JP7474360B2 - メッキ部品の製造方法及び基材の成形に用いられる金型 - Google Patents

メッキ部品の製造方法及び基材の成形に用いられる金型 Download PDF

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Description

本発明は、メッキ部品の製造方法及びメッキ部品の基材の成形に用いられる金型に関する。
近年、射出成形体等の表面に電気回路を形成した立体回路成形部品は、MID(Molded Interconnect Device)と呼称され、その応用範囲が急速に広まっている。MIDは、小型で複雑形状の成形体の表面に回路を形成できるため、電子部品の軽薄短小のトレンドに合致している。例えば、スマートフォンの筐体の表面にアンテナ等を形成した小型部品は中国で大量生産されている。また、自動車分野でもセンサーや照明部品へのMIDの適用が欧州を中心に活発に検討されている。また、自動車には、現在、大量のケーブルハーネス(ワイヤーハーネス)が使用されている。このケーブルハーネスをMIDに置き換えることにより、軽量化と組み立て工程数削減によるコストダウンが期待できる。
樹脂成形体等の絶縁性基材の表面に配線パターン(電気回路)を形成する方法として、例えば、LDS(Laser Direct Structuring)法が実用化されている(例えば、非特許文献1、特許文献1)。LDS法では、まず、銅錯体を熱可塑性樹脂に練り込んで射出成形し、該銅錯体を含有した成形体表面にレーザー描画を行う。レーザー光照射により銅錯体が金属化して無電解銅メッキの触媒活性が発現し、レーザー描画部分の無電解メッキが可能となる。LDS法は、複雑な形状の射出成形体の表面に回路を形成する立体回路成形部品(MID)の製造が可能であり、スマートフォンや自動車の製造において普及している。
LDS法のように触媒を成形体中に練り込む方法とは異なる方法も提案されている(例えば、特許文献2)。特許文献2には、短波長のフェムト秒レーザー光を用いて成形体表面に官能基を付与する方法が開示されている。成形体表面が極性基を有するので、メッキ膜との化学的な接着強度が発現する。
以上説明したメッキ膜の形成方法では、レーザー光を照射した部分にのみにメッキ膜を選択的に形成する。このため、メッキパターンの変更が容易であるという利点を有する。
欧州特許第1274288号公報 特開2012-136769号公報
ウォルフガング・ジョン、「生産コストを削減する3次元コンポーネント」、Industrial Laser Solutions Japan、株式会社イーエクスプレス、2011年9月号、p.18‐22
しかし、レーザー光を用いる従来のメッキ膜の形成方法は、メッキ膜を形成する予定の所定領域全面にレーザー光を照射する必要がある。従来の方法は、レーザー光照射に伴う基材の加工時間が必要であるため、メッキ部品の製造時間が長くなるという課題を有して
いた。この課題は、大型のメッキ部品の場合、特に問題となる。
また、レーザー光を用いる従来のメッキ膜の形成方法は、レーザー照射部分のメッキ反応性を高めるため、比較的強いレーザー光を照射する必要がある。このため、レーザー光照射部分のみならず、その近傍のレーザー光非照射部分の温度も上昇させる。これにより、レーザー光非照射部分のメッキ反応性が向上してしまい、予定していない部分にメッキ膜が析出する虞があった。例えば、メッキ膜により配線間スペースの狭い回路パターンを形成する場合や、薄肉の基材の両面にメッキ膜により回路パターンを形成する場合、配線間や配線の裏面のレーザー光非照射部分に無電解メッキ膜が析出して、配線間の短絡が生じる虞がある。このように、従来のメッキ膜の形成方法は、メッキ膜有無のコントラストが十分に得られないという課題を有していた。
本発明は、これらの課題を解決するものであり、メッキ部品の製造時間を短縮すると共に、所定領域以外の領域での無電解メッキ膜の析出を抑制し、所定領域のみに無電解メッキ膜を形成できるメッキ部品の製造方法を提供する。
本発明の第1の態様に従えば、メッキ部品の製造方法であって、その表面に粗面領域と、前記粗面領域以外の他の領域とを有する基材を用意することと、前記基材の表面に、触媒失活剤を含む触媒活性妨害層を形成することと、前記触媒活性妨害層を形成した前記基材の表面に、無電解メッキ触媒を付与することと、前記無電解メッキ触媒を付与した前記基材の表面に無電解メッキ液を接触させ、前記粗面領域に無電解メッキ膜を形成することとを含む、メッキ部品の製造方法が提供される。
前記粗面領域の表面粗さが、前記他の領域の最大高さ粗さ(Rz)より大きくてもよく、前記粗面領域の表面粗さが、前記他の領域の表面粗さの10倍以上であってもよい。前記粗面領域の表面粗さは、前記触媒活性妨害層の厚さよりも大きくてもよい。前記触媒活性妨害層の厚みは0.01μm以上、且つ5μm以下であってもよい。
前記基材を用意することが、前記基材の形状に対応するキャビティを有する金型を用いて、前記基材を成形することであり、前記キャビティを区画する前記金型の表面には、前記粗面領域に対応する凹凸構造が形成されており、前記基材を成形するとき、前記凹凸構造が前記基材の表面に転写されることにより、前記粗面領域が形成されてもよい。
前記基材の表面に前記触媒活性妨害層を形成した後、前記粗面領域の少なくとも一部を加熱又は光照射してもよい。前記基材の表面に前記触媒失活剤を付与した後、前記他の領域の一部、又は、前記粗面領域における前記他の領域との境界部を加熱又は光照射することを更に含み、前記粗面領域、及び前記加熱又は光照射した部分に、無電解メッキ膜が形成されてもよい。前記基材の表面に前記触媒活性妨害層を形成した後、前記他の領域の一部を加熱又は光照射することを含み、前記粗面領域と、前記加熱又は光照射した部分とは、接触しており、前記粗面領域から前記加熱又は光照射した部分にかけて連続した無電解メッキ膜が形成されてもよい。
前記加熱又は光照射することが、レーザー光を照射することであってもよい。また、前記無電解メッキ膜が前記基材上で電気回路を形成してもよい。
本発明の第2の態様に従えば、基材の成形に用いられる金型であって、前記基材に対応するキャビティが内部に形成されており、前記キャビティを区画する面が、粗面領域と、前記粗面領域以外の他の領域とを有する、金型が提供される。
本発明の製造方法は、メッキ部品の製造時間を短縮すると共に、所定領域以外での無電解メッキ膜の生成を抑制し、所定領域のみに無電解メッキ膜を形成する。
第1の実施形態のメッキ部品の製造方法を示すフローチャートである。 図2(a)~(d)は、第1の実施形態のメッキ部品の製造方法を説明する図である。 第2及び第3の実施形態のメッキ部品の製造方法を示すフローチャートである。 図4(a)~(e)は、第2の実施形態のメッキ部品の製造方法を説明する図である。 図5(a)~(e)は、第3の実施形態のメッキ部品の製造方法を説明する図である。
[第1の実施形態]
図1に示すフローチャートに従って、図2(a)~(d)に示す本実施形態のメッキ部品100の製造方法について説明する。
(1)基材の準備
まず、基材10を準備する(図1のステップS1、図2(a))。基材10の材料は特に限定されないが、表面に無電解メッキ膜を形成する観点から絶縁体が好ましい。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂及び光硬化性樹脂等の樹脂、セラミックス、ガラス等が挙げられる。中でも、製造の容易性等から、基材10は、樹脂が主成分である樹脂基材が好ましい。また、基材10は、金属部材と樹脂とをインサート成形等により一体成形した一体成形体であってもよい。また、基材10は、セラミックス、ガラス等の本体に、樹脂をコーティングした基材(樹脂層を形成した基材)であってもよい。
熱可塑性樹脂としては、ナイロン6(PA6)、ナイロン66(PA66)、ナイロン12(PA12)、ナイロン11(PA11)、ナイロン6T(PA6T)、ナイロン9T(PA9T)、10Tナイロン、11Tナイロン、ナイロンMXD6(PAMXD6)、ナイロン9T・6T共重合体、ナイロン6・66共重合体等のポリアミドを用いることができる。ポリアミド以外の樹脂としては、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ABS系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミドイミド、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン等を用いることができる。
特に、ハンダリフロー耐性を有するメッキ部品を製造する場合には、耐熱性と成形性を兼ね備えた熱可塑性樹脂として、ナイロン6T(PA6T)、ナイロン9T(PA9T)、10Tナイロン、11Tナイロン、ナイロンMXD6(PAMXD6)等の芳香族ナイロン及びこれらを含む共重合体が好ましい。そして、寸法安定性や剛性向上の観点から、これらの熱可塑性樹脂は、ガラスフィラーやミネラルフィラー等の無機フィラーが充填されてもよい。具体的には、ソルベイ アドバンスト ポリマーズ製のアモデル、クラレ製のジェネスタ、東洋紡製のバイロンアミド、三菱エンプラ東洋紡製のレニー等を用いることができる。また、メッキ部品にハンダリフロー耐性が要求されない場合には、汎用エンプラであるABS樹脂、ポリカーボネート(PC)、ABS樹脂とPCとのポリマーアロイ(ABS/PC)等を用いることができる。
熱硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。透明な熱硬化性樹脂を用いることで、透明でハンダリフロー耐性を有するデバイス(メッキ部品)を製造できる。光硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド等を用いることができる。また、セラミックスとしては、アルミナ、窒化アルミ、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、シリコンウエハ等を用いることができる。
基材10は、市販品であってもよいし、市販の材料から成形等により製造してもよい。例えば、粉末射出成形方法により複雑形状のセラミックス基材10を製造してもよい。また、市販の熱可塑性樹脂を所望の形状に成形して、樹脂成形体(基材10)を得てもよい。熱可塑性樹脂の成形方法としては、汎用の射出成形方法、押出成形方法を用いることができる。樹脂成形体は、押出成形で製造するシート状の成形体であってもよい。また、基材10は、光硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を用いて3Dプリンタにより造形してもよい。3Dプリンタを用いると、複雑形状の基材10が製造でき、この基材10を用いて複雑形状のMIDを製造できる。
図2(a)に示すように、基材10は、その表面10aに粗面領域10Aと、粗面領域以外の他の領域10Bとを有する。粗面領域10Aは、無電解メッキ膜を形成する予定の所定領域である。粗面領域10Aの表面粗さは、他の領域10Bの表面粗さより大きい。ここで、「表面粗さ」とは、算術表面粗さ(Ra)を意味する。粗面領域10Aの表面粗さ(Ra)は、他の領域10Bの最大高さ粗さ(Rz)より大きい方が好ましい。
粗面領域10Aの表面粗さは、他の領域10Bの表面粗さより大きければ特に限定されない。例えば、粗面領域10Aの表面粗さは、他の領域10Bの表面粗さの2倍以上が好ましく、10倍以上がより好ましい。これらの関係を満たす程度に粗面領域10Aの表面粗さと他の領域10Bの表面粗さとの間に差があれば、粗面領域10Aにおいては無電解メッキ膜40(図2(d)参照)の形成をより促進でき、他の領域10Bでは無電解メッキ膜40の形成をより抑制できる。結果として、無電解メッキ膜40の有無のコントラストをより明確にできる。
詳細は後述するが、粗面領域10Aの表面粗さ及び他の領域10Bの表面粗さは、触媒活性妨害層20の厚さ等を考慮して決定してもよい。粗面領域10Aの表面粗さ及び他の領域10Bの表面粗さは、例えば、光学的な測定方法、即ち、レーザー顕微鏡、マイクロスコープ等を用いた高さ測定、又は、触針粗度計を用いた高さ測定によって測定できる。
基材10の粗面領域10Aの形成方法について、以下に説明する。樹脂を用いて基材10を成形する場合、製造工程を簡便化でき、製造時間を短縮できることから、基材10の成形と同時に粗面領域10Aを形成することが好ましい。例えば、次のように基材10を成形する。まず、金型を用意する。金型は、基材10の形状に対応するキャビティが内部に形成されている。キャビティを区画する表面の一部には、基材10の粗面領域10Aに対応する凹凸構造(粗面領域)が形成されている。即ち、キャビティを区画する面は、粗面領域と、粗面領域以外の他の領域とを有する。この金型を用いて、樹脂を射出成形等することにより、金型の凹凸構造(粗面領域)及び他の領域が基材10の表面10aにそれぞれ転写され、基材10の成形と同時に粗面領域10A及び他の領域10Bが形成される。
基材10の成形に用いる金型に凹凸構造(粗面領域)を形成する方法は、特に限定されず、任意の方法を用いることができる。例えば、機械切削、シボ加工(例えば、エッチング、サンドブラスト、研磨処理)、レーザー切削等により、金型のキャビティを区画する表面に、梨地、ヘアライン等の微細な凹凸を形成してもよい。また、金型のパーツの1つ
として、駒(入駒、入れ子)を用い、駒に凹凸構造を形成してもよい。この場合、金型全部を変更することなく、駒のみを変更することにより、凹凸構造の形状及び位置等を変更できる。即ち、駒のみの変更により、基材10の粗面領域10Aの形状及び位置を変更できる。これにより、メッキ部材100の設計の自由度が向上する。
また、基材10の成形と同時に粗面領域10Aを形成する他の方法としては、一次成形体全面を粗化した後に、回路パターン以外の部分を二次成形二次成形によって被覆する方法が挙げられる(例えば、特許第4537911号公報)。
また、粗面領域10Aは、以下の方法により形成してもよい。例えば、粗面領域10Aを有さない基材10の表面をコーティング材料で塗布した後、その一部に凹凸状のスタンプで型押しして、粗面領域10Aを形成してもよい。または、インサート成形によって、予め一部を粗化して粗面領域10Aを形成したセラミックス部材と、樹脂とをインサート成形して一体成形体である基材10を成形してもよい。
(2)触媒活性妨害層の形成
次に、基材10の表面10aに、触媒失活剤を含む触媒活性妨害層20を形成する(図1のステップS2、図2(b))。
触媒失活剤としては、無電解メッキ触媒が触媒能を発揮することを妨げ、結果として、無電解メッキの反応を抑制する物質であれば、任意の物質を用いることができる。触媒失活剤は、無電解メッキ触媒と直接反応して無電解メッキ触媒を被毒するか、又は無電解メッキ触媒と直接反応せずとも、触媒付与工程のいずれかの段階において、無電解メッキ触媒が触媒能を発揮することを妨げると推測される。
触媒活性妨害層20は、例えば、触媒失活剤として、触媒活性を妨害する樹脂を用いて形成できる。触媒失活剤としては、側鎖にアミド基及びジチオカルバメート基を有するポリマーが好ましい。側鎖のアミド基及びジチオカルバメート基が無電解メッキ触媒となる金属イオンに作用し、触媒能を発揮することを妨げると推測される。また、触媒失活剤は、デンドリマー、ハイパーブランチポリマー等のデンドリティックポリマーが好ましい。触媒失活剤としては、例えば、特開2017‐160518号公報に開示されるポリマーを用いることができる。
触媒活性妨害層は、特開2017‐160518号公報に開示される方法により、樹脂部10の表面に形成できる。例えば、まず、溶剤に触媒失活剤である樹脂を溶解又は分散させた溶液を調整する。その溶液を基材に塗布する、又は、その溶液に基材を浸漬することによって、触媒活性妨害層を形成してもよい。具体的な形成方法としては、ディップコート、スクリーンコート、スプレーコート等が挙げられる。
また、触媒失活剤としては、例えば、亜鉛(Zn)、鉛(Pb)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)等のメッキ触媒毒となる重金属及びその化合物、ヨウ素及びその化合物、過酸化物等の酸化剤等の特開2016-029209号公報に開示される触媒失活剤を用いて、触媒活性妨害層20を形成してもよい。例えば、これらの触媒失活剤をバインダとなる樹脂と混合して基材10表面に付与し、触媒活性妨害層20を形成してもよい。または、触媒失活機能を有さない樹脂からなる樹脂層を基材10上に形成し、形成した樹脂層に触媒失活剤を接触させてもよい。樹脂層に触媒失活剤が浸透、吸着等により担持され、触媒活性妨害層20が形成される。樹脂層に触媒失活剤を担持させる場合、基材10と比較して、樹脂層は触媒失活剤を吸着し易い材料であることが好ましい。例えば、触媒失活剤としてヨウ素を用い、基材10がポリフェニレンサルファイド(PPS)から形成される場合、樹脂層には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)よりもヨ
ウ素を担持し易い、例えば、ポリアミドやアミド基含有ポリマーを用いることが好ましい。これにより、樹脂層の厚さが薄い場合であっても、ヨウ素を基材10(PPS)に浸透させずに、樹脂層のみ担持させることができる。
基材10の表面10aにおいて、粗面領域10Aは表面粗さが大きいため、その上に触媒活性妨害層20が均一に形成され難い。このため、粗面領域10Aは、触媒活性妨害層20に完全に覆われない。粗面領域10A上の触媒活性妨害層20には、粗面領域10を露出させる欠陥20aが生じる。一方、他の領域10Bは表面粗さが小さいため、その上に触媒活性妨害層20が均一に形成され易い。このように、上に形成される触媒活性妨害層20の均一性に差が生じるため、メッキ反応性にも差が生じる。粗面領域10Aはメッキ反応性が高くなり、他の領域10Bはメッキ反応性が低くなる。この結果、粗面領域10Aのみに無電解メッキを形成できる。
触媒活性妨害層は基材の耐熱性等の物性や誘電率等の電気特性に影響を与えないように、薄い方が好ましい。例えば、5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.3μm以下が更により好ましい。一方で、無電解メッキ触媒の触媒活性を妨害する観点からは、例えば、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.05μm以上が更により好ましい。尚、所定パターン以外での無電解メッキ膜の生成を抑制する観点から、妨害層は、後述する無電解メッキ工程において、少なくとも無電解メッキ液と接触する基材表面の領域に形成することが好ましく、基材の表面全面に形成することがより好ましい。
粗面領域10A上に触媒活性妨害層20の欠陥20aをより多く生じさせ、粗面領域10Aのメッキ反応性を向上させる観点からは、粗面領域10Aの表面粗さは、触媒活性妨害層20の厚さより大きい方が好ましい。例えば、粗面領域10Aの表面粗さは、触媒活性妨害層20の厚さの10倍以上が好ましく、100倍以上がより好ましい。例えば、触媒活性妨害層20の厚みが0.1μmである場合は、粗化領域10Aの表面粗さは、0.1μmより大きいことが好ましく、1μm以上がより好ましく、10μm以上がより好ま
しい。
他の領域10B上に触媒活性妨害層20を均一に形成して、他の領域10Bのメッキ反応性を低下させる観点からは、他の領域10Bの表面粗さは、触媒活性妨害層20の厚さに対して、大き過ぎない方がよい。例えば、他の領域10Bの表面粗さの、触媒活性妨害層20の厚さに対する比率は、100以下が好ましく、10以下がより好ましく、1以下が更によりに好ましい。例えば、触媒活性妨害層20の厚みが0.1μmである場合は、他の領域10Bの表面粗さは、10μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.1μm以下が更により好ましい。
(3)無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキ
触媒活性妨害層20を形成した基材10の表面に、無電解メッキ触媒30を付与し(図1のステップS3、図2(C))、次に、無電解メッキ液を接触させる。これにより、基材の表面の粗面領域10Aに無電解メッキ膜40を形成する(図1のステップS4、図2(d))。
無電解メッキ触媒30は、特に限定されず、汎用のものを適宜選択して用いることができる。例えば、Pd、Ni、Pt、Cu等の金属塩、金属微粒子、金属錯体、金属アルコキシド等を用いることができ、中でも、触媒活性が高いPdを含む無電解メッキ触媒が好ましい。
無電解メッキ触媒30を基材表面10aに付与する方法は、特に限定されず、汎用の方
法を用いることができる。例えば、市販の無電解メッキ用触媒液を用いた汎用の方法、例えば、センシタイザー・アクチベータ法やキャタライザー・アクセラレータ法を用いてもよい。また、特開2017-036486号公報に開示されている塩化パラジウム等の金属塩を含むメッキ触媒液を用いてもよい。また、金属塩を含むメッキ触媒液として、市販のアクチベータ処理液を用いてもよい。金属塩を含むメッキ触媒液を基材表面10aに接触させることにより、金属塩由来の金属イオンを基材表面10aに付与できる。
無電解メッキ液及び無電解メッキ方法は、特に限定されず、汎用の無電解メッキ液及び無電解メッキ方法を適宜選択して用いることができる。無電解メッキ液としては、無電解ニッケルメッキ液、無電解ニッケルリンメッキ液、無電解銅メッキ液、無電解パラジウムメッキ液等を用いることができる。中でも、以下の観点から、無電解ニッケルメッキ液(無電解ニッケルリンメッキ液)が好ましい。無電解ニッケルメッキ液は、メッキ液が安定である。また、無電解ニッケルメッキ液は、還元剤として次亜リン酸ナトリウムを含むため、無電解メッキ触媒(金属イオン)の還元効果が高い。尚、無電解メッキ膜40の上に、更に、他の種類の無電解メッキ膜や電解メッキ膜を積層してもよい。
図2(c)及び(d)に示すように、基材の他の領域10Bには触媒活性妨害層20が均一に形成されている。触媒活性妨害層20上に付与された無電解メッキ触媒30は、触媒活性妨害層20に含まれる触媒失活剤により触媒能を発揮できない。したがって、他の領域10Bに無電解メッキ液が接触しても、無電解メッキ膜は形成されない。図2(c)及び(d)に、触媒能を有さない非活性な無電化メッキ触媒を非活性触媒30aとして、黒丸で模式的に示す。
一方、基材の粗面領域10Aには、触媒活性妨害層20が均一に形成されず、欠陥20aが形成される。欠陥20a上に付与された無電解メッキ触媒は、触媒能を維持する。図2(c)及び(d)に、触媒能を有する活性な無電解メッキ触媒を活性触媒30bとして、白丸で模式的に示す。粗面領域10Aは、活性触媒30bが存在するため、基材10に無電解メッキ液を接触させると、無電解メッキ反応が生じる。粗面領域10Aには非活性触媒30aも存在するが、無電解メッキ反応は、一般的に、反応が生じている周辺ほど反応性が高まる。このため、粗面領域10Aの欠陥20aで無電解メッキ反応が進行すると、粗面領域10A内の非活性触媒30aが存在する領域でも無電解メッキ反応が生じて、無電解メッキ膜が析出する。そして、成長した無電解メッキ膜の自己触媒作用によって、更に無電解メッキ反応が進行する。結果として、粗面領域10A全体に無電解メッキ膜40が形成される。
以上説明した本実施形態は、以下の効果を奏する。本実施形態の製造方法では、粗面領域10Aを有する基材10を用い、基材10の表面10aに触媒活性妨害層20を形成する。これにより、基材10にレーザー光を照射することなく、所定領域(粗面領域10A)のみに無電解メッキ膜を形成し、所定領域以外の領域(他の領域10B)での無電解メッキ膜の生成を抑制する。即ち、メッキ部品100の製造時間を短縮すると共に、無電解メッキ膜有無のコントラストが明確なメッキ部品100を製造できる。
本実施形態の製造方法は、大型のメッキ部品の製造において、特に有効である。レーザー光を用いる従来のメッキ膜の形成方法を用いた場合、大型のメッキ部品の製造時間は長くなる傾向にあるが、本実施形態の製造方法は、大型のメッキ部品の製造時間も短縮できる。また、レーザー光照射装置(レーザー描画装置)は、一般的にレーザー光を照射可能な面積が限られる。このため、大型のメッキ部品にレーザー光を照射する場合、基材を載置するステージを大型化するか、又は、基材を動かしながらレーザー光を照射する必要がある。ステージの大型化は、装置コストを上昇させる。基材を動かしながらのレーザー光照射は、レーザー光照射の位置合わせが必要となり、製造工程を煩雑にする。本実施形態
の製造方法は、基材へのレーザー光の照射が不要であるため、大型のメッキ部品であっても、装置コストを抑制でき、製造工程の効率化を図れる。
また、本実施形態の製造方法は、メッキ膜により回路パターン形成するメッキ部品(回路部品)、特に、配線間スペースの狭い回路パターンを有するメッキ部品、薄肉の基材の両面に回路パターンを形成するメッキ部品において有効である。本実施形態の製造方法は、無電解メッキ膜有無のコントラストが明確なため、配線間の短絡を防ぐことができる。
また、レーザー光を用いる従来のメッキ膜の形成方法では、レーザー光の照射が難しい場所に無電解メッキ膜を形成することが難しかった。レーザー光の照射が難しい場所とは、例えば、基材に形成された凹部や貫通孔の内側、複数の突起が設けられた基材において突起の影となる部分等である。また、内部に空間が形成されている、箱形状や円柱形状の基材の場合、内部空間に通じる開口が設けられていたとしても、壁面が影となり、内部空間において、レーザー光が照射できない箇所が発生する場合がある。本実施形態では、レーザー光の照射が難しい場所にも粗面部10Aを形成でき、そこに無電解メッキ膜40を形成できる。
以上説明した本実施形態の製造方法において、無電解メッキ膜40は導電性を有していてもよい。また、無電解メッキ膜40は、回路パターン(配線パターン、電気回路)を形成してもよく、メッキ部品100は、回路部品、電子部品であってもよい。また、無電解メッキ膜40の形成する回路パターンは、基材10の一面のみに平面的に形成させてもよいし、基材10の複数の面に亘って、又は球面等を含む立体形状の表面に沿って立体的に形成されてもよい。無電解メッキ膜40の形成する回路パターンが基材の複数の面に亘って、又は球面等を含む立体形状の表面に沿って立体的に形成される場合、回路パターンは立体電気回路として機能し、このような回路パターンを有するメッキ部品は、立体回路成形部品(MID)として機能する。また、無電解メッキ膜40は、アンテナパターンを形成してもよく、メッキ部品100は、アンテナを有する電子部品であってもよい。
[第2の実施形態]
図3に示すフローチャートに従って、図4(a)~(e)に示す本実施形態のメッキ部品200の製造方法について説明する。本実施形態では、第1の実施形態と同様に、粗面領域10Aが、無電解メッキ膜を形成する予定の所定領域である。
本実施形態は、基材10の表面10aに触媒活性妨害層20を形成した後、粗面領域10Aの少なくとも一部を加熱又は光照射する(図3のステップS5)。それ以外は、上述の第1の実施形態と同様の製造方法により、図4(e)に示す、粗面領域10Aに選択的に無電解メッキ膜40が形成されたメッキ部品200を製造する。
本実施形態の製造方法は、粗面領域10Aと他の領域10Bとを有する基材10を用意することと(図3のステップS1、図4(a))、触媒活性妨害層20を形成することと(図3のステップS2、図4(b))、粗面領域10Aを加熱又は光照射することと(図3のステップS5、図4(c))無電解メッキ触媒を付与することと(図3のステップS3、図4(d))、無電解メッキ膜を形成すること(図3のステップS4、図4(e))とをこの順に含む。以下に、粗面領域10Aを加熱又は光照射する工程(図3のステップS5、図4(c))についてのみ説明する。
粗面領域10Aを加熱又は光照射する方法は、特に限定されず、例えば、レーザー光を照射する方法や、光を照射しない部分をマスクした後に、基材表面全体に光を照射する方法等が挙げられる。光を照射することにより、光が熱に変換され、粗面領域10Aは加熱される。また、光を照射せずに粗面領域10Aを加熱する方法としては、凸部を有する簡
易金型等で粗面領域10Aを直接、熱プレスする方法が挙げられる。作業の簡便性、加熱部分の選択性の観点から、レーザー光照射が好ましい。
レーザー光は、例えば、COレーザー、YVOレーザー、YAGレーザー、UVレーザー等のレーザー装置を用いて照射でき、これらのレーザー装置は、基材の種類に応じて選択できる。例えば、基材がポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂成形体である場合、COレーザー(炭酸ガスレーザー)のように透明樹脂成形体が吸収し易いレーザー光源を用いることが好ましい。また、触媒活性妨害層20が紫外光を吸収する物質の場合は、UVレーザーを用いると、基材の種類に関わらず触媒活性妨害層20を除去できるため好ましい。
図4(b)に示すように、粗面領域10Aを加熱又は光照射する前、粗面領域10には欠陥20aと共に、触媒活性妨害層20の一部が残存している。図4(b)において、触媒活性妨害層の残存部分を残存部20bとして、模式的に示す。粗面領域10Aを加熱又は光照射することにより、残存部20bが加熱される。これにより、粗面領域10における残存部20bの一部又は全部を除去できる(図4(c))。ここで、残存部20b(触媒活性妨害層20)の除去とは、触媒活性妨害層が完全に消失する場合に加えて、触媒活性妨害層中の触媒失活剤が酸化、燃焼、又は変性し、触媒失活剤の機能を失うことも意味する。触媒活性妨害層の残存部20bを除去することで、粗面領域10A上に付与される無電解メッキ触媒30のうち、活性触媒30bの割合が高くなる。したがって、粗面領域10Aのメッキ反応性が更に向上し、無電解メッキ膜有無のコントラストがより明確になる。本実施形態の製造方法は、例えば、無電解メッキ膜で形成された高精細な回路を有するメッキ部品(回路部品)の製造方法として特に有効である。
本実施形態は、上述のように、例えば、レーザー光を照射して粗面領域10Aの少なくとも一部を加熱する。このため、レーザー光の照射を行わない第1の実施形態と比較して、メッキ部品200の製造時間はやや長くなる傾向がある。しかし、粗面領域10A上に存在する触媒活性妨害層は残存部20bのみであり、その量は比較的少ない。したがって、比較的低い熱又は光のエネルギーで粗面領域10A上の残存部20bを除去でき、レーザー光照射スピートの高速化、レーザー光の低エネルギー化が可能となる。これにより、レーザー光を照射する工程を有するにもかかわらず、本実施形態の製造方法は、レーザー光を用いる従来のメッキ膜の形成方法を用いた場合と比較して、以下の効果を奏する。本実施形態の製造方法は、メッキ部品200の製造時間を短縮できる。更に、レーザー光非照射部分の温度上昇を抑制できるため、無電解メッキ膜の有無のコントラストが明確となる。
尚、レーザー光の照射等により、加熱又は光照射する範囲は、粗面領域10Aの全部でもよいし、一部のみでもよい。熱又は光照射する範囲が、粗面領域10Aの一部であれば、メッキ部品200の製造時間を更に短縮できる。例えば、他の領域10Bとの境界部のみを加熱又は光照射してもよい。他の領域10Bとの境界部のメッキ反応性を向上させることにより、無電解メッキ膜の有無のコントラストをより明確にできる。
[第3の実施形態]
図3に示すフローチャートに従って、図5(a)~(e)に示す本実施形態のメッキ部品300の製造方法について説明する。
上述の第2の実施形態では、基材10の表面10aに触媒活性妨害層20を形成した後、粗面領域10Aの少なくとも一部を加熱又は光照射するが(図4(c))、本実施形態では、他の領域10Bの一部を加熱又は光照射する(図5(c))。それ以外は、上述の第1の実施形態と同様の製造方法により、図5(e)に示す、粗面領域10A、並びに、
加熱又は光照射した部分10C(以下、「光照射部分10C」と記載する)に選択的に無電解メッキ膜40が形成されたメッキ部品300を製造する。本実施形態では、粗面領域10A及び光照射部分10Cが、無電解メッキ膜を形成する予定の所定領域である。
本実施形態の製造方法は、粗面領域10Aと他の領域10Bとを有する基材10を用意することと(図3のステップS1、図5(a))、触媒活性妨害層20を形成することと(図3のステップS2、図5(b))、他の領域10Bを加熱又は光照射することと(図3のステップS5、図5(c))無電解メッキ触媒を付与することと(図3のステップS3、図5d))、無電解メッキ膜を形成すること(図3のステップS4、図5(e))とをこの順に含む。以下に、他の領域10Bを加熱又は光照射する工程(図3のステップS5、図5(c))についてのみ説明する。
他の領域10Bを加熱又は光照射する方法は、特に限定されず、第2の実施形態と同様の方法を用いることができる。他の領域10Bの一部を加熱又は光照射することにより、光照射部分10Cにおける触媒活性妨害層20を除去できる(図5(c))。
光照射部分10Cに付与された無電解メッキ触媒30は、触媒活性妨害層20と接触しないため、触媒能を維持する(活性触媒30b)。無電解メッキ液を接触させることにより、粗面領域10Aに加えて、光照射部分10Cにも無電解メッキ膜40を形成できる。
本実施形態では、粗面領域10Aに加えて、光照射部分10Cにも無電解メッキ膜40を形成できるため、メッキパターンの変更(メッキ膜の追加)が容易にでき、設計の自由度が向上する。一方で、本実施形態は、例えば、レーザー光を照射して他の領域10Bの一部を加熱又は光照射する。このため、レーザー光の照射を行わない第1の実施形態と比較して、メッキ部品300の製造時間はやや長くなる傾向がある。また、本実施形態では、他の領域10B上の触媒活性妨害層20を除去するため、第2の実施形態よりも、高いエネルギーの熱又は光を基材10に加える必要がある。したがって、本実施形態では、第2の実施形態と比較して、光照射部分10Cの周囲のレーザー光非照射部分の温度を上昇させる傾向にある。しかし、本実施形態のメッキ膜を形成する予定の所定領域は、粗面領域10Aと光照射部分10Cとを組み合わせて形成する。レーザー光を照射するのは、所定領域の一部である光照射部分10Cのみである。したがって、本実施形態の製造方法は、所定領域全面にレーザー光を照射する必要がある従来のメッキ膜の形成方法を用いた場合と比較して、以下の効果を奏する。本実施形態の製造方法は、メッキ部品300の製造時間を短縮できる。更に、レーザー光非照射部分の温度上昇を抑制できるため、無電解メッキ膜の有無のコントラストが明確となる。
また、基材の表面10aにおいて、粗面領域10Aと、光照射部分10Cとは、接触していてもよい。この場合、粗面領域10Aから光照射部分10Cにかけて連続した無電解メッキ膜を形成できる。例えば、粗面領域10Aと、光照射部分10Cとに、それぞれ、別々の回路を無電解メッキ膜で形成する場合、これらの別々の回路を連続した回路とすることができる。
本実施形態は、例えば、メッキ膜が回路パターンを形成する回路部品において、固定化された回路パターンと、設計自由度を必要とする回路パターンとが混在する場合に、特に有効である。固定化された回路パターンを粗面領域10Aにより形成し、設計自由度を必要とする回路パターンを光照射部分10Cにより形成する。レーザー光の照射は、光照射部分10Cにのみ行うため、所定領域全面にレーザー光を照射する必要がある従来のメッキ膜の形成方法を用いる場合と比較して、回路部品の製造時間を短縮できる。
また、本実施形態は、例えば、メッキ膜が回路パターンを形成する回路部品において、
無電解メッキ膜上に電解メッキを積層した回路パターンを形成する場合にも有効である。電解メッキ用の電極取出部分を粗面領域10Aにより形成し、回路パターンを光照射部分10Cにより形成する。電解メッキ膜を形成する場合、基材10を冶具に固定してメッキ浴に入れる必要がある。同一の冶具を使用する限り、基材における電解メッキ用の電極取出部分の位置は固定化される。このため、電解メッキ用の電極取出部分は、粗面領域10Aとして基材上に設けることが適している。一方で、回路パターンを光照射部10Cとすることで、回路設計の自由度が向上する。
尚、本実施形態(第3の実施形態)の製造方法は、第2の実施形態の製造方法と組み合わせて実施してもよい。即ち、基材10の表面10aに触媒活性妨害層20を形成した後、粗面領域10Aの少なくとも一部と、他の領域10Bの一部との両方を加熱又は光照射してもよい。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例及び比較例により制限されない。
以下に説明する実施例1~2及び比較例1~2では、平板の基材の一方の面の全面が、無電解メッキ膜を形成する予定の所定領域である。
[実施例1]
本実施例では、平板の一方の面の全面が粗面領域10Aであり、それに対向する他方の面の全面が他の領域10Bである基材を用いて、粗面領域10Aのみに無電解メッキ膜40が形成された図2(d)に示すメッキ部品100を製造した。
(1)基材(樹脂成形体)の成形
キャビティを形成する一方の面に表面粗さ(Ra)3μmの凹凸構造を有し、一方の面に対向する他方の面が鏡面加工(Ra:0.1μm)されている金型を用意した。汎用の射出成形機を用いて、ナイロン6(UBE製1015GC9)を金型のキャビティ内に射出充填して、50cm×80cm×0.2cmの平板の基材を成形した。金型の凹凸構造が、基材表面に転写されることにより、基材の成形と同時に、基材の一方の面に表面粗さ(Ra)3μmの粗面領域を形成した。基材の他方の面のRaは0.1μm、最大高さ粗さ(Rz)は1μmであった。基材の表面粗さは、レーザー顕微鏡(キーエンス製、VK9700、20倍対物レンズ)を用いて測定した。
(2)触媒活性妨害層の形成
基材の表面に、触媒失活剤である下記式(1)で表されるハイパーブランチポリマーを含む触媒活性妨害層を形成した。下記式(1)で表されるハイパーブランチポリマーは、特開2017‐160518号公報に開示される方法により合成した。
Figure 0007474360000001
合成した式(1)で表されるポリマーをメチルエチルケトンに溶解して、ポリマー濃度0.3重量%のポリマー溶液を調製した。室温のポリマー溶液に、基材を1秒間浸漬して引き上げ、その後、85℃乾燥機中で5分間乾燥した。これにより、基材の表面に厚さ60nmの触媒活性妨害層が形成された。
(3)無電解メッキ触媒の付与
まず、50℃の水に基材を5分間浸漬し、基材を温めた。次に、30℃に調整した市販の塩化パラジウム(PdCl)水溶液(奥野製薬工業製、アクチベータ)に基材を1分間浸漬した。その後、基材を塩化パラジウム水溶液から取り出し、水洗した。
(4)無電解メッキ
65℃に調整した無電解ニッケルリンメッキ液(奥野製薬工業製、トップニコロンLTN)に、基材を10分間浸漬した。これにより、基材の一方の面(粗面領域)にニッケルリン膜(無電解ニッケルリンメッキ膜)が約1μm成長し、本実施例のメッキ部品を得た。
[実施例2]
本実施例では、基材の粗面領域の表面粗さ(Ra)を20μm、他の領域の表面粗さ(Ra)を1μmとし、触媒活性妨害層の厚さを300nmとした。それ以外は、実施例1と同様の方法によって、図2(d)に示す、粗面領域10Aのみに無電解メッキ膜40が形成されたメッキ部品100を製造した。尚、本実施例の基材の成形には、キャビティを形成する一方の面に表面粗さ(Ra)20μmの凹凸構造を有し、一方の面に対向する他方の面の表面粗さ(Ra)が1μmである金型を用いた。また、触媒活性妨害層の形成に用いたポリマー溶液中のポリマー濃度は2.5重量%とした。基材の他方の面の最大高さ粗さ(Rz)は3μmであった。
[比較例1]
本比較例では、基材が粗面領域を有さないこと以外は、実施例1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。本比較例の基材の成形には、キャビティを形成する全ての面が鏡面加工(Ra:0.1μm)されている金型を用いた。したがって、基材の表面粗さ(Ra)は、0.1μmであった。
[比較例2]
本比較例では、比較例1と同様に粗面領域を有さない基材を用いた。また、基材の表面に触媒活性妨害層を形成した後、平板である基材の一方の面の全面にレーザー光を照射し
た。それ以外は実施例1と同様の方法により、本比較例のメッキ部品を製造した。
(1)基材(樹脂成形体)の成形、及び触媒活性妨害層の形成
比較例1と同様の方法により、粗面領域を有さない基材を成形した。したがって、基材の表面粗さ(Ra)は、0.1μmであった。次に、実施例1と同様の方法により、基材の表面に厚さ60nmの触媒活性妨害層を形成した。
(2)レーザー光照射
レーザー描画装置(キーエンス製、MD-V9929WA、YVOレーザー、波長1064nm)を用いて、平板である基材の一方の面の全面を0.1mmピッチの格子状にレーザー描画した。レーザー描画は、描画速度1200mm/sec、周波数50kHz、パワー60%で行った。レーザー描画に伴う加工時間は、80秒であった。レーザー描画後、レーザー描画によって基材から飛散した樹脂粒子を除去するため、30℃の脱脂剤(奥野製薬工業社製、IPCクリーンHAC)に5分間浸漬した。
(3)無電解メッキ触媒の付与、及び無電解メッキ
実施例1と同様の方法により、基材に無電解メッキ触媒を付与し、その後、無電解メッキ膜を形成した。
[無電解メッキ膜析出性の評価]
実施例1~2及び比較例1~2で作製したメッキ部品を目視で観察し、以下の評価基準に基づいて無電解メッキ膜の析出性について評価した。
<評価1:基材の一方の面の評価>
○:全体に無電解メッキ膜が析出している。
×:少なくとも一部に、無電解メッキ膜が析出していない。

<評価2:基材の他方の面の評価>
○:無電解メッキ膜が析出していない。
×:少なくとも一部に、無電解メッキ膜が析出している。

<総合評価>
○:評価1~2の評価結果がどちらも良好(○)である。
×:評価1~2の評価結果がどちらかが不良(×)である。
表1に、実施例1~2及び比較例1~2における、基材の表面粗さ、最大高さ粗さ、触媒活性妨害層の厚さ、レーザー描画速度、レーザー光照射に伴う基材の加工時間、及び無電解メッキ膜析出性の評価結果を示す。
Figure 0007474360000002
表1に示す実施例1~2は、基材の一方の面の全面(粗面領域10A)のみに無電解メッキ膜が析出し(無電解メッキ膜が形成され)、無電解メッキ膜析出性の総合評価は良好であった。また、基材にレーザー光を照射しないため、その分、メッキ部品の製造時間を短縮できた。
一方、粗面領域を有さない比較例1では基材に無電解メッキ膜が形成されなかった。比較例1では、基材の全面に触媒活性妨害層が形成されている。これにより、基材に付与された無電解メッキ触媒が非活性化され、基材上で無電解メッキ反応が生じなかったと推測される。また、基材の一方の面の全面にレーザー光を照射した比較例2では、レーザー光の照射により触媒活性妨害層が除去されたため、基材の一方の面に無電解メッキ膜が形成された。しかし、レーザー光照射に伴う基材の加工時間が発生し、その分、メッキ部品の製造時間が長くなった。更に、レーザー光を照射していない他方の面にも無電解メッキ膜が析出してしまった。これは、一方の面のレーザー光照射により、他方の面上の触媒活性妨害層が熱変性したためだと推測される。熱変性した触媒活性妨害層上に付与された無電解メッキ触媒は活性が維持され、無電解メッキ反応が生じたと推測される。
以下に説明する実施例3~4及び比較例3~4では、平板の基材の一方の面の全面、及び他方の面の一部(パターン1)が、無電解メッキ膜を形成する予定の所定領域である。
[実施例3]
本実施例では、基材の表面に触媒活性妨害層を形成した後、平板である基材の他方の面の一部(パターン1)にレーザー光を照射し、光照射部分10Cを形成した(図5(c)参照)。それ以外は実施例1と同様の方法により、図5(e)に示す、粗面領域10Aと光照射部40Cのみに無電解メッキ膜40が形成されたメッキ部品300を製造した。
(1)基材(樹脂成形体)の成形、及び触媒活性妨害層の形成
実施例1と同様の方法により、一方の面の全面が粗面領域(Ra:3μm)であり、それに対向する他方の面の全面が他の領域(Ra:0.1μm、Rz:1μm)である基材
を成形した。次に、実施例1と同様の方法により、基材の表面に厚さ60nmの触媒活性妨害層を形成した。
(2)レーザー光照射
比較例2で用いたレーザー描画装置を用いて、平板である基材の他方の面において、パターン1内を0.1mmピッチの格子状にレーザー描画した。パターン1は、幅0.5mm、長さ50mmの細線3本をライン間スペース0.5mmで並べたパターンである。レーザー描画は、描画速度1200mm/sec、周波数50kHz、パワー60%で行った。レーザー描画に伴う加工時間は、10秒であった。レーザー光照射後、レーザー光照射によって基材から飛散した樹脂粒子を除去するため、30℃の脱脂剤(奥野製薬工業社製、IPCクリーンHAC)に5分間浸漬した。
(3)無電解メッキ触媒の付与、及び無電解メッキ
実施例1と同様の方法により、基材に無電解メッキ触媒を付与し、その後、無電解メッキ膜を形成した。
[実施例4]
本実施例では、基材の粗面領域の表面粗さ(Ra)を20μm、他の領域の表面粗さ(Ra)を1μm、触媒活性妨害層の厚さを300nmとした。それ以外は、実施例3と同様の方法によって、図5(e)に示す、粗面領域10Aと光照射部40Cのみに無電解メッキ膜40が形成されたメッキ部品300を製造した。尚、本実施例の基材は、第2の実施例に用いた金型を用いて成形し、触媒活性妨害層の形成に用いたポリマー溶液中のポリマー濃度は2.5重量%とした。また、基材の他方の面の最大高さ粗さ(Rz)は3μm
であった。
[比較例3]
本比較例では、比較例1と同様に粗面領域を有さない基材を用いた。また、基材の表面に触媒活性妨害層を形成した後、平板である基材の一方の面の全面、及び他方の面の一部(パターン1)にレーザー光を照射した。それ以外は実施例1と同様の方法により、本比較例のメッキ部品を製造した。
(1)基材(樹脂成形体)の成形、及び触媒活性妨害層の形成
比較例1と同様の方法により、粗面領域を有さない基材を成形した。したがって、基材の表面粗さ(Ra)は、0.1μmであった。次に、実施例1と同様の方法により、基材の表面に厚さ60nmの触媒活性妨害層を形成した。
(2)レーザー光照射
比較例2で用いたレーザー描画装置を用いて、比較例2と同様の条件で、平板である基材の一方の面の全面にレーザー描画した。レーザー描画に伴う加工時間は、80秒であった。次に、平板である基材の他方の面に、実施例3と同様の方法でパターン1内をレーザー描画した。レーザー描画に伴う加工時間は、10秒であった。レーザー光照射後、レーザー光照射によって基材から飛散した樹脂粒子を除去するため、3 0℃の脱脂剤(奥野製薬工業社製、IPCクリーンHAC)に5分間浸漬した。
(3)無電解メッキ触媒の付与、及び無電解メッキ
実施例1と同様の方法により、基材に無電解メッキ触媒を付与し、その後、無電解メッキ膜を形成した。
[比較例4]
本比較例では、平板である基材の一方の面の全面をレーザー描画する描画速度を480
0mm/secとした以外は、比較例3と同様の方法により、本比較例のメッキ部品を製造した。一方の面の全面のレーザー描画に伴う加工時間は、25秒であった。
[無電解メッキ膜析出性の評価]
実施例3~4及び比較例3~4で製造したメッキ部品を目視で観察し、以下の評価基準に基づいて無電解メッキ膜の析出性について評価した。
<評価1:基材の一方の面の評価>
○:全体に無電解メッキ膜が析出している。
×:少なくとも一部に、無電解メッキ膜が析出していない。

<評価2:基材の他方の面における、パターン1以外の領域の評価>
○:無電解メッキ膜が析出していない。
×:少なくとも一部に、無電解メッキ膜が析出している。

<評価3:パターン1の評価>
○:全体に無電解メッキ膜が析出している。
×:少なくとも一部に、無電解メッキ膜が析出していない。

<総合評価>
○:評価1~3の評価結果が全て良好(○)である。
×:評価1~3の評価結果のいずれかが不良(×)である。
表2に、実施例3~4及び比較例3~4における、基材の表面粗さ、最大高さ粗さ、触媒活性妨害層の厚さ、レーザー描画速度、レーザー光照射に伴う基材の加工時間、及び無電解メッキ膜析出性の評価結果を示す。
Figure 0007474360000003
実施例3~4では、基材の一方の面の全面(粗面領域10A)及び他方の面のパターン1(光照射部分10C)のみに無電解メッキ膜が析出し(無電解メッキ膜が形成され)、無電解メッキ膜析出性の総合評価は良好であった。パターン1のライン間スペースにも無電解メッキ膜は析出しなかった。また、レーザー光は、パターン1のみに照射するため、比較例3~4と比較して、レーザー描画に伴う加工時間が短かった。このため、実施例3~4は、比較例3~4と比較して、メッキ部品の製造時間を短縮できた。
一方、粗面領域を有さない基材の一方の面の全面、及び他方の面のパターン1にレーザー光を照射した比較例3では、レーザー光の照射により触媒活性妨害層が除去されたため、基材の一方の面及びパターン1に無電解メッキ膜が形成された。しかし、レーザー光を照射していない部分(他方の面のパターン1以外の領域)にも無電解メッキ膜が析出して
しまった。特に、パターン1のライン間スペースに無電解メッキ膜が析出して、隣接する
ライン同士が連結してしまった。これは、レーザー光照射により、その近傍のレーザー光非照射部分に形成された触媒活性妨害層が熱変性したためだと推測される。熱変性した触
媒活性妨害層上に付与された無電解メッキ触媒は活性が維持され、無電解メッキ反応が生じたと推測される。また、比較例3では、パターン1に加えて、基材の一方の面全面にもレーザー光を照射した。このため、比較例3は、実施例3及び4と比較して、レーザー描画に伴う加工時間が長く、その分、メッキ部品の製造時間が長くなった。
また、一方の面の全面をレーザー描画する描画速度を大きくした比較例4では、レーザー光を照射していない部分(他方の面のパターン1以外の領域)への無電解メッキ膜の析出を抑制できた。これは、レーザー描画速度を大きくしたことで、基材へ伝わる熱エネルギーが小さくなり、レーザー光非照射部分の温度上昇が抑制されたためと推測される。しかし、比較例4では、レーザー光照射部分(一方の面)において、無電解メッキ膜の未析出部分が発生してしまった。これは、レーザー描画速度を大きくしたことで、基材へ伝わる熱エネルギーが小さくなり、触媒活性妨害層を十分に除去できなかったためだと推測される。触媒活性妨害層が残存する部分に付与された無電解メッキ触媒は触媒活性が失活し、無電解メッキ反応が生じなかったと推測される。
以下に説明する実施例5及び比較例5~6では、平板の基材の一方の面の一部(パターン2)がメッキ膜を形成する予定の所定領域である。
[実施例5]
本実施例では、平板の一方の面の一部(パターン2)に粗面領域10Aを形成した基材を用いて、図4(e)に示す、粗面領域10Aのみに無電解メッキ膜40を有するメッキ部品200を製造した。
(1)基材(樹脂成形体)の成形
成形に用いる金型のキャビティを区画する面に、比較例2で用いたレーザー描画装置を用いて、凹凸構造(パターン2)を形成した。パターン2は、幅0.3mm、長さ50mmの細線6本をライン間スペース0.2mmで並べたパターンである。凹凸構造は、パターン2内を0.1mmピッチの格子状にレーザー描画して形成した。レーザー描画は、描画速度4800mm/sec、周波数50kHz、パワー80%で行った。
凹凸構造を形成した金型内に、汎用の射出成形機を用いてナイロン(実施例1と同様)を射出充填して、40cm×60cm×0.2cmの平板を成形した。金型の凹凸構造が基材表面に転写され、基材の成形と同時に、凹凸構造に対応する粗面領域(パターン2)が形成された。粗面領域の表面粗さ(Ra)は3μmであり、他の領域の表面粗さ(Ra)は0.1μm、最大高さ粗さ(Rz)は1μmであった。
(2)触媒活性妨害層の形成
実施例1と同様の方法により、基材の表面に厚さ120nmの触媒活性妨害層を形成した。但し、触媒活性妨害層の形成に用いたポリマー溶液中のポリマー濃度は1重量%とした。
(3)レーザー光照射
比較例2で用いたレーザー描画装置を用いて、基材のパターン2(粗面領域)に重ねて、幅0.25mm、長さ50mmの細線6本をライン間スペース0.25mmで並べたパターンをレーザー描画した。パターン内は、0.1mmピッチの格子状にレーザー描画した。レーザー描画の条件は、描画速度4800mm/sec、周波数50kHz、パワー60%とした。レーザー描画に伴う加工時間は、3秒であった。レーザー光照射後、レーザー光照射によって基材から飛散した樹脂粒子を除去するため、30℃の脱脂剤(奥野製薬工業社製、IPCクリーンHAC)に5分間浸漬した。
(4)無電解メッキ触媒の付与、及び無電解メッキ
実施例1と同様の方法により、基材に無電解メッキ触媒を付与し、その後、無電解メッキ膜を形成した。
[比較例5]
本比較例では、基材が粗面領域を有さず、レーザー描画の描画速度を1200mm/secとした以外は、実施例5と同様の方法により、本比較例のメッキ部品を製造した。レーザー描画に伴う加工時間は、10秒であった。
[比較例6]
本比較例では、基材が粗面領域を有さない以外は、実施例5と同様の方法により、本比較例のメッキ部品を製造した。
[無電解メッキ膜析出性の評価]
実施例5及び比較例5~6で作製したメッキ部品を目視で観察し、以下の評価基準に基づいて無電解メッキ膜の析出性について評価した。
<評価1:パターン2の評価>
○:全体に無電解メッキ膜が析出している。
×:少なくとも一部に、無電解メッキ膜が析出していない。

<評価2:パターン2以外の領域の評価>
○:無電解メッキ膜が析出していない。
×:少なくとも一部に、無電解メッキ膜が析出している。

<総合評価>
○:評価1~2の評価結果がどちらも良好(○)であ。
×:評価1~2の評価結果がどちらかが不良(×)である。
表3に、実施例5及び比較例5~6における、基材の表面粗さ、最大高さ粗さ、触媒活性妨害層の厚さ、レーザー描画速度、レーザー光照射に伴う基材の加工時間、及び無電解メッキ膜析出性の評価結果を示す。
Figure 0007474360000004
表3に示すように、実施例5では、基材上のパターン2(粗面領域10A)のみに無電解メッキ膜が析出し(無電解メッキ膜が形成され)、無電解メッキ膜析出性の総合評価は良好であった。パターン2(粗面領域)上に触媒活性妨害層は形成され難いため、その上に存在する触媒活性妨害層の量は比較的少ない。実施例5では、パターン2をレーザー描画することで、そこに存在する少量の触媒活性妨害層を除去している。これにより、実施例5のパターン2は、無電解メッキ膜有無のコントラストが明確であり、パターン2のライン間スペースにも無電解メッキ膜は析出しなかった。また、パターン2に存在する触媒活性妨害層の量は比較的少ないため、実施例5では、比較的低い熱エネルギーでパターン2上の触媒活性妨害層を除去できる。このため、実施例5では、レーザー描画速度を大きくでき、後述する比較例5と比較して、レーザー描画に伴う加工時間が短かった。実施例5は、比較例5と比較して、メッキ部品の製造時間を短縮できた。
一方、粗面領域を有さない基材のパターン2にレーザー光を照射した比較例5では、レーザー光の照射により触媒活性妨害層が除去されたため、パターン2に無電解メッキ膜が形成された。しかし、レーザー光を照射していない部分(パターン2以外の領域)にも無電解メッキ膜が析出してしまった。具体的には、パターン2のライン間スペースに無電解メッキ膜が析出して、隣接するライン同士が連結してしまった。この原因は以下のように推測される。上述の実施例5と比較して、比較例5のパターン2上に存在する触媒活性妨害層の量は多い。したがって、比較例5のパターン2上に存在する触媒活性妨害層を除去するためには、比較的高い熱エネルギーをパターン2に与える必要がある。このため、比較例5では、実施例5よりも小さいレーザー描画速度で、レーザー描画をおこなった。こ
れにより、パターン2近傍のレーザー光非照射部分に形成された触媒活性妨害層が熱変性し、そこに付与された無電解メッキ触媒は活性が維持され、無電解メッキ反応が生じたと推測される。また、レーザー描画速度が小さいため、比較例5は、実施例5と比較してレーザー描画に伴う加工時間が長く、その分、メッキ部品の製造時間が長くなった。
また、パターン2でのレーザー描画速度を大きくした比較例6では、レーザー光を照射していない部分(パターン2以外の領域)への無電解メッキ膜の析出を抑制できた。これは、レーザー描画速度を大きくしたことで、基材へ伝わる熱エネルギーが小さくなり、レーザー光非照射部分の温度上昇が抑制されたためと推測される。しかし、比較例6では、パターン2において、無電解メッキ膜の未析出部分が発生してしまった。これは、レーザー描画速度を大きくしたことで、基材へ伝わる熱エネルギーが小さくなり、触媒活性妨害層を十分に除去できなかったためだと推測される。触媒活性妨害層が残存する部分に付与された無電解メッキ触媒は触媒活性が失活し、無電解メッキ反応が生じなかったと推測される。
本発明のメッキ部品の製造方法によれば、メッキ部品の製造時間を短縮すると共に、所定領域以外での無電解メッキ膜の生成を抑制し、所定領域のみに無電解メッキ膜を形成できる。したがって、本発明は、電気回路を有する電子部品や、三次元回路部品(MID:Molded Interconnect Device)の製造に利用できる。
20 基材
20A 粗面領域
20B 他の領域
10C 加熱又は光照射した部分(光照射部分)
20 触媒活性妨害層
30 無電解メッキ触媒
40 無電解メッキ膜
100、200、300 メッキ部品

Claims (12)

  1. メッキ部品の製造方法であって、
    その表面に粗面領域と、前記粗面領域以外の他の領域とを有する基材を用意することと、
    前記基材の表面に、側鎖にアミド基及びジチオカルバメート基を有する触媒失活剤を含む触媒活性妨害層を形成することと、
    前記触媒活性妨害層を形成した前記基材の表面に、無電解メッキ触媒を付与することと、
    前記無電解メッキ触媒を付与した前記基材の表面に無電解メッキ液を接触させ、前記粗面領域に無電解メッキ膜を形成することとを含む、メッキ部品の製造方法。
  2. 前記粗面領域の表面粗さが、前記他の領域の最大高さ粗さ(Rz)より大きい、請求項1に記載のメッキ部品の製造方法。
  3. 前記粗面領域の表面粗さが、前記他の領域の表面粗さ(Ra)の2倍以上である、請求項1又は2に記載のメッキ部品の製造方法。
  4. 前記粗面領域の表面粗さが、前記触媒活性妨害層の厚さよりも大きい、請求項1~3のいずれか一項に記載のメッキ部品の製造方法。
  5. 前記触媒活性妨害層の厚みが、0.01μm以上、且つ5μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のメッキ部品の製造方法。
  6. 前記基材を用意することが、前記基材の形状に対応するキャビティを有する金型を用いて前記基材を成形することであり、
    前記キャビティを区画する前記金型の表面には、前記粗面領域に対応する凹凸構造が形成されており、
    前記基材を成形するとき、前記凹凸構造が前記基材の表面に転写されることにより、前記粗面領域が形成される、請求項1~5のいずれか一項に記載するメッキ部品の製造方法。
  7. 前記基材の表面に前記触媒活性妨害層を形成した後、前記粗面領域の少なくとも一部を加熱又は光照射することを更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のメッキ部品の製造方法。
  8. 前記基材の表面に前記触媒活性妨害層を形成した後、
    前記他の領域の一部、又は、前記粗面領域における前記他の領域との境界部を加熱又は光照射することを更に含み、
    前記粗面領域、及び前記加熱又は光照射した部分に、無電解メッキ膜が形成される、請求項1~7のいずれか一項に記載のメッキ部品の製造方法。
  9. 前記基材の表面に前記触媒活性妨害層を形成した後、前記他の領域の一部を加熱又は光照射することを含み、
    前記粗面領域と、前記加熱又は光照射した部分とは、接触しており、前記粗面領域から前記加熱又は光照射した部分にかけて連続した無電解メッキ膜が形成される、請求項8に記載のメッキ部品の製造方法。
  10. 前記加熱又は光照射することが、レーザー光を照射することである、請求項7~9のいずれか一項に記載のメッキ部品の製造方法。
  11. 前記無電解メッキ膜が前記基材上で電気回路を形成する、請求項1~10のいずれか一項に記載のメッキ部品の製造方法。
  12. 前記触媒失活剤がポリマーである、請求項1~11のいずれか一項に記載のメッキ部品の製造方法。
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