JP7492108B2 - 構造体の製造方法及び金型 - Google Patents

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本発明は、構造体の製造方法及び金型に関する。
インサート部材及び発泡成形体を有するコア材(構造体)と、コア材の表面に形成されている樹脂成形体とを備えているパネルの製造方法が各種提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1において、発泡成形体は発泡ビーズが成形されて構成される。特許文献1のコア材の製造方法において、発泡成形体の端部をインサート部材の凹状部に押し込むことで、発泡成形体をインサート部材に固定している。
上記の固定方法において、発泡成形体とインサート部材との間に生じてしまう隙間に起因するコア材及びパネルの強度低下を解決するために、発泡成形体とインサート部材を一体成形する、構造体の製造方法が特許文献2に提案されている。
特開2014-128938号公報 特開2019-188749号公報
ビーズ発泡成形では、発泡成形体の重量調整や難充填部への原料ビーズ充填性の改善を目的として、クラッキングと呼ばれる手法を用いる。クラッキングでは、原料ビーズ充填時には両金型間にクラッキング隙間があり、原料ビーズ充填後のプレス工程において更に型閉じすることで、原料ビーズの充填密度を向上させる。
インサート部材を一体成形するビーズ発泡成形においてクラッキング隙間を大きく取ると、他方の金型とインサート部材の間にまで原料ビーズが充填され、成形されたコア材のインサート部材露出面に原料ビーズがバリとして付着してしまう場合がある。ひいては、上記バリが付着したコア材を用いてパネルの成形を行った場合、バリ形状が基材表面に転写され外観不良となってしまう。
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、表面基材の外観不良を抑制した成形体の一部である構造体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様によれば、インサート部材と発泡成形体とを有する構造体を金型で製造する製造方法であって、前記金型は、互いに開閉可能な第1及び第2の金型を備え、前記第2の金型は、入り込み防止部を備え、本製造方法は、型閉じ工程と、充填工程と、型締め工程と、成形工程とを備え、前記型閉じ工程では、前記第1の金型が前記インサート部材を保持した状態で前記金型を型閉じすることで、前記金型間に充填空間を形成するとともに前記第2の金型の主面と前記インサート部材の対向面との間にクラッキング隙間を形成し、前記充填工程では、前記充填空間内に発泡ビーズを充填し、このとき前記入り込み防止部が前記クラッキング隙間に前記発泡ビーズが入り込むことを防止し、前記型締め工程では、前記クラッキング隙間を無くすように前記金型をさらに閉じて型締めし、前記成形工程では、前記充填空間に充填された前記発泡ビーズから発泡成形体を成形する、方法が提供される。
本発明に係る構造体の製造方法によれば、インサート部材と他方の金型の間のクラッキング隙間にビーズが入り込まなくなるため、成形品のインサート部材露出面にバリができることが抑制される。その結果、上記成形品をコア材としてパネルを成形した場合でも、表面基材に外観不良を及ぼすことがなくなる。
成形体1の構成を示す斜視図である。 成形体1の構成を示す断面図である。 芯材12と、補強部材13(インサート部材)とからなる構造体15の断面図である。 第1の金型71及び第2の金型72の概略的構造を示す断面図である。 第1の金型71及び第2の金型72を型閉じした状態を示す断面図であり、特に図5Aは、入り込み防止部8が突出した状態を示し、図5Bは入り込み防止部8が凹部725に収容された状態を示している。 図5Aの状態から発泡ビーズBを充填空間S2に充填させた状態を示す断面図である。 図6の状態から第1の金型71及び第2の金型72を型締めした状態を示す断面図である。 成形体1を成形可能な成形装置3の構成を示す概要図である。 第3の金型73及び第4の金型74を開いた状態から、樹脂シート21及び樹脂シート22を金型形状に賦形させた態様を示す概要図である。 構造体15を樹脂シート21に押し付けた態様を示す概要図である。 第3の金型73及び第4の金型74を型締めして、成形体1を成形した態様を示す概要図である。 変形例(1)に係る入り込み防止部8の態様を示す概要図であり、図12Aは型閉じ状態、図12Bは型締め状態を示している。 変形例(2)に係る入り込み防止部8の態様を示す概要図であり、図13Aは型閉じ状態、図13Bは型締め状態を示している。
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
1.成形体1の構成
本節では、本実施形態に係るパネル状の成形体1について説明する。図1は、成形体1の構成を示す斜視図である。図2は、成形体1の構成を示す断面図である。図3は、芯材12と、補強部材13(インサート部材)とからなる構造体15の断面図である。
図1に示されるように、パネル状の成形体1は、表皮部材11と、芯材12と、補強部材13とを備える。以下、各構成について詳細に説明する。
(表皮部材11)
図1に示されるように、表皮部材11は、樹脂のシートであり、後述の芯材12の両面に配置される。具体的には、表皮部材11としては、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維、及びこれらを混合した繊維を加工して得られる編物、織物、不織布、またはポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)または熱可塑性ポリオレフィンエラストマー(TPO)等の熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリエチレンポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂からなる樹脂シート、及びこれらの積層シート、プラスチック製段ボール、ハードボード等から適宜選択可能である。
(芯材12)
芯材12は、例えば、熱可塑性樹脂の発泡体からなるものであり、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が適宜採用されることが望ましい。また、かかる発泡体には、適宜、ガラス繊維、カーボンファイバー、炭酸カルシウム、タルク、マイカ等の充填材を添加することもできる。
より具体的には、芯材12は、いわゆるビーズ発泡成形により製造された発泡体である。ビーズ発泡成形の特長は、形状を自由に設計できることと、高倍率の発泡成形体が得られることにある。ビーズ発泡成形の工程は、予備発泡、熟成、成形、養生に分けられる。ビーズ発泡成形に用いられるビーズは炭化水素等の物理発泡剤を含浸した小径の樹脂粒子である。発泡剤を含浸させる方法として、ポリスチレンの場合には懸濁重合の際に重合系に発泡剤である炭化水素(ペンタン等)を存在させることで、発泡剤を含んだポリスチレン粒子が得られる。PPやPEの場合には、あらかじめ用意したミニペレットに水中で炭化水素を含浸させる。
芯材12の形成に使用されうる発泡剤としては、公知の物理発泡剤、化学発泡剤及びその混合物が挙げられる。例えば、物理発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス等の無機系物理発泡剤、及びブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤を適用できる。また、化学発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラジノトリアジン又はアゾビスイソブチロニトリルなどの有機発泡剤、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、ショウノウ酸、エチレンジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ酸などのポリカルボン酸と、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウムアルミニウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム等の無機炭酸化合物の混合物や、クエン酸二水素ナトリウム、シュウ酸カリウム等のポリカルボン酸の塩が無機発泡剤として挙げられる。
なお、芯材12と、後述の補強部材13とが一体成形されることで、構造体15が構成される。これについては、第2節において改めて説明する。
(補強部材13)
補強部材13は、例えば金属、強化プラスチック等で構成することができる。補強部材13は、成形体1の耐荷重性を向上させる骨格であり、成形体1を補強する機能を有する。補強部材13は、一対のフランジ部131と、基体部132とを有する。各フランジ部131は、樹脂シート21,22(表皮部材11)の内面に接触するように構成される。基体部132は一方のフランジ部131と他方のフランジ部131との間に設けられている。一方のフランジ部131が基体部132の一端に接続され、他方のフランジ部131が基体部132の他端に接続されている。すなわち、補強部材13は、H字状に形成され、H字の凹部に芯材12が充填されてなる。
特に、補強部材13は、長尺状の補強部材である。成形体1がこの補強部材13を備えていることにより、成形体1の耐荷重性が向上する。また、補強部材13は長尺状であるので、その分、成形体1の広範囲が補強部材13によって補強されることになる。このため、成形体1は歪む等の変形がしにくくなり、成形体1の強度が向上する。
2.金型71,72の構成
本節では、前節で説明した成形体1の一部である構造体15を製造するための金型(第1の金型71及び第2の金型72)について説明する。図4は、第1の金型71及び第2の金型72の概略的構造を示す断面図である。図5は、第1の金型71及び第2の金型72を型閉じした状態を示す断面図であり、特に図5Aは、入り込み防止部8が突出した状態を示し、図5Bは入り込み防止部8が凹部725に収容された状態を示している。図6は、図5Aの状態から発泡ビーズBを充填空間S2に充填させた状態を示す断面図である。図7は、図6の状態から第1の金型71及び第2の金型72を型締めした状態を示す断面図である。
この金型は、補強部材13と芯材12とを有する構造体15を製造するため金型である。具体的には、金型は、互いに開閉可能な第1の金型71及び第2の金型72を備える。
第1の金型71は、補強部材13を保持するように構成される。補強部材13の保持の仕方は特に限定されるものではないが、例えば、第1の金型71におけるキャビティ711の内面には、保持部9が設けられている。保持部9は補強部材13を保持する機能を有する。補強部材13が保持部9に取り付けられると、補強部材13はキャビティ711の内面に付勢され、その結果、補強部材13はキャビティ711に取り付けられる。キャビティ711は発泡ビーズB(図6参照)が充填可能なように凹状に形成されている。
図5Bに示されるように第2の金型72は、主面721を備える。主面721は、第2の金型72におけるコア722が形成する面である。後述の入り込み防止部8が凹部725にその全体が収容される状態、すなわち入り込み防止部8が主面721に対して垂直方向に突出していない状態において、図示されるように、主面721は、型閉じ時に第1の金型71に保持された補強部材13の対向面13fとの間にクラッキング隙間S1を有するように構成される。
[背景技術]において記載した通り、従来では、クラッキング隙間S1に発泡ビーズBが入り込むことで、構造体15、ひいては成形体1の成形不良が問題となっていた。一方、本実施形態では、第2の金型72は、入り込み防止部8を備えることに留意されたい。入り込み防止部8は、金型の充填空間S2に発泡ビーズBを充填する際に、クラッキング隙間S1に発泡ビーズBが入り込むことを防止するように構成される。具体的には、図5Aに示されるように、入り込み防止部8は、主面721に対して略垂直方向に突出することで、型閉じ時にクラッキング隙間S1を塞ぐように構成される。
特に、入り込み防止部8は、第2の金型72の、主面721に対する凹部725に設けられ且つ主面721に対して略垂直方向に前後移動又は変形可能な変位部材であることが好ましい。そして入り込み防止部8は、型閉じ時には、主面721から突出してクラッキング隙間S1を塞ぐように構成される。
より詳細には、入り込み防止部8は、突出部材81(可動部)とバネ部材82とを備えたスライド機構である。バネ部材82は、突出部材81を主面721から突出させるように付勢している。そして、補強部材13における対向面13fと接触することで、クラッキング隙間S1が塞がれている。
そして、図6に示されるように発泡ビーズBを充填空間S2に充填すれば、従来問題となっていた発泡ビーズBのクラッキング隙間S1への入り込みが生じず、その結果、成形体1の外観不良の発生が抑制される。その後の型締め時(図7参照)では、対向面13fが突出部材81を押圧することで、凹部725に入り込み防止部8の全体が収容される。
また、第1の金型71及び第2の金型72は、充填空間S2に発泡ビーズBが充填された状態においてクラッキング隙間S1を無くすように、さらに閉じて型締め可能に構成される。例えば、第2の金型72が第1の金型71側にさらに移動可能に構成されればよい。
なお、実施形態において、クラッキング隙間S1は0.1mmから10.0mmの間で調整されることが好ましい。具体的には例えば、0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1,1.1,1.2,1.3,1.4,1.5,1.6,1.7,1.8,1.9,2,2.1,2.2,2.3,2.4,2.5,2.6,2.7,2.8,2.9,3,3.1,3.2,3.3,3.4,3.5,3.6,3.7,3.8,3.9,4,4.1,4.2,4.3,4.4,4.5,4.6,4.7,4.8,4.9,5,5.1,5.2,5.3,5.4,5.5,5.6,5.7,5.8,5.9,6,6.1,6.2,6.3,6.4,6.5,6.6,6.7,6.8,6.9,7,7.1,7.2,7.3,7.4,7.5,7.6,7.7,7.8,7.9,8,8.1,8.2,8.3,8.4,8.5,8.6,8.7,8.8,8.9,9,9.1,9.2,9.3,9.4,9.5,9.6,9.7,9.8,9.9,10mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
なお、実施形態において、使用する発泡ビーズBの発泡倍率は10倍から50倍であるが、当該形態に限定されるものではない。具体的には例えば、10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50倍であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
3.構造体15の製造方法
本節では、前節で説明した第1の金型71及び第2の金型72を用いた構造体15の製造方法について説明する。本実施形態に係る製造方法では、補強部材13(インサート部材)と芯材12(発泡成形体)とを有する構造体15を金型(第1の金型71及び第2の金型72)で製造する。本製造方法は、取付工程と、型閉じ工程と、充填工程と、型締め工程と、成形工程と、型開放工程と、取外工程とを備える。
(取付工程)
まず、取付工程において、図4に示すように、第2の金型72に設けられている保持部9に補強部材13を取り付ける。補強部材13の取付方法は、例えばロボットアームによるものでも良いし、人の手作業によるものでも良い。
(型閉じ工程)
次に、型閉じ工程において、第1の金型71が補強部材13を保持した状態で金型を型閉じすることで、金型間に充填空間S2を形成する。型閉じ工程が完了した状態において、第2の金型72の主面721と補強部材13の対向面13fとの間には、クラッキング隙間S1が形成されている。このとき、補強部材13と入り込み防止部8における突出部材81とが接触して、クラッキング隙間S1が塞がれている。
(充填工程)
次に、充填工程において、図11Bに示すように、充填空間S2内に発泡ビーズBを充填する。このとき入り込み防止部8がクラッキング隙間S1に発泡ビーズBが入り込むことを防止する。換言すると、補強部材13と入り込み防止部8との間に発泡ビーズBは充填されない。
(型締め工程)
次に、型締め工程において、クラッキング隙間S1を無くすように金型(第1の金型71)をさらに閉じて型締めする。具体的には、第2の金型72が第1の金型71側にさらに移動する。これにより、充填空間S2の発泡ビーズBがプレスされ、充填空間S2の発泡ビーズBの充填密度が上昇する。
(成形工程)
次に、成形工程において、充填空間S2に充填された発泡ビーズBを加熱した後に冷却する。これにより、充填空間S2に充填された発泡ビーズBから芯材12を成形する。つまり、図3に示されるように芯材12と補強部材13とが一体成形された構造体15が成形される。ここで、第1の金型71には図示省略の加熱冷却機構が付設されている。加熱冷却機構は、高温の蒸気や冷水が供給可能に構成されている。加熱冷却機構の熱はキャビティ711の表面を介して充填空間S2の発泡ビーズBに伝達される。加熱冷却機構に高温の蒸気が供給されると、充填空間S2の発泡ビーズB同士が融着する。そして、加熱冷却機構に冷水が供給されると、融着した発泡ビーズが固まる。
(型開き工程)
次に、型開き工程において、第1の金型71及び第2の金型72を型開きする。
(取外工程)
その後、取外工程において、構造体15が第1の金型71及び第2の金型72から取り外される。
4.成形体1の製造
4.1 成形装置3の構成
図8は、成形体1を成形可能な成形装置3の構成を示す概要図である。図8に示す成形装置3は、一体成形体を製造する装置である。具体的には、成形装置3は、樹脂シート21,22と構造体15とを一体成形する装置である。成形装置3は押出機30と、第3の金型73及び第4の金型74と、ローラー38と、移動機構39とを備えている。押出機30は、溶融樹脂を押し出す機能を有する。成形装置3は2機の押出機30を備えている。第3の金型73及び第4の金型74は、押出機30の下側に設けられている。ローラー38は、押出機30から押し出された樹脂シート21,22を第3の金型73及び第4の金型74へ送り出す。移動機構39はローラー38を移動させる機能を有する。
押出機30は、ホッパ36と、シリンダ35と、図示省略のスクリューと、モーター37と、アキュムレータ33と、Tダイ31と、プランジャ34とを備えている。ホッパ36は樹脂ペレットの投入部である。シリンダ35はホッパ36に繋がっており、シリンダ35内にはスクリューが設けられている。モーター37はシリンダ35内に設けられているスクリューに連結されている。アキュムレータ33は樹脂を貯留する機能を有し、アキュムレータ33はシリンダ35及びTダイ31に繋がっている。プランジャ34は、アキュムレータ33内の樹脂をTダイ31へ押し出す機能を有する。
第3の金型73は、キャビティ731とピンチオフ732とを有し、第4の金型74は、キャビティ741とピンチオフ742とを有する。キャビティ731は、ローラー38から垂下する樹脂シート21が賦形される部分である。キャビティ741は、ローラー38から垂下する樹脂シート22が賦形される部分である。ピンチオフ732,742は樹脂シート21,22を切る凸状部である。
4.2 成形体1の製造方法
図9は、第3の金型73及び第4の金型74を開いた状態から、樹脂シート21及び樹脂シート22を金型形状に賦形させた態様を示す概要図である。図10は、構造体15を樹脂シート21に押し付けた態様を示す概要図である。図11は、第3の金型73及び第4の金型74を型締めして、成形体1を成形した態様を示す概要図である。
まず、樹脂シート21,22を製造するシート形成工程を説明する。ホッパ36に投入された樹脂ペレットはシリンダ35内に至る。シリンダ35の樹脂ペレットは、スクリューによって溶融され、溶融樹脂となる。溶融樹脂はアキュムレータ33に供給される。アキュムレータ33の溶融樹脂は、プランジャ34の押出作用によって、Tダイ31から押し出される。Tダイ31から押し出された樹脂シート21,22はローラー38に垂下する。以上の一連のフローが、シート形成工程である。
次に、樹脂シート21,22がローラー38の入口側から出口側へ送り出される(送出工程)。ローラー38を通過した樹脂シート21は第3の金型73のキャビティ731の内面に沿って賦形され、また、ローラー38を通過した樹脂シート22は第4の金型74のキャビティ741の内面に沿って賦形される(賦形工程)。第3の金型73にはキャビティ731に連通する図示省略の真空吸引孔が形成されている。第4の金型74にもキャビティ741に連通する図示省略の真空吸引孔が形成されている。真空吸引孔が真空吸引されることで、樹脂シート21は第3の金型73のキャビティ731の内面に沿って賦形され、樹脂シート22は第4の金型74のキャビティ741の内面に沿って賦形される(図9参照)。
構造体15を保持しているマニュピレータが、構造体15を樹脂シート21に押し付ける(貼付工程)。ここで、構造体15は発泡成形体である芯材12を有する。樹脂シート21の熱により、芯材12が樹脂シート21に溶着される。これにより、芯材12を含む構造体15は樹脂シート21に貼り付けられる。第3の金型73及び第4の金型74が型閉じされると(型閉め工程)、樹脂シート21,22は、構造体15と一体成形されて成形体1となる。その後、第3の金型73及び第4の金型74が開き(型開き工程)、バリ25を含む成形体1が第3の金型73から取り外される。バリ25はその後除去され、成形体1が製造される。
5.変形例
本節では、前述の実施形態の変形例について説明する。図12は、変形例(1)に係る入り込み防止部8の態様を示す概要図であり、図12Aは型閉じ状態、図12Bは型締め状態を示している。図13は、変形例(2)に係る入り込み防止部8の態様を示す概要図であり、図13Aは型閉じ状態、図13Bは型締め状態を示している。
(1)前述の実施形態では、入り込み防止部8は、突出部材81(可動部)とバネ部材82とを備えたスライド機構(変位部材の一例)であった。これに代えて、図10A及びBに示されるように、主面721に対する垂直方向に圧縮変形可能な圧縮変形部材(変位部材の別例)を採用してもよい。型閉め工程において、入り込み防止部8が補強部材13の対向面13fと接触した後圧縮変形する。これにより、充填工程において、クラッキング隙間S1が塞がれ、ここに発泡ビーズBは充填されない。なお、型締め工程において、入り込み防止部8は型締めに伴って更に圧縮変形し、型開き工程において、入り込み防止部8は型開きに伴って元の形状に復元する。かかる形態であれば、入り込み防止部8と第1の金型71との干渉が生じず、それに起因する製造設備の破損の発生が抑制される。また、スライド機構のスライド動作は精密性を要する為、構成部品に一定の寸法精度が求められる。可圧縮性部材による構成を用いればスライド動作は無くなり、構成部品を単純化することができる。
(2)また、図11A及びBに示されるように、主面721に対する垂直方向に常に突出した突出部材を採用してもよい。本変形例では、型閉じ工程において、クラッキング隙間S1の入り口を塞ぐことで、クラッキング隙間S1への発泡ビーズBの入り込みが防止される。なお、その後の型締め工程及び成形工程では、入り込み防止部8が突出したまま成形がなされるため、芯材12に切れ込み穴ができることに留意されたい。したがって、芯材12の強度が落ちない程度に入り込み防止部8を薄くするとよい。また、成形体1には表皮部材11が設けられるため、切れ込み穴によって意匠性を損なうことはないと考えられる。
(3)前述の実施形態では、入り込み防止部8における突出部材81が、補強部材13における対向面13fと接触することで、クラッキング隙間S1が塞がれることとなったが、入り込み防止部8が発泡ビーズBの径よりも小さくなる程度にクラッキング隙間S1を塞ぐのであれば、接触せずともよい。
6.結言
以上のように、本実施形態によれば、表面基材の外観不良を抑制した成形体1の一部である構造体15の製造方法及びその金型を実施することができる。
次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記製造方法において、前記入り込み防止部は、前記主面に対して略垂直方向に突出することで、前記型閉じ時に前記クラッキング隙間を塞ぐように構成される、方法。
前記製造方法において、前記入り込み防止部は、前記第2の金型の、前記主面に対する凹部に設けられ、前記主面に対して略垂直方向に前後移動又は変形可能な変位部材であり、前記変位部材は、前記型閉じ時には、前記主面から突出して前記クラッキング隙間を塞ぐように構成され、前記型締め時には、前記凹部にその全体が収容される、方法。
インサート部材と発泡成形体とを有する構造体を製造するための金型であって、互いに開閉可能な第1及び第2の金型を備え、前記第1の金型は、前記インサート部材を保持するように構成され、前記第2の金型は、主面を備え、ここで前記主面は、型閉じ時に前記第1の金型に保持された前記インサート部材の対向面との間にクラッキング隙間を有するように構成され、前記第2の金型は、入り込み防止部を備え、ここで前記入り込み防止部は、前記金型の充填空間に発泡ビーズを充填する際に、前記クラッキング隙間に前記発泡ビーズが入り込むことを防止するように構成される、もの。
前記金型において、前記第1の金型及び第2の金型は、前記充填空間に前記発泡ビーズが充填された状態において前記クラッキング隙間を無くすように、さらに閉じて型締め可能に構成される、もの。
前記金型において、前記入り込み防止部は、前記主面に対して略垂直方向に突出することで、前記型閉じ時に前記クラッキング隙間を塞ぐように構成される、もの。
前記金型において、前記入り込み防止部は、前記第2の金型の、前記主面に対する凹部に設けられ、前記主面に対して略垂直方向に前後移動又は変形可能な変位部材であり、前記変位部材は、前記型閉じ時には、前記主面から突出して前記クラッキング隙間を塞ぐように構成され、前記型締め時には、その全体が前記凹部に収容される、もの。
もちろん、この限りではない。
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
1 :成形体
11 :表皮部材
12 :芯材
13 :補強部材
13f :対向面
131 :フランジ部
132 :基体部
15 :構造体
21 :樹脂シート
22 :樹脂シート
25 :バリ
3 :成形装置
30 :押出機
31 :Tダイ
33 :アキュムレータ
34 :プランジャ
35 :シリンダ
36 :ホッパ
37 :モーター
38 :ローラー
39 :移動機構
71 :第1の金型
711 :キャビティ
72 :第2の金型
721 :主面
722 :コア
725 :凹部
73 :第3の金型
731 :キャビティ
732 :ピンチオフ
74 :第4の金型
741 :キャビティ
742 :ピンチオフ
8 :入り込み防止部
81 :突出部材
82 :バネ部材
9 :保持部
B :発泡ビーズ
S1 :クラッキング隙間
S2 :充填空間

Claims (2)

  1. インサート部材と発泡成形体とを有する構造体を金型で製造する製造方法であって、
    前記金型は、互いに開閉可能な第1及び第2の金型を備え、前記第2の金型は、入り込み防止部を備え、
    本製造方法は、型閉じ工程と、充填工程と、型締め工程と、成形工程とを備え、
    前記型閉じ工程では、前記第1の金型が前記インサート部材を保持した状態で前記金型を型閉じすることで、前記金型間に充填空間を形成するとともに前記第2の金型の主面と前記インサート部材の対向面との間にクラッキング隙間を形成し、
    前記充填工程では、前記充填空間内に発泡ビーズを充填し、このとき前記入り込み防止部が前記クラッキング隙間に前記発泡ビーズが入り込むことを防止し、
    前記型締め工程では、前記クラッキング隙間を無くすように前記金型をさらに閉じて型締めし、
    前記成形工程では、前記充填空間に充填された前記発泡ビーズから発泡成形体を成形し、
    前記入り込み防止部は、前記主面に対して略垂直方向に突出することで、前記型閉じ時に前記クラッキング隙間を塞ぐように構成され、
    前記入り込み防止部は、
    前記第2の金型の、前記主面に対する凹部に設けられ、
    前記主面に対して略垂直方向に前後移動又は変形可能な変位部材であり、
    前記変位部材は、
    前記型閉じ時には、前記主面から突出して前記クラッキング隙間を塞ぐように構成され、
    前記型締め時には、前記凹部にその全体が収容される、方法。
  2. インサート部材と発泡成形体とを有する構造体を製造するための金型であって、
    互いに開閉可能な第1及び第2の金型を備え、
    前記第1の金型は、前記インサート部材を保持するように構成され、
    前記第2の金型は、主面を備え、ここで前記主面は、型閉じ時に前記第1の金型に保持された前記インサート部材の対向面との間にクラッキング隙間を有するように構成され、
    前記第2の金型は、入り込み防止部を備え、ここで前記入り込み防止部は、前記金型の充填空間に発泡ビーズを充填する際に、前記クラッキング隙間に前記発泡ビーズが入り込むことを防止するように構成され、
    前記第1の金型及び第2の金型は、前記充填空間に前記発泡ビーズが充填された状態において前記クラッキング隙間を無くすように、さらに閉じて型締め可能に構成され、
    前記入り込み防止部は、前記主面に対して略垂直方向に突出することで、前記型閉じ時に前記クラッキング隙間を塞ぐように構成され
    前記入り込み防止部は、
    前記第2の金型の、前記主面に対する凹部に設けられ、
    前記主面に対して略垂直方向に前後移動又は変形可能な変位部材であり、
    前記変位部材は、
    前記型閉じ時には、前記主面から突出して前記クラッキング隙間を塞ぐように構成され、
    前記型締め時には、その全体が前記凹部に収容される、もの。
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