JP7119689B2 - ヒートシンク付き絶縁回路基板の製造方法及びヒートシンク付き絶縁回路基板 - Google Patents
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例えば、特許文献1に開示されているヒートシンク付きパワーモジュール用基板は、セラミックス基板の一方の面に回路層が接合されるとともに、セラミックス基板の他方の面に放熱層を介してヒートシンクが接合されてなり、ヒートシンクの天板部には、絶縁回路基板が収容される収容凹部が形成されている。
この接合率の低下を抑制するため、例えばグラファイトシートのようなクッション材を複数のフィンに当接させた状態でこれらを積層方向に押圧することが考えられるが、クッション材により面荷重の均一化を図ることができるものの、ヒートシンクとパワーモジュール用基板との接合率を十分向上させることができない。
これに対し、本発明の製造方法によれば、絶縁回路基板の金属層とヒートシンクとを接合する際に、第1領域におけるフィンの先端にグラファイトシートを当接させ、第2領域におけるフィンの先端にグラファイトシートよりも高さが大きくかつクッション性が高いカーボンフェルトを当接させた状態で、絶縁回路基板及びヒートシンクを押圧するので、第1領域及び第2領域に均等に押圧力を作用させることができ、絶縁回路基板の金属層とヒートシンクとを確実に接合して、これらの接合率を向上できる。
ここで、複数のフィンを有するヒートシンクを鍛造により製造すると、その際の材料の流れにより中央部に材料がいき渡りにくいため、中央部のフィンの高さが外周部のフィンの高さより小さくなる傾向にある。すなわち、ヒートシンクにおける複数のフィンが形成される一方の面における中央部に第2領域が位置し、外周部に第1領域が位置することとなる。
上記態様では、外周部にグラファイトシートを配置し、中央部にカーボンフェルトを配置するだけで、絶縁回路基板の金属層とヒートシンクとをより確実に接合できる。
上記態様では、第1領域をグラファイトシートのみで押圧し、かつ、第2領域をカーボンフェルトのみで押圧できるので、絶縁回路基板の金属層とヒートシンクとをさらに確実に接合できる。
上記態様では、グラファイトシートにカーボンフェルトを嵌め込むための切欠き部を形成する必要がないことから、グラファイトシートの構成を簡略化できる。
ここで、回路層、セラミックス基板、金属層、ヒートシンクをこの順で重ね合わせた積層体を積層方向に加圧してこれらを接合する場合、接合部位が多いので接合位置がずれる可能性がある。
これに対し、上記態様では、セラミックス基板に回路層及び金属層が接合された絶縁回路基板にヒートシンクを接合するだけで、ヒートシンク付き絶縁回路基板を製造できるので、これらの接合位置がずれることを抑制でき、ヒートシンク付き絶縁回路基板の信頼性を高めることができる。
このヒートシンク付き絶縁回路基板は、絶縁回路基板とヒートシンクとの接合率が95%以上、回路層の反り量Z/回路層の面積Aが0μm/cm2以上10μm/cm2以下の範囲内であるので、ヒートシンク付き絶縁回路基板の回路層上にチップなどの電子部品を固定する際のはんだ付け時におけるボイドの発生等を抑制できる。
上記態様では、セラミックス基板の両面に形成される第1回路層及び金属層を純アルミニウムにより構成し、ヒートシンクと第2回路層とをアルミニウム合金により構成することで、セラミックス基板の両側の構成材間をバランスさせることができ、反りを軽減できる。
[ヒートシンク付き絶縁回路基板の概略構成]
本発明に係るヒートシンク付き絶縁回路基板の製造方法により製造されるヒートシンク付き絶縁回路基板1は、図1に示すように、絶縁回路基板10に、複数のフィンが立設されたフィン一体型のヒートシンク20が接合されたものである。
絶縁回路基板10は、セラミックス基板11と、セラミックス基板11の一方の面に形成された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面に形成された金属層13とを備える。
セラミックス基板11は、回路層12と金属層13の間の電気的接続を防止する絶縁材であって、例えば窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si3N4)、アルミナ(Al2O3)等により形成され、その板厚は0.2mm~1.2mmである。
これらのうち第1回路層121は、純度99質量%以上の純アルミニウムが用いられ、JIS規格では1000番台の純アルミニウム、特に1N90(純度99.9質量%以上:いわゆる3Nアルミニウム)又は1N99(純度99.99質量%以上:いわゆる4Nアルミニウム)を用いることができる。
金属層13は、純度99質量%以上の純アルミニウム又はアルミニウム合金が用いられ、JIS規格では1000番台のアルミニウム、特に1N99(純度99.99質量%以上:いわゆる4Nアルミニウム)を用いることができる。
一方、第2回路層122は、A6063系等のアルミニウム合金が用いられており、その厚さは0.5mm~1.5mmに設定されており、後述するヒートシンク20の中央部の厚さ寸法と同一の厚さ寸法に設定されている。
そして、これら回路層12及び金属層13は、第1回路層121、第2回路層122、セラミックス基板11、及び金属層13の順に、例えば、Al-Si系やAl-Si-Mg系のろう材を介して積層し、これらを積層方向に加圧して加熱することにより接合される。
この絶縁回路基板10に接合されるヒートシンク20は、A6063系等のアルミニウム合金を鍛造により成形することにより形成される。そして、金属層13に接合されるヒートシンクの中央部に、絶縁回路基板10の少なくとも一部が収容される収容凹部21が形成され、収容凹部21の外周側に厚肉部分が残されることにより周壁部23が形成されている。この収容凹部21の底面22に絶縁回路基板10の金属層13が、Al-Si-Mg系のろう材を介して積層し、これらを積層方向に加圧して加熱することにより絶縁回路基板10にヒートシンク20が接合される。
なお、ヒートシンク20に立設されるフィンの形状は特に限定されるものではなく、本実施形態のようなピン状フィン25の他、ひし形フィンや帯板状のフィン等を形成することもできる。
その製造方法は、セラミックス基板11に回路層12及び金属層13を接合して絶縁回路基板10を形成する絶縁回路基板形成工程と、絶縁回路基板10にヒートシンク20を接合するヒートシンク接合工程と、からなる。以下、この工程順に説明する。
第1回路層121、セラミックス基板11、金属層13を、それぞれAl-Si系ろう材箔を介して積層し、その積層体を積層方向に加圧した状態で加熱した後、冷却することにより、セラミックス基板11の一方の面11aに第1回路層121、他方の面11bに金属層13が接合される。ろう材箔は加熱により溶融し、回路層12や金属層13中に拡散して、これらをセラミックス基板11と強固に接合する。
このときの接合条件は、必ずしも限定されるものではないが、真空雰囲気中で、積層方向の加圧力が0.3MPa~1.5MPaで、630℃以上655℃以下の加熱温度に20分以上120分以下保持するのが好適である。また、Al-Si系ろう材箔は、厚さ5μm~15μmであるとよい。さらに、Al-Si系ろう材の他、Al-Ge系、Al-Cu系、Al-Mg系、Al-Mn系、又はAl-Si-Mg系ろう材や、これらのクラッド材などを用いることもできる。
これにより、セラミックス基板11の両面に回路層12及び金属層13が接合された絶縁回路基板10が形成される。
図3(a)に示すように、絶縁回路基板10の金属層13の下面と、ヒートシンク20の収容凹部21の底面22との間にAl-Si系ろう材箔14介在させ、図3(b)に示すように、加圧板61A,61Bと、グラファイトシート64及びカーボンフェルト65を備える支持体62とにより積層方向に加圧した状態で加熱することにより、金属層13とヒートシンク20とを接合する。
加圧板61A,61Bのそれぞれは、図3(b)に示すように、絶縁回路基板10に形成された回路層12を構成する小回路層のそれぞれに対向して配置され、回路層12を押圧する。このような加圧板61A,61Bのそれぞれは、例えば、角柱状のステンレス鋼材の表面にカーボン板が積層されたものである。
なお、図3(b)の例では、加圧板61A,61Bの2つの加圧板により回路層12を押圧することとしたが、これに限らず、上記小回路層が3つ以上である場合には、3つ以上の加圧板により押圧してもよいし、全ての小回路層をまとめて押圧可能な大きさの1つの加圧板により押圧してもよい。
支持体62は、ステンレス鋼材からなる支持板63と、支持板63の上面に固定されたグラファイトシート64及びカーボンフェルト65と、を備えている。カーボンフェルト65は、炭素繊維からなるフェルトであり、支持板63の中央に配置される略矩形板状の部材である。このカーボンフェルト65の周囲には、グラファイトシート64が配置されている。
グラファイトシート64は、第1領域Ar1に位置するピン状フィン25に対向して配置され、カーボンフェルト65は、第2領域Ar1に位置するピン状フィン25に対向して配置される。具体的には、グラファイトシート64における第2領域Ar2に対応する位置が該第2領域Ar2と同形状に切り欠かれており、該切欠き部651内にカーボンフェルト65が嵌め込まれている。すなわち、グラファイトシート64は、平面視において図2に示す第1領域Ar1と同形状に形成され、カーボンフェルト65は、平面視において図2に示す第2領域Ar2と同形状に形成されている。
なお、グラファイトシート64の厚さ及びカーボンフェルト65の厚さは、これに限らず、各領域Ar1,Ar2のピン状フィン25の高さ差に応じて適宜変更可能であり、カーボンフェルト65の厚さがグラファイトシート64の厚さよりも大きければよい。
なお、この積層方向の加圧力は、0.1MPa~0.5MPaで、590℃以上615℃以下の加熱温度に3分以上20分以下保持するのが好適である。また、Al-Si系ろう材箔は、厚さ5μm~15μmであるとよい。さらに、Al-Si系ろう材の他、Al-Ge系、Al-Cu系、Al-Mg系、Al-Mn系、又はAl-Si-Mg系ろう材や、これらのクラッド材を用いることもできる。
このため、ヒートシンク付き絶縁回路基板1の回路層上にチップなどの電子部品を固定する際のはんだ付け時におけるボイドの発生等を抑制できる。
また、セラミックス基板11の両面に接合される第1回路層121及び金属層13を純アルミニウムにより構成し、ヒートシンク20と第2回路層122とをアルミニウム合金により構成することで、セラミックス基板11の両側の構成材間をバランスさせることができ、反りを軽減できる。
これに対し、本実施形態の製造方法によれば、絶縁回路基板10の金属層13とヒートシンク20とを接合する際に、第1領域Ar1におけるピン状フィン25の先端にグラファイトシート64を当接させ、第2領域Ar2におけるピン状フィン25の先端にグラファイトシート64よりも高さが大きくかつクッション性が高いカーボンフェルト65を当接させた状態で、絶縁回路基板10及びヒートシンク20を押圧するので、第1領域Ar1及び第2領域Ar2に均等に押圧力を作用させることができ、絶縁回路基板10の金属層13とヒートシンク20とを確実に接合して、これらの接合率を向上できる。
さらに、セラミックス基板11に回路層12及び金属層13が接合された絶縁回路基板10にヒートシンク20を接合するだけで、ヒートシンク付き絶縁回路基板1を製造できるので、例えばこれらを同時に接合する場合に比べて、これらの接合位置がずれることを抑制でき、ヒートシンク付き絶縁回路基板1の信頼性を高めることができる。
例えば、上記実施形態では、ヒートシンク接合工程において、絶縁回路基板10とヒートシンク20と、を接合することとしたが、これに限らない。例えば、セラミックス基板11に第1回路層121及び金属層13を接合した後、第1回路層121上にろう材箔を配置するとともに、金属層13とヒートシンク20との間にろう材箔を配置して、第2回路層122とヒートシンク20とを同時に接合することとしてもよい。
上記実施形態では、支持体62は、支持板63の上面に第2領域Ar2と同形状の切欠き部651を形成したグラファイトシート64の該切欠き部651にカーボンフェルト65を嵌め込んだ状態で固定することとしたが、これに限らない。
本変形例では、支持板63の上面に矩形板状のグラファイトシート64Aを固定し、該グラファイトシート64Aの上面にカーボンフェルト65Aを固定している。具体的には、このカーボンフェルト65Aは、上記実施形態の厚さの半分の厚さ(例えば、0.1mm)に設定され、グラファイトシート64Aの上面におけるヒートシンク20の第1領域Ar1に対向する位置に固定されている。
本変形例では、グラファイトシート64Aを1枚の矩形板状に形成でき、例えば、上記実施形態のように、中央に第2領域Ar2と同形状の空間を設ける必要がないことから、支持体62Aの構成を簡略化できる。
この絶縁回路基板とヒートシンクとの接合においては、絶縁回路基板の回路層(第2回路層)を上記実施形態と同じ加圧板で押圧し、ヒートシンクの複数のピン状フィンについては、ステンレス鋼材からなる支持体の上面に表1に示すクッション材が固定された支持板にて支持した。なお、加圧力及び温度等の条件は、上記実施形態と同じである。
上面の平面度は、回路層全面に対する4隅を基準面とし、島状に存在する回路層のそれぞれの4隅を3次元測定器により測定し、Z軸座標を測定した。そして、Z軸座標の最大値とZ軸座標の最小値の差を反り量Zとして算出した。なお、測定面積は、回路層の全面4隅を範囲とした総面積Aとした。これらから比率Z/Aを算出し、表1に記載した。
接合率の評価は、超音波探傷装置(日立パワーソリューションズ社製FINESATを用いて、金属層とヒートシンクの界面を測定し、以下の式から算出した。ここで、接合面積とは、接合前における接合すべき面積、すなわち金属層の面積とした。超音波探傷像を二値化処理した画像において接合されていない領域は白色部で示されることから、この白色部の面積を非接合部面積とした。結果を表1に示す。
(接合率)(%)={(接合面積)-(非接合部面積)}/(接合面積)×100
なお、接合率95%以上を良「○」、95%未満を否「×」と評価した。
10 絶縁回路基板
11 セラミックス基板
12 回路層
121 第1回路層
122 第2回路層
13 金属層
14 ろう材箔
20 ヒートシンク
21 収容凹部
22 底面
22b 面
23 周壁部
25 ピン状フィン
30 素子
31 はんだ
61A 61B 加圧板
62 62A 支持体
63 支持板
64 64A グラファイトシート
65 カーボンフェルト
651 切欠き部
Claims (8)
- セラミックス基板の一方の面に回路層が形成され、前記セラミックス基板の他方の面に金属層が形成された絶縁回路基板と、前記金属層の前記セラミックス基板とは反対側の面に配置され、一方の面に複数のフィンを有するヒートシンクとを備えたヒートシンク付き絶縁回路基板の製造方法であって、
前記ヒートシンクの他方の面と前記金属層とを接合するヒートシンク接合工程を備え、
前記ヒートシンクは、前記フィンの高さが大きい第1領域と、該第1領域よりも前記フィンの高さが小さい第2領域と、を有しており、
前記ヒートシンク接合工程では、前記第1領域における前記フィンの先端にグラファイトシートを当接させ、かつ前記第2領域における前記フィンの先端に前記グラファイトシートよりも少なくとも表面の高さが大きいカーボンフェルトを当接させた状態で、前記絶縁回路基板及び前記ヒートシンクを押圧することを特徴とするヒートシンク付き絶縁回路基板の製造方法。 - 前記第2領域は、前記一方の面の中央部に位置し、前記第1領域は、前記一方の面の外周部に位置していることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンク付き絶縁回路基板の製造方法。
- 前記グラファイトシートにおける前記第2領域に対応する位置が切り欠かれており、切欠き部に前記カーボンフェルトが嵌め込まれていることを特徴とする請求項2に記載のヒートシンク付き絶縁回路基板の製造方法。
- 前記グラファイトシート上に前記カーボンフェルトが重ねて設けられていることを特徴とする請求項2に記載のヒートシンク付き絶縁回路基板の製造方法。
- 前記ヒートシンク接合工程は、前記セラミックス基板に前記回路層及び前記金属層が接合された前記絶縁回路基板を前記ヒートシンクに接合することを特徴とする請求項1又は2から4のいずれか一項に記載のヒートシンク付き絶縁回路基板の製造方法。
- 前記グラファイトシートの表面に対して前記カーボンフェルトの表面の高さが0.05mm以上1.0mm以下大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のヒートシンク付き絶縁回路基板の製造方法。
- セラミックス基板の一方の面に回路層が形成され、前記セラミックス基板の他方の面に金属層が形成された絶縁回路基板と、前記金属層の前記セラミックス基板とは反対側の面に配置され、一方の面に複数のフィンを有するヒートシンクとを備えたヒートシンク付き絶縁回路基板であって、
前記ヒートシンクの他方の面側に接合部を介して前記絶縁回路基板が配置されており、
前記ヒートシンクは、前記フィンの高さが大きい第1領域と、該第1領域よりも前記フィンの高さが小さい第2領域とを備え、
前記絶縁回路基板と前記ヒートシンクとの接合率が95%以上、前記回路層の面積をAとし、前記回路層の反り量をZとし、前記回路層の接合面側に凹状の変形を正の反り量とした場合に、AとZの比率Z/Aが0μm/cm2以上10μm/cm2以下の範囲内であることを特徴とするヒートシンク付き絶縁回路基板。 - 前記回路層は、前記セラミックス基板に形成された純アルミニウムからなる第1回路層と、前記第1回路層の上面に形成されたアルミニウム合金からなる第2回路層と、を備え、
前記金属層は、純アルミニウムで構成され、前記ヒートシンクは、アルミニウム合金で構成されていることを特徴とする請求項7に記載のヒートシンク付き絶縁回路基板。
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