JP7466235B2 - 天敵昆虫の捕獲装置 - Google Patents

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Description

この発明は天敵昆虫利用の防除体系の構築にあたり、天敵昆虫(捕食性昆虫)の捕獲装置に関する。
コナジラミ、アブラムシ、アザミウマ等の害虫による農作物の被害は甚大で、その対策として、薬剤防除、生物的防除、物理的防除が提案されている。薬剤としては、有機リン剤、カーバメート剤、合成ピレスロイド剤などが使用されているが、薬剤は抵抗性の発達のリスクや人畜に有害な作用をするものがあるため、多用できない問題もあり、これに代わるものとして、害虫の忌避剤の使用が提案されている。
忌避剤として、グリセリン脂肪酸エステルを有効成分として、またプロビドジャスモンを有効成分としている。
生物的防除として、天敵昆虫を利用する生物農薬があり、害虫を捕食させるシステムである。その中の一つとして、バンカー法があり、作物に無害な昆虫を餌として用意し、天敵を維持・繁殖し、害虫の多寡にかかわらず、長期間継続的に捕食させ、天敵作用を機能させるものである。
また物理的防除として、加振機によってキノコや果実などの作物に振動を与え、害虫を防除している。
農業害虫を防除するため、前記のように、薬剤防除、生物的防除、物理的防除等が提案されているが、薬剤は抵抗性の発達や人畜に有害な作用を有するため、控えられる傾向にあり、そのため忌避剤が開発されてきたが、忌避剤が作物の成長に負の作用をするものがあり、また、物理的防除として、振動を与えるものにあっては、大きな栽培ハウスにおいて設置する場合に大きな装置となり、コスト高となる欠点を有していた。
天敵昆虫を採用するものとしての「バンカー法」は、農業害虫の増殖と、天敵昆虫の増殖のタイミングを合わせるのが難しい。その欠点を補うため、天敵昆虫(例えばタバコカスミカメ)の、生存を許容する植物(天敵温存植物と称する)であるゴマ、スカエボラ、バーベナ、クレオメと同時に施設内に導入することで、害虫が発生しなくとも、天敵昆虫を温存できる技術が開発されている。しかし、天敵昆虫が天敵温存する植物の花粉や花蜜、または樹液などを食して生存することが出来るため、農作物に農業害虫が発生しても、天敵温存植物から該農作物への移動が緩慢である欠点を持っていた。
また、露地栽培においても自然に発生する野生のヒメハナカメムシ類の天敵温存植物としてシロツメクサやマリーゴールドなどが用いられてきたが、これについても天敵温存植物から該農作物への移動が緩慢である欠点を持っていた。
この対策のため、例えば紫色光によって誘引させ、もって農業害虫の生存する農作物へ誘引させる技術が開発された(特許文献1)。誘引のための紫色光を照射する手段は、捕食性昆虫の誘引又は定着効率や省エネルギー等の観点から発光ダイオードを使用することが好ましく、少量の使用電力から発熱を抑えることができ、誘引又は定着した捕食性昆虫の死滅を防ぐことができる。
また、天敵昆虫の忌避剤を天敵温存植物に散布することで、農業害虫の生存する農作物へ誘引させる技術も開発されている(特許文献2)。
国際公開2017/022333 特開2019-064961
捕食性昆虫(天敵昆虫)を農作物へ誘引又は定着するために紫色光を照射する一つの態様としては、紫色光の光源を栽培施設に設置されるが、その栽培施設の光源の数は、例えば単位面積(例えば10アール(1000平方メートル)当たり好ましくは、100~10000個としている。このため、光源となる発光ダイオード、配線設備等の設備費用が高額となる欠点を有していた。
このため、原発明では、天敵昆虫を天敵温存植物から、農作物に農業害虫が発生瞬時に移動を行なわせるようにしたもので、しかも農薬を使用せず、安全性が高く、かつ安価な装置で、効率の高い方法及びその方法に使用する装置を提供することにあるが、この分割発明である本発明では、使用する天敵昆虫を効率よく捕獲することにある。
農作物の植設前後に、天敵温存植物を栽培開始し、同時又は前後して天敵昆虫を導入または自然発生させ、天敵昆虫を天敵温存植物に寄生させて生存させる。
天敵昆虫が天敵温存植物上で、その花粉、花蜜、樹液などを食べて生存しており、対象農業作物に農業害虫が発生すると、湿度発生送風装置から、湿度の高い空気を発生させ、その湿度の高い空気を天敵温存植物に送風する。これにより、天敵昆虫が天敵温存植物より逃避され、飛翔して農作物に移動させることになる。
天敵温存植物とは、農作物へ寄生する農業害虫を捕食する天敵昆虫を農業害虫が発生しなくとも、自らの花粉や花蜜、または樹液などを食べさせて生存させる植物にある。例えばタバコカスミカメ(天敵昆虫)では、天敵温存植物は、ゴマ、スカエボラ、バーベナ、クレオメなどであり、他にヒメハナカメムシ類では天敵温存植物はシロツメクサ、マリーゴールドなどが知られている。
天敵昆虫とは、農業害虫を捕食する昆虫であることにあり、他の昆虫個体を捕食する昆虫であれば特に限定されない。成体となった昆虫が他の昆虫個体を捕食するものであっても良いし、例えばタバコカスミカメである。幼虫が宿主昆虫の身体を捕食するものであって良いし、例えば捕食性カメムシのヒメハナカメムシである。
天敵温存植物より天敵昆虫を農作物への誘引方法を実施するに用いられ、湿度の高い空気を発生供給させる機械として、送風機、加湿器を少なくとも持つ構成の湿度発生送風機と、この湿度発生送風機から湿度の高い空気を天敵温存植物に送風に適する送風手段とより成ることにある。この装置は、施設内や施設外を移動して送風するものや、施設内に送風手段を張り巡らせて、該送風手段から施設内に植設した天敵温存植物に送風するようにしても良い。
本願発明では、湿度発生送風機から送り出される湿度の高い空気を導く送風手段の先端に、捕虫網を設け、天敵昆虫を捕獲することにある(請求項1)。施設外、又は施設内に植えられている植物から天敵を採集するに適している。即ち湿度の高い空気を天敵が温存する植物に吹き付けて、植物より逃避(離脱)させ網にて捕獲することができる。
以上のように、原発明によれば、天敵昆虫が天敵温存植物と共に同時又は前後して、対象作物の近くに導入すれば、天敵昆虫に餌を与えることなく、天敵昆虫が維持可能となり、農業害虫の発生時に、天敵温存植物に湿度の高い空気を送付し、該天敵温存植物より天敵昆虫を逃避させ、農作物へ誘引させる効果を奏する。
また、天敵昆虫は、自ら餌を天敵温存植物より得られるため、維持が容易であり、比較的高い生存密度を保持することができる。
原発明によれば、湿度の高い空気の供給は、湿度発生送風機と送風手段とより成る湿度発生送風装置から行なわれ、施設内や施設外を移動して送風するものや、施設内の天敵温存植物の周辺に送風手段を張り巡らして送風することもできる。
分割発明である本発明によれば、捕虫網が湿度発生送風機から送り出される湿度の高い空気を導く送風手段の出口端に取り付けられているため、天敵昆虫が生存する植物に湿度の高い空気を吹き付け、天敵昆虫を容易に逃避離脱させ、もって捕虫網により捕獲することができる。ここで、採集された天敵昆虫は、原発明に示す天敵昆虫として用いられる。
図1は、この原発明による農作物への天敵昆虫誘引方法のフローチャートである。 図2は、農作物栽培施設における使用状況説明図である。 図3は、湿度発生送風装置の概略説明図である。 図4は、捕虫網が導引パイプの出口端に接続されている斜視図である。
図は本発明の実施例を示すために用いられ、図1に天敵利用の防除体系の構築にあたり、天敵昆虫の天敵温存植物から農作物への誘引フローチャートが示され、図2に農作物栽培施設におけるこの発明の実施状況が示され、図3に湿度の高い空気を供給する湿度発生送風装置が示され、図4に分割発明となる天敵昆虫の捕獲のための捕虫網が示されている。
図1に示す4つの工程に従って本発明の天敵昆虫の農作物への誘引方法を説明すると、天敵昆虫(捕食性昆虫)を農業栽培現場において導入するにあたり、天敵を生存させることを目的とする天敵温存植物の導入が必要となり、共に又は前後して農作物の近くで栽培される。これが工程Iである。
まず、天敵昆虫として、農業害虫を捕食する昆虫であり、例えばタバコカスミカメを導入するにあたり、まず図2に示す農作物栽培施設20内に農作物(例えばトマト)を生産するため、苗21が植裁されている。この農作物栽培施設20に多くの苗21と、それに畝間が50cm~1mぐらいで平行にゴマ22、クレオメ23が植栽されている。これらの植物は、天敵昆虫が生存するのに適していて、前記したタバコカスミカメが自然発生、又は後天的に搬入され、自らの花粉、花蜜、又は樹液などにより、生存させることができるものである。
天敵温存植物は、天敵昆虫利用の害虫の防除時に、重要な役目を果たし、天敵温存植物と同時に又は前後して天敵昆虫(タバコカスミカメ)を施設内に導入される。天敵昆虫は天敵温存植物であるゴマ22,クレオメ23上で生存させ、増殖維持される。これが工程IIである。この例の天敵昆虫にあっては、他にスカエボラ、バーベナが天敵温存植物となることができる。
農作物が生長すると共に、農業害虫例えば、アザミウマ、コナジラミ類が発生すると、農作物栽培施設20内へ下記に説明する湿度発生送風装置31を持ち込み、ノズル41から湿度の高い空気を天敵温存植物22,23に向けて送風する(送風速度は0.5m/sec.)工程IIIを持っている。時間は3秒で、定着の天敵昆虫は天敵温存植物より逃避し、飛翔する。
この試験例1として、湿度80%RH,風速0.5m/sec.,温度30℃の条件で3秒間行なった。クレオメ上のタバコカスミカメの逃避率を表1として示している。
Figure 0007466235000001
湿風処理とは、湿度の高い空気を送風することをいう。このタバコカスミカメには湿風処理の効果が認められた。
他の試験例2として、湿度80%RH,風速0.5m/sec.,温度30℃の条件で3秒間行なった。シロツメクサ上のナミヒメハナカメムシの逃避率を表2として示している。
シロツメクサは路地に生息したものでナミヒメハナカメムシは自然発生。
Figure 0007466235000002
ナミヒメハナカメムシには湿風処理の効果が認められた。
試験例3として、湿度70%RH,風速0.5m/sec.,温度30℃の条件で3秒間行なった。シロツメクサ上のナミヒメハナカメムシの逃避率を表3として示している。
シロツメクサは路地に生息していたものでナミヒメハナカメムシは自然発生。
Figure 0007466235000003
ナミヒメハナカメムシには湿風処理の効果が認められた。
湿風処理により、農作物栽培施設20に飛翔する天敵昆虫は、飛んで同施設20内の農作物21に誘引される工程IVを持っている。これにより、天敵昆虫は、発生した農業害虫を捕食し、害虫防除のために働くことになる。
天敵昆虫と天敵温存植物との組合せは、ヒメハナカメムシ類とシロツメクサ、ヒメハナカメムシ類とマリーゴールドなどが知られている。
湿度の高い空気とは、上記2試験例では、80%RH及び70%RHの値であるが、70%RH以上であれば、表1、表2、表3に示しているように、天敵昆虫を逃避させる効果を奏している。
図3にあって、湿度発生送風装置31が示され、この装置31は、湿度発生送風機32と送風手段33とより構成されている。湿度発生送風機32はモータ35とファン36とより成る送風機37と、超音波振動子や、公知の遠心力式からなる加湿器または加熱式加湿器38とが上下に組み立てられもので、下面に車輪39有し、作物栽培施設(図示せず)内を移動可能に構成されている。なお図示はしないが、この送風機37、加湿器38を動かすためのスイッチなどの制御装置や、温度制御する加温器は図示していない。
送風手段33は、湿度発生送風機32から湿度の高い空気を所望する場所へ送り出すもので導引パイプ40とその先端部に配されるノズル41とにより構成されている。この図示の例では、施設内又は施設外を移動可能な例で、管理者が引き回して使用される。
所望のところまで運んでから電源を入れ送風機37を駆動し、加湿器38で送風空気に加湿される。湿度の高い空気は導引パイプ40を通りノズル41より吹出される。管理者がノズル41の方向を所望する天敵温存植物に向けて噴射する。
図4にあって、本願発明となる天敵昆虫の捕獲のための捕虫網45が示されている。天敵昆虫は露地等に生息するため、それを捕獲して使用する必要があり、利用されるものである。捕虫網45の柄46は、湿度発生送風装置31の導引パイプを兼ねている。そして捕虫網本体47は、前記導引パイプ40となっている柄46に接続金線48を介して接続されている。使用に当りノズル41より植物に湿度の高い空気を吹出すことで、植物に生存する天敵昆虫を逃避させ、網本体47にて捕獲される。湿度の高い空気を吹出すため捕獲頭数を増加することができる。この捕獲して得た天敵昆虫は、本発明の天敵昆虫を農作物への誘引方法時に天敵温存植物に搬入し寄生させるために、利用される。
20 農作物栽培施設
21 農作物
22 ゴマ
23 クレオメ
31 湿度発生送風装置
40 導引パイプ
41 ノズル
45 捕虫網

Claims (4)

  1. 農業害虫を捕食する天敵昆虫を捕獲するための装置で、送風機、加湿器を少なくとも持つ構造の湿度発生送風機と、
    この湿度発生送風機から湿度の高い空気を天敵温存植物に送風する手段と、
    湿度発生送風機から送り出される湿度の高い空気を導く送風する手段の出口端に配した捕虫網とより成ることを特徴とする天敵昆虫の捕獲装置。
  2. 湿度の高い空気とは、相対湿度(RH)で70%以上の値であることを特徴とする請求項1記載の天敵昆虫の捕獲装置。
  3. 天敵温存植物とは、農作物へ寄生する農業害虫を捕食する天敵昆虫を、農業害虫が発生しなくとも、自らの花粉や花蜜、または樹液などを食べさせて生存させる植物であることを特徴とする請求項1記載の天敵昆虫の捕獲装置。
  4. 天敵昆虫とは、農業害虫を捕食する昆虫であることを特徴とする請求項1記載の天敵昆虫の捕獲装置。
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