JP7471565B2 - 水洗大便器 - Google Patents

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Description

本発明は、洗浄水により便器本体を洗浄する水洗大便器に関する。
従来から、ボウル形状の汚物受け面と汚物受け面の上縁部に沿って形成されるリム部とを有するボウル部と、ボウル部に洗浄水を吐水して旋回流を形成する第1の吐水口及び第2の吐水口とを備えた水洗大便器が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の水洗大便器において、リム部の内周面が略垂直方向に延びる平坦面により形成されている。つまり、リム部の内周面がオーバーハングした形状となっていない。そのため、リム部がオーバーハングしている水洗大便器に比べて、ボウル部の清掃性が向上する。
また、特許文献1に記載の水洗大便器において、第1の吐水口は、ボウル部の中心を通り前後方向に延びる線を挟んで一方の側の後方寄りに位置し、第2の吐水口は、第1の吐水口から吐水された洗浄水が最も飛散し易い領域であるボウル部の前後方向に延びる線を挟んで他方の側の前方寄りでリム部の曲率半径が小さい領域の下流側で曲率半径が大きくなる領域に位置している。そのため、第1の吐水口から吐水された洗浄水が、第2の吐水口から吐水される洗浄水によって誘導される。これにより、第1の吐水口から吐水された洗浄水がリム部を超えて飛散することを抑制している。
さらに、ボウル部の後部に位置している第1の吐水口は、水平方向に扁平な開口であるので、第1の吐水口から吐水される洗浄水の上方向の流れ成分を極力なくすことができる。これにより、リム部の内周面が略垂直方向に延びる平坦面により形成されている場合、つまり、リム部の内周面がオーバーハングしていない場合であっても、第1の吐水口から吐水された洗浄水がリム部を超えて飛散することをより効果的に抑制している。
特開2012-207503号公報
しかしながら、上述した従来の水洗大便器において、第1の吐水口はボウル部の後部に形成されているので、第1の吐水口と水洗大便器の前方側に立った使用者とが対向することになる。言い換えると、水洗大便器の前方側に立った使用者から視認しやすい位置であるボウル部の後方側に、第1の吐水口が形成されている。そのため、水洗大便器の意匠性が低下してしまうといった懸念がある。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、便器本体の洗浄性及び清掃性を維持しつつ、便器本体の意匠性を向上させることができる水洗大便器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る水洗大便器によれば、洗浄水により便器本体を洗浄する水洗大便器であって、ボウル形状の汚物受け面と、汚物受け面の上縁部に沿って形成されその内周面が鉛直方向に立ち上がるように形成されたリム部と、を有するボウル部と、ボウル部に洗浄水を吐水して旋回流を形成する吐水口と、吐水口に洗浄水を供給する導水路と、を備え、導水路の下流端部には、絞り流路が形成され、吐水口は、横長形状の開口であり、ボウル部の後半部において、上面視で、ボウル部の前後方向に沿う直線と、リム部の内周面を表す曲線上の吐水口の幅の中央位置における接線に対する垂線と、のなす角が45度となる位置よりも前方に形成されている。
この構成によれば、ボウル部の後半部において、上面視で、ボウル部の左右中心線と、リム部の内周面を表す曲線上の吐水口の幅の中央位置における接線に対する垂線とのなす角が45度となる位置よりも吐水口が前方に形成されている。これにより、使用者が視認できる幅寸法を抑制することができ、使用者が吐水口を視認しにくくなる。そのため、便器本体の意匠性を向上させることができる。
さらに、導水路の下流端部には絞り流路が形成されているので、吐水口から吐水される水の勢いを向上させつつ、吐水の流れを規制することができる。加えて、吐水口が横長形状の開口であるので、吐水口から吐水される洗浄水の上方向の流れ成分を抑制することができる。そのため、内周面が鉛直方向に立ち上がるように形成された清掃性が高いリム部においても、ボウル部に形成される旋回流の旋回性を向上させることができる。
このように、便器本体の洗浄性及び清掃性を維持しつつ、便器本体の意匠性を向上させることができる。
また、本発明の一態様に係る水洗大便器において、好ましくは、吐水口の上下方向の大きさが、後方側よりも前方側の方が小さい。
この構成によれば、吐水口の上下方向の大きさにおいて、後方側よりも前方側の方が小さいので、導水路からより離れた位置(より下流側の位置)である前方側部分の吐水口の流路断面の方が、後方側部分の吐水口の流路断面よりも絞られている。これにより、吐水口から吐水された水は、リム部の内周縁の接線方向に対して勢いよく流れる。そのため、洗浄水がリム部を超えて飛散してしまうことを抑制しつつ、ボウル部内に旋回流を良好に生成することができる。
また、本発明の一態様に係る水洗大便器において、好ましくは、導水路の下流端部には、流れ方向に沿って延びる板面が上下に配向した整流板が設けられている。
この構成によれば、導水路の下流端部には、流れ方向に沿って延びる板面が上下に配向した整流板が設けられているので、吐水口から吐水される水の流れを規制することができる。これにより、吐水口から吐水される水の流れを安定化させることができる。そのため、洗浄水がリム部を超えて飛散してしまうことを抑制しつつ、ボウル部内に旋回流を良好に生成することができる。
また、本発明の一態様に係る水洗大便器において、好ましくは、洗浄水源から導水路に洗浄水を吐水するディストリビューターを備える。
この構成によれば、洗浄水源から導水路に洗浄水を導いて吐水するディストリビューターを備えているので、洗浄水源から吐水口に至るまでの水洗大便器の形状をより簡便にすることができる。そのため、水洗大便器を製造するための型を簡便にすることができ、水洗大便器の生産性を向上させることができる。
また、ディストリビューターを備えていることにより、吐水口から吐水される洗浄水の流れをより安定化させることができる。そのため、洗浄水がリム部を超えて飛散してしまうことをより抑制しつつ、ボウル部内に旋回流を良好に生成することができる。
本発明によれば、水洗大便器において、便器本体の洗浄性及び清掃性を維持しつつ、便器本体の意匠性を向上させることができる。
本発明の第一実施形態に係る水洗大便器の上面図である。 図1のII-II線に沿って見た断面図である。 図2のIII-III線に沿って見た断面図である。 本発明の第一実施形態に係る吐水口の位置についての説明図である。 本発明の第一実施形態に係る吐水口についての説明図である。 (a)本発明の第一実施形態に係る吐水口の開口を前方から見たときの図である。(b)本発明の第一実施形態に係る吐水口の開口を吐水口の開口と対向する方向から見たときの図である。 本発明の第一実施形態に係る水洗大便器の水の流れを表した模式図である。 本発明の第二実施形態に係る水洗大便器の平面断面図である。 本発明の第三実施形態に係る水洗大便器の正面断面図である。
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第一実施形態)
<水洗大便器の構成>
まず、図1~図3を参照して、本発明の第一実施形態に係る水洗大便器について説明する。なお、以下においては、図中に示す方向を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る水洗大便器の上面図である。図2は、図1のII-II線に沿って見た断面図である。図3は、図2のIII-III線に沿って見た断面図である。
図1及び図2に示すように、水洗大便器1は、陶器等からなる便器本体2と、洗浄水源であるタンク装置4とを備えている。タンク装置4は、便器本体2の後方側の上方に載置されており、上水道等の給水源(図示せず)に接続されている。このタンク装置4の操作レバーやリモコン(図示せず)等が操作されると、タンク装置4の排出口(図示せず)から便器本体2の中央後方側の上面に開口した供給口6へ洗浄水が供給される。
なお、本実施形態においては、タンク装置4が給水装置としての機能を果たす。
便器本体2の前方側には、内部に汚物等が排出されるボウル部8が形成されており、このボウル部8の下方には、溜水部10が形成されている。溜水部10には、所定量の溜水が形成されている。なお、図2に示す水位W0は、溜水の初期水位である。この溜水部10の下端には、水洗大便器1の外部へ汚物等を排出するための排水トラップ管路12の入口12aが接続されている。排水トラップ管路12は、その入口12aから後方へと延び、その出口12bが床面に設置された排出管(図示せず)に接続されている。
ボウル部8は、上面視において、全体として略卵形状を有している。ボウル部8は、左右方向について略対称な外形を有する。また、ボウル部8は、ボウル形状の汚物受け面14と、汚物受け面14の上縁部に沿って形成されるリム部16とを有する。
汚物受け面14は、その下縁部から上縁部に向かって徐々に広がっていくように、すり鉢状に形成されている。言い換えると、汚物受け面14が、縦方向断面においてその下縁部から上縁部に向かって徐々に拡大するように形成されている。
リム部16は、汚物受け面14の上縁部に沿って環状に形成されており、その内周面が鉛直方向に立ち上がるように形成されている。つまり、リム部16の内周面は、全周にわたって、ボウル部8の内側に向かってオーバーハングすることなく、汚物受け面14の上縁部から略鉛直方向に延びる平坦面により形成されている。そのため、リム部の内周面がオーバーハングしている場合と比べて、汚れが付着する死角範囲を減少させることができ、かつ、リム部16の内周面を清掃するときの清掃性を向上させることができる。
また、リム部16の上方には、図示しない便座が載置されている。この便座は、リム部16に沿って環状に設けられている。また、上面視において、便座の内周縁は、略全周にわたってリム部16の内周面よりもボウル部8の内側に庇状にせり出している。
なお、便座の内周縁の全周がリム部16の内周面よりもボウル部8の内側にせり出していなくてもよく、後述する吐水口18の上方付近における便座の内周縁がリム部16の内周面よりもボウル部8の内側に庇状にせり出していればよい。
また、便座の上方に便蓋(図示せず)が設けられていてもよい。
図3に示すように、上面視においてボウル部8の中央よりも後方側の部分であるボウル部8の後半部におけるリム部16の内周面には、ボウル部8に洗浄水を吐水して汚物受け面14に旋回流を形成する吐水口18が開口している。この吐水口18は、横長形状の開口、つまり、水平方向に長い扁平形状の開口である。また、リム部16の内周面に形成されている吐水口は、吐水口18のみである。つまり、ボウル部8に洗浄水を吐水して汚物受け面14に旋回流を形成する吐水口は、吐水口18の一穴のみである。
なお、吐水口18が開口している位置等については、後に詳述する。
便器本体2の後方側上部には、吐水口18に洗浄水を供給する導水路20が形成されている。導水路20は、供給口6から前方に向かって延びる流路であり、供給口6と吐水口18とを接続する。また、導水路20の流路底面は、供給口6から吐水口18側(前方側)に向かって下方に傾斜している。また、導水路20内に水が残らないように、導水路20の流路底面の外縁や仕切り壁によって形成される袋小路状流路の奥端から吐水口18に向かって下方に傾斜しており、導水路20の下流端部の流路底面が、導水路20の流路底面のうちで最も低い高さ位置に形成されている。タンク装置4から供給口6へ流入した洗浄水は、この導水路20を通って吐水口18へ流れる。
また、導水路20の下流端部には、上流から下流へ向かって流路断面積が絞られる絞り流路22が形成されている。本実施形態においては、絞り流路22は、水平方向の流路幅が絞られた流路であり、後述する整流板24の下流側に形成されている。
なお、絞り流路22は、水平方向の流路幅でなく、鉛直方向やその他の方向の流路幅を絞るように形成されていてもよい。また、単一の方向だけでなく、複数の方向の流路幅を絞るように形成されていてもよい。
さらに、導水路20の下流端部には、流れ方向に沿って延びる板面が上下に配向した整流板24が設けられている。この整流板24は、吐水口18の後方端部から導水路20内に向かって延びる板状の部分である。図3に示すように、平面断面視において、整流板24の下流側は、吐水口18の後部側の縁部に繋がり、吐水口18の後部側の縁部を形成する周壁面部とともに鋭角状の角部を形成する。導水路20を流れる洗浄水は、整流板24によって吐水口18へ導かれる。また、整流板24の上端及び下端は、導水路20の流路を形成している上面及び底面に連続して形成されている。つまり、整流板24は、便器本体2の一部として設けられている。
<吐水口について>
つぎに、図4~図6を参照して、本発明の第一実施形態に係る吐水口について詳述する。
図4は、本発明の第一実施形態に係る吐水口の位置についての説明図である。図5は、本発明の第一実施形態に係る吐水口についての説明図である。図6の(a)は、本発明の第一実施形態に係る吐水口の開口を前方から見たときの正面図である。図6の(b)は、本発明の第一実施形態に係る吐水口の開口を吐水口の開口と対向する方向から見たときの正面図である。
なお、図4及び図5は、図2のIII-III線に沿って見た断面図である。
また、水洗大便器1の上面視を示す図4において、ボウル部8の中央位置をC1、吐水口18の幅の中央位置をC2、ボウル部8の中央位置C1を通り前後方向に沿う直線(左右中心線)をL、リム部16の内周面を表す曲線上の吐水口18の幅の中央位置C2における接線をP、接線Pに対する垂線をT、垂線Tと左右中心線Lとのなす角度をRで示している。ここで、ボウル部8の中央位置C1は、リム部16の内周面の前端と後端を結ぶ線の略中間位置における点である。
さらに、図5及び図6において、吐水口18を前方(水洗大便器1の前方)から見たときの吐水口18の幅をB1、吐水口18を垂線Tに沿う方向(吐水口18に正対する方向)から見たときの吐水口18の幅をB2で示している。
また、図6において、吐水口18を前方から見たときの吐水口18の開口面積をS1、吐水口18を垂線Tに沿う方向から見たときの吐水口18の開口面積をS2で示している。つまり、開口面積S1は、吐水口18の前方視における見かけ上の開口面積であり、開口面積S2は、吐水口18の実質上の開口面積である。
図4及び図5に示すように、吐水口18は、ボウル部8の後半部(ボウル部8の中央位置C1よりも後方側の部分)において、上面視で、ボウル部8の左右中心線Lと、リム部16の内周面を表す曲線上の吐水口18の幅の中央位置C2における接線Pに対する垂線Tとのなす角度Rが45度となる位置よりも前方に形成されている。本実施形態においては、上面視で左右中心線Lと垂線Tとのなす角度Rが45度となる位置に、吐水口18が形成されている。
また、吐水口18の上下方向の大きさにおいて、後方側よりも前方側が小さく形成されている。具体的には、吐水口18は、その開口の上下方向長さが後方側から前方側に向かって徐々に小さくなるように形成されている(図6参照)。本実施形態では、吐水口18は、ボウル部8の後半部におけるリム部16の右側の部分に開口しており、上下方向の長さが左側(図6(a)、(b)において右側)から右側(同左側)にかけて徐々に短くなっている。また、吐水口18は、略横台形状であり、上下方向については略対称的な形状を有する。したがって、吐水口18は、その開口を形成する辺部として、後方側の長辺部と、前方側の短辺部と、上下の斜辺部とを有する。
さらに、吐水口18は、汚物受け面14の上縁(汚物受け面14とリム部16の境界)に吐水口18の下端が接するように形成される。このため、吐水口18から汚物受け面14へ万遍なく洗浄水を吐水することができる。さらに、鉛直方向に立ち上がるリム部16の内周面に吐水口18が開口しているので、上面視で吐水口18を見えにくくすることができ、意匠性を向上させることができる。
ここで、吐水口18は上面視で角度Rが45度となる位置に形成されているので、前方から吐水口18を見たときの吐水口18の幅の大きさと、吐水口18の開口と対向する方向(垂線Tに沿う方向)から吐水口18を見たときの吐水口18の幅の大きさは異なる。具体的には、吐水口18の開口と対向する方向(正対する方向)から吐水口18を見たときの幅B2よりも、前方から吐水口18を見たときの吐水口18の幅B1の方が小さくなる。より詳しくは、吐水口18は上面視で角度Rが45度となる位置に形成されているので、B1とB2の大きさの比は、概略、「B1:B2=1:1.4(ルート2相当)」となる。
また、図6に示すように、前方から吐水口18を見たときの方向と、吐水口18の開口と対向する方向から吐水口18を見たときの方向は、どちらも水平面上における方向であるため、前方から見たときと吐水口18の開口と対向する方向から見たときとで、吐水口18の上下方向の長さは略変化しない。そのため、前方から吐水口18を見たときの吐水口18の開口面積S1と、吐水口18の開口と対向する方向から吐水口18を見たときの開口面積S2との比は、吐水口18の幅の大きさの比、つまり、幅B1と幅B2の大きさの比に依存する。前述したように、幅B1と幅B2の大きさの比は、概略、「B1:B2=1:1.4」であるため、吐水口18の開口面積S1と開口面積S2の比は、概略、「S1:S2=1:1.4」となる。言い換えると、吐水口18の開口と対向する方向から吐水口18を見たときの開口面積S2に比べて、前方から吐水口18を見たときの吐水口18の開口面積S1は、約70%の大きさとなる。
このように、前方から吐水口18を見たときの吐水口18の開口面積S1は、吐水口18の開口と対向する方向から吐水口18を見たときの吐水口18の開口面積S2よりも小さい。ここで、仮に吐水口がリム部16の後端部に形成されているとすると、この吐水口を前方から見たときの吐水口の開口面積は、吐水口18の開口面積S2と同一となる。つまり、リム部16の後端部に形成されている吐水口を前方から見たときよりも、上面視で角度Rが45度となる位置に形成されている吐水口18を前方から見たときの方が、吐水口がより小さく見える。
また、ボウル部8の後半部において、吐水口18の位置が上面視で左右中心線Lと垂線Tとのなす角度Rが45度となる位置よりも前方であるほど、前方に投影された吐水口18の開口面積S1は小さくなる、つまり、前方から見たときの吐水口18がより小さく見える。
本実施形態においては、吐水口18の位置が上面視で左右中心線Lと垂線Tとのなす角度Rが45度となる位置である場合を説明したが、より高い意匠性を鑑みると、吐水口18の位置が上面視で左右中心線Lと垂線Tとのなす角度Rが60度となる位置よりも前方側であれば、より好ましい。
上面視で角度Rが60度となる位置に吐水口18が形成されている場合、前方から吐水口18を見たときの吐水口18の幅B1と、吐水口18の開口と対向する方向から吐水口18を見たときの吐水口18の幅の大きさの比は、「B1:B2=1:2」となる。そのため、前方から吐水口18を見たときの吐水口18の開口面積S1と吐水口18の開口と対向する方向から吐水口18を見たときの吐水口18の開口面積S2の比は、概略、「S1:S2=1:2」となる。言い換えると、吐水口18の開口と対向する方向から吐水口18を見たときの吐水口18の開口面積S2に比べて、前方から吐水口18を見たときの吐水口18の開口面積S1は、約50%の大きさとなる。
このように、吐水口18の位置が角度Rが60度となる位置よりも前方側であれば、前方から吐水口18を見たときの吐水口18の開口面積S1は、吐水口18の開口と対向する方向から吐水口18を見たときの吐水口18の開口面積S2の半分以下の大きさになるため、高い意匠性を得る観点からより好ましい。
<動作及び作用>
つぎに、図7を参照して、本発明の第一実施形態に係る水洗大便器の動作及び作用について説明する。
図7は、本発明の第一実施形態に係る水洗大便器の水の流れを表した模式図である。
なお、図6は、図2のIII-III線に沿って見た断面図である。
図7に示すように、タンク装置4から便器本体2の供給口6へ排出された洗浄水は導水路20へ流入する。供給口6から導水路20へ流入した洗浄水は、吐水口18に向かって前方に流れる。このとき、導水路20の下流端部には整流板24が設けられているため、導水路20を流れる洗浄水は、整流板24によって吐水口18に向かって流れが案内されながら流れる。
このように、導水路20の下流端部には、流れ方向に沿って延びる板面が上下に配向した整流板24が設けられているので、吐水口18に対して水の流れを集めることができ、吐水口18から吐水される水の流れについて方向付けを行うことができる。これにより、吐水口18から吐水される水の流れを安定化させることができる。そのため、リム部16の内周面が鉛直方向に立ち上がるように形成された場合であっても、洗浄水がリム部16を超えて飛散してしまうことを抑制しつつ、ボウル部8内に旋回流を良好に生成することができる。
また、導水路20の下流端部には絞り流路22が形成されているので、吐水口18に向かって流れる洗浄水は安定した流れとなり、洗浄水の勢いが向上する。そして、絞り流路22を通って水勢が向上した洗浄水は吐水口18からボウル部8へ吐水され、吐水口18から吐水された洗浄水によってボウル部8に旋回流が形成される。
このように、導水路20の下流端部には絞り流路22が形成されているので、吐水口18から吐水される洗浄水の勢いを向上させつつ、吐水の流れを規制することができる。加えて、吐水口18が横長形状の開口であるので、吐水口18から吐水される洗浄水の上方向の流れ成分を抑制することができる。そのため、本実施形態のように、リム部16の内周面が鉛直方向に立ち上がるように形成された場合であっても、洗浄水がリム部16を超えて飛散してしまうことを抑制しつつ、ボウル部8に形成される旋回流の旋回性を向上させることができる。また、本実施形態のようにリム部16の内周面に形成される吐水口18が一穴である場合であっても、絞り流路22によって、洗浄水がリム部16を超えて飛散してしまうことを抑制しつつ、ボウル部8に形成される旋回流の旋回性を向上させることができる。
さらに、吐水口18の上下方向の開口の大きさにおいて、後方側よりも前方側の方が小さく形成されているので、導水路20からより離れた位置(より下流側の位置)である前方側部分の吐水口18の流路断面の方が、後方側部分の吐水口18の流路断面よりも絞られている。これにより、吐水口18からボウル部8へ吐水された洗浄水は、リム部16の内周面の接線方向に対して勢いよく流れる。そのため、本実施形態のように、リム部16の内周面が鉛直方向に立ち上がるように形成された場合であっても、洗浄水がリム部16を超えて飛散してしまうことを抑制しつつ、ボウル部8内に旋回流を良好に生成することができる。
また、上述した本発明の第一実施形態に係る水洗大便器1によれば、ボウル部8の後半部において、上面視で、ボウル部8の左右中心線Lと、リム部16の内周面を表す曲線上の吐水口18の幅の中央位置C2における接線Pに対する垂線Tとのなす角が45度となる位置よりも吐水口18が前方に形成されている。これにより、使用者が吐水口18を視認できる幅寸法を抑制することができ、使用者が吐水口18を視認しにくくなる。そのため、便器本体2の意匠性を向上させることができる。
加えて、ボウル部8に洗浄水を吐水して旋回流を形成する吐水口18は、一穴のみで十分な旋回流を形成することができるので、供給口6から吐水口18に至るまでの流路、例えば導水路20を簡便に構成することができる。そのため、便器本体2の構造をより簡便にすることができる。また、ボウル部8に洗浄水を吐水して旋回流を形成する吐水口18は一穴のみである、つまり、リム部16の内周面には吐水口18のみが設けられているので、リム部16の清掃性をより向上させることができる。
さらに、上述した本発明の第一実施形態に係る水洗大便器1によれば、リム部16の上方には便座が戴置されており、上面視において、便座の内周縁はリム部16の内周面よりもボウル部8の内側にせり出している。これにより、上方からボウル部8を見たとき、リム部16の内周面よりも内側にせり出した便座によって、リム部16の内周面に設けられた吐水口18が便座の影に隠れる。つまり、例えば水洗大便器1の前方側に立った使用者がボウル部8内を見たとき、リム部16の内周面に設けられた吐水口18が便座によって見えにくくなる。そのため、使用者に吐水口18が視認しにくくなり、水洗大便器1の意匠性を向上させることができる。
以上のように、上述した本発明の第一実施形態に係る水洗大便器1によれば、より簡便な構成で便器本体2の洗浄性及び清掃性を維持しつつ、便器本体2の意匠性を向上させることができる。
(第二実施形態)
つぎに、図8を参照して、本発明の第二実施形態に係る水洗大便器について説明する。
図8は、本発明の第二実施形態に係る水洗大便器の断面図である。
なお、図8は、図2のIII-III線に沿って見た断面図である。
図8に示すように、本発明の第二実施形態に係る水洗大便器1は、洗浄水源であるタンク装置4から導水路20内へ洗浄水を導いて吐水する樹脂製のディストリビューター26を備えている。ディストリビューター26は、洗浄水の流路を構成する管状の部材であり、導水路20の内部に設けられており、洗浄水源であるタンク装置4と連通している入口26aと、洗浄水源からディストリビューター26内へ供給された洗浄水を導水路20へ吐出する出口26bとを有している。
ディストリビューター26の入口26aは、供給口6(図1参照)に位置し、タンク装置4の排出口(図示せず)に接続されているとともに、タンク装置4の排出口と連通している。また、ディストリビューター26の出口26bは、整流板24の下流であって絞り流路22よりも上流に開口している。このため、整流板24は、ディストリビューター26の出口26bの位置決めを行うガイド部として機能する。このように、ディストリビューター26は、タンク装置4の排出口が臨む供給口6から絞り流路22に向かうように、略直線状に配されている。
洗浄水源であるタンク装置4から洗浄水の供給が開始されると、タンク装置4の排出口からディストリビューター26の入口26aに洗浄水が流入する。ディストリビューター26の入口26aから流入した洗浄水は、ディストリビューター26内の流路を流れて出口26bから導水路20へ吐水される。そして、ディストリビューター26の出口26bから導水路20へ吐水された洗浄水は、絞り流路22を通って、吐水口18からボウル部8へ吐水される。
このように、第二実施形態に係る水洗大便器1はディストリビューター26を備えているので、上述した第一実施形態の効果に加えて、洗浄水源から吐水口18に至るまでの水洗大便器1の形状、例えば導水路20の流路形状等をより簡便にすることができる。そのため、水洗大便器1を製造するための型を簡便にすることができ、水洗大便器1の生産性を向上させることができる。
また、ディストリビューター26を備えていることにより、導水路20内における水の流れをディストリビューター26による管路内に規制することができる。これにより、吐水口18から吐水される洗浄水の流れをより安定化させることができる。また、ディストリビューター26は、陶器に比べて寸法精度の高い樹脂で形成されているので、水洗大便器1間の吐水流量のバラツキを抑制することができる。そのため、洗浄水がリム部16を超えて飛散してしまうことをより抑制しつつ、ボウル部8内に旋回流を良好に生成することができる。
なお、第二実施形態に係る水洗大便器1のように、ディストリビューター26が設けられている場合、整流板24は設けられていなくてもよい。
また、ディストリビューター26の流路を延長し、ディストリビューター26の出口26bは、吐水口18と略一致する位置に設けられていてもよい。このとき、絞り流路22は、ディストリビューター26の内部の流路に形成されていてもよい。
さらに、ディストリビューター26の流路を短縮し、ディストリビューター26の出口26bから吐水された洗浄水が整流板24に導かれて吐水口18に向かって流れるように、ディストリビューター26の出口26bが整流板24の上流に設けられていてもよい。
(第三実施形態)
つぎに、図9を参照して、本発明の第三実施形態に係る水洗大便器について説明する。
図9は、本発明の第三実施形態に係る水洗大便器の断面図である。
なお、図9は、図4のVI-VI線に沿って見た断面図である。
図9に示すように、本発明の第三実施形態に係る水洗大便器1は、吐水口18を隠蔽する吐水口カバー28を備えている。この吐水口カバー28は、リム部16の内周面に設けられている。また、吐水口カバー28は、吐水口18全体を覆って隠蔽する板状のカバー本体28aと、リム部16の内周面であってカバー本体28aの上端に設けられる軸支部28bとを有している。このカバー本体28aは、その上縁部が軸支部28bによって横方向を回動軸方向として吐水口18の開口方向(リム部16の内側に向かう方向)に回動可能に軸支されている。
タンク装置4から洗浄水の供給が行われていない状態では、このカバー本体28aは、カバー本体28aの自重によって重下状態となっており、吐水口18を覆って隠蔽した状態に近づくように付勢されている。このため、タンク装置4から洗浄水の供給が行われていない状態では、吐水口18は、吐水口カバー28のカバー本体28aによって隠蔽されるとともに閉塞されている。
なお、吐水口カバー28は、軸支部28bによりカバー本体28aをリム部16の内側に向かう方向に付勢するように支持する構成であってもよい。この場合、カバー本体28aを付勢する手段として、軸支部28bに例えばバネ等が設けられる。
また、タンク装置4から便器本体2へ洗浄水が供給されて、導水路20から吐水口18へ水が流れると、導水路20から吐水口18へ流れる水の勢いによって、軸支部28bを軸にカバー本体28aがリム部16の内側に向かって回動し、吐水口18が開いた状態となる。そして、吐水口18からボウル部8へ洗浄水が吐水される。タンク装置4からの洗浄水の供給が停止すると、カバー本体28aはカバー本体28aの自重によって重下した状態となり、吐水口18を覆って隠蔽した状態に近づくように付勢され、カバー本体28aによって吐水口18が隠蔽されるとともに閉塞される。
このように、第三実施形態に係る水洗大便器1は吐水口18を隠蔽する吐水口カバー28を備えているので、上述した第一実施形態の効果に加えて、吐水口18をより確実に隠蔽することができる。これにより、使用者が吐水口18を視認しにくくなり、水洗大便器1の意匠性をより向上させることができる。
なお、第三実施形態に係る水洗大便器1のように、吐水口カバー28が設けられている場合、吐水口18をより確実に隠蔽することができるので、吐水口18は、ボウル部8の後半部において、上面視で左右中心線Lと垂線Tとのなす角度Rが45度となる位置よりも前方に形成されていなくてもよい。例えば、吐水口18は、ボウル部8の後半部において、上面視で左右中心線Lと垂線Tとのなす角度Rが45度となる位置よりも後方(角度Rが45度よりも小さくなる側)に形成されていてもよい。
(変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、タンク装置4が給水装置として機能を果たす構成を説明したが、タンク装置4以外の給水装置、例えばフラッシュバルブ等が設けられていてもよい。
また、溜水部10、もしくは、汚物受け面14において、洗浄水を吐水してボウル部8から排水トラップ管路12へ効率よく汚物を排出するゼット吐水穴が設けられていてもよい。
また、整流板24は、便器本体2と一体的に設けられる構成を説明したが、便器本体2と別体で構成されていてもよい。また、例えば、整流板24は、導水路20の底面から立設するように設けられてもよい。
また、角度Rは、ボウル部8の左右中心線Lと垂線Tのなす角度である構成を説明したが、ボウル部8の左右中心線Lと垂線Tのなす角度でなくてもよく、前後方向に沿う直線、つまり、左右中心線Lに平行な線と垂線Tのなす角度であればよい。
また、ディストリビューター26は樹脂で形成されている構成を説明したが、導水路20内における水の流れをディストリビューター26による管路内に規制することが可能な材料で形成されていればよい。
前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
1 水洗大便器
2 便器本体
4 タンク装置
6 供給口
8 ボウル部
10 溜水部
12 排水トラップ管路
12a 入口
12b 出口
14 汚物受け面
16 リム部
18 吐水口
20 導水路
22 絞り流路
24 整流板
26 ディストリビューター
26a 入口
26b 出口
28 吐水口カバー
28a カバー本体
28b 軸支部
B1、B2 前方に投影した吐水口の幅
C1 ボウル部の中央位置
C2 吐水口の幅の中央位置
L 左右中心線
P 接線
R 角度
S1、S2 前方に投影した吐水口の開口面積
T 垂線
W0 初期水位

Claims (4)

  1. 洗浄水により便器本体を洗浄する水洗大便器であって、
    ボウル形状の汚物受け面と、前記汚物受け面の上縁部に沿って形成されその内周面が鉛直方向に立ち上がるように形成されたリム部と、を有するボウル部と、
    前記ボウル部に洗浄水を吐水して旋回流を形成する吐水口と、
    前記吐水口に洗浄水を供給する導水路と、を備え、
    前記導水路は、前記吐水口に向かって前方に延びる部分を有しており、
    前記導水路の前記吐水口に向かって前方に延びる部分の一方の側壁は、前記吐水口の後部側の周壁面部と繋がって、鋭角状の角部を形成しており、
    前記導水路の前記吐水口に向かって前方に延びる部分の他方の側壁は、前後方向に略直線状に延びて、前記吐水口の前部側の周壁面部と繋がって、鈍角状の角部を形成しており、
    前記ボウル部に洗浄水を吐水する前記吐水口は、前記リム部の内周面にのみ設けられており、
    前記導水路の下流端部には、絞り流路が形成され、
    前記吐水口は、横長形状の開口であり、前記ボウル部の後半部において、上面視において、前記リム部の内周面を表す曲線にある前記吐水口の幅の中央位置における接線に対する垂線と、前記ボウル部の前後方向に沿う直線と、のなす角が45度となる位置よりも前方に形成されており、
    前記吐水口は、前記リム部の内周面の前端と後端とを結ぶ線の中央位置よりも後方側の部分に設けられており、
    前記リム部の内周面の前端と後端とを結ぶ線と前記垂線とが交差する位置は、前記中央位置よりも後方であり、
    前記リム部の内周面は、全周にわたって、前記ボウル部の内側に向かってオーバーハングすることなく、前記汚物受け面の前記上縁部から略鉛直方向に延びる平坦面により形成されており、
    前記吐水口は、前記汚物受け面の前記上縁部に当該吐水口の下端が接するように形成されている
    水洗大便器。
  2. 前記吐水口の上下方向の大きさが、後方側よりも前方側の方が小さい
    請求項1に記載の水洗大便器。
  3. 前記導水路の下流端部には、流れ方向に沿って延びる板面が上下に配向した整流板が設けられている
    請求項1又は請求項2に記載の水洗大便器。
  4. 洗浄水源から前記導水路に洗浄水を吐水するディストリビューターを備える
    請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の水洗大便器。
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