JP7470837B1 - ホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法 - Google Patents

ホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法 Download PDF

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Abstract

【課題】板厚19mmまでの開先において1パス溶接を可能とすることで、高品質で効率よく溶接を行うことができ、これにより溶接時間を短縮することができ、溶接欠陥を削減できる。【解決手段】鋼板5の開先内にカットワイヤを散布する工程と、電源から電流を出力して先行溶接ワイヤ2に通電を行い、母材の開先内と先行溶接ワイヤ2との間でアークを発生させる工程と、電源から通電を行って半溶融状態まで加熱したホットワイヤ3を、アークの後方側に形成される溶融池に供給しながら溶接を進行させる工程と、を有し、鋼板5は、板厚が16mm~19mmであり、開先のルートギャップが12mm以下であり、1パス施工により溶接を行う。【選択図】図1

Description

本発明は、ホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法に関する。
従来、板厚16mm~19mmの鋼床版デッキプレート等を現場溶接する場合、一般的にルートギャップの大きさに応じて多パスによる炭酸ガスアーク溶接あるいはサブマージアーク溶接が行われている(例えば、特許文献1参照)。
特開2014-213331号公報
しかしながら、特許文献1のような従来のサブマージアーク溶接方法では、とくに板厚19mmの溶接対象多パス溶接となることから、より効率よく溶接時間を短縮することができ、かつ溶接欠陥を削減することができる溶接方法が求められており、その点で改善の余地があった。
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、板厚19mmまでの開先において1パス溶接を可能とすることで、高品質で効率よく溶接を行うことができ、これにより溶接時間を短縮することができ、溶接欠陥を削減できるホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法を提供することである。
(1)本発明に係るホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法の態様1は、鋼板の開先内にカットワイヤを散布する工程と、電源から電流を出力して先行溶接ワイヤに通電を行い、母材の開先内と前記先行溶接ワイヤとの間でアークを発生させる工程と、電源から通電を行って半溶融状態まで加熱したホットワイヤを、前記アークの後方側に形成される溶融池に供給しながら溶接を進行させる工程と、を有し、前記鋼板は、板厚が16mm~19mmであり、前記開先のルートギャップが12mm以下であり、1パス施工により溶接を行い、前記鋼板の板厚が16mmの場合において、前記先行溶接ワイヤの入熱量が70~80kJ/cmであることを特徴としている。
本発明に係るホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法の態様1によれば、開先内にカットワイヤを散布した状態でサブマージアーク溶接による先行溶接ワイヤの溶融金属に半溶融状態まで加熱したホットワイヤを供給することで、板厚16mmから19mmまでの鋼板の開先において効率よく、かつ高品質溶接が可能となる1パスでの溶接を確実に行うことができる。そして、本発明では、上述した溶接条件で施工することにより、多パスで溶接する場合に比べて、先行溶接ワイヤの入熱量を低減でき、溶接された部材の引張強さおよび衝撃値(靭性)を向上させることができる。これにより、本発明では、溶接時間の短縮を図ることができ、さらに溶接欠陥の削減が可能となるので高品質な溶接を行うことができる。そのため、例えば、橋梁のデッキプレート鋼床版における現場溶接部に対して好適である。
しかも、本発明では、ルートギャップの設定範囲を最大12mmまで拡大することができるので、1パス溶接を精度よく実現することができる。
また、本発明に係るホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法では、1パス溶接となるので、多パス溶接の場合に比べて溶接部の外観も良好になる。さらにアークが開先内に埋もれた状態で溶接できるので、アーク光線が外に出ることがなく、作業性を向上できる。
また、この場合には、例えばサブマージアーク溶接単独で行う場合に比べて、先行溶接ワイヤの入熱量を、大幅(例えばルートギャップが6mmの場合において略20%)に低減することができ、溶接された部材における溶接変形低減による出来形精度及び靭性による機械的性質を向上させることができる。
(3)本発明の態様3は、態様2のホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法において、前記ホットワイヤの入熱量は、1.0~2.0kJ/cmであることが好ましい。
この場合には、鋼板の板厚が16mmの場合において、ホットワイヤの入熱量も抑えることができ、靭性の向上という効果をより確実に発揮することができる。
(3)本発明に係るホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法の態様3は、鋼板の開先内にカットワイヤを散布する工程と、電源から電流を出力して先行溶接ワイヤに通電を行い、母材の開先内と前記先行溶接ワイヤとの間でアークを発生させる工程と、電源から通電を行って半溶融状態まで加熱したホットワイヤを、前記アークの後方側に形成される溶融池に供給しながら溶接を進行させる工程と、を有し、前記鋼板は、板厚が16mm~19mmであり、前記開先のルートギャップが12mm以下であり、1パス施工により溶接を行い、前記鋼板の板厚が19mmの場合において、前記先行溶接ワイヤの入熱量が78~98kJ/cmであることを特徴としている。
この場合には、鋼板の板厚が19mmで1パス溶接を行った場合であっても、先行溶接ワイヤの入熱量を例えば100kJ/cm以下に抑えることができ、溶接された部材における靭性による機械的性質を向上させることができる。
)本発明の態様は、態様のホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法において、前記ホットワイヤの入熱量は、1.0~2.0kJ/cmであることを特徴としてもよい。
この場合には、鋼板の板厚が19mmの場合において、ホットワイヤの入熱量も抑えることができ、靭性の向上という効果をより確実に発揮することができる。
)本発明の態様は、態様1から態様のいずれか一つのホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法において、前記カットワイヤの散布厚は、8~18mmであることを特徴としてもよい。
この場合には、開先内にカットワイヤを散布厚8~18mmで散布することで、板厚16mmから19mmまでの鋼板においてより確実に1パスで溶接することができる。
)本発明の態様は、態様1から態様のいずれか一つのホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法において、前記先行溶接ワイヤと前記ホットワイヤとの極間は、40mm以下であることを特徴としてもよい。
この場合には、先行溶接ワイヤとホットワイヤとの極間が40mm以下に設定されているので、板厚16mmから19mmまでの鋼板においてより確実に1パスで溶接することができる。
)本発明の態様は、態様のホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法において、前記先行溶接ワイヤを供給する第1ワイヤトーチと、前記ホットワイヤを供給する第2ワイヤトーチと、を一体に設けた溶接ヘッドを有する溶接装置を使用し、前記先行溶接ワイヤと前記ホットワイヤとの極間を一定に維持した状態で前記溶接ヘッドを溶接方向に沿って移動させながら溶接することを特徴としてもよい。
この場合には、第1ワイヤトーチで供給される先行溶接ワイヤと、第2ワイヤトーチで供給されるホットワイヤとの極間が溶接ヘッドによって一定に維持されたまま溶接装置を溶接方向に移動して溶接されるので、効率よく溶接でき、かつ溶接精度を向上させることができる。
)本発明の態様は、態様のホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法において、前記第2ワイヤトーチに向けて前記ホットワイヤを自動で送るホットワイヤ自動供給機が設けられ、前記ホットワイヤ自動供給機は、前記溶接ヘッドとともに前記溶接方向に沿って移動することを特徴としてもよい。
この場合には、ホットワイヤ自動供給機も溶接ヘッドと一定の距離を維持したまま移動できるので、効率よく溶接でき、かつ溶接精度を向上させることができる。
本発明に係るホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法によれば、板厚19mmまでの開先において1パス溶接を可能とすることで、高品質で効率よく溶接を行うことができ、これにより溶接時間を短縮することができ、溶接欠陥を削減できる。
本発明の実施形態によるホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法を示す模式的な断面図である。 図1に示すA-A線矢視図である。 鋼板の開先内にカットワイヤを散布した状態を示す断面図である。 (a)は板厚16mmの溶接状態を示す断面図、(b)は板厚19mmの溶接状態を示す断面図である。 溶接装置の全体構成を示す斜視図である。 図5に示す溶接装置の側面図である。 図6に示す溶接装置の溶接ヘッドを拡大した図である。 (a)、(b)は、実施例において溶接を行った鋼板の断面を撮影した写真の一例である。 実施例の第1試験結果を示す図である。 実施例の第2試験結果を示す図である。
以下、本発明に係るホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において、各構成部材を視認可能な大きさとするために必要に応じて各構成部材の縮尺を適宜変更している場合がある。
図1~図4に示すように、本実施形態のホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法(以下、単に溶接方法という)は、母材である鋼板5の開先51において、後述する図5~図7に示す溶接装置1を使用してサブマージアーク溶接(SAW)とホットワイヤ溶接とを組み合わせて1パス施工により溶接を行う方法である。
本溶接方法は、鋼板5として例えば、橋梁に使用されるデッキプレート鋼床版に好適に採用することができ、このようなデッキプレート鋼床版における現場溶接部の溶接に対して高い適用性をもつ。
本実施形態による溶接方法は、鋼板5の開先51内にカットワイヤ4を散布する工程と、電源から電流を出力して先行溶接ワイヤ2に通電を行い、母材の開先51内と先行溶接ワイヤ2との間でアークを発生させる工程と、電源から通電を行って半溶融状態まで加熱したホットワイヤ3を、アークの後方側に形成される溶融池に供給しながら溶接を進行させる工程と、を有する。なお、半溶融状態とは、例えば1000℃程度の高温をいう。
先行溶接ワイヤ2は、溶接装置1の先行トーチ11(第1ワイヤトーチ)に保持される。ホットワイヤ3は、溶接装置1の後行トーチ12(第2ワイヤトーチ)に保持される。
母材である鋼板5は、板厚tが16mm~19mmが採用される。鋼板5の開先51のルートギャップRgが12mm以下に設定されている。鋼板5は、本実施形態において、上面5aを水平あるいは0~5%の勾配に配置させて溶接される。
図4(a)は、板厚が16mmの鋼板5Aの開先51に1パス溶接によって施工した溶接部100A(100)を示している。図4(b)は、板厚が19mmの鋼板5Bの開先51に1パス溶接によって施工した溶接部100B(100)を示している。
開先51に散布されるカットワイヤ4は、直径1.0mmのものを使用する。カットワイヤ4の散布厚は、8~18mmである。カットワイヤ4としては、例えば軟鋼用で1.5%Mnが採用される。
先行溶接ワイヤ2とホットワイヤ3との極間Dは、40mm以下に設定される。
先行溶接ワイヤ2は、直径4.8mmのものを使用する。図1に示すように、先行トーチ11における先行溶接ワイヤ2の突き出し長さL1(溶接開始前における先行トーチ11の先端11aから先行溶接ワイヤ2の先端2aまでの突出量)は、例えば板厚16mmのときに36mm、板厚19mmのときに39mmに設定される。また、先行トーチ11のトーチ角度θ1(先行トーチ11における鉛直方向Cとの傾斜角度)は、0°となるように設定されている。そして、先行溶接ワイヤ2として直径4.8mmのものを使用する場合には、600~900Aの電流を出力する。
ここで、鋼板5の板厚tが16mmの場合において、先行溶接ワイヤ2の入熱量は70~80kJ/cmに設定される。また、鋼板5の板厚tが19mmの場合において、先行溶接ワイヤ2の入熱量は78~98kJ/cmに設定される。
ホットワイヤ3は、直径1.2mmあるいは1.4mmのものを使用する。後行トーチ12におけるホットワイヤ3の突き出し長さL2(溶接開始前における後行トーチ12の先端12aからホットワイヤ3の先端3aまでの突出量)は、35mmに設定される。また、後行トーチ12のトーチ角度θ2(後行トーチ12における母材の鋼板5の上面5aに沿う水平方向Sとの傾斜角度)は、35°以上の角度となるように設定されている。そして、ホットワイヤ3として直径1.2mmあるいは1.4mmのものを使用する場合には、0~120Aの電流を出力する。
ここで、鋼板5の板厚tが16mmの場合において、ホットワイヤ3の入熱量は1.0~2.0kJ/cmに設定される。また、鋼板5の板厚tが19mmの場合において、ホットワイヤ3の入熱量は、1.0~2.0kJ/cmである。
この状態で、図3に示すように、開先51内にカットワイヤ4を散布した後、先行トーチ11の近傍から先行トーチ11の下方へ向けて粒状のフラックス7(図1参照)を定量的に連続供給しながら、電源(図示せず)から先行溶接ワイヤ2に通電を行い、鋼板5と先行溶接ワイヤ2との間でアークを発生させる。そして、先行トーチ11及び後行トーチ12を、進行方向(図1において紙面に直交する方向)へ所定の速度で移動させる。そうすると、アークの後方側に溶融池が形成される。
また、後行トーチ12においても、電源(図示せず)からホットワイヤ3への通電を行い、加熱して、後述するホットワイヤ自動供給機15から後行トーチ12へホットワイヤ3を所定の速度(例えば0~9.9cm/min)で供給し、ホットワイヤ3をアークの後方側に形成される溶融池(溶接部100)に供給しながら溶接を進行させる。
次に、上述した溶接方法を行うための溶接装置1について、図5~図7に基づいて具体的に説明する。
溶接装置1は、溶接ヘッド10と、ホットワイヤ自動供給機15と、を備えている。溶接ヘッド10及びホットワイヤ自動供給機15は、連結部151を介して一体的に連結され、それぞれがレール17上を走行可能な台車16A、16Bに搭載されている。
溶接ヘッド10は、先行溶接ワイヤ2を供給する先行トーチ11(第1ワイヤトーチ)と、ホットワイヤ3を供給する後行トーチ12(第2ワイヤトーチ)と、を一体に設けている。
ホットワイヤ自動供給機15は、後行トーチ12に向けてホットワイヤ3を自動で送る機能を有している。ホットワイヤ自動供給機15は、溶接ヘッド10とともに溶接方向Xに沿って移動する。
本溶接装置1では、先行溶接ワイヤ2とホットワイヤ3との極間Dを一定に維持した状態で溶接ヘッド10を溶接方向Xに沿って移動させながら溶接する。
次に、このように構成されるホットワイヤ3を使用したサブマージアーク溶接方法の作用について、図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態によるホットワイヤ3を使用したサブマージアーク溶接方法は、鋼板5の開先51内にカットワイヤ4を散布する工程と、電源から電流を出力して先行溶接ワイヤ2に通電を行い、母材の開先51内と先行溶接ワイヤ2との間でアークを発生させる工程と、電源から通電を行って半溶融状態まで加熱したホットワイヤ3を、アークの後方側に形成される溶融池に供給しながら溶接を進行させる工程と、を有する。鋼板5は、板厚tが16mm~19mmであり、開先51のルートギャップRgが12mm以下であり、1パス施工により溶接を行う。
本実施形態によるホットワイヤ3を使用したサブマージアーク溶接方法によれば、開先51内にカットワイヤを散布した状態でサブマージアーク溶接による先行溶接ワイヤ2の溶融金属に半溶融状態まで加熱したホットワイヤ3を供給することで、板厚16mmから19mmまでの鋼板5の開先51において効率よく、かつ高品質溶接が可能となる1パスでの溶接を確実に行うことができる。そして、本実施形態では、上述した溶接条件で施工することにより、多パスで溶接する場合に比べて、先行溶接ワイヤ2の入熱量を低減でき、溶接された部材の引張強さおよび衝撃値(靭性)を向上させることができる。例えば、本実施形態では、引張強さをサブマージアーク溶接単独で行う場合に比べて略2.5%改善することができる。
これにより、本実施形態では、溶接時間の短縮を図ることができ、さらに溶接欠陥の削減が可能となるので高品質な溶接を行うことができる。そのため、例えば、橋梁のデッキプレート鋼床版における現場溶接部に対して好適である。
しかも、本実施形態では、ルートギャップRgの設定範囲を最大12mmまで拡大することができるので、1パス溶接を精度よく実現することができる。
また、本実施形態に係るホットワイヤ3を使用したサブマージアーク溶接方法では、1パス溶接となるので、多パス溶接の場合に比べて溶接部100の外観も良好になる。さらにアークが開先51内に埋もれた状態で溶接できるので、アーク光線が外に出ることはなく、作業性を向上できる。
また、本実施形態では、鋼板5の板厚が16mmの場合において、先行溶接ワイヤ2の入熱量が70~80kJ/cmである。
そのため、例えばサブマージアーク溶接単独で行う場合に比べて、先行溶接ワイヤ2の入熱量を、大幅(例えばルートギャップRgが6mmの場合において略20%)に低減することができ、溶接された部材における靭性による機械的性質を向上させることができる。
また、本実施形態では、ホットワイヤ3の入熱量は、1.0~2.0kJ/cmであるので、鋼板5の板厚が16mmの場合において、ホットワイヤ3の入熱量も抑えることができ、靭性の向上という効果をより確実に発揮することができる。
また、本実施形態では、鋼板5の板厚が19mmの場合において、先行溶接ワイヤ2の入熱量が78~98kJ/cmである。
そのため、鋼板5の板厚が19mmで1パス溶接を行った場合であっても、先行溶接ワイヤ2の入熱量を例えば100kJ/cm以下に抑えることができ、溶接された部材における靭性による機械的性質を向上させることができる。
また、本実施形態では、ホットワイヤ3の入熱量は、1.0~2.0kJ/cmであるので、鋼板5の板厚が19mmの場合において、ホットワイヤ3の入熱量も抑えることができ、靭性の向上という効果をより確実に発揮することができる。
また、本実施形態では、カットワイヤ4の散布厚は、8~18mmである。
そのため、開先51内にカットワイヤ4を散布厚8~18mmで散布することで、板厚16mmから19mmまでの鋼板5においてより確実に1パスで溶接することができる。
また、本実施形態では、先行溶接ワイヤ2とホットワイヤ3との極間は、40mm以下である。
そのため、先行溶接ワイヤ2とホットワイヤ3との極間が40mm以下に設定されているので、板厚16mmから19mmまでの鋼板においてより確実に1パスで溶接することができる。
また、本実施形態では、先行溶接ワイヤ2を供給する先行トーチ11と、ホットワイヤ3を供給する後行トーチ12と、を一体に設けた溶接ヘッド10を有する溶接装置1を使用し、先行溶接ワイヤ2とホットワイヤ3との極間を一定に維持した状態で溶接ヘッド10を溶接方向に沿って移動させながら溶接する。
そのため、先行トーチ11で供給される先行溶接ワイヤ2と、後行トーチ12で供給されるホットワイヤ3との極間が溶接ヘッド10によって一定に維持されたまま溶接装置1を溶接方向に移動して溶接されるので、効率よく溶接でき、かつ溶接精度を向上させることができる。
また、本実施形態では、後行トーチ12に向けてホットワイヤ3を自動で送るホットワイヤ自動供給機15が設けられている。ホットワイヤ自動供給機15は、溶接ヘッド10とともに溶接方向に沿って移動する。
そのため、ホットワイヤ自動供給機15も溶接ヘッド10と一定の距離を維持したまま移動できるので、効率よく溶接でき、かつ溶接精度を向上させることができる。
上述のように構成された本実施形態によるホットワイヤ3を使用したサブマージアーク溶接方法では、板厚19mmまでの開先51において1パス溶接を可能とすることで、高品質で効率よく溶接を行うことができ、これにより溶接時間を短縮することができ、溶接欠陥を削減できる。
次に、上述した実施形態によるホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法の効果を裏付けるために行った実施例について以下説明する。
(実施例)
実施例では、板厚と材料が異なる3つの実施例1~3と比較例1、2の合計4つの開先を有する試験鋼板に対して溶接を行った。実施例1~3は、開先にカットワイヤを散布し、ホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法により1パスにより溶接を実施した。比較例1、2は、サブマージアーク溶接のみで1パスにより溶接を実施した。
実施例1は、板厚tが16mmで一般タイプの溶融フラックスからなる鋼板を使用した。
実施例2は、板厚tが16mmで靭性タイプの溶融フラックスからなる鋼板を使用した。
実施例3は、板厚tが19mmで一般タイプの溶融フラックスからなる鋼板を使用した。
比較例1は、板厚tが16mmで一般タイプの溶融フラックスからなる鋼板を使用した。
比較例2は、板厚tが16mmで靭性タイプの溶融フラックスからなる鋼板を使用した。
実施例1~3における溶接条件は、以下の通りである。
(溶接条件)
先行トーチ電流・電圧: 600~900A・31~40V
先行溶接ワイヤ送給速度: 16-26cm/min
先行溶接ワイヤ直径: 4.8mm
ホットワイヤ直径: 1.2mm
極間D: 0~40mm
ホットワイヤ送給速度: 0~9.9cm/min
ホットワイヤ突出長L2: 30~35mm
後行トーチ電流: 0~120A
トーチ間角度R: 45°
カットワイヤ散布厚: 8~18mm
図8(a)、(b)は、本実施例において溶接を行った鋼板の断面を撮影した写真の一例である。図8(a)は、実施例2の板厚16mmにおいてルートギャップRgが12mmの場合を示している。図8(b)は、実施例3の板厚19mmにおいてルートギャップRgが12mmの場合を示している。これらの写真からもわかるように、実験の結果、板厚16mm及び19mmのいずれにおいても、1パスで問題なく溶接できていることが確認された。
実施例では、各実施例1~3、比較例1、2において、第1試験で先行溶接ワイヤの入熱量(kJ/cm)を測定し、第2試験で引張強さ(N/mm)を測定し、それぞれ評価した。
第1試験は、実施例1~3と比較例1で試験し、それぞれルートギャップRgを3mm、6mm、9mm、12mmで変えて先行溶接ワイヤの入熱量(kJ/cm)を測定した。
図9は、第1試験結果を示している。図9に示すように、入熱量の基準値を100kJ/cmとしたとき、実施例1~3と比較例1のすべてが基準値以下となっている。すなわち、実施例3の板厚が19mmの場合でも、1パス溶接で93~96kJ/cmの範囲となり、100kJ/cm以下の入熱量であることが確認できた。
また、とくに実施例1のルートギャップRgが6mmの場合には、75.5kJ/cmとなり、比較例1のルートギャップRgが6mmの場合の91.2kJ/cmに比べて入熱量が略20%低減できることがわかった。また実施例2のルートギャップRgが6mmの場合にも、比較例1と比べて入熱量が略18%低減できることがわかった。
第1試験結果より、板厚16mm、19mmともに入熱量が100kJ/cm以下に抑えられ、とくに板厚16mmではサブマージアーク溶接単独で溶接する場合に比べて大幅に入熱量が低減された。すなわち、本実施例の溶接条件において、板厚16mm、19mmともに1パスによる溶接を行うことが可能であることが確認できた。
次に、第2試験は、実施例1~3と比較例1、2で試験し、それぞれ溶接金属(本発明の溶接を実施した部材)と継手(従来のボルト継手等)において、引張強さ(N/mm)を測定した。
図10は、第2試験結果を示している。図10に示すように、比較例1の溶接金属の引張強さ(ここでは495N/mm)を基準値(基準1)としたとき、実施例1の溶接金属は507N/mmとなり、引張強さが略2.4%向上したことがわかる。また、比較例2の溶接金属の引張強さ(ここでは469N/mm)を基準値(基準2)としたとき、実施例2の溶接金属は481N/mmとなり、引張強さが略2.5%向上したことがわかる。また、実施例3の板厚19mmの場合には、比較例による基準は示されていないが、引張強さは概ね490N/mm以上が確保されることがわかった。
第2試験結果より、溶接金属における板厚16mmで引張強さが継手よりも2.4%~2.5%向上することが確認でき、板厚19mmにおいても板厚16mmと同等以上の引張強さになることがわかった。すなわち、本実施例の溶接条件において、板厚16mm、19mmともに1パスによる溶接を行うことが可能であることが確認できた。
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
例えば、上記実施形態では、鋼板の板厚が16mmの場合において、先行溶接ワイヤの入熱量を75~80kJ/cmとしているが、このような溶接条件に限定されることはない。
また、本実施形態では、ホットワイヤの入熱量を1.3~1.8kJ/cmとしているが、このような溶接条件に限定されることはない。
また、本実施形態では、鋼板の板厚が19mmの場合において、先行溶接ワイヤの入熱量を93~96kJ/cmとしているが、このような溶接条件に限定されることはない。
また、本実施形態では、ホットワイヤ3の入熱量を1.5kJ/cmとしているが、このような溶接条件に限定されることはない。
また、本実施形態では、カットワイヤ4の散布厚を8~18mmとしているが、このような溶接条件に限定されることはない。
また、本実施形態では、先行溶接ワイヤ2とホットワイヤ3との極間を40mm以下としているが、このような溶接条件に限定されることはない。
また、本実施形態では、先行溶接ワイヤ2を供給する第1ワイヤトーチと、ホットワイヤ3を供給する第2ワイヤトーチと、を一体に設けた溶接ヘッド10を有する溶接装置1を使用し、先行溶接ワイヤ2とホットワイヤ3との極間を一定に維持した状態で溶接ヘッド10を溶接方向に沿って移動させながら溶接する構成としているが、このような溶接装置1であることに限定されることはないし、溶接装置を省略してもよい。
また、第2ワイヤトーチに向けてホットワイヤ3を自動で送るホットワイヤ自動供給機15が設けられ、ホットワイヤ自動供給機15が溶接ヘッド10とともに溶接方向に沿って移動する構成としているが、これに限定されることはない。
1 溶接装置
2 先行溶接ワイヤ
3 ホットワイヤ
4 カットワイヤ
10 溶接ヘッド
11 先行トーチ(第1ワイヤトーチ)
12 後行トーチ(第2ワイヤトーチ)
15 ホットワイヤ自動供給機

Claims (8)

  1. 鋼板の開先内にカットワイヤを散布する工程と、
    電源から電流を出力して先行溶接ワイヤに通電を行い、母材の開先内と前記先行溶接ワイヤとの間でアークを発生させる工程と、
    電源から通電を行って半溶融状態まで加熱したホットワイヤを、前記アークの後方側に形成される溶融池に供給しながら溶接を進行させる工程と、
    を有し、
    前記鋼板は、板厚が16mm~19mmであり、前記開先のルートギャップが12mm以下であり、
    1パス施工により溶接を行い、
    前記鋼板の板厚が16mmの場合において、前記先行溶接ワイヤの入熱量が70~80kJ/cmであるホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法。
  2. 前記ホットワイヤの入熱量は、1.0~2.0kJ/cmである、請求項に記載のホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法。
  3. 鋼板の開先内にカットワイヤを散布する工程と、
    電源から電流を出力して先行溶接ワイヤに通電を行い、母材の開先内と前記先行溶接ワイヤとの間でアークを発生させる工程と、
    電源から通電を行って半溶融状態まで加熱したホットワイヤを、前記アークの後方側に形成される溶融池に供給しながら溶接を進行させる工程と、
    を有し、
    前記鋼板は、板厚が16mm~19mmであり、前記開先のルートギャップが12mm以下であり、
    1パス施工により溶接を行い、
    前記鋼板の板厚が19mmの場合において、前記先行溶接ワイヤの入熱量が78~98kJ/cmであるホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法。
  4. 前記ホットワイヤの入熱量は、1.0~2.0kJ/cmである、請求項に記載のホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法。
  5. 前記カットワイヤの散布厚は、8~18mmである、請求項1乃至のいずれか1項に記載のホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法。
  6. 前記先行溶接ワイヤと前記ホットワイヤとの極間は、40mm以下である、請求項1乃至のいずれか1項に記載のホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法。
  7. 前記先行溶接ワイヤを供給する第1ワイヤトーチと、前記ホットワイヤを供給する第2ワイヤトーチと、を一体に設けた溶接ヘッドを有する溶接装置を使用し、前記先行溶接ワイヤと前記ホットワイヤとの極間を一定に維持した状態で前記溶接ヘッドを溶接方向に沿って移動させながら溶接する、請求項に記載のホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法。
  8. 前記第2ワイヤトーチに向けて前記ホットワイヤを自動で送るホットワイヤ自動供給機が設けられ、
    前記ホットワイヤ自動供給機は、前記溶接ヘッドとともに前記溶接方向に沿って移動する、請求項に記載のホットワイヤを使用したサブマージアーク溶接方法。
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