以下、図面を参照しながら、本開示の実施の形態について説明する。なお、本開示の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺および数などを、実際の構造における縮尺および数などと異ならせる場合がある。
また、図面には、適宜、X軸、Y軸、およびZ軸を示している。X軸は、以下の実施の形態の室外機の前後方向を示している。Y軸は、前後方向と直交する室外機の幅方向を示している。Z軸は、鉛直方向を示している。前後方向、幅方向、および鉛直方向は、互いに直交する方向である。前後方向のうちX軸の矢印が向く側(+X側)は室外機の前側であり、前後方向のうちX軸の矢印が向く側と逆側(-X側)は室外機の後側である。幅方向は、室外機の左右方向である。幅方向のうちY軸の矢印が向く側(+Y側)は室外機の左側であり、幅方向のうちY軸の矢印が向く側と逆側(-Y側)は室外機の右側である。以下の説明においては、幅方向のうちY軸の矢印が向く側(+Y側)、すなわち左側を“幅方向一方側”と呼び、幅方向のうちY軸の矢印が向く側と逆側(-Y側)を“幅方向他方側”と呼ぶ。鉛直方向のうちZ軸の矢印が向く側(+Z側)は上側であり、鉛直方向のうちZ軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)は下側である。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における冷凍サイクル装置100の概略構成を示す模式図である。実施の形態1において冷凍サイクル装置100は、空気調和機である。図1に示すように、冷凍サイクル装置100は、室外機10と、室内機20と、循環経路部18と、を備える。室外機10は、室外に配置されている。室内機20は、室内に配置されている。室外機10と室内機20とは、冷媒19が循環する循環経路部18によって互いに接続されている。
冷凍サイクル装置100は、循環経路部18内を流れる冷媒19と室内機20が配置された室内の空気との間で熱交換を行うことによって、室内の空気の温度を調整可能である。冷媒19としては、例えば、地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)が低いフッ素系冷媒、または炭化水素系冷媒などが挙げられる。
室外機10は、筐体11と、圧縮機12と、熱交換器13と、流量調整弁14と、送風ファン15と、四方弁16と、制御部17と、を有する。筐体11の内部には、圧縮機12、熱交換器13、流量調整弁14、送風ファン15、四方弁16、および制御部17が収容されている。
圧縮機12と熱交換器13と流量調整弁14と四方弁16とは、循環経路部18のうち筐体11の内部に位置する部分に設けられている。圧縮機12と熱交換器13と流量調整弁14と四方弁16とは、循環経路部18のうち筐体11の内部に位置する部分によって接続されている。
四方弁16は、循環経路部18のうち圧縮機12の吐出側に繋がる部分に設けられている。四方弁16は、循環経路部18の一部の経路を切り替えることで、循環経路部18内を流れる冷媒19の向きを反転させることができる。四方弁16によって繋がれる経路が図1の四方弁16に実線で示す経路である場合、冷媒19は、循環経路部18内を図1に実線の矢印で示す向きに流れる。一方、四方弁16によって繋がれる経路が図1の四方弁16に破線で示す経路である場合、冷媒19は、循環経路部18内を図1に破線の矢印で示す向きに流れる。
室内機20は、筐体21と、熱交換器22と、送風ファン23と、を有する。筐体21の内部には、熱交換器22、および送風ファン23が収容されている。室内機20は、室内機20が配置された室内の空気を冷やす冷房運転と、室内機20が配置された室内の空気を暖める暖房運転とが可能である。
室内機20が冷房運転される場合、循環経路部18内を流れる冷媒19は、図1に実線の矢印で示す向きに流れる。つまり、室内機20が冷房運転される場合、循環経路部18内を流れる冷媒19は、圧縮機12、室外機10の熱交換器13、流量調整弁14、および室内機20の熱交換器22をこの順に通って圧縮機12に戻るように循環する。冷房運転において、室外機10内の熱交換器13は凝縮器として機能し、室内機20内の熱交換器22は蒸発器として機能する。
一方、室内機20が暖房運転される場合、循環経路部18内を流れる冷媒19は、図1に破線で示す向きに流れる。つまり、室内機20が暖房運転される場合、循環経路部18内を流れる冷媒19は、圧縮機12、室内機20の熱交換器22、流量調整弁14、および室外機10の熱交換器13をこの順に通って圧縮機12に戻るように循環する。暖房運転において、室外機10内の熱交換器13は蒸発器として機能し、室内機20内の熱交換器22は凝縮器として機能する。
次に、室外機10について、より詳細に説明する。図2は、室外機10を示す斜視図である。図3は、ファングリル60を取り外した状態の室外機10を前方(+X方)から見た図である。図4は、室外機10の一部を上方から見た部分断面図である。図5は、室外機10の一部を示す斜視図である。図4では、筐体11の背面パネルの図示を省略している。図5では、筐体11の一部の図示を省略している。
図2から図4に示すように、室外機10の筐体11は、略直方体箱状である。筐体11は、開口部11bを有する。開口部11bは、筐体11のうち前側(+X側)に位置する前面パネル11aに設けられている。開口部11bは、前面パネル11aを前後方向(X軸方向)に貫通し、前方に開口している。開口部11bは、後述する回転軸AXを中心とする円形状の穴である。図4に示すように、開口部11bの内縁部には、後方(-X方)に突出するベアリング保持部11cが設けられている。ベアリング保持部11cは、回転軸AXを中心とし、前後方向の両側に開口する円筒状である。ベアリング保持部11cの内周面は、開口部11bの内周面を構成している。ベアリング保持部11cは、後述するベアリング40を内部に保持している。
筐体11の内部には、筐体11の内部をファン室11eと機械室11fとに幅方向(Y軸方向)に仕切る仕切部材11dが設けられている。ファン室11e内には、熱交換器13と送風ファン15とが収容されている。図4および図5に示すように、実施の形態1において熱交換器13は、鉛直方向に見て、略L字形状である。熱交換器13は、幅方向に延びる第1部分13aと、第1部分13aの幅方向他方側(-Y側)の端部から前方(+X方)に延びる第2部分13bと、を有する。図4に示すように、機械室11fは、ファン室11eの幅方向一方側(+Y側)に位置する。図示は省略するが、機械室11f内には、圧縮機12および制御部17が収容されている。
実施の形態1において送風ファン15は、プロペラファンである。図4および図5に示すように、送風ファン15は、熱交換器13の前方(+X方)に位置する。より詳細には、送風ファン15は、熱交換器13の第1部分13aの前方に位置し、第2部分13bの幅方向一方側(+Y側)に位置する。図4に示すように、送風ファン15は、モータ15aと、回転翼15bと、を有する。モータ15aは、前方に突出するシャフト15cを有する。シャフト15cの前側の端部には、回転翼15bが固定されている。
回転翼15bは、モータ15aによって回転軸AX回りに回転させられる。回転軸AXは、前後方向(X軸方向)に延びる仮想軸である。つまり、実施の形態1において、回転軸AXの軸方向は、前後方向である。以下の説明においては、回転軸AXを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、回転軸AX回りの周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
回転翼15bは、筐体11の内部において開口部11bと対向して配置されている。図3に示すように、前方(+X方)から見て、回転翼15bの全体は、開口部11bの内縁よりも内側に位置する。図4に示すように、回転翼15bは、開口部11bの後方(-X方)に位置する。回転翼15bは、モータ15aのシャフト15cに固定された基部15dと、基部15dから径方向外側に突出する複数の羽根部15eと、を有する。複数の羽根部15eは、周方向に沿って複数配置されている。実施の形態1において羽根部15eは、3つ設けられている。回転翼15bが回転すると、筐体11の背面パネルに設けられた図示しない吸気口から筐体11内に空気が吸い込まれる。回転翼15bによって筐体11内に吸い込まれた空気は、熱交換器13および回転翼15bを通過して、開口部11bから筐体11の前方に吹き出される。
室外機10は、ベルマウス30と、ベアリング40と、固定部材50と、をさらに有する。ベルマウス30は、送風ファン15から前方(+X方)に吹き出される空気を案内する部材である。ベルマウス30は、シュラウドとも呼ばれる。ベルマウス30は、固定部材50によってベアリング40に固定され、ベアリング40を介して筐体11に取り付けられている。ベルマウス30は、回転翼15bの少なくとも一部を回転翼15bの回転軸AX回りに囲む環状である。実施の形態1においてベルマウス30は、回転翼15bの前側部分を回転軸AX回りに囲んでいる。回転翼15bの後側部分は、ベルマウス30よりも後方(-X方)に突出している。
ベルマウス30と回転翼15bとの径方向の間には、隙間が設けられている。当該隙間をファンギャップG1と呼ぶ。ファンギャップG1は、ベルマウス30の内周面30aと、羽根部15eの径方向外縁部15fとの径方向の隙間である。
図6は、ベルマウス30を示す斜視図である。図4および図6に示すように、ベルマウス30は、前方(+X方)に開口するラッパ形状である。実施の形態1においてベルマウス30は、回転軸AXを中心とし、前後方向(X軸方向)の両側に開口する円筒状である。ベルマウス30は、基部31と、前側拡径部32と、後側拡径部33と、を有する。
基部31の内径および基部31の外径は、それぞれ一定である。前側拡径部32は、基部31の前端部に繋がっている。前側拡径部32の内径および前側拡径部32の外径は、それぞれ前方に向かうに従って大きくなっている。後側拡径部33は、基部31の後端部に繋がっている。後側拡径部33の内径および後側拡径部33の外径は、それぞれ後方(-X方)に向かうに従って大きくなっている。前側拡径部32の前後方向(X軸方向)の寸法は、後側拡径部33の前後方向の寸法よりも大きい。基部31の径方向内側および後側拡径部33の径方向内側には、回転翼15bの前側部分が配置されている。図6の例においてベルマウス30の前側拡径部32は、周方向に沿った4箇所が切り欠かれた形状となっている。
図4に示すように、ベアリング40は、開口部11bの内側に配置されている。実施の形態1においてベアリング40は、ボールベアリングである。ベアリング40は、内輪41と、外輪42と、複数のボール43と、を有する。内輪41および外輪42は、回転軸AXを中心とする円環状である。外輪42は、内輪41の径方向外側に位置する。複数のボール43は、内輪41と外輪42との径方向の間に位置する。複数のボール43は、内輪41と外輪42との径方向の間において、周方向に沿って並んで配置されている。内輪41と外輪42とは、複数のボール43を介して、回転軸AX回りに互いに相対回転可能に連結されている。
外輪42は、ベアリング保持部11cの内周面、すなわち開口部11bの内周面に固定されている。これにより、ベアリング40は、筐体11に取り付けられている。内輪41は、固定部材50を介して、ベルマウス30の外周面に固定されている。内輪41に固定されたベルマウス30は、筐体11に固定された外輪42に対して、回転軸AX回りに相対回転可能となっている。つまり、ベルマウス30は、筐体11に対して回転軸AX回りに相対回転可能である。このように、実施の形態1においてベルマウス30は、筐体11に対して、ベアリング40を介して回転軸AX回りに回転可能に取り付けられている。また、ベルマウス30は、回転翼15bに固定されていないため、回転翼15bに対しても回転軸AX回りに相対回転可能である。
図7は、ベルマウス30の一部および固定部材50を示す斜視図である。図7に示すように、固定部材50は、ベルマウス30とベアリング40の内輪41とを固定する金具である。固定部材50は、第1固定部51と、第2固定部52と、連結部53と、を有する。
第1固定部51および第2固定部52は、板面が径方向を向く略長方形板状である。第1固定部51および第2固定部52は、周方向に沿って湾曲している。第1固定部51は、ベルマウス30の基部31の外周面に固定されている。第2固定部52は、内輪41の内周面に固定されている。第2固定部52は、第1固定部51よりも径方向外側かつ前方(+X方)に位置する。第2固定部52は、前側拡径部32の径方向外側に位置する。連結部53は、板面が前後方向(X軸方向)を向く略長方形板状である。連結部53は、第1固定部51の前側の端部と第2固定部52の後側(-X側)の端部とを繋いでいる。図4に示すように、実施の形態1において固定部材50は、周方向に間隔を空けて複数設けられている。固定部材50は、例えば、周方向に沿って一周に亘って等間隔に4つ設けられている。
室外機10は、回転翼15bと対向して配置されたファングリル60をさらに有する。ファングリル60は、回転翼15bの前方に位置する。ファングリル60は、筐体11の外部に位置する。図2に示すように、ファングリル60は、開口部11bおよび回転翼15bを前方から覆っている。ファングリル60の外周縁部は、筐体11の前面パネル11aの前面に固定されている。ファングリル60によって、使用者などが回転する回転翼15bに誤って触れることを抑制できる。
実施の形態1においてファングリル60は、前方(+X方)から見て略長方形状である。ファングリル60は、複数の第1グリル部61と、複数の第2グリル部62と、を有する。複数の第1グリル部61は、鉛直方向に延びる棒状である。複数の第1グリル部61は、幅方向(Y軸方向)に間隔を空けて配置されている。複数の第2グリル部62は、幅方向に延びる棒状である。複数の第2グリル部62は、鉛直方向に間隔を空けて配置されている。複数の第1グリル部61と複数の第2グリル部62とによって、ファングリル60は、格子状に形成されている。
図8は、室外機10から吹き出される空気の流れを説明するための図である。図8においては、ファングリル60を取り外した状態の室外機10を示している。筐体11の内部において送風ファン15の回転翼15bが回転すると、空気が開口部11bから室外機10の前方(+X方)に吹き出される。図8に示すように、送風ファン15によって室外機10の前方に吹き出される空気は、前方に進みつつ回転軸AX回りに径方向外側に広がりながら旋回する螺旋状の旋回流AFとなる。旋回流AFにおける空気の速度Vは、回転軸AXの軸方向、すなわち前後方向(X軸方向)に沿った軸方向成分Vxと、回転軸AXの径方向に沿った径方向成分Vrと、回転軸AX回りの周方向に沿った周方向成分Vθと、を含む。一般的には、風量に相当する軸方向成分Vxは径方向成分Vrおよび周方向成分Vθよりも大きくなり、かつ、回転翼15bの回転に起因する周方向成分Vθは径方向成分Vrよりも大きくなる傾向がある。
空気を送る回転翼15bの下流側、すなわち前側(+X側)の圧力は、回転翼15bの上流側、すなわち後側(-X側)の圧力よりも高くなる。そのため、回転翼15bを後側から前側に通過した空気の一部は、ベルマウス30と回転翼15bとの隙間、すなわちファンギャップG1を介して、圧力が高い前側から圧力の低い後側へと流れる。そのため、送風ファン15によって送られた空気がファンギャップG1を介して後側に漏れて、送風ファン15の送風量が低下する場合がある。したがって、一般的には、ファンギャップG1を小さくする方が、送風ファン15の送風効率を向上できるとされている。
しかしながら、ファンギャップG1を小さくし過ぎると、回転翼15bが回転した際に羽根部15eが遠心力で延びてベルマウス30に衝突する恐れもある。また、筐体11と回転翼15bとの少なくとも一方が振動するなどにより、羽根部15eがベルマウス30に接触する恐れもある。また、量産される室外機10においては各部の寸法にバラつきが生じるため、ファンギャップG1の大きさにもバラつきが生じる。これらを考慮して、ファンギャップG1は、回転翼15bがベルマウス30に接触しないように或る程度余裕を持って大きく設計する必要がある。そのため、ファンギャップG1を小さくすることには限界があり、ファンギャップG1を小さくすることによる送風ファン15の送風効率の向上にも限界がある。
また、ファンギャップG1には空気が介在する。そのため、回転翼15bが回転する際には、回転翼15bと空気との摩擦により、回転翼15bには回転翼15bの回転を止める向きにブレーキ力が生じる。ファンギャップG1が小さくなるほど、空気との摩擦の影響が大きくなり、回転翼15bに生じるブレーキ力が大きくなる。したがって、ファンギャップG1を小さくすると、上述したように送風量の低下を抑制できる一方で、ファンギャップG1に介在する空気によって回転翼15bに生じるブレーキ力が大きくなる。そのため、単純にファンギャップG1を小さくしても送風効率を向上できない場合がある。
以上に説明したように、ファンギャップG1を小さくして送風ファン15の送風効率を向上させようとする手法は、各部の寸法上の制約から限界があるだけでなく、回転翼15bと空気との摩擦によって、却って送風効率を低下させてしまう恐れもある。したがって、ファンギャップG1を単に小さくすることによっては、送風ファン15の送風効率を十分に向上できない問題があった。
これに対して、実施の形態1によれば、ベルマウス30は、筐体11および回転翼15bに対して回転軸AX回りに相対回転可能である。つまり、ベルマウス30が筐体11および回転翼15bに対して自由に回転可能な状態になっている。そのため、ファンギャップG1に介在する空気が回転翼15bにつられて回転翼15bが回転する向きに移動しようとすると、ベルマウス30は、ベルマウス30の内周面30aに接触する空気から受ける摩擦力によって、回転翼15bが回転する向きと同じ向きに回転軸AX回りに回転し始める。これにより、ベルマウス30が筐体11に固定されてベルマウス30の内周面30aに接触する空気が静止し続けようとする場合に比べて、ファンギャップG1に介在する空気が、回転翼15bが回転する向きに流れやすくなる。したがって、ファンギャップG1に介在する空気が回転翼15bの回転を阻害しにくくなり、ファンギャップG1に介在する空気から回転翼15bが受けるブレーキ力を低減できる。そのため、送風ファン15の送風効率を向上できる。
図9は、ファンギャップG1に介在する空気の速度分布について説明するための図である。図9に実線で示す速度分布VD1は、実施の形態1におけるファンギャップG1に介在する空気の速度分布である。図9に二点鎖線で示す速度分布VD2は、ベルマウス30が筐体11に対して回転不能に固定されている場合のファンギャップG1に介在する空気の速度分布である。
図9に示すように、ベルマウス30が筐体11に固定されている場合の速度分布VD2では、ベルマウス30の内周面30aにおいて空気が静止し続けようとするため、ベルマウス30の内周面30aにおける空気の速度と、羽根部15eの径方向外縁部15fにおける空気の速度との差が比較的大きい。これにより、速度分布VD2では、ベルマウス30の内周面30aにおける空気の速度勾配VRb2、および羽根部15eの径方向外縁部15fにおける速度勾配VRf2が比較的大きくなる。
ここで、流体が接触する物体の表面に生じる摩擦力(せん断応力)は、当該物体の表面における流体の速度勾配に比例することが知られている。具体的に、摩擦力(せん断応力)をτとし、速度勾配を(dv/dr)とすると、τ=μ×(dv/dr)という関係を満たすことが知られている。ここで、μは、空気の粘性係数である。そのため、ベルマウス30が筐体11に固定されて空気の速度分布が速度分布VD2となる場合には、ベルマウス30の内周面30aに生じる摩擦力も、羽根部15eの径方向外縁部15fに生じる摩擦力も比較的大きくなる。したがって、空気との摩擦によって回転翼15bに生じるブレーキ力が比較的大きくなる。
一方、実施の形態1における速度分布VD1では、ベルマウス30が回転することで内周面30aに接触する空気も回転翼15bと同じ向きに移動しようとするため、ベルマウス30の内周面30aにおける空気の速度と、羽根部15eの径方向外縁部15fにおける空気の速度との差が、速度分布VD2に比べて小さくなる。これにより、速度分布VD1では、ベルマウス30の内周面30aにおける空気の速度勾配VRb1、および羽根部15eの径方向外縁部15fにおける速度勾配VRf1が、速度分布VD2における速度勾配VRb2,VRf2よりも小さくなる。したがって、実施の形態1では、ベルマウス30の内周面30aに生じる摩擦力も、羽根部15eの径方向外縁部15fに生じる摩擦力も、ベルマウス30が筐体11に固定されている場合に比べて小さくなる。そのため、空気との摩擦によって回転翼15bに生じるブレーキ力を小さくすることができる。したがって、送風ファン15の送風効率を向上できる。
図9に示すように、ベルマウス30の回転速度Vbは、例えば、回転翼15bの回転速度Vfよりも小さくなる。図9では、ベルマウス30の回転速度Vbが、回転翼15bの回転速度Vfの半分以下である場合の例を示している。ベルマウス30の回転速度Vbは、ファンギャップG1に介在する空気によってベルマウス30に生じる摩擦力、すなわちベルマウス30を回転させようとする力と、ベアリング40における内輪41がボール43から受ける摩擦力などのベルマウス30が受ける回転抵抗とが釣り合う速度となる。冷凍サイクル装置100の運転状態などによって、回転翼15bの回転速度Vfが変化すると、ベルマウス30の回転速度Vbは、回転翼15bの回転速度Vfに応じて上述した力が釣り合う回転速度に自動的に収束する。
このように、ベルマウス30の回転速度Vbは、例えば内輪41とボール43との摩擦力が増大するようなほどに大きくなるわけではなく、回転翼15bが回転する際にファンギャップG1に介在する空気から受ける摩擦力に応じて、最も負荷が掛からずに回転する回転速度になる。そのため、空気を介してベルマウス30を回転させるために送風ファン15に過度な負荷が掛かることがなく、ベルマウス30の回転速度Vbは、回転翼15bの回転速度Vfに応じて、送風ファン15に掛かる負荷が最小となるように自動的に調整される。これにより、回転翼15bの回転速度Vfが変化しても、その回転速度Vfに応じて送風ファン15に掛かる負荷を最小にすることができる。したがって、送風ファン15の消費電力を低減できる。このような効果は、送風ファン15の回転数が無段階で変化するようなインバータ方式の空気調和機に適用される場合に、より有用である。
また、実施の形態1によれば、ベルマウス30は、筐体11に対して、ベアリング40を介して回転軸AX回りに回転可能に取り付けられている。そのため、ベルマウス30を、筐体11および回転翼15bに対して、容易に回転軸AX回りに相対回転可能にできる。また、ベアリング40を用いることで、ベルマウス30が回転する際にベルマウス30に生じる回転抵抗を小さくできる。
実施の形態2.
図10は、実施の形態2の室外機210を前方(+X方)から見た図である。図11は、室外機210の一部を上方から見た部分断面図である。なお、以下の説明において、上述した実施の形態と同様の構成については、適宜同一の符号を付すなどにより、説明を省略する場合がある。
図10に示すように、実施の形態2においてファングリル260は、回転軸AXを中心とする円形状である。ファングリル260は、複数の第1グリル部261と、複数の第2グリル部262と、を有する。複数の第1グリル部261は、回転軸AXを中心とする円環状である。複数の第1グリル部261は、径方向に間隔を空けて並んで配置されている。径方向内側に位置する第1グリル部261ほど内径が小さく、径方向外側に位置する第1グリル部261ほど内径が大きい。複数の第2グリル部262は、最も径方向内側に位置する第1グリル部261から最も径方向外側に位置する第1グリル部261まで径方向に直線状に延びている。複数の第2グリル部262は、周方向に間隔を空けて並んで配置されている。複数の第2グリル部262のそれぞれは、複数の第1グリル部261と繋がっている。ファングリル260において第1グリル部261が占める割合は、ファングリル260において第2グリル部262が占める割合よりも大きい。
ファングリル260は、ファングリル260を回転軸AXの軸方向、すなわち前後方向(X軸方向)に貫通する複数の貫通穴263を有する。複数の貫通穴263は、径方向に隣り合う一対の第1グリル部261と周方向に隣り合う一対の第2グリル部262とによって囲まれた内側にそれぞれ形成されている。貫通穴263は、回転軸AX回りの周方向に延びる円弧状である。
図11に示すように、ファングリル260の径方向外縁部は、ベアリング40の内輪41の前側(+X側)の面に固定されている。これにより、実施の形態2においてファングリル260は、ベアリング40を介して、ベルマウス30に固定されている。これにより、ファングリル260は、ベルマウス30と共に回転軸AX回りに回転可能になっている。つまり、実施の形態2においてファングリル260は、筐体11および回転翼15bに対して回転軸AX回りに相対回転可能である。室外機210のその他の構成は、実施の形態1の室外機10のその他の構成と同様である。
図8を用いて説明したように、送風ファン15から吹き出される空気は、回転軸AX回りに旋回する旋回流AFとなっている。旋回流AFとなって吹き出される空気の一部は、ファングリル260を通過する際に、ファングリル260の第1グリル部261または第2グリル部262に衝突する。これにより、送風ファン15によって吹き出される空気に圧力損失が生じる。したがって、送風ファン15の送風効率が低下する恐れがある。
これに対して、実施の形態2によれば、ファングリル260は、筐体11および回転翼15bに対して回転軸AX回りに相対回転可能である。つまり、ファングリル260が筐体11および回転翼15bに対して自由に回転可能な状態になっている。そのため、旋回流AFとなって吹き出される空気がファングリル260を通過しようとする際、ファングリル260に回転軸AX回りの流体力が加えられると、当該流体力によってファングリル260が、回転翼15bが回転する向きと同じ向きに回転軸AX回りに回転し始める。これにより、ファングリル260が筐体11に固定されて静止している場合に比べて、空気がファングリル260から受ける抵抗を低減することができる。したがって、送風ファン15によって吹き出された空気がファングリル260を通過する際に生じる圧力損失を低減できる。そのため、送風ファン15の送風効率をより向上できる。
また、実施の形態2によれば、ファングリル260は、ベルマウス30に固定されている。そのため、ベルマウス30とファングリル260とが共に回転軸AX回りに回転する。これにより、旋回流AFとなって吹き出される空気からファングリル260が受ける回転軸AX回りの力を、ベルマウス30を回転軸AX回りに回転させる力としても利用できる。また、ファンギャップG1に介在する空気からベルマウス30が受ける回転軸AX回りの力を、ファングリル260を回転軸AX回りに回転させる力としても利用できる。したがって、ベルマウス30とファングリル260とを共に回転軸AX回りに回転させやすくできる。そのため、回転翼15bに生じるブレーキ力、および送風ファン15によって吹き出された空気がファングリル260を通過する際に生じる圧力損失をより低減できる。これにより、送風ファン15の送風効率をより向上できる。
ここで、ファングリル260を通過する空気が受ける圧力損失について、より詳細に考える。空気の圧力損失は、空気がファングリル260を構成する第1グリル部261および第2グリル部262に対して垂直に衝突した場合に大きくなり、空気が第1グリル部261および第262に沿って流れる場合に小さくなる。上述したように、送風ファン15によって室外機10の外部に旋回流AFとして吹き出される空気の速度Vは、軸方向成分Vxと、周方向成分Vθと、径方向成分Vrと、を含む。軸方向成分Vxに関しては、ファングリル260に垂直に衝突する向きの速度成分であるため、圧力損失を低減することは難しい。
一方、周方向成分Vθおよび径方向成分Vrについては、ファングリル260がどのような形状であるかによって、圧力損失が変動する。例えば、ファングリル260において周方向に延びる部分が多ければ、当該部分に垂直に衝突する径方向成分Vrが受ける圧力損失は大きくなる。また、例えば、ファングリル260において径方向に延びる部分が多ければ、当該部分に垂直に衝突する周方向成分Vθが受ける圧力損失は大きくなる。ここで、上述したように、周方向成分Vθは、径方向成分Vrよりも大きくなりやすい。そのため、周方向成分Vθが受ける圧力損失を低減させた方が、径方向成分Vrが受ける圧力損失を低減させるよりも効果的である。つまり、ファングリル260の形状を、径方向に延びる部分が少ない形状とすることで、ファングリル260を通過する空気に生じる圧力損失を好適に低減できる。
これに対して、実施の形態2によれば、ファングリル260は、回転軸AX回りの周方向に延びる複数の貫通穴263を有する。そのため、ファングリル260の形状を、周方向に延びる部分が多く、径方向に延びる部分が少ない形状にしやすい。これにより、周方向成分Vθが受ける圧力損失を好適に低減でき、ファングリル260を通過する空気に生じる圧力損失を好適に低減できる。したがって、送風ファン15の送風効率をより向上できる。
また、実施の形態2ではファングリル260も回転翼15bが回転する向きに回転するため、ファングリル260のうち径方向に延びる部分、すなわち第2グリル部262が、回転翼15bが回転する向きに周方向に移動する。つまり、ファングリル260が回転することで、周方向成分Vθに圧力損失を生じさせやすい部分が、周方向成分Vθの向きと同じ向きに移動する。これにより、周方向成分Vθがファングリル260のうち径方向に延びる部分に衝突しにくくなり、周方向成分Vθに生じる圧力損失をより低減できる。したがって、送風ファン15の送風効率をより向上できる。
また、実施の形態2では、複数の第1グリル部261は、回転軸AXを中心とする同心円状に配置されている。そのため、ファングリル260が回転軸AX回りに回転しても、ファングリル260の回転角度によらず、いずれの周方向位置においても第1グリル部261の形状は同じである。そのため、ファングリル260の回転角度によらず、周方向成分Vθに生じる圧力損失を好適に低減することができる。
実施の形態3.
図12は、実施の形態3における室外機310の一部を上方から見た部分断面図である。なお、以下の説明において、上述した実施の形態と同様の構成については、適宜同一の符号を付すなどにより、説明を省略する場合がある。
実施の形態3において送風ファン315のモータ315aにおけるシャフト315cは、回転翼15bを前後方向(X軸方向)に貫通し、回転翼15bよりも前方(+X方)に突出している。シャフト315cのうち回転翼15bから前方に突出している部分は、回転翼15bから回転軸AXに沿って突出する突出部315gである。実施の形態3において突出部315gは、回転軸AXを中心とする円柱状である。突出部315gの前側の端部は、開口部11bから筐体11の外部に突出している。送風ファン315のその他の構成は、実施の形態1の送風ファン15のその他の構成と同様である。
実施の形態3においてファングリル360は、突出部315gに対して回転軸AX回りに回転可能に取り付けられている。ファングリル360は、実施の形態2とは異なり、ベルマウス30に固定されていない。これにより、ファングリル360とベルマウス30とは、互いに回転軸AX回りに相対回転可能である。
ファングリル360は、突出部315gの前側(+X側)の端部にベアリング370を介して取り付けられている。実施の形態3においてベアリング370は、ファングリル360を回転軸AX回りに回転可能に支持するボールベアリングである。ファングリル360は、後側(-X側)の面の径方向の中央部に、ベアリング370を保持するベアリング保持部363を有する。ベアリング保持部363は、回転軸AXを中心とし、後方に開口する円筒状である。
ファングリル360は、筐体11から前方(+X方)に離れて配置されている。ファングリル360とベルマウス30およびベアリング40との前後方向(X軸方向)の間には、隙間G2が設けられている。ファングリル360の径方向外縁部は、ベアリング40の内輪41の前方に隙間G2を介して対向して配置されている。ファングリル360のその他の構成は、実施の形態2のファングリル260のその他の構成と同様である。室外機310のその他の構成は、実施の形態2の室外機210のその他の構成と同様である。
実施の形態3によれば、ファングリル360とベルマウス30とは、互いに回転軸AX回りに相対回転可能である。つまり、ファングリル360とベルマウス30とは、互いに自由に回転軸AX回りに回転可能である。そのため、ファングリル360の回転速度とベルマウス30の回転速度とは、それぞれが空気から受ける回転力とベアリングなどから受ける回転抵抗との釣り合いにより、それぞれ送風ファン315に掛かる負荷が最小となるように自動的に調整される。したがって、送風ファン315の消費電力をより低減できる。
また、実施の形態3によれば、送風ファン315は、回転翼15bから回転軸AXに沿って突出する突出部315gを有する。ファングリル360は、突出部315gに対して回転軸AX回りに回転可能に取り付けられている。そのため、ファングリル360を、ベルマウス30と回転軸AX回りに相対回転可能に配置することが容易である。
また、実施の形態3によれば、ファングリル360とベルマウス30およびベアリング40との前後方向の間、つまり回転軸AXの軸方向の間には、隙間G2が設けられている。そのため、ファングリル360とベルマウス30とが互いに異なる回転速度で回転しても、ファングリル360がベルマウス30およびベアリング40に接触して擦れることを抑制できる。
以上に本開示における実施の形態について説明したが、本開示は上述した各実施の形態の構成のみに限定されず、以下の構成および方法を採用することもできる。
ベルマウスは、筐体および回転翼に対して回転翼の回転軸回りに相対回転可能であれば、室外機のいずれの箇所にどのように取り付けられていてもよい。ベルマウスは、例えば、上述した実施の形態3のファングリル360のように、回転翼から回転軸方向に突出する突出部にベアリングなどを介して回転可能に取り付けられてもよい。この場合、ベルマウスは、例えば、ベルマウス本体部と、送風ファンの突出部にベアリングを介して回転可能に連結される連結部と、径方向に延びて当該連結部とベルマウス本体部とを繋ぐスポーク部と、を有する。
ベルマウスを回転可能に支持するベアリングとファングリルを回転可能に支持するベアリングとは、どのような種類のベアリングであってもよく、互いに異なる種類のベアリングであってもよい。ベルマウスを回転可能に支持するベアリングおよびファングリルを回転可能に支持するベアリングは、ボールベアリング以外の転がり軸受であってもよいし、滑り軸受であってもよいし、軸受と軸との隙間に油などの流体を封入して用いる流体軸受であってもよい。上述した実施の形態のように、ベルマウスがボールベアリングなどの転がり軸受の内輪に固定される場合、ベルマウスと内輪とは、どのように互いに固定されてもよい。ベルマウスと内輪とは、上述した固定部材50などの他の部材を介さずに、互いに直接的に固定されてもよい。
ベルマウスを構成する材料は、特に限定されない。ベルマウスは、金属製であってもよいし、樹脂製であってもよい。ベルマウスを樹脂製とする場合、ベルマウスを金属製とする場合に比べて、ベルマウスの質量を小さくしやすい。これにより、ベルマウスを回転させやすくできる。
ファングリルが、筐体、回転翼、およびベルマウスに対して回転軸回りに相対回転可能である場合、ファングリルは、筐体に対してベアリングを介して回転可能に取り付けられてもよい。ファングリルの形状は、特に限定されない。ファングリルは、上述した実施の形態2の複数の第1グリル部261の代わりに回転軸回りに渦巻状に延びるグリル部を有する形状であってもよい。ファングリルを構成する材料は、特に限定されない。ファングリルは、金属製であってもよいし、樹脂製であってもよい。ファングリルを樹脂製とする場合、ファングリルを金属製とする場合に比べて、ファングリルの質量を小さくしやすい。これにより、ファングリルが回転可能な場合、ファングリルを回転させやすくできる。
送風ファンに設けられた突出部は、回転翼から回転軸に沿って突出していれば、どのような構成であってもよい。例えば、上述した実施の形態3において、突出部315gは、モータ315aのシャフト315cの一部としたが、これに限られない。突出部315gは、シャフト315cとは別体で、例えば、回転翼15bの基部15dに設けられた部分であってもよい。
本開示の室外機が備えられる冷凍サイクル装置は、冷媒が循環する冷凍サイクルを利用する装置であればよく、空気調和機に限られない。冷凍サイクル装置は、ヒートポンプ給湯器などであってもよい。
以上、本明細書において説明した各構成および各方法は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。