JP7467936B2 - ヒートシンク付絶縁回路基板、電子部品及びヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法 - Google Patents
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Description
この特許文献1に記載のヒートシンク付絶縁回路基板は、回路層及び金属層がアルミニウム又はアルミニウム合金により構成されている。このヒートシンクは、銅又はアルミニウムにより構成され、セラミックス基板や回路層及び金属層に比べて厚く形成されるため、ヒートシンクを絶縁回路基板に接合すると、これらの熱伸縮差により、回路層側を上側とする凸状に反り易い。この反りを抑制するため、特許文献1では、絶縁回路基板とヒートシンクとを接合する際に、回路層の表面を押圧する凸面が形成された上側加圧板と、ヒートシンクの背面を押圧する凹面を有する下側加圧板とからなる一対の加圧板の間に絶縁回路基板とヒートシンクとの積層体を挟むことにより、その積層体に回路層側を上側とする凹状の変形を生じさせた状態で加圧している。
また、銅層の金属層側の面における中央部とは、銅層の金属層側の面における図心を含む領域をいい、例えば、銅層が矩形である場合に、上記面における2つの対角線の交点を含む領域をいう。
本発明では、銅層の金属層側の面における中央部に非接合部が形成されているので、絶縁回路基板、銅層及びヒートシンクの接合時に、銅層の金属層との接合部においては、圧縮応力が生じ、中央部の非接合部においては、引張応力が生じる。この中央部に生じる逆方向の応力によりヒートシンク付絶縁回路基板の回路層側を上側とする凸状の反りを抑制できる。
また、ヒートシンク付絶縁回路基板の反りを矯正する場合に、接合時においてヒートシンク付絶縁回路基板の回路層側を上側とする凸状の反りが小さく抑えられているとともに、剛性の高い銅層の中央部に非接合部が形成されているので、中央部の矯正も容易となり、中央部が回路層側に突出する状態となることを抑制できる。
空間としては、銅層を貫通する貫通溝や貫通孔を例示できる。
上記態様では、非接合部が銅層を貫通する空間により構成されているので、金属層と銅層との間及び銅層とヒートシンクとの間のそれぞれに非接合部を形成することができる。また、銅層となる銅板を打ち抜いて空間を形成することにより非接合部を形成できるので、その製造も容易である。
本発明に係るヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法により製造されるヒートシンク付絶縁回路基板1は、図1に示すように、絶縁回路基板10に、銅層14を介してヒートシンク20が接合されたものである。
そして、このヒートシンク付絶縁回路基板1の表面に半導体素子30等が搭載されることにより、本発明の電子部品が製造される。半導体素子30としては、パワー半導体素子や、LED素子、熱電変換素子などが挙げられる。本実施形態では、半導体素子30としてパワー半導体素子を用いたパワーモジュール100(電子部品)で説明する。
なお、ヒートシンク20を備えるパワーモジュール100は、例えば図1に二点鎖線で示すような冷却器50に取り付けられた状態で使用される。この冷却器50には、ねじ止めによりパワーモジュール100が固定される。
絶縁回路基板10は、セラミックス基板11と、セラミックス基板11の一方の面に積層された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面に積層された金属層13とを備える。
セラミックス基板11は、回路層12と金属層13の間の電気的接続を防止する絶縁材であって、例えば窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si3N4)等により形成され、その板厚は0.2mm~1.2mmである。また、セラミックス基板11の平面サイズは、例えば、30~160mm×30~160mmに設定されている。
金属層13は、セラミックス基板11の他方の面に接合されており、純度99質量%以上の純アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、JIS規格では1000番台のアルミニウムを用いることができる。特に、1N99(純度99.99質量%以上:いわゆる4Nアルミニウム)を用いることが好ましい。
そして、これら回路層12及び金属層13は、回路層12、セラミックス基板11、金属層13の順に、例えばAl-Si系のろう材を介して積層し、これらを積層方向に加圧して加熱することにより接合される。
銅層14は、金属層13とヒートシンク20との間に配置されている。本実施形態においては、金属層13と銅層14は固相拡散接合されており、さらに、銅層14とヒートシンク20とは、固相拡散接合されている。この銅層14は、純度が99.9%以上の純銅又は銅合金の矩形板状の銅板からなり、平面サイズは、回路層12及び金属層13と同様に26~156mm×26~156mmとされている。また、銅層14の厚さは0.5mm以上5.0mm以下、より好ましくは、1mm以上3mm以下に設定されている。この銅層14の厚さが0.5mm未満であると、銅層14と金属層13及びヒートシンク20との固相拡散接合が適切に実行できず、これらの接合性が低下する可能性がある。また、銅層14の厚さが5.0mm以上であると、後述する製造工程の矯正工程において、銅層14の剛性が高くなりすぎて、回路層12側を上側とする凸状の反りを矯正しきれない可能性がある。
この銅層14は、図2に破線で示すように、十字状の貫通溝からなる非接合部141により4つの領域に分断されている。この十字状の貫通溝を構成する十字の交点と銅層14の中心C(図心)とは、一致している。また、非接合部141を構成する貫通溝の幅は、0.5mm~2.0mmとされている。また、銅層14の金属層13側の面における非接合部141の面積比率は、0.5%以上25%以下とされ、より好ましくは、5.0%以下であるとよい。つまり、銅層14の金属層13側の面における中央部に非接合部141が形成される。
なお、銅層14の金属層13側の面における中央部とは、図心を含む領域をいい、本実施形態では、銅層14が矩形であるため、上記面における2つの対角線の交点(中心C)を含む領域をいう。
この絶縁回路基板10に接合されるヒートシンク20は、AlSiCからなる板材により形成される。このAlSiCは、炭化ケイ素(SiC)の多孔質体に、アルミニウム(Al)を主成分とする金属が含浸されたものである。このアルミニウムとしては、例えば、Al-Si合金などを用いることができる。なお、AlSiCの少なくとも銅層14と接合される側の表面にはスキン層と呼ばれる、アルミニウム(Al)を主成分とする金属からなる(ほとんどSiCを含まない)層が形成されており、このスキン層と銅層14とが固相拡散接合されている。このスキン層を構成する金属とAlSiCに含侵されている金属とは、同一の組成であることが好ましい。
このAlSiCは、アルミニウム及び炭化珪素の両方の特性を兼ね備えており、ヒートシンクとして良好な熱伝導性を有するとともに、熱膨張係数が低く、絶縁回路基板10に接合されることにより、熱伸縮が絶縁回路基板10のセラミックス基板11と均衡して反り等の発生を抑制することができる。このヒートシンク20の厚さは、3.0mm以上5.0mm以下に設定され、その平面サイズは、例えば、40~200mm×40~200mmとされている。このようなヒートシンク20は、固相拡散接合により銅層14に接合され、絶縁回路基板10と一体とされる。
また、ヒートシンク20の外周縁には、図2に示すように、冷却器50等の各種機器への取り付けの際にねじ止めを行うための締結穴21が形成されている。
また、半導体素子30と回路層12の端子部との間は、アルミニウムからなるボンディングワイヤ(不図示)により接続される。
次に、本実施形態のヒートシンク付絶縁回路基板1の製造方法について説明する。
その製造方法は、セラミックス基板11の一方の面に回路層12を形成するとともに、他方の面に金属層13を形成して絶縁回路基板10を形成する絶縁回路基板形成工程と、絶縁回路基板10における金属層13とヒートシンク20とを中央部に貫通溝が形成された銅層14を介して固相拡散接合するヒートシンク接合工程と、ヒートシンク接合工程により接合されたヒートシンク付絶縁回路基板1を積層方向に押圧してヒートシンク付絶縁回路基板1の反りを矯正する矯正工程と、を備える。以下、この工程順に説明する。
図3に示すように、回路層用金属板120、セラミックス基板11、金属層用金属板130を、それぞれAl-Si系ろう材箔15を介して積層し、その積層体を積層方向に加圧した状態で加熱した後、冷却することにより、セラミックス基板11の一方の面に回路層用金属板120が接合され、他方の面に金属層用金属板130が接合される。これにより、セラミックス基板11の一方の面に回路層12が形成され、他方の面に金属層13が形成された絶縁回路基板10が形成される。
なお、本実施形態では、ろう材箔15を用いることとしたが、これに限らず、ろう材ペーストを用いてもよい。この場合、ろう材ペーストは、セラミックス基板11に塗布してもよいし、回路層用金属板120及び金属層用金属板130に塗布してもよい。
絶縁回路基板10の金属層13を、それぞれ隙間を空けて配置された4つの銅板140を介してヒートシンク20上に積層し、図4に示すように、絶縁回路基板10、4つの銅板140及びヒートシンク20の積層体を、平坦面を有する一対の加圧板31,32により挟持し、積層方向に加圧した状態で、真空雰囲気下で接合温度に加熱することにより、金属層13と4つの銅板140、及び、4つの銅板140とヒートシンク20とを固相拡散接合する。この場合の加圧力は、例えば0.5MPa~2.0MPa、加熱温度は500℃~540℃とされ、この加圧及び加熱状態を30分~120分保持する。これにより、金属層13とヒートシンク20とが銅層14を介して接合され、図1に示すように、ヒートシンク付絶縁回路基板1が得られる。
なお、本実施形態においては、金属層13の接合面、4つの銅板140の接合面及びヒートシンク20の接合面は、平滑にされた後に固相拡散接合される。また、ヒートシンク20の接合面には、酸化膜が形成されているので、この酸化膜を除去した後、銅板140と接合することが好ましい。
矯正工程は、図5に示すように、第1加圧板41と、第2加圧板42とを備える冶具を用いて、常温(25℃)で実行される。第1加圧板41及び第2加圧板42は、ステンレス鋼材の表面にカーボン板が積層されたものであり、第1加圧板41は、回路層12の表面129を押圧する曲面状の凸面411を有し、第2加圧板42は、ヒートシンク20の銅層14とは反対側の面を押圧する曲面状の凹面421を有している。なお、凸面411の曲率半径Rは1000mm~5000mmとすることが好ましく、また、凹面421の曲率半径Rは1000mm~5000mmとすることが好ましい。
また、ヒートシンク付絶縁回路基板1の反りを矯正する際に、接合時においてヒートシンク付絶縁回路基板1の回路層12側を上側とする凸状の反りが小さく抑えられているとともに、剛性の高い銅層14の中央部を含む十字状の領域に非接合部141が形成されているので、中央部の矯正も容易となり、中央部が回路層12側に突出する状態となることを抑制できる。
例えば、上記実施形態では、回路層12は、分断されていない一枚の回路層用金属板120がセラミックス基板11に接合されることにより形成されていることとしたが、これに限らず、例えば、図6に示すような形状であってもよい。
本変形例の回路層12Aは、図6に示すように、絶縁回路基板10Aを構成するセラミックス基板11に接合される第1回路層121と、第1回路層121の上面に接合される第2回路層122とを備えており、銅層14と同様に4つの領域に分割されている。この回路層12Aの4つの領域間の隙間は、銅層14の非接合部141(分割溝)の幅よりも若干大きく設定され、ヒートシンク付絶縁回路基板1Aを回路層12A側から投影してみた場合に、上記隙間と非接合部141とが重なるように形成されている。
図7は、上記実施形態の第2変形例におけるヒートシンク付絶縁回路基板の銅層14を示す図である。この銅層14には、非接合部141Bが形成されている。この非接合部141Bは、図7に示すように、十字状の貫通溝(空間)により構成され、銅層14の中心C(図心)と十字の中心とが一致している。また、十字状の貫通溝の4つの端部のいずれもが銅層14の外周端に達していない。このような非接合部141Bは、銅層14となる銅板を十字状に打ち抜くことにより形成される。本変形例においても、銅層14となる銅板に十字状の空間が形成された状態で絶縁回路基板10及びヒートシンク20と接合されることにより、銅層14の金属層13側の面における中央部を含む十字状の非接合部141Bが形成される。これにより、上記実施形態と同様の効果を奏する他、銅層14が非接合部141Bにより分割されていないので、絶縁回路基板10とヒートシンク20との接合時に銅層14となる銅板を容易に配置可能となる。
図9は、上記実施形態の第4変形例におけるヒートシンク付絶縁回路基板の銅層14を示す図であり、図10は、図9に示す銅層14の断面図である。この銅層14には、非接合部141Dが形成されている。この非接合部141Dは、図9及び図10に示すように、銅層14の金属層13側の表面に形成された中心Cを通る直線状の凹部により構成されている。この凹部の深さは、銅層14の厚さにも依存するが、銅層14の厚みの10%以上50%以下であることが好ましく、例えば、銅層14の厚さの略半分程度とされる。また、凹部の幅は、上記貫通溝と同じく0.5mm~2.0mmとされる。本変形例においても、銅板の金属層13側の表面に空間を形成し、これを絶縁回路基板10及びヒートシンク20と固相差拡散接合することにより、金属層13と銅層14との間に非接合部141Dが形成されるので、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
なお、上記第4及び第5変形例における凹部の底面は、平坦面であることとしたが、これに限らない。また、各凹部は、銅板140に対してエッチング加工やレーザ加工により形成されるとよい。
図12は、上記実施形態の第6変形例におけるヒートシンク付絶縁回路基板の銅層14を示す図である。この銅層14には、非接合部141Fが形成されている。この非接合部141Fは、図12に示すように、金属層13側の面における中心Cを中心とする平面視円形状の貫通孔により構成され、その直径は10mm程度とされている。好ましくは、セラミックス基板11の面積の1%以上5%以下の面積となるような直径を有する円形とするとよい。なお、この貫通孔の直径は、銅層14の平面サイズに合わせて変更可能である。本変形例においても、銅層14の金属層13側の面における中央部に非接合部141Fが形成されているので、上記実施形態と同様の効果を奏することができる他、非接合部141Fが貫通孔により構成されているので、金属層13と銅層14との間及び銅層14とヒートシンク20との間のそれぞれに非接合部141Fを形成することができる。また、銅層14となる銅板140を打ち抜いて貫通孔を形成することにより非接合部141Fを形成できるので、その製造も容易である。
10,10A…絶縁回路基板
100,100A…パワーモジュール(電子部品)
11…セラミックス基板
12,12A…回路層
120…回路層用金属板
121…第1回路層
122…第2回路層
129…表面
13…金属層
130…金属層用金属板
14…銅層
140…銅板
141,141B,141C,141D,141E,142E,141F,141G…非接合部(空間、貫通溝、貫通孔、凹部)
15…ろう材箔
20…ヒートシンク
21…締結穴
30…半導体素子
31,32…加圧板
41…第1加圧板
411…凸面
42…第2加圧板
421…凹面
50…冷却器
C…中心(図心)
Claims (5)
- セラミックス基板の一方の面に回路層が形成されるとともに、前記セラミックス基板の他方の面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属層が形成されてなる絶縁回路基板と、前記絶縁回路基板の前記金属層と銅層を介して固定されるSiCの多孔質体に金属が含侵された厚さが3.0mm以上5.0mm以下のヒートシンクと、を有し、
前記金属層と前記銅層、及び前記銅層と前記ヒートシンクとは、それぞれ固相拡散接合により接合されており、
前記銅層の前記金属層側の面における中央部に該金属層に対する非接合部が形成されており、
前記金属層側の面における前記非接合部の面積比率は、0.5%以上25%以下とされていることを特徴とするヒートシンク付絶縁回路基板。 - 前記非接合部は、前記銅層を貫通する空間により構成されていることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク付絶縁回路基板。
- 前記非接合部は、前記銅層の表面に形成された凹部により構成されていることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク付絶縁回路基板。
- 請求項1から3のいずれか一項に記載のヒートシンク付絶縁回路基板と、前記ヒートシンク付絶縁回路基板の前記回路層上に形成される半導体素子と、を有し、前記ヒートシンク付絶縁回路基板を前記回路層側から投影してみた場合に、前記半導体素子は、前記回路層の表面における前記銅層の前記非接合部と重ならない位置に形成されていることを特徴とする電子部品。
- セラミックス基板の一方の面に回路層を形成し、前記セラミックス基板の他方の面にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属層を形成して絶縁回路基板を形成する絶縁回路基板形成工程と、
前記絶縁回路基板における前記金属層とSiCの多孔質体に金属が含侵された厚さが3.0mm以上5.0mm以下のヒートシンクとを銅層を介して固相拡散接合するヒートシンク接合工程と、
前記ヒートシンク接合工程により接合されたヒートシンク付絶縁回路基板の前記回路層の表面を押圧する凸面を有する第1加圧板と、前記ヒートシンクの前記金属層とは反対側の面を押圧する凹面を有する第2加圧板と、により前記ヒートシンク付絶縁回路基板を挟持し、前記絶縁回路基板及び前記ヒートシンクの積層方向に押圧して前記ヒートシンク付絶縁回路基板の反りを矯正する矯正工程と、を備え、
前記ヒートシンク接合工程では、前記銅層の前記金属層側の面における中央部に、非接合部が形成されるように前記銅層を形成しており、前記金属層側の面における前記非接合部の面積比率は、0.5%以上25%以下とされることを特徴とするヒートシンク付絶縁回路基板の製造方法。
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