JP7478051B2 - 乗客コンベアの診断装置および乗客コンベア - Google Patents
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Description
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、駆動モータと同期して回転する駆動部ターミナルギアと、所定間隔で複数の踏段が固定された無端状の踏段チェーンと、前記駆動部ターミナルギアとの間で前記踏段チェーンが掛け回されたことで前記駆動部ターミナルギアと同期して回転し、前記踏段チェーンの伸びに対応して前記駆動部ターミナルギアに対する位置を変位させる従動部ターミナルギアとを備えた乗客コンベアの診断装置であって、前記従動部ターミナルギアの基準位置からの変位を検出する変位検出器と、前記踏段チェーンの回動による前記複数の踏段の移動距離を検出する移動距離検出器と、前記複数の踏段の周回軌道に沿って配置され、前記複数の踏段のうちの少なくとも任意の踏段の通過を検出する踏段通過検出器と、前記踏段通過検出器において前記任意の踏段の通過を検出するのに同期させて、前記移動距離検出器で検出した前記踏段の移動距離に対する前記変位検出器で検出した前記従動部ターミナルギアの変位の測定を開始するデータ取得部と、前記データ取得部で取得した前記移動距離と前記変位とから、前記踏段チェーンの部分伸びの発生を検知するチェーン伸び診断部とを備えた乗客コンベアの診断装置の構成が例示される。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下側の実施の形態の説明により明らかにされる。
図1は、実施形態に係る乗客コンベアの構成図である。図1に示す乗客コンベア1は、建築構造体の上階床と下階床との間に架け渡して設けられたものであり、乗客を高さ方向に運搬する。このような実施形態の乗客コンベア1は、階床間に掛け渡されたフレーム100を備え、以下に説明する各要素がフレーム100に支持される状態で配置されている。
次に以上のように構成された乗客コンベア1が有する診断装置20の構成を、図1および図2と、必要に応じて他の図を参照して説明する。診断装置20は、乗客コンベア1の踏段チェーン9の伸びを診断するための装置であって、変位検出器21、移動距離検出器22、踏段通過検出器23、検出体24(図3を用いて説明)、および診断部25によって構成されている。これらは、次のようなものである。
変位検出器21は、一対の従動部ターミナルギア8のそれぞれに対応して設けられたものであり、各従動部ターミナルギア8の基準位置に対する変位を検出する。ここで基準位置とは、例えば踏段チェーン9が新しいものであって、全体伸びおよび部分伸びが無い状態で、かつ乗客コンベア1に乗客が乗っていない場合の位置であることとする。この変位検出器21は、従動部ターミナルギア8に固定された引っ張り軸11の他端11b側の延設方向に配置され、引っ張り軸11の他端11bの軸方向の変位を検出する。これにより、駆動部ターミナルギア7方向に対する従動部ターミナルギア8の変位(以下、ギア変位と記す)を検出し、踏段チェーン9の全体的な伸びを検出することができる。
移動距離検出器22は、踏段10の移動距離を検出するためのものである。この移動距離検出器22は、例えば駆動モータ2の回転軸に取り付けられたエンコーダーであってよく、駆動モータ2の回転数によって踏段10の移動距離を検出する。
踏段通過検出器23は、各踏段10が周回軌道の所定位置を通過したことを検知するためのものである。このような踏段通過検出器23は、例えば金属材料を検知する磁気誘導式の変位検出器(Magnet-Inductive desplacement Sensor:MDS)であってよい。またこのような踏段通過検出器23は、踏段10の周回軌道に沿って、踏段10の両側に配置されている。
図3は、踏段10と踏段通過検出器23の周辺部分の拡大図である。先ず、検出体24の説明に先立ち、各踏段10の構成を説明する。この図に示すように各踏段10は、踏み板10aと、踏み板10aの端縁から略垂直に延設された蹴上げ板10bとを備える。また各踏段10は、その両端にて前輪10cと後輪10dとを備える。前輪10cは、踏段チェーン9(図1参照)の軌道に沿ってフレーム100に固定された前輪案内レール101内を走行する。また後輪10dは、踏段チェーン9(図1参照)の軌道に沿ってフレーム100に固定された後輪案内レール102内を走行する。
診断部25(図1参照)は、トルク制御装置5、変位検出器21、移動距離検出器22、および踏段通過検出器23からの情報に基づいて、踏段チェーン9の伸びの診断を実施する。このような診断部25は、計算機によって構成されている。計算機は、いわゆるコンピューターとして用いられるハードウェアである。計算機は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)やHDD(hard disk drive)のような不揮発性の記憶部を備えている。また診断部25は、ネットワークインターフェースを備え、トルク制御装置5、変位検出器21、移動距離検出器22、および踏段通過検出器23の各部からの情報を取得する構成であってもよく、さらに遠隔監視装置200に対して信号を送信する。
運転状態判定部25aは、トルク制御装置5からの情報に基づいて、乗客コンベア1の運転状態の判断を実施する。ここでトルク制御装置5は、乗客コンベア1への乗客の乗降によって、駆動モータ2に対する負荷が変化しても、踏段10の移動速度を一定に保つために、駆動モータ2のトルク制御を行う。したがって運転状態判定部25a、トルク制御装置5による出力情報を読み込んで、乗客コンベア1が運転中であるか否か、および運転中の乗客コンベア1に乗客が乗車しているか否かの判定を行う。なお、この運転状態判定部25aによる判定の手順は、後の乗客コンベアの診断方法において説明する。
データ取得部25bは、変位検出器21、移動距離検出器22、および踏段通過検出器23から、踏段チェーン9の伸びの診断に必要なデータを所定のタイミングで取得し、取得したデータを格納する。なお、このデータ取得部25bによるデータ取得の手順は、後の乗客コンベアの診断方法において説明する。
チェーン伸び診断部25cは、データ取得部25bに格納されているデータに基づいて、踏段チェーン9のチェーン伸びの診断を実施する。チェーン伸び診断部25cによる診断は、変位検出器21で検出したギア変位と、移動距離検出器22で検出した踏段10の移動距離とに基づいて実施される。チェーン伸び診断部25cによる診断は、踏段チェーン9の部分伸びの検出と部分伸びの発生箇所の検出、および踏段チェーン9の全体伸びの検出である。なお、このチェーン伸び診断部25cによる診断の手順は、後の乗客コンベアの診断方法において説明する。
報知部25dは、チェーン伸び診断部25cでの診断の結果を、外部装置としての遠隔監視装置200に報知する。
図5は、実施形態に係る乗客コンベアの診断方法を示すフローチャートである。このフローチャートは、診断部25が有する診断プログラムによって実施される乗客コンベアの踏段チェーンの伸び診断方法の手順を示している。以下、図5のフローチャートに沿って、先の図1~図4、および必要に応じた他の図を参照しつつ、実施形態の診断方法を説明する。なお、乗客コンベア1は、上述した用に一対の踏段チェーン9を備えるが、診断部25は、以下のステップを一対の踏段チェーン9のそれぞれに対して同時に実施し、踏段チェーン9の片伸びの診断も実施する。
ステップS1において、運転状態判定部25aは、例えばトルク制御装置5からの情報に基づいて、乗客コンベア1が運転中か否かを判断する。この診断は、乗客コンベア1が運転中に実施される診断である。このため運転状態判定部25aは、運転中である(YES)と判断するまで判断を繰り返し、運転中である(YES)と判断した場合に次のステップS2に進む。
ステップS2において、運転状態判定部25aは、トルク制御装置5からの情報に基づいて、乗客コンベア1への乗客の乗り込みがないことを判断する。この診断は、乗客コンベア1に乗客が乗車している場合には、従動部ターミナルギア8の位置が変位して診断結果に対する外乱の影響が大きくなる。このため、運転状態判定部25aは、乗客の乗り込みがない(YES)と判断するまで判断を繰り返し、乗客の乗り込みがない(YES)と判断した場合に次のステップS3に進む。
ステップS3において、データ取得部25bは、乗客コンベア1の踏段チェーン9の伸びの診断を開始する。
ステップS4において、データ取得部25bは、踏段通過検出器23からの情報に基づいて、踏段通過検出器23が起点踏段10’の通過を検出したか否かを判断する。起点踏段10’の検出は、踏段通過検出器23からの検出信号のピーク幅によって判断される。データ取得部25bは、幅広のピーク幅P’(図4参照)の検出信号を検知したことで、起点踏段10’を検出した(YES)と判断されるまで判断を繰り返す。そして、検出した(YES)と判断した場合にステップS5に進む。
ステップS5において、データ取得部25bは、踏段移動距離とギア変位の測定を開始する。この際、データ取得部25bは、ステップS4のいての起点踏段10’による起点踏段10’の検出を起点踏段10’の周回開始とし、これに同期させて、変位検出器21によるギア変位の測定を開始する。また、データ取得部25bは、起点踏段10’の周回開始に同期させて、移動距離検出器22による踏段移動距離の測定を開始する。
ステップS6において、データ取得部25bは、踏段通過検出器23からの情報に基づいて、起点踏段10’が踏段チェーン9の周回軌道を1周したか否かを判断する。データ取得部25bは、ステップS4の判断の後、踏段通過検出器23が起点踏段10’の通過を、次に検出した場合に、起点踏段10’が1周した(YES)と判断して次のステップS7に進む。
ステップS7において、データ取得部25bは、起点踏段10’が1周する間に取得した踏段移動距離とギア変位との取得データを格納する。この際、データ取得部25bは、起点踏段10’の周回開始に同期させ、踏段移動距離に対するギア変位として取得データを格納する。
ステップS8において、チェーン伸び診断部25cは、データ取得部25bに格納されたデータに基づき、ギア変位の平均値[dav]は、予め設定されている第1の閾値[th1]以上であるか否かを判断する。図6は、初期状態においての踏段移動距離とギア変位との関係を示す図であって、データ取得部25bに格納されたデータである。ここで初期状態とは、例えば踏段チェーン9が新しいものであって、全体伸びおよび部分伸びが無い状態であることとする。図6に示すように、第1の閾値[th1]は、初期状態におけるギア変位の平均値[dav]よりも大きな値であって、ギア変位の平均値[dav]の許容上限値を示す。ここで、ギア変位は、駆動部ターミナルギア7方向に対する従動部ターミナルギア8の変位であって、従動部ターミナルギア8が駆動部ターミナルギア7から遠ざかる方向への変位をプラスとしている。
ステップS9において、報知部25dは、遠隔監視装置200に対して踏段チェーン9の全体伸びを報知する。これにより、遠隔監視装置200の監視員が、踏段チェーン9の全体伸びを検知し、この全体伸びを階床するための踏段チェーン9のメンテナンスを行うことができる。
一方、ステップS10において、チェーン伸び診断部25cは、データ取得部25bに格納されたデータに基づき、ギア変位のピーク高さ[dp]は、予め設定されている第2の閾値[th2]以上であるか否かを判断する。図8は、踏段チェーン9に部分的な伸びが発生している場合の踏段移動距離とギア変位との関係を示す図である。この図8は、乗客コンベア1の運転を開始してから積算したt時間経過後の診断において、データ取得部25bに格納されたデータの一例であって、踏段移動距離とギア変位との関係を示している。図8に示す第2の閾値[th2]は、ギア変位がピークを有する場合に、ピーク高さ[dp]の許容上限値を示す。なお、第2の閾値[th2]は、実験的に設定された値であって、図示したように第1の閾値[th1]よりも大きな値であるか、または同じ値であってもよく、第1の閾値[th1]よりも小さな値であってもよい。
ステップS11において、チェーン伸び診断部25cは、ピーク高さ[dp]が第2の閾値[th2]以上であると判断した全てのピークについて、前回の診断においても同様のピークが検出されているか否かを判断する。ここで同様のピークとは、同一の踏段移動距離[x]で、第2の閾値[th2]以上の高さのピークである。チェーン伸び診断部25cは、データ取得部25bに格納された前回の取得データを参照してこの判断を実施する。ここで前回の取得データは、以降に説明するステップS13で格納されたデータであることとする。
ステップS12において、報知部25dは、遠隔監視装置200に対して踏段チェーン9の部分伸びを報知する。この際、報知部25dは、連続して第2の閾値[th2]以上の高さが検出された全てのピークの踏段移動距離[x]を報知する。これにより、遠隔監視装置200の監視員が、踏段チェーン9の部分伸びを検知し、この部分伸びを解消するための踏段チェーン9のメンテナンスを行うことができる。
ステップS13において、チェーン伸び診断部25cは、取得データを測定日時と対応付けて格納する。この場合、過去に格納した取得データを消去し、必要範囲で最新の取得データのみを格納するようにしてもよい。その後、一連の処理を終了させる。
以上説明した実施形態によれば、起点踏段10’の周回に同期させて踏段の移動距離に対する従動部ターミナルギア8のギア変位を測定することにより、ギア変位が瞬間的に急変する位置を、踏段チェーン9の部分伸びの発生位置に精度良く対応させることができる。また、またギア変位は、踏段チェーン9の伸びを直接的に示す値であるため、外乱を取り除いて踏段チェーン9の部分伸びの発生を高精度に検知することができ、かつ部分伸びの発生位置を高精度に検知することが可能である。またこれにより、乗客コンベア1における踏段チェーン9のメンテナンスが容易となる
以上説明した実施形態において、ステップS6では起点踏段10’が1周したか否かを判断する構成とした。しかしながら、乗客コンベア1に乗客が搭乗しない条件下であれば、ステップS6では、起点踏段10’が2周以上の所定回数を周回したか否かを判断することとしてもよい。この場合、ステップS11では、各周回においての同一の踏段移動距離[x]で、第2の閾値[th2]以上の高さのピークが測定されているか否かを判断すればよい。この場合、ステップS13は必要に応じて実施すればよい。
Claims (10)
- 駆動モータと同期して回転する駆動部ターミナルギアと、
所定間隔で複数の踏段が固定された無端状の踏段チェーンと、
前記駆動部ターミナルギアとの間で前記踏段チェーンが掛け回されたことで前記駆動部ターミナルギアと同期して回転し、前記踏段チェーンの伸びに対応して前記駆動部ターミナルギアに対する位置を変位させる従動部ターミナルギアとを備えた乗客コンベアの診断装置であって、
前記従動部ターミナルギアの基準位置からの変位を検出する変位検出器と、
前記踏段チェーンの回動による前記複数の踏段の移動距離を検出する移動距離検出器と、
前記複数の踏段の周回軌道に沿って配置され、前記複数の踏段のうちの少なくとも任意の踏段の通過を検出する踏段通過検出器と、
前記踏段通過検出器において前記任意の踏段の通過を検出するのに同期させて、前記移動距離検出器で検出した前記踏段の移動距離に対する前記変位検出器で検出した前記従動部ターミナルギアの変位の測定を開始するデータ取得部と、
前記データ取得部で取得した前記移動距離と前記変位とから、前記踏段チェーンの部分伸びの発生を検知するチェーン伸び診断部とを備えた
乗客コンベアの診断装置。 - 前記チェーン伸び診断部は、前記データ取得部で取得した前記移動距離に対する前記変位に、予め設定された閾値以上の高さのピークが発生した場合に、前記踏段チェーンに部分伸びが発生したと判断する
請求項1に記載の乗客コンベアの診断装置。 - 前記チェーン伸び診断部は、前記踏段の周回においての前記移動距離が同一の位置で、連続して前記ピークが発生した場合に、前記踏段チェーンの部分伸びが発生したと判断する
請求項2に記載の乗客コンベアの診断装置。 - 前記チェーン伸び診断部は、前記移動距離における前記ピークの発生位置に基づいて、前記踏段チェーンの部分伸びが発生した位置を特定する
請求項2に記載の乗客コンベアの診断装置。 - 前記チェーン伸び診断部は、前記変位の平均値が、前記平均値に対して設定した閾値以上となった場合に、前記踏段チェーンの全体伸びが発生したと判断する
請求項1に記載の乗客コンベアの診断装置。 - 前記駆動モータのトルク指令値を可変制御するトルク制御装置からの情報に基づいて、前記乗客コンベアの運転状態を判定する運転状態判定部を備え、
前記データ取得部は、前記運転状態判定部において前記乗客コンベアに乗客が乗車していないと判断した場合に、前記測定を開始する
請求項1に記載の乗客コンベアの診断装置。 - 前記任意の踏段は、前記踏段通過検出器によって検出される部分において、前記踏段通過検出器による検出信号を他の踏段の検出信号と差別化する形状を有する
請求項1に記載の乗客コンベアの診断装置。 - 前記データ取得部は、前記踏段通過検出器で検出した前記複数の踏段の検出信号の数に基づいて、前記任意の踏段の周回を検出する
請求項1に記載の乗客コンベアの診断装置。 - 前記移動距離検出器は、前記駆動モータに設けられたエンコーダーである
請求項1に記載の乗客コンベアの診断装置。 - 請求項1~9のうちの何れか1項に記載の乗客コンベアの診断装置を備えた
乗客コンベア。
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