JP2017194286A - ヒゲゼンマイ、時計ムーブメントおよび時計 - Google Patents
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非特許文献1のヒゲゼンマイでは、ヒゲゼンマイ本体部の全体の巻き数の約半分の巻き数の周回部分であって、テン真の回転中心およびヒゲゼンマイ本体部の巻出し部を通る直線を、前記回転中心を軸にして巻回方向に90度回転した直線と交差する部分に、重りが取り付けられている。重りは、ゼンマイ部材を切断して得られる金属片であり、半分に折り曲げられた後、接着剤によってヒゲゼンマイ本体部に取り付けられる。
すなわち、テン真の回転軸に沿った方向から見た平面視において、テン真の回転中心から伸びて巻回部の巻出し部を通る直線を、前記回転中心を軸にして巻回方向に90度回転した直線を90度直線と定義する。この場合、巻回部の巻き数N(Nは整数)が偶数の場合は、前記平面視において、90度直線と交差する巻回部のN/2巻目またはN/2+1巻目の周回部分に、重りは取り付けられる。また、巻き数Nが奇数の場合は、前記平面視において、90度直線と交差する巻回部のN/2−1/2巻目またはN/2+1/2巻目の周回部分に、重りは取り付けられる。
例えば、巻回部の巻き数Nが14の場合は、前記平面視において、90度直線と交差する巻回部の7巻目または8巻目の周回部分に重りは取り付けられ、巻き数Nが13の場合は、前記平面視おいて、90度直線と交差する巻回部の6巻目または7巻目の周回部分に重りは取り付けられる。
本発明によれば、重りが接着剤を含んでいるため、重りを巻回部における取付位置に直接接着させることができる。これによれば、例えば、金属片を折り曲げ、折り曲げた金属片を接着剤により巻回部に取り付ける場合と比べて、作業性を向上できるため、重りを容易に巻回部に取り付けることができる。
また、重りに含まれる金属が、金属粉末で構成されているため、重り内で金属を均一に配置させることができる。これによれば、重りの体積を制御することで、重りの重さを制御できるため、所定の重さの重りを容易に巻回部に取り付けることができる。
タングステン、金およびステンレス鋼は、金属粉末として流通しているため、重りを構成する混合物を容易に生成できる。
本発明によれば、重りを巻回部に接着させた後、紫外線を照射することで迅速に硬化させることができるため、作業性および生産性を向上できる。
本発明によれば、重りを巻回部に接着させた後、熱処理を行うことで迅速に硬化させることができるため、作業性および生産性を向上できる。
本発明によれば、重りによりヒゲゼンマイの重心移動をより効果的に補正できる。
本発明によれば、重りを巻回部に塗布することで取り付けることができ、作業性をより向上できる。
上記ヒゲゼンマイによれば、ヒゲゼンマイの重心移動を補正でき、かつ、容易に製造できるため、時計ムーブメントが当該ヒゲゼンマイを備えることで、時計の精度を向上できる時計ムーブメントを容易に製造できる。
本発明によれば、時計の精度を向上できる時計を容易に製造できる。
図1は、時計1を示す正面図である。時計1は、ユーザーの手首に装着される腕時計であり、円筒状の外装ケース2を備え、外装ケース2の内周側に、文字板3が配置されている。外装ケース2の二つの開口のうち、表面側の開口は、カバーガラスで塞がれており、裏面側の開口は裏蓋で塞がれている。
各指針4A〜4Cおよびパワーリザーブ針5は、時計ムーブメント10の指針軸に取り付けられ、時計ムーブメント10により駆動される。
文字板3には、カレンダー小窓3Aが設けられており、カレンダー小窓3Aから、日車6が視認可能となっている。
リューズ7を0段位置で回転すると、後述するように、ゼンマイを巻き上げることができる。ゼンマイの巻上げに連動して、パワーリザーブ針5が移動する。本実施形態の時計1は、ゼンマイをフルに巻き上げた場合に、約40時間の持続時間を確保できる。
リューズ7を1段位置に引いて回転すると、日車6を移動して日付を合わせることができる。リューズ7を2段位置に引くと秒針4Cが停止し、2段位置でリューズ7を回転すると、時針4A、分針4Bが移動して時刻を合わせることができる。
次に、時計ムーブメント10について図2を参照して説明する。
時計ムーブメント10は、地板11、一番受け12、テンプ受け13を備えている。地板11と一番受け12との間には、ゼンマイが収納された香箱車(一番車)21と、二番車(図示略)と、三番車23、四番車24、ガンギ車(五番車)25が配置されている。また、地板11とテンプ受け13との間には、アンクル26、調速機27等が配置されている。
手巻き機構30は、一番受け12に回転自在に軸支された、巻真31、つづみ車32、きち車33、丸穴車40、第1中間車51、第2中間車52を備え、リューズ7の回転操作による回転を、角穴車60に伝達し、角穴車60および香箱真を回転させてゼンマイを巻き上げるものである。なお、丸穴車40は、きち車33に噛み合う第1丸穴車41と、第1丸穴車41と一体に回転して第1中間車51に噛み合う第2丸穴車42とで構成されている。
図3は、調速機27を示す断面図であり、図4は、調速機27を示す平面図である。なお、図4では、振り座430、ヒゲ持450、緩急針460については、図示を省略している。
調速機27は、図3、図4に示すように、テン真410、テン輪420、振り座430、ヒゲ玉440、ヒゲ持450、緩急針460、ヒゲゼンマイ90を含んで構成される。
テン真410には、テン輪420、振り座430、ヒゲ玉440が固定され、これらが一体で回転するように構成されている。ヒゲゼンマイ90を構成するヒゲゼンマイ本体部70は、その内端部71がヒゲ玉440に固定され、外端部73は、ヒゲ持450に固定されている。緩急針460は、ヒゲ棒461およびヒゲ受462を含んで構成され、ヒゲゼンマイ本体部70の最外周部分は、ヒゲ棒461およびヒゲ受462の間を通過している。
次に、ヒゲゼンマイ90の構成について、図4〜図6を用いて説明する。図5は、図4のテン真410の近傍を拡大した図である。図6は、ヒゲゼンマイ90をテン真410の軸方向と直交する方向から見た側面図である。
ヒゲゼンマイ90は、ヒゲゼンマイ本体部70と、重り80とを備えている。
ヒゲゼンマイ本体部70は、Cr,Ni,Co等を含む合金であるコエリンバー等の板状の弾性材料により形成されている。
ヒゲゼンマイ本体部70は、ヒゲ玉440に形成された溝部441に挿入され、ヒゲ玉440に固定された内端部71と、内端部71から連続し、テン真410の軸方向に沿った方向から見た平面視において、テン真410の回転中心Oを中心にして略同心円状に巻回する巻回部72と、巻回部72の内端部71とは反対側の端部から連続し、ヒゲ持450に固定される屈曲部を備えた外端部73とを備えている。
すなわち、巻回部72は、ヒゲ玉440の溝部441に挿入されていない部分であり、かつ、回転中心Oを中心とする円弧に沿って湾曲している湾曲部分を意図している。なお、本実施形態では、巻回部72の最外周の途中に、屈曲部722が形成されているが、屈曲部722のように、湾曲部分と湾曲部分とを連結する部分は、巻回部72の一部として考える。
ここで、14巻とは、巻出し部721を起点とした場合の巻回方向の回転角度を角度θとした場合、角度θが、5040度(=360度×14)であることを意図している。
なお、以下の説明では、巻回部72のN巻目(Nは整数)という表現を用いるが、これは、角度θが(N−1)×360度以上、N×360度未満の範囲である巻回部72の周回部分を示す。
例えば、1巻目とは、角度θが0度以上360度未満の範囲の周回部分であり、2巻目とは、角度θが360度以上720度未満の範囲の周回部分である。
重り80は、金属粉末と接着剤とが混合した混合物によって構成されている。
本実施形態では、金属粉末には、平均粒径が約8μmや16μmなどのタングステン(比重:約19.3)が用いられ、接着剤には、例えばエポキシ系の紫外線硬化樹脂が用いられる。重り80の重さは、ヒゲゼンマイ90の重心移動をより効果的に補正するため、15μg以上25μg以下であることが好ましい。
重り80は、例えば、ディスペンサーなどによってヒゲゼンマイ本体部70の巻回部72に塗布した後、紫外線を照射して硬化させることで、巻回部72に取り付けることができる。すなわち、重り80は、塗布膜である。
すなわち、図5に示すように、前記平面視において、回転中心Oから伸びて巻出し部721を通る直線L1を、回転中心Oを軸にして巻回方向に90度回転した直線を直線L2(90度直線)とする。すなわち、直線L2は、直線L1と直交する直線である。
この場合、巻回部72の巻き数N(Nは整数)が偶数の場合は、前記平面視において、L2と交差する巻回部72のN/2巻目またはN/2+1巻目の周回部分に、重り80は設けられる。
一方、巻き数Nが奇数の場合は、前記平面視において、直線L2と交差する巻回部72のN/2−1/2巻目またはN/2+1/2巻目の周回部分に、重り80は設けられる。
本実施形態では、巻回部72の巻き数Nは14であるため、直線L2と交差する巻回部72の7巻目または8巻目の周回部分が、重り80を設ける対象位置となっており、図5に示す例では、7巻目の周回部分に重り80が設けられている。
重り80の巻回方向に沿う方向の寸法は、例えば約0.3mmであり、直線L2に沿う方向の寸法は、ヒゲゼンマイ本体部70の厚み寸法(約0.03mm)も含めると、例えば約0.09mmである。
重り80が接着剤を含んでいるため、重り80を巻回部72に直接接着させることができる。このため、例えば、金属片を折り曲げ、折り曲げた金属片を接着剤により巻回部72に取り付ける場合と比べて、作業性を向上でき、重り80を容易に巻回部72に取り付けることができる。また、重り80は、巻回部72に塗布されて取り付けられるため、作業性をより向上できる。
図7は、時計1の歩度(s/d:秒/日)を示すグラフである。図8は、比較のためのグラフであり、重り80を設けていない時計の歩度を示すグラフである。
ここで、グラフの横軸は時計1の姿勢を表す。「12立」は、時計1の12時方向が天頂方向となる姿勢であり、「6立」は、時計1の6時方向が天頂方向となる姿勢であり、「3立」は、時計1の3時方向が天頂方向となる姿勢であり、「9立」は、時計1の9時方向が天頂方向となる姿勢である。
重り80を付けていない時計では、図8に示すように、姿勢の違いによる歩度のバラツキが16秒であるのに対して、時計1では、図7に示すように、姿勢の違いによる歩度のバラツキが3秒であり、大幅に改善している。
なお、本発明は前記実施形態の構成に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
すなわち、ヒゲゼンマイ90の重心移動を補正する重りとして機能すれば、他の金属が用いられていてもよい。
ただし、金属の比重が低いほど、重り80の体積を大きくする必要があるため、巻回部72における重り80が取り付けられる面積は大きくなる。重り80が取り付けられる面積が大き過ぎると、重り80を取り付けたことで巻回部72の弾性が低下する。
このため、金属粉末には、巻回部72の弾性の低下を抑制するため、比重が7以上の金属が用いられることが好ましい。
このような金属としては、タングステンの他、金やステンレス鋼(SUS)が例示できる。ここで、タングステン、金およびステンレス鋼は、金属粉末として流通しているため、重り80を構成する混合物を容易に生成できる。
また、タングステンおよび金は、比重が約19.3であり、比重が7以上の他の金属(例えば、比重が約7.7のステンレス鋼など)と比べて大きい方の金属である。このため、金属粉末をタングステンや金で構成することで、重り80の体積をより小さくでき、これにより、巻回部72の弾性が低下することをより抑制できる。また、重り80の体積が同じ場合は、重り80の重さをより重くでき、ヒゲゼンマイ90の重心移動をより効果的に補正できる。
また、金属粉末の粒径が大きくなると、硬化する前の重り80の粘性が対数的に高くなったり、金属粉末と接着剤とが分離しやすくなったりするため、重り80を巻回部72に塗布しにくくなる。このため、金属粉末の粒径は小さいほど好ましい。
ステンレス鋼は、平均粒径が約3μmの微細な金属粉末として流通しているため、このような微細なステンレス鋼の金属粉末を用いることで、重り80を巻回部72に塗布しやすくできる。
Claims (8)
- テン真を中心にして巻回する巻回部を備えたヒゲゼンマイ本体部と、
前記巻回部における予め設定された所定の位置に取り付けられた重りと、を備え、
前記重りは、金属粉末および接着剤の混合物により構成されている
ことを特徴とするヒゲゼンマイ。 - 請求項1に記載のヒゲゼンマイにおいて、
前記金属粉末は、タングステン、金またはステンレス鋼である
ことを特徴とするヒゲゼンマイ。 - 請求項1または請求項2に記載のヒゲゼンマイにおいて、
前記接着剤は、紫外線硬化樹脂である
ことを特徴とするヒゲゼンマイ。 - 請求項1または請求項2に記載のヒゲゼンマイにおいて、
前記接着剤は、熱硬化性樹脂である
ことを特徴とするヒゲゼンマイ。 - 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のヒゲゼンマイにおいて、
前記重りの重さは、15μg以上25μg以下である
ことを特徴とするヒゲゼンマイ。 - 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のヒゲゼンマイにおいて、
前記重りは、塗布膜である
ことを特徴とするヒゲゼンマイ。 - 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のヒゲゼンマイを備える
ことを特徴とする時計ムーブメント。 - 請求項7に記載の時計ムーブメントを備える
ことを特徴とする時計。
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