の不存在の環境にするガス流通置換方法等が挙げられる。
また、上記酸素吸着剤を使用する場合は、空気中で上記密閉容器内に上記高分子量PTFE及び上記酸素吸着剤を設置した後、上記密閉容器を密閉する方法、上記密閉容器内に上記高分子量PTFE及び上記酸素吸着剤を設置した後、上記密閉容器内を真空脱気し、上記密閉容器を密閉する方法、上記密閉容器内に上記高分子量PTFE及び上記酸素吸着剤を設置し、必要に応じて上記密閉容器内を真空脱気した後、上記密閉容器内を上記不活性ガスで満たす方法等が挙げられる。
上記高分子量PTFEとともに含ハロゲン材料を添加して工程(1)を実施してもよい。この場合の含ハロゲン材料は、固体、液体、気体を問わない。含ハロゲン材料としては、フッ素系オイルが好ましい。
上記高分子量PTFEとともに、遊離水素原子を生成し得る物質を添加して工程(1)を実施してもよい。この場合の遊離水素原子を生成し得る物質は、固体、液体、気体を問わないが、固体であることが好ましい。
上記遊離水素原子を生成し得る物質としては、炭化水素系有機材料、アミン類(アンモニア等)、水等が例示できる。
上記炭化水素系有機材料としては、パラフィン、ポリエチレン、アセチレン等が例示でき、パラフィン、ポリエチレンが好ましい。
上記遊離水素原子を生成し得る物質の添加量は、上記高分子量ポリテトラフルオロエチレンに対し、0.1質量%以上であることが好ましい。上記添加量はまた、25質量%以下であることが好ましい。
工程(1)は、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸又はその塩の生成をより抑制するために、ラジカル捕捉剤等の添加剤の存在下に実施してもよい。しかしながら、ラジカル捕捉剤を使用すると、ラジカル捕捉剤が分子鎖上に生成したラジカルと反応することでラジカルが失活し、主鎖切断反応が阻害されることにより、PTFEの主鎖切断の効率が低下することから、すなわち、主鎖の切断に要する放射線の吸収線量が高くなることから、実質的に添加剤の不存在下で工程(1)を実施することが好ましい。上記添加剤は、ラジカル捕捉能を有する添加剤であってよい。
また、実質的に添加剤が不存在であることにより、当該添加剤を取り扱う手間や設備を省くことができ、また、当該添加剤に由来する副生成物の生成を防止すること、あるいは副生成物の除去を行う設備等を省くこともできる。また、実質的に揮発性物質や雰囲気以外の気体が存在しないので、酸素の除去を、不活性ガスの流通や容器内の真空脱気により実施することができる。このため、実質的に酸素不在の環境を達成するための酸素吸着剤の使用量を減らすこともでき、実質的な酸素不在状態を効率よく、安価に実現することができる。また、酸素吸着剤の使用量の低下により、酸素吸着時の酸素吸着剤の発熱による容器等の溶融/変形/破損等も防止することができる。
上記酸素吸着剤は、上記高分子量PTFEの低分子量化を阻害するものではないので、工程(1)を上記酸素吸着剤の存在下に実施しても問題はない。
上記添加剤としては、例えば、連鎖移動可能な物質が挙げられる。上記連鎖移動可能な物質としては、なかでも、水素原子及び連鎖移動可能なハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種を含む有機化合物、並びに、ハロゲンガスが好ましい。
上記有機化合物としては、炭化水素(例えば、炭素数が1~20の飽和炭化水素)、クロロ化炭化水素(例えば、炭素数が1~18の飽和炭化水素のクロロ化物)、アルコール(例えば、炭素数が1~12の一価の飽和アルコール)、カルボン酸(例えば、炭素数が1~13の飽和モノカルボン酸)、ハロゲン原子(フッ素原子も包含される)を有するハロゲン化合物誘導体(例えば、四塩化炭素、ジクロロエーテル等)、これらの有機化合物を構成単位とする低分子あるいは高分子等が挙げられる。
上記高分子としては、フッ素原子以外のハロゲン原子を有するハロゲン化ポリマー(フッ素原子を更に有してもよい。好ましくは、塩素原子を有するポリマーである。)等が挙げられる。
上記ハロゲンガスとしては、フッ素ガス、塩素ガス、臭素ガス、ヨウ素ガス等が挙げられる。
上記添加剤が実質的に不存在であるとは、上記添加剤の存在量(合計量)が、上記高分子量PTFEに対し0.1質量%未満であることを意味する。上記存在量は、0.001質量%未満であることが好ましく、0.0005質量%以下であることが好ましく、0.0001質量%以下であることがより好ましい。下限は特に限定されないが、検出限界未満の量であってよい。
工程(1)は、実質的に、連鎖移動可能な物質の不存在下で実施することも好ましい。
工程(1)は、実質的に、水素原子及び連鎖移動可能なハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種を含む有機化合物、並びに、ハロゲンガスの不存在下で実施することも好ましい。
工程(1)は、実質的に、水素原子及び連鎖移動可能なハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種を含む有機化合物の不存在下で実施することも好ましい。
工程(1)は、実質的に、炭化水素、クロロ化炭化水素、アルコール、カルボン酸、フッ素原子以外のハロゲン原子を有するハロゲン化ポリマー、及び、ハロゲンガスの不存在下で実施することも好ましい。
工程(1)は、実質的に、炭化水素、クロロ化炭化水素、アルコール、カルボン酸、及び、フッ素原子以外のハロゲン原子を有するハロゲン化ポリマーの不存在下で実施することも好ましい。
工程(1)は、実質的に、炭素数が1~20の飽和炭化水素、炭素数が1~18の飽和炭化水素のクロロ化物、炭素数が1~12の一価の飽和アルコール、炭素数が1~13の飽和モノカルボン酸、塩素原子を有するポリマー、フッ素ガス、塩素ガス、臭素ガス及びヨウ素ガスの不存在下で実施することも好ましい。
工程(1)は、実質的に、炭素数が1~20の飽和炭化水素、炭素数が1~18の飽和炭化水素のクロロ化物、炭素数が1~12の一価の飽和アルコール、炭素数が1~13の飽和モノカルボン酸、塩素原子を有する低分子あるいは高分子(ポリマー)、フッ素ガス、塩素ガス、臭素ガス及びヨウ素ガスの不存在下で実施することも好ましい。
工程(1)は、実質的に、炭素数が1~20の飽和炭化水素、炭素数が1~18の飽和炭化水素のクロロ化物、炭素数が1~12の一価の飽和アルコール、炭素数が1~13の飽和モノカルボン酸、及び、塩素原子を有するポリマーの不存在下で実施することも好ましい。
これらの各態様において、実質的に不存在である物質の存在量は、上述した添加剤の存在量と同様の数値範囲内にあることが好ましい。
工程(2)では、上記照射により生成した主鎖ラジカル及び末端ラジカルの少なくとも一部を実質的に酸素の不存在下において失活させることにより、上記低分子量PTFEを得る。
高分子量PTFEに放射線を照射すると、PTFEの主鎖ラジカル(アルキルラジカル)及び末端ラジカルが生成する。ここで、上記主鎖ラジカルとは、PTFEの主鎖において、末端以外の部分に生成するラジカルをいい、上記末端ラジカルとは、PTFEの主鎖の末端に生成するラジカルをいう。なお、上記主鎖ラジカル及び末端ラジカルは、実質的に酸素の不存在下で放射線を照射した直後に生じているラジカルであり、これらが酸素と反応することで生じる過酸化ラジカルとは異なる。
これらのラジカル、特に主鎖の末端に生成するラジカル(末端ラジカル)が酸素と反応すると、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸又はその塩が生成することが、本発明者らにより見出された。
工程(2)では、生成捕捉される上記ラジカル、特に、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸又はその塩の生成に寄与する末端ラジカルの少なくとも一部を実質的に酸素の不存在下で失活させることにより、上記パーフルオロカルボン酸又はその塩をほとんど生成させることなく上記低分子量PTFEを得ることができる。
工程(2)は、工程(1)の後に実施することが好ましい。
工程(2)は、工程(1)の後に連続して実施することも好ましい。
また、工程(1)と工程(2)を繰り返して複数回実施してもよい。ただし、複数回実施する場合、特に末端ラジカルを失活させる工程である工程(2)で終了することが必須である。
工程(2)は、実質的に酸素の不存在下で実施する必要がある。
実質的に酸素が不存在である状態については上述したとおりであり、工程を実施する雰囲気中の酸素濃度が2.0体積%未満であることが必要であり、1.0体積%以下であることが好ましく、1.0体積%未満であることがより好ましく、0.5体積%以下であることが更に好ましく、0.1体積%以下であることが更により好ましく、0.01体積%以下であることが特に好ましい。上記酸素濃度の下限は、検出限界未満の値であってもよい。
産業プロセス上は、工程(1)における環境を保持した状態(実質的に酸素の不存在下)で工程(2)を実行することが好ましい。
工程(2)は、実質的に酸素が存在しない空間内で実施することが好ましい。
工程(2)は、工程(1)と同じ空間内で実施してもよく、異なる空間内で実施してもよい。
上記低分子量化物と酸素との接触を確実に防止する点と、工程の簡便性の点から、上記低分子量化物を、工程(1)を実施した空間内に保持したまま工程(2)に供することがより好ましい。
また、工程(2)は、工程(1)と一連の工程として連続して実施してもよい。
工程(2)を工程(1)と異なる空間内で実施する場合は、工程(1)で得られた低分子量化物を実質的に酸素の不存在下で、工程(2)を実施する空間に移し替えてもよいし、後述するように、所定の条件下、大気中で移し替えてもよい。
工程(2)は、例えば、工程(1)で得られた低分子量化物を実質的に酸素の不存在下で、PTFEの室温転移温度(β分散温度である19℃)以上の温度で加温又は加熱処理することにより、上記低分子量PTFEを得る工程(2a)(以下、加速失活プロセスともいう。)であることが好ましい。この態様によれば、比較的短時間で上記ラジカルを失活させることができる。
上記低分子量化物は、工程(1)における上記放射線の照射による上記高分子量PTFEの主鎖の切断によって生じる物質であり、上記照射により生成した主鎖ラジカル及び末端ラジカルを有している。
PTFEに生成捕捉された主鎖上のアルキルラジカルと末端ラジカルの室温でのラジカル失活の半減時間は、1000時間(文献Radiat. Phys.Chem.,Vol 50 (1997) pp601-606)であり、加熱することによりラジカル失活は、促進される。
工程(2a)における加温又は加熱処理は、PTFEの室温転移温度(β分散温度)以上の温度で実施する。PTFEの室温転移温度(β分散温度)は19℃である。
上記加温又は加熱処理の温度としては、PTFEの室温転移温度(β分散温度)(30℃)以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、100℃以上が更に好ましく、140℃以上が特に好ましく、また、310℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましく、260℃以下が更に好ましい。
上記加温又は加熱時の温度は、工程を実施する雰囲気の温度を、熱電対、白金抵抗体等により計測する方法、試料表面又は試料内部の温度を熱電対、白金抵抗体等により接触式で計測する方法、あるいは試料表面からの赤外放射を赤外放射温度計により計測する方法等により簡便に測定できる。
工程(2a)継続中に試料温度が-80℃から340℃の間で変化してもよい。
上記加温又は加熱処理の時間は、加温又は加熱の温度にもよるが、例えば、10分以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましく、4時間以上であることが更に好ましく、また、100時間未満であることが好ましく、50時間以下であることがより好ましく、30時間以下であることが更に好ましい。
上記加温又は加熱処理の時間は、試料全体が熱平衡状態となってからの時間である。
上記の時間範囲は、例えば、150℃での熱処理において、特に好適に採用できる。
上記加温又は加熱処理の方法は特に限定されないが、人工的に熱を加えることが可能な設備を用いる方法が好ましく、例えば、以下の熱処理装置を用いる方法が挙げられる。例えば、箱形乾燥器、バンド乾燥器、トンネル乾燥器、噴出流乾燥器、移動層乾燥器、回転乾燥器、流動層乾燥機、気流乾燥器、箱型乾燥器、円盤乾燥器、円筒型撹拌乾燥器、逆円錐型撹拌乾燥器、マイクロウェーブ装置、真空熱処理装置、箱型電気炉、熱風循環装置、フラッシュ乾燥機、振動乾燥機、ベルト乾燥機、押出乾燥機、スプレードライヤー、赤外線ヒータ等がある。
上記加温又は加熱処理は、例えば、実質的に酸素が存在しない空間(例えば、工程(1)で使用した密閉容器、上記低分子量化物を移し替えた密閉容器)内に保持された上記低分子量化物を加熱炉内に設置して、加熱炉内を所望の温度まで上昇させた後、所望の時間放置することにより行うことができる。
工程(2a)を実施する場合は、密閉容器として、内外に熱の移動が可能であり、かつ耐熱性を有する容器を使用することが好ましい。
上記密閉容器の素材としては、物理的な応力による密閉が可能なエチレン-プロピレンゴム、テトラフルオロエチレン-プロピレンゴム、クロロプレンゴム、ポリエステルエラストマー等のラバー素材の他、熱融着やエポキシ系等の接着剤による密閉シールが可能な素材が好ましい。その中でも熱融着による密閉が可能である熱可塑性有機材料が特に好ましい。なかでも、上記加温又は加熱処理に耐えられる点で、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリビニリデンフルオライド、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)等が好ましい。また、これらの材料は、2層、3層等の多層膜状材料であってもよく、更には、アルミホイル等と組み合わせた有機及び無機の複合多層膜状材料であってもよい。
工程(2a)を、水の存在下に実施することもできる。上記水は、水蒸気であることが好ましい。上記水は、上記高分子量PTFEに対し、20質量%未満であることが好ましく、15質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることが更に好ましく、また、0.00001質量%以上であることが好ましく、0.0001質量%以上であることがより好ましい。
工程(2)は、また、工程(1)で得られた低分子量化物を、実質的に酸素が不存在である環境下に5分間以上保持することにより、低分子量PTFEを得る工程(2b)(以下、自然失活プロセスともいう。)であってもよい。この態様においては、実質的に酸素が不存在である環境下に特定の時間保持することにより、上記ラジカル(特に末端ラジカル)を失活させるので、熱処理装置等の人工的に熱を加えることが可能な設備を使用することなく、上記ラジカルを失活させることができる。
上記低分子量化物については、上述したとおりである。
工程(2b)は、人工的に温度を制御して保持してもよいが、人工的に熱を加えることが可能な設備を使用せずに実施することが好ましい。
工程(2b)を実施した後、工程(2a)を実施してもよい。
工程(2b)において、上記低分子量化物を保持する環境の温度は、人工的に熱を加えることが可能な設備を使用することなく実現可能な温度であることが好ましい。ラジカルの失活にかかる時間を短縮できる点で、上記温度はPTFEの室温転移温度(β分散温度)(19℃)以上であることが好ましく、PTFEの室温転移温度(β分散温度)(30℃)以上であることが好ましく、40℃以上であることがより好ましい。
また、上記温度は、100℃未満であってもよく、70℃未満であってもよい。
工程(2b)継続中に試料温度が-20℃から100℃の間で変化してもよい。
工程(2b)において、上記低分子量化物を上記環境下に保持する時間は、5分間以上である。工程(1)と工程(2b)とを連続で実施する場合、上記時間は、上記照射が終了した時点からの時間を表すものとする。
上記工程(2b)における上記時間は、10分間以上であることが好ましく、1時間以上であることがより好ましく、10時間以上であることが更に好ましく、1日間以上であることが更により好ましく、50時間以上であることが更により好ましく、100時間以上であることが更により好ましく、200時間以上であることが特に好ましい。
工程(2b)を実施する方法としては、例えば、工程(1)で得られた上記低分子量化物を工程(1)で使用した実質的に酸素が存在しない空間内に保持したまま、上記の時間放置する方法が挙げられる。
上記放置は、例えば、倉庫、温室等において行うことができる。
ここで、上記温室とは、採光ガラスにより構築されたサンルーム等の建屋、農業用ビニールハウス等であって、積極的に加温・調温する設備が付帯していない建屋を含む。
工程(2)を、ラジカル捕捉能を有する物質の存在下で実施することもできる。
工程(2)は、工程(1)で得られた低分子量化物を、実質的に酸素の不存在下で、ラジカル捕捉能を有する物質と反応させることにより、上記低分子量PTFEを得る工程(2c)であることも好ましい。この態様によれば、加温又は加熱処理を実施しなくとも、比較的短時間で上記ラジカルを失活させることができる。加温又は加熱処理を併せて実施することもできる。
なお、工程(2c)を実施した後に工程(2a)を実施してもよく、工程(2c)と工程(2a)を同時に実施してもよい。
上記低分子量化物については、上述したとおりである。
上記ラジカル捕捉能を有する物質は、工程(1)で生成した主鎖ラジカル及び末端ラジカルを失活させ得る物質である。上記ラジカル捕捉能を有する物質は、ラジカル捕捉能を有するガスであってもよい。
上記ラジカル捕捉能を有するガスとしては、水素ガス及びハロゲンガスが好ましい。
上記ハロゲンガスとしては、フッ素ガス、塩素ガス、臭素ガス、ヨウ素ガス等が挙げられる。
また、上記ラジカル捕捉能を有する物質として、他に、アルカンガス、アルケンガス、アルキンガス、フルオロアルカン、テトラフルオロエチレン、一酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、水、アミン類、アルコール類、ケトン類等も挙げられる。
上記ラジカル捕捉能を有する物質は、遊離水素原子を生成し得る物質であってもよい。上記遊離水素原子を生成し得る物質の具体例は、上述したとおりである。
上記アルカンガスとしては、メタン、エタン、プロパン、ブタン等が挙げられる。
上記アルケンガスとしては、エチレン、プロピレン、ブテン等が挙げられる。
上記アルキンガスとしては、アセチレン、モノビニルアセチレン、ジビニルアセチレン等が挙げられる。
上記フルオロアルカンとしては、ジフロロメタン、トリフロロメタン、1,1,1-トリフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン等が挙げられる。
上記ラジカル補足能を有するガスとしての水は、水蒸気であってよい。例えば液体の水を加熱したり、超音波で処理したりすることにより発生する水蒸気であってもよいが、これに限定されない。
上記水としては、イオン交換水、蒸留水、硬水、軟水、水道水等が挙げられるが、低分子量ポリテトラフルオロエチレンに不純物が混入しにくい点から、イオン交換水、蒸留水が好ましい。
上記水は、酸素吸着剤から発生した水であってもよく、シリカゲルに吸着させた水分が熱により蒸発した際の水であってもよい。
上記アミン類としては、アンモニア等が挙げられる。
上記アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールやアルコール誘導体等が挙げられる。
上記ケトン類としては、アセトン、ベンゾフェノン等が挙げられる。上記ラジカル補足能を有するガスは、1種又は2種以上を用いることができる。
また、上記のガスを、窒素、二酸化炭素等の不活性ガスと混合して用いてもよい。
上記ラジカル補足能を有するガスは、水素ガス、ハロゲンガス、アルカンガス、アルケンガス、アルキンガス、フルオロアルカン、テトラフルオロエチレン、一酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、水、アミン類、アルコール類及びケトン類からなる群より選択される少なくとも1種であることも好ましく、水素ガス、フッ素ガス、塩素ガス、臭素ガス、ヨウ素ガス、アルカンガス、アルケンガス、アルキンガス、フルオロアルカン、テトラフルオロエチレン、一酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素、水、アミン類、アルコール類及びケトン類からなる群より選択される少なくとも1種であることも好ましく、水素ガス及び水からなる群より選択される少なくとも1種であることも好ましく、水素ガスであることも好ましく、水であることも好ましい。
工程(2c)における反応は、例えば、上記低分子量化物が保持された、実質的に酸素が存在しない空間(例えば、工程(1)で使用した密閉容器)内に上記ラジカル捕捉能を有する物質を導入、あるいは、上記空間内を真空ポンプにより脱気後、上記ラジカル捕捉能を有する物質を導入し、上記低分子量化物と上記ラジカル捕捉能を有する物質とを接触させることにより、実施することができる。
上記ラジカル捕捉能を有する物質は、上記空間内で濃度平衡後、バルブ等により閉栓し導入をやめてもよいし、常時流通させてもよい。
上記反応は、また、高分子量PTFE及び上記ラジカル捕捉能を有する物質を実質的に酸素の不存在下で密閉容器に投入し、次いで、実質的に酸素の不存在下で上記高分子量PTFEに放射線を照射することによっても実施することができる。この態様においては、工程(1)と工程(2c)とが並行して実施される。上記ラジカル捕捉能を有する物質は、密閉容器内で濃度平衡後、バルブ等により閉栓し導入をやめてもよいし、常時流通させてもよい。
また、工程(1)を実施する密閉容器として、水素原子を含む材料からなる密閉容器を用いた場合、放射線照射時に、当該密閉容器から、水素ガスを主成分とする放射線分解ガスが発生する。当該分解ガスを工程(2c)のラジカル捕捉能を有する物質として用いてもよい。また、ハロゲン原子を含む材料からなる密閉容器を用いた場合、水素ガスの他に、ハロゲンガスも放射線分解ガスとして発生する。当該分解ガスを工程(2c)のラジカル捕捉能を有する物質として用いてもよい。
上記水素原子を含む材料としては、水素原子を含む有機材料が好ましく、エチレン-プロピレンゴム、ポリエステルエラストマー等の水素原子を含むラバー素材;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリアミドイミド(PAI)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン(COP)等の水素原子を含む熱可塑性有機材料等が挙げられる。
上記ハロゲン原子を含む材料としては、ハロゲン原子を含む有機材料が好ましく、テトラフルオロエチレン-プロピレンゴム、クロロプレンゴムのハロゲン原子を含むラバー素材;ポリビニリデンフルオライド、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重体(FEP)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)等のハロゲン原子を含む熱可塑性有機材料等が挙げられる。
上記ラジカル捕捉能を有する物質として水素ガス(上記分解ガスに含まれる水素ガスであってもよい)を使用する場合、得られる低分子量PTFEの内部に水素原子を含む分子構造や二重結合を含む分子鎖が形成され、当該低分子量PTFEと水素原子を含む異種の有機物質との相溶性が向上する。
導入する上記ラジカル捕捉能を有する物質の濃度は、0.1体積%以上あればよい。好ましくは、3体積%以上、より好ましくは10体積%以上である。上記ラジカル捕捉能を有する物質の濃度が増加すると、ラジカル失活の時間が短くなる。
また実質的には、工程(1)において、照射直後に生成・捕捉される主鎖ラジカル(アルキルラジカル)及び末端ラジカルのグラム当たりの総数、あるいはそれらが大気に暴露され、酸素と反応して生成される過酸化ラジカルのグラム当たりの総数に対して、ラジカル捕捉能を有する原子又は分子の数が1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上存在すればよい。
上記反応の温度としては、PTFEのγ分散温度(-80℃近傍)以上が好ましく、β分散温度(19℃)以上がより好ましく、25℃以上が更に好ましく、β分散温度(30℃)以上が特に好ましい。
工程(2c)継続中に試料温度が-80℃から380℃の間で変化してもよい。
上記反応の時間としては、上記ラジカル捕捉能を有する物質が反応空間内で濃度平衡に到達してから30分以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。
工程(2a)、(2b)及び(2c)は、それぞれを単独で実施してもよいし、それらを任意に組み合わせて実施してもよい。
工程(2)において、上記末端ラジカルが失活したことは、電子スピン共鳴装置(ESR)による室温での測定によりtripletの信号の有無により確認することができる。上記tripletの信号が室温(25℃)測定で明瞭に検出できない場合、上記末端ラジカルが失活したと判断する。
同様に上記主鎖ラジカルの失活は、電子スピン共鳴装置(ESR)による室温での測定によりdouble quintetの信号強度の減少あるいは信号の有無により確認することができる。上記double quintetの信号が明瞭に検出できない場合、上記主鎖ラジカルが失活したと判断する。
一方、残存ラジカルが大気中の酸素と反応して、主鎖上の過酸化ラジカル(アルキル型過酸化ラジカル)、末端の過酸化ラジカル(末端型過酸化ラジカル)が形成されている場合の失活の確認は、それらの過酸化ラジカルに対応する信号の強度の減少あるいは信号の有無により行うことができる。ESR装置により測定されるスペクトルの対称(symmetric)・非対称性(asymmetric)で、主鎖型(asymmetric)か末端型(symmetric)の過酸化ラジカルかを判別できる。室温測定で判別しにくい場合、温度を下げて77Kの液体窒素温度での測定を行うことにより明瞭に判別できる。
上記アルキル型過酸化ラジカル及び末端型過酸化ラジカルは、上述したESR測定によりtriplet及びdouble quintet信号に基づいて主鎖ラジカル及び末端ラジカルの失活を確認した後、低分子量PTFE試料を大気暴露した際に、ESR装置の検出感度以下の試料中に僅かに残存する主鎖ラジカル及び末端ラジカルが大気中の酸素と反応することにより生成すると考えられる。また、従来のように、酸素の存在下で照射を行った場合にも、上記アルキル型過酸化ラジカル及び末端型過酸化ラジカルが生成するが、観察されるラジカルは末端型過酸化ラジカルが大部分である。
Double quintetやtripletのESR信号は、掃引幅が過酸化ラジカルに比べ広く、ベースラインとのS/N比が過酸化ラジカルよりも悪くなるため、double quintetやtripletのESR信号が明瞭に観察できない場合であっても、大気暴露により過酸化ラジカルに変化させた場合、ESR信号が検出されることがある。
本開示の製造方法においては、工程(1)の終了から工程(2)の開始までの期間中、工程(1)で得られた低分子量化物を酸素と実質的に反応させないことが好ましい。これにより、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸又はその塩の発生量を一層低減することができる。ここでいう上記低分子量化物と酸素との反応は、上記低分子量化物中の主鎖ラジカル及び/又は末端ラジカルと酸素との反応、特に、上記末端ラジカルと酸素との反応を意味する。
上記低分子量化物を酸素と実質的に反応させないとは、以下に説明するように、上記低分子量化物と接触し得る酸素の存在量を極少量に制御するか、又は、上記低分子量化物と酸素との接触を、極めて限定された条件下で行うことを意味する。
本開示の製造方法においては、工程(1)の開始から工程(2)の終了までの期間中、実質的に酸素が不存在の状態を維持すること、すなわち、工程(1)の開始から工程(2)の終了までの期間中、雰囲気中の酸素濃度を2.0体積%未満に維持することが好ましく、1.0体積%未満に維持することがより好ましく、1.0体積%以下に維持することが更に好ましく、0.5体積%以下に維持することが更により好ましく、0.1体積%以下に維持することが更により好ましく、0.01体積%以下に維持することが特に好ましい。上記酸素濃度の下限は、検出限界未満の値であってもよい。これにより、放射線の照射によって生成した主鎖ラジカル及び末端ラジカルと酸素との反応を一層抑制することができ、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸又はその塩の発生量を一層低減することができる。
工程(1)の開始から工程(2)の終了までの期間中、実質的に酸素が不存在の状態を維持する方法としては、例えば、工程(1)及び(2)を同じ密閉容器中で実施し、かつ、工程(1)の開始から工程(2)の終了までの期間中、当該密閉容器を開封しない方法、定期的に空間内を真空ポンプ等により脱気することにより維持する方法、定期的に空間内に不活性ガスを流通させる方法、密閉容器内を定期的に真空ポンプ等により脱気し、不活性ガスを流通させることを繰り返す方法等が挙げられる。
また、工程(1)を実施した密閉容器を実質的に酸素が不存在の空間内で開封し、同空間内で、工程(2)で使用する別の密閉容器に低分子量化物を移し替える方法も挙げられる。当該方法としては、例えば、工程(1)を実施した密閉容器を不活性ガス等が充填されたグローブボックス等の容器内で開封し、同空間内で、工程(2)で使用する別の密閉容器に低分子量化物を移し替えて酸素不在の状態を維持する方法等が挙げられる。
本開示の製造方法においては、工程(1)及び工程(2)を互いに異なる空間内(好ましくは、互いに異なる密閉容器内)で実施してもよい。
この態様によれば、工程(1)及び(2)のそれぞれにおいて最適な空間(密閉容器)を採用することが可能となる。特に、工程(2)において、加温、加熱、減圧等をより効果的に行うことができる耐熱密閉容器や耐圧密閉容器を採用することが可能となる。その結果、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸又はその塩の発生量を一層容易に低減することができる。上記態様は、工程(2)が工程(2a)である場合に、特に有用である。
本開示の製造方法は、工程(1)で得られた低分子量化物を、上記低分子量化物と酸素とが実質的に反応しない条件下で、工程(1)を実施した空間内から工程(2)を実施する空間内に移し替える工程を含んでもよい。
上記低分子量化物の移し替えは、実質的に酸素の不存在下で実施することが好ましい。しかし、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸及びその塩を誘起しやすい上記低分子量化物の末端ラジカルと酸素とが実質的に反応しない条件下であれば、大気中で実施することもできる。産業プロセス上は、大気中で実施する方が有利である。
上記低分子量化物中の末端ラジカルと酸素とが実質的に反応しない条件としては、例えば、上記低分子量化物と大気との接触時間を180分以下とすることが挙げられ、60分以下とすることが好ましい。上記接触時間の下限は1秒であってよい。
また、上記低分子量化物と接触させる大気の温度を30℃以下とすることも挙げられ、19℃以下とすることが好ましい。上記温度の下限は-196℃であってもよい。
また、本開示の製造方法において、工程(2)を複数回繰り返す場合や、工程(2)として複数の工程(例えば、工程(2a)、(2b)等)を実施する場合には、1の工程と次の工程との間に、上記低分子量化物を大気暴露(例えば、大気下での他の容器への移し替え)させてもよい。工程間に大気暴露(大気開放)を行うことができれば、産業プロセス上有利である。上記ラジカルをある程度失活させた後(特に、工程(1)のあと工程(2b)を行うことで、上記ラジカルをある程度失活させた後)であれば、大気暴露しても、直ちに炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸及びその塩が増加することにはならない。
上記態様においては、工程(2b)を実施した後に、大気暴露を行い、次いで更に工程(2)(例えば、工程(2a)、(2b)及び(2c)の少なくとも1つ、好ましくは、工程(2a)及び(2c)の少なくとも1つ)を行うことが特に好ましい。
本開示の製造方法は、工程(1)で得られた低分子量化物を、工程(2b)として実質的に酸素不在の空間内において、5分間以上、19℃以上の温度で保持することで、試料中の末端ラジカルの少なくとも一部を失活させた後、工程(1)及び(2b)を実施した空間内から工程(2)を実施する実質的に酸素不在の空間内に大気中で移し替える工程を含むことが好ましい。
本開示の製造方法は、工程(1)で得られた低分子量化物を、工程(2b)として実質的に酸素不在の空間内において、上記低分子量化物を1時間以上、19℃以上の温度で保持することで、試料中の末端ラジカルの少なくとも一部を失活させた後、工程(1)及び(2b)を実施した空間内から工程(2)を実施する実質的に酸素不在の空間内に大気中で移し替える工程を含むことがより好ましい。
本開示の製造方法は、工程(1)で得られた低分子量化物を、工程(2b)として実質的に酸素不在の空間内において、1日間以上、19℃以上の温度で保持することで、試料中の末端ラジカルの少なくとも一部を失活させた後、工程(1)及び(2b)を実施した空間内から工程(2)を実施する実質的に酸素不在の空間内に大気中で移し替える工程を含むことが更に好ましい。
上記低分子量化物を実質的に酸素不在の空間内において19℃以上の温度で保持する時間(工程(2b)の時間)が長いほど、失活する末端ラジカルの割合が多くなる。その結果、上記低分子量化物を大気暴露できる時間が長くなる。
上述した、工程(2)を複数回繰り返す場合や、工程(2)として複数の工程を実施する場合に工程間に行う大気暴露の時間は、例えば、10日以下とすることができ、7日以下とすることが好ましい。上記時間の下限は1秒であってもよく、5分であってもよい。
また、上記低分子量化物と接触させる大気の温度は40℃以下とすることができ、30℃以下とすることが好ましく、19℃以下とすることがより好ましい。上記温度の下限は-196℃であってもよい。
本開示の製造方法においては、上述した工程(1)及び(2)を同時に実施してもよい。
例えば、上記工程(1)と工程(2a)とを同時に行ってもよい(複合工程(A))。工程(1)と工程(2a)とを同時に実施する方法としては、例えば、高分子量PTFEを実質的に酸素の不存在下で密閉容器に投入し、次いで、上記高分子量PTFEを加温又は加熱した状態で、上記高分子量PTFEに放射線を照射する方法が挙げられる。
複合工程(A)の具体的な実施方法としては、高分子量PTFEを実質的に酸素の不存在下で密閉容器に投入し、次いで、加温又は加熱機能を有する外部ユニットを用いて上記密閉容器を加温又は加熱しながら、上記密閉容器の外側から上記高分子量PTFEにγ線、X線又は電子線を照射する方法等が挙げられる。
上記γ線としては、例えば、コバルト60から発生させたγ線を用いることができる。
上記X線としては、例えば、電子加速器からの電子線をターゲットに照射して発生させたX線を用いることができる。あるいは、線形加速器からの高エネルギー電子線にレーザー光を衝突させ、逆コンプトン散乱(レーザーコンプトン散乱)により発生させた準単色性のX線を用いることができる。更には、シンクロトロン放射によってX線を発生させることができるほか、粒子加速器の下段にアンジュレータやウィグラーを設置してX線を発生させてもよい。
物質透過力に優れるγ線やX線を用いることで、上記密閉容器の全周部あるいは外周部、上下部、左右部、前後部等の任意の位置に上記外部ユニットを配置できる。γ線やX線の透過を容易にする観点からは、照射面側に上記外部ユニットを配置しないことが好ましい。
上記γ線又はX線に代えて、物質透過力がγ線やX線に劣る電子線を用いることもできる。この場合、電子線の照射される面側以外に上記外部ユニットを配置することが好ましい。
また、密閉容器自体に加温又は加熱機構を組み込んでもよい。
上記複合工程(A)において、加温又は加熱の温度としては、70℃以上がより好ましく、100℃以上が更に好ましく、また、310℃以下が好ましい。
上記試料を加温又は加熱する方法は、特に限定されないが、放射線のエネルギーを熱エネルギーに変換する、ビームヒーティング法であってもよい。ビームヒーティング法を用いる場合、電子加速器からの電子線や、電子加速器からの電子線をターゲットに照射して発生させたX線を放射線として用いることが好ましい。密閉容器の全周部あるいは外周部、上下部、左右部前後部等に断熱材等を配置してもよい。放射線の透過を容易にする観点からは、照射面側に断熱材等を配置しないことが好ましい。
また、上記工程(1)と工程(2c)とを同時に行ってもよい(複合工程(C))。工程(1)と工程(2c)とを同時に実施する方法としては、例えば、高分子量PTFEを実質的に酸素の不存在下で密閉容器に投入し、次いで密封容器内に上記ラジカル捕捉能を有するガスを封入した状態で、上記高分子量PTFEに放射線を照射する方法が挙げられる。
複合工程(C)の具体的な実施方法としては、高分子量PTFEを実質的に酸素の不存在下で密閉容器に投入し、次いで、3%以上の濃度の上記ラジカル捕捉能を有するガスを上記密閉容器に封入あるいは流通させながら、上記密閉容器の外側から上記高分子量PTFEにγ線、X線又は電子線を照射する方法等が挙げられる。
上記γ線としては、例えば、コバルト60から発生させたγ線を用いることができる。
上記X線としては、例えば、電子加速器からの電子線をターゲットに照射して発生させたX線を用いることができる。あるいは、線形加速器からの高エネルギー電子線にレーザー光を衝突させ、逆コンプトン散乱(レーザーコンプトン散乱)により発生させた準単色性のX線を用いることができる。更には、シンクロトロン放射によってX線を発生させることができるほか、粒子加速器の下段にアンジュレータやウィグラーを設置してX線を発生させてもよい。
物質透過力に優れるγ線やX線を用いることで、上記密閉容器の全周部あるいは外周部、上下部、左右部、前後部等の任意の位置に上記外部ユニットを配置できる。γ線やX線の透過を容易にする観点からは、照射面側に上記外部ユニットを配置しないことが好ましい。
上記γ線又はX線に代えて、物質透過力がγ線やX線に劣る電子線を用いることもできる。この場合、電子線の照射される面側以外に上記外部ユニットを配置することが好ましい。
また、密閉容器自体に加温又は加熱機構を組み込んでもよい。
上記複合工程(C)において、加温又は加熱を行ってもよい。加温又は加熱温度としては、19℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、70℃以上が更に好ましく、また、310℃以下が好ましい。
上記試料を加温又は加熱する方法は、特に限定されないが、放射線のエネルギーを熱エネルギーに変換する、ビームヒーティング法であってもよい。ビームヒーティング法を用いる場合、電子加速器からの電子線や、電子加速器からの電子線をターゲットに照射して発生させたX線を放射線として用いることが好ましい。密閉容器の全周部あるいは外周部、上下部、左右部前後部等に断熱材等を配置してもよい。放射線の透過を容易にする観点からは、照射面側に断熱材等を配置しないことが好ましい。
本開示は、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sである低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法であって、放射線照射時の試料温度がポリテトラフルオロエチレンの室温転移温度(β分散温度)以上、320℃以下、線量率が0.1kGy/s以上の条件下で高分子量ポリテトラフルオロエチレンに放射線を照射することにより、上記低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得る工程(X)を含むことを特徴とする低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法にも関する。
上記工程(X)は、実質的に酸素が存在しない空間内で実施してもよいが、酸素を含む大気雰囲気中で実施することもできる。また、成分調整大気雰囲気中で実施してもよい。上記成分調整大気としては、例えば、酸素を含む大気中に、ラジカル捕捉能を有する水素ガスやハロゲンガス等を単独ガス又は複合ガスとして0.5体積%以上添加した大気が挙げられる。
PTFEの結晶融点以下の温度に加熱した状態でPTFEを放射線照射すると分解効率が向上することが、文献(Radiat.Phys.Chem.Vol.50,pp.611-615,1997)で報告されている。
この状態では酸素21体積%の大気雰囲気下であっても線量率の高い電子線等の放射線源を用いて、昇温した状態で照射を行うことで、生成した末端ラジカルが酸素と反応する以前に主鎖切断が進行し、分解反応が促進することが、本発明者らにより見出された。
従来の学術的な技術常識からは、酸素を含む雰囲気中(特に空気中)で高分子量PTFEに放射線照射を行うと、酸化劣化が起こり、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸又はその塩が多量に生成することが予想される。しかし、驚くべきことに、上記のように照射温度がβ分散温度以上であり、かつ線量率が極めて限定された条件下では、大気雰囲気中で照射を行っても、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸又はその塩が生成しにくいことが、本発明者らにより見出された。
上記工程(X)における照射時の試料温度はPTFEの室温転移温度(β分散温度)以上(19℃以上)であり、PTFEの室温転移温度(β分散温度)以上(30℃以上)が好ましく、50℃以上がより好ましく、70℃以上が更に好ましく、100℃以上が更により好ましく、α分散温度以上(130℃以上)が特に好ましい。上記照射時の試料温度はまた、320℃以下である。
上記工程(X)における照射時の温度は、工程を実施する雰囲気の温度を、熱電対、白金抵抗体等により計測する方法、試料表面又は試料内部の温度を熱電対、白金抵抗体等により接触式で計測する方法、あるいは試料表面からの赤外放射を赤外放射温度計により計測する方法等により簡便に測定できる。
工程(X)の放射線照射時に試料温度が19℃から320℃の間で変化してもよい。
工程(X)における放射線は、電子線又はX線であってよい。上記電子線は、電子加速器から発生させた電子線であってよい。上記X線は、粒子加速器からの粒子線をターゲットに照射して発生させたX線であってよく、線形加速器からの高エネルギー電子線にレーザーを衝突させ、逆コンプトン散乱により発生させた準単色性のX線であってもよい。更には、シンクロトロン放射によってX線を発生させることができるほか、粒子加速器の下段にアンジュレータやウィグラーを設置してX線を発生させてもよい。
工程(X)の具体的な実施方法としては、加温又は加熱機構を有する容器に高分子量PTFEを入れ、大気中で加温又は加熱した状態で、上記容器の外側から上記高分子量PTFEに電子線又はX線を照射する方法等が挙げられる。
上記電子線としては、例えば、電子加速器から発生させた電子線を用いることができる。
上記X線としては、例えば、電子加速器からの電子線をターゲットに照射して発生させたX線を用いることができる。
物質透過力に優れるX線を用いる場合、上記容器の全周部あるいは外周部、上下部、左右部、前後部等の任意の位置に上記加熱機構を配置できる。X線の透過を容易にする観点からは、照射面側に上記加熱機構を配置しないことが好ましい。
物質透過力がX線に劣る電子線を用いる場合、電子線の照射される面側以外に上記加熱機構を配置することが好ましい。
上記工程(X)における線量率は、0.1kGy/s以上であり、1kGy/s以上が好ましく、10kGy/s以上がより好ましい。あるいは、0.1kGy/pass以上が好ましく、1kGy/pass以上がより好ましく、10kGy/pass以上が更に好ましい。
上記工程(X)における放射線照射は、所望の吸収線量に到達するまで連続で行ってもよいし、累計で所望の吸収線量に到達するまで断続的に繰り返し行ってもよい。断続的に繰り返し行う場合は、断続的な照射のインターバル時間中に、残存するラジカルが酸化し、過酸化ラジカルとなることでPTFEの主鎖の酸化分解による切断によって炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸又はその塩が生成するのを防ぐため、断続的な照射のインターバル時間は、5分以内が好ましく、3分以内より好ましく、1分以内が更に好ましい。
上記工程(X)は、ラジカル捕捉能を有する物質の存在下に実施することもできる。上記ラジカル捕捉能を有する物質としては、工程(2c)に使用することが可能な物質を挙げることができる。上記物質の使用量や導入方法も、工程(2c)に準じた量や方法を採用できる。
本開示の製造方法は、放射線照射によって低分子量PTFEを得る工程において、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸及びその塩の生成を抑制するものであるので、放射線を照射する対象が低分子量PTFEである場合にも適用することができる。
言い換えると、上述した工程(1)、複合工程(A)、複合工程(C)又は工程(X)において、高分子量PTFEの代わりに、低分子量PTFEに放射線を照射することもできる。その場合にも、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、特にパーフルオロオクタン酸及びその塩の生成を抑制することができる。上記の態様も、本開示の製造方法の好適な態様である。
上記態様において、放射線を照射する対象としての低分子量PTFEは、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sであってよい。
上記放射線を照射する対象としての低分子量PTFEは、直接重合によって得られたものであってもよく、高分子量PTFEの熱分解によって得られたものであってもよく、高分子量PTFEに放射線を照射することによって得られたものであってもよい。
本開示は、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sである低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法であって、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sであるポリテトラフルオロエチレンに実質的に酸素の不存在下で放射線を照射することにより、上記ポリテトラフルオロエチレンを低分子量化する工程(Y1)、及び、上記照射により生成した主鎖ラジカル及び末端ラジカルの少なくとも一部を実質的に酸素の不存在下で失活させることにより、上記低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得る工程(Y2)を含むことを特徴とする低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法にも関する。
上記のように溶融粘度が低い(分子量が低い)PTFEに放射線を照射する場合にも、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸及びその塩、特にパーフルオロオクタン酸及びその塩の生成を抑制することができる。
上記工程(Y1)において放射線を照射するPTFEは、直接重合によって得られたものであってもよく、高分子量PTFEの熱分解によって得られたものであってもよく、高分子量PTFEに放射線を照射することによって得られたものであってもよい。
上記工程(Y1)の好適な態様や条件は、上述した工程(1)と同様であってよいが、放射線の線量、照射温度等の照射条件については、目的の低分子量PTFEの分子量(溶融粘度)に応じて調整することが望ましい。
上記工程(Y2)の好適な態様や条件は、上述した工程(2)と同様であってよい。
本開示の製造方法は、工程(1)、複合工程(A)、複合工程(C)又は工程(X)の前に、更に、上記高分子量PTFEを、その一次融点以上に加熱することにより成形品を得る工程(3)を含むこともできる。この場合、工程(3)で得られた成形品を工程(1)における上記高分子量PTFEとして使用することができる。
上記一次融点としては、300℃以上が好ましく、310℃以上がより好ましく、320℃以上が更に好ましい。
上記一次融点は、未焼成の高分子量PTFEを示差走査熱量計で測定した場合に、結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度を意味する。上記吸熱カーブは、示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/分の条件で昇温させて得られたものである。
工程(3)における上記成形品は、比重が1.0g/cm以上であることが好ましく、1.5g/cm以上であることがより好ましく、また、2.5g/cm以下であることが好ましい。上記成形品の比重が上記範囲内にあると、表面の細孔や凸凹が小さくなり、結果的に比表面積の小さい低分子量PTFEを得ることが出来る。
上記比重は、水中置換法により測定することができる。
本開示の製造方法は、工程(3)の後に、更に、上記成形品を粉砕して、上記高分子量PTFEの粉末を得る工程を含むこともできる。上記成形品を粗く粉砕してから、更に小さく粉砕してもよい。
本開示の製造方法は、工程(2)、複合工程(A)、複合工程(C)、工程(X)又は工程(Y2)の後に、更に、上記低分子量PTFEを粉砕して、低分子量PTFEの粉末を得る工程を含むこともできる。本開示の製造方法によって得られる低分子量PTFEは、粉砕しても、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸又はその塩の含有量が増加しない。
上記粉砕の方法としては特に限定されないが、粉砕機で粉砕する方法が挙げられる。上記粉砕機には、遊星ミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の衝撃式や、回転刃と外周ステーターが凹凸による剪断力で粉砕するカッターミル等の摩砕式等がある。
粉砕温度は-200℃以上、50℃未満であることが好ましい。冷凍粉砕では通常-200~-100℃であるが、室温付近の温度(10~30℃)で粉砕してもよい。冷凍粉砕では一般に液体窒素を使用するが、設備が膨大で粉砕コストも高くなる。工程が簡素となる点、粉砕コストを抑えることができる点で、10℃以上、50℃未満で粉砕することがより好ましく、10~40℃で粉砕することが更に好ましく、10~30℃で粉砕することが特に好ましい。
上記粉砕の後、微粒子や繊維状粒子を気流分級により除去した後に、更に分級により粗粒子を除去してもよい。
気流分級においては、粉砕された粒子が減圧空気により円柱状の分級室に送られ、室内の旋回気流により分散され、遠心力によって微粒子が分級される。微粒子は中央部からサイクロン及びバグフィルターへ回収される。分級室内には、粉砕粒子と空気が均一に旋回運動を行うために円錐状のコーン、ローター等の回転体が設置されている。
分級コーンを使用する場合には、分級点の調節は二次エアーの風量と分級コーン間の隙間を調節することにより行う。ローターを使用する場合には、ローターの回転数により分級室内の風量を調節する。
粗粒子の除去方法としては、メッシュによる気流分級、振動篩、超音波篩等が挙げられるが、気流分級が好ましい。
本開示の製造方法は、更に、工程(2)、複合工程(A)、複合工程(C)、工程(X)又は工程(Y2)で得られた低分子量PTFEを、自然環境からの紫外線が遮蔽された環境下で保管する工程(4)を含んでもよい。
工程(2)、複合工程(A)、複合工程(C)、工程(X)又は工程(Y2)で得られた低分子量PTFEが大気暴露されると、僅かに残存する主鎖ラジカル及び/又は末端ラジカルに由来する過酸化物が生じることがある。この過酸化物が紫外線に暴露されると、主鎖ラジカル及び/又は末端ラジカルが再生成することがあり、特に、末端ラジカルが再生成した場合には、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸又はその塩が生成するおそれがある。
工程(4)を実施することにより、長期間にわたり、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸又はその塩の発生を抑制することができる。
工程(4)において遮蔽する紫外線は、波長が450nm以下の、可視光を含む紫外線であってよい。好ましくは波長が400nm以下の紫外線であり、より好ましくは波長が385nm以下の紫外線である。上記紫外線の波長の下限は、200nmであることが好ましい。
工程(4)における保管は、例えば、上記低分子量PTFEを、上記紫外線を遮蔽することが可能な容器内に保持するか、又は、上記低分子量PTFEを保持した容器を、上記紫外線を遮蔽することが可能な空間(倉庫等)に保持することにより、実施することができる。
工程(4)における保管環境の温度は、未架橋のPTFEのα分散温度以下であることが好ましく、-273~130℃であることがより好ましく、-196~130℃であることが更に好ましく、-80~70℃であることが更により好ましい。上記温度範囲にすることにより、保管中の炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸又はその塩の発生を一層抑制することができる。
次に、本開示の製造方法の工程(1)、複合工程(A)、複合工程(C)又は工程(X)において放射線を照射する高分子量PTFE、及び、工程(2)、複合工程(A)、複合工程(C)又は工程(X)を実施した後に得られる低分子量PTFEについて説明する。
また、工程(Y1)において放射線を照射するPTFE、及び、工程(Y2)を実施した後に得られる低分子量PTFEについても説明する。
工程(2)、複合工程(A)、複合工程(C)又は工程(X)を実施した後に得られる低分子量PTFEは、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sである。本開示において、「低分子量」とは、上記溶融粘度が上記の範囲内にあることを意味する。
上記溶融粘度は、1.0×10Pa・s以上であることが好ましく、1.5×10Pa・s以上であることがより好ましく、また、3.0×10Pa・s以下であることが好ましく、1.0×10Pa・s以下であることがより好ましい。
工程(Y2)を実施した後に得られる低分子量PTFEは、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sである。上記溶融粘度は、3.0×10Pa・s以下であることが好ましく、1.0×10Pa・s以下であることがより好ましい。
工程(Y1)において放射線を照射するPTFEは、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sである。上記溶融粘度は、5.0×10以上であることが好ましく、1.0×10Pa・s以上であることがより好ましく、1.5×10Pa・s以上であることが更に好ましい。
上記溶融粘度は、ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所社製)及び2φ-8Lのダイを用い、予め380℃で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定した値である。
上記放射線を照射する上記高分子量PTFEは、標準比重(SSG)が2.130~2.230であることが好ましい。上記標準比重(SSG)はASTM D 4895に準拠し、測定した値である。
上記高分子量PTFEは、上記低分子量PTFEよりも溶融粘度が極めて高く、その正確な溶融粘度を測定することは困難である。他方、低分子量PTFEの溶融粘度は測定可能であるが、低分子量PTFEからは、標準比重の測定に使用可能な成形品を得ることが難しく、その正確な標準比重を測定することが困難である。従って、本開示では、放射線を照射する上記高分子量PTFEの分子量の指標として、標準比重を採用し、上記低分子量PTFEの分子量の指標として、溶融粘度を採用する。なお、上記高分子量PTFE及び上記低分子量PTFEのいずれについても、直接に分子量を特定できる測定方法は知られていない。
上記高分子量PTFEは、パーフルオロオクタン酸及びその塩の量が25質量ppb未満であってよく、20質量ppb以下であってもよく、15質量ppb以下であってもよく、10質量ppb以下であってもよく、5質量ppb以下であってもよく、5質量ppb未満であってもよい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
上記パーフルオロオクタン酸及びその塩の量は、液体クロマトグラフィーにより測定できる。
上記低分子量PTFEは、融点が320~340℃であることが好ましく、324~336℃であることがより好ましい。
上記融点は、示差走査熱量計(DSC)を用い、事前に標準サンプルとして、インジウム、鉛を用いて温度校正した上で、低分子量PTFE約3mgをアルミ製パン(クリンプ容器)に入れ、200ml/分のエアー気流下で、250~380℃の温度領域を10℃/分で昇温させて行い、上記領域における融解熱量の極小点を融点とする。
本開示の製造方法において、上記高分子量PTFEの形状は特に限定されず、粉末(ファインパウダー、モールディングパウダー等)であってもよいし、上記高分子量PTFEの成形品であってもよいし、上記高分子量PTFEの成形品を切削加工した場合に生じる切削屑であってもよい。上記高分子量PTFEが粉末であると、上記低分子量PTFEの粉末を容易に得ることができる。
また、上記高分子量PTFEは架橋されていてもよい。
また、本開示の製造方法によって得られる低分子量PTFEの形状は、特に限定されないが、粉末であることが好ましい。
本開示の製造方法によって得られる低分子量PTFEが粉末である場合、比表面積が0.5~20m/gであることが好ましい。
低分子量PTFE粉末としては、比表面積が0.5m/g以上、7.0m/g未満の比表面積の低いタイプと、比表面積が7.0m/g以上、20m/g以下の比表面積の高いタイプがそれぞれ求められている。
比表面積の低いタイプの低分子量PTFE粉末は、例えば塗料等のマトリクス材料に容易に分散する利点がある一方、マトリクス材料への分散粒径が大きく、微分散に劣る。
比表面積の低いタイプの低分子量PTFE粉末の比表面積は、1.0m/g以上が好ましく、5.0m/g以下が好ましく、3.0m/g以下がより好ましい。マトリクス材料としては、プラスチック、インクの他、塗料等も好適に用いられる。
比表面積の高いタイプの低分子量PTFE粉末は、例えば塗料等のマトリクス材料に分散させた場合、マトリクス材料への分散粒径が小さく、塗膜表面の質感を向上させる等、表面を改質する効果が高く、吸油量も多くなるが、マトリクス材料への分散に必要な時間が長い等容易に分散しないおそれがあり、また、塗料等の粘度が上昇するおそれもある。
比表面積の高いタイプの低分子量PTFE粉末の比表面積は、8.0m/g以上が好ましく、25m/g以下が好ましく、20m/g以下がより好ましい。マトリクス材料としては、オイル、グリース、塗料の他、プラスチック等も好適に用いられる。
上記比表面積は、表面分析計(商品名:BELSORP-miniII、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用い、キャリアガスとして窒素30%、ヘリウム70%の混合ガスを用い、冷却に液体窒素を用いて、BET法により測定する。
本開示の製造方法によって得られる低分子量PTFEが粉末である場合、平均粒子径が0.5~200μmであることが好ましく、50μm以下がより好ましく、25μm以下が更に好ましく、10μm以下が特に好ましい。このように、平均粒子径が比較的小さい粉末であることで、例えば、塗料の添加剤として用いた場合等に、より優れた表面平滑性を有する塗膜を形成することができる。
上記平均粒子径は、日本電子株式会社製レーザー回折式粒度分布測定装置(HELOS&RODOS)を用いて、カスケードは使用せず、分散圧力3.0barで測定を行い、粒度分布積算の50%に対応する粒子径に等しいとする。
本開示の製造方法では、工程(2)、複合工程(A)、複合工程(C)、工程(X)又は工程(Y2)を実施した後に、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸及びその塩を実質的に含まない低分子量PTFEを得ることができる。本開示の製造方法により得られる低分子量PTFEは、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸及びその塩の総量が質量基準で50ppb以下であってよく、25ppb未満であることが好ましく、20ppb以下であることがより好ましく、15ppb以下であることが更に好ましく、10ppb以下であることが更により好ましく、5ppb以下であることが特に好ましく、5ppb未満であることが最も好ましい。下限は特に限定されず、例えば検出限界未満の量であってもよく、0.001ppbであってもよく、1ppbであってもよい。
上記パーフルオロカルボン酸及びその塩の量は、液体クロマトグラフィーにより測定できる。
また、本開示の製造方法により得られる低分子量PTFEは、パーフルオロオクタン酸及びその塩を実質的に含まない点にも特徴がある。本開示の製造方法により得られる低分子量PTFEは、パーフルオロオクタン酸及びその塩の量が質量基準で25ppb未満であってよく、20ppb以下であることが好ましく、15ppb以下であることがより好ましく、10ppb以下であることが更に好ましく、5ppb以下であることが更により好ましく、5ppb未満であることが特に好ましい。下限は特に限定されず、例えば検出限界未満の量であってもよく、0.001ppbであってもよく、1ppbであってよい。
上記パーフルオロオクタン酸及びその塩の量は、液体クロマトグラフィーにより測定できる。
上記工程(2)、複合工程(A)、複合工程(C)、工程(X)又は工程(Y2)を実施した後に得られる低分子量PTFEは、主鎖上の側鎖の一部に酸素原子を有する低分子量PTFE、又は、炭素原子とフッ素原子とからなる低分子量PTFEであることが好ましい。
上記主鎖上の側鎖の一部に酸素原子を有する低分子量PTFE、又は、炭素原子とフッ素原子とからなる低分子量PTFEは、炭素-炭素結合を有し、かつ分子鎖末端に酸素原子を含まない化合物である。その分子構造は、以下の構造を示す。
(主鎖ラジカル/末端ラジカル失活処理プロセス)
(―CF-CF―)-R
(―CF=CF―CF-R
(-CF-CF(R)―CF-R
(-CF=C(R)―CF-R
(末端ラジカルのみ失活処理プロセス)
(-CF-CF(R)―CF-R
(-CF=C(R)―CF-R
上記式中、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、-CF基、-CF=CF基、-CF=CHF基、-CHF基、-CHF基、又は、-CH基である。
上記式中、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、-CF基、-CF=CF基、-CF=CHF基、-CHF基、-CHF基、又は、-CH基である。
上記式中、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、-CF基、-CF-CF基、-CF=CF基、-CFCF-基、又は、-O-R基(Rは、パーフルオロ有機基、好ましくは炭素数1~10のパーフルオロアルキル基)である。
上記式中、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、-CF基、-CF-CF基、-CF=CF基、-CFCF-基、又は、-O-R基(Rは、パーフルオロ有機基、好ましくは炭素数1~10のパーフルオロアルキル基)である。
上記式中、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、-CF基、-CF-CF基、-CF=CF基、-CFCF-基、-O-R基(Rは、パーフルオロ有機基、好ましくは炭素数1~10のパーフルオロアルキル基)、-OH基、-OF基、-OCl基、-OBr基、-OI基、-O-CF基、-O-CF-CF基、又は、-O-O・(過酸化ラジカル)である。
上記式中、Rは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、-CF基、-CF-CF基、-CF=CF基、-CFCF-基、-O-R基(Rは、パーフルオロ有機基、好ましくは炭素数1~10のパーフルオロアルキル基)、-OH基、-OF基、-OCl基、-OBr基、-OI基、-O-CF基、又は、-O-CF-CF基である。
上記式中、xは1~1000の整数であり、2~500が好ましい。
上記式中、yは1~1000の整数であり、2~500が好ましい。
上記分子構造の特定は、19F核磁気共鳴装置(NMR)による測定のほか、フーリエ変換赤外吸収分析装置(FT-IR)、フーリエ変換ラマン分光分析(FT-ラマン)、X線光電分光分析(XPS)等の手段により行うことができる。
上記低分子量PTFEは、電子スピン共鳴(ESR)測定により得られる上記主鎖ラジカルに対応する信号の強度と、上記末端ラジカルに対応する信号の強度との比(主鎖ラジカル/末端ラジカル)が10/1以上であることが好ましく、15/1以上であることがより好ましく、20/1以上であることがより好ましく、30/1以上であることが更に好ましい。
上記比は、真空中でのESR測定で上記主鎖ラジカルに対応する信号(double quintet)及び上記末端ラジカルに対応する信号(triplet)が明瞭に検出される場合は、それらの信号の強度に基づいて算出し、真空中で明瞭に検出できない場合は、試料を大気暴露した後に実施するESR測定で検出される主鎖型(asymmetric)及び末端型(symmetric)の過酸化ラジカルに対応する信号の強度に基づいて算出するものとする。特に過酸化ラジカルの分離には、液体窒素温度での測定が有効である。
従来の、空気雰囲気下で高分子量PTFEに放射線を照射する方法(工程(2)のラジカル失活を実施しない)で得られた低分子量PTFEでは、末端ラジカルが多く残存することから、上記比が上記範囲内にならない。
上記低分子量PTFEは、水素原子を含む分子構造、及び、二重結合を含む分子鎖からなる群より選択される少なくとも1種を分子内に有することが好ましい。
上記水素原子を含む分子構造としては、例えば、-CHF-、=CHF、-CFH、-CH基、-CHF基等で表される構造が挙げられる。
上記二重結合を含む分子鎖としては、例えば、-CF=CF-、-CF=CF、-CF=CF-CF等の構造が挙げられる。
また、-CFCF(CF)CF-、-CF(CF等で表される分子構造を有することも好ましい。
工程(1)を実施する密閉容器として、水素原子を含む材料からなる密閉容器を用いた場合、放射線照射時に、当該密閉容器から、水素ガスを主成分とする放射線分解ガスが発生する。当該分解ガスを工程(2c)のラジカル捕捉能を有するガスとして用いることにより、得られる低分子量PTFEの内部に水素原子を含む分子構造や二重結合を含む分子鎖が形成される。
上記水素原子を含む材料としては、水素原子を含む有機材料が好ましく、エチレン-プロピレンゴム、テトラフルオロエチレン-プロピレンゴム、ポリエステルエラストマー等の水素原子を含むラバー素材;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル類、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリアミドイミド(PAI)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリビニリデンフルオライド、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等の水素原子を含む熱可塑性有機材料等が挙げられる。
また、工程(2c)実施の際、ラジカル捕捉能を有するガスとして水素ガスを直接用いた場合も、得られる低分子量PTFEの内部に水素原子を含む分子構造や二重結合を含む分子鎖が形成される。
上記低分子量PTFEが、上述した構造を分子内に有することは、下記のいずれかの測定条件での19F MAS NMRにより確認できる。
<測定条件(1)>
装置:Varian社製VNS600
共鳴周波数:564.491MHz
観測核:19
試料管径:1.2mmφ
回転速度:50kHz
測定温度:rt(23.3℃)
測定法:single pulse法
積算回数:512回以上
待ち時間:5s以上
パルス幅:1.15μs
<測定条件(2)>
装置:Bruker社製AVANCE III HD400
共鳴周波数:376.6412776MHz
観測核:19
試料管径:1.3mmφ
回転速度:60kHz
測定温度:70℃
測定法:single pulse法
積算回数:1万回以上
待ち時間:5s以上
パルス幅:0.8μs
-CHFに帰属される信号は-140ppm付近に、=CHFに帰属される信号は-150ppm付近に、-CHF-又は-CFHに帰属される信号は-210ppmから-215ppm付近に確認することができる。-CF=CF-に帰属される信号は-156ppm付近に確認することができる。-CF=CFに帰属される信号は-92ppm付近及び-190ppm付近に確認することができる。-CF=CF-CFに帰属される信号は-75ppm付近及び-128ppm付近に確認することができる。-CFCF(CF)CF-に帰属される信号は-71ppm付近及び-114ppm付近に確認することができる。-CF(CFに帰属される信号は-58ppm付近に確認することができる。
また、上記低分子量PTFE内に水素原子を含む構造を有することは、下記の測定条件でのH NMR測定後、引き続き13C CP/MAS NMR測定することにより確認できる。
<測定条件(3)>
装置:Bruker社製AVANCEIII600 wide-bore spectrometer
共鳴周波数:水素600.23MHz 炭素150.9MHz
観測核:H及び13
試料管径:2.5mmφ又は4.0mmφ
回転速度:6kHz
測定温度:rt(24.1℃)
デカップリング法:CW/TPPM法
時定数:3.0ms
積算回数:65,536回以上
上記測定により、-CHに帰属される信号を17ppm付近に検出することができる。
工程(1)及び(2)を真空下で実施して得られた低分子量PTFEを、一度も酸素と接触させることなく、真空下で電子スピン共鳴(ESR)測定すると、末端ラジカルに対応するtripletのピークと、主鎖ラジカル(アルキルラジカル)に対応するdouble quintetのピークが観測される。
上記tripletの中心のピーク高さをM、上記double quintetのピーク高さをAとした場合に、比M/Aが3.0未満であることが好ましく、2.5未満であることがより好ましく、2.0未満であることが更に好ましい。
また、比A/Mが0.3よりも大きいことが好ましく、0.4よりも大きいことがより好ましく、0.45よりも大きいことが更に好ましい。
図3に、上記ピークの一例を示す。
上記ESR測定は、真空下で、以下の条件にて実施する。
装置:日本電子株式会社(JEOL)製、JES-X330
測定温度:23±1℃
マイクロ波周波数:9.42-9.44GHz
マイクロ波出力:0.1mW及び0.04mW
中心磁場:337.0mT
掃引幅:±25mT
掃引時間:2分
時定数:0.1秒
磁場変調幅:0.2mT
スキャン回数:1回
変調周波数:100kHz
本開示は、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sであり、大気下での電子スピン共鳴(ESR)測定により得られるピークが以下の関係式(1)及び(2)を充足し、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が25質量ppb未満である低分子量ポリテトラフルオロエチレン(以下、低分子量PTFE(1)ともいう。)にも関する。
関係式(1):Peak M2/Peak A1≧1.0
(式中、Peak M2は低分子量ポリテトラフルオロエチレンの分子鎖末端に捕捉された過酸化ラジカルに対応する負のピーク強度の絶対値を表し、Peak A1は低分子量ポリテトラフルオロエチレンの主鎖上に捕捉されたアルキル型過酸化ラジカルに対応する負のピーク強度の絶対値を表す。)
関係式(2):Peak M2/Peak M3<1.0
(式中、Peak M2は低分子量ポリテトラフルオロエチレンの分子鎖末端に捕捉された過酸化ラジカルに対応する負のピーク強度の絶対値を表し、Peak M3は低分子量ポリテトラフルオロエチレンの分子鎖末端に捕捉された過酸化ラジカルに対応する正のピーク強度の絶対値を表す。)
低分子量PTFE(1)は、大気下でのESR測定により得られるピークが上記関係式(1)及び(2)を充足する。これにより、主鎖上のアルキル型過酸化ラジカル量が分子鎖末端に捕捉された過酸化ラジカル量に対して90.91%以上の割合で存在することになる。
上記ESR測定は、大気下で、以下の条件にて実施する。
装置:日本電子株式会社(JEOL)製、JES-RE2X
測定温度:24±2℃
マイクロ波周波数:9.42-9.44GHz
マイクロ波出力:0.1mW及び0.04mW
中心磁場:333.0mT
掃引幅:±15mT又は±25mT
掃引時間:2分
時定数:0.1秒
磁場変調幅:0.2mT
スキャン回数:1回
変調周波数:100kHz
上記ESR測定(大気下)では、低分子量PTFEの分子鎖末端に捕捉された過酸化ラジカルに対応する負のピークM2、低分子量PTFEの分子鎖末端に捕捉された過酸化ラジカルに対応する正のピークM3、及び、低分子量PTFEの主鎖上に捕捉されたアルキル型過酸化ラジカルに対応する負のピークA1が、主に観測される。
ピークM2は、磁場強度332.0~333.0mTに観測される正ピークであってよい。
ピークM3は、磁場強度333.2~334.2mTに観測される負ピークであってよい。
ピークA1は、磁場強度334.5~335.5mTに観測される負ピークであってよい。
図4に、これらのピークの一例を示す。なお、ピークM2及びM3を合わせたものをピークM1と表記している。
なお、酸素存在下で照射を行って得られた低分子量PTFEでは、ピークA1が小さくなる。
関係式(1)において、Peak M2は、上述したピークM2の強度の絶対値を表し、Peak A1は、上述したピークA1の強度の絶対値を表す。
関係式(1)において、Peak M2/Peak A1は1.0以上であり、1.2以上であることが好ましい。Peak M2/Peak A1は、また、6.0以下であってよく、5.5以下であることが好ましい。
関係式(2)において、Peak M2は、上述したピークM2の強度の絶対値を表し、Peak M3は、上述したピークM3の強度の絶対値を表す。
関係式(2)において、Peak M2/Peak M3は1.0未満であり、0.9以下であることが好ましい。Peak M2/Peak M3は、また、0.1以上であってよく、0.2以上であることが好ましい。
低分子量PTFE(1)は、TFEホモポリマーであることも好ましい。
本開示は、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sであり、=CHF、-CHF-、-CHF、-CHF及び-CHからなる群より選択される少なくとも1種の水素原子を含む分子構造と、分子鎖末端のCF-と、-CF=CF-、-CF=CF及び-CF=CF-CFからなる群より選択される少なくとも1種の二重結合を含む分子構造とを含み、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が25質量ppb未満である低分子量ポリテトラフルオロエチレン(以下、低分子量PTFE(2)ともいう。)にも関する。
低分子量PTFE(2)は、-CHF-、=CHF、-CHF、-CHF及び-CHからなる群より選択される少なくとも1種の水素原子を含む分子構造と、分子鎖末端のCF-と、-CF=CF-、-CF=CF及び-CF=CF-CFからなる群より選択される少なくとも1種の二重結合を含む分子構造とを含む。これにより、低分子量PTFE(2)は、水素原子を含む異種の有機物質との相溶性に優れる。
低分子量PTFE(2)は、-CHF-、=CHF、-CHF及び-CHFからなる群より選択される少なくとも1種の水素原子を含む分子構造と、分子鎖末端のCF-と、-CF=CF-CFで表される分子構造とを含むことが好ましく、-CHF-、=CHF、-CHF及び-CHFで表される分子構造と、分子鎖末端のCF-と、-CF=CF-CFで表される分子構造とを含むことがより好ましい。
低分子量PTFEが上述した構造を分子内に有することは、19F MAS NMRにより確認できる。測定条件や、各構造に帰属される信号の位置については、上述したとおりである。
380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sであり、-CFCF(CF)CF-及び-CF(CFからなる群より選択される少なくとも1種の分子構造と、分子鎖末端のCF-と、-CF=CF-、-CF=CF及び-CF=CF-CFからなる群より選択される少なくとも1種の二重結合を含む分子構造とを含み、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が25質量ppb未満である低分子量ポリテトラフルオロエチレン(以下、低分子量PTFE(3)ともいう。)にも関する。
低分子量PTFE(3)は、-CFCF(CF)CF-及び-CF(CFからなる群より選択される少なくとも1種の分子構造と、分子鎖末端のCF-と、-CF=CF-、-CF=CF及び-CF=CF-CFからなる群より選択される少なくとも1種の二重結合を含む分子構造とを含む。
低分子量PTFE(3)は、CFCF(CF)CF-及び-CF(CFで表される分子構造と、分子鎖末端のCF-と、-CF=CF-、-CF=CF及び-CF=CF-CFで表される分子構造とを含むことが好ましい。
低分子量PTFE(3)は、-CFCF(CF)CF-で表される分子構造と、分子鎖末端のCF-と、-CF=CF-CFで表される分子構造とを含むことも好ましい。
低分子量PTFEが上述した構造を分子内に有することは、19F MAS NMRにより確認できる。測定条件や、各構造に帰属される信号の位置については、上述したとおりである。
低分子量PTFE(1)~(3)の好適な溶融粘度、及び、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量については、本開示の製造方法により得られる低分子量PTFEについて上述したのと同様である。
低分子量PTFE(1)~(3)は、例えば、上述した本開示の製造方法により得ることができる。
上記低分子量PTFEは、分子鎖末端に主鎖炭素数10個あたり5個以下のカルボキシル基を有していることが好ましい。上記カルボキシル基は、主鎖炭素数10個あたり4個以下がより好ましく、3個以下が更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。上記カルボキシル基は、例えば、上記高分子量PTFEに酸素存在下で上記放射線を照射することにより、上記低分子量PTFEの分子鎖末端に生じる。
上記カルボキシル基の数は、下記方法により測定した値である。この測定方法による検出限界は0.5個である。
(測定方法)
特開平4-20507号公報記載の末端基の分析方法に準拠し、以下の測定を行う。
低分子量PTFE粉末をハンドプレスにて予備成形し、0.1~1.0mm厚みのフィルムを作製する。作製したフィルムについて赤外吸収スペクトル分析する。PTFEにフッ素ガスを接触させて作製した末端を完全フッ素化したPTFEの赤外吸収スペクトル分析も行い、両者の差スペクトルから次式により末端カルボキシル基の個数を算出する。
末端カルボキシル基の個数(炭素数10個あたり)=(l×K)/t
l:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚み(mm)
カルボキシル基の吸収周波数は3560cm-1前後、補正係数は440とする。
上記低分子量PTFEは、酸素存在下での放射線照射、又は、照射によって生成したラジカルと酸素との反応によって生成し得る、カルボキシル基以外の官能基の含有量も低減されている。上記カルボキシル基以外の官能基としては、例えば、分子鎖末端の酸フルオライド基(-COF)、分子鎖中のカルボニル基(-CO-)が挙げられる。
上記低分子量PTFEは、分子鎖末端の酸フルオライド基に対応する吸光度(Absorbance)が0.025以下であることが好ましく、0.020以下であることがより好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の値であってよい。
また、分子鎖中のカルボニル基に対応する吸光度が0.020以下であることが好ましく、0.010以下であることがより好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の値であってよい。
上記吸光度は、特開平4-20507号公報記載の末端基の分析方法に準拠して測定する値である。
なお、酸フルオライド基の吸収周波数は1880cm-1前後、カルボニル基の吸収周波数は1810cm-1前後である。
上記低分子量PTFEの分子鎖末端には、上記高分子量PTFEの重合反応において使用された重合開始剤又は連鎖移動剤の化学構造に由来する不安定末端基が生じていてもよい。上記不安定末端基としては特に限定されず、例えば、-CHOH、-COOH、-COOCH等が挙げられる。
上記低分子量PTFEは、不安定末端基の安定化を行ったものであってもよい。上記不安定末端基の安定化の方法としては特に限定されず、例えば、フッ素含有ガスに曝露することにより末端をトリフルオロメチル基〔-CF〕に変化させる方法等が挙げられる。
上記低分子量PTFEはまた、末端アミド化を行ったものであってもよい。上記末端アミド化の方法としては特に限定されず、例えば、特開平4-20507号公報に開示されているように、フッ素含有ガスに曝露する等して得られたフルオロカルボニル基〔-COF〕をアンモニアガスと接触させる方法等が挙げられる。
上記低分子量PTFEが上述の不安定末端基の安定化又は末端アミド化を行ったものであると、塗料、グリース、化粧品、メッキ液、トナー、プラスチックス等の相手材への添加剤として用いる場合に、相手材となじみやすく、分散性を向上させることができる。
放射線を照射するPTFEは、テトラフルオロエチレン(TFE)単位のみからなるホモPTFEであってもよいし、TFE単位及びTFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含む変性PTFEであってもよい。本開示の製造方法において、ポリマーの組成は変化しないので、上記低分子量PTFEは、上記放射線を照射するPTFEが有する組成をそのまま有する。
上記変性PTFEにおいて、上記変性モノマー単位の含有量は、全単量体単位の0.001~1質量%であることが好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、また、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。本明細書において、上記変性モノマー単位とは、変性PTFEの分子構造の一部分であって変性モノマーに由来する部分を意味し、全単量体単位とは、変性PTFEの分子構造における全ての単量体に由来する部分を意味する。上記変性モノマー単位の含有量は、フーリエ変換型赤外分光法(FT-IR)等の公知の方法により求めることができる。
上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等のクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕等の水素含有フルオロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;パーフルオロアルキルエチレン;エチレン等が挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、下記一般式(1)
CF=CF-ORf (1)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(1)において、Rfが炭素数1~10のパーフルオロアルキル基を表すものであるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
上記PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられるが、パーフルオロアルキル基がパーフルオロプロピル基であるパープルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕が好ましい。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、上記一般式(1)において、Rfが炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rfが下記式:
Figure 0007501841000001
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rfが下記式:
Figure 0007501841000002
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
パーフルオロアルキルエチレンとしては特に限定されず、例えば、(パーフルオロブチル)エチレン(PFBE)、(パーフルオロヘキシル)エチレン、(パーフルオロオクチル)エチレン等が挙げられる。
上記変性PTFEにおける変性モノマーとしては、HFP、CTFE、VDF、PPVE、PFBE及びエチレンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種である。
上記低分子量PTFEは、成形材料、インク、化粧品、塗料、グリース、オフィスオートメーション機器用部材、トナーを改質する添加剤、複写機の有機感光体材料、めっき液への添加剤等として好適に使用することができる。上記成形材料としては、例えば、ポリオキシベンゾイルポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド等のエンジニアリングプラスチックが挙げられる。上記低分子量PTFEは、特に、グリース用粘稠剤として好適である。
上記低分子量PTFEは、成形材料の添加剤として、例えば、コピーロールの非粘着性・摺動特性の向上、家具の表層シート、自動車のダッシュボード、家電製品のカバー等のエンジニアリングプラスチック成形品の質感を向上させる用途、軽荷重軸受、歯車、カム、プッシュホンのボタン、映写機、カメラ部品、摺動材等の機械的摩擦を生じる機械部品の滑り性や耐摩耗性を向上させる用途、エンジニアリングプラスチックの加工助剤等として好適に用いることができる。
上記低分子量PTFEは、塗料の添加剤として、ニスやペンキの滑り性向上の目的に用いることができる。上記低分子量PTFEは、化粧品の添加剤として、ファンデーション等の化粧品の滑り性向上等の目的に用いることができる。
上記低分子量PTFEは、更に、ワックス等の撥油性又は撥水性を向上させる用途や、グリースやトナーの滑り性を向上させる用途にも好適である。
上記低分子量PTFEは、二次電池や燃料電池の電極バインダー、電極バインダーの硬度調整剤、電極表面の撥水処理剤等としても使用できる。
上記低分子量PTFEと潤滑油とを使用してグリースを調製することもできる。上記グリースは、上記低分子量PTFEと潤滑油とを含有することを特徴とすることから、潤滑油中に上記低分子量PTFEが均一かつ安定に分散しており、耐荷重性、電気絶縁性、低吸湿性等の特性に優れている。
上記潤滑油(基油)は、鉱物油であっても、合成油であってもよい。上記潤滑油(基油)としては、例えば、パラフィン系やナフテン系の鉱物油、合成炭化水素油、エステル油、フッ素オイル、シリコーンオイルのような合成油等が挙げられる。耐熱性の観点からはフッ素オイルが好ましく、上記フッ素オイルとしては、パーフルオロポリエーテルオイル、三フッ化塩化エチレンの低重合物等が挙げられる。三フッ化塩化エチレンの低重合物は、重量平均分子量が500~1200であってよい。
上記グリースは、更に、増稠剤を含むものであってもよい。上記増稠剤としては、金属石けん、複合金属石けん、ベントナイト、フタロシアニン、シリカゲル、ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ウレタン化合物、イミド化合物等が挙げられる。上記金属石けんとしては、例えばナトリウム石けん、カルシウム石けん、アルミニウム石けん、リチウム石けん等が挙げられる。また上記ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物及びウレタン化合物としては、例えばジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、その他のポリウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン化合物又はこれらの混合物等が挙げられる。
上記グリースは、上記低分子量PTFEを0.1~60質量%含むことが好ましく、0.5質量%以上含むことがより好ましく、5質量%以上含むことが更に好ましく、50質量%以下含むことがより好ましい。上記低分子量PTFEの量が多すぎると、グリースが硬くなりすぎて、充分な潤滑性を発揮できないおそれがあり、上記低分子量PTFEの量が少なすぎると、シール性が発揮できないおそれがある。
上記グリースは、固体潤滑剤、極圧剤、酸化防止剤、油性剤、さび止め剤、粘度指数向上剤、清浄分散剤等を含むこともできる。
次に実施例を挙げて本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
溶融粘度
ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所社製)及び2φ-8Lのダイを用い、予め380℃で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定を行った。
末端カルボキシル基数
特開平4-20507号公報記載の末端基の分析方法に準拠し、以下の測定を行った。
低分子量PTFE粉末をハンドプレスにて予備成形し、0.1~1.0mm厚みのフィルムを作製した。作製したフィルムについて赤外吸収スペクトル分析した。PTFEにフッ素ガスを接触させて作製した末端を完全フッ素化したPTFEの赤外吸収スペクトル分析も行い、両者の差スペクトルから次式により末端カルボキシル基の個数を算出した。
末端カルボキシル基の個数(炭素数10個あたり)=(l×K)/t
l:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚み(mm)
カルボキシル基の吸収周波数は3560cm-1前後、補正係数は440とする。
また、酸フルオライド基の吸収周波数は1880cm-1前後、カルボニル基の吸収周波数は1810cm-1前後とする。
パーフルオロオクタン酸及びその塩(PFOA)の含有量
液体クロマトグラフ質量分析計(Waters,LC-MS ACQUITY UPLC/TQD)を用い、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量の測定を行った。測定粉末1gにアセトニトリル5mlを加え、60分間の超音波処理を行い、パーフルオロオクタン酸を抽出した。得られた液相について、MRM(Multiple Reaction Monitoring)法を用いて測定した。移動相としてアセトニトリル(A)と酢酸アンモニウム水溶液(20mmol/L)(B)を、濃度勾配(A/B=40/60-2min-80/20-1min)で送液した。分離カラム(ACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm)を使用し、カラム温度は40℃、注入量は5μLとした。イオン化法はESI(Electrospray ionization) Negativeを使用し、コーン電圧は25Vに設定し、プリカーサーイオン分子量/プロダクトイオン分子量は413/369を測定した。パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量は外部標準法を用い、算出した。この測定における検出限界は5ppbである。
炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸及びその塩(PFC)の含有量
液体クロマトグラフ質量分析計(Waters,LC-MS ACQUITY UPLC/TQD)を用い、炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸及びその塩を測定した。溶液はパーフルオロオクタン酸の測定にて抽出した液相を使用し、MRM法を用いて測定した。測定条件はパーフルオロオクタン酸の測定条件から、濃度勾配を変更し(A/B=10/90-1.5min-90/10-3.5min)、プリカーサーイオン分子量/プロダクトイオン分子量は、パーフルオロヘキサン酸(炭素数6)は313/269、パーフルオロヘプタン酸(炭素数7)は363/319、パーフルオロオクタン酸(炭素数8)は413/369、パーフルオロノナン酸(炭素数9)は463/419、パーフルオロデカン酸(炭素数10)は513/469、パーフルオロウンデカン酸(炭素数11)は563/519、パーフルオロドデカン酸(炭素数12)は613/569、パーフルオロトリデカン酸(炭素数13)は663/619、パーフルオロテトラデカン酸(炭素数14)は713/669を測定した。
炭素数6~14のパーフルオロカルボン酸及びその塩の合計量は、上記測定より得られたパーフルオロオクタン酸の含有量(X)から下記式を用いて算出した。この測定における検出限界は5ppbである。
(AC6+AC7+AC8+AC9+AC10+AC11+AC12+AC13+AC14)/AC8×X
C6:パーフルオロヘキサン酸のピーク面積
C7:パーフルオロヘプタン酸のピーク面積
C8:パーフルオロオクタン酸のピーク面積
C9:パーフルオロノナン酸のピーク面積
C10:パーフルオロデカン酸のピーク面積
C11:パーフルオロウンデカン酸のピーク面積
C12:パーフルオロノデカン酸のピーク面積
C13:パーフルオロトリデカン酸のピーク面積
C14:パーフルオロテトラデカン酸のピーク面積
X:MRM法を用いた測定結果から外部標準法を用いて算出したパーフルオロオクタン酸の含有量
ESR測定(ラジカルピーク比及びラジカル残存率)
(真空下測定)
装置:日本電子株式会社(JEOL)製、JES-X330
測定温度:23±1℃
マイクロ波周波数:9.42-9.44GHz
マイクロ波出力:0.1mW及び0.04mW
中心磁場:337.0mT
掃引幅:±25mT
掃引時間:2分
時定数:0.1秒
磁場変調幅:0.2mT
スキャン回数:1回
変調周波数:100kHz
(大気下測定)
装置:日本電子株式会社(JEOL)製、JES-RE2X
測定温度:24±2℃
マイクロ波周波数:9.42-9.44GHz
マイクロ波出力:0.1mW及び0.04mW
中心磁場:333.0mT
掃引幅:±15mT又は±25mT
掃引時間:2分
時定数:0.1秒
磁場変調幅:0.2mT
スキャン回数:1回
変調周波数:100kHz
ラジカル残存率の定義について示す。
ESRのスペクトル強度(NSI)は、得られたスペクトルを二重積分して求め、次に示す式により規格化することができる。
Figure 0007501841000003
ここで、SRは掃引幅(mT)、Pはマイクロ波の出力(mW)、gainは増幅率、AreaSignalは、測定したESRスペクトルを二重積分して得られるスペクトルの強度、Modは、変調幅(mT)である。
ラジカル濃度(spin/g)は、2,2,6,6-tetramethyl-1-piperidinyloxyl(TEMPO)の安定なラジカルの数(3.78×1023spin/g)等を基準にして算出することができる。
ラジカル残存率は、計算で求めた各々のラジカル濃度を使って下記式より求めることができる。
ラジカル残存率(%)=(1-(S-S)/S)×100)
は照射直後のラジカル濃度、Sは各時間のラジカル濃度)
なお、測定条件が等しい場合は、AreaSignalを用いて下記式より相対的な残存率を求めることもできる。
ラジカル残存率(%)=(1-(AS-AS)/AS)×100)
(式中、ASは照射直後のAreaSignal、ASは各時間のAreaSignal)
融点
示差走査熱量計(DSC)を用い、事前に標準サンプルとして、インジウム、鉛を用いて温度校正した上で、低分子量PTFE約3mgをアルミ製パン(クリンプ容器)に入れ、200ml/分のエアー気流下で、250~380℃の温度領域を10℃/分で昇温させて行い、上記領域における融解熱量の極小点を融点とした。
Z値
φ50×17mmのシャーレに低分子量ポリテトラフルオロエチレン粉末を隙間なく入れ、測色式差計ZE6000(日本電色工業(株)製)を用いて測定した。マンセル表色系(HV/C)は、C/2°を選択し、スタンダード(X:92.69、Y:94.70、Z:111.42)を用いて検量線を作成した。
密閉容器内の酸素濃度
密閉容器内の気層部分をガスクロマトグラフィーにて分析することにより測定した。更に、密閉容器内に同封した酸素インジケーターの色調が紫色から桃色に変化することで、酸素濃度が2.0体積%未満(酸素不在)であることを確認した。更に、酸素濃度計でも酸素濃度が2.0体積%未満であることを確認した。
酸素濃度が0.1体積%であることの確認も、同様に行った。
実施例1
高分子量PTFEファインパウダー(1)(ASTM D 4895に準拠し、測定した標準比重:2.175、変性体1、PFC及びPFOAの濃度は検出限界未満である)を5g、重量天秤にて計量してパイレックス(登録商標)ガラス製の試験管に封入した。次いで、試験管を油拡散ポンプ付きのガラス製真空ラインに接続し、試験管内を真空脱気(真空度10-2Pa以下)した状態で16時間保持した後、ガラスバーナーを用いてガラスを加工し密封した。
PTFEファインパウダーが真空で保持されたガラスアンプルに対して、327kGyのコバルト-60γ線照射を行った。この時の照射条件は、試料中心での平均線量率11kGy/h、照射温度30℃である。続いて、試験管を開封することなく、FORCED CONVECTION OVEN(アドバンテック社製DRX620DA)を用いて150℃で20時間加熱処理を行った。試験管を室温に冷却後、開封し、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表1に示す。
得られた低分子量PTFEのFTIR差スペクトルのピークの帰属は以下のとおりである。
-COOH(1778cm-1)、-CO-(1813cm-1)、-COF(1880cm-1)及び-COOH(3556cm-1)。
実施例1-2
高分子量PTFEファインパウダー(1)を50g、重量天秤で計量して、バリアナイロン製の袋に入れた。次いで、袋内を真空シーラー装置(富士インパルス(株)V-300-10W)を用いて袋内を減圧状態(-400torrG)にした後、ヒートシールにより密封した。袋内に予め設置しておいた酸素検知紙により、袋内が酸素不在であることを確認した後、上記バリアナイロン製の袋に対して、50~300kGyのγ線照射を行った。この時の照射条件は、試料中心での平均線量率10.4kGy/h、照射温度30℃であり、試料を適宜反転させて線量の均一化を図って行った。
続いて、袋を開封することなく、25℃の室温で10日間保管した後、開封し、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表2に示す。
得られた低分子量PTFEのFTIR差スペクトルのピークの帰属は以下のとおりである。
-COOH(1778cm-1)、-CO-(1813cm-1)、-COF(1880cm-1)及び-COOH(3556cm-1)。
実施例1-3
高分子量PTFEファインパウダー(1)を電子スピン共鳴装置(ESR)用の石英試料管に1g、天秤で計量の上封入し、油拡散ポンプ付きのガラス製真空ラインに接続し、試験管内を真空脱気(真空度10-2Pa以下)した状態で16時間保持した後、ガラスバーナーを用いてガラスを加工し密封した。
上記ESR試料管に対して、327kGyのγ線照射を行った。この時の照射条件は、線量率11kGy/h、照射温度30℃であった。
照射後、ESR測定(日本電子製JES-X330)を室温で実施し、残存ラジカルの減衰挙動測定をオーブンによる熱処理(50℃、100℃、150℃)を併用することで調べた。照射直後(30分後)のESR測定後の試料のスペクトルは、アルキルラジカルを示すdouble quintetのシグナルと、末端ラジカルを示すtripletのシグナルが観察された。各温度での熱処理において、処理時間とともにdouble quintetのシグナルとtripletのシグナルは減衰し、特に、tripletのシグナルは、100℃以上の温度での熱処理時間、1時間以上では明瞭に検出できなかった。50℃の熱処理においても、18時間以上保持することでtripletのシグナルは明瞭に検出できなくなった。
一方、double quintetのシグナルは、150℃で17時間の熱処理を行っても検出できたが、そのラジカル収量は照射直後の測定時の収量の1/3程度であった。真空下での環境でtripletのESR信号が観察できなかった当該各種熱処理試料を開封し、大気暴露した後、ESR測定を行った。その結果、非対称な過酸化ラジカルのシグナルのみ観察できた。このシグナルの帰属は、主鎖上のアルキル型の過酸化ラジカルである。
真空下、150℃で熱処理した試料のESRスペクトルを図1に示す。図1は、磁場332mTにおけるスペクトルピークの高さをあわせたときの、処理時間0時間と17時間のスペクトルを重ね描きしたものである。
真空下、各温度で熱処理した試料のESRスペクトルの収量の、0時間を100%としたときの減衰率を図2に示す。
実施例2
高分子量PTFEファインパウダー(1)を0.5kg重量天秤で計量して、アルミ製の気密袋(内袋ポリエチレン)に入れた。次いで、袋内を窒素ガスの流通と油回転ポンプによる排気を10回繰り返した後、袋内を減圧状態(2.7Pa)にした後、ヒートシールを用いて、袋を密封した。袋内に予め設置しておいた酸素検知紙により、袋内が酸素不在であることを確認した後、313kGyのγ線照射を行った。この時の照射条件は、試料中心での平均線量率2.42kGy/h、照射温度30℃であり、試料を適宜反転させて線量の均一化を図って行った。また、上記照射により、上記気密袋の内袋の分解ガスとして水素ガスを発生させた。
続いて、袋を開封することなく、FORCED CONVECTION OVEN(アドバンテック社製DRX620DA)を用いて150℃で20時間加熱処理を行い、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表1に示す。
また、19F solid state MAS NMRを用いて、得られた低分子量PTFEの構造解析を行った。その結果、-CHF(-140ppm付近)、=CHF(-150ppm)、-CHF-及び-CFH(-210ppmから-215ppm)等の水素原子を含む分子構造、並びに、分子鎖末端-CF=CF-CF(-75ppm)の化学構造が明瞭に検出できた。
比較用に、上記照射を酸素存在下で行い、かつ上記加熱処理を行わないこと以外は実施例2と同様にして、低分子量PTFE(従来製法)を得た。19F solid state MAS NMRを用いて、得られた低分子量PTFE(従来製法)の構造解析を行った。その結果、実施例2の低分子量PTFEのNMR分析で検出された水素原子を含む化学構造種、及び、分子鎖末端-CF=CF-CF(-75ppm)はほとんど検出できず、実施例2ではほとんど検出されなかった酸素原子を含む-CF=O(-64ppm)が明瞭に観察された。
実施例3
高分子量PTFEファインパウダー(1)を高分子量PTFEファインパウダー(2)(ASTM D 4895に準拠し、測定した標準比重:2.168、PFC及びPFOAの濃度は検出限界未満である)に変更した点以外は実施例2と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表1に示す。
また、19F solid state MAS NMRを用いて、得られた低分子量PTFEの構造解析を行った。その結果、-CHF(-140ppm付近)、=CHF(-150ppm)、-CHF-及び-CFH(-210ppmから-215ppm)等の水素原子を含む分子構造、及び、分子鎖末端-CF=CF-CF(-75ppm)の化学構造が明瞭に検出できた。
比較用に、上記照射を酸素存在下で行い、かつ上記加熱処理を行わないこと以外は実施例2と同様にして、低分子量PTFE(従来製法)を得た。19F solid state MAS NMRを用いて、得られた低分子量PTFE(従来製法)の構造解析を行った。その結果、実施例3の低分子量PTFEのNMR分析で検出された水素原子を含む化学構造種、及び、分子鎖末端-CF=CF-CF(-75ppm)はほとんど検出できず、実施例3ではほとんど検出されなかった酸素原子を含む-CF=O(-64ppm)が明瞭に観察された。
実施例4
高分子量PTFEファインパウダー(1)を11kg重量天秤で計量して、アルミ製の気密袋(内袋ポリエチレン)に入れた。次いで、袋内を油回転ポンプによる排気を行った後、袋内を減圧状態(2E-2torr)にした後、ヒートシールを用いて、袋を密封した。袋内に予め設置しておいた酸素検知紙により、袋内が酸素不在であることを確認した後、313kGyのγ線照射を行った。この時の照射条件は、試料中心での平均線量率2.42kGy/h、照射温度30℃であり、試料を適宜反転させて線量の均一化を図って行った。また、上記照射により、上記気密袋の内袋の分解ガスとして水素ガスを発生させた。
続いて、袋を開封することなく、FORCED CONVECTION OVEN(アドバンテック社製DRX620DA)を用いて150℃で20時間加熱処理を行い、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表1に示す。
比較例1
密閉試験管内の酸素濃度を18体積%とした点以外は実施例1と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表1に示す。
比較例2
密閉試験管内の酸素濃度を5.0体積%とした点以外は実施例1と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表1に示す。
実施例5
高分子量PTFEファインパウダー(1)を10g、重量天秤で計量して、12cm四方のアルミ箔製のトレイに、電子の透過深度以下になるように薄く均一におき、SUS304製の高温照射容器に設置した。当該高温照射容器に純度99.9%の窒素ガスを3l/minで流通させた状態で、それぞれ、100℃、150℃、200℃で加熱を行い、低エネルギー電子加速器(NHVコーポレーション製キュアトロン、定格200kV,20mA)を用いて、200kV,1mA,線量率15.9kGy/sの条件で223、318、445kGyの電子線の照射を行った。照射後、100℃以下の温度になるまでガス流通を行い、その後当該容器から試料を取り出し、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表3に示す。
参考例1
実施例5と同じように、高分子量PTFEファインパウダー(1)を10g、重量天秤で計量して、12cm四方のアルミ箔製のトレイに、電子の透過深度以下になるように薄く均一におき、SUS304製の高温照射容器に設置した。当該高温照射容器を酸素濃度21%の大気下に維持し、それぞれ、100℃、150℃、200℃と加熱を行い、低エネルギー電子加速器(NHVコーポレーション製キュアトロン、定格200kV,20mA)を用いて、200kV,1mA,線量率15.9kGy/sの条件で223、318kGyの電子線の照射を行った。照射後、100℃以下の温度になるまで待ち、その後当該容器から試料を取り出し、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表3に示す。
比較例3
電子線の照射温度を表4に示すように変更したこと、及び、照射後直ちに試料を容器から大気下に取り出したこと以外は実施例5と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表4に示す。
実施例6
電子線の照射温度を表4に示すように変更したこと以外は実施例5と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表4に示す。
参考例2
電子線の照射温度及び吸収線量を表4に示すように変更したこと以外は参考例1と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表4に示す。
Figure 0007501841000004
Figure 0007501841000005
Figure 0007501841000006
Figure 0007501841000007
実施例7-1
高分子量PTFEファインパウダー(3)(ASTM D 4895に準拠し、測定した標準比重:2.171、ホモ体、PFC及びPFOAの濃度は検出限界未満である)20gを用意し、実施例1-2と同様にヒートシールした。ヒートシールを行った約18時間後、袋内の酸素インジケーターは桃色であった。バリアナイロン製袋内のPTFEを、電子の透過深度以下になるように薄く均一に分散させ、2MVのNHVコーポレーション製電子加速器(定格2MV,20mA)を用いて、2MV,1.8mAで、250~500kGyの電子線照射を行った。このとき、移動照射を行い移動速度に対する吸収線量は、1パスあたり10kGyであり、室温で照射を開始し、照射終了時の温度は50℃であった。照射終了後から、照射室外までの時間は、2分要した。
20~28℃の室温で7日間放置した後、バリアナイロン袋を開封することなく、それをアルミ製の気密袋に入れ、実施例1-2と同様にヒートシールした。
FORCED CONVECTION OVEN(アドバンテック社製DRX620DA)を用いて150℃で18時間加熱処理を行い、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表5に示す。
実施例7-2
高分子量PTFEファインパウダー(1)(ASTM D 4895に準拠し、測定した標準比重:2.175、変性体1、PFC及びPFOAの濃度は検出限界未満である)をファインパウダー(3)の代わりに用いた以外、実施例7-1と同様に、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表5に示す。
実施例7-3
高分子量PTFEファインパウダー(4)(ASTM D 4895に準拠し、測定した標準比重:2.168、変性体2、PFC及びPFOAの濃度は検出限界未満である)をファインパウダー(3)の代わりに用いた以外、実施例7-1と同様に、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表5に示す。
実施例7-4
高分子量PTFEモールディングパウダー(1)(ASTM D 4895に準拠し、測定した標準比重:2.160、ホモ体、PFC及びPFOAの濃度は検出限界未満である)をファインパウダー(3)の代わりに用いた以外、実施例7-1と同様に、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表5に示す。
Figure 0007501841000008
実施例8-1
高分子量PTFEファインパウダー(3)を10g、重量天秤にて計量してパイレックス(登録商標)ガラス製の試験管に封入した。次いで、試験管を油拡散ポンプ付きのガラス製真空ラインに接続し、試験管内を真空脱気(真空度3.9×10-3Pa以下)した状態で16時間保持した後、ガラスバーナーを用いてガラスを加工し密封した。
PTFEファインパウダーが真空で保持された試験管に対して、400kGyのコバルト-60γ線照射を行った。この時の照射条件は、試料中心での平均線量率6.25kGy/h、照射温度30℃である。試験管を開封することなく、20~28℃の室温で2日間静置することでラジカル失活(自然失活プロセス)を行い、続いて、FORCED CONVECTION OVEN(アドバンテック社製DRX620DA)を用いて150℃、175℃、及び200℃で24時間加熱処理(加速失活プロセス)を行った。試験管を室温に冷却後、開封し、低分子量PTFE粉末を得た。
また、吸収線量を150kGyとしたこと以外、同様の加速失活プロセスの後に試験管を開封する方法で、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表6に示す。
また、19F solid state MAS NMRを用いて、得られた低分子量PTFEの構造解析を行った。その結果、分子鎖末端の-CF=CFに帰属される信号が-92ppmに、主鎖内の-CF=CF-に帰属される信号が―156ppm付近に、-CF=CF-CFに帰属される信号が-128ppm付近に、-CF-CF(CF)-CF-に帰属される信号が-71ppm付近及び-114ppm付近に、-CF(CFに帰属される信号が-58ppm付近に確認することができた。
比較例4-1
高分子量PTFEファインパウダー(3)が大気雰囲気で保持された試験管中で400kGyのγ線照射し、引き続き、150℃の24時間、加熱による加速失活プロセスを、大気雰囲気の試験管中で行ったこと以外は、実施例8-1と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。
また、吸収線量150kGyの場合は、大気雰囲気下でのγ線照射後に試験管を開封し、加熱による加速失活プロセスは行わなかった。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例8-1と同様に各種物性を測定した。結果を表6に示す。
19F solid state MAS NMRを用いて、得られた低分子量PTFE(従来製法)の構造解析を行った。その結果、実施例8-1の低分子量PTFEのNMR分析で検出された、二重結合を有する分子鎖末端の-CF=CF、主鎖内の-CF=CF-及び-CF=CF-CFはノイズレベルで明瞭に観察できなかった。また、-CF(CFや-CF-CF(CF)-CF-に帰属される信号も検出できず、実施例8-1ではほとんど検出されなかった酸素原子を含む-CF=O(-64ppm付近)が明瞭に観察された。
実施例8-2
高分子量PTFEファインパウダー(1)を使用したこと以外、実施例8-1と同様の処理を行うことで、低分子量PTFE粉末を得た。結果を表6に示す。
比較例4-2
高分子量PTFEファインパウダー(1)を使用したこと以外、比較例4-1と同様の処理を行うことで、低分子量PTFE粉末を得た。結果を表6に示す。
実施例8-3
高分子量PTFEファインパウダー(4)を使用したこと以外、実施例8-1と同様の処理を行うことで、低分子量PTFE粉末を得た。結果を表6に示す。
比較例4-3
高分子量PTFEファインパウダー(4)を使用したこと以外、比較例4-1と同様の処理を行うことで、低分子量PTFE粉末を得た。結果を表6に示す。
実施例8-4
高分子量PTFEモールディングパウダー(1)を使用したこと以外、実施例8-1と同様の処理を行うことで、低分子量PTFE粉末を得た。結果を表6に示す。
比較例4-4
高分子量PTFEモールディングパウダー(1)を使用したこと以外、比較例4-1と同様の処理を行うことで、低分子量PTFE粉末を得た。結果を表6に示す。
実施例8-5
高分子量PTFEモールディングパウダー(2)(ASTM D 4895に準拠し、測定した標準比重:2.168、ホモ体、PFC及びPFOAの濃度は検出限界未満である)を使用したこと以外、実施例8-1と同様の処理を行うことで、低分子量PTFE粉末を得た。結果を表6に示す。
比較例4-5
高分子量PTFEモールディングパウダー(2)を使用したこと以外、比較例4-1と同様の処理を行うことで、低分子量PTFE粉末を得た。結果を表6に示す。
Figure 0007501841000009
実施例9-1
高分子量PTFEファインパウダー(3)50gに、アイソパーEの商標で販売されている炭化水素油(エクソンモービル社製)9.2gを、ガラス瓶中で混合し、室温(25±2℃)で1時間熟成した。次にシリンダー(内径25.4mm)付きの押出しダイに上記混合物を充填し、シリンダーに挿入したピストンに5.7MPaの負荷を加えて1分間保持した。その後、直ちに、室温でラム速度20mm/分でオリフィスから押出した。このときの絞り比RR(Reduction Ratio)は、300であった。押出操作の後半部分の圧力が平衡状態になる時期に押出された押出し成形品を採取した。押出し成形品を通気の良い部屋で、室温で3日以上乾燥させ、アイソパーEを揮発除去したものを用いた。
押出し成形品を、約30mmの長さにカットし、実施例1-2と同様、バリアナイロン袋に入れた。袋内の酸素インジケーターは桃色であった。
実施例7-1と同様、電子線を用いて、100kGyの電子線照射を行った。照射温度40℃であった。20~28℃の室温で4日間放置した後、バリアナイロン袋を開封し、押出し成形物(0.3g)をESR用石英管に入れ、測定を行った。得られたESRのチャートから、それぞれのピーク比を求めた。結果を表7に示す。なお照射直後3分以内にESR測定を行った時のラジカル濃度は、1.62E+18spin/gであった。
実施例9-2
高分子量PTFEファインパウダー(1)を用いた以外は、実施例9-1と同様の処理を行い、ESRのチャートを得た。結果を表7に示す。なお、照射直後3分以内にESR測定を行った時のラジカル濃度は、1.98E+18spin/gであった。
実施例9-3
高分子量PTFEファインパウダー(4)を用いた以外は、実施例9-1と同様の処理を行い、ESRのチャートを得た。結果を表7に示す。なお、照射直後3分以内にESR測定を行った時のラジカル濃度は、2.24E+18spin/gであった。
比較例5
高分子量PTFEファインパウダー(3)(PFC及びPFOAの濃度は検出限界未満である)を用いて得られた押出し成形品を、約30mmの長さにカットし、試験管を開封状態で大気中(酸素濃度を21体積%)とし、試料中心での平均線量率9.5kGy/h、照射温度25℃で、コバルト-60からのγ線を用いて、152kGyの照射を行った。
照射後、20~28℃の室温で4日間放置した後、押出し成形物(0.3g)をESR用石英管に入れ、測定を行った。得られたESRのチャートから、それぞれのピーク比を求めた。結果を表7に示す。なお、照射直後3分以内にESR測定を行った時のラジカル濃度は、1.52E+18spin/gであった。
Figure 0007501841000010
実施例10-1
高分子量PTFEファインパウダー(3)を用い、実施例9-1にしたがって得られた押出し成形品を、約30mmの長さにカットし、パイレックス(登録商標)ガラス製の試験管に封入し、実施例8-1の要領で真空脱気を行い、密閉した。
PTFEファインパウダーが真空で保持された試験管に対して、152kGyのコバルト-60γ線照射を行い、実施例8-1と同様の方法で、150℃で96時間の加熱処理を行った。試験管を室温に冷却後、開封し、低分子量PTFEの押出し成形物を得た。押出し成形物をESR用石英管に入れ、測定を行った。得られたESRのチャートから、それぞれのピーク比を求めた。結果を表8に示す。なお、照射直後後3分以内にESR測定を行った時のラジカル濃度は、1.58E+18spin/gであった。
実施例10-2
高分子量PTFEファインパウダー(4)を用いて得られた押出し成形品を、約30mmの長さにカットし、その後、実施例10-1と同様の処理を行い、低分子量PTFEの押出し成形物を得た。押出し成形物をESR用石英管に入れ、測定を行った。得られたESRのチャートから、それぞれのピーク比を求めた。結果を表8に示す。なお、照射直後後3分以内にESR測定を行った時のラジカル濃度は、2.31E+18spin/gであった。
Figure 0007501841000011
実施例11-1
高分子量PTFEファインパウダー(3)200gを重量天秤で計量して、コック付きアルミ製の気密袋(内袋ポリエチレン)に入れた。同時に、脱酸素剤(A-500HS、アズワン(株)製)を2個入れた。次いで、袋内を窒素ガスの流通と油回転ポンプによる排気を3回繰り返した後、袋内を減圧状態(2.7Pa)にした後、コックを閉じた。ジルコニア式酸素濃度計LC-860(東レエンジニアリング製)にて、袋内が酸素不在であることを確認した後、真空シーラー装置(富士インパルス(株)V-300-10W)を用いて、コックの付け根をヒートシールすることによって袋を密封した。コバルト-60からのγ線を用いて、301kGyの照射を行った。この時の照射条件は、試料中心での平均線量率6.25kGy/h、照射温度30℃であった。
続いて、袋を開封することなく、20~28℃で2日~21日間保持した後(自然失活プロセス)、袋を開封した。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表9に示す。
Figure 0007501841000012
実施例11-2
高分子量PTFEファインパウダー(3)400gを重量天秤で計量して、コック付きアルミ製の気密袋(内袋ポリエチレン)に入れた以外は、実施例11-1と同様にして、γ線照射を行った。続いて、袋を開封することなく、20~28℃で1~7日間保持した後(自然失活プロセス)、袋を開封した。
得られた低分子量PTFE粉末について、各種物性を測定した。結果を表10に示す。
実施例11-3
高分子量PTFEモールディングパウダー(1)200gを用いた以外は実施例11-1と同様にして、γ線照射を行った。続いて、袋を開封することなく、20~28℃で1~7日間保持した後(自然失活プロセス)、袋を開封した。
得られた低分子量PTFE粉末について、各種物性を測定した。結果を表10に示す。
Figure 0007501841000013
実施例11-4
高分子量PTFEファインパウダー(1)10gを用いた以外は、実施例11-1と同様にして、γ線照射を行った。続いて、袋を開封することなく、20~28℃で2日間保持した(自然失活プロセス)。続いて、袋を開封することなく、80℃で1~4日間保持した後(加速失活プロセス)、袋を開封した。
得られた低分子量PTFE粉末について、PFOA含有量を測定した。結果を表11に示す。
実施例11-5
γ線照射後の加熱処理温度を100℃にした以外は、実施例11-4と同様とした。
得られた低分子量PTFE粉末について、PFOA含有量を測定した。結果を表11に示す。
実施例11-6
γ線照射後の加熱処理温度を150℃で18時間保持した以外は、実施例11-4と同様とした。
得られた低分子量PTFE粉末について、PFOA含有量を測定した。結果を表11に示す。
Figure 0007501841000014
実施例12-1
高分子量PTFEファインパウダー(3)を用いた以外は、実施例11-1と同様、γ線照射を行った。続いて、袋を開封することなく、20~28℃で2日間保持した(自然失活プロセス)後、袋を開封した。
20~28℃で1日間大気開放した後、0.1LのSUS製筒形オートクレーブに20gを計量した。脱酸素剤(アズワン製A-150HS)新品(新)2個を同梱した後、オートクレーブを密閉した。
次いで、オートクレーブ内で窒素ガスの流通と油回転ポンプによる排気を3回繰り返した後、オートクレーブ内を減圧状態(2.7Pa)にした。FORCED CONVECTION OVEN(アドバンテック社製DRX620DA)を用いて150℃で18時間加熱処理(加速失活プロセス)を行い、低分子量PTFE粉末を得た。
また、同様に、照射に使用した脱酸素剤(旧)を用いて上記と同様の処理を行い、低分子用PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表12に示す。
実施例12-2
SUS製オートクレーブに脱酸素剤を入れなかった以外、実施例12-1と同様にして低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表12に示す。
実施例12-3
自然失活プロセスを1日間にした以外は、新品の脱酸素剤を用いた実施例12-1と同様にして低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表12に示す。
実施例12-4
脱酸素剤をオートクレーブに同梱しない以外は、実施例12-3と同様にして低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表12に示す。
実施例12-5
大気開放期間を7日間にした以外は、実施例12-3と同様にして低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表12に示す。
実施例12-6
脱酸素剤をオートクレーブに同梱しない以外は、実施例12-5と同様にして低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表12に示す。
実施例12-7
実施例12-1と同様にして、γ線照射を行った。20~28℃で1日間大気開放した後、0.1LのSUS製筒形オートクレーブに20gを計量し、オートクレーブに入れた。脱酸素剤は用いないでオートクレーブを密閉した。
次いで、オートクレーブ内で窒素ガスの流通と油回転ポンプによる排気を3回繰り返した後、オートクレーブ内を減圧状態(2.7Pa)にした。FORCED CONVECTION OVEN(アドバンテック社製DRX620DA)にオートクレーブを入れ、油回転ポンプを再びオートクレーブに接続した。油回転ポンプとオートクレーブの間に、0.1N水酸化ナトリウム水溶液入りのインピンジャーを接続し、油回転ポンプを稼働させ、排気を連続で行いながら、150℃で18時間加熱処理(加速失活プロセス)を行い、低分子量PTFE粉末を得た。0.1N水酸化ナトリウムを中和した後、PFOA含有量を測定したが、検出限界未満であった。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表12に示す。
Figure 0007501841000015
実施例13-1
実施例11-1において、2日間の自然失活プロセスを経た低分子量PTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表13に示す。
参考例3
実施例13-1の自然失活プロセスで得た低分子量PTFE粉末を10g計量し、0.1LSUS製筒形オートクレーブに入れ密閉した。次いで、真空脱気を行わないで、オートクレーブをFORCED CONVECTION OVEN(アドバンテック社製DRX620DA)に入れて、150℃で18時間加熱処理を行った。得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表13に示す。
実施例13-2
実施例12-1において脱酸素剤(新)と同梱して加熱処理を行い、得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表13に示す。
実施英13-3
実施例13-2で得られた低分子量PTFE粉末を用い、参考例3と同様に加熱処理を行った。得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を測定した。結果を表13に示す。
また、比較例4-1で得られた低分子量PTFE粉末を用い、各種物性を測定した。結果を表13に示す。
Figure 0007501841000016
実施例14-1
高分子量PTFEファインパウダー(1)を用いた以外は、実施例11-1と同様、γ線照射を行った。続いて、袋を開封することなく、20~28℃で16日間保持した(自然失活プロセス)後、袋を開封した。
20~28℃で1日間大気開放した後、0.1LのSUS製筒形オートクレーブに20gを計量し、オートクレーブに入れ密閉した。次いで、オートクレーブ内で窒素ガスの流通と油回転ポンプによる排気を3回繰り返した後、オートクレーブ内を減圧状態(2.7Pa)にした。更に、99.99%水素ガス(ジーエルサイエンス(株)製、プッシュ缶タイプ標準ガス水素、99.99%製)を、PTFEに対し2.71E-2質量%入れた。
20~28℃で18時間静置(加速失活プロセス)を行い、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表14に示す。
実施例14-2
FORCED CONVECTION OVEN(アドバンテック社製DRX620DA)を用いて40℃で18時間加熱処理(加速失活プロセス)を行った以外は、実施例14-1と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表14に示す。
実施例14-3
3%水素ガス(高圧ガス工業(株)製)を8.14E-4質量%としたこと以外、実施例14-2と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表14に示す。
実施例14-4
3%水素ガスを5.09E-4質量%としたことと、加熱処理温度を150℃にしたこと以外、実施例14-3と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表14に示す。
Figure 0007501841000017
実施例15-1
実施例9-1と同様の処理で得られた、高分子量PTFEファインパウダー(3)押出し成形品0.3gを用いて実施例14-1と同様の真空脱気処理を行い、0.1LSUS製オートクレーブに密封した。真空状態を保ったまま、99.99%水素ガスを、PTFEに対し、2.15質量%入れた。24℃の室温で、35kGyのコバルト-60γ線照射を行った。この時の照射条件は、試料中心での平均線量率4.50kGy/hである。オートクレーブを開放し、照射後の成形品を取出し、ESRにてラジカル残存率を求めた。結果を表15に示す。なお、照射直後3分以内にESR測定を行った時のラジカル濃度は、1.38E+18spin/gであった。
実施例15-2
高分子量PTFEファインパウダー(1)を用いた以外、実施例15-1と同様の処理を行い、照射後の成形品を取出し、ESRにてラジカル残存率を求めた。結果を表15に示す。なお、照射直後3分以内にESR測定を行った時のラジカル濃度は、1.81E+18spin/gであった。
実施例15-3
高分子量PTFEファインパウダー(4)を用いた以外、実施例15-1と同様の処理を行い、照射後の成形品を取出し、ESRにてラジカル残存率を求めた。結果を表15に示す。なお、照射直後後3分以内にESR測定を行った時のラジカル濃度は、2.09E+18spin/gであった。
実施例15-4
高分子量PTFEファインパウダー(3)押出し成形品0.3gを、0.1LSUS製オートクレーブに密封し、窒素ガスの流通と油回転ポンプによる排気を3回繰り返した後、オートクレーブ内を減圧状態(2.7Pa)にした。真空状態を保ったまま、24℃の室温で、35kGyのコバルト-60γ線照射を行った。この時の照射条件は、試料中心での平均線量率4.50kGy/hである。押出し成形品を一旦大気中に取出し、照射直後のラジカル濃度を測定した後、再びオートクレーブに入れ、真空脱気処理を行った後、水素ガス3%(仕込量6.44E-2質量%)をオートクレーブに入れ、FORCED CONVECTION OVEN(アドバンテック社製DRX620DA)を用いて40℃で18時間加熱処理(加速失活プロセス)を行った。ESRにてラジカル残存率を求めた。結果を表15に示す。なお、照射直後3分以内にESR測定を行った時のラジカル濃度は、1.33E+18spin/gであった。
実施例15-5
高分子量PTFEファインパウダー(1)を用いた以外、実施例15-4と同様の処理を行い、照射後の成形品を取出し、ESRにてラジカル残存率を求めた。結果を表15に示す。なお、照射直後3分以内にESR測定を行った時のラジカル濃度は、1.86E+18spin/gであった。
実施例15-6
高分子量PTFEファインパウダー(4)を用いた以外、実施例15-4と同様の処理を行い、照射後の成形品を取出し、ESRにてラジカル残存率を求めた。結果を表15に示す。なお、照射直後3分以内にESR測定を行った時のラジカル濃度は、2.03E+18spin/gであった。
Figure 0007501841000018
実施例16-1
高分子量PTFEファインパウダー(3)を用いた以外は、実施例11-1と同様、γ線照射を行った。続いて、袋を開封することなく、20~28℃で9日間保持した後(自然失活プロセス)、袋を開封した。
20~28℃で1日間大気開放した後、0.1LのSUS製筒形オートクレーブに20gと、PTFEに対し5.50質量%のイオン交換水とを計量し、オートクレーブに入れ密閉した。次いで、オートクレーブ内で窒素ガスの流通と油回転ポンプによる排気を3回繰り返した後、オートクレーブ内を減圧状態(2.7Pa)にした。
FORCED CONVECTION OVEN(アドバンテック社製DRX620DA)を用いて150℃で18時間加熱処理(加速失活プロセス)を行い、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表16に示す。
実施例16-2
イオン交換水3.00質量%を入れた以外は、実施例16-1と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表16に示す。
実施例16-3
PTFEに対し13質量%の水を含有したシリカゲルを入れた以外は、実施例16-1と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表16に示す。
実施例16-4
イオン交換水5.00質量%を入れたことと、オートクレーブ内を窒素脱気しなかったこと以外は、実施例16-1と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末について、実施例1と同様に各種物性を測定した。結果を表16に示す。
Figure 0007501841000019
実施例17-1
特開昭63-146908号公報に開示された製造方法及び特開2000-026614号公報に開示された製造方法により、それぞれ超微粉末状PTFE(DSCによる結晶融点328℃)及び微粉末状架橋PTFE(DSCによる結晶融点320℃)を各5g、重量天秤にて計量してパイレックス(登録商標)ガラス製の試験管にそれぞれ封入した。次いで、試験管を油拡散ポンプ付きのガラス製真空ラインに接続し、試験管内を真空脱気(真空度3.5×10-3Pa以下)した状態で16時間保持した後、ガラスバーナーを用いてガラスを加工し密封した。
当該試験管に対して、20.1kGyのコバルト-60γ線照射を行った。この時の照射条件は、試料中心での平均線量率5.03kGy/h、照射温度25℃である。試験管を開封することなく、24℃の室温で1日間静置(自然失活プロセス)し、続いて、FORCED CONVECTION OVEN(アドバンテック社製DRX620DA)を用いて150℃で24時間加熱処理(加速失活プロセス)を行った。試験管を室温に冷却後、開封し、低分子量PTFE粉末を得た。得られた試料について、各種物性を測定した。結果を表17に示す。
実施例17-2
コバルト-60γ線の吸収線量を40.2kGyとした以外、実施例17-1と同様の処理を行い、低分子量PTFE粉末を得た。結果を表17に示す。
実施例17-3
国際公開第2009/020187号に開示された製造方法により得られた低分子量PTFE粉末を原料に用いた以外、実施例17-1と同様の処理を行った。結果を表17に示す。
Figure 0007501841000020
実施例18-1
実施例9-1と同様の処理で得られた、高分子量PTFEファインパウダー(3)押出し成形品0.3gを用いて、0.1LSUS製オートクレーブに密封し、実施例9-1と同様の真空脱気処理を行った。真空状態を保ったまま、24℃の室温で、当該オートクレーブに対して、36.0kGyのコバルト-60γ線照射を行った。この時の照射条件は、試料中心での平均線量率4.50kGy/hである。照射後、オートクレーブを開封することなく、真空状態を保ったまま、25℃の室温で1日静置した(自然失活プロセス)。一旦、大気中に取り出した押出し成形品を再度オートクレーブに入れ、オートクレーブ内で窒素ガスの流通と油回転ポンプによる排気を3回繰り返した後、オートクレーブ内を減圧状態(2.7Pa)にし、3%水素ガスをPTFEに対して2.15質量%入れた。続いて、FORCED CONVECTION OVEN(アドバンテック社製DRX620DA)を用いて40℃で18時間加熱処理(加速失活プロセス)を行った。オートクレーブを開放し、照射後の成形品を取出し、ESRにてラジカル比を求めた。結果を表18に示す。
実施例18-2
99.99%水素ガス(仕込量6.44E-2質量%)を用いた以外は、実施例18-1と同様の処理を行った。オートクレーブを開放し、照射後の成形品を取出し、ESRにてラジカル比を求めた。結果を表18に示す。
比較例6
水素ガスを入れて加熱処理を行う工程の代わりに、大気中で同様の加熱処理を行った以外は、実施例18-1と同様の処理を行った。結果を表18に示す。
Figure 0007501841000021
実施例19-1
高分子量PTFEファインパウダー(3)200gを用いて実施例11-1と同様の真空脱気処理を行い、室温で400kGyのコバルト-60γ線照射を行った。この時の照射条件は、試料中心での平均線量率6.25kGy/hである。照射後、試料を大気暴露することなく、真空状態を保ったまま、25℃の室温で2日静置した(自然失活プロセス)。一旦、大気中に取り出した押出し成形品20gを0.1LSUS製オートクレーブに入れ、オートクレーブ内で窒素ガスの流通と油回転ポンプによる排気を3回繰り返した後、オートクレーブ内を減圧状態(2.7Pa)にし、3%水素ガスをPTFEに対して2.15質量%入れた。続いて、FORCED CONVECTION OVEN(アドバンテック社製DRX620DA)を用いて40℃で18時間加熱処理(加速失活プロセス)を行った。オートクレーブを開放し、試料を取り出し、19F solid state MAS NMRを用いて、得られた低分子量PTFEの構造解析を行った。その結果、-CHF(-140ppm付近)、-CHF-及び-CFH(-215ppm)等の水素原子を含む分子構造、並びに、-CF―CF(CF)―CF-(-71ppm付近及び-114ppm付近)、分子鎖末端-CF=CF-CF(-75ppm付近及び-128ppm付近)、-CF(CF(-58ppm付近)の化学構造が明瞭に検出できた。
実施例19-2
99.99%水素ガス(仕込量6.44E-2質量%)を用いた以外は実施例19-1と同様の処理を行い、低分子量PTFE粉末を得た。19F solid state MAS NMRを用いて、得られた低分子量PTFEの構造解析を行った。その結果、-CHF(-140ppm付近)、-CHF-及び-CFH(-215ppm)等の水素原子を含む分子構造、並びに、-CF―CF(CF)―CF-(-71ppm付近及び-114ppm付近)、分子鎖末端-CF=CF-CF(-75ppm付近およびー128ppm付近)、-CF(CF(-58ppm付近)の化学構造が明瞭に検出できた。

Claims (14)

  1. 380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sである低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法であって、
    遊離水素原子を生成し得る物質の存在下、実質的に酸素の不存在下で高分子量ポリテトラフルオロエチレンに放射線を照射することにより、前記高分子量ポリテトラフルオロエチレンを低分子量化する工程(1)、及び、
    前記照射により生成した主鎖ラジカル及び末端ラジカルの少なくとも一部を実質的に酸素の不存在下で失活させることにより、前記低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得る工程(2)
    を含み、
    工程(2)は、下記工程(2a)及び(2b)からなる群より選択される少なくとも1種の工程を含むことを特徴とする低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法。
    工程(2a):工程(1)で得られた低分子量化物を、実質的に酸素の不存在下、70℃以上の温度で10分以上加温又は加熱処理する工程。
    工程(2b):工程(1)で得られた低分子量化物を、実質的に酸素が不存在である環境下に19℃以上の温度で10時間以上保持する工程。
  2. 380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sである低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法であって、
    遊離水素原子を生成し得る物質の存在下、実質的に酸素の不存在下で高分子量ポリテトラフルオロエチレンを加温又は加熱した状態で、前記高分子量ポリテトラフルオロエチレンに放射線を照射することにより、
    前記高分子量ポリテトラフルオロエチレンを低分子量化するとともに、前記照射により生成した主鎖ラジカル及び末端ラジカルの少なくとも一部を実質的に酸素の不存在下で失活させることにより、前記低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得る工程を含み、
    前記加温又は加熱を、70℃以上の温度で10分以上行うことを特徴とする低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法
  3. 前記遊離水素原子を生成し得る物質は、炭化水素系有機材料、アミン類、及び、水からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記遊離水素原子を生成し得る物質は、パラフィン、ポリエチレン、アセチレン、アンモニア、及び、水からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記遊離水素原子を生成し得る物質の量が、前記高分子量ポリテトラフルオロエチレンに対し、0.1~25質量%である請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記放射線の線量が100kGy以上である請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 前記放射線の線量が100~1000kGyである請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
  8. 前記放射線の線量が250~500kGyである請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 前記放射線の照射の開始から、前記低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得る工程の終了までの期間中、実質的に酸素が不存在の状態を維持する請求項1~8のいずれかに記載の製造方法。
  10. 前記放射線の照射前記低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得る工程、又は、それらの両方を実施する雰囲気中の酸素濃度を、酸素吸着剤により1.0体積%未満に維持する請求項1~9のいずれかに記載の製造方法。
  11. 前記放射線の照射の前に、更に、前記高分子量ポリテトラフルオロエチレンを、その一次融点以上に加熱することにより成形品を得る工程(3)を含み、前記成形品は、比重が1.0g/cm以上である請求項1~10のいずれかに記載の製造方法。
  12. 前記高分子量ポリテトラフルオロエチレンは、粉末、成形品、又は、成形品の切削屑である請求項1~11のいずれかに記載の製造方法。
  13. 前記放射線の照射を、真空中又は不活性ガス中で実施する請求項1~12のいずれかに記載の製造方法。
  14. 380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sである低分子量ポリテトラフルオロエチレンと、遊離水素原子を生成し得る物質とを含み、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が25質量ppb未満であり、前記遊離水素原子を生成し得る物質は、パラフィン、ポリエチレン、アセチレン、アンモニア、及び、水からなる群より選択される少なくとも1種である組成物。
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