JP7460905B2 - エンドミル - Google Patents

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Description

本発明は複数本の底刃を有する場合に、各底刃の回転方向前方側に位置するギャッシュにおける切屑の収容能力を高め、ギャッシュ付近での切屑の詰まりを抑制しながら、工具本体先端部に一定の剛性を確保し得る形態のエンドミルに関するものである。
エンドミルの底刃が切削した切屑の切屑排出溝への排出性は主に、底刃すくい面の回転方向前方側に連続して形成されるギャッシュ自体の形状、またはギャッシュを構成するギャッシュ面の傾斜角度等から決まるギャッシュの切屑収容能力に支配される。
例えば底刃がコーナーR刃を有するラジアスエンドミルの場合、ギャッシュは基本的には底刃とコーナーR刃に跨る両すくい面とその回転方向前方側に位置する底刃の逃げ面までの領域に形成される(特許文献1~4参照)。この形態では、ある底刃が切削した切屑はその底刃のすくい面を構成するギャッシュを経由してのみ、切屑排出溝へ向かう。このため、ギャッシュの切屑収容能力の程度によってはギャッシュ内に切屑が詰まり、切屑の排出性が低下することが想定される。
一方、底刃として、工具本体の先端部に、切れ刃が半径方向外周側の端部から半径方向中心まで連続する複数本の親底刃と、半径方向外周側の他の端部から半径方向中心側の中途まで連続する複数本の子底刃の、長さの相違する2種類の底刃を形成したエンドミルがある(特許文献5、6参照)。これらの例では親底刃と子底刃の回転方向前方側(親底刃前と子底刃前)に、各底刃のすくい面を構成するギャッシュを形成している。
特許文献5、6の例では親底刃前のギャッシュの領域と子底刃前のギャッシュの領域に、親底刃と子底刃の各切削区間の長さに応じた大きさを持たせることで、いずれかのギャッシュ内に切屑が集中することを回避、あるいは抑制することができる利点がある(特許文献5の段落0017、0018)。特許文献6では切削区間の長い親底刃の回転方向前方側に2個のギャッシュを形成し、子底刃の回転方向前方側に実質的に1個のギャッシュを形成している(特許文献6の図2)。
特許文献6ではまた、子底刃前の1個のギャッシュを親底刃前の2個のギャッシュと共に、親底刃の長さ方向に沿って配列させることで(請求項2)、親底刃が切削した切屑を親底刃の長さ方向(半径方向)両側に分散させる機能をこれらの3個のギャッシュに持たせている(段落0029)。
特開2003-300112号公報(段落0012~0020、図2、図3) 特開2004-141975号公報(段落0013~0044、図1、図2) 特開2008-110472号公報(段落0015~0024、図1~図3) 特開2018-192566号公報(段落0018~0028、図1~図6) 国際公開第2016/084877号(請求項1、段落0008~0028、図1~図3) 国際公開第2016/152611号(請求項1、段落0010~0047、図2~図4)
例えばHRC40以上の高硬度材(被削材)を切削加工するような場合や、エンドミルが首下長の長い小径エンドミルである場合、エンドミルの先端部には切屑排出性と共に、切削時に生じる振動に対する一定の剛性が求められる。しかしながら、上記のように特許文献6では工具本体の先端部を回転軸O方向の先端面側から見たとき、子底刃前の1個のギャッシュと親底刃前の2個のギャッシュを親底刃の長さ方向に沿うように配列させていることで、子底刃すくい面の半径方向(子底刃の長さ方向)の多くの区間が切屑排出溝に面する状態にある。この結果、子底刃すくい面の多くが切屑排出溝に面しない場合より、工具本体の先端面寄りの部分の心厚が小さくなるため、エンドミル先端部の振動に対する剛性が低下し易い。
また子底刃前のギャッシュと切屑排出溝との間の境界線が子底刃と、子底刃の半径方向中心寄りの位置で交わり、子底刃前のギャッシュ(第三ギャッシュ)は子底刃と、子底刃の半径方向中心寄りの一部の切削区間に重なるだけになっている。このことから、子底刃が切削した切屑の多くは切屑排出溝に直接、排出され、子底刃前のギャッシュは子底刃が切削した切屑を直接、収容する機能を発揮することはあまり期待されない。
特許文献5でも子底刃前のギャッシュと切屑排出溝との間の境界線が子底刃の半径方向中心寄りの位置で交わっているため、特許文献6と同様のことが言える。これらの例では外周刃が切削した切屑の多くが切屑排出溝に直接、排出されるところ、子底刃が切削した切屑の多くが切屑排出溝に直接、排出されることは、切屑が切屑排出溝に集中し易く、切屑排出溝内で切屑が詰まり易いことを意味する。
特許文献6ではまた、前記のように子底刃前の1個のギャッシュと親底刃前の2個のギャッシュを親底刃の長さ方向に沿うように配列させていることで、親底刃が切削した切屑を子底刃前のギャッシュへも分散させ易くしている。このことは、子底刃前の切屑排出溝に、子底刃が切削した切屑と親底刃が切削した切屑を合流させることでもあるため、状況次第では子底刃前の切屑排出溝に切屑が集中し易くなる。
本発明は上記背景より、子底刃前のギャッシュが子底刃が切削した切屑を直接、収容し、切屑排出溝へ排出する前の経由領域として機能しながら、工具本体先端部に一定の剛性を付与し得る形態のエンドミルを提案するものである。
請求項1に記載の発明のエンドミルは、工具本体の回転軸方向の先端部側に、前記先端部を回転軸方向の先端面側から見たときに半径方向中心側から外周側へかけて連続する複数本の親刃と、前記工具本体の回転方向に隣り合い、半径方向中心側より外周寄りの位置から外周側へかけて連続する複数本の子刃とを有する切れ刃部を備え、前記工具本体の回転方向に隣り合う前記親刃と前記子刃との間に切屑排出溝が形成されたエンドミルであり、
前記親刃の回転方向前方側にその親刃のすくい面を構成する第一ギャッシュが形成され、前記子刃の回転方向前方側にその子刃のすくい面を構成する第三ギャッシュが形成され、前記子刃の回転方向前方側で、前記第一ギャッシュの回転方向前方側に、前記第一ギャッシュに連通する第二ギャッシュが形成され、
前記切れ刃部を回転軸方向の先端面側から見たとき、前記第二ギャッシュと前記第三ギャッシュとの間の境界線が前記第一ギャッシュの前記第二ギャッシュ寄りの境界線に交わっていることを特徴とする。
請求項1の「先端部を回転軸方向(軸方向)の先端面側から見たとき」の「先端面」は、図1、図4に示す、エンドミル本体(工具本体)を先端側から回転軸O反対側のシャンク部3側に向かって見たときの端面を言う。以下では「回転軸O方向」を単に「軸方向」とも言い、「先端面」を単に「端面」とも言う。「先端部」は切れ刃部2である。
「親刃」と「子刃」はそれぞれ親底刃41と子底刃42のことであり、親底刃41と子底刃42の半径方向外周側に連続する場合のコーナーR刃5を含む。コーナーR刃5の外周側に外周刃6が連続する。親刃と子刃がコーナーR刃5を有する場合、エンドミル1は図示するようなラジアスエンドミルになり、コーナーR刃5がなく、親底刃41と子底刃42の外周側に外周刃6が連続する場合、エンドミル1はスクエアエンドミルになる。以下では親刃と子刃を単に親底刃41、子底刃42と言うこともある。
工具本体の先端部を先端面側から見たときに、刃(底刃)の半径方向中心側の端部が相対的に中心寄りに位置する刃を親刃と言い、刃の中心側の端部が親刃の中心寄りの端部より半径方向外周側に位置する刃を子刃と言う。親刃(親底刃41)と子刃(子底刃42)は回転軸(半径方向中心)Oに関して対に、あるいは点対称になるように形成されるため、切れ刃(底刃)の本数(枚数)は主には4本(枚)であるが、それより多いこともある。図面では親刃(親底刃41)と子刃(子底刃42)が共に2枚あり、底刃にコーナーR刃5が連続する4枚刃のラジアスエンドミルの例を示している。以下では半径方向中心Oを中心Oとも、回転軸Oとも言う。
請求項1の「先端部(切れ刃部2)を回転軸方向の先端面側から見たときに半径方向中心側から外周側へかけて連続する親刃」とは、図1、図4に示すように親底刃41(親底刃41の稜線)が半径方向中心(回転軸)Oに交わるまで半径方向外周側の端部から半径方向中心Oまで連続するか、もしくはその付近を通過するまで連続することを言う。「親底刃が中心付近を通過する」とは、親底刃41を通る、または親底刃41に連続する線(親底刃41の稜線とその延長線)が中心(回転軸)Oより、親底刃41が面する第一ギャッシュ8寄り(回転方向前方側)を通過することを言う。
この場合、親底刃41を通る線(稜線)は中心Oを挟んで対になる側の親底刃41の逃げ面41b(以下、親底刃逃げ面41b)の回転方向r後方側の境界線41cに連続し、もしくは繋がり、親底刃逃げ面41bはその中心Oを挟んだ側に位置する親底刃逃げ面41bに帯状に連続する。親底刃逃げ面41bの回転方向r後方側の境界線41cは、親底刃逃げ面41bとその回転方向r後方側に隣接する第二ギャッシュ9との間の境界線である。回転方向rはエンドミル本体(工具本体)が被削材を切削するときに回転軸O回りに回転する向きを言う。
請求項1の「半径方向中心側より外周寄りの位置から外周側へかけて連続する子刃」とは、子底刃42(子底刃42の稜線)が中心(回転軸)Oに交わる手前まで半径方向外周側の端部から半径方向中心O寄りの位置まで連続し、中心Oには到達しないことを言う。子底刃42の中心O寄りの端部からは、第一ギャッシュ8の第二ギャッシュ9寄り(第一ギャッシュ8と第二ギャッシュ9との間)の境界線81が連続し(繋がり)、この境界線81は親底刃41を通る線と交わりながら、子底刃42の回転方向前方側に位置する親底刃逃げ面41bに交わる。境界線81は切れ刃部2を先端面側から見たとき、凹曲線を描き、親底刃逃げ面41b、及び子底刃42の逃げ面42b(以下、子底刃逃げ面42b)より凹んでいる。
子底刃42の中心O寄りの端部から、第一ギャッシュ8と第二ギャッシュ9との間の境界線81が連続し、境界線81が先端面側から凹曲線を描くことで、第一ギャッシュ8内の空間と第二ギャッシュ9内の空間が連通する。「連通する」とは、空間的に連続することを言い、第一ギャッシュ8と第二ギャッシュ9との間に、子底刃42が中心Oにまで、または親底刃逃げ面41bにまで連続する場合のような、子底刃42による仕切り(壁)が存在しない状態のことを言う。子底刃42の中心O寄りの端部から連続する境界線81が親底刃逃げ面41bに交わることで、中心Oを挟んで対になる子底刃逃げ面42b、42bは分断される。
第一ギャッシュ8と第二ギャッシュ9との間に仕切りがないことで、第一ギャッシュ8内の切屑の第二ギャッシュ9内への移動が生じ易くなる。この結果、親底刃41が切削し、第一ギャッシュ8内に入り込んだ切屑の一部は第二ギャッシュ9内にも入り込み得るため、切屑が第一ギャッシュ8と第二ギャッシュ9に分散し易くなり、親底刃41が切削した切屑が第一ギャッシュ8内に集中し、第一ギャッシュ8内に詰まる事態が回避され易くなる。
請求項1の「親刃の回転方向前方側にその親刃のすくい面を構成する第一ギャッシュ8が形成され」とは、第一ギャッシュ8が親底刃すくい面41aに連続する面をなすことを意味し、親底刃41が切削した切屑を第一ギャッシュ8が一旦、収容する能力を有することの意味を含む。第一ギャッシュ8は親底刃すくい面41aとこれに回転方向r前方側に対向し、子底刃逃げ面42bの回転方向r後方側に形成される第一ギャッシュ面8aとで構成される。
子底刃逃げ面42bは図1、図4に示す例の場合、2番面であるが、2番面と3番面の2以上の面に分割されることもある。例えば子底刃逃げ面42bが2分割される場合、第一ギャッシュ8は子底刃42の2番面42b、または3番面42cと親底刃すくい面41aとの間に形成される。親底刃逃げ面41bも図1、図4に示す例の場合、2番面であるが、2番面と3番面の2以上の面に分割されることがあり、2分割される場合、第二ギャッシュ9は親底刃41の2番面41b、または3番面41dと子底刃すくい面42aとの間に形成される。
第一ギャッシュ面8aは第一ギャッシュ8内で、図2に示すように平面状に、または図5に示すように凹曲面として明確に表れることもあるが、例えば第一ギャッシュ8全体が凹曲面をなすような場合、第一ギャッシュ面8aは独立した面として明確に表れない場合もある。第一ギャッシュ8の切屑収容能力は切れ刃部2を軸方向の端面側から見たときに、凹曲面をなすことで増す。「凹曲面をなす」とは、切れ刃部2を先端面側から見たとき、第一ギャッシュ8の表面が第二ギャッシュ9との間の境界線81より凹んでいることを言う。第一ギャッシュ8の凹曲面は曲率が一様な場合と連続的に変化する場合がある。第二ギャッシュ9以下も同様である。
請求項1の「子刃の回転方向前方側で、第一ギャッシュ8の回転方向前方側に、第一ギャッシュ8に連通する第二ギャッシュ9が形成され」とは、子刃と第一ギャッシュ8の回転方向前方側に境界線81を挟んで空間的に連続する第二ギャッシュ9が形成されることを言う。言い換えれば、子底刃すくい面42aと子底刃42に回転方向前方側に隣接する親底刃逃げ面41bとの間の、第一ギャッシュ8の回転方向前方側に隣接する領域に第二ギャッシュ9が形成されることを言う。図3に示す例のように第二ギャッシュ9が子底刃すくい面42aに面するように形成される場合には、第二ギャッシュ9が子底刃すくい面42aに連続する面をなすため、子底刃41が切削した切屑を第二ギャッシュ9が一旦、収容する能力を有する。
請求項1の「切れ刃部2を軸方向の端面側から見たとき、子底刃42前の第二ギャッシュ9と第三ギャッシュ11との間の境界線91が、第一ギャッシュ8の第二ギャッシュ9寄りの境界線81に交わっていること」は、境界線91が境界線81の区間に接触(接続)していること、とも言える。第二ギャッシュ9と第三ギャッシュ11との間の境界線91が、第一ギャッシュ8の第二ギャッシュ9寄りの境界線81の区間に接触していることで、特許文献6との対比ではエンドミル自体(工具本体)の先端部側の剛性が高まることが言える。
前記したように本発明の第三ギャッシュ11に相当する特許文献6における第三ギャッシュと切屑排出溝との間の境界線は子底刃のすくい面に接触し、第三ギャッシュは子底刃のすくい面の一部から形成されている。一方、特許文献6の切れ刃部を端面側から見たときの、本発明の第二ギャッシュに相当する第三ギャッシュと切屑排出溝との間の境界線が子底刃の中心O寄りの位置で交わり、切屑排出溝の、工具本体先端面寄りの部分が子底刃すくい面に半径方向中心O側へ食い込む形になっている。結果として、子底刃すくい面の多くが切屑排出溝に面しない場合より、工具本体の先端面寄りの部分の心厚が小さくなり、エンドミル先端部の剛性が低下し易い。特許文献6の第三ギャッシュは本発明の第二ギャッシュ9と第三ギャッシュ11を合わせた形に相当する。
これに対し、本発明では第二ギャッシュ9と第三ギャッシュ11との間の境界線91が第一ギャッシュ8の第二ギャッシュ9寄りの境界線81の区間に接触(接続)することで、特許文献6の第三ギャッシュに相当する第三ギャッシュ11が先端面の中心O寄りに深く入り込む形にはならず、特許文献6との対比では全ギャッシュの容積(チップポケット)が小さくなる。結果的に特許文献6との対比ではエンドミル1の、切削時の振動に対する剛性が上昇する。
前記のように首下長の長い小径エンドミルがHRC40以上の高硬度材(被削材)を切削加工するような場合、エンドミルの先端部には切屑排出性と、振動に対する一定の剛性が求められる。切屑排出性は各ギャッシュの容積をより大きく確保すれば、達成されるものの、反面、先端部の剛性が犠牲になる可能性があり、ビビリ振動を誘発し易くなる。このこともあり、首下長の長いエンドミルでは切屑排出性と剛性の、相反する性能を同時に満たすことが要求される。
そこで、本発明では第二ギャッシュ9と第三ギャッシュ11との間の境界線91を第一ギャッシュ8の第二ギャッシュ9寄りの境界線81の区間に接触させることで(請求項1)、第二ギャッシュ9に、子底刃42が切削した切屑を一旦、収容する能力を持たせている。同時に、全ギャッシュの容積(チップポケット)を一定程度以下に抑え、工具本体先端部の剛性を一定以上に確保することを可能にしている。
請求項1の「子刃の回転方向前方側にその子刃のすくい面を構成する第三ギャッシュ11が形成され」とは、第三ギャッシュ11が子底刃すくい面42aに連続する面をなすことを意味し、子底刃41が切削した切屑を第三ギャッシュ11が一旦、収容する能力を有することの意味を含む。エンドミル1がラジアスエンドミルの場合、第三ギャッシュ11はコーナーR刃5のすくい面にも面する。第三ギャッシュ11は第二ギャッシュ9に連続しながらも、第二ギャッシュ9とは異なる面をなす。第三ギャッシュ11の切屑収容能力は切れ刃部2を軸方向の端面側から見たときに、凹曲面をなすことで増す。「凹曲面をなす」とは、切れ刃部2を先端面側から見たとき、第三ギャッシュ11の表面が第二ギャッシュ9との間の境界線91より凹んでいることを言う。
第二ギャッシュ9は子刃の回転方向前方側で、第一ギャッシュ8の回転方向前方側に形成されるため(請求項1)、第二ギャッシュ9は親底刃逃げ面41bの子底刃42側の境界線41cに沿って形成される。このことから、第二ギャッシュ9が第一ギャッシュ8の回転方向前方側に隣接することと併せ、親底刃41が切削し、第一ギャッシュ8内に入り込んだ切屑が第二ギャッシュ9内に入り込む場合の切屑の収容能力を有する。第二ギャッシュ9の切屑収容能力は切れ刃部2を軸方向の端面側から見たときに、凹曲面をなすことで増す。「凹曲面をなす」とは、切れ刃部2を先端面側から見たとき、第二ギャッシュ9の表面が親底刃逃げ面41bとの間の境界線41cより凹んでいることを言う。
切屑収容能力上は図1、図4に示すように第二ギャッシュ9が、親底刃逃げ面41bの子底刃42側の境界線41cの全長に沿って形成されることが有効である(請求項2)。この場合、第二ギャッシュ9が境界線41cの全長に沿わない場合より第二ギャッシュ9の領域(容積)が増すため、親底刃41が切削し、第一ギャッシュ8内に入り込んだ切屑が回転方向前方側へ回り込む場合に、第二ギャッシュ9における切屑の収容能力が向上することになる。親底刃逃げ面41bが例えば2分割される場合、境界線41cは3番面の子底刃42側の境界線になる。
切れ刃部2を軸方向の端面側から見たとき、子底刃42前の第二ギャッシュ9と第三ギャッシュ11との間の境界線91は、第一ギャッシュ8の第二ギャッシュ9寄りの境界線81に交わる(請求項1)。このことは、境界線91と境界線81の交点が、子底刃42の中心O側端部より中心O寄りに位置していることであり、子底刃42の中心O側端部が切削した切屑を第三ギャッシュ11が収容可能であることを意味する。
またこのことから、第二ギャッシュ9は子底刃すくい面42aの回転方向前方側に位置しながらも、第一ギャッシュ8の第二ギャッシュ9寄りの境界線81に面し、第一ギャッシュ8の回転方向前方側に位置する。子底刃すくい面42aは第二ギャッシュ9の切屑排出溝7側に位置する第三ギャッシュ11を構成する。第三ギャッシュ11は第二ギャッシュ9の切屑排出溝7側にに連続しながらも、第二ギャッシュ9とは異なる面をなす。第二ギャッシュ9と第三ギャッシュ11との間の境界線91は切れ刃部2を軸方向の端面側から見たときに、凸の稜線として明確に表れる場合と明確に表れない場合がある。
第二ギャッシュ9は子底刃42の回転方向r前方側に位置する親底刃逃げ面41bの回転方向後方側に形成される第二ギャッシュ面9aと、第一ギャッシュ8の第二ギャッシュ9寄りの境界線81とで構成される。第二ギャッシュ面9aも第二ギャッシュ9内で、基本的には図3に示すように平面状に、または図6に示すように凹曲面として明確に表れるが、例えば第二ギャッシュ9全体が凹曲面をなすような場合、第二ギャッシュ面9aは独立した面として明確に表れない場合もある。
本発明では境界線91が境界線81の区間に接触(接続)していることで、第三ギャッシュ11は子底刃すくい面42aに面する状態にある、あるいは第三ギャッシュ11が子底刃すくい面42aに連続した面をなし、子底刃すくい面42aと第三ギャッシュ11が連続した曲面を形成する状態にある、と言える。またこのことから、子底刃42前の第三ギャッシュ11、または第三ギャッシュ11と第二ギャッシュ9は、子底刃42が切削した切屑を直接、あるいは一旦、収容し、切屑排出溝7へ排出する前の経由領域として機能する。この結果、本発明のエンドミル1は子底刃42が切削した切屑が直接、切屑排出溝7へ排出される場合の、切屑が切屑排出溝7内に集中することによる切屑の詰まりを回避(抑制)できる利点を有する。
子底刃42が切削した切屑の一部は第二ギャッシュ9内に入り込み得、切屑は第三ギャッシュ11と第二ギャッシュ9に分散し得るものの、切屑の多くは子底刃すくい面42aに連続する第三ギャッシュ11に一旦、収容され易い状態にある。一方、第二ギャッシュ9内には上記のように親底刃41が切削し、第一ギャッシュ8内に入り込んだ切屑の一部が入り込み得る。同様のことは特許文献6の第一ギャッシュ内の切屑にも言え、第一ギャッシュ内の切屑はその回転方向前方側に位置する第三ギャッシュにも入り込み得る。只、特許文献6の第三ギャッシュには子底刃が切削した切屑も入り込むため、状況次第では第三ギャッシュ内に切屑が集中する可能性がある。
この点、本発明では子底刃42が切削した切屑が第三ギャッシュ11と第二ギャッシュ9に分散することと、切屑は第二ギャッシュ9より相対的に第三ギャッシュ11に入り込み易いことで、第一ギャッシュ8内の切屑が第二ギャッシュ9内に回り込むとしても、第二ギャッシュ9と第三ギャッシュ11のいずれか内での切屑の集中は生じにくい。このことから、本発明では特許文献6との対比では第三ギャッシュ11内での切屑の集中による詰まりが緩和(抑制)、あるいは回避され易い。
エンドミル1の剛性は、工具本体の切れ刃部2を回転軸O方向の先端面側から見たとき、第三ギャッシュ11と切屑排出溝7との境界線92が子刃の長さ方向の中点よりも外周寄りの位置で子刃と交わらせることで(請求項3)、より高められる。前記のように特許文献6では工具本体の先端部を回転軸O方向の先端面側から見たとき、切屑排出溝の、工具本体先端面寄りの部分が子底刃すくい面に半径方向中心O側へ食い込む形になっているため、子底刃すくい面の多くが切屑排出溝に面しない場合より、工具本体先端面寄りの心厚が小さく、エンドミル先端部の剛性が低下し易い。
これに対し、切れ刃部2を先端面側から見たときの第三ギャッシュ11と切屑排出溝7との境界線92が子刃(子底刃42)の長さ方向の中点よりも外周寄りの位置で子刃と交わることで(請求項3)、切屑排出溝7の、工具本体先端面寄りの部分が子底刃すくい面42aに半径方向中心O側へ食い込む形にはならない。従って特許文献6との対比では工具本体の先端面寄りの部分の心厚は大きくなり、エンドミル1先端部の剛性は向上する。子刃の半径方向中心O側の端部は境界線81の開始点であり、切れ刃部2を先端面側から見たときの半径方向外周側の端部は外周刃6との境界、またはその付近である。このため、「子刃の中点よりも外周寄りの位置」は中心Oから、中心Oと境界線81の開始点までの距離と、切れ刃部2を先端面側から見たときの子刃の全長の半分以上の距離を加えた長さ分、外周側へ離れた位置になる。
請求項3ではまた、境界線92が子刃の外周寄りの位置で子刃と交わることで、切屑排出溝との間の境界線が子刃の長さ方向の中点より中心寄りの位置で子刃に交わる特許文献6の第三ギャッシュより、第三ギャッシュ11の容積が大きくなり、第三ギャッシュ11の切屑収容能力が増す。この結果、子刃が切削し、一旦、第三ギャッシュ11を経由する切屑の量が特許文献6より多くなるため、切屑が切屑排出溝7に集中することが緩和され、切屑排出溝7での切屑の詰まりが抑制され易くなる。
エンドミル1の剛性はまた、親刃の回転方向前方側にその親刃のすくい面を構成し、第一ギャッシュ8と切屑排出溝7に連通する第四ギャッシュ10を形成した場合に、切れ刃部2を回転軸O方向の先端面側から見たとき、第一ギャッシュ8と第四ギャッシュ10との間の境界線82を切屑排出溝7の境界線71に交わらせることによっても(請求項4)、向上する。「境界線82が切屑排出溝7の境界線71に交わっていること」は、図示する例の場合、境界線82が子底刃逃げ面42bの回転方向後方側に形成された3番面42c(以下、子底刃3番面42c)より、切れ刃部2の軸方向反対側のシャンク部3側(の位置)で切屑排出溝7の境界線71に交わっていることである。上記のように子底刃逃げ面42bが例えば2番面と3番面とに2分割される場合、ここで言う子底刃3番面42cは4番面になる。
特許文献6のように第一ギャッシュとその切屑排出溝側の第二ギャッシュとの間の境界線が第一ギャッシュの回転方向前方側に位置する子底刃の逃げ面である2番面、または3番面に交わる場合、その境界線の中心(回転軸)O寄りの部分が中心(回転軸)O寄りに深く入り込み、第二ギャッシュの容積が大きくなる。
これに対し、第一ギャッシュ8と第四ギャッシュ10との間の境界線82が子底刃3番面42cよりシャンク部3側で切屑排出溝7の境界線71に交わる場合には(請求項4)、特許文献6との対比では、すなわち境界線82が子底刃3番面42cに交わる場合より、第四ギャッシュ10(特許文献6の第二ギャッシュ相当)の容積が小さくなるため、切れ刃部2の剛性が向上することになる。境界線82が子底刃3番面42cよりシャンク部3側で切屑排出溝7の境界線71に交わることで、境界線82が子底刃3番面42cに交わる場合より、第四ギャッシュ10の容積を小さくできることに因る。第一ギャッシュ8と第四ギャッシュ10との間の境界線82も切れ刃部2を軸方向の端面側から見たときに、凸の稜線として明確に表れる場合と明確に表れない場合がある。
請求項4の「親刃の回転方向前方側にその親刃のすくい面を構成し、第一ギャッシュ8と切屑排出溝7に連通する第四ギャッシュ10が形成され」とは、第四ギャッシュ10が親底刃すくい面41aに連続する面をなすことを意味し、親底刃41が切削した切屑を第四ギャッシュ10が一旦、収容する能力を有することの意味を含む。エンドミル1がラジアスエンドミルの場合、第四ギャッシュ10は図2、図5に示すようにコーナーR刃5のすくい面5aにも面する。第四ギャッシュ10は第一ギャッシュ8に連続しながらも、第一ギャッシュ8とは異なる面をなす。第四ギャッシュ10の切屑収容能力は切れ刃部2を軸方向の端面側から見たときに、凹曲面をなすことで増す。「凹曲面をなす」とは、切れ刃部2を先端面側から見たとき、第四ギャッシュ10の表面が第一ギャッシュ8との間の境界線82より凹んでいることを言う。
第一ギャッシュ8と第四ギャッシュ10との間の境界線82は第一ギャッシュ8と第四ギャッシュ10を区分するため、子底刃3番面42cよりシャンク部3側で切屑排出溝7の境界線71に交わることは、図2、図5に示すように切屑排出溝7の第一ギャッシュ8側、または第四ギャッシュ10側の境界線71の中間部に接続することでもある。「切屑排出溝7の境界線71」は切屑排出溝7の切れ刃部2側の境界線を指す。
第一ギャッシュ8と第四ギャッシュ10との間の境界線82と、第二ギャッシュ9と第三ギャッシュ11との間の境界線91は具体的には、半径方向外周側から半径方向中心O側へかけ、切れ刃部2の軸方向反対側のシャンク部3側から端面側へ向かう曲線を描く場合(請求項5)と、半径方向外周側から半径方向中心O側へかけ、半径方向中心側に向かって凸の曲線を描く場合(請求項6)がある。曲線は直線を含む。
図1~図3に示す例のように境界線82、91がシャンク部3側から端面側へ向かう曲線を描く場合(請求項5)、第四ギャッシュ10の親底刃すくい面41a側(寄りの部分)と第三ギャッシュ11の子底刃すくい面42a側(寄りの部分)がそれぞれ第一ギャッシュ8側と第二ギャッシュ9側(中心O側)に入り込む形状になる。この結果、第一ギャッシュ8と第二ギャッシュ9内の切屑が早い時点でそれぞれ第四ギャッシュ10と第三ギャッシュ11内に入り込み易くなり、第一ギャッシュ8と第二ギャッシュ9内からの切屑の排出性が促される。
図4~図6に示す例のように境界線82、91が半径方向外周側から半径方向中心O側へ向かって凸の曲線を描く場合(請求項6)、第四ギャッシュ10と第三ギャッシュ11の幅方向中間部がそれぞれ第一ギャッシュ8と第二ギャッシュ9側に入り込む形状になる。「ギャッシュの幅方向」は工具本体の周方向を指す。
この場合、境界線82、91がシャンク部3側から端面側へ向かう曲線を描く場合との対比では、第四ギャッシュ10と第三ギャッシュ11の容積が大きくなるため、相対的に第四ギャッシュ10と第三ギャッシュ11の切屑収容能力が増す。結果的に、第一ギャッシュ8内の切屑と第二ギャッシュ9内の切屑がそれぞれ第四ギャッシュ10と第三ギャッシュ11内に入り込み易くなるため、図1~図3の例と同様、第一ギャッシュ8と第二ギャッシュ9内からの切屑の排出性が促される。
親刃と子刃の各回転方向前方側に第一ギャッシュと第三ギャッシュが形成されたエンドミルにおいて、子刃の回転方向前方側に第一ギャッシュの回転方向前方側に連通する第二ギャッシュが形成され、第二ギャッシュと第三ギャッシュとの間の境界線を第一ギャッシュの第二ギャッシュ寄りの境界線に交わらせている。このため、子刃前の第三ギャッシュに、または第三ギャッシュと第二ギャッシュに子刃が切削した切屑を直接、収容し、切屑排出溝へ排出する前の経由領域として機能させることができる。この結果、子刃が切削した切屑が直接、切屑排出溝へ排出される場合の、切屑が切屑排出溝内に集中することによる切屑の詰まりを回避(抑制)することができる。
また第二ギャッシュと第三ギャッシュとの間の境界線を第一ギャッシュの第二ギャッシュ寄りの境界線の区間に接触させているため、第三ギャッシュが工具本体先端面の中心寄りに深く入り込む形にならずに済む。結果として、第二ギャッシュに、子底刃が切削した切屑を一旦、収容する能力を持たせながらも、全ギャッシュの容積(チップポケット)を小さくすることができるため、エンドミルの、切削時の振動に対する一定の剛性を確保することができる。
第一ギャッシュと第四ギャッシュとの間の境界線と、第二ギャッシュと第三ギャッシュとの間の境界線が、半径方向外周側から半径方向中心側へかけ、シャンク部側から端面側へ向かう曲線を描いている形態のエンドミルの先端面を示した端面図である。 図1に示すエンドミルをx-x線方向に見たときの斜視図である。 図1に示すエンドミルをy-y線方向に見たときの斜視図である。 第一ギャッシュと第四ギャッシュとの間の境界線と、第二ギャッシュと第三ギャッシュとの間の境界線が、半径方向外周側から半径方向中心側へ向かって凸の曲線を描いている形態のエンドミルの先端面を示した端面図である。 図4に示すエンドミルをx-x線方向に見たときの斜視図である。 図4に示すエンドミルをy-y線方向に見たときの斜視図である。 本発明のエンドミルのシャンク部を含めた全体を示した側面図である。
図1~図6は工具本体の回転軸O方向(軸方向)の先端部側に、先端部を回転軸O方向の先端面側から見たときに半径方向中心側から外周側へかけて連続する複数本の親刃と、工具本体の回転方向rに隣り合い、半径方向中心側より外周寄りの位置から外周側へかけて連続する複数本の子刃とを有する切れ刃部2を備えたエンドミル1の製作例を示す。工具本体の回転方向rに隣り合う親刃と子刃との間には切屑排出溝7が形成される。親刃は親底刃41を、子刃は子底刃42を指し、それぞれコーナーR刃5を含むこともある。以下では親刃を親底刃41と言い、子刃を子底刃42と言う。
図示する例では図7に示すような金型の隅部の加工に適する、首下長の長い小径エンドミルの例を示しているが、本発明のエンドミル1は図7に示す形態には限られない。図1~図6は図7に示す切れ刃部2の軸方向反対側のシャンク部3を除いた切れ刃部2側の先端部分を示している。図示する例ではまた、エンドミル1が、底刃41、42と外周刃6との間に、双方に連続するコーナーR刃5が形成されたラジアスエンドミルの場合の例を示しているが、エンドミル1はコーナーR刃5がないスクエアエンドミルの場合もある。
親底刃41は図1、図4に示すように切れ刃部2を回転軸O方向の先端面側から見たときの半径方向中心(回転軸)O、もしくはその付近から外周側の端部まで連続する。「回転O方向の先端面」は工具本体(エンドミル1)の先端面のことを言う。以下では「回転軸O方向」と「先端面」をそれぞれ「軸方向」と「端面」と言う。子底刃42は親底刃41に工具本体の回転方向rに間隔を置き、切れ刃部2を軸方向の端面側から見たときの半径方向中心O側より外周寄りの位置から外周側へかけて連続する
親底刃41と子底刃42は中心(回転軸)Oに関して対(点対称)になるように形成される。親底刃41の中心O側の部分は中心Oか、その付近まで連続することから、図面では工具本体の先端部を端面側から見たとき、親底刃41の逃げ面41b(以下、親底刃逃げ面41b)を、中心Oを挟んだ側に位置する親底刃逃げ面41bに帯状に連続させている。この場合、中心Oを挟んで両側に位置する親底刃逃げ面41b、41bが回転方向rに幅を持ったまま連続することで、親底刃41に一定の剛性が確保される。「親底刃逃げ面41b」は図面では親底刃2番面である。
親底刃41のすくい面41a(以下、親底刃すくい面41a)と、この親底刃41に回転方向r前方側に隣接する子底刃42の逃げ面42b(以下、子底刃逃げ面42b)との間に第一ギャッシュ8が形成される。第一ギャッシュ8は図2、図5に示すように親底刃すくい面41aに面し、親底刃すくい面41aに連続する。「子底刃逃げ面42b」は図面では子底刃2番面である。
コーナーR刃5が形成された場合、図2、図3、図5、図6に示すように親底刃すくい面41aの半径方向外周側にコーナーR刃5のすくい面5aが連続し、すくい面5aの半径方向外周側に外周刃6のすくい面6aが連続する。コーナーR刃5のすくい面5aは後述の子底刃42のすくい面42aの半径方向外周側にも連続し、すくい面5aの半径方向外周側に外周刃6のすくい面6aが連続する。外周刃6の回転方向後方側には逃げ面(2番面)6bが形成される。
第一ギャッシュ8は親底刃すくい面41aと、その親底刃41の回転方向r前方側に位置する子底刃逃げ面42bの回転方向r後方側に形成される第一ギャッシュ面8aから構成される。図1は第一ギャッシュ面8aが第一ギャッシュ8内で平面状に明確に表れる場合の例を、図4は凹曲面として表れるか、全体が凹曲面をなす第一ギャッシュ8の一部になっている場合の例を示している。第一ギャッシュ面8aは図2、図5に示すように子底刃逃げ面42bと、子底刃逃げ面42bの回転方向後方側に形成された3番面42c(以下、子底刃3番面42c)とに跨って形成される。子底刃3番面42cは子底刃42に連続するコーナーR刃5の逃げ面(2番面)5bの回転方向後方側に位置するため、コーナーR刃5の3番面を兼ねる。
子底刃42の回転方向前方側で、第一ギャッシュ8の回転方向前方側に、第一ギャッシュ8に連通して第二ギャッシュ9が形成される。言い換えれば、第二ギャッシュ9は子底刃42のすくい面42a(以下、子底刃すくい面42a)と、この子底刃42に回転方向r前方側に隣接する親底刃逃げ面41bとの間に形成される。第二ギャッシュ9は図3に示すように子底刃すくい面42aに面し、子底刃すくい面42aに連続する場合と、図6に示すように子底刃すくい面42aには面せず、直接には連続しない場合がある。
第二ギャッシュ9は子底刃すくい面42aと、その子底刃42の回転方向r前方側に位置する親底刃逃げ面41bの回転方向r後方側に形成される第二ギャッシュ面9aから構成される。図1は第二ギャッシュ面9aが第二ギャッシュ9内で面(平面と曲面を含む)として明確に表れる場合の例を、図4は明確に表れない場合の例を示している。
第二ギャッシュ面9aは図3、図6に示すように親底刃逃げ面(2番面)41bと、親底刃逃げ面41bの回転方向後方側に形成された3番面41d(以下、親底刃3番面41d)とに跨って形成される。親底刃3番面41dは親底刃41に連続するコーナーR刃5の逃げ面5bの回転方向後方側に位置するため、コーナーR刃5の3番面を兼ねる。親底刃逃げ面41bが例えば2番面と3番面とに2分割される場合、ここで言う親底刃3番面41dは4番面になる。
第二ギャッシュ9は親底刃逃げ面41bの子底刃42側の境界線41cに沿って形成される。第二ギャッシュ9の領域、すなわち先端部(切れ刃部2)の端面を見たときの第二ギャッシュ9の平面積は境界線41cに沿った区間の長さが大きい程、大きくなり、切屑収容能力が増す。このため、切屑収容能力を増す上では境界線41cのより長い区間、例えば境界線41cの全長の内、少なくとも半分以上の区間に沿って形成されることが適切である。
図面では第二ギャッシュ9が境界線41cの全長に沿って形成された場合、すなわち境界線41cの全長が親底刃逃げ面41bと第二ギャッシュ9との境界線である場合の例を示している。「境界線41cの全長が第二ギャッシュ9との境界線でない場合」とは、図4、図6に後述の境界線91を二点鎖線で示した場合のように境界線41cの半径方向外周側の一部区間が第二ギャッシュ9との境界線でなく、後述の第三ギャッシュ11との境界線になっている場合を言う。
図1、図4に示すように切れ刃部2を軸方向の端面側から見たとき、第二ギャッシュ9と第三ギャッシュ11との間の境界線91の子底刃42側の端部は第一ギャッシュ8の第二ギャッシュ9寄りの境界線81に交わる。この関係で、第二ギャッシュ9は図3、図6が示すように子底刃すくい面42aより半径方向の中心O寄りに位置し、第一ギャッシュ8の回転方向r前方側に隣接している。
第二ギャッシュ9が第一ギャッシュ8の回転方向r前方側に位置することで、親底刃41が切削し、第一ギャッシュ8内に入り込んだ切屑の一部は第二ギャッシュ9内に入り(回り)込み得る状態にある。このため、第一ギャッシュ8内の切屑は第一ギャッシュ8の切屑排出溝7側に隣接する後述の第四ギャッシュ10と第二ギャッシュ9に分散し得る。
第二ギャッシュ9の切屑排出溝7側には、図3、図6に示すように第二ギャッシュ9と切屑排出溝7に空間的に連続し、子底刃すくい面42aに面し、第二ギャッシュ9と異なる面をなす第三ギャッシュ11が形成されている。第三ギャッシュ11は子底刃42の回転方向前方側に位置し、その子底刃すくい面42aを構成する。第一ギャッシュ8の切屑排出溝7側には、図2、図5に示すように第一ギャッシュ8と切屑排出溝7に空間的に連続し、親底刃すくい面41aに面し、第一ギャッシュ8と異なる面をなす第四ギャッシュ10が形成されている。第四ギャッシュ10は親底刃41の回転方向前方側に位置し、その親底刃すくい面41aを構成する。
第三ギャッシュ11は子底刃すくい面42aに面するため、子底刃すくい面42aと、第四ギャッシュ10、または第四ギャッシュ面10aの切屑排出溝7側に形成される第三ギャッシュ1面11aから構成される。図1は第三ギャッシュ面11aが第三ギャッシュ11内で面(平面と曲面を含む)として明確に表れる場合の例を、図4は必ずしも明確に表れない場合の例を示している。第四ギャッシュ10は親底刃すくい面41aに面するため、親底刃すくい面41aと、第一ギャッシュ8の切屑排出溝7側に形成される第四ギャッシュ面10aから構成される。図1は第四ギャッシュ面10aが第四ギャッシュ10内で面(平面と曲面を含む)として明確に表れる場合の例を、図4は必ずしも明確に表れない場合の例を示している。
図1~図3は図3に示すように第二ギャッシュ9と第三ギャッシュ11との間の境界線91の子底刃42側の端部が子底刃すくい面42aに接続し、上記のように第二ギャッシュ9の子底刃42側の部分(一部)が子底刃すくい面42aに面するように、あるいは連続するように形成されている場合の例を示している。この例では子底刃42が切削し、子底刃すくい面42aに沿って切屑排出溝7側へ排出されようとする切屑の一部が一旦、第二ギャッシュ9内に入り込み得る状態にある。このため、子底刃42が切削した切屑が第三ギャッシュ11内に集中して入り込むことによる切屑の詰まりが抑制され易くなる。
図1に示す例では図2に示すように第一ギャッシュ8と第四ギャッシュ10との間の境界線82の親底刃41側の端部が親底刃すくい面41aに接続し、第四ギャッシュ10の親底刃41側の部分が親底刃すくい面41aに面するように形成されている。この例では親底刃41が切削し、親底刃すくい面41aに沿って切屑排出溝7側へ排出されようとする切屑の一部が直接、第四ギャッシュ10内に入り込み得る状態にある。従って親底刃41が切削した切屑が第一ギャッシュ8と第四ギャッシュ10に分散し易くなるため、第一ギャッシュ8と第四ギャッシュ10のいずれか内に切屑が集中して入り込むことによる切屑の詰まりが抑制され易くなる。
図1、図4では切れ刃部2を先端面側から見たときの、第三ギャッシュ11と切屑排出溝7との境界線92が子底刃42の長さ方向の中点よりも外周寄りの位置で子底刃42と交わるように第三ギャッシュ11を形成している。この場合、切れ刃部2を先端面側から見たとき、切屑排出溝7の、工具本体先端面寄りの部分が切れ刃部2の半径方向中心O側へ食い込む形にはならず、コーナーR刃5寄りの位置に留まるため、中心O側へ食い込む場合よりエンドミル1先端部である切れ刃部2の剛性が向上する。
図1、図4はまた、第一ギャッシュ8と第四ギャッシュ10との間の境界線82の切屑排出溝7側の端部が、子底刃3番面42cより切れ刃部2の軸方向反対側のシャンク部3側の位置で切屑排出溝7の境界線71に交わっている場合の例を示している。この場合、境界線82が子底刃3番面42cよりシャンク部3側で切屑排出溝7の境界線71に交わることで、図4、図5に二点鎖線で示した境界線82が子底刃3番面42cに交わる場合より、第四ギャッシュ10の容積を小さくできるため、切れ刃部2の剛性が向上する利点がある。
図4~図6は図6に示すように第二ギャッシュ9と第三ギャッシュ11との間の境界線91の子底刃42側の端部が子底刃すくい面42aに接続せず、上記のように第二ギャッシュ9が子底刃すくい面42aに直接、面しないように、あるいは連続しないように形成されている場合の例を示している。この例では子底刃42が切削した切屑は第二ギャッシュ9内には直接的には入り込みにくく、子底刃42が切削した切屑の多くは第三ギャッシュ11内に入り込み易い状態にある。
但し、図4~図6の例では第二ギャッシュ9と第三ギャッシュ11との間の境界線91が、半径方向外周側から半径方向中心側へかけ、半径方向中心側に向かって凸の曲線を描いている。このことは、切れ刃部2を先端面側から見たときに境界線91が半径方向外周側から半径方向中心側へ向かって凸の曲線を描いている(曲線が中心O側へ凸になっている)、とも言える。境界線91がこのような曲線を描くことで、第三ギャッシュ11の容積が図1に示す例より大きくなっているため、切屑が第三ギャッシュ11内に集中して入り込むことによる切屑の詰まりが抑制され易くなっている。
図4に示す例ではまた、第一ギャッシュ8と第四ギャッシュ10との間の境界線82も、半径方向外周側から半径方向中心側へかけ、半径方向中心側に向かって凸の曲線を描き、境界線82が半径方向外周側から半径方向中心側へ向かって凸の曲線を描いている。この例でも、境界線82が半径方向外周側から半径方向中心側へ向かって凸の曲線を描いていることで、第四ギャッシュ10の容積が図1に示す例より大きくなっており、第四ギャッシュ10の切屑収容能力が確保されている。
一方、図4に示す例でも図5に示すように第一ギャッシュ8と第四ギャッシュ10との間の境界線82の親底刃41側の端部が親底刃すくい面41aに接続し、第一ギャッシュ8と共に第四ギャッシュ10の親底刃41側の部分が親底刃すくい面41aに面するように形成されている。
この関係で、親底刃41が切削した切屑の一部が直接、第四ギャッシュ10内に入り込み得る状態にある。すなわち、切屑は第一ギャッシュ8と第四ギャッシュ10に分散して入り込む状態にあるため、いずれかのギャッシュに集中することによる切屑の詰まりは抑制されている。また第四ギャッシュ10の切屑収容能力が図1に示す例より大きいため、第四ギャッシュ10から切屑排出溝7への切屑の排出性が高い。
図1に示す例はまた、第一ギャッシュ8と第四ギャッシュ10との間の境界線82と、第二ギャッシュ9と第三ギャッシュ11との間の境界線91が共に、半径方向外周側から半径方向中心側へかけ、シャンク部3側から端面側へ向かう曲線を描いている場合の例を示している。
具体的には、図2、図3に示すように境界線82の親底刃すくい面41a寄りの部分が端面側へ向かう曲線を描くことで、第四ギャッシュ10の親底刃41すくい面41a寄りの部分が第一ギャッシュ8側(中心O側)に入り込む(食い込む)形状になっている。境界線91も同様であり、第三ギャッシュ11の子底刃42すくい面42a寄りの部分が第二ギャッシュ9側(中心O側)に入り込む形状になっている。
図1に示す例では境界線82、91がこのような曲線を描くことで、第一ギャッシュ8内の切屑が早期に第四ギャッシュ10内に入り込み易くなり、第二ギャッシュ9内の切屑が早期に第三ギャッシュ11内に入り込み易くなる。この結果、第一ギャッシュ8と第二ギャッシュ9内からの切屑の排出性が促され易くなっている。
1……エンドミル(工具本体)、
2……切れ刃部、3……シャンク部、
41……親底刃、41a……親底刃のすくい面、41b……親底刃の逃げ面(2番面)、41c……親底刃41の逃げ面41bの子底刃42側の境界線、41d……親底刃の3番面、
42……子底刃、42a……子底刃のすくい面、42b……子底刃の逃げ面(2番面)、42c……子底刃の3番面、
5……コーナーR刃、5a……コーナーR刃のすくい面、5b……コーナーR刃の逃げ面、
6……外周刃、6a……外周刃のすくい面、6b……外周刃の逃げ面、
7……切屑排出溝、71……切屑排出溝7の切れ刃部2側の境界線、
8……第一ギャッシュ、8a……第一ギャッシュ面、81……第一ギャッシュ8の第二ギャッシュ9寄り(第一ギャッシュ8と第二ギャッシュ9との間)の境界線、82……第一ギャッシュ8と第四ギャッシュ10との間の境界線、
9……第二ギャッシュ、9a……第二ギャッシュ面、91……第二ギャッシュ9と第三ギャッシュ11との間の境界線、92……切れ刃部2を先端面側から見たときの第三ギャッシュ11と切屑排出溝7との間の境界線、
10……第四ギャッシュ、10a……第四ギャッシュ面、
11……第三ギャッシュ、11a……第三ギャッシュ面。

Claims (6)

  1. 工具本体の回転軸方向の先端部側に、前記先端部を回転軸方向の先端面側から見たときに半径方向中心側から外周側へかけて連続する複数本の親刃と、前記工具本体の回転方向に隣り合い、半径方向中心側より外周寄りの位置から外周側へかけて連続する複数本の子刃とを有する切れ刃部を備え、前記工具本体の回転方向に隣り合う前記親刃と前記子刃との間に切屑排出溝が形成されたエンドミルであり、
    前記親刃の回転方向前方側にその親刃のすくい面を構成する第一ギャッシュが形成され、前記子刃の回転方向前方側にその子刃のすくい面を構成する第三ギャッシュが形成され、前記子刃の回転方向前方側で、前記第一ギャッシュの回転方向前方側に、前記第一ギャッシュに連通する第二ギャッシュが形成され、
    前記切れ刃部を回転軸方向の先端面側から見たとき、前記第二ギャッシュと前記第三ギャッシュとの間の境界線は前記第一ギャッシュの前記第二ギャッシュ寄りの境界線に交わっていることを特徴とするエンドミル。
  2. 前記第二ギャッシュは前記親刃の回転方向後方側に形成された逃げ面の前記子刃側の境界線の全長に沿って形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエンドミル。
  3. 前記工具本体の切れ刃部を回転軸方向の先端面側から見たとき、前記第三ギャッシュと前記切屑排出溝との間の境界線は前記子刃の長さ方向の中点よりも外周寄りの位置で前記子刃と交わっていることを特徴とする請求項1、もしくは請求項2に記載のエンドミル。
  4. 前記親刃の回転方向前方側にその親刃のすくい面を構成し、前記第一ギャッシュと前記切屑排出溝に連通する第四ギャッシュが形成され、前記切れ刃部を回転軸方向の先端面側から見たとき、前記第一ギャッシュと前記第四ギャッシュとの間の境界線は前記切屑排出溝の境界線に交わっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のエンドミル。
  5. 前記第一ギャッシュと前記第四ギャッシュとの間の境界線と、前記第二ギャッシュと前記第三ギャッシュとの間の境界線は、前記半径方向外周側から前記半径方向中心側へかけ、前記シャンク部側から前記先端面側へ向かう曲線を描いていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のエンドミル。
  6. 前記第一ギャッシュと前記第四ギャッシュとの間の境界線と、前記第二ギャッシュと前記第三ギャッシュとの間の境界線は、前記半径方向外周側から前記半径方向中心側へかけ、半径方向中心側に向かって凸の曲線を描いていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のエンドミル。
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