JP2017090390A - ひげぜんまい、時計ムーブメント、時計、および、ひげぜんまいの製造方法 - Google Patents

ひげぜんまい、時計ムーブメント、時計、および、ひげぜんまいの製造方法 Download PDF

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政生 竹内
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Shogo Kobayashi
昇吾 小林
啓介 中田
Keisuke Nakata
啓介 中田
和博 ▲土▼屋
和博 ▲土▼屋
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Abstract

【課題】生産効率を向上できるひげぜんまい、時計ムーブメント、時計、および、ひげぜんまいの製造方法を提供すること。
【解決手段】時計の調速機が備えるひげぜんまい51A,52A,61A,62Aであって、表面に形成された凹凸を有し、凹凸の深さ寸法の平均値は、10nm以上30nm以下である。ひげぜんまい51A,52A,61A,62Aを製造する方法は、圧延材の表面に、エッチングにより凹凸を形成するエッチング工程と、凹凸が形成された圧延材を巻き込んで形状加工する巻き込み工程と、巻き込まれた状態の圧延材51,52,61,62を、ひげぜんまい51A,52A,61A,62Aに分離する分離工程とを有する。
【選択図】図6

Description

本発明は、ひげぜんまい、時計ムーブメント、時計、および、ひげぜんまいの製造方法に関する。
従来、機械式時計の調速機に用いられている、ひげぜんまいが知られている。ひげぜんまいは、例えば合金を伸線および圧延して得られる圧延材を、螺旋状に形状加工することで製造される。
このひげぜんまいの製造方法として、生産効率を向上させるため、複数のひげぜんまいを一括して形状加工して製造する方法がある。具体的には、圧延材を巻き込みコマに巻き込んで形状加工する。その後、巻き込まれた状態の圧延材を、切断した後、ほぐして複数のひげぜんまいに分離する。この分離は、生産効率を向上させるため、例えば、巻き込まれた状態の圧延材を、超音波を用いて搖動させることで行われる。しかしながら、この方法では、圧延材の表面が汚れていると、汚れが圧延材の表面同士を接着させるため、圧延材がほぐれにくくなる。このため、圧延材を巻き込む前に、圧延材の表面を洗浄しておくことが考えられている。
一方、時計用の部品を洗浄する方法として、部品を電解酸化水に浸漬して洗浄する方法がある(特許文献1参照)。
特開2010−227811号公報
しかしながら、圧延材を巻き込む前に、圧延材の表面を、特許文献1の洗浄方法を用いて洗浄しただけでは、巻き込まれた状態の圧延材を、十分にほぐれやすくすることはできなかった。
本発明の目的は、生産効率を向上できるひげぜんまい、時計ムーブメント、時計、および、ひげぜんまいの製造方法を提供することにある。
本発明のひげぜんまいは、時計の調速機が備えるひげぜんまいであって、表面に形成された凹凸を有し、前記凹凸の深さ寸法の平均値は、10nm以上30nm以下であることを特徴とする。
ここで、ひげぜんまいの製造過程には、ひげぜんまい材を巻き込んで形状加工する巻き込み工程と、巻き込まれた状態のひげぜんまい材を、切断した後、複数のひげぜんまいに分離する分離工程とがある。巻き込まれた状態のひげぜんまい材は、例えば、超音波を用いて搖動させることで分離することができる。
本発明によれば、ひげぜんまいの表面に凹凸が形成されている。凹凸は、巻き込み工程の前にひげぜんまい材の表面に形成される。このため、分離工程において、巻き込まれた状態のひげぜんまい材の表面同士の接触面積を小さくできる。これにより、分離工程において、ひげぜんまい材が分離し易くなる。このため、例えば、超音波を用いてひげぜんまい材を搖動させることで、ひげぜんまい材を分離することができ、分離工程を自動化できる。これにより、生産効率を向上できる。
また、本発明では、ひげぜんまいの表面に形成された凹凸の深さ寸法の平均値は、10nm以上である。これによれば、分離工程において、当該平均値が10nm未満の場合と比べて、ひげぜんまい材の表面同士の接触面積を小さくでき、ひげぜんまい材がより分離し易くなる。
また、本発明では、前記平均値が30nm以下であるため、調速機の振動周期の変動を低減できる。
すなわち、エッチングによりひげぜんまい材の表面に凹凸を形成する際、凹凸の深さ寸法には、ばらつきが生じる。このばらつきは、凹凸の深さに比例して大きくなる。
ここで、ひげぜんまいの厚み寸法は、調速機の振動周期に影響を与える。そして、凹凸の深さ寸法のばらつきが、ひげぜんまいの厚み寸法の公差に対して、10%より大きいと、ひげぜんまいの厚み寸法を公差内に制御することが難しくなり、調速機の振動周期が変動する場合がある。
ひげぜんまいの厚み寸法の公差は、±100nm〜200nmの範囲で設定されているため、前記ばらつきは、10nm(100nmの10%)以下にする必要がある。
このため、本発明では、前記ばらつきを10nm以下とするため、凹凸の深さ寸法の平均値を、30nm以下としている。これにより、ひげぜんまいの厚み寸法を公差内に制御し易くでき、調速機の振動周期の変動を低減できる。
本発明の時計ムーブメントは、上記のひげぜんまいを備えていることを特徴とする。
上記のひげぜんまいは、生産効率を向上でき、調速機の振動周期の変動を低減できる。本発明では、このようなひげぜんまいを備えているため、時計ムーブメントの生産効率および時計の精度を向上できる。
本発明の時計は、上記の時計ムーブメントを備えていることを特徴とする。
本発明では、前記時計ムーブメントを備えているため、時計の生産効率および時計の精度を向上できる。
本発明のひげぜんまいの製造方法は、時計の調速機に用いられるひげぜんまいを製造する方法であって、ひげぜんまい材の表面に、エッチングにより凹凸を形成するエッチング工程と、前記凹凸が形成された前記ひげぜんまい材を、巻き込んで形状加工する巻き込み工程と、巻き込まれた状態の前記ひげぜんまい材を、複数のひげぜんまいに分離する分離工程と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、上記のひげぜんまいと同様に、分離工程を自動化でき、生産効率を向上できる。
また、本発明では、前記凹凸はエッチングで形成されるため、微細な凹凸を形成することができ、例えば、エッチング時間を制御することで、凹凸の深さ寸法の平均値を、10nm以上30nm以下とすることができる。このため、分離工程において、ひげぜんまい材を分離し易くでき、かつ、調速機の振動周期の変動を低減できる。
本発明のひげぜんまいの製造方法において、前記エッチング工程では、電解酸化水によりエッチングを行うことが好ましい。
電解酸化水は、一般的な酸性のエッチング液よりもエッチング効果が高いため、本発明によれば、一般的な酸性のエッチング液によりエッチングを行う場合よりも、短時間で凹凸を形成できる。また、電解酸化水は、電解還元水と混ぜることで中性液となるため、エッチング液の廃液による環境負荷を低減できる。
本発明のひげぜんまいの製造方法において、前記エッチング工程では、超音波を前記ひげぜんまい材に照射することが好ましい。
本発明によれば、エッチング効果を高めることができ、より短時間で凹凸を形成できる。
本発明のひげぜんまいの製造方法において、前記エッチング工程の前に、前記ひげぜんまい材の表面を、電解還元水で洗浄する洗浄工程を有することが好ましい。
本発明によれば、エッチング工程におけるエッチング効果をより高めることができ、より短時間で凹凸を形成できる。また、ひげぜんまい材の表面の汚れをより確実に落とすことができ、分離工程において、ひげぜんまい材がよりほぐれ易くなる。
本発明の実施形態における時計を示す正面図である。 前記時計の調速機の構造を示す平面図である。 前記調速機の構造を示す断面図である。 本実施形態における巻き込み工程を示す図である。 本実施形態における巻き込み工程を示す図である。 本実施形態における分離工程を示す図である。 エッチングを行っていない圧延材の表面を示す写真である。 エッチングを行った圧延材の表面を示す写真である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
[腕時計の構成]
図1は、時計1を示す正面図である。
時計1は、使用者の手首に装着される腕時計であり、外装ケース11と、外装ケース11内に収容された時計ムーブメント(図示せず)、文字板12、秒針13、分針14、時針15を備えている。秒針13、分針14、時針15は、時計ムーブメントに取り付けられ、時計ムーブメントにより駆動される。秒針13、分針14、時針15は、文字板12の表面側に配置され、時計ムーブメントは、文字板12の裏面側に配置されている。
[調速機の構成]
時計ムーブメントは、調速機400を備えている。調速機400は、図2および図3に示すように、テン真410、テン輪420、振り座430、ひげ玉440、ひげ持450、緩急針460、ひげぜんまい470を含んで構成される。
テン真410には、テン輪420、振り座430、ひげ玉440が固定され、これらが一体で回転するように構成されている。ひげぜんまい470は、その内周端がひげ玉440に固定され、外周端は、ひげ持450に固定されている。緩急針460は、ひげ棒461およびひげ受462を含んで構成され、ひげぜんまい470の最外周部分は、ひげ棒461およびひげ受462の間を通過している。
そして、このような調速機400では、テン輪420がテン真410を軸として回転すると、これに伴いひげ玉440も回転するので、テン輪420には、ひげぜんまい470の付勢力が作用し、この付勢力とテン輪420の慣性力とがつり合うと、テン輪420の回転が停止し、ひげぜんまい470の付勢力により、テン輪420は逆方向に回転する。すなわち、テン輪420は、テン真410を軸として揺動を繰り返す。
[ひげぜんまいの製造方法]
次に、調速機400に用いられるひげぜんまいの製造方法について説明する。
[伸線・圧延工程]
まず、Cr,Ni,Co等を含む合金であるコエリンバー等の弾性材料を、伸線および圧延して、例えば、厚さが0.03mm、幅が0.1mmの圧延材を生成する。ここで、圧延材は、本発明のひげぜんまい材を構成する。
[切断工程]
次に、生成した圧延材を切断し、ひげぜんまい2本分の長さの圧延材を複数生成する。
[表面処理工程]
次に、圧延材に対して表面処理を行う。表面処理には、洗浄工程、エッチング工程、リンス工程がある。
<洗浄工程>
生成した複数の圧延材を束ねて、電解還元水に浸漬して洗浄する。電解還元水は、例えばNaCl等の電解質水溶液を、電気分解することで得ることができる。電解還元水は、phが約12、酸化還元電位(ORP:Oxidation-reduction Potential)が約−900mv、温度が約50℃である。また、浸漬時間は、例えば10分間である。
また、圧延材を電解還元水に浸漬している間、圧延材に超音波を照射する。これにより、洗浄効果をより高めることができる。超音波の周波数は、例えば、38KHzである。
その後、圧延材を電解還元水から取り出し、今度はアセトンに浸漬して洗浄する。浸漬時間は、例えば2分間である。
<エッチング工程>
次に、洗浄した圧延材を電解酸化水に浸漬して、圧延材の表面をエッチングする。電解酸化水は、例えばNaCl等の電解質水溶液を、電気分解することで得ることができる。電解酸化水は、phが約2、酸化還元電位が約1150mv、温度が約20℃である。また、浸漬時間は、10分間〜30分間である。
また、圧延材を電解酸化水に浸漬している間、圧延材に超音波を照射する。超音波の周波数は、例えば、38KHzである。
このようにして、圧延材の表面に、凹凸を形成する。凹凸の深さ寸法の平均値は、10nm以上30nm以下であることが好ましい。ここで、凹凸の深さ寸法は、浸漬時間に大よそ比例する。例えば、1分間で、深さ寸法の平均値が1nmとなる凹凸を形成できるエッチング条件では、浸漬時間を10分間以上とすることで、凹凸の深さ寸法の平均値を10nm以上とすることができ、浸漬時間を30分以下とすることで、凹凸の深さ寸法の平均値を30nm以下とすることができる。
なお、凹凸の深さ寸法とは、凸部の先端面から、凹部の底面までの距離を指す。
<リンス工程>
次に、エッチングした圧延材を、電解還元水に浸漬してリンスを行う。電解還元水には、例えば、洗浄工程で用いた電解還元水と同じものが用いられる。浸漬時間は、例えば2分間である。
その後、圧延材を電解還元水から取り出し、今度は純水に浸漬してリンスを行う。浸漬時間は、例えば5秒間である。
[巻き込み工程]
次に、表面処理された圧延材を、治具を用いて巻き込むことで形状加工する。
図4および図5は、巻き込み工程を示す図である。
図4(A)に示すように、巻き込み用の治具は、巻き込み軸20と、巻き込みコマ30とを有している。
巻き込み軸20の先端には、軸方向と直交する方向に延在する溝21と、軸方向と直交し、かつ、溝21の延在方向と直交する方向に延在する溝22とが設けられている。
巻き込みコマ30は、表面310から裏面320に貫通する貫通孔31を備えた円筒形状を有している。巻き込みコマ30は、巻き込みコマ30を表面側から見た平面視(以降、コマ平面視と称する)において、貫通孔31の中心に巻き込み軸20の先端が位置するように配置されている。
巻き込みコマ30の表面310には、巻き込みコマ30の内側面330と外側面340との間を連通する8つの溝311〜318が設けられている。コマ平面視において、溝311〜314は、巻き込み軸20の溝21と同じ方向に延在し、溝315〜318は、巻き込み軸20の溝22と同じ方向に延在している。また、溝311と溝312、溝313と溝314、溝315と溝316、溝317と溝318は、それぞれ同じ線上に位置している。ここで、巻き込み軸20の溝21は、溝22の延在方向において、巻き込みコマ30の溝311,312と溝313,314との間に位置している。また、巻き込み軸20の溝22は、溝21の延在方向において、巻き込みコマ30の溝315,316と溝317,318との間に位置している。
このような巻き込み軸20および巻き込みコマ30に、図4(B)に示すように、表面処理された2本の圧延材50,60を取り付ける。
圧延材50は、巻き込みコマ30の溝313、巻き込み軸20の溝21、巻き込みコマ30の溝312を通過するように取り付けられる。ここで、圧延材50の全長の中央の箇所が、貫通孔31内に位置するように、圧延材50を巻き込みコマ30に取り付ける。これにより、巻き込みコマ30から異なる方向に、ほぼ同じ長さの2本の圧延材51,52が延出した状態となる。つまり、圧延材51,52は、圧延材50をおおよそ半分にしたものである。
なお、圧延材50は、巻き込みコマ30の溝311、巻き込み軸20の溝21、巻き込みコマ30の溝314を通過するように取り付けてもよい。
圧延材60は、巻き込みコマ30の溝317、巻き込み軸20の溝22、巻き込みコマ30の溝316を通過するように取り付けられる。ここで、圧延材60の全長の中央の箇所が、貫通孔31内に位置するように、圧延材60を巻き込みコマ30に取り付ける。これにより、巻き込みコマ30から異なる方向に、ほぼ同じ長さの2本の圧延材61,62が延出した状態となる。つまり、圧延材61,62は、圧延材60をおおよそ半分にしたものである。
なお、圧延材60は、巻き込みコマ30の溝315、巻き込み軸20の溝22、巻き込みコマ30の溝318を通過するように取り付けてもよい。
次に、図5(A)に示すように、巻き込み軸20および巻き込みコマ30を同軸回転させることで、圧延材51,52,61,62は、巻き込みコマ30を軸として、巻き込みコマ30の外側面340に沿って、互いが積層するように巻き込まれる。
そして、圧延材51,52,61,62の巻き込みが完了すると、図5(B)に示すように、巻き込み軸20および巻き込みコマ30の回転を停止させる。これにより、圧延材51,52,61,62が形状加工される。ここで、巻き込まれた状態の圧延材51,52,61,62を、巻き込み体70とする。
[熱処理工程]
次に、巻き込み体70を、巻き込みコマ30に取り付けられた状態で、巻き込み軸20から取り外す。
そして、巻き込み体70を巻き込みコマ30ごと真空炉に入れて熱処理する。熱処理は、例えば、600℃〜620℃の温度で2時間行われる。これにより、圧延材51,52,61,62の形状を固定できる。
[分離工程]
次に、熱処理した巻き込み体70を、切断し、ほぐして4つのひげぜんまい51A,52A,61A,62Aに分離する。
図6は、分離工程を示す図である。
図6(A)に示すように、熱処理した巻き込み体70を、巻き込みコマ30から取り外し、振動体80に載置する。
そして、巻き込み体70の巻き込み軸に対応する空洞70Aに位置している圧延材51,52,61,62の連結部分を切断する。その後、振動体80を超音波で振動させ、巻き込み体70を搖動させる。これにより、巻き込まれた状態の圧延材51,52,61,62がほぐれ、図6(B)に示すように、個々のひげぜんまい51A,52A,61A,62Aに分離される。
ここで、圧延材51,52,61,62がほぐれるとは、巻き込み体70が、個々のひげぜんまい51A,52A,61A,62Aに分離することを意図する。
[実施形態の作用効果]
エッチング工程において、圧延材の表面に凹凸が形成される。このため、分離工程において、巻き込まれた状態の圧延材51,52,61,62の表面同士の接触面積が小さくなる。これにより、分離工程において、圧延材51,52,61,62がほぐれ易くなる。このため、超音波を用いて巻き込み体70を搖動させることで、圧延材51,52,61,62をほぐすことができ、分離工程を自動化できる。これにより、生産効率を向上できる。
また、凹凸がエッチングにより形成されるため、このエッチングにより、圧延材の表面が洗浄されて汚れが落ちる。これにより、分離工程において、圧延材51,52,61,62をよりほぐれ易くできる。
電解酸化水は、一般的な酸性のエッチング液よりもエッチング効果が高い。本実施形態では、凹凸は、電解酸化水によるエッチングにより形成されるため、一般的な酸性のエッチング液によりエッチングを行う場合よりも、短時間で凹凸を形成できる。また、電解酸化水は、電解還元水と混ぜることで中性液となるため、エッチング液の廃液による環境負荷を低減できる。
エッチング工程では、超音波を圧延材に照射する。これによれば、エッチング効果を高めることができ、より短時間で凹凸を形成できる。
凹凸の深さ寸法の平均値は、10nm以上である。これによれば、分離工程において、当該平均値が10nm未満の場合と比べて、圧延材51,52,61,62の表面同士の接触面積を小さくでき、圧延材51,52,61,62をよりほぐれ易くできる。
また、エッチングにより圧延材の表面に凹凸を形成する際、凹凸の深さ寸法には、ばらつきが生じる。このばらつきは、凹凸の深さに比例して大きくなる。
ここで、ひげぜんまいの厚み寸法は、調速機の振動周期に影響を与える。
下記の式(1)は、ひげぜんまいの厚み寸法と、調速機の振動周期との関係を示す式である。Tは調速機の振動周期を示し、Jは調速機の慣性モーメントを示し、Lはひげぜんまいの長さ寸法を示し、Eはヤング率を示し、bはひげぜんまいの幅寸法を示し、hはひげぜんまいの厚み寸法を示す。
上記式(1)に示されるように、調速機の振動周期は、ひげぜんまいの厚み寸法の3乗に応じて変動する。
そして、凹凸の深さ寸法のばらつきが、ひげぜんまいの厚み寸法の公差に対して、10%より大きいと、ひげぜんまいの厚み寸法を公差内に制御することが難しくなり、調速機の振動周期が変動する場合がある。
ひげぜんまいの厚み寸法の公差は、±100nm〜200nmの範囲で設定されているため、前記ばらつきは、10nm(100nmの10%)以下にする必要がある。
このため、本実施形態では、前記ばらつきを10nm以下とするため、凹凸の深さ寸法の平均値を、30nm以下としている。これにより、ひげぜんまいの厚み寸法を公差内に制御し易くでき、調速機の振動周期の変動を低減できる。このため、時計の精度を向上できる。
なお、本実施形態では、凹凸がエッチングにより形成されているため、例えば、深さ寸法の平均値が30nm以下の微細な凹凸を形成できる。
洗浄工程で、圧延材の表面を、電解還元水で洗浄する。これによれば、エッチング工程におけるエッチング効果をより高めることができ、より短時間で凹凸を形成できる。また、圧延材の表面の汚れをより確実に落とすことができ、分離工程において、圧延材51,52,61,62がよりほぐれ易くなる。
リンス工程で、圧延材の表面を、電解還元水でリンスする。これによれば、圧延材の表面を、純水のみでリンスする場合と比べて、圧延材の表面をよりきれいに洗浄できる。これにより、分離工程において、圧延材51,52,61,62をよりほぐれ易くできる。
ひげぜんまい51A,52A,61A,62Aは、生産効率を向上できる。したがって、このひげぜんまい51A,52A,61A,62Aが用いられた時計ムーブメントの生産効率も向上でき、時計1の生産効率も向上できる。
[他の実施形態]
なお、本発明は前記実施形態の構成に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
例えば、前記実施形態では、圧延材に凹凸を形成するエッチングに、電解酸化水を用いているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、圧延材をエッチングできるエッチング液であればよい。
前記実施形態では、エッチング工程において、圧延材に超音波を照射しているが、例えばエッチング効果の高いエッチング液を使用する場合には、超音波を照射しなくてもよい。
前記実施形態では、表面処理工程は、洗浄工程、エッチング工程、リンス工程を備えているが、洗浄工程およびリンス工程はなくてもよい。
前記実施形態では、巻き込み工程において、巻き込みが行われる前、圧延材51と圧延材52は互いに連結され、圧延材61と圧延材62は互いに連結されているが、個々に切断されていてもよい。
前記実施形態では、巻き込み工程において、4本の圧延材51,52,61,62が巻き込まれているが、2本、3本、または、5本以上の圧延材を巻き込むようにしてもよい。
以下に、圧延材の表面処理工程について、実施例および比較例により詳細に説明する。表1は、各実施例および比較例の表面処理の条件を示す。
[実施例1]
(1)表面処理される圧延材
コエリンバーを材料とし、厚さが0.03mm、幅が0.1mmの圧延材を準備した。
(2)表面処理工程
圧延材に対して、以下の順序で表面処理を行った。
(2−1)電解還元水による洗浄
電解還元水には、NaClの電解質水溶液を電気分解して得られる還元水を用いた。電解還元水は、phが12.01、酸化還元電位が−898mV、電気伝導率が195.2mS/m、溶存酸素量が2.25ppm、溶存塩化水素量が0ppm、温度が50℃である。
浸漬時間は10分間とした。
周波数が38KHzの超音波を照射した。
(2−2)アセトンによる洗浄(2分間浸漬)
(2−3)電解酸化水によるエッチング
電解酸化水には、NaClの電解質水溶液を電気分解して得られる酸化水を用いた。電解酸化水は、phが2.25、酸化還元電位が1168mV、電気伝導率が218mS/m、溶存酸素量が16.90ppm、溶存塩化水素量が72.5ppm、温度が20℃である。
浸漬時間は10分間とした。
周波数が38KHzの超音波を照射した。
(2−4)電解還元水によるリンス
電解還元水には、洗浄で用いた電解還元水と同じものを用いた。
浸漬時間は2分間とした。
(2−5)純水によるリンス(5秒間浸漬)
[実施例2]
実施例1に対して、電解酸化水によるエッチングの際の浸漬時間を、20分間とした。それ以外は、実施例1と同様に行った。
[実施例3]
実施例1に対して、電解酸化水によるエッチングの際に、超音波を照射しなかった。それ以外は、実施例1と同様に行った。
[実施例4]
実施例1に対して、電解酸化水によるエッチングの際に、超音波を照射しなかった。また、電解酸化水によるエッチングの際の浸漬時間を、20分間とした。それ以外は、実施例1と同様に行った。
[実施例5]
実施例1に対して、電解酸化水によるエッチングの際に、超音波を照射しなかった。また、電解酸化水によるエッチングの際の浸漬時間を、30分間とした。それ以外は、実施例1と同様に行った。
[比較例1]
実施例1に対して、電解酸化水によるエッチング、電解還元水によるリンス、純水によるリンスを行わなかった。それ以外は、実施例1と同様に行った。
[実施例6]
実施例1に対して、電解還元水による洗浄を行わなかった。
また、エッチングに用いるNaClの電解質水溶液を電気分解して得られる電解酸化水は、phが2.26、酸化還元電位が1155mV、電気伝導率が218mS/m、溶存酸素量が23.02ppm、溶存塩化水素量が72.5ppmである。
また、リンスに用いるNaClの電解質水溶液を電気分解して得られる電解還元水は、phが12.15、酸化還元電位が−887mV、電気伝導率が185.6mS/m、溶存酸素量が2.8ppm、溶存塩化水素量が0ppmである。
それ以外は、実施例1と同様に行った。
[実施例7]
実施例6に対して、電解酸化水によるエッチングの際に、超音波を照射しなかった。それ以外は、実施例6と同様に行った。
[実施例8]
実施例6に対して、電解酸化水によるエッチングの際に、超音波を照射しなかった。また、電解酸化水によるエッチングの際の浸漬時間を、20分間とした。それ以外は、実施例6と同様に行った。
[比較例2]
実施例6に対して、電解酸化水によるエッチング、電解還元水によるリンス、純水によるリンスを行わなかった。それ以外は、実施例6と同様に行った。
[比較例3]
実施例6に対して、電解酸化水によるエッチングの際に、超音波を照射しなかった。また、電解酸化水によるエッチングの際の浸漬時間を、5分間とした。それ以外は、実施例6と同様に行った。
[比較例4]
実施例6に対して、電解酸化水によるエッチングの際に、超音波を照射しなかった。また、電解酸化水によるエッチングの際の浸漬時間を、40分間とした。それ以外は、実施例6と同様に行った。
[評価方法]
表面処理が行われた圧延材の表面の凹凸状態、洗浄状態、分離工程におけるほぐれ易さ、ひげぜんまいの厚み寸法を公差(±100nm〜200nm)内に制御できたか否かについて、以下の基準で評価した。評価結果を表2に示す。
<凹凸状態>
○:広範囲にわたり凹凸が形成されている。
△:凹凸が形成されているが、部分的である。
×:凹凸が形成されていない。
<洗浄状態>
○:汚れがほとんど落ちている。
△:汚れは落ちているが、残っている箇所もある。
×:汚れが落ちていない。
<ほぐれ易さ>
○:短い時間でほぐれる。
△:ほぐれるが、時間がかかる。
×:ほぐれない。
<公差内に制御できたか否か>
○:公差内に制御できた。
×:公差内に制御できなかった。
[凹凸状態の評価結果]
表2に示されるように、電解酸化水によるエッチングを行っていない比較例1,2では、圧延材の表面に凹凸が形成されていない。これに対して、電解酸化水によるエッチングを行った実施例1〜8、比較例3,4では、圧延材の表面に凹凸が形成されている。
図7(A)(B)は、電解酸化水によるエッチングを行っていない圧延材の表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した写真である。図7(A)(B)に示されているように、圧延材の表面には凹凸は形成されていない。図8(A)(B)は、電解酸化水によるエッチングを行った圧延材の表面を、SEMを用いて撮影した写真である。図8(A)(B)に示されているように、圧延材の表面には凹凸が形成されている。
また、超音波を照射しないでエッチングを行った実施例3,4では、圧延材の表面に凹凸は形成されているが、部分的である。これに対して、超音波を照射してエッチングを行った実施例1,2では、圧延材の表面に広範囲にわたり凹凸が形成されている。
なお、電解酸化水によるエッチングにおいて、超音波は照射していないが、浸漬時間が実施例3,4よりも長い実施例5(30分間浸漬)では、圧延材の表面に広範囲にわたり凹凸が形成されている。
また、電解還元水による洗浄を行わない場合は、超音波を照射してエッチングを行った実施例6でも、圧延材の表面には部分的にしか凹凸が形成されていない。
[洗浄状態の評価結果]
表2に示されるように、電解還元水による洗浄も、電解酸化水によるエッチングも行っていない比較例2では、汚れが落ちていない。これに対して、少なくとも電解酸化水によるエッチングを行った実施例1〜8では、汚れが落ちている。
また、電解還元水による洗浄を行っていない実施例6〜8では、汚れは落ちているが、残っている箇所もある。これに対して、電解還元水による洗浄を行った実施例1〜5では、汚れがほとんど落ちている。
[ほぐれ易さの評価結果]
表2に示されるように、凹凸状態が「○」であり、電解酸化水によるエッチングの際の浸漬時間が10分以上(凹凸の深さ寸法の平均値が10nm以上)である実施例1,2,5では、短時間で圧延材がほぐれた。凹凸状態が「△」であり、前記浸漬時間が10分以上である実施例3,4,6〜8では、圧延材がほぐれたが、時間がかかった。凹凸状態が「×」である比較例1,2では、圧延材がほぐれなかった。凹凸状態が「△」であり、浸漬時間が5分(凹凸の深さ寸法の平均値が5nm)である比較例3では、圧延材がほぐれなかった。
[公差内に制御できたか否かの評価結果]
表2に示されるように、電解酸化水によるエッチングの際の浸漬時間が30分以下(凹凸の深さ寸法の平均値が30nm以下)である実施例1〜8では、ひげぜんまいの厚み寸法を公差内に制御できた。浸漬時間が40分(凹凸の深さ寸法の平均値が40nm)である比較例4では、ひげぜんまいの厚み寸法を公差内に制御できなかった。
20…軸、30…巻き込みコマ、50,51,52,60,61,62…圧延材、51A,52A,61A,62A…ひげぜんまい、70…巻き込み群、80…振動体。

Claims (7)

  1. 時計の調速機が備えるひげぜんまいであって、
    表面に形成された凹凸を有し、
    前記凹凸の深さ寸法の平均値は、10nm以上30nm以下である
    ことを特徴とするひげぜんまい。
  2. 請求項1に記載のひげぜんまいを備えている
    ことを特徴とする時計ムーブメント。
  3. 請求項2に記載の時計ムーブメントを備えている
    ことを特徴とする時計。
  4. 時計の調速機に用いられるひげぜんまいを製造する方法であって、
    ひげぜんまい材の表面に、エッチングにより凹凸を形成するエッチング工程と、
    前記凹凸が形成された前記ひげぜんまい材を、巻き込んで形状加工する巻き込み工程と、
    巻き込まれた状態の前記ひげぜんまい材を、複数のひげぜんまいに分離する分離工程と、を有する
    ことを特徴とするひげぜんまいの製造方法。
  5. 請求項4に記載のひげぜんまいの製造方法において、
    前記エッチング工程では、電解酸化水によりエッチングを行う
    ことを特徴とするひげぜんまいの製造方法。
  6. 請求項4または請求項5に記載のひげぜんまいの製造方法において、
    前記エッチング工程では、超音波を前記ひげぜんまい材に照射する
    ことを特徴とするひげぜんまいの製造方法。
  7. 請求項4から請求項6のいずれか1項に記載のひげぜんまいの製造方法において、
    前記エッチング工程の前に、前記ひげぜんまい材の表面を、電解還元水で洗浄する洗浄工程を有する
    ことを特徴とするひげぜんまいの製造方法。
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