JP2010253721A - 射出成形用金型及び成形体 - Google Patents

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Yoshitaka Kobayashi
由卓 小林
Hironari Yamamoto
裕也 山本
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Abstract

【課題】溶融樹脂の充填圧力を過剰に高めることがなく、シルバーストリークの発生が少ない外観が良好な成形体を製造することが可能な射出成形用金型を提供すること、また、発泡体を製造する際には発泡状態が良好な発泡体を製造することが可能な射出成形用金型を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂が注入されるキャビティを形成する第1の型及び第2の型を備える射出成形用金型であって、前記第1の型及び第2の型の少なくとも一方は熱可塑性樹脂を注入するためのゲート部を有し、前記第1の型のキャビティ面及び前記第2の型の少なくとも一方の型のゲート部及びゲート部近傍のキャビティ面には、樹脂圧調整手段が設けられていることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は射出成形用金型及びこの金型を用いて得られる成形体に関する。
近年ドアトリムやインストルメントパネル等の自動車内装部品として、熱可塑性樹脂からなる射出成形体が用いられており、特に軽量化の観点から、発泡成形体が用いられている。
このような発泡成形体の製造方法としては、溶融樹脂を金型間に供給し、固化層を形成するまで冷却した後、キャビティ容積を拡大して得られる製造方法が知られている。しかしながら、成形体の表面にシルバーストリークが発生したり、発泡状態が不均一となってしまうことがある。
上記の成形体の外観不良を解決する方法として、溶融樹脂を供給開始する時のキャビティクリアランスを小さくして成形する方法が提案されている。(特許文献1参照)
特開2002−120252号明細書
射出成形では、一般に金型のキャビティクリアランスが小さくなると樹脂の流動抵抗が大きくなるため、特許文献1に記載の方法では、溶融樹脂を供給する時の充填圧力が過剰に高くなり、特に流動距離が長い場合には製品端末部にまで充填することが難しく、ショートショットになってしまう場合がある。
本発明は、溶融樹脂の充填圧力を過剰に高めることがなく、シルバーストリークの発生が少ない外観が良好な成形体を製造することが可能な射出成形用金型を提供すること、また、発泡体を製造する際には発泡状態が良好な発泡体を製造することが可能な射出成形用金型を提供すること、を目的とする。
本発明者らは、以下のような構成を採用することにより本発明の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1) 熱可塑性樹脂が注入されるキャビティを形成する第1の型及び第2の型を備える射出成形用金型であって、前記第1の型及び第2の型の少なくとも一方は熱可塑性樹脂を注入するためのゲート部を有し、前記第1の型のキャビティ面及び前記第2の型の少なくとも一方の型のゲート部及びゲート部近傍のキャビティ面には、樹脂圧調整手段が設けられていることを特徴とする射出成形用金型。
(1)の発明によれば、第1の型のキャビティ面及び第2の型の少なくとも一方の型のゲート部近傍のキャビティ面に樹脂圧調整手段を設けることにより、溶融樹脂の充填圧力を過剰に高くすることなく、溶融樹脂が射出される際に生じる樹脂圧が低下することを抑制することが可能となる。これによって得られる成形体にシルバーストリークが発生することを防止することが可能となる。
(2)前記樹脂圧調整手段は、少なくとも1つの凸部、又は稼動ブロックである(1)に記載の射出成形用金型。
(2)の発明によれば、第1の型と第2の型を締めた際、樹脂圧調整手段である凸部、又は稼動ブロックの存在により、キャビティクリアランスが小さくなる。これにより、溶融樹脂の充填圧力を過剰に高くすることなく、ゲートから流れ出た樹脂の圧力が急激に低下することを抑制することが可能となる。
また、樹脂圧調整手段を凸部又は稼動ブロックとすることにより、金型に複雑な加工を施すことなく樹脂圧を調整することが可能となる。
なお、樹脂圧調整手段として稼動ブロックを設ける場合には、稼動ブロックは樹脂射出開始時には凸形状で、供給完了時には平面に戻すような形態であることが好ましい。
(3)前記凸部又は稼動ブロックの高さは、前記キャビティのキャビティクリアランスの70%以下である(2)に記載の射出成形用金型。
(3)の発明によれば、凸部又は稼動ブロックの高さを、キャビティクリアランスの70%以下とすることにより、効率的に樹脂圧を調整することが可能となる。
(4) 前記樹脂圧調整手段は、前記ゲート部と同心に延在し、かつ、前記キャビティ面の70%以下の面積を占めるように配置されている(1)から(3)いずれかに記載の射出成形用金型。
(4)の発明によれば、樹脂圧調整手段をゲート部と同心に延在し、かつ、前記キャビティ面の70%以下の面積を占めるように配置することにより、より効率的に樹脂圧を調整することが可能となる。
(5) 前記ゲート部から、前記キャビティ面の端末部までの距離の最大長が150mm以上であることを特徴とする(1)から(4)いずれかに記載の射出成形用金型。
(5)の発明によれば、ゲート部からキャビティ面の端末部までの距離の最大長を150mm以上とすることにより、溶融樹脂充填時の充填圧力を過剰に高くすることなく、ゲートから流れ出た樹脂の圧力が急激に低下することを抑制することが可能となる。
(6) 前記ゲート部の径は、4mm以下である(1)から(5)いずれかに記載の射出成形用金型。
(6)の発明によれば、ゲート部の径を4mm以下とすることにより、溶融樹脂供給通路のノズル先端部から射出された瞬間の圧力の低下を小さくすることができる。
(7) (1)から(6)いずれかに記載の射出成形用金型を用いて得られる成形体。
本発明によれば、溶融樹脂の充填圧力を過剰に高めることがなく、シルバーストリークの発生が少ない外観が良好な成形体を製造することが可能な射出成形用金型を提供すること、また、発泡体を製造する際には発泡状態が良好な発泡体を製造することが可能な射出成形用金型を提供すること、が可能となる。
本発明に係る射出成形用金型の一例を概略断面図で示したものである。 本発明に係る射出成形用金型の他の例を概略断面図で示したものである。 従来の金型の一例を概略断面図で示したものである。
以下、本発明に係る射出成形用金型の好適な実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。また、図面に示すように、X軸及びY軸は水平面上で互いに90度をなし、以下必要な場合にX軸、Y軸を用いる。
[金型]
図1は本発明に係る射出成形用金型1(以下、金型1とする)の一例である。可動側型(第1の型)2及び固定側型(第2の型)3がX軸方向に対向して配置されている。可動側型は、図示しない型開閉機構によりX軸方向に往復動する。可動側型2と固定側型3とは、可動側型2の往復動に伴って、可動側型2と固定側型3とが接触した閉状態(図1参照)と、可動側型2と固定側型3とが離間した開状態との間を移行する。可動側型2と固定側型3とは、閉状態において、その内部に矩形板状のキャビティ7を形成する。
固定側型3には、溶融状の熱可塑性樹脂(以下、単に溶融樹脂ともいう)を供給するためのゲート部4が設けられており、溶融樹脂供給通路5に接続されている。溶融樹脂供給通路5の先端部には、その通路を遮断できるバルブピン6等の開閉機構が設けられている。バルブピン6は、X軸方向に往復運動可能であり、溶融樹脂供給時にはバルブピン6を後退させて溶融樹脂の流路を確保し、溶融樹脂の供給完了後にバルブピン6を前進させて溶融樹脂の流路を遮断することができる。バルブピン6は油圧や空気圧、電動等の駆動源(図示せず)により駆動する。このようなバルブピン6等の開閉機構を動作することにより、ゲート部4を複数有する場合には溶融樹脂の供給タイミングを自在に制御することができる。
ゲート部4の設置場所や数は、成形品の形状や大きさによって適宜決定されるが、図2のように平面部以外にゲート部を設置する場合は、平面部(Y軸)に対して角度αが30°以下の部分に設置するのが好ましい。平面部に対して30°以下に設置することにより、金型1を閉じた場合のキャビティクリアランスを平面部(Y軸)に対して必要以上に大きくなることを防止できる。これにより外観不良の発生を防止することが可能である。
可動側型2は従来の成形用金型(図3)と同様であるが、固定側型3のキャビティ面に開口したゲート部4近傍(図1中のD部又は図2中のE部)には、樹脂圧調整手段32が設けられている。この樹脂圧調整手段32は、本実施形態では固定側型3のキャビティ面に設けられているが、可動側型2のキャビティ面に設けられていても、両方の型のキャビティ面に設けられていてもよい。樹脂圧調整手段32は、少なくとも1つの凸部、又は稼動ブロックであることが好ましい。本実施形態における樹脂圧調整手段32は凸部である。これらは、可動側型2及び/又は固定側型3と一体的に形成され、隣接する周囲の部位との境界部は段差をつけずに滑らかにすることが好ましい。
樹脂圧調整手段32である凸部又は稼動ブロックの高さは、隣接する周辺のキャビティのキャビティクリアランスの70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましく、50%以下であることが更に好ましい。樹脂圧調整手段32の高さが隣接する周辺のキャビティのキャビティクリアランスの70%以上である場合には、キャビティクリアランスが小さすぎて溶融樹脂の供給が困難となってしまう。なお、ゲート部を複数有する金型についても、同様にゲート部近傍のキャビティクリアランスを隣接する周囲のキャビティクリアランスよりも小さくすることが好ましい。
本実施形態においても、樹脂圧調整手段32が設けられている部分のキャビティクリアランス(L1)は、隣接する周囲のキャビティクリアランス(L2)の30%である。
また、図1に示すように、樹脂圧調整手段32が設けられているゲート部4近傍のキャビティクリアランス(L1)は0.8mm〜1.8mm以下であることが好ましく、1mm〜1.5mm以下がより好ましい。L1を0.8mm以上とすることにより溶融樹脂の充填を容易に行うことが可能となり、1.8mm以下とすることにより、溶融樹脂の供給開始時に樹脂圧力が急激に低下して外観不良となることを防止できる。
図1において、樹脂圧調整手段32は、ゲート部4と同心に延在し、かつ、キャビティ面の70%以下の面積を占めるように配置されていることが好ましい。このような範囲とすることにより、充填圧力が急激に低下することを防止するとともに、溶融樹脂の充填圧力が過剰に高くなることを防止できる。樹脂圧調整手段32は、ゲート部4を中心として、半径Rが5mm〜50mmの範囲で設けられていることが好ましい。
ゲート部4からキャビティ7の端末部までの距離の最大長Wは150mm以上であることが好ましく、200mm以上であることがより好ましい。最大長が150mm以上とすることにより、溶融樹脂充填時の充填圧力の抑制効果を大きくすることができる。
本実施形態において、ゲート部4の径は、1mm〜4mmであることが好ましく、1.5mm〜3mmであることがより好ましい。ゲート部4の径を1mm以上とすることにより、溶融樹脂の充填を容易に行うことが可能となる。また径を4mm以下とすることにより、充填開始時の樹脂圧力の低下を小さくでき、外観不良が発生することを防止することが可能となる。ゲート部4の形状は、円形状でなく細長形状であっても構わないが、その断面積が大きくなりすぎると樹脂充填開始時の樹脂圧力の低下が大きくなるため、その単軸側の幅が0.8mm〜3mmが好ましく、0.8mm〜2mmであることがより好ましい。
金型内に設けた樹脂の供給通路を開閉するノズルの先端部(バルブピン6の先端部)からゲート部4までの距離L3は、5mm〜50mmであることが好ましく、10mm〜30mmであることがより好ましい。キャビティ面までの距離を5mm以上とすることにより、ノズル部4の熱がキャビティ面に伝達し、キャビティ面の温度が必要以上に高くなることを防止することが可能となる。また、キャビティ面までの距離が長すぎると、樹脂供給通路を開閉するノズルの先端部(バルブピン6の先端部)の径を小さくしても、抜き勾配を考慮するとゲート部4の径が大きくなってしまう。このため、L3を50mm以下とすることにより、キャビティ面におけるゲート部4の径が大きくなりすぎ、溶融樹脂充填開始時の圧力低下が大きくなって外観不良が発生してしまうことを防止することが可能となる。
[成形体の製造方法]
このような金型を用いて成形体を製造する方法を説明する。
本実施形態における成形体の製造方法では、先ず熱可塑性樹脂を用意し、図1に記載の金型1を備えた射出成形機に熱可塑性樹脂を投入する。そして、射出成形用金型1の可動側型2と固定側型3とを閉状態にした後、射出装置によって溶融樹脂をキャビティ7へ向けて射出する。注入された溶融樹脂は、溶融樹脂供給通路5及びゲート部4を通ってキャビティ7内に広がっていく。キャビティ7内ではゲート部4から樹脂圧調整手段32を通過し、キャビティ7の端末部に向かって流れ込み、キャビティ7を満たしていく。その後キャビティ7内に充填された溶融樹脂を所定時間冷却して、可動側型2を可動させて開状態とし、成形体を取り出す。
溶融樹脂に発泡剤が添加されている場合には、キャビティ7内に充填された溶融樹脂を所定時間冷却した後に、可動側型2を後退させて発泡させることが好ましい。
また、キャビティ7内に充填された溶融樹脂を冷却する前に、所定圧力で当該溶融樹脂を保圧してもよい。その際の圧力は、射出成形機における最大圧力の5%以上の圧力であることが好ましい。
溶融樹脂を射出、充填する時の金型キャビティクリアランスは、溶融樹脂が射出されるゲート部4近傍のキャビティクリアランスが、隣接する周囲のキャビティクリアランスよりも小さいため、溶融樹脂が射出される時の樹脂圧力の低下が抑制され、シルバーストリーク等の外観不良が発生しにくくなる。また、隣接する周囲のキャビティクリアランスを大きくしているため、樹脂の充填圧力が高くなるのを抑制することができる。
溶融樹脂を充填するときのキャビティ7内の圧力は、特に限定されるものではないが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは大気圧未満である。キャビティ7内の圧力を大気圧以下とする方法としては、少なくとも一方の金型として真空吸引可能な金型を用い、予めキャビティ7内を真空吸引しておく方法や、少なくとも一方の金型としてガス抜き機構を有する金型を用いて、キャビティ7中に溶融樹脂を供給する際に発生する圧力をガス抜き機構によりキャビティ7外へ開放することによりキャビティ7内の圧力を大気圧と同等とする方法等が挙げられる。
キャビティ7内の圧力を大気圧以下の圧力とした状態で、溶融樹脂を充填すると、溶融樹脂とキャビティ7の壁面との間にガスが入り込むことが防止できるため、得られる成形体の表面に凹みのない外観良好なものとなる。キャビティ7内の圧力を大気圧以下の圧力とすることは、溶融樹脂が発泡剤を含む場合に特に有効である。
金型のガス抜き機構としては、射出成形等で一般に用いられる公知のガス抜き方法を利用することができる。例えば、金型キャビティの外周部分に、溶融樹脂は流動しないが、ガスは通過できる程度の浅い溝を設け、キャビティからガスを排出する方法、成形体の反意匠面となる側に所定の隙間を有する入れ子やピンを設けガスを排出する方法、キャビティ面の少なくとも一部に多孔質素材の部分を設け、その部分を介してガスを排出する方法などが挙げられ、コストや金型メンテナンスの観点から、金型キャビティ外周部分に溝を設けるか、所定の隙間を有する入れ子やピンを設ける方法が好ましい。
ガス抜き機構を設ける位置は製品形状によって適宜決定されるが、成形体の外観への影響が少ないキャビティの端部や、パーティングライン、雌雄一対からなる金型の場合には、その摺動部に設けることが好ましい。
キャビティ7内に充填される溶融樹脂は、キャビティ7の容積よりも少ない容積であっても、同じ容積であっても、多い容積であっても構わないが、得られる成形体に外観不良が発生することを防止する観点から、キャビティ7の容積の80%以上であることが好ましい。樹脂の充填量がキャビティ7の容積よりも少ない場合には、供給後又は供給中にキャビティ7の容積を減少させることが好ましい。
キャビティ7内に発泡剤を含む溶融樹脂を射出、充填する方法は特に限定されるものではなく、単軸射出、多軸射出、高圧射出、低圧射出、プランジャーを用いる射出方法等が挙げられる。
溶融樹脂を射出する時の温度条件は、射出成形機のシリンダ温度が150℃〜300℃、好ましくは180℃〜270℃であり、より好ましくは200℃〜260℃であり、キャビティ温度が0℃〜100℃、好ましくは20℃〜80℃、より好ましくは40℃〜60℃である。
シリンダ温度を150℃以上とすることによって溶融樹脂をキャビティ内に充填しやすくなる。また、シリンダ温度を300℃以下にすることによって溶融樹脂が熱により劣化し、得られる成形体の機械物性が低下してしまうことを防止することが可能である。
また、キャビティ温度(金型温度)を0℃以上とすることにより、キャビティ面に結露が発生することを防止することが可能となる。
キャビティ7内に充填された溶融樹脂を冷却する冷却時間は10秒〜60秒であることが好ましく、10秒〜40秒であることがより好ましい。
溶融樹脂に発泡剤が添加されている場合には、キャビティ7内に充填された溶融樹脂を所定時間冷却し、キャビティ面に接している部分を固化させる。
発泡剤を含む溶融樹脂の容積がキャビティ7の容積よりも少なく、発泡圧力によってキャビティ7内を満たしている場合は、そのまま冷却を行い溶融樹脂全体を固化させて発泡成形体を得てもよいが、キャビティ面に接した表層部分が固化した後にキャビティ7の容積を拡大することが好ましい。キャビティ容積を拡大することで未固化部分が発泡して、発泡倍率を高くでき、軽量化効果を大きくできる。
キャビティ容積を拡大する量は特に制限はなく、所望の発泡倍率が得られるように拡大すればよいが、ゲート部近傍のキャビティクリアランス(L1)の0.5倍〜5倍が好ましく、1倍〜4倍がより好ましい。キャビティ容積を拡大する量(L4)を0.5倍以上とすることにより、発泡倍率を大きくし、軽量化効果が期待できる。また、発泡倍率を5倍以下とすることにより、得られる成形体の強度が低下することを防止することが可能となる。
キャビティ7の容積の拡大は、溶融樹脂の未固化部分が発泡層のセルを形成するのに適した温度となった時点で拡大する必要がある。この温度が高すぎると樹脂中に溶解している発泡剤の発泡圧力により粗大セルが形成されやすくなり、物性低下の虞がある。また、この温度が低すぎると樹脂の溶融粘度が低下し所望の発泡倍率が得られなくなってしまう。この未固化部分の温度は、発泡剤を含む溶融状熱可塑性樹脂の充填完了からキャビティ容積を拡大するまでの時間(以下、遅延時間と称する)を制御することで調整可能である。
具体的には、発泡剤として化学発泡剤を用いる場合は、遅延時間を0.1秒〜5秒とすることが好ましいが、用いる熱可塑性樹脂の種類や射出機のシリンダ温度設定により適宜調整される。発泡剤として物理発泡剤を用いる場合は、未固化部分の最高温度が、用いる熱可塑性樹脂の(結晶化温度−15℃)以上、(結晶化温度+15℃)以下となるように遅延時間を調整することが好ましい。
キャビティ7の容積を拡大させる方法としては、例えば、可動側型3を後退させてキャビティ7を拡大する方法、スライドコアを用いて部分的及び/又はキャビティ7の全体を拡大する方法が挙げられる。なお、スライドコアは、可動側型2又は固定側型3のどちらかに設けられている可動ブロックであり、溶融樹脂の充填時はキャビティ面と略面一であり、遅延時間後に可動させることによりキャビティクリアランスを部分的に拡大させるものをいう。
キャビティ7の容積を拡大した後は、そのまま冷却を行い、発泡層を固化させてもよいが、容積を若干縮小しても構わない。容積を縮小することで成形体表面に凹凸が生じた場合に、その凹凸を目立ち難くすることができる。
本実施形態の金型を用いて成形される成形体に使用される熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエンブロック共重合体、ポリスチレン、ナイロン等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の一般的な熱可塑性樹脂、EPM、EPDM等の熱可塑性エラストマー、これらの混合物、これらを用いたポリマーアロイ等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂は発泡剤を含有していてもよい。本発明で使用される発泡剤は特に限定されるものではなく、公知の化学発泡剤や物理発泡剤を用いることができる。このうち、物理発泡剤を用いることが好ましい。発泡剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、0.2質量%質量%〜8質量%であることがより好ましい。
化学発泡剤は、熱可塑性樹脂の溶融温度未満では分解せず、熱可塑性樹脂の溶融温度以上で分解又は反応するものであれば特に限定されず、無機化合物であっても有機化合物であってもよく、これらは単独又は2種以上を併用して用いてもよい。無機化合物としては、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩、炭酸アンモニウムなどが挙げられる。有機化合物としては、ポリカルボン酸、アゾ化合物、スルホンヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、p−トルエンスルホニルセミカルバジド、イソシアネート化合物などが挙げられる。ポリカルボン酸としては、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、フタル酸などが挙げられる。アゾ化合物としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)などが挙げられる。スルホンヒドラジド化合物としては、p−メチルウレタンベンゼンスルホニルヒドラジド、2,4−トルエンジスルホニルヒドラジド、4,4´−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドなどが挙げられる。ニトロソ化合物としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)などが挙げられる。これらは単独又は2種以上を併用して用いてもよい。
熱可塑性樹脂に化学発泡剤を含有させる方法としては、化学発泡剤を高濃度に含有させたマスターバッチを作成し、原料となる熱可塑性樹脂と予め混合し、射出機のホッパーに投入して、熱可塑性樹脂中と均一に混合して含有させるのが一般的である。
物理発泡剤としては、窒素、二酸化炭素、アルゴン、ネオン、ヘリウム等の不活性ガス、ブタン、ペンタン等のフロン系以外の揮発性有機化合物などが挙げられる。このうち、二酸化炭素、窒素、あるいはこれらの混合物を使用することが好ましい。これらは単独又は2種以上を併用して用いてもよい。物理発泡剤と化学発泡剤は併用してもよく、その場合化学発泡剤の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1質量部〜1質量部である。
発泡剤として、物理発泡剤を用いる場合には、超臨界状態で溶融状熱可塑性樹脂に混合することが好ましい。超臨界状態の物理発泡剤は樹脂への溶解性が高く、短時間で溶融状熱可塑性樹脂中に均一に拡散することができるため、発泡倍率が高く、均一な発泡セル構造をもつ発泡成形体を得ることができる。
熱可塑性樹脂に物理発泡剤を含有させる方法としては、物理発泡剤を射出成形装置のノズル又はシリンダ内に注入する方法が挙げられる。溶融樹脂と物理発泡剤とを均一に混合しやすいことから、シリンダ内に物理発泡剤を注入する方法が好ましい。
また、発泡剤以外に必要に応じてガラス繊維、各種の無機、有機フィラー等の充填材等を含有していてもよい。また、フェノール系、有機ホスファイト系、有機リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系等の熱安定剤;ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系等の紫外線吸収剤;ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の帯電防止剤;ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;塩素補足剤;アミド系、ワックス系、有機金属塩系、エステル系等の滑剤;オキシド系、ハイドロタルサイト系等の分解剤;ヒドラジン系、アミン系等の金属不活性剤;含臭素有機系、リン酸系、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、赤リン等の難燃剤;有機顔料;無機顔料;有機充填剤;タルク、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ウォラストナイト、硫酸バリウム、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ、ケイ酸カルシウム、チタン酸カリウム等の無機充填剤;金属イオン系などの無機、有機抗菌剤、有機リン酸系、ソルビトール系化合物などの結晶核剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
また、本発明により得られる成形体に、インサート成形、接着などの方法により表皮材を貼合して加飾成形体とすることもできる。
表皮材としては、公知の表皮材を使用できる。具体的には、織布、不織布、編布、熱可
塑性樹脂ないし熱可塑性エラストマーにて形成されたフィルム、シートが例示される。前
記表皮材に、ポリウレタン、ゴム、熱可塑性エラストマー等の非発泡シートを積層した複
合表皮材を使用してもよい。また、クッション層を有する表皮材を用いてもよい。かかる
クッション層を構成する材料としては、ポリウレタンフォーム、EVAフォーム、ポリプ
ロピレンフォーム、ポリエチレンフォーム等が例示される。
本発明の射出成形用金型によれば、溶融樹脂の充填圧力を過剰に高くすることなく、発泡状態が良好で、かつ、シルバーストリークの発生が少なく外観良好な熱可塑性樹脂発泡成形体を製造することができる。
1 金型
2 固定側型
3 可動側型
32 樹脂圧調整手段
4 ゲート部
5 溶融樹脂供給通路
6 バルブピン
7 キャビティ

Claims (7)

  1. 熱可塑性樹脂が注入されるキャビティを形成する第1の型及び第2の型を備える射出成形用金型であって、
    前記第1の型及び第2の型の少なくとも一方は熱可塑性樹脂を注入するためのゲート部を有し、
    前記第1の型のキャビティ面及び前記第2の型の少なくとも一方の型のゲート部及びゲート部近傍のキャビティ面には、樹脂圧調整手段が設けられていることを特徴とする射出成形用金型。
  2. 前記樹脂圧調整手段は、少なくとも1つの凸部、又は稼動ブロックである請求項1に記載の射出成形用金型。
  3. 前記凸部又は稼動ブロックの高さは、前記キャビティのキャビティクリアランスの70%以下である請求項2に記載の射出成形用金型。
  4. 前記樹脂圧調整手段は、前記ゲート部と同心に延在し、かつ、前記キャビティ面の70%以下の面積を占めるように配置されている請求項1から3いずれかに記載の射出成形用金型。
  5. 前記ゲート部から、前記キャビティ面の端末部までの距離の最大長が150mm以上であることを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の射出成形用金型。
  6. 前記ゲート部の径は、4mm以下である請求項1から5いずれかに記載の射出成形用金型。
  7. 請求項1から6いずれかに記載の射出成形用金型を用いて得られる成形体。
JP2009104039A 2009-04-22 2009-04-22 射出成形用金型及び成形体 Pending JP2010253721A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2018034420A (ja) * 2016-08-31 2018-03-08 積水テクノ成型株式会社 射出発泡成形用金型

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