JP7459581B2 - 化粧シート及びそれを用いた化粧板 - Google Patents

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Description

本発明は、化粧シート及びそれを用いた化粧板に関する。
従来、建築物の内装材に用いられる建具、床、壁等の表面化粧等のために各種の化粧シートが用いられている。例えば、厚さ方向において順に、基材シートと、透明性樹脂層と、表面保護層とを有する積層体から構成される化粧シートが幅広く用いられており、必要に応じて基材シート上に装飾層を設けたり、接着性を高めるために透明性樹脂層と表面保護層との間にプライマー層を設けたり、表面保護層を複層構成(例えば、ベタ状とパターン状との積層)にして各層に異なる特徴を付与したりすること等が知られている。
この点、特に化粧シートの意匠性、耐傷性等を向上させる観点では、表面保護層を複層構成とし、各層の光沢度(艶値)を調整すること、フィラーを含有すること、電離放射線硬化型樹脂を含有すること、パターン状の表面保護層を設けて奥行き感を付与すること等が知られている。
表面保護層を複層構成とする態様については、例えば、特許文献1に「シート基材上に、絵柄模様層と、第1表面保護層と、第2表面保護層とが、この順に積層され、
前記第1表面保護層は、ウレタン結合を有する熱硬化型樹脂と、紫外線硬化型樹脂と、平均粒径が3.0μm以上7.0μm以下の球状フィラーとを含み、
前記第2表面保護層は、紫外線硬化型樹脂又は電離放射線硬化型樹脂を含み、前記第1表面保護層の20%以上80%以下の面積を被覆することを特徴とする化粧シート。」が開示されている。
そして、効果に関して、「第1表面保護層を、その層厚とほぼ等しい粒径の3.0μm以上7.0μm以下の球状フィラーを含有する熱硬化型樹脂と紫外線硬化型樹脂との混合物を用いて構成することで、低光沢でありながら耐摩耗性・耐傷性に優れた化粧シート及びそれを用いた化粧板を得ることができる。」と記載されている([発明の効果]欄)。
特開2017-165030号公報
特許文献1の化粧シートは、被覆率の観点で第1表面保護層上にパターン状の第2表面保護層が形成されていると考えられ(例えば、図1にはパターン状の第2表面保護層が示されている)、また第1表面保護層がウレタン結合を有する熱硬化型樹脂と紫外線硬化型樹脂とを含有し、第2表面保護層が紫外線硬化型樹脂又は電離放射線硬化型樹脂を含有することから、パターン状の第2表面保護層の方が高硬度であると推測される。
特許文献1ではこの構成により低光沢でありながら耐摩耗性・耐傷性に優れるとされているが、パターン状の第2表面保護層が高硬度であると、化粧シートをロール状に巻いて輸送する際、特に冬場の低温時においてロール端部の角に応力がかかった場合にロールの外側から十数枚に割れが生じるという問題がある。なお、パターン状の第2表面保護層の硬度を緩和すると輸送時の割れは改善できるが、その場合には所定の耐傷性や耐溶剤性の低下が避けられない。
よって、本発明は、基材シートと、絵柄模様層と、透明性樹脂層と、最表層(ベタ状の第1表面保護層とその上に形成されたパターン状の第2表面保護層)とを少なくとも備える積層体から構成される化粧シートであって、意匠性に優れるとともに、化粧シートをロール状に巻いて輸送する際、特に冬場の低温時でも割れが抑制されている化粧シートを提供することを主な目的とする。また、この化粧シートを用いた化粧板を提供することも目的とする。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、基材シートと、絵柄模様層と、透明性樹脂層と、最表層(ベタ状の第1表面保護層とその上に形成されたパターン状の第2表面保護層)とを少なくとも備える積層体から構成される化粧シートであって、前記第2表面保護層上から前記基材シートに向かって前記厚さ方向に測定した複合弾性率が特定の要件を具備する化粧シートが上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の化粧シート及びそれを用いた化粧板に関する。
1.厚さ方向において順に、基材シートと、絵柄模様層と、透明性樹脂層と、最表層とを少なくとも備える積層体から構成される化粧シートであって、
(1)前記最表層は、前記基材シート側から、ベタ状の第1表面保護層とその上に形成されたパターン状の第2表面保護層とからなり、
(2)前記第2表面保護層上から前記基材シートに向かって前記厚さ方向に測定した複合弾性率が2.5GPa以下である、
ことを特徴とする化粧シート。
2.前記第2表面保護層のナノインデンテーション硬さが前記第1表面保護層のナノインデンテーション硬さよりも小さい、上記項1に記載の化粧シート。
3.前記第2表面保護層のナノインデンテーション硬さが200MPa以下である、上記項1又は2に記載の化粧シート。
4.前記複合弾性率が1.0GPa以上である、上記項1~3のいずれかに記載の化粧シート。
5.前記透明性樹脂層は熱可塑性樹脂からなる、上記項1~4のいずれかに記載の化粧シート。
6.前記透明性樹脂層のナノインデンテーション硬さが前記第1表面保護層及び前記第2表面保護層のいずれのナノインデンテーション硬さよりも小さい、上記項1~5のいずれかに記載の化粧シート。
7.前記透明性樹脂層と前記最表層との間にプライマー層を有する、上記項1~6のいずれかに記載の化粧シート。
8.前記第1表面保護層の艶値及び前記第2表面保護層の艶値が異なる、上記項1~7のいずれかに記載の化粧シート。
9.前記化粧シートを前記最表層側から平面視した場合に高艶部と低艶部とが視認でき、各艶部の面積割合が前記高艶部/前記低艶部=10/90~30/70である、上記項8に記載の化粧シート。
10.床用化粧板の部材として用いられる、上記項1~9のいずれかに記載の化粧シート。
11.厚さ方向において順に、化粧板基材と、上記項1~10のいずれかに記載の化粧シートとを少なくとも備える積層体から構成される化粧板。
本発明の化粧シートは、厚さ方向において順に、基材シートと、絵柄模様層と、透明性樹脂層と、最表層とを少なくとも備える積層体から構成される化粧シートであって、
(1)前記最表層は、前記基材シート側から、ベタ状の第1表面保護層とその上に形成されたパターン状の第2表面保護層とからなり、
(2)前記第2表面保護層上から前記基材シートに向かって前記厚さ方向に測定した複合弾性率が2.5GPa以下であることを特徴とする。この特徴を有することにより、本発明の化粧シートは意匠性に優れるとともに、化粧シートをロール状に巻いて輸送する際、特に冬場の低温時でも割れが抑制されている。よって、本発明の化粧シートは冬場の低温時にロール状の端部が輸送時の衝撃を受けた場合でも割れが抑制されている点で、輸送不良を回避することができる。
本発明の化粧シートの一例を模式的に示した断面図である。 本発明の化粧板の構成部材の一例を模式的に示した断面図である。 本明細書におけるナノインデンテーション硬さの測定に用いるバーコビッチ圧子(a)、荷重の方向と押込み深さhとの関係(b)、及び押込み深さと押込み荷重との関係(c)を説明する模式図である。 試験例1の〔落下試験〕を説明する模式図である。(A)は化粧シートをロール状に巻き取ったロール状化粧シートを梱包材で梱包した梱包体(供試体)の端部を示す模式図であり、(B)は供試体を二人で持ち上げて高さ120cmから水平にコンクリート床面に落下させる試験(条件1)を示す模式図であり、(C)は供試体の一端を高さ50cmの台に載せた後、他端の角がコンクリート床面に接触するように、斜めにコンクリート床面に落下させる試験(条件2)を示す模式図である。
1.化粧シート
本発明の化粧シートは、厚さ方向において順に、基材シートと、絵柄模様層と、透明性樹脂層と、最表層とを少なくとも備える積層体から構成される化粧シートであって、
(1)前記最表層は、前記基材シート側から、ベタ状の第1表面保護層とその上に形成されたパターン状の第2表面保護層とからなり、
(2)前記第2表面保護層上から前記基材シートに向かって前記厚さ方向に測定した複合弾性率が2.5GPa以下である、ことを特徴とする。
上記特徴を有することにより、本発明の化粧シートは意匠性に優れるとともに、化粧シートをロール状に巻いて輸送する際、特に冬場の低温時でも割れが抑制されている。よって、本発明の化粧シートは冬場の低温時にロール状の端部が輸送時の衝撃を受けた場合でも割れが抑制されている点で、輸送不良を回避することができる。
本発明の化粧シートは、厚さ方向において順に、基材シートと、絵柄模様層と、透明性樹脂層と、最表層(基材シート側から、ベタ状の第1表面保護層とその上に形成されたパターン状の第2表面保護層とからなる)とを少なくとも備える積層体から構成されており、当該所定の要件を満たしていれば、その具体的構成(層構成)については限定されない。
具体的な実施態様では、例えば、基材シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層、プライマー層及び最表層(ベタ状の第1表面保護層及びパターン状の第2表面保護層)を順に積層してなる化粧シートが挙げられる(図1の化粧シート1の態様)。本発明の化粧シートは、上記以外の層を有していてもよいが、いずれの態様においても最表層のうちパターン状の第2表面保護層が最表面に位置する。なお、化粧板基材との接着性を高めるために、必要に応じて、図1に示すように化粧シートの裏面に裏面プライマー層を設けてもよい。
本明細書では、基材シートから見て最表層が積層されている方向を「上」又は「おもて面」と称し、基材シートから見て裏面プライマー層が積層されている方向を「下」又は「裏面」と称する。化粧シート又は化粧板の「おもて(側)の面」又は「最表層(側)の面」とは、化粧シート又は化粧板の施工後に視認される面を意味する。なお、以下では「最表層の側」という場合に、略記して「最表層側」ともいう。
以下、図面を参照しながら化粧シートについて説明する。
図1は、本発明の化粧シートの一例を示す断面図である。図1に示す化粧シート1は、基材シート2上に絵柄模様層3、透明性接着剤層4、透明性樹脂層5、プライマー層6及び最表層7(ベタ状の第1表面保護層7-1、及びパターン状の第2表面保護層7-2)が積層されている。また、基材シート2の裏面に裏面プライマー層8が積層されている。なお、図1のaはベタ状の第1表面保護層の厚さを示し、bはパターン状の第2表面保護層の最大厚さを示す(第2表面保護層はパターン状であるため、その厚さは凹部の影響により部分的に不均一である。)。
以下、本発明の化粧シートを構成する各層について具体的に説明する。なお、以下の記載において、「~」で表される数値範囲の下限上限は「以上以下」を意味する(例えば、α~βならば、α以上β以下である)。
基材シート
基材シートは、その表面(おもて面)には絵柄模様層、透明性樹脂層、最表層(第1表面保護層及び第2表面保護層)等が順次積層される。基材シートの材質は限定されないが、非ハロゲン系熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
上記非ハロゲン系熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン(線状低密度ポリエチレンを含む),中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,エチレン-αオレフィン共重合体,ホモポリプロピレン,ポリメチルペンテン,ポリブテン,エチレン-プロピレン共重合体,プロピレン-ブテン共重合体,エチレン-酢酸ビニル共重合体,エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物等のオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合体,ポリカーボネート,ポリアリレート等の熱可塑性エステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル,ポリ(メタ)アクリル酸エチル,ポリアクリル酸エチル,ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系熱可塑性樹脂、ナイロン-6,ナイロン-66等のポリアミド系熱可塑性樹脂、スチレンブタジエンゴム,イソプレンゴム等の非ハロゲン系のジエン系ゴム、ブチルゴム,エチレンプロピレンゴム等の非ジエン系ゴム、天然ゴム、熱可塑性エラストマー、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂等が挙げられる。また、これらの非ハロゲン系熱可塑性樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、絵柄模様層の印刷適性及びエンボス加工適性に優れ、安価である点で、オレフィン系熱可塑性樹脂が好ましい。
基材シートは、着色されていてもよい。この場合は、上記のような非ハロゲン系熱可塑性樹脂に対して着色材(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色材としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料のほか、各種の染料も使用することができる。これらは、公知又は市販のものから1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色材の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すればよい。
基材シートには、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
基材シートの厚さは40~100μmが好ましい。基材シートの厚さが40μm未満であると、化粧板基材に凹凸形状がある場合に当該凹凸の化粧板表面への表出を十分に抑制できないおそれがある。また、基材シートの厚さが100μmを超えると、化粧シートをロール状態で保存した際に巻きぐせがつくことにより、ロールラミネートが困難となるおそれがある。基材シートの厚さは、60~80μmがより好ましい。基材シートは、単層又は多層のいずれで構成されていてもよい。
基材シートは、絵柄模様層を形成するインキの密着性を高めるために表面(おもて面)にコロナ放電処理を施してもよい。コロナ放電処理は、公知の方法及び条件に従って実施すれば良い。また、必要に応じて、基材シートの裏面にコロナ放電処理を施したり、後述する裏面プライマー層及び/又は合成樹脂製バッカー層を形成したりしてもよい。
絵柄模様層
絵柄模様層は、化粧シートに所望の絵柄(意匠)を付与する層であり、絵柄の種類等は限定的ではない。例えば、木目模様、レザー模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様、草花模様、風景、キャラクター等が挙げられる。
絵柄模様層の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)して得られるインキを用いた既知の印刷法により、基材シート表面に形成すればよい。インキとしては、化粧シートのVOCを低減する観点からは水性組成物を用いることもできる。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤は、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等とともに用いてもよい。
結着材樹脂としては、親水性処理されたポリエステル系ウレタン樹脂のほか、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリスチレン-アクリレート共重合体、ロジン誘導体、スチレン-無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂なども併用できる。より具体的には、例えば、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリN-ビニルピロリドン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂、水溶性アミノ系樹脂、水溶性フェノール系樹脂、その他の水溶性合成樹脂;ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類等の水溶性天然高分子;等も使用することができる。また、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリ酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン-ポリアクリル系樹脂等が変性したものないし前記天然ゴム等の混合物、その他の樹脂を使用することもできる。上記結着材樹脂は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸-2-メトキシエチル、酢酸-2-エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
絵柄模様層の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、全面ベタ状の絵柄模様層を形成する場合には、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法が挙げられる。その他、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法等を用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いたりしてもよい。
絵柄模様層の厚さは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、層厚は0.1~15μm程度である。
透明性接着剤層
絵柄模様層と後述の透明性樹脂層との密着性を高めるため、絵柄模様層上に透明性接着剤層を形成してもよい。透明性接着剤層は、透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれであってもよい。
接着剤としては特に限定されず、化粧シートの分野で公知の接着剤が使用できる。化粧シートの分野で公知の接着剤としては、例えば、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、ウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これら接着剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂も適用し得る。
透明性接着剤層の厚さは特に限定されないが、厚さが0.1~30μm程度、好ましくは1~20μm程度である。
透明性樹脂層
透明性樹脂層は、透明性であれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれであってもよい。上記透明性樹脂層の材質は限定されないが、熱可塑性樹脂からなることが好ましく、特に非ハロゲン系熱可塑性樹脂が好ましい。
上記非ハロゲン系熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン(線状低密度ポリエチレンを含む),中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,エチレン-αオレフィン共重合体,ホモポリプロピレン,ポリメチルペンテン,ポリブテン,エチレン-プロピレン共重合体,プロピレン-ブテン共重合体,エチレン-酢酸ビニル共重合体,エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、又は、これらの混合物等のオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合体,ポリカーボネート,ポリアリレート等の熱可塑性エステル系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル,ポリメタアクリル酸エチル,ポリアクリル酸エチル,ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系熱可塑性樹脂、ナイロン-6,ナイロン-66等のポリアミド系熱可塑性樹脂、又は、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、アイオノマー等が挙げられる。また、これらの非ハロゲン系熱可塑性樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、エンボス加工適性に優れ、安価である点で、オレフィン系熱可塑性樹脂が好ましい。
なお、透明性樹脂層は、透明性を有する限り、着色されていてもよい。
また、透明性樹脂層は、透明性を有する限り、必要に応じて、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
透明性樹脂層の厚さは限定的ではないが、40μm以上300μm以下が好ましく、その中でも60μm以上200μm以下がより好ましく、60μm以上100μm以下が最も好ましい。透明性樹脂層の厚さを上記範囲に設定することにより、深いエンボスを形成することができると共に、傷の発生や絵柄模様層の摩耗による削れ(絵柄取られ)を抑制する効果が得られ易い。
本発明の化粧シートは、詳細は後述する通り、第2表面保護層上から基材シートに向かって厚さ方向に測定した複合弾性率が2.5GPa以下であることを要する。透明性樹脂層の硬さが前記複合弾性率に影響を及ぼし得る観点では、透明性樹脂層のナノインデンテーション硬さは40~90MPaが好ましく、50~70MPaがより好ましい。
透明性樹脂層のナノインデンテーション硬さは、後述する最表層(第1表面保護層及び第2表面保護層)のいずれのナノインデンテーション硬さよりも小さいことが好ましい。このように設定することにより、後述する複合弾性率の要件を具備し易くなる。
なお、本明細書において、透明性樹脂層の「インデンテーション硬さ」は、微小領域機械特性評価装置トライボインデンター(登録商標)「TI-950」(Bruker社製)を用いて測定されるナノインデンテーション硬さで示す。トライボインデンター(登録商標)「TI-950」を用いた透明性樹脂層のインデンテーション硬さ(HIT)の測定方法は次の通りである。
(1)ナノインデンターの圧子として、図3(a)に示される三角錐形状のバーコビッチ(Berkovich)圧子(型番:TI0039)を用いる。図3(b)に示すように測定試料にバーコビッチ圧子を後述の押込み条件にて押込み、押し込み荷重F(μN)に対する押し込み深さh(nm)を連続的に測定し、図3(c)に示すように荷重-変位曲線を作成する。作成された荷重-変位曲線から最大押し込み荷重Fmax(μN)を求める。次いで、最大押込み荷重Fmax(μN)をその時の圧子と試料の接触投影面積Ap(μm)で除することにより硬さを求める。ここで、Apは標準試料の溶融石英を用いて装置標準の方法で圧子先端曲率を補正した接触投影面積である。
すなわち、HIT=Fmax/Apである。
(2)押込み条件は、室温(23±5℃)において、図3(c)に示される通り、先ず0~50μNまでの負荷を5秒間で加え(すなわち10μN/s)、次に50μN(Fmax)の負荷で5秒間保持し、最後に50~0μNまでの除荷を5秒間で行う。
(3)なお、硬さの測定に際し、測定試料となる層以外の層の硬さの影響を回避するために測定対象である層の断面の硬さを測定する。すなわち、化粧シートを樹脂(常温硬化タイプのエポキシ2液硬化樹脂)で包埋し、室温で24時間以上放置して硬化させた後、硬化した埋包サンプルを鋭利な刃物(例えば電子顕微鏡切片作製用のダイヤモンドナイフ)で上記バーコビッチ圧子が押し込めるように埋包サンプルを削り出して測定対象である層の断面を露出させ、透明性樹脂層の断面(添加剤などの微粒子が層中に含まれる場合には当該微粒子を避けた位置)に上記バーコビッチ圧子を押込むことにより断面の硬さを測定する。
(4)透明性樹脂層について、10箇所以上のインデンテーション硬さを測定し、再現良く測定された10箇所の平均値を測定値とする。
プライマー層
透明性樹脂層の上には、最表層用のプライマー層を設けてもよい。このプライマー層は透明性樹脂層と後述の最表層(特にベタ状の第1表面保護層)との密着性を高める作用に加えて、最表層との組み合わせにより化粧シートの折り曲げ加工性や耐傷性を高めることができる。プライマー層は透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれであってもよい。
プライマー層は、公知のプライマー剤を透明性樹脂層の表面に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂(アクリルウレタン系共重合体樹脂)、ポリカーボネート系アクリルウレタン共重合体樹脂等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン-セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。これらの中でも、耐傷性及び耐候性の観点からポリカーボネート系アクリルウレタン共重合体樹脂を含むウレタン樹脂系プライマー剤が好適に使用できる。
プライマー剤には、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤;シリカ、炭酸カルシウム、クレー等のフィラー;水酸化マグネシウム等の難燃剤;酸化防止剤;滑剤;発泡剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
上記の添加剤のうち、紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)が好適である。これらの耐候剤の含有量は限定されないが、紫外線吸収剤、光安定剤のそれぞれについて1000~100000重量ppm程度とすればよい。特に本発明では、トリアジン系紫外線吸収剤及び/又はヒンダードアミン系光安定剤を用いることが好ましい。
プライマー層の厚さは限定的ではないが、0.5μm以上12μm以下が好ましく、1μm以上8μm以下がより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、後述の最表層との組み合わせにより化粧シートの折り曲げ加工性や耐傷性を高め易くなる。また、耐候剤などの添加剤を含有し易くなり、本発明の化粧シートに耐候性も付与し易くなる。
最表層(第1表面保護層及び第2表面保護層)
本発明の化粧シートは、最表層として、基材シート側からベタ状の第1表面保護層とその上に形成されたパターン状の第2表面保護層とが形成されている。なお、最表層(第1表面保護層及び第2表面保護層)は透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれであってもよい。
最表層に含まれる樹脂成分としては限定的ではないが、電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂を含有することが好ましい。実質的には、これらの樹脂から形成されているものが好ましい。電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂により最表層を形成する場合には、化粧シートの耐摩耗性、耐衝撃性、耐汚染性、耐擦傷性、耐候性等を高め易い。これらの中でも、電離放射線硬化型樹脂がより好ましく、本発明では、第1表面保護層及び第2表面保護層の少なくとも一層が電離放射線硬化型樹脂を含有することが好ましい。
電離放射線硬化型樹脂としては特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
具体的には、前記プレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの分子量としては、通常250~100000程度が好ましい。
ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。また、チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。ポリエンとしては、例えば、ジオール及びジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。
電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。
2液硬化型ウレタン系樹脂としては特に限定されないが、中でも主剤としてOH基を有するポリオール成分(アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール等)と、硬化剤成分であるイソシアネート成分(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート等)とを含むものが使用できる。
上記例示の樹脂については1種又は2種以上を併用して用いることができる。
最表層において、第1表面保護層は透明性樹脂層又はプライマー層の上にベタ状に(全面に)に形成される。また、第2表面保護層は第1表面保護層上にパターン状に(つまり部分的に)形成される。第1表面保護層に対する第2表面保護層の面積率はパターンの種類により限定的ではないが、単位面積当たり50%以上が好ましく、70~95%程度がより好ましい。例えば、絵柄模様層が木目導管模様の場合には、木目導管に位置する部分に第2表面保護層が被らないように、いわゆる抜き導管と呼ばれる態様で第2表面保護層を設けるように面積率を調整することができる。
なお、本発明では、最表層において第2表面保護層がパターン状に形成されていて第2表面保護層の厚みが不均一であることにより優れた意匠性を発現し易い態様であるが、第1表面保護層の艶値と第2表面保護層の艶値を異ならせることにより、更に立体感のある意匠性を付与することができる。例えば、第1表面保護層を低艶(マット)とし、第2表面保護層を高艶(グロス)とすることによりグロスとマットのコントラストによる優れた意匠性を付与することができる。具体的には、絵柄模様層が木目導管模様の場合には、前述の抜き導管の態様において、第1表面保護層を低艶(マット)とし、第2表面保護層を高艶(グロス)とすることにより、木目導管の部分とそれ以外の部分においてグロスとマットとのコントラストによって複雑且つリアルに表現することができる。
各表面保護層において光沢の程度に差を設けるための手段としては、各表面保護層における艶消し材(シリカなどのフィラー)の含有量に違いを設けることが挙げられる。つまり、艶消し材の含有量が多い場合には低艶(マット)部分となり、艶消し材の含有量が少ない場合には高艶(グロス)部分となる。本発明の化粧シートでは、絵柄模様層の模様の種類にもよるが、化粧シートを最表層側から平面視した場合に高艶部と低艶部とが視認できることを前提とし、各艶部の面積割合を例えば、高艶部/低艶部=10/90~30/70の範囲に設定することができる。特に絵柄模様層が木目導管模様の場合には、かかる面積割合の場合にグロスとマットによる奥行きのある優れた意匠性が得られ易い。
各表面保護層の厚さは限定的ではないが、第1表面保護層の厚さは1~5μmが好ましく、2~3μmがより好ましい。第2表面保護層の厚さは図1のbで示される最大厚さが1~5μmが好ましく、2~3μmがより好ましい。パターンに基づく不均一な厚さについては上記最大厚さの範囲内で適宜意匠性を考慮して調整することができる。
最表層には、耐候性を向上させるために、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、トリアジン系などの紫外線吸収剤を添加するのが好ましい。
また、紫外線を照射して樹脂層を硬化させる場合には、光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α-アミノオキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン等、光重合促進剤(増感剤)としてn-ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルホスフィン等を用いることができる。
最表層は、例えば、プライマー層上に電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂をグラビアコート、ロールコート等の公知の塗工法により塗工後、樹脂を硬化させることにより形成できる。
本発明では、第1表面保護層を形成する樹脂組成物は、例えばプライマー層上に塗工した段階でその塗膜がタックフリー(低粘着性)であることが好ましい。タックフリーであれば、電離放射線の照射、高温の焼付け等による半硬化処理をすることなく、第2表面保護層を形成前にロール状に巻き取って一時保管をしても他層にブロッキング(裏移り)するおそれを低下させることができる。また、タックフリーであれば第2表面保護層を積層する工程を円滑に行うことができる。第1表面保護層を塗工時にタックフリーとするには、第1表面保護層を形成する樹脂成分の重量平均分量を適宜調整するほか、無機フィラーを添加することによっても達成することができる。
なお、本発明の化粧シートは、所定の効果を得るためには、第2表面保護層上から基材シートに向かって厚さ方向に測定した複合弾性率が2.5GPa以下であることを満たす必要がある。上記複合弾性率は2.5GPa以下であればよいが、その中でも1.0GPa以上が好ましく、1.0~2.4GPaがより好ましく、1.5~2.0GPaが更に好ましい。上記複合弾性率が2.5GPaを超える場合には、化粧シートをロール状に巻いて輸送する際(特に冬場の低温時)に割れが発生するおそれがある。よって、本発明の化粧シートは上記複合弾性率が2.5GPa以下であることを要件とする。また、上記複合弾性率が1.0GPa未満の場合には、耐汚染性や耐傷性が低下するおそれがあるため、好ましい下限値は1.0GPa以上である。
なお、本発明では、上記複合弾性率は、以下のように測定することにより求められる。
具体的には、装置としてナノインデンター(Bruker社製の「TI950 TriboIndenter」)を用い、ナノインデンターの圧子として図3(a)に示される三角錐形状のバーコビッチ(Berkovich)圧子(型番:TI0039)を用いる。
まず、相対湿度50%、23℃環境において、図3(b)に示される通り当該圧子を、測定試料(第2表面保護層)上に基材シートに向かって厚さ方向に当て、図3(c)に示すように先ず0~1000μNまでの負荷を50秒間で加え(すなわち20μN/s)、その状態で5秒間保持し、次に50秒間かけて除荷を行い、複合弾性率を求めた。
なお、複合弾性率の測定に際し、化粧シートを瞬間接着剤(アロンアルファ(登録商標):一般用、東亜合成株式会社製)でガラス基板上に固定し、室温で3時間以上放置して十分に硬化させた後、第2表面保護層の表面をナノインデンターのカメラユニットで観察し、第2表面保護層が形成されている部分(図1の7-2)の平坦で押込み試験に適した部位を選択することにより複合弾性率を測定した。場所を変えて10箇所以上の複合弾性率を測定し、再現良く測定された10箇所の平均値を測定値とする。
上記複合弾性率の要件を満たすためには、最表層を構成する第1表面保護層及び第2表面保護層の硬さ(特にナノインデンテーション硬さ)を好適な範囲内に調整しておくことが手段の一つとして挙げられる。本発明では特に、第2表面保護層のナノインデンテーション硬さが第1表面保護層のナノインデンテーション硬さよりも小さいことが好ましく、第2表面保護層のナノインデンテーション硬さが200MPa以下であることが好ましい。
詳細には、第1表面保護層のナノインデンテーション硬さは150~300MPaが好ましく、200~250MPaがより好ましい。また、第2表面保護層のナノインデンテーション硬さは100~200MPaが好ましく、120~170MPaがより好ましい。これらの第1表面保護層及び第2表面保護層のナノインデンテーション硬さは、ともに透明性樹脂層のナノインデンテーション硬さよりも大きいことが好ましい。かかる各層のナノインデンテーション硬さは、各層を構成する樹脂の種類、電離放射線である紫外線、電子線等の照射条件(強度、時間等)を適宜調整すること等により調整できる。
なお、本発明では、最表層(第1表面保護層及び第2表面保護層)のナノインデンテーション硬さの測定方法は、前述した透明性樹脂層のナノインデンテーション硬さの測定方法と同じである。
なお、硬さの測定に際し、測定試料となる層以外の層の硬さの影響を回避するために各表面保護層(第1表面保護層及び第2表面保護層)の断面の硬さを測定する。すなわち、化粧シートを樹脂(冷間硬化タイプのエポキシ2液硬化樹脂)で包埋し、室温で24時間以上放置して硬化させた後、硬化した埋包サンプルを鋭利な刃物(例えば電子顕微鏡切片作製用のダイヤモンドナイフ)で上記バーコビッチ圧子が押し込めるように埋包サンプルを削り出して各表面保護層の断面を露出させ、各表面保護層の断面(充填剤などの微粒子が層中に含まれる場合には当該微粒子を避けた位置)に上記バーコビッチ圧子を押込むことにより各表面保護層の断面の硬さを測定する。
エンボス加工
エンボス加工は、化粧シートに木目模様等の所望のテクスチャーを付与するために行い、透明性樹脂層上、及び/又は、表面保護層上からエンボス加工が施されていてもよい。例えば、最表層を加熱軟化させた後、所望の形の凹凸模様を有するエンボス板で加圧及び賦型し、冷却固定することによりテクスチャーを付与する。エンボス加工は、公知の枚葉又は輪転式エンボス機で行える。
エンボス加工の凹凸模様としては、例えば、木目導管溝、浮造模様(浮出した年輪の凹凸模様)、ヘアライン、砂目、梨地等が挙げられる。
エンボス加工を施した場合には、必要に応じて、エンボス凹部にワイピング加工によりインキを充填してもよい。例えば、エンボス凹部にドクターブレードで表面をかきながらインキを充填する。充填するインキ(ワイピングインキ)としては、通常は2液硬化型のウレタン樹脂をバインダーとするインキを用いることができる。特に木目導管溝凹凸に対してワイピング加工を行うことによって、より実際の木目に近い意匠を表現することにより商品価値を高めることができる。
裏面プライマー層
基材シートの裏面には、必要に応じて裏面プライマー層を設けてもよい。例えば、基材シートと化粧板基材とを接着して化粧板を作製する際に効果的である。
裏面プライマー層は、公知のプライマー剤を基材シートに塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂(アクリルウレタン系共重合体樹脂)、ポリカーボネート系アクリルウレタン共重合体樹脂等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン-セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。
プライマー剤には、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
裏面プライマー層の厚さは特に限定されないが、通常0.01~10μm、好ましくは0.1~1μm程度である。
合成樹脂製バッカー層
基材シートの裏面には、必要に応じて合成樹脂製バッカー層を設けてもよい。合成樹脂製バッカー層を有することにより、化粧シートの耐衝撃性がより一層向上する。なお、前述の裏面プライマー層も設ける場合には、基材シートの裏面に基材シート側から合成樹脂製バッカー層及び裏面プライマー層の順に設ける。
合成樹脂製バッカー層を構成する樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリメチレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、耐熱性の高いポリアルキレンテレフタレート〔例えば、エチレングリコールの一部を1,4-シクロヘキサンジメタノールやジエチレングリコール等で置換したポリエチレンテレフタレートである、いわゆる商品名PET-G(イーストマンケミカルカンパニー製)〕、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアミド、ABS、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴムなどのジエン系ゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴムなどの非ジエン系ゴム、天然ゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの樹脂は単独又は2種以上で使用できる。
合成樹脂製バッカー層の厚みは、0.1~0.6mmが好ましく、0.15~0.45mmがより好ましく、0.20~0.40mmが更に好ましい。合成樹脂製バッカー層の厚みの下限が上記範囲であることにより、化粧シートの耐衝撃性がより一層向上する。また、合成樹脂製バッカー層の厚みの上限が上記範囲であることにより、化粧シートの反りがより一層抑制される。
化粧シートの各層に含まれる各種添加剤のベシクル化
本発明の化粧シートの上述の各層に添加される各種添加剤(透明性樹脂層、プライマー層、最表層等に添加される無機フィラー等)は、当該各種添加剤がベシクル化されていることが好ましい。各種添加剤をベシクル化する方法としては特に限定されず、公知の方法によりベシクル化することができ、中でも超臨界逆相蒸発法が好ましい。
以下、超臨界逆相蒸発法について詳細に説明する。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は超臨界点以上の温度若しくは圧力条件下の二酸化炭素にベシクルの外膜を形成する物質を均一に溶解させた混合物中に、水溶性または親水性の封入物質としての各種添加剤を含む水相を加えて、一層の膜で封入物質としての各種添加剤を包含したカプセル状のベシクルを形成する方法である。なお、超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)および臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度若しくは圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度のみ、又は、臨界圧力のみが臨界条件を超えた条件下の二酸化炭素を意味する。当該方法により、直径50~800nmの単層ラメラベシクルを得ることができる。一般に、ベシクルとは、球殻状に閉じた膜構造を有する小胞の内部に液相を含むものの総称であり、特に、外膜がリン脂質等の生体脂質から構成されるものをリポソームと称する。
上記リン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオリピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
外膜を構成する物質としては、また、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類若しくはトリアシルグリセロールの混合物等の分散剤を用いることができる。
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン-ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン-ポリ2-ビニルピリジン、ポリスチレン-ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド-ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン-ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記コレステロール類としては、コレステロール、α-コレスタノール、β-コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5,24-コレスタジエン-3β-オール)、コール酸ナトリウム、コレカルシフェロール等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成されていてもよい。本発明の化粧シートにおいては、外膜をリン脂質から形成したリポソームとすることで、各層の主成分である樹脂組成物と各種添加剤との相溶性を良好なものとすることができる。
2.化粧板
本発明の化粧板は、厚さ方向において順に、化粧板基材と、前述の本発明の化粧シートとを備える積層体から構成される。
図2に、化粧板基材9上に本発明の化粧シート1(最表層側とは反対面と化粧板基材9とを貼り合わせる)がこの順に積層された化粧板10の一例を示す。
化粧板基材としては限定的ではないが、例えば、中密度木質繊維板、高密度木質繊維板、パーティクルボード、針葉樹合板、広葉樹合板、早成樹合板、コルクシート、コルク含有複合基材、熱可塑性樹脂板(ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂等を主成分とする樹脂板、又はそれらを発泡させたもの)等の少なくとも1種が挙げられる。これらの化粧板基材は、単独又は2種以上を組み合わせて積層することにより使用してもよい。
ここで、針葉樹としては、例えば、椴松、唐松、蝦夷松、杉、ヒノキ、パイン、セコイヤ、トウヒ等が挙げられる。広葉樹としては、例えば、ラワン、シナ、カバ、セン、ブナ、ナラ、メランチ等が挙げられる。また、早成樹としては、ポプラ、ファルカタ、アカシア、カメレレ、ユーカリ、ターミナリア等が挙げられる。
針葉樹合板、広葉樹合板、早成樹合板等の木質合板を用いる場合の木質単板の積層数(プライ数)は限定的ではないが、通常3~7枚が好ましく、5~7枚がより好ましい。また、木質合板作製時に用いる接着剤も限定されず、公知の木工用接着剤が広く使用できる。接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマー、ブタジエン-アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等を有効成分とする接着剤が挙げられる。また、熱硬化型接着剤として、メラミン系、フェノール系、ユリア系(酢酸ビニル-尿素系など)等の接着剤も挙げられる。
前記コルクシートとしては、コルク樫の樹皮のコルク組織を剥離及び加工した弾力性に富む素材であるいわゆる天然コルクだけでなく、コルクに似せて作られたいわゆる合成コルクのいずれも用いることができる。なお、コルクシートは単層であってもよく、弾性率や密度が異なる複数のコルクシートの積層体であってもよい。
前記コルク含有複合基材としては、コルクシートと他の材質(例えば、中密度木質繊維板、高密度木質繊維板)とを積層して貼り合わせてなる複合材などが挙げられる。
化粧板基材の厚さは限定的ではないが、2~15mm程度が好ましく、2~12mm程度がより好ましい。
化粧シート及び化粧板基材を積層する積層方法は限定的でなく、例えば接着剤によりそれぞれを貼着する方法等を採用することができる。接着剤は、被着材の種類等に応じて公知の接着剤から適宜選択すればよい。例えば、ウレタン、アクリル、ウレタン-アクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマー等のほか、ブタジエン-アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等が挙げられる。これら接着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いる。
以下に実施例及び比較例並びに試験例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に示す内容に限定されない。
実施例1
基材シートとして60μm厚の着色ポリプロピレンフィルムを用意し、基材シートの裏面に裏面プライマー層(厚さ1μm)を形成して、基材シートのおもて面に、厚さ2μmとなるように絵柄印刷層をグラビア印刷により形成した。
絵柄模様層上に、ウレタン系樹脂を用いて厚さ2μmとなるように透明性接着剤層を形成した。
透明性接着剤層上に、厚さ80μmとなるように透明ポリプロピレン系樹脂のシートを押し出しラミネート方式で積層し、透明性樹脂層を形成した。次いで、その表面にコロナ処理を施した後、厚さ2μmとなるようにプライマー剤を塗工した。
プライマー層の表面に第1表面保護層としてナノインデンテーション硬さが220MPaになるように配合した電離放射線硬化型樹脂をグラビアコート方式で全面に塗工量2μmで塗工した後、第2表面保護層としてナノインデンテーション硬さが145MPaになるように配合した電離放射線硬化型樹脂をグラビアコート方式で導管絵柄模様のパターン状に塗工量2μmで塗工し、最表層側から化粧シートを観察した際に第1表面保護層に対する第2表面保護層の面積率を90%とした後、酸素濃度200ppm以下の環境下、電子照射装置を用いて加速電圧165KeV、5Mradの条件で電子線を照射し表面保護層を形成した。なお、最表層の電離放射線硬化型樹脂の艶は、奥行き感を表現するために第1表面保護層よりも第2表面保護層の方がより艶が高くなるよう調整した。得られた化粧シートの第2表面保護層上から基材シートに向かって厚さ方向に測定した複合弾性率は1.85GPaであった。
実施例2
最表層側から化粧シートを観察した際に第1表面保護層に対する第2表面保護層の面積率が85%となるように塗工した以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。得られた化粧シートの第2表面保護層上から基材シートに向かって厚さ方向に測定した複合弾性率は1.85GPaであった。
実施例3
最表層側から化粧シートを観察した際に第1表面保護層に対する第2表面保護層の面積率が80%となるように塗工した以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。得られた化粧シートの第2表面保護層上から基材シートに向かって厚さ方向に測定した複合弾性率は1.85GPaであった。
実施例4
最表層側から化粧シートを観察した際に第1表面保護層に対する第2表面保護層の面積率が10%となるように塗工した以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。得られた化粧シートの第2表面保護層上から基材シートに向かって厚さ方向に測定した複合弾性率は1.85GPaであった。
実施例5
最表層の電離放射線硬化型樹脂の艶を、第2表面保護層よりも第1表面保護層の方がより艶が高くなるよう調整し、最表層側から化粧シートを観察した際に第1表面保護層に対する第2表面保護層の面積率が60%となるように塗工した以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。得られた化粧シートの第2表面保護層上から基材シートに向かって厚さ方向に測定した複合弾性率は1.85GPaであった。
実施例6
最表層の電離放射線硬化型樹脂の艶を、第2表面保護層よりも第1表面保護層の方がより艶が高くなるよう調整し、最表層側から化粧シートを観察した際に第1表面保護層に対する第2表面保護層の面積率が90%となるように塗工した以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。得られた化粧シートの第2表面保護層上から基材シートに向かって厚さ方向に測定した複合弾性率は1.85GPaであった。
実施例7
第1表面保護層としてナノインデンテーション硬さが220MPaになるように配合した熱硬化型アクリルウレタン樹脂をグラビアコート方式で全面に塗工量2μmで塗工した後、第2表面保護層としてナノインデンテーション硬さが190MPaになるように配合した紫外線硬化型樹脂と熱硬化型アクリルウレタン樹脂を6:4の割合で混合した樹脂をグラビアコート方式で導管絵柄模様のパターン状に塗工量2μmで塗工し、最表層側から化粧シートを観察した際に第1表面保護層に対する第2表面保護層の面積率を90%とした後、酸素濃度200ppm以下の環境下、電子照射装置を用いて加速電圧165KeV、5Mradの条件で電子線を照射し表面保護層を形成した。なお、最表層の電離放射線硬化型樹脂の艶は、奥行き感を表現するために第1表面保護層よりも第2表面保護層の方がより艶が高くなるよう調整した。上記以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。得られた化粧シートの第2表面保護層上から基材シートに向かって厚さ方向に測定した複合弾性率は2.45GPaであった。
実施例8
第1表面保護層としてナノインデンテーション硬さが180MPaになるように配合した2液硬化型ウレタン樹脂をグラビアコート方式で全面に塗工量2μmで塗工した後、第2表面保護層としてナノインデンテーション硬さが145MPaになるように配合した紫外線硬化型樹脂をグラビアコート方式で導管絵柄模様のパターン状に塗工量2μmで塗工し、最表層側から化粧シートを観察した際に第1表面保護層に対する第2表面保護層の面積率を90%とした後、酸素濃度200ppm以下の環境下、電子照射装置を用いて加速電圧165KeV、5Mradの条件で電子線を照射し表面保護層を形成した。なお、最表層の電離放射線硬化型樹脂の艶は、奥行き感を表現するために第1表面保護層よりも第2表面保護層の方がより艶が高くなるよう調整した。上記以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。得られた化粧シートの第2表面保護層上から基材シートに向かって厚さ方向に測定した複合弾性率は1.20GPaであった。
比較例1
最表層側から化粧シートを観察した際に第2表面保護層としてナノインデンテーション硬さ測定による硬さが200Paになるように配合させ電離放射線硬化型樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。得られた化粧シートの第2表面保護層上から基材シートに向かって厚さ方向に測定した複合弾性率は2.82GPaであった。
比較例2
第2表面保護層としてナノインデンテーション硬さ測定による硬さが200Paになるように配合させ電離放射線硬化型樹脂を用い、最表層側から化粧シートを観察した際に第1表面保護層に対する第2表面保護層の面積率が85%となるように塗工した以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。得られた化粧シートの第2表面保護層上から基材シートに向かって厚さ方向に測定した複合弾性率は2.82GPaであった。
比較例3
第2表面保護層としてナノインデンテーション硬さ測定による硬さが200Paになるように配合させ電離放射線硬化型樹脂を用い、最表層側から化粧シートを観察した際に第1表面保護層に対する第2表面保護層の面積率が80%となるように塗工した以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。得られた化粧シートの第2表面保護層上から基材シートに向かって厚さ方向に測定した複合弾性率は2.82GPaであった。
比較例4
最表層側から化粧シートを観察した際に第1表面保護層に対する第2表面保護層の面積率が100%となるように塗工(第2表面保護層もベタ状に塗工)した以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。得られた化粧シートの第2表面保護層上から基材シートに向かって厚さ方向に測定した複合弾性率は1.85GPaであった。
試験例1
各化粧シートについて、複合弾性率、耐衝撃性、意匠性及び耐傷性について調べた。また、ロール状化粧シートの梱包体に対して落下試験を行った。
詳細は下記の通りである。各結果は下記表1に示す。
〔複合弾性率〕
装置としてナノインデンター(Bruker社製の「TI950 TriboIndenter」)を用い、ナノインデンターの圧子として図3(a)に示される三角錐形状のバーコビッチ(Berkovich)圧子(型番:TI0039)を用いた。
まず、相対湿度50%、23℃環境において、図3(b)に示される通り当該圧子を、測定試料(第2表面保護層)上に基材シートに向かって厚さ方向に当て、図3(c)に示すように先ず0~1000μNまでの負荷を50秒間で加え(すなわち20μN/s)、その状態で5秒間保持し、次に50秒間かけて除荷を行い、複合弾性率を求めた。
なお、複合弾性率の測定に際し、化粧シートを瞬間接着剤(アロンアルファ(登録商標):一般用、東亜合成株式会社製)でガラス基板上に固定し、室温で3時間以上放置して十分に硬化させた後、第2表面保護層の表面をナノインデンターのカメラユニットで観察し、第2表面保護層が形成されている部分(図1の7-2)の平坦で押込み試験に適した部位を選択することにより複合弾性率を測定した。場所を変えて10箇所以上の複合弾性率を測定し、再現良く測定された10箇所の平均値を測定値とした。
〔耐衝撃性〕
デュポン衝撃試験機(JIS K5600-5-3に準拠)を用いて500mmの高さから500gの錘を7枚重ねた化粧シート表面に落下させた。その際に重ねたシートの割れた枚数(最表面に限らず割れたシートの枚数)を確認した。
評価基準は以下の通りとした。
++:0枚(割れたシート:無し)
+ :1~3枚割れた
- :4~7枚割れた。
〔意匠性〕
成人男女20人(男性10人、女性10人)が化粧シートを最表層側から観察し、立体的な意匠が表現できているか否かを確認した。
評価基準は以下の通りとした。
A+:立体的な意匠が実現できていると判断した成人男女が9割以上
A :立体的な意匠が実現できていると判断した成人男女が7割以上9割未満
B :立体的な意匠が実現できていると判断した成人男女が5割以上7割未満
C :立体的な意匠が実現できていると判断した成人男女が5割未満。
〔耐傷性〕
各化粧シートの耐傷性を、ホフマンスクラッチ試験機(BYK-Gardnar製)を用いて確認した。具体的には、化粧シートの表面保護層に対して、45度の角度で接するようにスクラッチ刃(直径7mmの円柱のエッジ部)をセットし、該スクラッチ刃を引っ張るように移動させて表面を擦った。その際、100~400g荷重の範囲で25gずつスクラッチ刃にかける荷重を変化させて、表面保護層に傷が発生するか否かを確認した。
評価基準は、以下の通りとした。
○ :250g荷重において傷が確認されないもの
△ :250g荷重において傷が若干確認されるもの
× :250g荷重において傷が明らかに確認されるもの。
〔落下試験〕
各化粧シートを3インチ紙管(内径80mm×厚み12mm)にロール状に70m分巻き取り、更にその上からペフ(積水化成品工業(株)製ライトロンS♯54)で2重巻きし、最後にライナー紙(レンゴー(株)製RKA210)を4重巻きすることによりロール状化粧シートの梱包体(供試体)を得た。
供試体を0℃環境下に1時間静置した後、条件1、2で落下試験を4回ずつ行った。
条件1:供試体を二人で持ち上げて高さ120cmから水平にコンクリート床面に落下させる
条件2:供試体の一端を高さ50cmの台に載せた後、他端の角がコンクリート床面に接触するように斜めにコンクリート床面に落下させる。
各化粧シートの割れの状態を以下の評価基準で評価した。
++:4回中、全て割れ無し
+ :4回中、2回割れ無し
- :4回共、全て複数枚(ロール状の複数層)割れた。
Figure 0007459581000001
1.化粧シート
2.基材シート
3.絵柄模様層
4.透明性接着剤層
5.透明性樹脂層
6.プライマー層
7-1.第1表面保護層
7-2.第2表面保護層
8.裏面プライマー層
9.化粧板基材
10.化粧板
a.第1表面保護層の厚さ
b.第2表面保護層の最大厚さ

Claims (11)

  1. 厚さ方向において順に、基材シートと、絵柄模様層と、透明性樹脂層と、最表層とを少なくとも備える積層体から構成される化粧シートであって、
    (1)前記最表層は、前記基材シート側から、ベタ状の第1表面保護層とその上に形成されたパターン状の第2表面保護層とからなり、
    (2)前記第2表面保護層上から前記基材シートに向かって前記厚さ方向に測定した複合弾性率が2.5GPa以下である、
    ことを特徴とする化粧シート。
  2. 前記第2表面保護層のナノインデンテーション硬さが前記第1表面保護層のナノインデンテーション硬さよりも小さい、請求項1に記載の化粧シート。
  3. 前記第2表面保護層のナノインデンテーション硬さが200MPa以下である、請求項1又は2に記載の化粧シート。
  4. 前記複合弾性率が1.0GPa以上である、請求項1~3のいずれかに記載の化粧シート。
  5. 前記透明性樹脂層は熱可塑性樹脂からなる、請求項1~4のいずれかに記載の化粧シート。
  6. 前記透明性樹脂層のナノインデンテーション硬さが前記第1表面保護層及び前記第2表面保護層のいずれのナノインデンテーション硬さよりも小さい、請求項1~5のいずれかに記載の化粧シート。
  7. 前記透明性樹脂層と前記最表層との間にプライマー層を有する、請求項1~6のいずれかに記載の化粧シート。
  8. 前記第1表面保護層の艶値及び前記第2表面保護層の艶値が異なる、請求項1~7のいずれかに記載の化粧シート。
  9. 前記化粧シートを前記最表層側から平面視した場合に高艶部と低艶部とが視認でき、各艶部の面積割合が前記高艶部/前記低艶部=10/90~30/70である、請求項8に記載の化粧シート。
  10. 床用化粧板の部材として用いられる、請求項1~9のいずれかに記載の化粧シート。
  11. 厚さ方向において順に、化粧板基材と、請求項1~10のいずれかに記載の化粧シートとを少なくとも備える積層体から構成される化粧板。
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