JP6927445B1 - 低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法及び粉末 - Google Patents

低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法及び粉末 Download PDF

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Abstract

【課題】炭素数4〜16のパーフルオロカルボン酸及びその塩の含有量が削減された低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法等を提供する。【解決手段】炭素数4〜16のパーフルオロカルボン酸又はその塩を含み、示差走査熱量測定における一回目昇温から二回目昇温の融解熱の減少率が40%以下であるポリテトラフルオロエチレンに、実質的に酸素の不存在下、100℃未満の温度で5〜1000kGyの放射線を照射することにより、前記パーフルオロカルボン酸及びその塩の含有量が削減された、380℃における溶融粘度が1.0×102〜7.0×105Pa・sである低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得る工程(1)を含む、低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法。【選択図】図1

Description

本開示は、低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法及び粉末に関する。
分子量数千から数十万の低分子量ポリテトラフルオロエチレン(「ポリテトラフルオロエチレンワックス」や「ポリテトラフルオロエチレンマイクロパウダー」とも呼ばれる)は、化学的安定性に優れ、表面エネルギーが極めて低いことに加え、フィブリル化が生じにくいので、滑り性や塗膜表面の質感を向上させる添加剤として、プラスチックス、インク、化粧品、塗料、グリース等の製造に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法としては、重合法、放射線分解法、熱分解法等が知られている。放射線分解法では、従来、空気雰囲気下で高分子量ポリテトラフルオロエチレンに放射線を照射して低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得るのが一般的である。
また、放射線分解法によって副生し得るパーフルオロカルボン酸及びその塩を低減する方法の検討も行われている(例えば、特許文献2参照)。
特開平10−147617号公報 特開2018−24868号公報
本開示は、炭素数4〜16のパーフルオロカルボン酸及びその塩の含有量が削減された低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法を提供することを目的とする。
また、本開示は、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が少ない新規な低分子量ポリテトラフルオロエチレンの粉末を提供することも目的とする。
本開示は、炭素数4〜16のパーフルオロカルボン酸又はその塩を含み、示差走査熱量測定における一回目昇温から二回目昇温の融解熱の減少率が40%以下であるポリテトラフルオロエチレンに、実質的に酸素の不存在下、100℃未満の温度で5〜1000kGyの放射線を照射することにより、上記パーフルオロカルボン酸及びその塩の含有量が削減された、380℃における溶融粘度が1.0×10〜7.0×10Pa・sである低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得る工程(1)を含む、低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法に関する。
上記ポリテトラフルオロエチレン及び上記低分子量ポリテトラフルオロエチレンがいずれも粉末であることが好ましい。
本開示は、低分子量ポリテトラフルオロエチレンを含む粉末であって、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が1500質量ppb以下であり、上記低分子量ポリテトラフルオロエチレンは、1.0×10〜7.0×10Pa・sの380℃における溶融粘度を有し、電子スピン共鳴法で測定して得られる一次微分型スペクトルにおいて、g値が2.020の信号の強度P1と、g値が2.023の信号の強度P2との差(P1−P2)が−0.07以上である粉末にも関する。
上記粉末は、比表面積が0.5〜20m/gであることが好ましい。
本開示によれば、炭素数4〜16のパーフルオロカルボン酸及びその塩の含有量が削減された低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法を提供することができる。
また、本開示によれば、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が少ない新規な低分子量ポリテトラフルオロエチレンの粉末を提供することもできる。
電子スピン共鳴(ESR)スペクトルにおけるP1及びP2の一例を示す図である。
以下、本開示を具体的に説明する。
本開示は、炭素数4〜16のパーフルオロカルボン酸又はその塩を含み、示差走査熱量測定における一回目昇温から二回目昇温の融解熱の減少率が40%以下であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に、実質的に酸素の不存在下、100℃未満の温度で5〜1000kGyの放射線を照射することにより、上記パーフルオロカルボン酸及びその塩の含有量が削減された、380℃における溶融粘度が1.0×10〜7.0×10Pa・sである低分子量ポリテトラフルオロエチレン(低分子量PTFE)を得る工程(1)を含む、低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法に関する。
本開示の製造方法によれば、炭素数4〜16のパーフルオロカルボン酸又はその塩を含むPTFEから、上記パーフルオロカルボン酸及びその塩の含有量が削減された低分子量PTFEを得ることができる。
上記特定の線量の放射線を照射することで、照射対象の上記PTFEに含まれる上記パーフルオロカルボン酸及びその塩が分解されると考えられる。また、実質的に酸素の不存在下で照射を行うので、照射により上記PTFEの一部が分解された場合に、上記パーフルオロカルボン酸又はその塩が新たに生成しにくいと考えられる。その結果、上記パーフルオロカルボン酸及びその塩の含有量が削減された低分子量PTFEが得られると考えられる。
また、本開示の製造方法では、高温での加熱が不要であるので、加熱設備を導入する必要がない。また、得られた低分子量PTFEを照射設備から加熱設備に移動させる等の工程も不要である。したがって、生産性を向上させることができ、製造コストを抑制することができる。
工程(1)で放射線を照射する上記PTFEは、示差走査熱量測定における一回目昇温から二回目昇温の融解熱の減少率が40%以下である。上記融解熱の減少率は、PTFEの分子量の指標となるものであり、上記融解熱の減少率が大きいほど、分子量が高い傾向にある。
上記融解熱の減少率は、35%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、27%以下であることが更に好ましく、また、−30%以上であってよく、−20%以上であってもよい。
上記融解熱の減少率は、示差走査熱量計(DSC、商品名:DSC7020、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて測定することにより得られる値である。具体的には、PTFEを約10mg精秤し、専用のアルミパンに収納し、アルミパンを窒素雰囲気下200℃に昇温して5分保持し、更に10℃/分の速度で390℃に昇温(一回目昇温)して結晶を充分融解させ、融解熱を測定する。次いで390℃から10℃/分の速度で200℃に降温したのちに、10℃/分の速度で200℃から390℃に昇温(二回目昇温)して融解熱を測定する。一回目昇温時及び二回目昇温時の融解熱の測定値を用いて、下記式により融解熱の減少率を求める。
融解熱の減少率(%)=(一回目昇温時の融解熱−二回目昇温時の融解熱)/(一回目昇温時の融解熱)×100
上記融解熱の減少率を有するPTFEは、例えば、高分子量PTFEを放射線分解又は熱分解することにより、製造することができる。上記放射線分解又は熱分解は、いかなる雰囲気中で実施してもよく、例えば、空気中、不活性ガス中、真空中等で実施できる。低コストで実施できる観点からは、空気中での実施が好ましく、炭素数4〜16のパーフルオロカルボン酸及びその塩を生成させにくい観点からは、実質的に酸素不存在下での実施が好ましい。但し、本開示の製造方法は、上記工程(1)を含むので、上記放射線分解又は熱分解を実質的に酸素不存在下で実施することは必須でない。酸素の存在下(例えば空気中)で実施してもよい。
上記高分子量PTFEは、標準比重(SSG)が2.130〜2.230であることが好ましい。上記標準比重(SSG)はASTM D 4895に準拠し、測定した値である。
上記PTFEは、また、テトラフルオロエチレン(TFE)の重合により、直接製造することもできる。この場合は、開始剤の選択や、重合温度や重合時間の調整により、融解熱の減少率を上記範囲内とすることができる。
上記PTFEは、炭素数4〜16のパーフルオロカルボン酸又はその塩を含む。
PTFEの重合に上記パーフルオロカルボン酸又はその塩が使用されることがある。また、上述した高分子量PTFEの放射線分解を空気雰囲気下で行うと、通常、上記パーフルオロカルボン酸又はその塩が生成する。本開示の製造方法によれば、このような、何らかの理由で上記パーフルオロカルボン酸又はその塩を含んでいるPTFEを原料に用いる場合であっても、上記パーフルオロカルボン酸及びその塩の含有量が削減された低分子量PTFEを得ることができる。
上記PTFEにおいて、上記パーフルオロカルボン酸及びその塩の含有量(合計量)は、5質量ppb以上であってよく、10質量ppb超であってもよく、15質量ppb超であってもよく、20質量ppb超であってもよく、25質量ppb以上であってもよく、50質量ppb超であってもよく、100質量ppb超であってもよく、500質量ppb超であってもよく、1000質量ppb超であってもよく、2000質量ppb超であってもよく、3000質量ppb超であってもよく、10000質量ppb超であってもよい。
上記パーフルオロカルボン酸及びその塩の量は、液体クロマトグラフィーにより測定できる。
上記PTFEは、パーフルオロオクタン酸又はその塩を含んでいてもよい。上記PTFEにおけるパーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量は、例えば、5質量ppb以上であってよく、10質量ppb超であってもよく、15質量ppb超であってもよく、20質量ppb超であってもよく、25質量ppb以上であってもよく、50質量ppb超であってもよく、100質量ppb超であってもよく、300質量ppb超であってもよく、500質量ppb超であってもよく、1500質量ppb超であってもよい。
上記パーフルオロオクタン酸及びその塩の量は、液体クロマトグラフィーにより測定できる。
上記PTFEは、炭素数4〜16のパーフルオロスルホン酸又はその塩を含んでいてもよい。上記PTFEは、上記パーフルオロスルホン酸及びその塩の総量が5質量ppb以上であってよく、10質量ppb超であってもよく、15質量ppb超であってもよく、20質量ppb超であってもよく、25質量ppb以上であってもよい。
上記パーフルオロスルホン酸及びその塩の量は、液体クロマトグラフィーにより測定できる。
上記PTFEの形状は、特に限定されないが、粉末であることが好ましい。
工程(1)における放射線の線量は、5〜1000kGyである。上記パーフルオロカルボン酸及びその塩の量が一層少ない低分子量PTFEが得られる点で、上記線量は、10kGy以上が好ましく、20kGy以上がより好ましく、30kGy以上が更に好ましく、50kGy以上が特に好ましい。また、分子量が適度に高い低分子量PTFEが得られる点で、上記線量は、500kGy以下が好ましく、300kGy以下がより好ましく、250kGy未満が更に好ましく、200kGy以下が特に好ましい。
上記線量は、吸収線量を意味する。
上記放射線としては、電離性放射線であれば特に限定されず、電子線、ガンマ線、X線、中性子線、高エネルギーイオン等が挙げられるが、電子線又はガンマ線が好ましい。
上記放射線の照射温度は、100℃未満である。上記照射温度は、70℃未満であることが好ましく、50℃未満であることがより好ましく、また、5℃以上であることが好ましい。
経済的には常温で照射することが好ましい。常温とは、照射発熱も含め、5〜60℃の温度範囲であってよく、10〜50℃であることが好ましく、10〜50℃未満であることがより好ましく、15〜45℃であることが更に好ましい。
本開示の製造方法によれば、このような比較的低い温度での処理で、上記パーフルオロカルボン酸及びその塩を充分に低減することができる。
工程(1)における照射は、実質的に酸素の不存在下で実施する。ここで、実質的に酸素の不存在下とは、工程を実施する雰囲気中の酸素濃度が0.5体積%以下であることを意味する。上記パーフルオロカルボン酸及びその塩の量が一層少ない低分子量PTFEが得られる点で、上記酸素濃度は、0.25体積%以下であることが好ましく、0.1体積%以下であることがより好ましく、0.01体積%以下であることが更に好ましく、0.001体積%以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の濃度であってよい。
上記酸素濃度は、工程を実施する空間内の気相部分をガスクロマトグラフィーにて分析する方法、酸素濃度計を用いる方法、又は、上記空間内に設置した酸素検知剤の色調を調べる方法により測定できる。
工程(1)における照射は、密閉容器内で実施することが好ましい。上記密閉容器とは、容器内の酸素濃度を調整できるように密閉が可能な容器をいう。従って、不活性ガスを吸排気したり、上記密閉容器内のガスを排気したりするための配管が接続されていてもよく、放射線照射時には開放しない配管、蓋、バルブ、フランジ等が接続されていてもよい。また、その形状は特に限定されず、円柱状、角柱状、球状等であってよく、内容積可変な袋であってもよい。また、その素材も特に限定されず、金属、ガラス、ポリマー等であってよい。上記密閉容器は、放射線を透過し、かつ放射線の照射によって劣化しない材質・構造のものである必要があるが、耐圧容器である必要はない。
本開示の製造方法は、工程(1)の前に、上記PTFEを、実質的に酸素の不存在下で密閉容器に投入する工程を含んでもよい。実質的に酸素の不存在下で密閉容器に投入するとは、投入後の密閉容器内の雰囲気中の酸素濃度が上述した範囲内であることを意味する。
上記PTFEを実質的に酸素の不存在下で密閉容器に投入する方法としては、例えば、上記PTFEと、不活性ガス及び酸素吸着剤からなる群より選択される少なくとも1種とを密閉容器に投入する方法が挙げられる。
上記密閉容器内に上記の各物質を投入する方法としては、例えば、上記密閉容器内に上記PTFEを設置した後、上記密閉容器内を上記不活性ガスで満たすか又は真空引きする方法が挙げられる。また、上記酸素吸着剤を使用する場合は、空気中で上記密閉容器内に上記PTFE及び上記酸素吸着剤を設置した後、上記密閉容器を密閉する方法や、上記密閉容器内に上記PTFE及び上記酸素吸着剤を設置した後、上記密閉容器内を上記不活性ガスで満たす方法、上記密閉容器内に上記PTFE及び上記酸素吸着剤を設置した後、上記密閉容器内を真空引きする方法等が挙げられる。
上記不活性ガスは、放射線照射による上記パーフルオロカルボン酸及びその塩(並びに上記PTFE)の分解反応に対して不活性なガスであることが必要である。上記不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等のガスが挙げられる。なかでも、窒素が好ましい。
上記不活性ガスは、酸素の含有量が0.5体積%以下であることが好ましく、0.25体積%以下であることがより好ましく、0.1体積%以下であることが更に好ましく、0.01体積%以下であることが更により好ましく、0.001体積%以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。上記不活性ガス中の酸素の含有量が上記範囲内にあると、上記パーフルオロカルボン酸及びその塩の量が一層少ない低分子量PTFEが得られる。
上記酸素の含有量は、ガスクロマトグラフィーでの分析の他、酸素濃度計や酸素検知紙により確認できる。
上記酸素吸着剤は、酸素を吸着する機能を有するものであれば特に限定されず、鉄系、亜鉛系、ハイドロサルファイト系等の無機系の酸素吸着剤、アスコルビン酸系、多価アルコール系、活性炭系等の有機系の酸素吸着剤等の、公知の酸素吸着剤を使用することができる。上記酸素吸着剤は、酸素との反応時に水分を必要とする水分依存型であっても、水分を必要としない自力反応型であってもよいが、自力反応型であることが好ましい。上記酸素吸着剤としては、鉄系の自力反応型酸素吸着剤、生石灰等が好ましく、なかでも、鉄系の自力反応型酸素吸着剤が好ましい。
上記酸素吸着剤の投入量は、上記密閉容器内の酸素濃度を上述の範囲内とすることができる量であることが好ましい。
工程(1)における照射は、実質的に、フッ素原子以外のハロゲン原子を有するハロゲン化ポリマーの不存在下で実施することが好ましい。
上記ハロゲン化ポリマーには、フッ素原子以外のハロゲン原子とともに、フッ素原子を有するポリマーも包含される。
上記ハロゲン化ポリマーとしては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等の、塩素原子を有するポリマーが挙げられる。
実質的に上記ハロゲン化ポリマーが不存在であるとは、上記ハロゲン化ポリマーの存在量が、上記PTFEに対し、0.001質量%未満であることを意味する。上記存在量は、0.0001質量%以下であることが好ましい。下限は特に限定されないが、検出限界未満の量であってよい。
工程(1)における照射は、実質的に、炭化水素、クロロ化炭化水素、アルコール及びカルボン酸の不存在下で実施することも好ましい。
上記炭化水素としては、例えば、炭素数が1〜20の飽和炭化水素が挙げられる。
上記クロロ化炭化水素としては、例えば、炭素数が1〜18の飽和炭化水素のクロロ化物が挙げられる。
上記アルコールとしては、例えば、炭素数が1〜12の一価の飽和アルコールが挙げられる。
上記カルボン酸としては、例えば、炭素数が1〜13の飽和モノカルボン酸が挙げられる。
実質的に上記化合物が不存在であるとは、上記化合物の存在量(合計量)が、上記PTFEに対し、0.001質量%未満であることを意味する。上記存在量は、0.0001質量%以下であることが好ましい。下限は特に限定されないが、検出限界未満の量であってよい。
工程(1)では、炭素数4〜16のパーフルオロカルボン酸及びその塩の含有量が削減された低分子量PTFEが得られる。言い換えると、上記低分子量PTFEにおける上記パーフルオロカルボン酸及びその塩の含有量が、工程(1)の放射線照射前の上記PTFEにおける含有量よりも少なくなる。
工程(1)では、炭素数4〜16のパーフルオロカルボン酸及びその塩(PFC)の削減率(PFC削減率)が10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、40質量%以上であることが更により好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。PFC削減率は高いほど好ましく、上限は特に限定されないが、100質量%であってよい。
PFC削減率は、工程(1)の放射線照射前のPTFE及び工程(1)で得られた低分子量PTFEにおけるPFCの含有量を液体クロマトグラフィーにより測定し、それらの測定値を用いて下記式により求める。
PFC削減率(質量%)=(照射前のPTFEにおけるPFCの含有量−得られた低分子量PTFEにおけるPFCの含有量)/(照射前のPTFEにおけるPFCの含有量)×100
工程(1)では、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が削減された低分子量PTFEを得ることもできる。言い換えると、上記低分子量PTFEにおけるパーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量を、工程(1)の放射線照射前の上記PTFEにおける含有量よりも少なくすることができる。
工程(1)では、パーフルオロオクタン酸及びその塩(PFOA)の削減率(PFOA削減率)が10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが更に好ましく、40質量%以上であることが更により好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。PFOA削減率は高いほど好ましく、上限は特に限定されないが、100質量%であってよい。
PFOA削減率は、工程(1)の放射線照射前のPTFE及び工程(1)で得られた低分子量PTFEにおけるPFOAの含有量を液体クロマトグラフィーにより測定し、それらの測定値を用いて下記式により求める。
PFOA削減率(質量%)=(照射前のPTFEにおけるPFOAの含有量−得られた低分子量PTFEにおけるPFOAの含有量)/(照射前のPTFEにおけるPFOAの含有量)×100
工程(1)において得られる上記低分子量PTFEは、炭素数4〜16のパーフルオロカルボン酸及びその塩の含有量(合計量)が10000質量ppb以下であってよく、3000質量ppb以下であってもよく、2000質量ppb以下であってもよく、1000質量ppb以下であってもよく、500質量ppb以下であってもよく、100質量ppb以下であってもよく、50質量ppb以下であってもよく、25質量ppb未満であってもよく、20質量ppb以下であってもよく、15質量ppb以下であってもよく、10質量ppb以下であってもよく、5質量ppb未満であってもよい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
上記パーフルオロカルボン酸及びその塩の量は、液体クロマトグラフィーにより測定できる。
上記低分子量PTFEは、また、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が1500質量ppb以下であってよく、500質量ppb以下であってもよく、300質量ppb以下であってもよく、100質量ppb以下であってもよく、50質量ppb以下であってもよく、25質量ppb未満であってもよく、20質量ppb以下であってもよく、15質量ppb以下であってもよく、10質量ppb以下であってもよく、5質量ppb未満であってもよい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
上記パーフルオロオクタン酸及びその塩の量は、液体クロマトグラフィーにより測定できる。
上記低分子量PTFEは、また、炭素数4〜16のパーフルオロスルホン酸及びその塩の量が25質量ppb未満であってよく、20質量ppb以下であってもよく、15質量ppb以下であってもよく、10質量ppb以下であってもよく、5質量ppb未満であってもよい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
上記パーフルオロスルホン酸及びその塩の量は、液体クロマトグラフィーにより測定できる。
上記低分子量PTFEは、上記パーフルオロスルホン酸及びその塩の含有量が、照射対象の上記PTFEよりも少ないものであってよい。
上記低分子量PTFEは、380℃における溶融粘度が1.0×10〜7.0×10Pa・sである。上記溶融粘度は、1.5×10Pa・s以上であることが好ましく、7.0×10Pa・s以上であることがより好ましく、また、3.0×10Pa・s以下であることが好ましく、1.0×10Pa・s以下であることがより好ましく、9.0×10Pa・s以下であることが更に好ましい。
上記溶融粘度は、ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所社製)及び2φ−8Lのダイを用い、予め380℃で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定した値である。
上記低分子量PTFEは、融点が320〜340℃であることが好ましく、324〜336℃であることがより好ましい。
上記融点は、示差走査熱量計(DSC)を用い、事前に標準サンプルとして、インジウム、鉛を用いて温度校正した上で、低分子量PTFE約3mgをアルミ製パン(クリンプ容器)に入れ、200ml/分のエアー気流下で、250〜380℃の温度領域を10℃/分で昇温させて行い、上記領域における融解熱量の極小点を融点とする。
上記低分子量PTFEは、テトラフルオロエチレン(TFE)単位のみからなるホモPTFEであってもよいし、TFE単位及びTFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含む変性PTFEであってもよい。本開示の製造方法において、ポリマーの組成は変化しないので、上記低分子量PTFEは、上記PTFEが有する組成をそのまま有する。
上記変性PTFEにおいて、上記変性モノマー単位の含有量は、全単量体単位の0.001〜1質量%であることが好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、また、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下が更に好ましい。本明細書において、上記変性モノマー単位とは、変性PTFEの分子構造の一部分であって変性モノマーに由来する部分を意味し、全単量体単位とは、変性PTFEの分子構造における全ての単量体に由来する部分を意味する。上記変性モノマー単位の含有量は、フーリエ変換型赤外分光法(FT−IR)等の公知の方法により求めることができる。
上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等のクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕等の水素含有フルオロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;パーフルオロアルキルエチレン;エチレン等が挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、下記一般式(1)
CF=CF−ORf (1)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(1)において、Rfが炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を表すものであるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜5である。
上記PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられるが、パーフルオロアルキル基がパーフルオロプロピル基であるパープルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕が好ましい。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、上記一般式(1)において、Rfが炭素数4〜9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rfが下記式:
Figure 0006927445
(式中、mは、0又は1〜4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rfが下記式:
Figure 0006927445
(式中、nは、1〜4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
パーフルオロアルキルエチレンとしては特に限定されず、例えば、(パーフルオロブチル)エチレン(PFBE)、(パーフルオロヘキシル)エチレン、(パーフルオロオクチル)エチレン等が挙げられる。
上記変性PTFEにおける変性モノマーとしては、HFP、CTFE、VDF、PPVE、PFBE及びエチレンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種である。
上記低分子量PTFEの形状は、特に限定されないが、粉末であることが好ましい。上記PTFE及び上記低分子量PTFEがいずれも粉末であることも好ましい。
本開示の製造方法は、更に、工程(1)で得られた低分子量PTFEを空気に曝露する工程を含んでもよい。
工程(1)における放射線の照射が終了してから、上記低分子量PTFEを空気に曝露するまでの時間は、例えば、1日未満であってよく、10時間未満であってもよく、1時間未満であってもよく、10分未満であってもよく、5分未満であってもよい。
本開示の製造方法においては、上記PTFE及び上記低分子量PTFEを100℃以上の温度下に置かないことが好ましく、70℃以上の温度下に置かないことも好ましく、50℃以上の温度下に置かないことも好ましい。
また、上記PTFE及び上記低分子量PTFEを上記温度下に、30分以上置かないことが好ましく、10分以上置かないことも好ましく、10秒以上置かないことも好ましい。
本開示の製造方法は、更に、工程(1)で得られた低分子量PTFEを粉砕する工程を含むこともできる。上記粉砕の方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。
以下に、本開示の製造方法によって得られる低分子量PTFEについて更に説明する。
上記低分子量PTFEが粉末である場合、平均粒子径が0.5〜200μmであることが好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましく、25μm以下が更により好ましく、10μm以下が特に好ましい。このように、平均粒子径が比較的小さい粉末であることで、例えば、塗料の添加剤として用いた場合等に、より優れた表面平滑性を有する塗膜を形成することができる。
上記平均粒子径は、日本電子株式会社製レーザー回折式粒度分布測定装置(HELOS&RODOS)を用いて、カスケードは使用せず、分散圧力3.0barで測定を行い、粒度分布積算の50%に対応する粒子径に等しいとする。
上記低分子量PTFEが粉末である場合、比表面積が0.5〜20m/gであることが好ましい。
低分子量PTFE粉末としては、比表面積が0.5m/g以上、7.0m/g未満の比表面積の低いタイプと、比表面積が7.0m/g以上、20m/g以下の比表面積の高いタイプがそれぞれ求められている。
比表面積の低いタイプの低分子量PTFE粉末は、例えば塗料等のマトリクス材料に容易に分散する利点がある一方、マトリクス材料への分散粒径が大きく、微分散に劣る。
比表面積の低いタイプの低分子量PTFE粉末の比表面積は、1.0m/g以上が好ましく、5.0m/g以下が好ましく、3.0m/g以下がより好ましい。マトリクス材料としては、プラスチック、インクの他、塗料等も好適に用いられる。
比表面積の高いタイプの低分子量PTFE粉末は、例えば塗料等のマトリクス材料に分散させた場合、マトリクス材料への分散粒径が小さく、塗膜表面の質感を向上させる等、表面を改質する効果が高く、吸油量も多くなるが、マトリクス材料への分散に必要な時間が長い等容易に分散しないおそれがあり、また、塗料等の粘度が上昇するおそれもある。
比表面積の高いタイプの低分子量PTFE粉末の比表面積は、8.0m/g以上が好ましく、25m/g以下が好ましく、20m/g以下がより好ましい。マトリクス材料としては、オイル、グリース、塗料の他、プラスチック等も好適に用いられる。
上記比表面積は、表面分析計(商品名:BELSORP−miniII、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用い、キャリアガスとして窒素30%、ヘリウム70%の混合ガスを用い、冷却に液体窒素を用いて、BET法により測定する。
上記低分子量PTFEは、分子鎖末端にカルボキシ基を有していてもよい。上記カルボキシル基の数は、特に限定されないが、例えば、主鎖炭素数10個あたり0〜500個であってよい。
上記カルボキシ基の数は、下記方法により測定することができる。この測定方法による検出限界は0.5個である。
(測定方法)
特開平4−20507号公報記載の末端基の分析方法に準拠し、以下の測定を行う。
低分子量PTFE粉末をハンドプレスにて予備成形し、およそ0.1mm厚みのフィルムを作製する。作製したフィルムについて赤外吸収スペクトル分析する。PTFEにフッ素ガスを接触させて作製した末端を完全フッ素化したPTFEの赤外吸収スペクトル分析も行い、両者の差スペクトルから次式により末端カルボキシ基の個数を算出する。
末端カルボキシ基の個数(炭素数10個あたり)=(l×K)/t
l:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚み(mm)
カルボキシ基の吸収周波数は3560cm−1、補正係数は440とする。
上記低分子量PTFEの分子鎖末端には、上記PTFE又は上記高分子量PTFEの重合反応において使用された重合開始剤又は連鎖移動剤の化学構造に由来する不安定末端基が生じていてもよい。上記不安定末端基としては特に限定されず、例えば、−CHOH、−COOH、−COOCH等が挙げられる。
上記低分子量PTFEは、不安定末端基の安定化を行ったものであってもよい。上記不安定末端基の安定化の方法としては特に限定されず、例えば、フッ素含有ガスに曝露することにより末端をトリフルオロメチル基〔−CF〕に変化させる方法等が挙げられる。
上記低分子量PTFEはまた、末端アミド化を行ったものであってもよい。上記末端アミド化の方法としては特に限定されず、例えば、特開平4−20507号公報に開示されているように、フッ素含有ガスに曝露する等して得られたフルオロカルボニル基〔−COF〕をアンモニアガスと接触させる方法等が挙げられる。
上記低分子量PTFEが上述の不安定末端基の安定化又は末端アミド化を行ったものであると、塗料、グリース、化粧品、メッキ液、トナー、プラスチックス等の相手材への添加剤として用いる場合に、相手材となじみやすく、分散性を向上させることができる。
本開示の製造方法は、更に、工程(1)の前に、更に、高分子量ポリテトラフルオロエチレンを、その一次融点以上に加熱することにより成形品を得る工程(M1)を含むこともできる。
上記一次融点としては、300℃以上が好ましく、310℃以上がより好ましく、320℃以上が更に好ましい。
上記一次融点は、未焼成の高分子量PTFEを示差走査熱量計で測定した場合に、結晶融解曲線上に現れる吸熱カーブの最大ピーク温度を意味する。上記吸熱カーブは、示差走査熱量計を用いて、昇温速度10℃/分の条件で昇温させて得られたものである。
工程(M1)における上記成形品は、比重が1.0g/cm以上であることが好ましく、1.5g/cm以上であることがより好ましく、また、2.5g/cm以下であることが好ましい。上記成形品の比重が上記範囲内にあると、表面の細孔や凸凹が小さくなり、結果的に比表面積の小さい低分子量PTFEを得ることが出来る。
上記比重は、水中置換法により測定することができる。
工程(M1)の後に、更に、工程(M1)で得られた成形品を放射線分解又は熱分解することにより、示差走査熱量測定における一回目昇温から二回目昇温の融解熱の減少率が40%以下であるPTFEを得る工程(M2)を実施することが好ましい。
この場合、工程(M2)で得られたPTFEを、工程(1)における上記PTFEとして使用することができる。
上記放射線分解又は熱分解は、いかなる雰囲気中で実施してもよく、例えば、空気中、不活性ガス中、真空中等で実施できる。低コストで実施できる観点からは、空気中での実施が好ましく、炭素数4〜16のパーフルオロカルボン酸及びその塩を生成させにくい観点からは、実質的に酸素不存在下での実施が好ましい。但し、本開示の製造方法は、上記工程(1)を含むので、上記放射線分解又は熱分解を実質的に酸素不存在下で実施することは必須でない。酸素の存在下(例えば空気中)で実施してもよい。
なお、上述した、上記PTFEを、実質的に酸素の不存在下で密閉容器に投入する工程も行う場合は、工程(M1)及び(M2)を、上記投入工程の前に実施することが好ましい。
本開示の製造方法は、工程(M1)の後、工程(M2)の前に、更に、上記成形品を粉砕して粉末を得る工程を含むこともできる。上記成形品を粗く粉砕してから、更に小さく粉砕してもよい。
本開示は、低分子量ポリテトラフルオロエチレンを含む粉末であって、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が1500質量ppb以下であり、上記低分子量ポリテトラフルオロエチレンは、1.0×10〜7.0×10Pa・sの380℃における溶融粘度を有し、電子スピン共鳴法(ESR)で測定して得られる一次微分型スペクトルにおいて、g値が2.020の信号の強度P1と、g値が2.023の信号の強度P2との差(P1−P2)が−0.07以上である粉末にも関する。
本開示の粉末における低分子量PTFEは、電子スピン共鳴法(ESR)で測定して得られる一次微分型スペクトル(以下、ESRスペクトルともいう)において、上記の特定の信号を示すものである。
放射線照射を酸素の存在下で行う等の従来法によって得られる低分子量PTFEは、上記の特定の信号を示さない。従来法で得られる低分子量PTFE中に含まれるラジカルの構造や割合は、本開示の粉末における低分子量PTFEとは相違すると推定される。
まず、上記ESRの測定条件、及び、関連する用語の定義を説明する。
測定条件は、以下のとおりである。
装置:日本電子株式会社(JEOL)製、JES−FR30EX
測定温度:23±3℃
マイクロ波周波数:9.42GHz
マイクロ波出力:0.4mW
中心磁場:347.548mT
掃引幅:±25mT
掃引時間:60s
時定数:0.03s
磁場変調幅:0.32mT
スキャン回数:1回
変調周波数:100kHz
マーカー:Mn2+
上記ESRスペクトルは、縦軸を補正信号強度、横軸をg値とする。
上記補正信号強度は、下記式:
補正信号強度(mg−1)=Int.[PTFE]/Int.[Mn2+]/サンプル質量(mg)
(式中、Int.[PTFE]はサンプルの補正前の信号強度、Int.[Mn2+]はマーカーの信号強度)で定義される。
本明細書では、特に断りのない限り、PTFEのESRスペクトルの信号について単に強度というときは、上記補正信号強度を指すものとする。
ESR信号のg値は、下記式:
g=hν/βH
(式中、hはプランク定数、νは測定電磁波の周波数、βはボーア磁子、Hは信号が得られる磁場強度)で定義される。
上記g値としては、マーカーとして用いたMn2+の6本のピークのうち、低磁場側から3本目及び4本目のピークに対応する既知のg値2.034及び1.981を基準として補正した値を用いる。
上記ESRスペクトルのベースラインがずれる場合は、g値が2.05及び1.98付近の信号強度がおよそ0となるようにベースライン補正を行う。
上記ESRスペクトルにおいて、正の信号とは、上記スペクトルの正の領域(ベースラインの上側)に現れる信号を意味し、負の信号とは、上記スペクトルの負の領域(ベースラインの下側)に現れる信号を意味する。
本開示の粉末における低分子量PTFEは、上記ESRスペクトルにおいて、g値が2.020の信号の強度P1と、g値が2.023の信号の強度P2との差(P1−P2)が−0.07以上である。
上記g値が2.020の信号及びg値が2.023の信号は、正の信号であってよい。また、P1及びP2は、上記信号の強度の絶対値であってよい。
g値が2.020の信号(ピーク)は、
下記式:
Figure 0006927445
(式中の波線はPTFEのポリマー鎖を示す。以下同様)で示されるラジカル1に基づく信号であり、g値が2.023の信号(ピーク)は、下記式:
Figure 0006927445
で示されるラジカル2に基づく信号であると考えられる。
上記融解熱の減少率が40%以下である、低分子量化されたPTFEは、ラジカル1及びラジカル2を含む。
その後、実質的に酸素不存在下で照射を行うと(工程(1))、ラジカル2の一部は照射によって分解されてラジカル1に変化するため、ラジカル1の割合が多くなる傾向にある。
他方、上記照射を空気中で行うと、ラジカル1及びラジカル2が生成するため、ラジカル1の割合は多くならない。
後述の実施例にある通り、本開示の製造方法により、照射前(比較例2)に−0.07未満であった差P1−P2が照射後(実施例1等)に−0.07以上になることは、工程(1)の照射によって、ラジカル2が減少し、ラジカル1が増加することを意味する。
上記差P1−P2が−0.07以上であることは、低分子量PTFE中のラジカル1とラジカル2の存在量の差がある程度以上あること、言い換えると、ラジカル2に対しラジカル1の量が多いことを意味する。
上記差P1−P2が−0.07以上である低分子量PTFEは、例えば上述した本開示の製造方法により製造することができることから、本開示の粉末は、従来公知の低分子量PTFE粉末と比較して安価に製造することができる。上記差P1−P2が−0.07未満であると、製造コストが増大するおそれがある。
上記差P1−P2は、0.00超であることが好ましく、0.01以上であることがより好ましく、0.02以上であることが更に好ましい。上記差P1−P2は、また、0.10以下であってよく、0.05以下であることがより好ましい。
上述した工程(1)を実施することにより、上記差P1−P2を上記範囲内にすることができる。
図1に、ESRスペクトルにおけるP1及びP2の一例を示す。
本開示の粉末における低分子量PTFEは、1.0×10〜7.0×10Pa・sの380℃における溶融粘度を有する。上記溶融粘度は、1.5×10Pa・s以上であることが好ましく、7.0×10Pa・s以上であることがより好ましく、また、3.0×10Pa・s以下であることが好ましく、1.0×10Pa・s以下であることがより好ましく、9.0×10Pa・s以下であることが更に好ましい。
本開示の粉末における低分子量PTFEの組成、融点、及び、分子鎖末端(カルボキシ基数、不安定末端基及びその安定化又はアミド化)については、本開示の製造方法により得られる低分子量PTFEについて述べたのと同様のものが採用できる。
本開示の粉末は、実質的に上記低分子量PTFEのみからなるものであってよい。上記粉末に対する上記低分子量PTFEの量は、95.0質量%以上であってよく、99.0質量%以上であることが好ましく、99.5質量%以上であることがより好ましい。
本開示の粉末は、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量が1500質量ppb以下である。上記粉末に対するパーフルオロオクタン酸及びその塩の量は、500質量ppb以下であってもよく、300質量ppb以下であってもよく、100質量ppb以下であってもよく、50質量ppb以下であってもよく、25質量ppb未満であってもよく、20質量ppb以下であってもよく、15質量ppb以下であってもよく、10質量ppb以下であってもよく、5質量ppb未満であってもよい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
本開示の粉末は、炭素数4〜16のパーフルオロカルボン酸及びその塩の含有量(合計量)が10000質量ppb以下であってよく、3000質量ppb以下であってもよく、2000質量ppb以下であってもよく、1000質量ppb以下であってもよく、500質量ppb以下であってもよく、100質量ppb以下であってもよく、50質量ppb以下であってもよく、25質量ppb未満であってもよく、20質量ppb以下であってもよく、15質量ppb以下であってもよく、10質量ppb以下であってもよく、5質量ppb未満であってもよい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
本開示の粉末は、炭素数4〜16のパーフルオロスルホン酸及びその塩の量が25質量ppb未満であってよく、20質量ppb以下であってもよく、15質量ppb以下であってもよく、10質量ppb以下であってもよく、5質量ppb未満であってもよい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
本開示の粉末は、比表面積が0.5〜20m/gであることが好ましい。
本開示の粉末は、平均粒子径が0.5〜200μmであることが好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましく、25μm以下が更により好ましく、10μm以下が特に好ましい。このように、平均粒子径が比較的小さい粉末であることで、例えば、塗料の添加剤として用いた場合等に、より優れた表面平滑性を有する塗膜を形成することができる。
本開示の粉末は、例えば、上述した本開示の製造方法により、粉末形状の低分子量PTFEを製造することによって得ることができる。本開示の粉末は、従来公知の低分子量PTFE粉末と比べても何ら劣ることのない優れた物性を有し、従来公知の低分子量PTFE粉末と同じ方法で使用でき、同じ用途に使用することができる。
本開示の製造方法により得られる低分子量PTFE及び本開示の粉末は、成形材料、インク、化粧品、塗料、グリース、オフィスオートメーション機器用部材、トナーを改質する添加剤、複写機の有機感光体材料、めっき液への添加剤等として好適に使用することができる。上記成形材料としては、例えば、ポリオキシベンゾイルポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド等のエンジニアリングプラスチックが挙げられる。上記低分子量PTFE及び上記粉末は、特に、グリース用粘稠剤として好適である。
上記低分子量PTFE及び上記粉末は、成形材料の添加剤として、例えば、コピーロールの非粘着性・摺動特性の向上、家具の表層シート、自動車のダッシュボード、家電製品のカバー等のエンジニアリングプラスチック成形品の質感を向上させる用途、軽荷重軸受、歯車、カム、プッシュホンのボタン、映写機、カメラ部品、摺動材等の機械的摩擦を生じる機械部品の滑り性や耐摩耗性を向上させる用途、エンジニアリングプラスチックの加工助剤等として好適に用いることができる。
上記低分子量PTFE及び上記粉末は、塗料の添加剤として、ニスやペンキの滑り性向上の目的に用いることができる。上記低分子量PTFE及び上記粉末は、化粧品の添加剤として、ファンデーション等の化粧品の滑り性向上等の目的に用いることができる。
上記低分子量PTFE及び上記粉末は、更に、ワックス等の撥油性又は撥水性を向上させる用途や、グリースやトナーの滑り性を向上させる用途にも好適である。
上記低分子量PTFE及び上記粉末は、二次電池や燃料電池の電極バインダー、電極バインダーの硬度調整剤、電極表面の撥水処理剤等としても使用できる。
上記低分子量PTFE又は上記粉末と潤滑油とを使用してグリースを調製することもできる。上記グリースは、上記低分子量PTFE又は上記粉末と潤滑油とを含有することから、潤滑油中に上記低分子量PTFE又は上記粉末が均一かつ安定に分散しており、耐荷重性、電気絶縁性、低吸湿性等の特性に優れている。
上記潤滑油(基油)は、鉱物油であっても、合成油であってもよい。上記潤滑油(基油)としては、例えば、パラフィン系やナフテン系の鉱物油、合成炭化水素油、エステル油、フッ素オイル、シリコーンオイルのような合成油等が挙げられる。耐熱性の観点からはフッ素オイルが好ましく、上記フッ素オイルとしては、パーフルオロポリエーテルオイル、三フッ化塩化エチレンの低重合物等が挙げられる。三フッ化塩化エチレンの低重合物は、重量平均分子量が500〜1200であってよい。
上記グリースは、更に、増稠剤を含むものであってもよい。上記増稠剤としては、金属石けん、複合金属石けん、ベントナイト、フタロシアニン、シリカゲル、ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ウレタン化合物、イミド化合物等が挙げられる。上記金属石けんとしては、例えばナトリウム石けん、カルシウム石けん、アルミニウム石けん、リチウム石けん等が挙げられる。また上記ウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物及びウレタン化合物としては、例えばジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、その他のポリウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物、ジウレタン化合物又はこれらの混合物等が挙げられる。
上記グリースは、上記低分子量PTFE又は上記粉末を0.1〜60質量%含むことが好ましく、0.5質量%以上含むことがより好ましく、5質量%以上含むことが更に好ましく、50質量%以下含むことがより好ましい。上記低分子量PTFE又は上記粉末の量が多すぎると、グリースが硬くなりすぎて、充分な潤滑性を発揮できないおそれがあり、上記低分子量PTFE又は上記粉末の量が少なすぎると、シール性が発揮できないおそれがある。
上記グリースは、固体潤滑剤、極圧剤、酸化防止剤、油性剤、さび止め剤、粘度指数向上剤、清浄分散剤等を含むこともできる。
次に実施例を挙げて本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
融解熱の減少率
示差走査熱量計(DSC、商品名:DSC7020、株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用いて測定した。具体的には、PTFEを約10mg精秤し、専用のアルミパンに収納し、アルミパンを窒素雰囲気下200℃に昇温して5分保持し、更に10℃/分の速度で390℃に昇温(一回目昇温)して結晶を充分融解させ、融解熱を測定した。次いで390℃から10℃/分の速度で200℃に降温したのちに、10℃/分の速度で200℃から390℃に昇温(二回目昇温)して融解熱を測定した。一回目昇温時及び二回目昇温時の融解熱の測定値を用いて、下記式により融解熱の減少率を求めた。
融解熱の減少率(%)=(一回目昇温時の融解熱−二回目昇温時の融解熱)/(一回目昇温時の融解熱)×100
溶融粘度(MV)
ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所社製)及び2φ−8Lのダイを用い、予め380℃で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定を行った。
電子スピン共鳴法(ESR)による測定
装置:日本電子株式会社(JEOL)製、JES−FR30EX
測定温度:23±3℃
マイクロ波周波数:9.42GHz
マイクロ波出力:0.4mW
中心磁場:347.548mT
掃引幅:±25mT
掃引時間:60s
時定数:0.03s
磁場変調幅:0.32mT
スキャン回数:1回
変調周波数:100kHz
マーカー:Mn2+
パーフルオロオクタン酸及びその塩(PFOA)の含有量
液体クロマトグラフ質量分析計(Waters, LC−MS ACQUITY UPLC/TQD)を用い、パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量の測定を行った。測定粉末1gにアセトニトリル5mlを加え、60分間の超音波処理を行い、パーフルオロオクタン酸を抽出した。得られた液相について、MRM(Multiple Reaction Monitoring)法を用いて測定した。移動相としてアセトニトリル(A)と酢酸アンモニウム水溶液(20mmol/L)(B)を、濃度勾配(A/B=40/60−2min−80/20−1min)で送液した。分離カラム(ACQUITY UPLC BEH C18 1.7μm)を使用し、カラム温度は40℃、注入量は5μLとした。イオン化法はESI(Electrospray ionization) Negativeを使用し、コーン電圧は25Vに設定し、プリカーサーイオン分子量/プロダクトイオン分子量は413/369を測定した。パーフルオロオクタン酸及びその塩の含有量は外部標準法を用い、算出した。この測定における検出限界は5ppbである。
炭素数4〜16のパーフルオロカルボン酸及びその塩(PFC)の含有量
液体クロマトグラフ質量分析計(Waters, LC−MS ACQUITY UPLC/TQD)を用い、炭素数4〜16のパーフルオロカルボン酸及びその塩を測定した。溶液はパーフルオロオクタン酸の測定にて抽出した液相を使用し、MRM法を用いて測定した。測定条件はパーフルオロオクタン酸の測定条件から、濃度勾配を変更し(A/B=10/90−1.5min−90/10−3.5min)、プリカーサーイオン分子量/プロダクトイオン分子量は、パーフルオロブタン酸(炭素数4)は213/169、パーフルオロペンタン酸(炭素数5)は263/219、パーフルオロヘキサン酸(炭素数6)は313/269、パーフルオロヘプタン酸(炭素数7)は363/319、パーフルオロオクタン酸(炭素数8)は413/369、パーフルオロノナン酸(炭素数9)は463/419、パーフルオロデカン酸(炭素数10)は513/469、パーフルオロウンデカン酸(炭素数11)は563/519、パーフルオロドデカン酸(炭素数12)は613/569、パーフルオロトリデカン酸(炭素数13)は663/619、パーフルオロテトラデカン酸(炭素数14)は713/669、パーフルオロペンタデカン酸(炭素数15)は763/719、パーフルオロヘキサデカン酸(炭素数16)は813/769を測定した。
炭素数4〜16のパーフルオロカルボン酸及びその塩の合計量は、上記測定より得られたパーフルオロオクタン酸の含有量(X)から下記式を用いて算出した。この測定における検出限界は5ppbである。
(AC4+AC5+AC6+AC7+AC8+AC9+AC10+AC11+AC12+AC13+AC14+AC15+AC16)/AC8×X
C4:パーフルオロブタン酸のピーク面積
C5:パーフルオロペンタン酸のピーク面積
C6:パーフルオロヘキサン酸のピーク面積
C7:パーフルオロヘプタン酸のピーク面積
C8:パーフルオロオクタン酸のピーク面積
C9:パーフルオロノナン酸のピーク面積
C10:パーフルオロデカン酸のピーク面積
C11:パーフルオロウンデカン酸のピーク面積
C12:パーフルオロドデカン酸のピーク面積
C13:パーフルオロトリデカン酸のピーク面積
C14:パーフルオロテトラデカン酸のピーク面積
C15:パーフルオロペンタデカン酸のピーク面積
C16:パーフルオロヘキサデカン酸のピーク面積
X:MRM法を用いた測定結果から外部標準法を用いて算出したパーフルオロオクタン酸の含有量
炭素数4〜16のパーフルオロカルボン酸及びその塩の削減率(PFC削減率)
放射線照射前のPTFE及び得られた低分子量PTFEにおけるPFCの含有量を上記の方法により測定し、それらの測定値を用いて下記式により求めた。
PFC削減率(質量%)=(照射前のPTFEにおけるPFCの含有量−得られた低分子量PTFEにおけるPFCの含有量)/(照射前のPTFEにおけるPFCの含有量)×100
密閉容器内の酸素濃度
密閉容器内の気層部分をガスクロマトグラフィーにて分析することにより測定した。更に、密閉容器内に同封した酸素検知紙の色調が青色から桃色に変化することで、酸素濃度が0.1体積%以下(酸素不在)であることを確認した。
実施例1
バリアナイロン製の袋にPTFEマイクロパウダー(PTFE−MP)(1)(融解熱の減少率:10.7%、PFOA量:155質量ppb、PFC量:1008質量ppb)を50g計量した。
更に、酸素吸着剤として鉄系自力反応型酸素吸着剤(三菱ガス化学社製エージレスZP−100)を同封し、バリアナイロン製の袋をヒートシールにて、密封した。袋内に予め設置しておいた酸素検知紙により酸素不在であることを確認した後に、袋内のPTFEマイクロパウダーに20〜45℃の雰囲気温度にてコバルト−60γ線を10kGy照射し、低分子量PTFE粉末を得た。なお、照射時の雰囲気温度は、照射発熱も含めた温度である(以下の実施例及び比較例も同様)。
得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を測定した。上記各種物性の測定は、照射終了後、ただちに袋を開封し、粉末を空気中に30分程度保持してから実施した。結果を表1に示す。
実施例2
コバルト−60γ線を100kGy照射したこと以外は実施例1と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
実施例3
コバルト−60γ線を400kGy照射したこと以外は実施例1と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
実施例4〜9
PTFEマイクロパウダー(1)の代わりに、表1に示す融解熱の減少率、PFOA量及びPFC量を有するPTFEマイクロパウダー(2)〜(7)を用いたこと以外は実施例2と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
比較例1
バリアナイロン製の袋にPTFEマイクロパウダー(1)を50g計量した。次いで、ヒートシールを用いて、密封した。袋内のPTFEマイクロパウダーに20〜45℃の雰囲気温度にてコバルト−60γ線を100kGy照射し、低分子量PTFE粉末を得た。
得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
比較例2
PTFEマイクロパウダー(1)に放射線を照射せずに、各種物性を実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
Figure 0006927445
比較例3
アルミ製のカップにPTFEマイクロパウダー(1)を50g計量し、熱風循環式電気炉(エスペック社製高温恒温器STPH−202M)を使用して、100℃で3時間、熱処理した。得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
比較例4
熱処理条件を100℃で0.5時間としたこと以外は比較例3と同様にして、低分子量PTFE粉末を得た。得られた低分子量PTFE粉末の各種物性を実施例1と同様に測定した。結果を表2に示す。
Figure 0006927445
比較例3及び4の方法は加熱設備を必要とするため、多大な製造コストがかかる。一方で、実施例1〜9の方法は、加熱設備を導入する必要がない。また、得られた低分子量PTFEを照射設備から加熱設備に移動させる等の工程も不要である。したがって、実施例1〜9の方法は、生産性を向上させることができ、製造コストを抑制することができる。

Claims (2)

  1. 炭素数4〜16のパーフルオロカルボン酸又はその塩を含み、示差走査熱量測定における一回目昇温から二回目昇温の融解熱の減少率が40%以下であるポリテトラフルオロエチレンに、実質的に酸素の不存在下、100℃未満の温度で5〜1000kGyの放射線を照射することにより、前記パーフルオロカルボン酸及びその塩の含有量が削減された、380℃における溶融粘度が1.0×10〜7.0×10Pa・sである低分子量ポリテトラフルオロエチレンを得る工程(1)を含む、低分子量ポリテトラフルオロエチレンの製造方法。
  2. 前記ポリテトラフルオロエチレン及び前記低分子量ポリテトラフルオロエチレンがいずれも粉末である請求項1記載の製造方法。
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