JP7476768B2 - テンプ、ムーブメント、機械式時計およびテンプの製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1では、これにより、ひげゼンマイをグロスマン型の形状にすることを可能とすることで、等時性を改善できるようにしている。
以下、本開示の一実施形態に係る機械式時計1について、図面に基づいて説明する。
図1は、機械式時計1を示す正面図であり、図2は、ムーブメント10を示す正面図である。
図1、2に示すように、機械式時計1は、ユーザーの手首に装着される腕時計であり、円筒状の外装ケース2を備える。そして、外装ケース2の内周側には、文字板3が配置されている。外装ケース2の二つの開口のうち、表面側の開口は、カバーガラスで塞がれており、裏面側の開口は裏蓋で塞がれている。
時針4A、分針4B、秒針4C、およびパワーリザーブ針5は、ムーブメント10の指針軸に取り付けられ、ムーブメント10により駆動される。
文字板3には、カレンダー小窓3Aが設けられており、カレンダー小窓3Aから、日車6が視認可能となっている。
りゅうず7を0段位置で回転すると、後述するように、ぜんまいを巻き上げることができる。ぜんまいの巻上げに連動して、パワーリザーブ針5が移動する。本実施形態の機械式時計1は、ぜんまいをフルに巻き上げた場合に、約40時間の持続時間を確保できる。
りゅうず7を1段位置に引いて回転すると、日車6を移動して日付を合わせることができる。りゅうず7を2段位置に引くと秒針4Cが停止し、2段位置でりゅうず7を回転すると、時針4A、分針4Bが移動して時刻を合わせることができる。
ムーブメント10は、地板11、一番受け12、テンプ受け13を備えている。地板11と一番受け12との間には、ゼンマイが収納された香箱車21と、図示略の二番車と、三番車23と、四番車24と、ガンギ車25とが配置されている。また、地板11とテンプ受け13との間には、アンクル26、調速機27等が配置されている。そして、本実施形態では、調速機27は、テンプ400を備える。
手巻き機構30は、一番受け12に回転自在に軸支された、巻真31、つづみ車32、きち車33、丸穴車40、第1中間車51、第2中間車52を備え、りゅうず7の回転操作による回転を、角穴車60に伝達し、角穴車60および香箱真を回転させてぜんまいを巻き上げるものである。なお、丸穴車40は、きち車33に噛み合う第1丸穴車41と、第1丸穴車41と一体に回転して第1中間車51に噛み合う第2丸穴車42とで構成されている。
図3は、テンプ400を示す正面図である。
図3に示すように、テンプ400は、天真410、天輪420、ひげ玉440、ひげぜんまい70を備えて構成される。
天真410は、地板11およびテンプ受け13に回転自在に支持されている。なお、地板11およびテンプ受け13は、本開示の支持部材の一例である。
天真410には、天輪420、ひげ玉440等が固定され、これらが一体で回転するように構成されている。ひげぜんまい70は、その内端部71がひげ玉440に固定され、外端部74は、図示略のヒゲ持に固定されている。ヒゲ持はテンプ受け13に固定されている。
図4は、図3の一部を拡大した平面図である。
図3、4に示すように、ひげぜんまい70は、金属製で板状の弾性材料、具体的には、Cr,Ni,Co等を含む合金であるコエリンバー等を板状にした弾性材料により形成されている。
本実施形態では、ひげぜんまい70は、内端部71と、第1巻回部72と、第2巻回部73と、外端部74とを備える。
第1巻回部72は、内端部71から連続して形成されている。本実施形態では、第1巻回部72は、天真410の軸方向から見た平面視で、グロスマン型の形状に沿って形成されている。
具体的には、第1巻回部72は、図4において、第1巻回部72および第2巻回部73の接続点Eと天真410の中心点Cとを結ぶ仮想線分Nに直交する仮想線分M上であって、天真410の中心点Cのからの長さQが以下の式(1)を満たす仮想点Pに重心がくるように、形成されている。
ここで、本実施形態では、第1巻回部72は、長さLが後述する外周形状部443の長さよりも僅かに短くなるように構成されている。
外端部74は、第2巻回部73から連続して形成されており、図示略のひげ持ちに固定されている。すなわち、ひげぜんまい70は、内端部71がひげ玉440に固定され、外端部74が図示略のヒゲ持に固定されている。
図5は、ひげ玉440を示す断面図であり、図6は、ひげ玉440を示す斜視図である。
図3~図6に示すように、ひげ玉440は、天真410に固定されている。本実施形態では、ひげ玉440は、ひげ玉本体部441と、固定部442と、外周形状部443と、天真挿入孔444と、重心調整部445と、支持部446と、を備える。
さらに、本実施形態では、ひげ玉本体部441には、肉厚が薄くされた薄肉部4411が形成されている。これにより、天真410を天真挿入孔444に挿入させた際に、ひげ玉440が天真410に固定される際のトルクが強すぎる場合は、当該薄肉部4411が割れることによって、当該トルクを適正な値に調整することができる。そのため、振り石(図示略)との回転位相を合わせるために、天真410に対してひげ玉440を回転させる際のトルクを安定させることができる。なお、天真410を天真挿入孔444に挿入させた際の上記トルクが適正な場合は、薄肉部4411は割れないように構成されている。
第1当接部4421は、内端部71の第1巻回部72側の位置において、内端部71の一方の面に当接している。また、第2当接部4422は、内端部71の略中央部付近において、内端部71の他方の面に当接している。そして、第3当接部4423は、内端部71の内端側の位置において、内端部71の一方の面に当接している。すなわち、本実施形態では、固定部442は、内端部71の一方の面に第1当接部4421および第3当接部4423が当接し、内端部71の他方の面に第2当接部4422が当接することで、第1当接部4421、第2当接部4422、第3当接部4423にて内端部71を挟み込むことにより、内端部71を固定している。
ここで、前述したように、天真挿入孔444がひげ玉本体部441の中心点Cから偏心した箇所に形成されているので、ひげ玉本体部441の重心は天真410の中心点Cとずれている。そのため、天真410を回転軸としてひげ玉本体部441を回転させた場合、重心が回転中心とずれた状態で回転してしまうことになる。
そこで、本実施形態では、重心調整部445は、ひげ玉本体部441と一体に形成されている。具体的には、重心調整部445は、ひげ玉440の重心が天真410の中心点Cと一致するように形成されている。これにより、天真410を回転中心としてひげ玉440を回転させた場合に、ひげ玉440の重心と天真410の中心点Cとがずれてしまうことを防止できる。
なお、本実施形態では、重心調整部445は、天真410の軸方向から平面視において、ひげ玉本体部441の薄肉部4411を挟んで、2箇所に形成されている。
次に、ひげぜんまい70の製造方法について説明する。
図7~図11は、ひげぜんまい70の製造方法を示す図である。
まず、図7に示すように、金属製で板状の弾性材料で形成されたひげぜんまい材170をアルキメデス曲線に沿って形成する。そして、当該ひげぜんまい材170の内端部をひげ玉440に固定させる。この際、図4に示す接続点Sに該当する箇所の付近を予め折り曲げておいてから、ひげぜんまい材170の内端部をひげ玉440の固定部442に固定させるようにしてもよい。
なお、本実施形態では、平面視で、ひげぜんまい材170における外周形状部443に沿って巻かれた区間の長さ、すなわち第1巻回部72の長さが、外周形状部443の長さよりも短くなるように構成されている。
なお、端子Tにてひげぜんまい材170を押し付ける所定の荷重は、事前の試験等にて確認しておく。すなわち、ひげぜんまい材170における外周形状部443に沿って巻かれた所定の長さまでの区間がグロスマン型の形状に形成されるように、上記所定の荷重を設定する。
その後、ひげぜんまい70が固定されたひげ玉440や天輪420を天真410に固定して、テンプ400を製造する。
このような本実施形態では、以下の効果を得ることができる。
本実施形態では、ひげ玉440は、第1巻回部72の内面に対向する位置に配置され、第1巻回部72をグロスマン型の形状に形成するための外周形状部443を有する。
これにより、ひげぜんまい70における第1巻回部72に相当する箇所を、外周形状部443に沿って巻き回すことにより、第1巻回部72をグロスマン型の形状にすることができる。そのため、LIGA技術等を用いなくても、ひげぜんまい70の一部をグロスマン型の形状に形成することができるので、等時性に優れた金属製のひげぜんまい70を容易に製造することができる。
これにより、ひげ玉440において、天真410を挿入させるための天真挿入孔444を、ひげ玉440の中心とは偏心した箇所に設けたとしても、ひげ玉440の重心と天真410の中心とを一致させることができる。そのため、天真410の中心と、ひげ玉440の重心とがずれてしまうことで生じる不具合を抑制することができる。
これにより、第1巻回部72をグロスマン型の形状にするための外周形状部443を、単純な構造にすることができる。そのため、ひげ玉440の製造を容易にすることができる。さらに、外周形状部443の形状を、高い精度で形成することができるので、当該外周形状部443を用いて第1巻回部72を形成する際に、第1巻回部72の形状のばらつきを少なくすることができる。
これにより、第1巻回部72に該当する箇所を外周形状部443に確実に巻き回すことができるので、第1巻回部72の形状のばらつきを少なくすることができる。
そのため、ひげぜんまい材170における所定の区間を、グロスマン型の形状に容易に形成することができる。
なお、本開示は前述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。
さらに、テンプ400の回転運動に伴うひげぜんまい70の収縮時に、接続点S付近の接触状態の変化による歩度影響が問題となる場合には、外周形状部443において接続点Sと対向する箇所の付近に、部分的な逃げ形状を設けても良い。例えば、天真410の軸方向から平面視において、円弧ではなく直線状となる逃げ形状を外周形状部443に設けてもよい。また、接続点S付近のみをグロスマン型の形状に形成するような形状を有する部材を回転台Bに設ける様に構成しても良い。
本開示のテンプは、支持部材に回転自在に支持される天真と、前記天真に固定されるひげ玉と、前記ひげ玉に固定される金属製のひげぜんまいと、を備え、前記ひげぜんまいは、前記ひげ玉に固定される内端部と、前記内端部から連続して形成され、グロスマン型の形状に沿って形成される第1巻回部と、前記第1巻回部から連続して形成され、アルキメデス曲線に沿って形成される第2巻回部とを有し、前記ひげ玉は、前記ひげぜんまいの前記内端部が固定される固定部と、前記第1巻回部の内面に対向する位置に配置され、前記第1巻回部をグロスマン型の形状に形成するための外周形状部と、を有する。
これにより、ひげぜんまいにおける第1巻回部に相当する箇所を、外周形状部に沿って巻き回すことにより、第1巻回部をグロスマン型の形状に形成することができる。そのため、LIGA技術等を用いなくても、ひげぜんまいの一部をグロスマン型の形状に形成することができるので、等時性に優れた金属製のひげぜんまいを容易に製造することができる。
これにより、ひげ玉において、天真を挿入させるための挿入孔を、ひげ玉の中心とは偏心した箇所に設けたとしても、ひげ玉の重心と天真の中心とを一致させることができる。そのため、天真の中心と、ひげ玉の重心とがずれてしまうことで生じる不具合を抑制することができる。
これにより、第1巻回部をグロスマン型の形状にするための外周形状部を、単純な構造にすることができる。そのため、ひげ玉の製造を容易にすることができる。さらに、外周形状部の形状を、高い精度で形成することができるので、当該外周形状部を用いて第1巻回部を形成する際に、第1巻回部の形状のばらつきを少なくすることができる。
これにより、ひげぜんまいにおいて、第1巻回部を外周形状部に確実に巻き回すことができる。そのため、外周形状部を用いて第1巻回部を形成する際に、第1巻回部の形状のばらつきを少なくすることができる。
これにより、ひげぜんまいにおける所定の区間を、グロスマン型の形状に容易に形成することができる。
Claims (7)
- 支持部材に回転自在に支持される天真と、
前記天真に固定されるひげ玉と、
前記ひげ玉に固定される金属製のひげぜんまいと、を備え、
前記ひげぜんまいは、前記ひげ玉に固定される内端部と、前記内端部から連続して形成され、グロスマン型の形状に沿って形成される第1巻回部と、前記第1巻回部から連続して形成され、アルキメデス曲線に沿って形成される第2巻回部とを有し、
前記ひげ玉は、前記ひげぜんまいの前記内端部が固定される固定部と、前記第1巻回部の内面に対向する位置に配置され、前記第1巻回部をグロスマン型の形状に形成するための外周形状部と、を有する
ことを特徴とするテンプ。 - 請求項1に記載のテンプにおいて、
前記ひげ玉は、前記ひげ玉の重心を前記天真の中心位置に調整するための重心調整部を有する
ことを特徴とするテンプ。 - 請求項1または請求項2に記載のテンプにおいて、
前記外周形状部は、前記天真の軸方向から見た平面視で円弧状に形成されている
ことを特徴とするテンプ。 - 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のテンプにおいて、
前記天真の軸方向から見た平面視で、前記第1巻回部の長さは、前記外周形状部の長さよりも短くなるように形成されている
ことを特徴とするテンプ。 - 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のテンプを備えるムーブメント。
- 請求項5に記載のムーブメントを備える機械式時計。
- 支持部材に回転自在に支持される天真と、前記天真に固定されるひげ玉と、前記ひげ玉に内端部が固定される金属製のひげぜんまいと、を備えるテンプの製造方法であって、
前記ひげぜんまいをアルキメデス曲線に沿って形成する工程と、
前記ひげぜんまいの前記内端部を前記ひげ玉に固定する工程と、
前記ひげぜんまいの前記内端部から所定の長さまでの区間を、前記ひげ玉の外周形状部を用いてグロスマン型の形状に形成する工程とを、有する
ことを特徴とするテンプの製造方法。
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