JP2017025245A - 耐熱性透明樹脂成形体及びその製造方法 - Google Patents

耐熱性透明樹脂成形体及びその製造方法 Download PDF

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Satoshi Yamazaki
智 山崎
西川 信也
Shinya Nishikawa
信也 西川
昭平 岡部
Shohei Okabe
昭平 岡部
片山 浩二
Koji Katayama
浩二 片山
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Abstract

【課題】高い透明性、特に400nm程度の波長での高い光線透過率を有するとともに、長期間の加熱やリフロー温度に晒されても透明性の低下がない耐熱性透明樹脂成形体、及び、この耐熱性透明樹脂成形体を、熱可塑性樹脂の成形体に、室温、大気中での放射線照射を施して製造する方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂の成形体であって、厚さ1mmの成形体における波長400nmの光線透過率が60%以上であり、270℃に加熱した後や100℃で1000時間保管後の波長400nmの光線透過率も60%以上である耐熱性透明樹脂成形体、及び屈折率が1.30〜1.36の熱可塑性樹脂及び架橋助剤を含有する組成物を成形する工程、並びに0℃以上、100℃未満で、放射線を照射する架橋工程を有する耐熱性透明樹脂成形体の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、透明な熱可塑性樹脂の架橋体からなる耐熱性透明樹脂成形体及びその製造方法に関する。
電子機器に使用される光学フィルムや光学レンズ等の小型の光学部材を形成する材料として、耐熱性透明樹脂成形体が種々提案されている。これらの耐熱性透明樹脂成形体は、熱可塑性樹脂の成形体であり、高い透明性とともに、鉛フリーハンダのリフロー温度(270℃)でも着色せずかつ高い透明性を維持できること、高温での使用による透明性の経時的な低下がないこと等の優れた耐熱性が望まれている。さらに透明性については、850nm程度の近赤外領域での高い光線透過率に加えて、近年は、400nm程度の短波長での高い光線透過率が求められる場合も増えている。
高い透明性とともに優れた耐熱性を有する透明樹脂成形体として、特許文献1では、透明ポリアミド、環状ポリオレフィン、フッ素樹脂等の透明な熱可塑性樹脂を成形した後、放射線照射等により架橋して得られる透明樹脂成形体が開示されている。しかし、透明ポリアミド、環状ポリオレフィンを用いた透明樹脂成形体は、850nm程度の波長では高い光線透過率を示し又耐熱性に優れるものの、400nm程度の波長での光線透過率は低い。
フッ素樹脂を用いた透明樹脂成形体は、特許文献1の他、特許文献2、特許文献3等で開示されている。フッ素樹脂は耐熱性に優れるが、C−F結合しか有しないパーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素樹脂は、結晶性樹脂であり透明ではないためレンズ等として使用できなかった。そこで、他のモノマーとの共重合体が種々提案されており、例えば、特許文献2では、テトラフルオロエチレンにエチレンを共重合させたフッ素樹脂等が開示されている。
特開2008−088303号公報 特開2011−52063号公報 特開2002−327067号公報
特許文献2に記載のフッ素樹脂では、共重合により結晶性が低下しその結果融点も低下するとともに透明性も向上する。そして、C−H結合を含むため放射線照射による架橋性も向上し、耐熱性を向上させることもできる。しかし、C−H結合を含むため長期の加熱での着色を充分に抑制できない。又、C−H結合を含むため樹脂中に残存するわずかな結晶により、1mm以上の厚肉のレンズでは充分な透明性を維持できない可能性がある。
前記の問題の解決のためには、C−H結合を有さないフッ素比率が高いフッ素樹脂であって、非結晶性(従って、透明性が高い)のフッ素樹脂の架橋体が望まれる。しかし、高いフッ素比率のフッ素樹脂は、放射線の照射による架橋がされにくく、従って、光学製品として充分な耐熱性は得られないと考えられていた。例えば、特許文献2では、PFAや四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)は高いフッ素比率のため架橋できないと記載されている。
又、特許文献3には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の様な(C−H結合を有さない)材料の放射線照射による架橋は、樹脂の融点以上の高温でかつ酸素を含まない窒素雰囲気下で実施する必要があると記載されており、室温や大気中での放射線照射では架橋できないことが示されている。しかし、樹脂の融点以上の高温で酸素を含まない雰囲気下で放射線照射を実施すれば、高温のため成形体が寸法変化しやすい。さらに高温かつ無酸素下での放射線照射を実施するためには、設備温度を高める必要があり、酸素の除去設備を要する等、設備上の課題もある。
高いフッ素比率のフッ素樹脂は、屈折率が1.30〜1.36程度と低い熱可塑性樹脂であるが、前記のように、従来は、高いフッ素比率の、すなわち屈折率が1.30〜1.36程度と低くかつ非結晶性の(透明な)熱可塑性樹脂を、室温のような低温で、大気中での放射線照射により架橋することはできなかった。そして、400nm程度の波長での高い光線透過率を有するとともに、耐熱性に優れ長期間の加熱やリフロー温度(270℃)に晒されても透明性の低下がない耐熱性透明樹脂成形体は得られていなかった。
本発明は、高い透明性、特に400nm程度の波長での光線透過率が高いとともに、長期間の加熱やリフロー温度に晒されても透明性の低下がない耐熱性透明樹脂成形体を提供することを課題とする。又、本発明は、この耐熱性透明樹脂成形体の製造方法であって、樹脂の架橋を低温での放射線照射により行う方法を提供することを課題とする。
本発明の第1の態様は、
熱可塑性樹脂の成形体であって、
厚さ1mmの成形体における波長400nmの光線透過率が60%以上であり、
270℃に加熱した後の厚さ1mmの成形体における400nmの光線透過率が60%以上であり、かつ
100℃で1000時間保管後の厚さ1mmの成形体における波長400nmの光線透過率が60%以上である
耐熱性透明樹脂成形体である。
本発明の第2の態様は、
屈折率が1.30〜1.36の熱可塑性樹脂100質量部、及び0〜100℃で液状である架橋助剤0.2〜30質量部を主体として含有する組成物を成形する工程、並びに
成形された前記組成物に、0℃以上、100℃未満で、放射線を照射する架橋工程、
を有し、
前記熱可塑性樹脂を厚さ1mmの成型体としたときの400nmの光線透過率は、60%以上であり、
前記熱可塑性樹脂の200℃での粘度は、10000Pa・s未満であり、かつ
前記架橋助剤の屈折率は、前記熱可塑性樹脂の屈折率の−0.01〜+0.01の範囲にある、耐熱性透明樹脂成形体の製造方法である。
なお、厚さ1mmの成型体としたときの光線透過率は、ランベルト・ベールの以下の式により計算して求める。
log10(I/I0)=−ε×c×d
I0:入射光の強度[W/m
I:透過光の強度[W/m
ε:モル吸光係数[cm−1
c:濃度[mol/l]
d:厚み[cm]
ここで、I/I0は測定透過率、dは測定サンプルの厚みであり、ε×Cは定数の為、厚みと透過率とを測定することで1mm厚みの透過率を換算できる。
本発明の第1の態様により、高い透明性、特に400nm程度の波長での高い光線透過率を有するとともに、長期間の加熱や鉛フリーハンダのリフロー温度(270℃)に晒されても透明性の低下がない耐熱性透明樹脂成形体が提供される。
本発明の第2の態様により、屈折率が1.30−1.36と低くかつ非晶質で融点の低い熱可塑性樹脂を、低温での放射線照射により架橋することができ、その結果、高い透明性、特に400nm程度の波長での高い光線透過率を有するとともに、長期間の加熱や鉛フリーハンダのリフロー温度(270℃)に晒されても透明性の低下や着色がない耐熱性透明樹脂成形体を製造することができる。
以下、本発明を実施するための形態について具体的に説明する。なお、本発明は下記の形態及び後述の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲内及び特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれる。
[第1の態様]
本発明の第1の態様は、
熱可塑性樹脂の成形体であって、
厚さ1mmの成形体における波長400nmの光線透過率が60%以上であり、
270℃に加熱した後の厚さ1mmの成形体における400nmの光線透過率が60%以上であり、かつ
100℃で1000時間保管後の厚さ1mmの成形体における波長400nmの光線透過率が60%以上である
耐熱性透明樹脂成形体である。
第1の態様の耐熱性透明樹脂成形体は、熱可塑性フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂の成形体である。熱可塑性フッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテル基を有するモノマーから構成されるフッ素樹脂を挙げることができる。この態様の耐熱性透明樹脂成形体は、第2の態様の耐熱性透明樹脂成形体の製造方法により製造することができる。
第1の態様の耐熱性透明樹脂成形体は、厚さ1mmの成形体における波長400nmの光線透過率が60%以上であり、高い透明性を有する。この光線透過率は、好ましくは、80%以上である。このような高い光線透過率は、第2の態様の耐熱性透明樹脂成形体の製造方法において、原料の熱可塑性樹脂として、非晶質で融点が低く400nmの光線透過率が高いものを用い、架橋助剤量を所定の範囲内とする方法等により達成することができる。又、このようにして光線透過率を80%以上とすることにより、270℃で加熱した後の光線透過率及び100℃で1000時間保管後の光線透過率も向上させることができる。
第1の態様の耐熱性透明樹脂成形体は、270℃に加熱した後の厚さ1mmの成形体における400nmの光線透過率が60%以上であり、かつ100℃で1000時間保管後の厚さ1mmの成形体における波長400nmの光線透過率が60%以上である。すなわち、鉛フリーハンダのリフロー温度(270℃)に加熱されても透明性が低下しにくく、かつ、光学機器の使用時の環境として考えられる温度での長期の加熱によっても透明性が低下しにくいとの優れた耐熱性を有する。
なお、「270℃に加熱した後」とは、具体的には、「耐熱性透明樹脂成形体を180℃に設定の槽に投入後、槽の設定温度について、180℃で90秒間維持、180℃から270℃に30秒間で昇温、270℃で30秒間維持、270℃から180℃まで90秒間で降温、をこの順序で行った後」を意味する。
第1の態様の耐熱性透明樹脂成形体の270℃での貯蔵弾性率は、好ましくは、1MPa以上であり、より好ましくは1.3MPa以上である。そこで、好ましい態様として、270℃での貯蔵弾性率が、1MPa以上である第1の態様の耐熱性透明樹脂成形体を提供する。
さらに、第1の態様の耐熱性透明樹脂成形体は、320℃に加熱されても形状変化がないこと(溶融することによる成形体の寸法の変化・表面状態の変化がないこと)が好ましい。このような優れた剛性や耐熱変形性は、非晶質の融点の低い樹脂(透明性の高い樹脂)を用いた場合であっても、樹脂の架橋を充分行うことにより達成できる。具体的には、第2の態様の耐熱性透明樹脂成形体の製造方法において、放射線の照射量の調節、架橋助剤量の調節により達成することができる。
[第2の態様]
本発明の第2の態様は、
屈折率が1.30〜1.36の熱可塑性樹脂100質量部、及び0〜100℃で液状である架橋助剤0.2〜30質量部を主体として含有する組成物を成形する工程、並びに
成形された前記組成物に、0℃以上、100℃未満で、放射線を照射する架橋工程、
を有し、
前記熱可塑性樹脂を厚さ1mmの成型体としたときの400nmの光線透過率は、60%以上であり、
前記熱可塑性樹脂の200℃での粘度は、10000Pa・s未満であり、かつ
前記架橋助剤の屈折率は、前記熱可塑性樹脂の屈折率の−0.01〜+0.01の範囲にある、耐熱性透明樹脂成形体の製造方法である。
この製造方法により、前記第1の態様の耐熱性透明樹脂成形体を製造することができる。すなわち、上記の条件を満たすことにより、屈折率が1.30〜1.36と低い熱可塑性フッ素樹脂(C−H結合をほとんど有さず、フッ素比率が高いフッ素樹脂)であっても、0℃以上、100℃未満の低温での放射線照射により充分架橋させることができ、その結果、長期間の加熱(100℃×1000時間)や鉛フリーハンダのリフロー温度(270℃)に晒されても透明性の低下がなく、又高い透明性を維持する耐熱性透明樹脂成形体を製造できるのである。
次に、第2の態様において使用する材料について説明する。
(1)熱可塑性樹脂
第2の態様において使用される熱可塑性樹脂は、その屈折率が1.30〜1.36と低いものである。屈折率がこの範囲内の熱可塑性樹脂は、C−H結合等の結晶化要因、すなわち透明性を低下させる要因が非常に少ないものであり、この熱可塑性樹脂を用いることにより透明性を向上させることができる。又長期の加熱による着色等も抑制することができる。さらに、放射線照射時の樹脂の分解も抑制される。
屈折率が1.30〜1.36の熱可塑性樹脂としては、フッ素比率が高い(すなわち、C−H結合の比率が低い)熱可塑性フッ素樹脂が挙げられる。そこで、具体的な態様として、前記熱可塑性樹脂が、熱可塑性フッ素樹脂である第2の態様の耐熱性透明樹脂成形体の製造方法を提供する。
この熱可塑性フッ素樹脂は、C−H結合をほとんど有さない又はその比率が非常に低いフッ素樹脂(高いフッ素比率のフッ素樹脂)であるので、従来は放射線照射による架橋が困難であった。しかし、第2の態様の方法により、この熱可塑性フッ素樹脂でも架橋が可能になり、長期間の加熱や鉛フリーハンダのリフロー温度(270℃)に晒されても透明性の低下や着色がない耐熱性に優れた耐熱性透明樹脂成形体を製造することができる。そして、この熱可塑性フッ素樹脂が非晶質の融点の低いものであっても、前記のように充分な架橋が可能となるので、リフロー温度(270℃)以上でも高い剛性を維持し、320℃程度でも形状変化が見られない耐熱性透明樹脂成形体を製造することができる。
屈折率が1.30〜1.36の熱可塑性フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテル基を有するモノマーから構成されるフッ素樹脂(PFAの共重合体)が挙げられる。そこで、具体的な態様として、前記熱可塑性フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテル基を有するモノマーから構成されるフッ素樹脂である第2の態様の耐熱性透明樹脂成形体の製造方法を提供する。
第2の態様において使用される熱可塑性樹脂は、その200℃での粘度が10000Pa・s未満のものである。すなわち、この熱可塑性樹脂は、融点(軟化点)が200℃よりはるかに低く、結晶性が低いほぼ非晶質の樹脂である。従って、透明性も高く、架橋助剤との混合後も、架橋後も、高い透明性を維持できる。200℃での粘度が10000Pa・s以上の熱可塑性樹脂を用いた場合は、厚さ1mmの成形体における波長400nmの光線透過率が60%以上との高い透明性を有する耐熱性透明樹脂成形体を製造することはできない。
さらに、200℃での粘度が10000Pa・s未満のものを用いることにより、架橋助剤との混合を充分に行うことができる。200℃での粘度が10000Pa・s以上のものを用いる場合は、たとえ屈折率が近い架橋助剤を用いた場合でも、熱可塑性樹脂との混合が不十分となり、0℃以上、100℃未満の低温での放射線照射による架橋が充分行われにくくなる。従ってこの場合は、耐熱性に優れた耐熱性透明樹脂成形体、すなわち長期間の加熱や鉛フリーハンダのリフロー温度(270℃)に晒されても透明性の低下や着色がない耐熱性透明樹脂成形体を製造することはできない。又、リフロー温度(270℃)以上でも高い剛性を有し溶融しない耐熱性透明樹脂成形体を製造することはできない。
熱可塑性樹脂としては、厚さ1mmの成形体としたときの400nmの光線透過率が60%以上となるものが用いられる。この熱可塑性樹脂用いることにより、400nmの光線透過率が60%以上の耐熱性透明樹脂成形体が得られる。400nmの光線透過率がより高い熱可塑性樹脂を用いることにより、400nmの光線透過率がより高い耐熱性透明樹脂成形体を得ることができる。
(2)架橋助剤
第2の態様において使用される架橋助剤は、大気圧下、0〜100℃で液状のものである。かつ、その屈折率が熱可塑性樹脂の屈折率の−0.01〜+0.01の範囲にあるものである。熱可塑性樹脂の屈折率は1.30〜1.36の範囲内と低いので、架橋助剤の屈折率も低い。従って、架橋助剤は、C−F結合を有しフッ素比率の高いものである。
屈折率が近い熱可塑性樹脂と架橋助剤を選定することで、架橋助剤が熱可塑性樹脂中に取り込まれやすく、架橋効率が向上するものと考えられる。熱可塑性樹脂との屈折率の差が0.01を超える架橋助剤を用いた場合は、0℃以上、100℃未満での放射線照射では、前記熱可塑性樹脂を架橋させることはできない。又、屈折率の差が0.01以下であることにより、放射線照射後の樹脂成形体(架橋成形体)の透明性も、原料の熱可塑性樹脂の透明性と同等とすることができる。屈折率の差が0.01を超える場合は、放射線照射後の樹脂成形体(架橋成形体)の透明性も低下し、400nmでの60%以上の光線透過率は得られない。
(3)熱可塑性樹脂と架橋助剤の配合比
熱可塑性樹脂と架橋助剤の配合比は、質量比で、100:0.2〜30の範囲である。架橋助剤の配合量が、熱可塑性樹脂100質量部に対し0.2質量部未満の場合は、放射線照射を行っても架橋が充分行われずリフロー温度(270℃)で溶融する成形体となりやすい。一方、30質量部を超える場合は、樹脂成形体の透明性が低下し、400nmにおける光線透過率が低いものとなる。
架橋助剤の配合量は、好ましくは、熱可塑性樹脂100質量部に対し25質量部以下である。25質量部以下とすることにより、より透明性に優れた架橋樹脂成形体を得ることができる。
なお、熱可塑性樹脂と架橋助剤を主体するかぎり、それらの混合物には、発明の趣旨を損ねない範囲で、他の成分を加えてもよい。主体とするとは、熱可塑性樹脂と架橋助剤が混合物の質量の大半、好ましくは80〜100質量%を占めるが、発明の趣旨を損ねない範囲で他の成分を含んでもよいことを意味する。
(4)放射線照射
1)放射線
放射線照射に使用される放射線としては、電子線、X線、γ線、粒子線等が挙げられる。電子線発生装置はランニングコストが低く、又大出力の電子線が得られ、制御も容易であるので、放射線の中では電子線が好ましく用いられる。
2)放射線照射の温度、雰囲気
第2の態様では、放射線照射を0℃以上、100℃未満で実施する。その大半がC−F結合である熱可塑性フッ素樹脂に、この範囲の温度で放射線照射しても、樹脂を充分架橋することができ、その結果、長期間の加熱や鉛フリーハンダのリフロー温度(270℃)に晒されても透明性の低下や着色がない耐熱性に優れた耐熱性透明樹脂成形体を製造することができる。又、リフロー温度でも1MPa以上の剛性を有する耐熱性透明樹脂成形体を得ることもできる。さらに、樹脂の融点を超えるような高温で照射を実施した場合に生じ易い、透明性の低下等の問題や、樹脂の分解や成形体の寸法変化の問題等を抑制することができる。設備上の課題も軽減することができる。
放射線照射を実施する温度は、好ましくは、10℃以上、45℃以下である。この範囲の温度で放射線照射を実施することにより、透明性の低下等の問題や、樹脂の分解や成形体の寸法変化の問題等をより充分に抑制することができる。
放射線照射は窒素等の不活性ガス中、酸素不存在下で行うことが好ましい。ただし放射線照射は大気中等の酸素が存在する雰囲気で行うこともでき、この場合でも、樹脂を充分に架橋することができる。放射線照射を大気中で行うことにより、酸素の除去設備が不要となるので、生産コストを削減できる点では好ましい。
3)放射線照射量
放射線の照射量は、少なくとも10−1000kGyの範囲から選択することができる。汎用されているフッ素樹脂では、1000kGyでは分解が生じるため、この照射量の採用は困難であるが、第2の態様に用いられる前記の熱可塑性フッ素樹脂では、1000kGy程度の高い照射量でも樹脂の分解や着色が生じないので、採用可能である。
(1)照射前サンプルの作製
下記の使用材料の欄に示したポリマー(熱可塑性樹脂)及び架橋助剤を表1、2に示す配合量(単位:質量部)で混合してコンパウンドとした後、そのコンパウンドを厚み1mmのシート状にして試験用サンプルを作製した。使用した各ポリマー及び各コンパウンドの400nmにおける光線透過率を、分光光度計UV2450(島津製作所社製)を用いて測定した。又、目視にて、各コンパウンドのブリードアウトの有無を判定した。これらの結果を表1、2に示す。
(2)電子線照射
前記で得られた照射前サンプルに、大気中、30℃で、表1、2に示す照射量で電子線を照射し照射後サンプルを作製した。分光光度計UV2450を用いて、照射後サンプルの400nm、850nmにおける光線透過率を測定した。その結果を表1、2に示す。
(3)リフロー後の光線透過率の測定
前記で得られた照射後サンプルを270℃で加熱した後(具体的には、サンプルを180℃に設定の槽に投入後、槽の設定温度について、180℃で90秒間維持、180℃から270℃に30秒間で昇温、270℃で30秒間維持、270℃から180℃まで90秒間で降温、をこの順序で行った後)、分光光度計UV2450を用いて、400nm、850nmにおける光線透過率を測定した。その結果を表1、2に示す。
(4)長期加熱後の光線透過率の測定
前記で得られた照射後サンプルを、100℃で1000時間加熱した後、分光光度計UV2450を用いて、400nmにおける光線透過率を測定した。その結果を表1、2に示す。
(5)320℃の形状変化の測定
前記で得られた照射後サンプルを、320℃恒温槽内に入れて10分間放置した後の寸法の変化・外観の変化の有無を目視で観察した。
(6)270℃貯蔵弾性率
前記で得られた照射後サンプルについて、アイティー計測制御社製DVA−200による動的粘弾性測定器により、10℃/分の昇温速度にて測定した。
[使用材料]
1)ポリマー(熱可塑性樹脂)
・屈折率1.33で200℃の粘度が3500Pa・sの熱可塑性フッ素樹脂(表1、2中では、「PFA1」と示す。)
・屈折率1.33で200℃の粘度が6000Pa・sの熱可塑性フッ素樹脂(表1、2中では、「PFA2」と示す。)
・屈折率1.35のPFA(mp.310℃、200℃では未溶融、表1、2中では、「PFA3」と示す。)
・屈折率1.36のFEP(mp.260℃、200℃では未溶融、表1、2中では、「FEP」と示す。)
・屈折率1.52の透明ポリアミド(グリルアミドTR90)(200℃の粘度は、10000Pa・s以上。表1、2中では、「PA」と示す。)
2)架橋助剤
・1,6ジビニルパーフルオロヘキサン(屈折率1.33、沸点83.5℃(43mmHg)、表1、2中では、「架橋助剤1」と示す。)
・トリアリルイソシアヌレート(屈折率1.52、沸点149℃(大気圧)、表1、2中では、「架橋助剤2」と示す。)
前記いずれの、架橋助剤も0〜100℃(大気圧)で液状である。
Figure 2017025245
Figure 2017025245
表1〜2に示されている評価結果より、ポリマー(熱可塑性樹脂)として、屈折率が1.33であって、200℃での粘度が10000Pa・s未満であり、かつ厚さ1mmの成形体としたときの400nmの光線透過率が60%以上となるPFA1又はPFA2を用い、架橋助剤として、0〜100℃(大気圧)で液状であり、屈折率が1.33(熱可塑性樹脂の屈折率との差異は0、すなわち0.01以下)である架橋助剤1(1,6ジビニルパーフルオロヘキサン)を用い、かつ、熱可塑性樹脂100質量部に対する架橋助剤の量が1〜25質量部の範囲(すなわち、0.2〜30質量部の範囲内)にある実験例1〜6では、放射線照射を大気中、30℃で、かつ200kGy又は600kGyで行っても、照射後の光線透過率は400nm、850nmのいずれの場合も60%を超えており高い透明性が得られている。又、270℃で加熱後も、100℃で1000時間の保管後も、この高い透明性は維持されており耐熱性に優れた樹脂成形体であることが示されている。さらに、270℃での貯蔵弾性率は1Mpa以上であり、320℃での形状変化もなく、従って、放射線照射を大気中30℃で実施しても、樹脂が充分に架橋されていると考えられる。
なお、熱可塑性樹脂100質量部に対する架橋助剤の量が25質量部より小さい実験例1、2、3、6では、照射による400nmでの光線透過率の低下が、実験例4、5と比べて小さいことが示されている。又、熱可塑性樹脂として400nmでの光線透過率が高いPFA1を用いた場合は、400nmでの光線透過率が比較的低いPFA2を用いた場合よりも、400nmでの光線透過率が高い耐熱性透明樹脂成形体が得られている。
200℃で未溶融(すなわち200℃での粘度が10000Pa・s以上)の熱可塑性樹脂PFA3又はFEPを用いた実験例7、8では、得られる樹脂成形体は、270℃で溶融するものであり、耐熱性は得られない。樹脂の架橋がされていないと考えられる。又、樹脂としても、コンパウンドとしても、電子線照射後も、400nmでの光線透過率が非常に低く400nmでの透明性が低い。
以上の結果より、高い透明性を得るためには、200℃での粘度が10000Pa・s未満の低融点の透明な熱可塑性樹脂(非晶質の樹脂)を用いる必要があること、しかし、このような低融点の熱可塑性樹脂を用いた場合であっても、第2の態様の製造方法によれば、低温での放射線照射により熱可塑性樹脂を充分架橋することができ、優れた耐熱性が得られること、が示されている。
架橋助剤を使用しない(すなわち、架橋助剤の量が熱可塑性樹脂100質量部に対して0.2質量部未満)実験例9では、得られる樹脂成形体は、270℃で溶融するものであり耐熱性は得られない。樹脂が架橋されていないと考えられる。一方、架橋助剤の量が熱可塑性樹脂100質量部に対して30質量部を超える実験例10では、透明性の高い樹脂を用いているにも係らず400nmでの光線透過率が低く60%未満である。また、コンパウンドのブリードアウトも大きい。これらの結果より、架橋助剤の量は熱可塑性フッ素樹脂100質量部に対して0.2〜30質量部の範囲とする必要があることが示されている。
架橋助剤として屈折率が1.52の架橋助剤2を用いた実験例11では、60%以上の光線透過率は得られず、コンパウンドのブリードアウトも大きい。又270℃での貯蔵弾性率は0であり、320℃で形状変化が有り、樹脂の架橋がされていないと考えられる。
熱可塑性樹脂として透明ポリアミド(グリルアミドTR90:表中のPA)を用い、架橋助剤として、屈折率がグリルアミドTR90とほぼ同じである架橋助剤2を用いた実験例12では、400nmでは高い光線透過率は得られない。

Claims (11)

  1. 熱可塑性樹脂の成形体であって、
    厚さ1mmの成形体における波長400nmの光線透過率が60%以上であり、
    270℃に加熱した後の厚さ1mmの成形体における400nmの光線透過率が60%以上であり、かつ
    100℃で1000時間保管後の厚さ1mmの成形体における波長400nmの光線透過率が60%以上である
    耐熱性透明樹脂成形体。
  2. 270℃での貯蔵弾性率が1MPa以上である請求項1に記載の耐熱性透明樹脂成形体。
  3. 屈折率が1.30〜1.36の熱可塑性樹脂100質量部、及び0〜100℃で液状である架橋助剤0.2〜30質量部を主体として含有する組成物を成形する工程、並びに
    成形された前記組成物に、0℃以上、100℃未満で、放射線を照射する架橋工程、
    を有し、
    前記熱可塑性樹脂を厚さ1mmの成型体としたときの400nmの光線透過率は、60%以上であり、
    前記熱可塑性樹脂の200℃での粘度は、10000Pa・s未満であり、かつ
    前記架橋助剤の屈折率は、前記熱可塑性樹脂の屈折率の−0.01〜+0.01の範囲にある、耐熱性透明樹脂成形体の製造方法。
  4. 前記熱可塑性樹脂が、熱可塑性フッ素樹脂である請求項3に記載の耐熱性透明樹脂成形体の製造方法。
  5. 前記熱可塑性フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン及びパーフルオロアルキルビニルエーテル基を有するモノマーから構成されるフッ素樹脂である請求項4に記載の耐熱性透明樹脂成形体の製造方法。
  6. 前記架橋助剤の含有量が、熱可塑性フッ素樹脂100質量部に対し25質量部以下である請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の耐熱性透明樹脂成形体の製造方法。
  7. 前記放射線が、電子線である請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載の耐熱性透明樹脂成形体の製造方法。
  8. 前記放射線を、10℃以上、45℃以下で照射する請求項3ないし請求項7のいずれか1項に記載の耐熱性透明樹脂成形体の製造方法。
  9. 前記放射線の照射量が、10kGy以上、1000kGy以下である請求項3ないし請求項8のいずれか1項に記載の耐熱性透明樹脂成形体の製造方法。
  10. 請求項1又は2に記載の耐熱性透明樹脂成形体を用いた光学レンズ。
  11. 請求項1又は2に記載の耐熱性透明樹脂成形体を用いた光学フィルム。
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