JP7261422B2 - 低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法、及び、粉末 - Google Patents

低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法、及び、粉末 Download PDF

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Description

本開示は、低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法、及び、粉末に関する。
分子量数千から数十万の低分子量ポリテトラフルオロエチレン(「ポリテトラフルオロエチレンワックス」や「ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダー」とも呼ばれる)は、化学的安定性に優れ、表面エネルギーが極めて低いことに加え、フィブリル化が生じにくいので、滑り性や塗膜表面の質感を向上させる添加剤として、プラスチックス、インク、化粧品、塗料、グリース等の製造に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法としては、重合法、放射線分解法、熱分解法等が知られている。放射線分解法では、従来、空気雰囲気下で高分子量ポリテトラフルオロエチレンに放射線を照射して低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得るのが一般的である。
また、放射線分解法によって副生し得るパーフルオロカルボン酸及びその塩を低減する方法の検討も行われている(例えば、特許文献2及び3参照)。
特開平10-147617号公報 特開2018-24868号公報 特開2018-24869号公報
本開示は、パーフルオロオクタン酸及びその塩を生成させにくい低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法を提供することを目的とする。また、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が少ない低分子量ポリテトラフルオロエチレンの粉末を提供することも目的とする。
本開示は、実質的に酸素の不存在下で、高分子量ポリテトラフルオロエチレンに250kGy以上の放射線を照射して、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sである低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得る工程(1)を含む低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法に関する。
上記高分子量ポリテトラフルオロエチレンは、標準比重が2.130~2.230であることが好ましい。
上記高分子量ポリテトラフルオロエチレン及び上記低分子量ポリテトラフルオロエチレンがいずれも粉末であることが好ましい。
上記製造方法は、工程(1)の前に、更に、上記高分子量ポリテトラフルオロエチレンを、その一次融点以上に加熱することにより成形品を得る工程()を含み、上記成形品は、比重が1.0g/cm以上であることが好ましい。
本開示は、上記製造方法により得られる低分子量ポリテトラフルオロエチレンにも関する。
本開示は、低分子量ポリテトラフルオロエチレンを含む粉末であって、
パーフルオロオクタン酸及びその塩のいずれをも実質的に含まず、
上記低分子量ポリテトラフルオロエチレンは、1×10~7×10Pa・sの380℃における溶融粘度を有し、電子スピン共鳴法で測定して得られる一次微分型スペクトルにおいて、g値が2.014~2.016の範囲における負の信号の最大強度P1と、g値が2.006~2.008の範囲における負の信号の最大強度P2との比(P1/P2)が3.30以下であり、かつ、P2と、正の信号の最大強度P0との比(P2/P0)が0.260~0.450である粉末にも関する。
上記粉末は、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が25質量ppb未満であることが好ましい。
上記粉末は、比表面積が0.5~20m/gであることが好ましい。
本開示によれば、パーフルオロオクタン酸及びその塩を生成させにくい低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法を提供することができる。また、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が少ない低分子量ポリテトラフルオロエチレンの粉末を提供することもできる。
電子スピン共鳴(ESR)スペクトルにおけるP0、P1及びP2の一例を示す図である。 実施例1で得られた低分子量PTFE粉末のESRスペクトルを示す図である。 実施例2で得られた低分子量PTFE粉末のESRスペクトルを示す図である。 実施例3で得られた低分子量PTFE粉末のESRスペクトルを示す図である。 比較例1で得られた低分子量PTFE粉末のESRスペクトルを示す図である。 比較例2で得られた低分子量PTFE粉末のESRスペクトルを示す図である。 比較例3で得られた低分子量PTFE粉末のESRスペクトルを示す図である。 比較例4で得られた低分子量PTFE粉末のESRスペクトルを示す図である。 比較例5で得られた低分子量PTFE粉末のESRスペクトルを示す図である。
以下、本開示を具体的に説明する。
本開示は、実質的に酸素の不存在下で、高分子量ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に250kGy以上の放射線を照射して、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sである低分子量PTFEを得る工程(1)を含む低分子量PTFEの製造方法に関する。
従来のように、空気雰囲気下で高分子量PTFEに放射線を照射すると、高分子量PTFEよりも溶融粘度が小さい低分子量PTFEが生成すると同時に、炭素数4~14のパーフルオロカルボン酸又はその塩が生成する。これらの化合物には、自然界には存在せず分解され難い物質であり、更には、生物蓄積性が高いことが指摘されている炭素数が8のパーフルオロオクタン酸又はその塩、炭素数が9のパーフルオロノナン酸又はその塩、及び炭素数が10、11、12、13、14の、それぞれパーフルオロデカン酸パーフルオロウンデカン酸、パーフルオロドデカン酸、パーフルオロトリデカン酸、パーフルオロテトラデカン酸、又はそれぞれの塩が含まれている。
従来の照射条件で高分子量PTFEに放射線を照射した場合、炭素数が8のパーフルオロオクタン酸又はその塩が25ppb以上生成してしまう。
本開示の製造方法では、実質的に酸素の不存在下で高分子量PTFEに放射線を照射することから、パーフルオロオクタン酸及びその塩が生成しにくい。また、通常、酸素不存在下で照射を行うと低分子量PTFEを得ることが容易ではないが、本開示の製造方法においては、特定の線量で照射を行うことで、酸素不存在下であっても、低分子量PTFEを得ることができる。
また、本開示の製造方法によれば、炭素数4~14のパーフルオロカルボン酸及びその塩も生成しにくい。
また、本開示の製造方法は、照射によって生じた上記パーフルオロカルボン酸及びその塩を分解するための追加の工程、例えば熱処理工程等も必要としない。
また、本開示の製造方法によれば、炭素数4~14のパーフルオロスルホン酸及びその塩も生成しにくい。
また、本開示の製造方法によれば、加熱しても着色しにくい(白色度が高く、黄色味が少ない)低分子量PTFEを製造することができる。
また、本開示の製造方法によれば、マトリクス材料(特に、ポリカーボネート等の樹脂)に添加した場合に、引張強度に優れた製品を与えることができる低分子量PTFEを製造することができる。
工程(1)における放射線の線量は、250kGy以上である。上記範囲内の線量の照射を行うことで、実質的に酸素の不存在下であっても、高分子量PTFEを低分子量化することができる。
上記線量としては、300kGy以上が好ましく、350kGy以上がより好ましく、400kGy以上が更に好ましい。また、1000kGyが好ましく、700kGy以下がより好ましく、650kGy以下が更に好ましい。
上記線量は、吸収線量を意味する。
上記放射線としては、電離性放射線であれば特に限定されず、電子線、ガンマ線、X線、中性子線、高エネルギーイオン等が挙げられるが、電子線又はガンマ線が好ましい。
上記放射線の照射温度は、5℃以上、高分子量PTFEの融点以下であれば特に限定されない。融点近傍付近では高分子量PTFEの分子鎖が架橋することも知られており、低分子量PTFEを得る上では、320℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましく、260℃以下が更に好ましく、100℃未満が更により好ましく、50℃未満が特に好ましい。経済的には常温で照射することが好ましい。常温とは、照射発熱も含め、5~60℃の温度範囲であってよく、10~50℃であることが好ましく、15~45℃であることがより好ましい。
工程(1)における照射は、実質的に酸素の不存在下で実施する。ここで、実質的に酸素の不存在下とは、工程を実施する雰囲気中の酸素濃度が0.5体積%以下であることを意味する。上記パーフルオロカルボン酸及びその塩の生成を一層抑制できる点で、上記酸素濃度は、0.25体積%以下であることが好ましく、0.1体積%以下であることがより好ましく、0.01体積%以下であることが更に好ましく、0.001体積%以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
上記酸素濃度は、工程を実施する空間内の気相部分をガスクロマトグラフィーにて分析する方法、酸素濃度計を用いる方法、又は、上記空間内に設置した酸素検知剤の色調を調べる方法により測定できる。
工程(1)における照射は、密閉容器内で実施することが好ましい。上記密閉容器とは、容器内の酸素濃度を調整できるように密閉が可能な容器をいう。従って、不活性ガスを吸排気したり、上記密閉容器内のガスを排気したりするための配管が接続されていてもよく、放射線照射時には開放しない配管、蓋、バルブ、フランジ等が接続されていてもよい。また、その形状は特に限定されず、円柱状、角柱状、球状等であってよく、内容積可変な袋であってもよい。また、その素材も特に限定されず、金属、ガラス、ポリマー等であってよい。上記密閉容器は、放射線を透過し、かつ放射線の照射によって劣化しない材質・構造のものである必要があるが、耐圧容器である必要はない。
本開示の製造方法は、工程(1)の前に、高分子量PTFEを、実質的に酸素の不存在下で密閉容器に投入する工程(2)を含んでもよい。実質的に酸素の不存在下で密閉容器に投入するとは、投入後の密閉容器内の雰囲気中の酸素濃度が上述した範囲内であることを意味する。
上記高分子量PTFEを実質的に酸素の不存在下で密閉容器に投入する方法としては、例えば、上記高分子量PTFEと、不活性ガス及び酸素吸着剤からなる群より選択される少なくとも1種とを密閉容器に投入する方法が挙げられる。
上記密閉容器内に上記の各物質を投入する方法としては、例えば、上記密閉容器内に上記高分子量PTFEを設置した後、上記密閉容器内を上記不活性ガスで満たすか又は真空引きする方法が挙げられる。また、上記酸素吸着剤を使用する場合は、空気中で上記密閉容器内に上記高分子量PTFE及び上記酸素吸着剤を設置した後、上記密閉容器を密閉する方法や、上記密閉容器内に上記高分子量PTFE及び上記酸素吸着剤を設置した後、上記密閉容器内を上記不活性ガスで満たす方法、上記密閉容器内に上記高分子量PTFE及び上記酸素吸着剤を設置した後、上記密閉容器内を真空引きする方法等が挙げられる。
上記不活性ガスは、放射線照射による低分子量PTFEの生成反応に対して不活性なガスであることが必要である。上記不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等のガスが挙げられる。なかでも、窒素が好ましい。
上記不活性ガスは、酸素の含有量が0.5体積%以下であることが好ましく、0.25体積%以下であることがより好ましく、0.1体積%以下であることが更に好ましく、0.01体積%以下であることが更により好ましく、0.001体積%以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。上記不活性ガス中の酸素の含有量が上記範囲内にあると、工程(1)において上記高分子量PTFEに放射線を照射した際に、上記パーフルオロカルボン酸及びその塩が一層生成しにくくなる。
上記酸素の含有量は、ガスクロマトグラフィーでの分析の他、酸素濃度計や酸素検知紙により確認できる。
上記酸素吸着剤は、酸素を吸着する機能を有するものであれば特に限定されず、鉄系、亜鉛系、ハイドロサルファイト系等の無機系の酸素吸着剤、アスコルビン酸系、多価アルコール系、活性炭系等の有機系の酸素吸着剤等の、公知の酸素吸着剤を使用することができる。上記酸素吸着剤は、酸素との反応時に水分を必要とする水分依存型であっても、水分を必要としない自力反応型であってもよいが、自力反応型であることが好ましい。上記酸素吸着剤としては、鉄系の自力反応型酸素吸着剤、生石灰等が好ましく、なかでも、鉄系の自力反応型酸素吸着剤が好ましい。
上記酸素吸着剤の投入量は、上記密閉容器内の酸素濃度を上述の範囲内とすることができる量であることが好ましい。
工程(1)における照射は、実質的に、フッ素原子以外のハロゲン原子を有するハロゲン化ポリマーの不存在下で実施することが好ましい。本開示の製造方法では、上記ハロゲン化ポリマーが存在しなくても、高分子量PTFEを低分子量化することができ、しかも上記パーフルオロカルボン酸及びその塩が生成しにくい。
上記ハロゲン化ポリマーには、フッ素原子以外のハロゲン原子とともに、フッ素原子を有するポリマーも包含される。
上記ハロゲン化ポリマーとしては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等の、塩素原子を有するポリマーが挙げられる。
実質的に上記ハロゲン化ポリマーが不存在であるとは、上記ハロゲン化ポリマーの存在量が、上記高分子量PTFEに対し、0.001質量%未満であることを意味する。上記存在量は、0.0001質量%以下であることが好ましい。下限は特に限定されないが、検出限界未満の量であってよい。
工程(1)における照射は、実質的に、炭化水素、クロロ化炭化水素、アルコール及びカルボン酸の不存在下で実施することも好ましい。本開示の製造方法では、これらの化合物が存在しなくても、高分子量PTFEを低分子量化することができ、しかも上記パーフルオロカルボン酸及びその塩が生成しにくい。
上記炭化水素としては、例えば、炭素数が1~20の飽和炭化水素が挙げられる。
上記クロロ化炭化水素としては、例えば、炭素数が1~18の飽和炭化水素のクロロ化物が挙げられる。
上記アルコールとしては、例えば、炭素数が1~12の一価の飽和アルコールが挙げられる。
上記カルボン酸としては、例えば、炭素数が1~13の飽和モノカルボン酸が挙げられる。
実質的に上記化合物が不存在であるとは、上記化合物の存在量(合計量)が、上記高分子量PTFEに対し、0.001質量%未満であることを意味する。上記存在量は、0.0001質量%以下であることが好ましい。下限は特に限定されないが、検出限界未満の量であってよい。
本開示の製造方法は、工程(1)の前に、更に、上記高分子量PTFEを、その一次融点以上に加熱することにより成形品を得る工程(3)を含むこともできる。この場合、工程(3)で得られた成形品を工程(1)における上記高分子量PTFEとして使用することができる。上述した工程(2)も行う場合は、工程(3)を、工程(2)の前に実施することが好ましい。
上記一次融点としては、300℃以上が好ましく、310℃以上がより好ましく、320℃以上が更に好ましい。
上記一次融点は、未焼成の高分子量PTFEを示差走査熱量計で測定した場合に、結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度を意味する。上記吸熱カーブは、示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/分の条件で昇温させて得られたものである。
工程(3)における上記成形品は、比重が1.0g/cm以上であることが好ましく、1.5g/cm以上であることがより好ましく、また、2.5g/cm以下であることが好ましい。上記成形品の比重が上記範囲内にあると、表面の細孔や凸凹が小さくなり、結果的に比表面積の小さい低分子量PTFEを得ることが出来る。
上記比重は、水中置換法により測定することができる。
本開示の製造方法は、工程(3)の後に、更に、上記成形品を粉砕して、上記PTFEの粉末を得る工程を含むこともできる。上記成形品を粗く粉砕してから、更に小さく粉砕してもよい。
本開示の製造方法は、工程(1)の後に、更に、上記低分子量PTFEを粉砕して、低分子量PTFEの粉末を得る工程を含むこともできる。
上記粉砕の方法としては特に限定されないが、粉砕機で粉砕する方法が挙げられる。上記粉砕機には、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の衝撃式や、回転刃と外周ステーターが凹凸による剪断力で粉砕するカッターミル等の摩砕式等がある。
粉砕温度は-200℃以上、50℃未満であることが好ましい。冷凍粉砕では通常-200~-100℃であるが、室温付近の温度(10~30℃)で粉砕してもよい。冷凍粉砕では一般に液体窒素を使用するが、設備が膨大で粉砕コストも高くなる。工程が簡素となる点、粉砕コストを抑えることができる点で、10℃以上、50℃未満で粉砕することがより好ましく、10~40℃で粉砕することが更に好ましく、10~30℃で粉砕することが特に好ましい。
上記粉砕の後、微粒子や繊維状粒子を気流分級により除去した後に、更に分級により粗粒子を除去してもよい。
気流分級においては、粉砕された粒子が減圧空気により円柱状の分級室に送られ、室内の旋回気流により分散され、遠心力によって微粒子が分級される。微粒子は中央部からサイクロン及びバグフィルターへ回収される。分級室内には、粉砕粒子と空気が均一に旋回運動を行うために円錐状のコーン、ローター等の回転体が設置されている。
分級コーンを使用する場合には、分級点の調節は二次エアーの風量と分級コーン間の隙間を調節することにより行う。ローターを使用する場合には、ローターの回転数により分級室内の風量を調節する。
粗粒子の除去方法としては、メッシュによる気流分級、振動篩、超音波篩等が挙げられるが、気流分級が好ましい。
本開示の製造方法は、更に、工程(1)で得られた低分子量PTFEを、空気に曝露する工程(4)を含んでもよい。
本開示の製造方法においては、工程(1)における照射の開始以降、上記高分子量PTFE及び上記低分子量PTFEを100℃以上の温度下に置かないことが好ましく、50℃以上の温度下に置かないことも好ましい。
また、工程(1)における照射の開始以降、上記高分子量PTFE及び上記低分子量PTFEを上記温度下に、30分以上置かないことが好ましく、10秒以上置かないことも好ましい。
次に、本開示の製造方法の工程(1)において放射線を照射する高分子量PTFE、及び、放射線を照射した後に得られる低分子量PTFEについて説明する。
上記低分子量PTFEは、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sである。本開示において、「低分子量」とは、上記溶融粘度が上記の範囲内にあることを意味する。
上記溶融粘度は、1.5×10Pa・s以上であることが好ましく、また、3.0×10Pa・s以下であることが好ましく、1.0×10Pa・s以下であることがより好ましく、9.0×10Pa・s以下であることが更に好ましい。
上記溶融粘度は、ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所社製)及び2φ-8Lのダイを用い、予め380℃で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定した値である。
上記放射線を照射する上記高分子量PTFEは、標準比重(SSG)が2.130~2.230であることが好ましい。上記標準比重(SSG)はASTM D 4895に準拠し、測定した値である。
高分子量PTFEは、低分子量PTFEよりも溶融粘度が極めて高く、その正確な溶融粘度を測定することは困難である。他方、低分子量PTFEの溶融粘度は測定可能であるが、低分子量PTFEからは、標準比重の測定に使用可能な成形品を得ることが難しく、その正確な標準比重を測定することが困難である。従って、本開示では、放射線を照射する上記高分子量PTFEの分子量の指標として、標準比重を採用し、上記低分子量PTFEの分子量の指標として、溶融粘度を採用する。なお、上記高分子量PTFE及び上記低分子量PTFEのいずれについても、直接に分子量を特定できる測定方法は知られていない。
上記高分子量PTFEは、パーフルオロオクタン酸及びその塩の量が25質量ppb未満であってよく、20質量ppb以下であることが好ましく、15質量ppb以下であることがより好ましく、10質量ppb以下であることが更に好ましく、5質量ppb以下であることが特に好ましく、5質量ppb未満であることが最も好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
上記パーフルオロオクタン酸及びその塩の量は、液体クロマトグラフィーにより測定できる。
上記低分子量PTFEは、融点が320~340℃であることが好ましく、324~336℃であることがより好ましい。
上記融点は、示差走査熱量計(DSC)を用い、事前に標準サンプルとして、インジウム、鉛を用いて温度校正した上で、低分子量PTFE約3mgをアルミ製パン(クリンプ容器)に入れ、200ml/分のエアー気流下で、250~380℃の温度領域を10℃/分で昇温させて行い、上記領域における融解熱量の極小点を融点とする。
本開示の製造方法において、上記高分子量PTFEの形状は特に限定されず、粉末であってもよいし、上記高分子量PTFEの成形品であってもよいし、上記高分子量PTFEの成形品を切削加工した場合に生じる切削屑であってもよい。上記高分子量PTFEが粉末であると、上記低分子量PTFEの粉末を容易に得ることができる。
また、上記高分子量PTFEは、PTFEファインパウダー又はPTFEモールディングパウダーであってもよい。上記PTFEファインパウダーは、テトラフルオロエチレン(TFE)を乳化重合することによりPTFE水性分散液を得た後、PTFE水性分散液中のPTFE一次粒子を凝集させて得られるパウダー(二次粒子)である。また、上記PTFEモールディングパウダーは、TFEを懸濁重合することにより得られるパウダーである。上記切削屑は、より具体的には、上記モールディングパウダーを切削加工した場合に生じる切削屑である。上記切削加工は、上記モールディングパウダーの成形加工の際に、公知の方法にて行うことができる。なお、上記切削屑は、公知の方法にて洗浄、粗粉砕したものであってもよい。上記PTFEファインパウダー及び上記PTFEモールディングパウダーは、いずれも、重合により得た粒子を公知の方法により造粒して得られたものであってもよい。上記高分子量PTFEがPTFEファインパウダーであると、上記低分子量PTFEの粉末を容易に得ることができる。
また、本開示の製造方法によって得られる低分子量PTFEの形状は、特に限定されないが、粉末であることが好ましい。
本開示の製造方法によって得られる低分子量PTFEが粉末である場合、比表面積が0.5~20m/gであることが好ましい。
低分子量PTFE粉末としては、比表面積が0.5m/g以上、7.0m/g未満の比表面積の低いタイプと、比表面積が7.0m/g以上、20m/g以下の比表面積の高いタイプがそれぞれ求められている。
比表面積の低いタイプの低分子量PTFE粉末は、例えば塗料等のマトリクス材料に容易に分散する利点がある一方、マトリクス材料への分散粒径が大きく、微分散に劣る。
比表面積の低いタイプの低分子量PTFE粉末の比表面積は、1.0m/g以上が好ましく、5.0m/g以下が好ましく、3.0m/g以下がより好ましい。マトリクス材料としては、プラスチック、インクの他、塗料等も好適に用いられる。
比表面積の高いタイプの低分子量PTFE粉末は、例えば塗料等のマトリクス材料に分散させた場合、マトリクス材料への分散粒径が小さく、塗膜表面の質感を向上させる等、表面を改質する効果が高く、吸油量も多くなるが、マトリクス材料への分散に必要な時間が長い等容易に分散しないおそれがあり、また、塗料等の粘度が上昇するおそれもある。
比表面積の高いタイプの低分子量PTFE粉末の比表面積は、8.0m/g以上が好ましく、25m/g以下が好ましく、20m/g以下がより好ましい。マトリクス材料としては、オイル、グリース、塗料の他、プラスチック等も好適に用いられる。
上記比表面積は、表面分析計(商品名:BELSORP-miniII、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用い、キャリアガスとして窒素30%、ヘリウム70%の混合ガスを用い、冷却に液体窒素を用いて、BET法により測定する。
本開示の製造方法によって得られる低分子量PTFEが粉末である場合、平均粒子径が0.5~200μmであることが好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましく、25μm以下が更により好ましく、10μm以下が特に好ましい。このように、平均粒子径が比較的小さい粉末であることで、例えば、塗料の添加剤として用いた場合等に、より優れた表面平滑性を有する塗膜を形成することができる。
上記平均粒子径は、日本電子株式会社製レーザー回折式粒度分布測定装置(HELOS&RODOS)を用いて、カスケードは使用せず、分散圧力3.0barで測定を行い、粒度分布積算の50%に対応する粒子径に等しいとする。
本開示の製造方法では、工程(1)を実施した後に、パーフルオロオクタン酸及びその塩を実質的に含まない低分子量PTFEを得ることができる。本開示の製造方法により得られる低分子量PTFEは、パーフルオロオクタン酸及びその塩の量が25質量ppb未満であってよく、20質量ppb以下であることが好ましく、15質量ppb以下であることがより好ましく、10質量ppb以下であることが更に好ましく、5質量ppb以下であることが特に好ましく、5質量ppb未満であることが最も好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
上記パーフルオロオクタン酸及びその塩の量は、液体クロマトグラフィーにより測定できる。
また、本開示の製造方法では、炭素数4~14のパーフルオロカルボン酸及びその塩を実質的に含まない低分子量PTFEを得ることもできる。本開示の製造方法により得られる低分子量PTFEは、炭素数4~14のパーフルオロカルボン酸及びその塩の総量が50質量ppb以下であってよく、25質量ppb未満であることが好ましく、20質量ppb以下であることがより好ましく、15質量ppb以下であることが更に好ましく、10質量ppb以下であることが更により好ましく、5質量ppb以下であることが特に好ましく、5質量ppb未満であることが最も好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
上記パーフルオロカルボン酸及びその塩の量は、液体クロマトグラフィーにより測定できる。
また、本開示の製造方法では、炭素数4~14のパーフルオロスルホン酸及びその塩を実質的に含まない低分子量PTFEを得ることもできる。本開示の製造方法により得られる低分子量PTFEは、炭素数4~14のパーフルオロスルホン酸及びその塩の量が25質量ppb未満であってよく、20質量ppb以下であることが好ましく、15質量ppb以下であることがより好ましく、10質量ppb以下であることが更に好ましく、5質量ppb以下であることが特に好ましく、5質量ppb未満であることが最も好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
上記パーフルオロスルホン酸及びその塩の量は、液体クロマトグラフィーにより測定できる。
上記低分子量PTFEは、分子鎖末端に主鎖炭素数10個あたり5個以下のカルボキシ基を有していることが好ましい。上記カルボキシ基は、主鎖炭素数10個あたり4個以下であることがより好ましく、3個以下であることが更に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。上記カルボキシ基は、例えば、上記高分子量PTFEに酸素存在下で上記放射線を照射することにより、上記低分子量PTFEの分子鎖末端に生じる。
上記カルボキシ基の数は、下記方法により測定した値である。この測定方法による検出限界は0.5個である。
(測定方法)
特開平4-20507号公報記載の末端基の分析方法に準拠し、以下の測定を行う。
低分子量PTFE粉末をハンドプレスにて予備成形し、およそ0.1mm厚みのフィルムを作製する。作製したフィルムについて赤外吸収スペクトル分析する。PTFEにフッ素ガスを接触させて作製した末端を完全フッ素化したPTFEの赤外吸収スペクトル分析も行い、両者の差スペクトルから次式により末端カルボキシ基の個数を算出する。
末端カルボキシ基の個数(炭素数10個あたり)=(l×K)/t
l:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚み(mm)
カルボキシ基の吸収周波数は3560cm-1、補正係数は440とする。
上記低分子量PTFEの分子鎖末端には、上記高分子量PTFEの重合反応において使用された重合開始剤又は連鎖移動剤の化学構造に由来する不安定末端基が生じていてもよい。上記不安定末端基としては特に限定されず、例えば、-CHOH、-COOH、-COOCH等が挙げられる。
上記低分子量PTFEは、不安定末端基の安定化を行ったものであってもよい。上記不安定末端基の安定化の方法としては特に限定されず、例えば、フッ素含有ガスに曝露することにより末端をトリフルオロメチル基〔-CF〕に変化させる方法等が挙げられる。
上記低分子量PTFEはまた、末端アミド化を行ったものであってもよい。上記末端アミド化の方法としては特に限定されず、例えば、特開平4-20507号公報に開示されているように、フッ素含有ガスに曝露する等して得られたフルオロカルボニル基〔-COF〕をアンモニアガスと接触させる方法等が挙げられる。
上記低分子量PTFEが上述の不安定末端基の安定化又は末端アミド化を行ったものであると、塗料、グリース、化粧品、メッキ液、トナー、プラスチックス等の相手材への添加剤として用いる場合に、相手材となじみやすく、分散性を向上させることができる。
上記PTFEは、テトラフルオロエチレン(TFE)単位のみからなるホモPTFEであってもよいし、TFE単位及びTFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含む変性PTFEであってもよい。本開示の製造方法において、ポリマーの組成は変化しないので、上記低分子量PTFEは、上記高分子量PTFEが有する組成をそのまま有する。
上記変性PTFEにおいて、上記変性モノマー単位の含有量は、全単量体単位の0.001~1質量%であることが好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、また、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。本明細書において、上記変性モノマー単位とは、変性PTFEの分子構造の一部分であって変性モノマーに由来する部分を意味し、全単量体単位とは、変性PTFEの分子構造における全ての単量体に由来する部分を意味する。上記変性モノマー単位の含有量は、フーリエ変換型赤外分光法(FT-IR)等の公知の方法により求めることができる。
上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等のクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕等の水素含有フルオロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;パーフルオロアルキルエチレン;エチレン等が挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、下記一般式(1)
CF=CF-ORf (1)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(1)において、Rfが炭素数1~10のパーフルオロアルキル基を表すものであるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
上記PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられるが、パーフルオロアルキル基がパーフルオロプロピル基であるパープルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕が好ましい。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、上記一般式(1)において、Rfが炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rfが下記式:
Figure 0007261422000001
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rfが下記式:
Figure 0007261422000002
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
パーフルオロアルキルエチレンとしては特に限定されず、例えば、(パーフルオロブチル)エチレン(PFBE)、(パーフルオロヘキシル)エチレン、(パーフルオロオクチル)エチレン等が挙げられる。
上記変性PTFEにおける変性モノマーとしては、HFP、CTFE、VDF、PPVE、PFBE及びエチレンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種である。
本開示は、低分子量PTFEを含む粉末であって、パーフルオロオクタン酸及びその塩のいずれをも実質的に含まず、上記低分子量PTFEは、1×10~7×10Pa・sの380℃における溶融粘度を有し、電子スピン共鳴法で測定して得られる一次微分型スペクトルにおいて、g値が2.014~2.016の範囲における負の信号の最大強度P1と、g値が2.006~2.008の範囲における負の信号の最大強度P2との比(P1/P2)が3.30以下であり、かつ、P2と、正の信号の最大強度P0との比(P2/P0)が0.260~0.450である粉末にも関する。
本開示の粉末における低分子量PTFEは、電子スピン共鳴法(ESR)で測定して得られる一次微分型スペクトル(以下、ESRスペクトルともいう)において、上記の特定の信号を示すものである。理由は明確ではないが、本開示の粉末によれば、加熱後の粉末の着色が抑制される。特に、本開示の粉末は、加熱を経ても、白色度が高く、黄色味が少ない。本開示の粉末をマトリクス材料に添加する場合、当該粉末の予備乾燥(加熱)が必要となる場合がある。また、加工の際に高温での加熱が必要になる場合もある。本開示の粉末は、このような加熱による黄ばみ等の着色を抑制することができるので、マトリクス材料を汚染しにくい。
また、本開示の粉末は、マトリクス材料(特に、ポリカーボネート等の樹脂)に添加した場合に、引張強度に優れた製品を与えることができる。
上述したハロゲン化ポリマー、アルコール等の化合物の存在下に高分子量PTFEに放射線を照射して得られる低分子量PTFEや、酸素の存在下に高分子量PTFEに放射線を照射して得られる低分子量PTFEは、上記の特定の信号を示さない。これらの製法で得られる低分子量PTFE中に含まれるラジカルの構造や割合は、本開示の粉末における低分子量PTFEとは相違すると推定される。
まず、上記ESRの測定条件、及び、関連する用語の定義を説明する。
測定条件は、以下のとおりである。
装置:日本電子株式会社(JEOL)製、JES-FR30EX
測定温度:23±3℃
マイクロ波周波数:9.42GHz
マイクロ波出力:0.4mW
中心磁場:347.548mT
掃引幅:±25mT
掃引時間:60s
時定数:0.03s
磁場変調幅:0.32mT
スキャン回数:1回
変調周波数:100kHz
マーカー:Mn2+
上記ESRスペクトルは、縦軸を補正信号強度、横軸をg値とする。
上記補正信号強度は、下記式:
補正信号強度(mg-1)=Int.[PTFE]/Int.[Mn2+]/サンプル質量(mg)
(式中、Int.[PTFE]はサンプルの補正前の信号強度、Int.[Mn2+]はマーカーの信号強度)で定義される。
本明細書では、特に断りのない限り、PTFEのESRスペクトルの信号について単に強度というときは、上記補正信号強度を指すものとする。
ESR信号のg値は、下記式:
g=hν/βH
(式中、hはプランク定数、νは測定電磁波の周波数、βはボーア磁子、Hは信号が得られる磁場強度)で定義される。
上記g値としては、マーカーとして用いたMn2+の6本のピークのうち、低磁場側から3本目及び4本目のピークに対応する既知のg値2.034及び1.981を基準として補正した値を用いる。
上記ESRスペクトルのベースラインがずれる場合は、g値が2.05及び1.98付近の信号強度がおよそ0となるようにベースライン補正を行う。
上記ESRスペクトルにおいて、正の信号とは、上記スペクトルの正の領域(ベースラインの上側)に現れる信号を意味し、負の信号とは、上記スペクトルの負の領域(ベースラインの下側)に現れる信号を意味する。
本開示の粉末における低分子量PTFEは、上記ESRスペクトルにおいて、g値が2.014~2.016の範囲(以下、範囲1ともいう)における負の信号の最大強度(P1)と、g値が2.006~2.008の範囲(以下、範囲2ともいう)における負の信号の最大強度(P2)との比(P1/P2)が3.30以下である。
ここで、上記最大強度とは、上記範囲における負の信号の強度の絶対値の最大値を意味する。P1及びP2を有する信号は、それぞれ、範囲1及び範囲2における極小点に対応する信号であってよい。
範囲1における負の信号(ピーク)は、
下記式:
Figure 0007261422000003
(式中の波線はPTFEのポリマー鎖を示す。以下同様)で示されるラジカル1に基づく信号であり、範囲2における負の信号(ピーク)は、下記式:
Figure 0007261422000004
で示されるラジカル2に基づく信号であると考えられる。
実質的に酸素不存在下で照射を行うと、下記式:
Figure 0007261422000005
で示されるラジカル3、及び、下記式:
Figure 0007261422000006
で示されるラジカル4が生成し、これらが空気に触れることで、ラジカル1及びラジカル2が生成すると考えられる。
他方、酸素存在下の照射では、ラジカル1及びラジカル2が生成するが、ラジカル2の一部は照射によって分解されてラジカル1に変化するため、ラジカル1の割合が比較的多くなる傾向にある。
上記比P1/P2が3.30以下であることは、低分子量PTFE中のラジカル1とラジカル2の存在比が特定範囲内にあること、特に、ラジカル1の割合があまり多くないことを意味する。
上記比P1/P2は、3.25以下であることが好ましく、また、0.80以上であることが好ましく、1.00以上であることがより好ましく、1.10以上であることが更に好ましい。
実質的に酸素の不存在下で高分子量PTFEに放射線を照射することにより、上記比P1/P2を3.30以下にすることができる。
本開示の粉末における低分子量PTFEは、上記ESRスペクトルにおいて、上述した範囲2における負の信号の最大強度P2と、正の信号の最大強度P0との比(P2/P0)が0.260~0.450である。
ここで、上記P0は、正の信号の強度の絶対値の最大値を意味する。上記P0を有する信号は、上記ESRスペクトルの正の領域における極大点に対応する信号であってよい。
上記比P2/P0が0.260以上であることは、低分子量PTFE全体に対し、ラジカル2が特定の水準以上の量存在することを意味する。
上記比P2/P0は、0.265以上であることが好ましい。
実質的に酸素の不存在下で高分子量PTFEに放射線を照射することにより、上記比P2/P0を0.260以上にすることができる。
上記比P2/P0が0.450以下であることは、低分子量PTFE全体に対し、ラジカル2が特定の水準以下の量存在することを意味する。
上記比P2/P0は、0.400以下であることが好ましい。
実質的にハロゲン化ポリマー、アルコール等の化合物の不存在下であっても、高分子量PTFEに放射線を照射することにより、上記比P2/P0を0.450以下にすることができる。
本開示の粉末における低分子量PTFEは、上記ESRスペクトルにおいて、上述した範囲1における負の信号の最大強度P1と、正の信号の最大強度P0との比(P1/P0)が、0.900以下であることが好ましく、0.865以下であることがより好ましい。また、0.200以上であることが好ましく、0.300以上であることがより好ましく、0.400以上であることが更に好ましい。
上記比P1/P0が上記範囲内であることは、低分子量PTFE全体に対し、ラジカル1が特定の水準の量存在することを意味する。
実質的に酸素の不存在下で高分子量PTFEに放射線を照射したり、実質的にハロゲン化ポリマー、アルコール等の化合物の不存在下で高分子量PTFEに放射線を照射したりすることにより、上記比P1/P0を上記範囲内にすることができる。
上記P0を有する正の信号は、g値が2.018以上であってよく、2.019以上であってもよく、2.020以上であってもよい。また、2.030以下であってよく、2.025以下であってもよく、2.024以下であってもよい。
上記P0を有する正の信号に対応するこれらのg値は、PTFEに特有の値である。
図1に、ESRスペクトルにおけるP0、P1及びP2の一例を示す。
本開示の粉末における低分子量PTFEは、1×10~7×10Pa・sの380℃における溶融粘度を有する。上記溶融粘度は、1.5×10Pa・s以上であることが好ましく、また、3.0×10Pa・s以下であることが好ましく、1.0×10Pa・s以下であることがより好ましく、9.0×10Pa・s以下であることが更に好ましい。
本開示の粉末における低分子量PTFEの組成、融点、及び、分子鎖末端(カルボキシ基数、不安定末端基及びその安定化又はアミド化)については、本開示の製造方法により得られる低分子量PTFEについて述べたのと同様のものが採用できる。
本開示の粉末は、実質的に上記低分子量PTFEのみからなるものであってよい。上記粉末に対する上記低分子量PTFEの量は、95.0質量%以上であってよく、99.0質量%以上であることが好ましく、99.5質量%以上であることがより好ましい。
本開示の粉末は、パーフルオロオクタン酸及びその塩を実質的に含まない。上記粉末に対するパーフルオロオクタン酸及びその塩の量は、25質量ppb未満であってよく、20質量ppb以下であることが好ましく、15質量ppb以下であることがより好ましく、10質量ppb以下であることが更に好ましく、5質量ppb以下であることが特に好ましく、5質量ppb未満であることが最も好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
本開示の粉末は、炭素数が4~14のパーフルオロカルボン酸及びその塩のいずれをも実質的に含まないことが好ましい。上記粉末に対する上記パーフルオロカルボン酸及びその塩の総量は、50質量ppb以下であってよく、25質量ppb未満であることが好ましく、20質量ppb以下であることがより好ましく、15質量ppb以下であることが更に好ましく、10質量ppb以下であることが更により好ましく、5質量ppb以下であることが特に好ましく、5質量ppb未満であることが最も好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。

本開示の粉末は、炭素数4~14のパーフルオロスルホン酸及びその塩を実質的に含まないことも好ましい。上記粉末に対する上記パーフルオロスルホン酸及びその塩の量は、25質量ppb未満であってよく、20質量ppb以下であることが好ましく、15質量ppb以下であることがより好ましく、10質量ppb以下であることが更に好ましく、5質量ppb以下であることが特に好ましく、5質量ppb未満であることが最も好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
本開示の粉末は、比表面積が0.5~20m/gであることが好ましい。
本開示の粉末は、平均粒子径が0.5~200μmであることが好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましく、25μm以下が更により好ましく、10μm以下が特に好ましい。このように、平均粒子径が比較的小さい粉末であることで、例えば、塗料の添加剤として用いた場合等に、より優れた表面平滑性を有する塗膜を形成することができる。
本開示の粉末は、例えば、上述した本開示の製造方法により、粉末形状の低分子量PTFEを製造することによって得ることができる。
本開示の製造方法により得られる低分子量PTFE及び本開示の粉末は、成形材料、インク、化粧品、塗料、グリース、オフィスオートメーション機器用部材、トナーを改質する添加剤、複写機の有機感光体材料、めっき液への添加剤等として好適に使用することができる。上記成形材料としては、例えば、ポリオキシベンゾイルポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド等のエンジニアリングプラスチックが挙げられる。上記低分子量PTFEは、特に、グリース用粘稠剤として好適である。
上記低分子量PTFE及び上記粉末は、成形材料の添加剤として、例えば、コピーロールの非粘着性・摺動特性の向上、家具の表層シート、自動車のダッシュボード、家電製品のカバー等のエンジニアリングプラスチック成形品の質感を向上させる用途、軽荷重軸受、歯車、カム、プッシュホンのボタン、映写機、カメラ部品、摺動材等の機械的摩擦を生じる機械部品の滑り性や耐摩耗性を向上させる用途、エンジニアリングプラスチックの加工助剤等として好適に用いることができる。
上記低分子量PTFE及び上記粉末は、塗料の添加剤として、ニスやペンキの滑り性向上の目的に用いることができる。上記低分子量PTFEは、化粧品の添加剤として、ファンデーション等の化粧品の滑り性向上等の目的に用いることができる。
上記低分子量PTFE及び上記粉末は、更に、ワックス等の撥油性又は撥水性を向上させる用途や、グリースやトナーの滑り性を向上させる用途にも好適である。
上記低分子量PTFE及び上記粉末は、二次電池や燃料電池の電極バインダー、電極バインダーの硬度調整剤、電極表面の撥水処理剤等としても使用できる。
上記低分子量PTFE又は上記粉末と潤滑油とを使用してグリースを調製することもできる。上記グリースは、上記低分子量PTFE又は上記粉末と潤滑油とを含有することから、潤滑油中に上記低分子量PTFE又は上記粉末が均一かつ安定に分散しており、耐荷重性、電気絶縁性、低吸湿性等の特性に優れている。
上記潤滑油(基油)は、鉱物油であっても、合成油であってもよい。上記潤滑油(基油)としては、例えば、パラフィン系やナフテン系の鉱物油、合成炭化水素油、エステル油、フッ素オイル、シリコーンオイルのような合成油等が挙げられる。耐熱性の観点からはフッ素オイルが好ましく、上記フッ素オイルとしては、パーフルオロポリエーテルオイル、三フッ化塩化エチレンの低重合物等が挙げられる。三フッ化塩化エチレンの低重合物は、重量平均分子量が500~1200であってよい。
上記グリースは、更に、増稠剤を含むものであってもよい。上記増稠剤としては、金属石けん、複合金属石けん、ベントナイト、フタロシアニン、シリカゲル、ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ウレタン化合物、イミド化合物等が挙げられる。上記金属石けんとしては、例えばナトリウム石けん、カルシウム石けん、アルミニウム石けん、リチウム石けん等が挙げられる。また上記ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物及びウレタン化合物としては、例えばジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、その他のポリウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン化合物又はこれらの混合物等が挙げられる。
上記グリースは、上記低分子量PTFE又は上記粉末を0.1~60質量%含むことが好ましく、0.5質量%以上含むことがより好ましく、5質量%以上含むことが更に好ましく、50質量%以下含むことがより好ましい。上記低分子量PTFE又は上記粉末の量が多すぎると、グリースが硬くなりすぎて、充分な潤滑性を発揮できないおそれがあり、上記低分子量PTFE又は上記粉末の量が少なすぎると、シール性が発揮できないおそれがある。
上記グリースは、固体潤滑剤、極圧剤、酸化防止剤、油性剤、さび止め剤、粘度指数向上剤、清浄分散剤等を含むこともできる。
次に実施例を挙げて本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
溶融粘度
ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所社製)及び2φ-8Lのダイを用い、予め380℃で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定を行った。
電子スピン共鳴法(ESR)による測定
装置:日本電子株式会社(JEOL)製、JES-FR30EX
測定温度:23±3℃
マイクロ波周波数:9.42GHz
マイクロ波出力:0.4mW
中心磁場:347.548mT
掃引幅:±25mT
掃引時間:60s
時定数:0.03s
磁場変調幅:0.32mT
スキャン回数:1回
変調周波数:100kHz
マーカー:Mn2+
パーフルオロオクタン酸及びその塩(PFOA)の含有量
液体クロマトグラフ質量分析計(Waters, LC-MS ACQUITY UPLC/TQD)を用い、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量の測定を行った。測定粉末1gにアセトニトリル5mlを加え、60分間の超音波処理を行い、パーフルオロオクタン酸を抽出した。得られた液相について、MRM(Multiple Reaction Monitoring)法を用いて測定した。移動相としてアセトニトリル(A)と酢酸アンモニウム水溶液(20mmol/L)(B)を、濃度勾配(A/B=40/60-2min-80/20-1min)で送液した。分離カラム(ACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm)を使用し、カラム温度は40℃、注入量は5μLとした。イオン化法はESI(Electrospray ionization) Negativeを使用し、コーン電圧は25Vに設定し、プリカーサーイオン分子量/プロダクトイオン分子量は413/369を測定した。パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量は外部標準法を用い、算出した。この測定における検出限界は5ppbである。
密閉容器内の酸素濃度
密閉容器内の気層部分をガスクロマトグラフィーにて分析することにより測定した。更に、密閉容器内に同封した酸素検知紙の色調が青色から桃色に変化することで、酸素濃度が0.1体積%以下(酸素不在)であることを確認した。
実施例1
バリアナイロン製の袋にPTFEファインパウダー(ASTM D 4895に準拠し、測定した標準比重:2.175、PFOAの濃度は検出限界未満である)を50g計量した。
更に、酸素吸着剤として鉄系自力反応型酸素吸着剤(三菱ガス化学社製エージレスZP-100)を同封し、バリアナイロン製の袋をヒートシールにて、密封した。袋内に予め設置しておいた酸素検知紙により酸素不在であることを確認した後に、袋内のPTFEファインパウダーに20~45℃の雰囲気温度にてコバルト-60γ線を300kGy照射し、低分子量PTFE粉末を得た。なお、照射時の雰囲気温度は、照射発熱も含めた温度である(以下の実施例及び比較例も同様)。
得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を測定した。上記各種物性の測定は、照射終了後、袋を開封し、粉末を空気中に30分程度保持してから実施した。結果を表1に示す。
また、ESR測定により得られた一次微分型スペクトルを図2に示す。
実施例2
コバルト-60γ線を400kGy照射したこと以外は実施例1と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
また、ESR測定により得られた一次微分型スペクトルを図3に示す。
実施例3
コバルト-60γ線を500kGy照射したこと以外は実施例1と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
また、ESR測定により得られた一次微分型スペクトルを図4に示す。
実施例4
コバルト-60γ線を300kGy照射する際の袋内の酸素濃度を0.2体積%としたこと以外は実施例1と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
実施例5
コバルト-60γ線を400kGy照射したこと以外は実施例4と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
なお、実施例4及び5における酸素濃度の測定は、東レエンジニアリング社製ジルコニア式酸素濃度計LC-860を用いて実施した。
比較例1
コバルト-60γ線を200kGy照射したこと以外は実施例1と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
また、ESR測定により得られた一次微分型スペクトルを図5に示す。
比較例2
バリアナイロン製の袋にPTFEファインパウダー(ASTM D 4895に準拠し、測定した標準比重:2.175、PFOAの濃度は検出限界未満である)を50g計量した。次いで、袋内を窒素ガスで10回置換した後、空気(酸素:窒素=21:79(体積%))で5回置換し、袋内を空気雰囲気にした後、ヒートシールを用いて、密封した。袋内のPTFEファインパウダーに20~45℃の雰囲気温度にてコバルト-60γ線を300kGy照射し、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
また、ESR測定により得られた一次微分型スペクトルを図6に示す。
比較例3
コバルト-60γ線を400kGy照射したこと以外は比較例2と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
また、ESR測定により得られた一次微分型スペクトルを図7に示す。
比較例4
コバルト-60γ線を500kGy照射したこと以外は比較例2と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
また、ESR測定により得られた一次微分型スペクトルを図8に示す。
比較例5
バリアナイロン製の袋にPTFEファインパウダー(ASTM D 4895に準拠し、測定した標準比重:2.175、PFOAの濃度は検出限界未満である)を45g計量し、ハロゲン化ポリマーとしてPCTFE(ダイキン工業社製PCTFE M-400H)5gを添加した。次いで、袋内を窒素ガスで10回置換し、袋内を窒素雰囲気にした後、ヒートシールを用いて、密封した。置換後の密閉袋内の酸素濃度は50ppmであった。
更に、袋内に予め設置しておいた酸素検知紙により、袋内が酸素不在であることを確認した後に、袋内のPTFEファインパウダーに20~45℃の雰囲気温度にてコバルト-60γ線を200kGy照射し、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
また、ESR測定により得られた一次微分型スペクトルを図9に示す。
Figure 0007261422000007
溶融粘度における「不溶」は、溶融粘度で表すことができない程度に分子量が大きいことを意味する。
実施例6、7及び比較例6
実施例1、3及び比較例5で得られた低分子量PTFE粉末について、色差計(日本電色工業社製、ZE 6000、光源:C光源)を用いてb値及びZ値を測定した。
また、実施例1、3及び比較例5で得られた低分子量PTFE粉末をアルミカップに1g入れ、150℃で15時間加熱した。その後冷却して1日放置した粉末について、上記と同様にb値及びZ値を測定した。
結果を表2に示す。
b値が大きいほど黄色味が強いことを示し、Z値が大きいほど白色度が高いことを示す。
Figure 0007261422000008
実施例6、7及び比較例6の結果より、実施例1及び3の粉末は、加熱による黄色味及び白色度の変化が見られないのに対し、比較例5の粉末は、加熱により黄色味が強くなり、また、白色度が低くなっていることがわかる。
実施例8、9及び比較例7
実施例1、3及び比較例5で得られた低分子量PTFE粉末300gとポリカーボネート(PC)2700gとを混合し、260℃で二軸押出機にて混練し、低分子量PTFEを10質量%含有するPCペレットを得た。上記PCペレットを120℃で15時間加熱して乾燥後、280℃で射出成型機にてプレートを作製した。
上記プレートについて、実施例4と同様に色差計を用いてb値及びZ値を測定した。
また、上記プレートについて、オートグラフ(島津製作所製)により引張強度を測定した。
結果を表3に示す。
表中、b値は加熱前の低分子量PTFE粉末のb値(実施例6、7及び比較例6で測定した値)との差を示している。
Figure 0007261422000009
実施例8、9及び比較例7より、実施例1及び3の粉末は、比較例5の粉末と比較して、加熱を伴う加工によっても黄色味が増加しにくく、また、白色度の低下が抑制されていることがわかる。また、実施例1及び3の粉末を含むPCプレートは、比較例5の粉末を含むPCプレートと比較して、引張強度に優れることもわかる。
PC製品において、黄色味や白色度の変化は意匠性の観点から好ましくなく、強度低下は耐久性の観点から好ましくない。

Claims (8)

  1. 実質的に酸素の不存在下で、高分子量ポリテトラフルオロエチレンに320℃以下の温度で250kGy以上の放射線を照射して、380℃における溶融粘度が1.0×10~7.0×10Pa・sである低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得る工程(1)を含む低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法。
  2. 前記高分子量ポリテトラフルオロエチレンは、標準比重が2.130~2.230である請求項1記載の製造方法。
  3. 前記高分子量ポリテトラフルオロエチレン及び前記低分子量ポリテトラフルオロエチレンがいずれも粉末である請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 工程(1)の前に、更に、前記高分子量ポリテトラフルオロエチレンを、その一次融点以上に加熱することにより成形品を得る工程(3)を含み、前記成形品は、比重が1.0g/cm以上である請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 請求項1~4のいずれかに記載の製造方法により得られる低分子量ポリテトラフルオロエチレン。
  6. 低分子量ポリテトラフルオロエチレンを含む粉末であって、
    パーフルオロオクタン酸及びその塩のいずれをも実質的に含まず、
    前記低分子量ポリテトラフルオロエチレンは、1×10~7×10Pa・sの380℃における溶融粘度を有し、電子スピン共鳴法で測定して得られる一次微分型スペクトルにおいて、g値が2.014~2.016の範囲における負の信号の最大強度P1と、g値が2.006~2.008の範囲における負の信号の最大強度P2との比(P1/P2)が3.30以下であり、かつ、P2と、正の信号の最大強度P0との比(P2/P0)が0.260~0.450である粉末。
  7. パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が25質量ppb未満である請求項6記載の粉末。
  8. 比表面積が0.5~20m/gである請求項6又は7記載の粉末。
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