JP2021142750A - 化粧シート及び化粧板 - Google Patents

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Shin Arakida
臣 荒木田
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雅貴 和田
利成 茅原
Toshishige Kayahara
利成 茅原
梨紗 良波
Risa Yoshinami
梨紗 良波
智美 中島
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Abstract

【課題】表面保護層が長期間に亘り耐汚染性、耐アルカリ性等に優れるとともに、衝撃が加わった際や加工時に割れやクラックの発生が抑制されており、更に耐摩耗性能に優れる化粧シート、及びそれを用いた化粧板を提供する。【解決手段】厚さ方向において順に、基材シートと、ポリエステル系樹脂層と、透明熱可塑性樹脂層と、表面保護層とを少なくとも備える積層体から構成される化粧シートであって、前記表面保護層は、前記基材シート側から第2表面保護層と第1表面保護層とが順に隣接して積層されており、前記第1表面保護層は、樹脂A及び樹脂Bの二種類の脂肪族ウレタンアクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂を含有し、前記樹脂Aはイソシアヌレート骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートであり、前記樹脂Bはイソシアヌレート骨格を有さず、脂環骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートである。【選択図】なし

Description

本発明は、化粧シート及び化粧板に関する。
従来、建築物の内装材に用いられる建具、床、壁等の表面化粧等のために各種の化粧シートが用いられている。例えば、厚さ方向において順に、基材シートと、透明性樹脂層と、表面保護層とを有する積層体から構成される化粧シートが幅広く用いられており、必要に応じて基材シート上に装飾層を設けたり、接着性を高めるために透明性樹脂層と表面保護層との間にプライマー層を設けたり、表面保護層の耐傷性を高めるために表面保護層の樹脂成分に電離放射線硬化型樹脂を含有すること等が知られている。
化粧シートの具体例としては、例えば、特許文献1には、建築物の内層、建具の表面化粧、車両内装等に用いられる化粧シートが開示されており、その実施例1には、厚さ方向において順に、基材シート2と、着色層3と、木目模様の絵柄層4と、接着層5と、透明樹脂層6と、厚さ2μmのプライマー層7と、電子線硬化型樹脂組成物により形成された厚さ5μmの表面保護層8とを備える化粧シートが記載されている(特許文献1の[0037]段落及び図1)。
このように、表面保護層を構成する樹脂として電離放射線硬化型樹脂がよく用いられているが、電離放射線硬化型樹脂により表面保護層を形成すると硬化収縮が大きいことから、表面保護層に含まれる無機フィラーに十分な表面処理を行わないと耐汚染性、耐アルカリ性等に悪影響を及ぼす場合がある。また、電離放射線硬化型樹脂により形成した表面保護層は高硬度ゆえに脆く、衝撃によりクラックや割れが生じ易い。
上記問題を改善するために、例えば、特許文献2には、「不飽和二重結合を有するシランカップリング剤処理を施された無機フィラーを含有する電離放射線硬化型樹脂において、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対し、脂肪族系ウレタンを配するアクリルウレタンポリオール樹脂を、50部から200部混合した主剤の水酸基価に対し、脂肪族系イソシアネートのNCO価を水酸基価の1.1倍以上添加されている樹脂が最表面層であることを特徴とする化粧シート及びそれを用いた化粧材。」が開示されている。
特許文献2に開示された技術は、無機フィラーを含む電離放射線硬化型樹脂に、2液硬化型アクリルポリオールと脂肪族系イソシアネートとを混合することにより、硬化収縮を緩和するとともに、耐汚染性、耐アルカリ性等を維持し、更に耐衝撃性や耐環境性によるクラック割れを克服するものであると記載されている([0005]段落)。しかしながら、当該技術には、脂肪族系イソシアネートの経時硬化により耐汚染性、耐衝撃性等の物性が不安定になるという懸念がある。
よって、表面保護層を含む化粧シートであって、表面保護層が長期間に亘り耐汚染性、耐アルカリ性等に優れるとともに、衝撃が加わった際や加工時に割れやクラックの発生が抑制されている化粧シートの開発が求められている。更に、近年の生活スタイルの多様化に伴って、上記性能に加えて更なる機能性(例えば、耐摩耗性能)を付与した化粧シートの開発要求も高まっている。
特開2006−7728号公報 特開2004−268374号公報
本発明は、表面保護層を含む化粧シートであって、表面保護層が長期間に亘り耐汚染性、耐アルカリ性等に優れるとともに、衝撃が加わった際や加工時に割れやクラックの発生が抑制されており、更に耐摩耗性能に優れる化粧シート、及びそれを用いた化粧板を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、厚さ方向において順に、基材シートと、ポリエステル系樹脂層と、透明熱可塑性樹脂層と、表面保護層とを少なくとも備える特定の積層体から構成される化粧シートによれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の化粧シート及び化粧板に関する。
1.厚さ方向において順に、基材シートと、ポリエステル系樹脂層と、透明熱可塑性樹脂層と、表面保護層とを少なくとも備える積層体から構成される化粧シートであって、前記表面保護層は、前記基材シート側から第2表面保護層と第1表面保護層とが順に隣接して積層されており、
(1)前記第1表面保護層は、樹脂A及び樹脂Bの二種類の脂肪族ウレタンアクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂を含有し、前記樹脂Aはイソシアヌレート骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートであり、前記樹脂Bはイソシアヌレート骨格を有さず、脂環骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートであり、
(2)前記第1表面保護層は、ナノインデンテーション硬さが160MPa以上240MPa以下であり、
(3)前記第2表面保護層は、ナノインデンテーション硬さが100MPa以上240MPa以下で、且つ、前記第1表面保護層よりもナノインデンテーション硬さが小さく、
(4)前記透明熱可塑性樹脂層の厚みは50μm以上150μm以下であり、前記ポリエステル系樹脂層は2軸延伸されており、前記ポリエステル系樹脂層の厚みは50μm以上300μm以下であり、前記ポリエステル系樹脂層の厚みと前記透明熱可塑性樹脂層の厚みとの合計値は150μm以上450μm以下である、
ことを特徴とする化粧シート。
2.前記脂環骨格は、イソホロン及びシクロヘキサンの少なくとも一種である、上記項1に記載の化粧シート。
3.前記電離放射線硬化型樹脂は、電子線硬化型樹脂である、上記項1又は2に記載の化粧シート。
4.前記第1表面保護層は、無機フィラーを含有する、上記項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
5.前記無機フィラーは、疎水化処理された無機フィラーである、上記項4に記載の化粧シート。
6.前記第1表面保護層は、厚さが5μm以上30μm以下である、上記項1〜5のいずれかに記載の化粧シート。
7.前記第1表面保護層は、抗菌剤、抗ウイルス剤及び抗アレルゲン剤からなる群から選択される少なくとも一種を含有する、上記項1〜6のいずれかに記載の化粧シート。
8.前記第2表面保護層は、厚さが5μm以上15μm以下である、上記項1〜7のいずれかに記載の化粧シート。
9.前記ポリエステル系樹脂層は、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート層である、上記項1〜8のいずれかに記載の化粧シート。
10.床用化粧板の部材として用いられる、上記項1〜9のいずれかに記載の化粧シート。
11.厚さ方向において順に、化粧板基材と、上記項1〜10のいずれかに記載の化粧シートとを少なくとも備える積層体から構成される化粧板。
12.前記化粧板基材は、中密度木質繊維板、高密度木質繊維板、パーティクルボード、針葉樹合板、広葉樹合板、早成樹合板、コルクシート、コルク含有複合基材及び熱可塑性樹脂板からなる群から選択される少なくとも一種である、上記項11に記載の化粧板。
本発明の化粧シートは、厚さ方向において順に、基材シートと、ポリエステル系樹脂層と、透明熱可塑性樹脂層と、表面保護層とを少なくとも備える積層体から構成される化粧シートであって、前記表面保護層は、前記基材シート側から第2表面保護層と第1表面保護層とが順に隣接して積層されており、
(1)前記第1表面保護層は、樹脂A及び樹脂Bの二種類の脂肪族ウレタンアクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂を含有し、前記樹脂Aはイソシアヌレート骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートであり、前記樹脂Bはイソシアヌレート骨格を有さず、脂環骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートであり、
(2)前記第1表面保護層は、ナノインデンテーション硬さが160MPa以上240MPa以下であり、
(3)前記第2表面保護層は、ナノインデンテーション硬さが100MPa以上240MPa以下で、且つ、前記第1表面保護層よりもナノインデンテーション硬さが小さく、
(4)前記透明熱可塑性樹脂層の厚みは50μm以上150μm以下であり、前記ポリエステル系樹脂層は2軸延伸されており、前記ポリエステル系樹脂層の厚みは50μm以上300μm以下であり、前記ポリエステル系樹脂層の厚みと前記透明熱可塑性樹脂層の厚みとの合計値は150μm以上450μm以下である、ことを特徴とする。この特徴を有することにより、本発明の化粧シートは表面保護層が長期間に亘り耐汚染性、耐アルカリ性等に優れるとともに、衝撃が加わった際や加工時に割れやクラックの発生が抑制されており、更に耐摩耗性能に優れる。
本発明の化粧シートの一例を模式的に示した断面図である。 本発明の化粧板の構成部材の一例を模式的に示した断面図である。 本明細書におけるナノインデンテーション硬さの測定に用いるバーコビッチ圧子(a)、荷重の方向と押込み深さhとの関係(b)、及び押込み深さと押込み荷重との関係(c)を説明する模式図である。
1.化粧シート
本発明の化粧シートは、厚さ方向において順に、基材シートと、ポリエステル系樹脂層と、透明熱可塑性樹脂層と、表面保護層とを少なくとも備える積層体から構成される化粧シートであって、前記表面保護層は、前記基材シート側から第2表面保護層と第1表面保護層とが順に隣接して積層されており、
(1)前記第1表面保護層は、樹脂A及び樹脂Bの二種類の脂肪族ウレタンアクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂を含有し、前記樹脂Aはイソシアヌレート骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートであり、前記樹脂Bはイソシアヌレート骨格を有さず、脂環骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートであり、
(2)前記第1表面保護層は、ナノインデンテーション硬さが160MPa以上240MPa以下であり、
(3)前記第2表面保護層は、ナノインデンテーション硬さが100MPa以上240MPa以下で、且つ、前記第1表面保護層よりもナノインデンテーション硬さが小さく、
(4)前記透明熱可塑性樹脂層の厚みは50μm以上150μm以下であり、前記ポリエステル系樹脂層は2軸延伸されており、前記ポリエステル系樹脂層の厚みは50μm以上300μm以下であり、前記ポリエステル系樹脂層の厚みと前記透明熱可塑性樹脂層の厚みとの合計値は150μm以上450μm以下である、ことを特徴とする。この特徴を有することにより、本発明の化粧シートは表面保護層が長期間に亘り耐汚染性、耐アルカリ性等に優れるとともに、衝撃が加わった際や加工時に割れやクラックの発生が抑制されており、更に耐摩耗性能に優れる。
本発明の化粧シートは、厚さ方向において順に、基材シートと、ポリエステル系樹脂層と、透明熱可塑性樹脂層と、表面保護層(基材シート側から第2表面保護層及び第1表面保護層)とを少なくとも備える積層体から構成されており、所定のポリエステル系樹脂層、透明熱可塑性樹脂層及び表面保護層の要件を満たしていれば、その具体的構成(層構成)については限定されない。
具体的な実施態様では、例えば、基材シート上に、絵柄模様層、第1透明性接着剤層、ポリエステル系樹脂層、第2透明性接着剤層、透明熱可塑性樹脂層、プライマー層、第2表面保護層及び第1表面保護層を順に積層してなる化粧シートが挙げられる(例えば、図1の化粧シート1の態様)。このように、表面保護層は第1表面保護層と第2表面保護層との複層構成であり、化粧シートの最表層は第1表面保護層である。なお、化粧板基材との接着性を高めるために、必要に応じて、図1に示すように化粧シートの裏面に裏面プライマー層を設けてもよい。以下、第1表面保護層及び第2表面保護層の二層構成を総称して「表面保護層」ともいう。
本明細書では、基材シートから見て表面保護層が積層されている方向を「上」又は「おもて面」と称し、基材シートから見て裏面プライマー層が積層されている方向を「下」又は「裏面」と称する。化粧シート又は化粧板の「おもて(側)の面」又は「表面保護層(側)の面」とは、化粧シート又は化粧板の施工後に視認される面を意味する。なお、以下では「表面保護層の側」という場合に、略記して「表面保護層側」ともいう。
以下、図面を参照しながら化粧シートについて説明する。
図1は、本発明の化粧シートの一例を示す断面図である。図1に示す化粧シート1は、基材シート2上に絵柄模様層3、第1透明性接着剤層4、ポリエステル系樹脂層5、第2透明性接着剤層6、透明熱可塑性樹脂層7、プライマー層8、第2表面保護層9−2及び第1表面保護層9−1が積層されており、表面保護層側からエンボス凹凸模様が形成されている。図1では、基材シート2の裏面に裏面プライマー層10が積層されている。なお、図1のa,bで示されるように、本発明の化粧シートにおける第1表面保護層,第2表面保護層の厚さは、エンボス凹凸模様が形成されていない箇所における測定値を意味する。
以下、本発明の化粧シートを構成する各層について具体的に説明する。なお、以下の記載において、「〜」で表される数値範囲の下限上限は「以上以下」を意味する(例えば、α〜βならば、α以上β以下である)。
基材シート
基材シートは、その表面(おもて面)にはポリエステル系樹脂層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層等が順次積層される。基材シートの材質は限定されないが、非ハロゲン系熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
上記非ハロゲン系熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン(線状低密度ポリエチレンを含む),中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,エチレン−αオレフィン共重合体,ホモポリプロピレン,ポリメチルペンテン,ポリブテン,エチレン−プロピレン共重合体,プロピレン−ブテン共重合体,エチレン−酢酸ビニル共重合体,エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物等のオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合体,ポリカーボネート,ポリアリレート等の熱可塑性エステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル,ポリ(メタ)アクリル酸エチル,ポリアクリル酸エチル,ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系熱可塑性樹脂、ナイロン−6,ナイロン−66等のポリアミド系熱可塑性樹脂、スチレンブタジエンゴム,イソプレンゴム等の非ハロゲン系のジエン系ゴム、ブチルゴム,エチレンプロピレンゴム等の非ジエン系ゴム、天然ゴム、熱可塑性エラストマー、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂等が挙げられる。また、これらの非ハロゲン系熱可塑性樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、絵柄模様層の印刷適性及びエンボス加工適性に優れ、安価である点で、オレフィン系熱可塑性樹脂が好ましい。
基材シートは、着色されていてもよい。この場合は、上記のような非ハロゲン系熱可塑性樹脂に対して着色材(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色材としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料のほか、各種の染料も使用することができる。これらは、公知又は市販のものから1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色材の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すればよい。
基材シートには、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
基材シートの厚さは40〜100μmが好ましい。基材シートの厚さが40μm未満であると、化粧板基材に凹凸形状がある場合に当該凹凸の化粧板表面への表出を十分に抑制できないおそれがある。また、基材シートの厚さが100μmを超えると、化粧シートをロール状態で保存した際に巻きぐせがつくことにより、ロールラミネートが困難となるおそれがある。基材シートの厚さは、60〜80μmがより好ましい。基材シートは、単層又は多層のいずれで構成されていてもよい。
基材シートは、絵柄模様層を形成するインキの密着性を高めるために表面(おもて面)にコロナ放電処理を施してもよい。コロナ放電処理は、公知の方法及び条件に従って実施すれば良い。また、必要に応じて、基材シートの裏面にコロナ放電処理を施したり、後述する合成樹脂製バッカー層及び/又は裏面プライマー層を形成したりしてもよい。
絵柄模様層
絵柄模様層は、化粧シートに所望の絵柄(意匠)を付与する任意層であり、絵柄の種類等は限定的ではない。例えば、木目模様、レザー模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様、草花模様、風景、キャラクター等が挙げられる。
絵柄模様層の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)して得られるインキを用いた既知の印刷法により、基材シート表面に形成すればよい。インキとしては、化粧シートのVOCを低減する観点からは水性組成物を用いることもできる。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤は、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等とともに用いてもよい。
結着材樹脂としては、親水性処理されたポリエステル系ウレタン樹脂のほか、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリスチレン−アクリレート共重合体、ロジン誘導体、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂なども併用できる。より具体的には、例えば、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリN−ビニルピロリドン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂、水溶性アミノ系樹脂、水溶性フェノール系樹脂、その他の水溶性合成樹脂;ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類等の水溶性天然高分子;等も使用することができる。また、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリ酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン−ポリアクリル系樹脂等が変性したものないし前記天然ゴム等の混合物、その他の樹脂を使用することもできる。上記結着材樹脂は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
絵柄模様層の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、全面ベタ状の絵柄模様層を形成する場合には、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法が挙げられる。その他、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法等を用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いたりしてもよい。
絵柄模様層の厚さは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、層厚は0.1〜15μm程度である。
第1透明性接着剤層
絵柄模様層と後述のポリエステル系樹脂層との密着性を高めるため、絵柄模様層上に第1透明性接着剤層を形成してもよい。第1透明性接着剤層は、透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれであってもよい。
接着剤としては特に限定されず、化粧シートの分野で公知の接着剤が使用できる。化粧シートの分野で公知の接着剤としては、例えば、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、ウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これら接着剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂も適用し得る。
第1透明性接着剤層の厚さは特に限定されないが、厚さが0.1〜30μm程度、好ましくは1〜20μm程度である。
ポリエステル系樹脂層
本発明の化粧シートはポリエステル系樹脂層を有する。ポリエステル系樹脂層は厚さが50μm以上300μm以下であり、2軸延伸されたものを用いる。
ポリエステル系樹脂層を構成するポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸等が挙げられる。このうち、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。つまり、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート層であることが好ましい。
ポリエステル系樹脂層の厚さは50μm以上300μm以下であればよいが、その中でも150μm以上200μm以下が好ましい。
本発明の化粧シートは、当該ポリエステル樹脂層、後述する透明熱可塑性樹脂層及び表面保護層を有することにより、衝撃が加わった際や加工時に割れやクラックの発生が抑制されていることに加えて、更に耐摩耗性能に優れる。
第2透明性接着剤層
ポリエステル系樹脂層と後述の透明熱可塑性樹脂層との密着性を高めるため、ポリエステル系樹脂層上に第2透明性接着剤層を形成してもよい。第2透明性接着剤層は、透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれであってもよい。
接着剤としては特に限定されず、化粧シートの分野で公知の接着剤が使用できる。化粧シートの分野で公知の接着剤としては、例えば、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、ウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これら接着剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂も適用し得る。
第2透明性接着剤層の厚さは特に限定されないが、厚さが0.1〜30μm程度、好ましくは1〜20μm程度である。
透明熱可塑性樹脂層
本発明の化粧シートは透明熱可塑性樹脂層を有する。透明熱可塑性樹脂層は厚さが50μm以上150μm以下であり、前述のポリエステル系樹脂層の厚さとの合計値が150μm以上450μm以下であるものを用いる。
透明熱可塑性樹脂層は、透明性であれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれであってもよい。上記透明性樹脂層の材質は熱可塑性樹脂であればよいが、非ハロゲン系熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。
上記非ハロゲン系熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン(線状低密度ポリエチレンを含む),中密度ポリエチレン,高密度ポリエチレン,エチレン−αオレフィン共重合体,ホモポリプロピレン,ポリメチルペンテン,ポリブテン,エチレン−プロピレン共重合体,プロピレン−ブテン共重合体,エチレン−酢酸ビニル共重合体,エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、又は、これらの混合物等のオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合体,ポリカーボネート,ポリアリレート等の熱可塑性エステル系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル,ポリメタアクリル酸エチル,ポリアクリル酸エチル,ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系熱可塑性樹脂、ナイロン−6,ナイロン−66等のポリアミド系熱可塑性樹脂、又は、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂等が挙げられる。また、これらの非ハロゲン系熱可塑性樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、エンボス加工適性に優れ、安価である点で、オレフィン系熱可塑性樹脂が好ましい。
なお、透明熱可塑性樹脂層は、透明性を有する限り、着色されていてもよい。
また、透明熱可塑性樹脂層は、透明性を有する限り、必要に応じて、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
透明熱可塑性樹脂層の厚さは50μm以上150μm以下であればよいが、その中でも80μm以上130μm以下が好ましい。透明性樹脂層の厚さを上記範囲に設定することにより、深いエンボスを形成することができると共に、傷の発生や絵柄模様層の摩耗による削れ(絵柄取られ)を抑制する効果が得られ易い。また、透明熱可塑性樹脂層の厚さと前述のポリエステル系樹脂層の厚さとの合計値は150μm以上450μm以下であればよいが、その中でも250μm以上350μm以下が好ましい。
本発明の化粧シートは、前述のポリエステル樹脂層、当該透明熱可塑性樹脂層及び後述する表面保護層を有することにより、衝撃が加わった際や加工時に割れやクラックの発生が抑制されていることに加えて、更に耐摩耗性能に優れる。
プライマー層
透明熱可塑性樹脂層の上には、表面保護層用のプライマー層を設けてもよい。このプライマー層は透明熱可塑性樹脂層と後述の表面保護層との密着性を高める作用に加えて、表面保護層との組み合わせにより化粧シートの折り曲げ加工性や耐傷性を高めることができる。プライマー層は透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれであってもよい。
プライマー層は、公知のプライマー剤を透明熱可塑性樹脂層の表面に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂(アクリルウレタン系共重合体樹脂)、ポリカーボネート系アクリルウレタン共重合体樹脂等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン−セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。これらの中でも、耐傷性及び耐候性の観点からポリカーボネート系アクリルウレタン共重合体樹脂を含むウレタン樹脂系プライマー剤が好適に使用できる。
プライマー剤には、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤;シリカ、炭酸カルシウム、クレー等のフィラー;水酸化マグネシウム等の難燃剤;酸化防止剤;滑剤;発泡剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
上記の添加剤のうち、紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)が好適である。これらの耐候剤の含有量は限定されないが、紫外線吸収剤、光安定剤のそれぞれについて1000〜100000重量ppm程度とすればよい。特に本発明では、トリアジン系紫外線吸収剤及び/又はヒンダードアミン系光安定剤を用いることが好ましい。
プライマー層の厚さは限定的ではないが、0.5μm以上12μm以下が好ましく、1μm以上8μm以下がより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、後述の表面保護層との組み合わせにより化粧シートの折り曲げ加工性や耐傷性を高め易くなる。また、耐候剤などの添加剤を含有し易くなり、本発明の化粧シートに耐候性も付与し易くなる。
表面保護層
表面保護層は、基材シート側から第2表面保護層と第1表面保護層とが順に隣接して積層された複層構成であり、第1表面保護層が化粧シートの最表層である。また、第1表面保護層は、ナノインデンテーション硬さが160MPa以上240MPa以下であり、第2表面保護層は、ナノインデンテーション硬さが100MPa以上240MPa以下で、且つ、前記第1表面保護層よりもナノインデンテーション硬さが小さい。このように、表面保護層を複層構成とし、第1表面保護層よりも硬度の小さい(相対的に柔らかい)第2表面保護層を隣接して設けることにより、表面保護層に衝撃が加わった際や加工時の割れやクラックの発生を更に抑制することができ、特に高荷重条件下での耐傷性を高めることができる。なお、表面保護層は透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれであってもよい。
第1表面保護層は、
(1)樹脂A及び樹脂Bの二種類の脂肪族ウレタンアクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂を含有し、前記樹脂Aはイソシアヌレート骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートであり、前記樹脂Bはイソシアヌレート骨格を有さず、脂環骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートであり、
(2)ナノインデンテーション硬さが160MPa以上240MPa以下である、
ことを満たすことを特徴とする。
また、第2表面保護層は、ナノインデンテーション硬さが100MPa以上240MPa以下で、且つ、前記第1表面保護層よりもナノインデンテーション硬さが小さいことを特徴とする。
本発明の化粧シートは、第1表面保護層が上記要件を満たすことにより、第1表面保護層が長期間に亘り耐汚染性、耐アルカリ性等に優れるとともに、衝撃が加わった際や加工時に割れやクラックの発生が抑制されている。また、第2表面保護層を第1表面保護層の下側に隣接して設けることにより、表面保護層に衝撃が加わった際や加工時の割れやクラックの発生を更に抑制でき、特に高荷重条件下での耐傷性を高めることができる。更に、表面保護層の下層に前述のポリエステル樹脂層、及び透明熱可塑性樹脂層を有することにより、本発明の化粧シートは衝撃が加わった際や加工時に割れやクラックの発生が抑制されていることに加えて、更に耐摩耗性能に優れる。
第1表面保護層に含まれる樹脂成分は電離放射線硬化型樹脂を含有し、本発明では詳細には樹脂A及び樹脂Bの二種類の脂肪族ウレタンアクリレートを含んでいる。
樹脂Aはイソシアヌレート骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートであり、この要件を満たす限り限定的ではないが、例えば、ジイソシアネートの三量体により形成されるイソシアヌレート骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートが好ましい。具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(特に1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート)の三量体、トリレンジイソシアネートの三量体、メタキシレンジイソシアネートの三量体等が挙げられる。なお、トリレンジイソシアネート及びメタキシレンジイソシアネートはベンゼン環を有する点でヘキサメチレンジイソシアネートよりも耐候性が劣る可能性があるため、これらのジイソシアネートは水素添加されていることが好ましい。これらの樹脂Aは、第1表面保護層の耐汚染性、耐アルカリ性等を向上させる効果がある。
樹脂Bはイソシアヌレート骨格を有さず、脂環骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートであり、この要件を満たす限り限定的ではないが、例えば、当該脂環骨格としてイソホロン及びシクロヘキサンの少なくとも一種を有することが好ましい。具体的には、イソホロンジイソシアネートとブタンジオールとをモノマーとする重合体であるウレタンオリゴマーの末端にアクリレートを付加したもの、水素添加ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(水添MDI)のPG変性ジアクリレート等が挙げられる。これらの樹脂Bは、第1表面保護層に柔軟性を付与する効果があり、樹脂Aとの組み合わせにより第1表面保護層に長期間に亘る優れた耐汚染性、耐アルカリ性等とともに、衝撃が加わった際や加工時の割れやクラックの発生を抑制する効果を与える。
第1表面保護層に含まれる樹脂成分は実質的に全量が電離放射線硬化型樹脂から構成でき、当該電離放射線硬化型樹脂は実質的に樹脂A及び樹脂Bの二種類の脂肪族ウレタンアクリレートから構成すればよい。なお、電離放射線硬化型樹脂は、樹脂A、樹脂Bのように紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂であって、硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。なお、本発明では電離放射線硬化型樹脂の中でも、光重合開始剤を含まない点で原料樹脂の性質がそのまま第1表面保護層の性質に反映できる点、且つ耐候剤を併用する場合の選択の幅が広がるという点から電子線硬化型樹脂を用いることが好ましい。
電離放射線硬化型樹脂中の樹脂A、樹脂Bの含有割合は限定的ではないが、樹脂A及び樹脂Bの合計量を100質量%とした場合に、樹脂Aが10〜50質量%、樹脂Bが50〜90質量%の範囲であれば好ましく、樹脂Aが20〜40質量%、樹脂Bが60〜80質量%の範囲であればより好ましい。また、本発明の化粧シートは、第1表面保護層のナノインデンテーション硬さが160MPa以上240MPa以下(好ましくは180MPa以上220MPa以下)であることが要求されるが、上記例示した樹脂A、樹脂Bの含有割合であれば、このような第1表面保護層のナノインデンテーション硬さが得られ易い。また、第1表面保護層の硬さは、樹脂A及び樹脂Bの含有割合を調整すること、電離放射線である紫外線、電子線等の照射条件(強度、時間等)を適宜調整すること等により調整できる。
なお、本明細書において、表面保護層(第1表面保護層及び後記第2表面保護層)の「インデンテーション硬さ」は、微小領域機械特性評価装置トライボインデンター(登録商標)「TI−950」(Bruker社製)を用いて測定されるナノインデンテーション硬さで示す。トライボインデンター(登録商標)「TI−950」を用いた表面保護層のインデンテーション硬さ(HIT)の測定方法は次の通りである。
(1)ナノインデンターの圧子として、図3(a)に示される三角錐形状のバーコビッチ(Berkovich)圧子(型番:TI0039)を用いる。図3(b)に示すように測定試料にバーコビッチ圧子を後述の押込み条件にて押込み、押し込み荷重F(μN)に対する押し込み深さh(nm)を連続的に測定し、図3(c)に示すように荷重−変位曲線を作成する。作成された荷重−変位曲線から最大押し込み荷重Fmax(μN)を求める。次いで、最大押込み荷重Fmax(μN)をその時の圧子と試料の接触投影面積Ap(μm)で除することにより硬さを求める。ここで、Apは標準試料の溶融石英を用いて装置標準の方法で圧子先端曲率を補正した接触投影面積である。
すなわち、HIT=Fmax/Apである。
(2)押込み条件は、室温(実験室環境温度)において、図3(c)に示される通り、先ず0〜50μNまでの負荷を5秒間で加え(すなわち10μN/s)、次に50μN(Fmax)の負荷で5秒間保持し、最後に50〜0μNまでの除荷を5秒間で行う。
(3)なお、硬さの測定に際し、測定試料となる層以外の層の硬さの影響を回避するために測定対象である層の断面の硬さを測定する。すなわち、化粧シートを樹脂(常温硬化タイプのエポキシ2液硬化樹脂)で包埋し、室温で24時間以上放置して硬化させた後、硬化した埋包サンプルを機械研磨して測定対象である層の断面を露出させ、表面保護層の断面(充填剤などの微粒子が層中に含まれる場合には当該微粒子を避けた位置)に上記バーコビッチ圧子を押込むことにより断面の硬さを測定する。
(4)表面保護層について、10箇所以上のインデンテーション硬さを測定し、再現良く測定された10箇所の平均値を測定値とする。
第2表面保護層は前記第1表面保護層よりも相対的に硬度が小さい。第2表面保護層を構成する樹脂成分は特に限定的ではないが、例えば、前述の樹脂Bのみから構成するか、又は樹脂Bと樹脂C(イソシアヌレート骨格及び脂環骨格を有さないペンタエリスリトール系多官能アクリレート)との混合物から構成することが好ましい。樹脂Cとしては、具体的に、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。このように樹脂Bを含むことにより、第2表面保護層も電離放射線照射により硬化させることができるため第1表面保護層とともに同時に硬化させて形成することができる。
第2表面保護層を形成する樹脂成分中の樹脂B、樹脂Cの含有割合は限定的ではないが、樹脂B及び樹脂Cの合計量を100質量%とした場合に、樹脂Bが70〜100質量%、樹脂Cが0〜30質量%の範囲であれば好ましく、樹脂Bが80〜90質量%、樹脂Cが10〜20質量%の範囲であればより好ましい。また、本発明の化粧シートは、第2表面保護層のナノインデンテーション硬さが第1表面保護層のナノインデンテーション硬さよりも相対的に小さい範囲で100MPa以上240MPa以下(好ましくは140MPa以上215MPa以下)のものを用いるが、上記例示した樹脂B,樹脂Cの含有割合であれば、このような第2表面保護層のナノインデンテーション硬さが得られ易い。また、第2表面保護層の硬さは、電離放射線である紫外線、電子線等の照射条件(強度、時間等)を適宜調整すること等によっても調整できる。
表面保護層には、耐候性を向上させるために、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、トリアジン系などの紫外線吸収剤を添加するのが好ましい。
また、紫外線を照射して樹脂層を硬化させる場合には、光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミノオキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン等、光重合促進剤(増感剤)としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を用いることができる。
また、表面保護層には、染料,顔料等の着色剤、無機フィラー等の充填剤、消泡剤,レベリング剤,チクソトロピー性付与剤,難燃剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗アレルゲン剤等の各種添加剤を加えてもよい。また、無機フィラーは主に艶消し剤として用いられる場合が多いが、表面保護層に無機フィラーを含むことにより表面保護層の硬化収縮を抑制する効果も期待できる。よって、本発明では無機フィラーは表面処理(疎水化処理)されたものであることが好ましい。また、これらの添加剤の中でも特に抗菌剤、抗ウイルス剤及び抗アレルゲン剤からなる群から選択される少なくとも一種は、効果を得易くする点から最表層である第1表面保護層に含有することが好ましい。
無機フィラーとしては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、炭化珪素、二酸化珪素、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、マグネシウムパイロボレート、酸化亜鉛、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、窒化硼素、ダイヤモンド、金剛砂、ガラス繊維等が挙げられる。
無機フィラーを表面処理(疎水化処理)する方法は特に限定されず、公知の方法で行うことができる。例えば、シリコーンオイル系処理剤によって無機フィラーを疎水化処理する方法;アルキルシラザン系処理剤、トリメチルシリル化剤、及び/又は、アルコキシシランで無機フィラーを処理した後に上述のシリコーンオイル系処理剤によって無機フィラーを疎水化処理する方法;シリコーンオイル系処理剤によって無機フィラーを疎水化処理した後に、さらにトリメチルシリル化剤又はアルキルシラザン系処理剤で処理する方法;アルコキシシランによって無機フィラーを疎水化処理する方法;アルコキシシランによって無機フィラーを処理した後に、さらにシリコーンオイル系処理剤、又はシリコーンオイル系処理剤及びアルコキシシランで処理する方法;ダイマージオールシロキサン、及び/又は、トリメチルシラノール若しくは環状シロキサンを用いて無機フィラーを処理する方法などが挙げられる。また、上述の疎水化処理の方法だけでなく、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等の各種カップリング剤;リン酸系、脂肪酸系等の界面活性剤;油脂、ステアリン酸等によって処理する方法も疎水化処理の方法として挙げられる。以下、未処理の無機フィラーを疎水化処理するための上述の各製品(例えば、シリコーンオイル系処理剤等の処理剤、シランカップリング剤、界面活性剤等の全て)を、纏めて疎水化処理剤ともいう。
疎水化処理剤で無機フィラーを疎水化処理する方法としては、特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。例えば、未処理の無機フィラーに疎水化処理剤の原液、又は疎水化処理剤を水若しくは有機溶剤に希釈したものを添加(例えば噴霧)する方法(乾式処理法);未処理の無機フィラーを疎水化処理剤の原液、疎水化処理剤含有水溶液又は疎水化処理剤含有有機溶剤中で処理(例えば浸漬)し、その後、乾燥させる方法(湿式処理法);などが挙げられる。このような処理により、無機フィラー表面の一部若しくは全部が(a)疎水化処理剤で被覆されるか、(b)疎水化処理剤を吸着するか、又は(c)疎水化処理剤で被覆され、且つ吸着する((a)及び(b)の組み合わせとなる)、等が生じる。その結果、疎水化処理された無機フィラーが得られる。なお、疎水化処理剤は、1種類単独又は2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
上記抗菌剤としては、無機系抗菌剤、及び有機系抗菌剤がある。特に無機系抗菌剤は有機系抗菌剤に比べ一般に安全性が高く、耐久性、及び耐熱性にも優れているため望ましい。無機系抗菌剤とは、銀をはじめとする銅、亜鉛等の抗菌性金属を各種の無機物担体に担持したものである。第1表面保護層に含有する場合には、抗菌剤の添加量は第1表面保護層の樹脂成分100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましいが、詳細は抗菌剤の種類に応じて適宜調整することができる。
上記抗ウイルス剤としては、一般的に有機系と無機系とに大別することができる。有機系の抗ウイルス剤としては、第4級アンモニウム塩系、第4級ホスホニウム塩系、ピリジン系、ピリチオン系、ベンゾイミダゾール系、有機ヨード系、イソチアゾリン系、アニオン系、エーテル系等がある。無機系の抗ウイルス剤としては、銀、銅、亜鉛等の金属イオンをゼオライト、アパタイト、ジルコニア、ガラス、酸化モリブデン等の担体に担持させたものがある。第1表面保護層に含有する場合には、抗ウイルス剤の添加量は第1表面保護層の樹脂成分100質量部に対して1〜10質量部が好ましいが、詳細は抗ウイルス剤の種類に応じて適宜調整することができる。
上記有機系の抗ウイルス剤の内、特に粒子形状を保つベンゾイミダゾール系の抗ウイルス剤またはアニオン系の抗ウイルス剤またはエーテル系の抗ウイルス剤が好適に用いられる。ここで、粒子形状を保つとは、表面保護層の硬化型樹脂となる組成物(硬化前のインキ)内で溶解することなく粒子の状態で存在することを意味する。このため、表面保護層を形成する過程において、イミダゾール系化合物の粒子またはアニオン系化合物の粒子またはエーテル系化合物が浮かび上がりやすくなり、表面保護層の最表面側にイミダゾール系化合物の粒子またはアニオン系化合物またはエーテル系化合物の粒子を偏在させやすくすることができる。そして、表面保護層の最表面側にイミダゾール系化合物の粒子をまたはアニオン系化合物の粒子をまたはエーテル系化合物の粒子を偏在させることにより、所定の抗ウイルス性を得るために必要な抗ウイルス剤の添加量を抑制することができるため、表面保護層の耐擦傷性の低下を抑制しやすくできる。
上記アニオン系の抗ウイルス剤としては、例えばスチレン樹脂、スチレンポリマー誘導体化合物及び不飽和カルボン酸誘導体化合物を含むものが好ましい。また、上記スチレンポリマー誘導体化合物及び不飽和カルボン酸誘導体化合物はスチレン、スルホン酸Na、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸の構造の内、少なくとも一種の構造を含むことが好ましく、全ての構造を含むことが更に好ましい。これは、ウイルスにはエンベロープ有無の点で大別して2種類が存在し、それぞれに対し効果的に活性阻害し得る抗ウイルス剤の構造が異なると考えられるためである。そのため、例えば、ノンエンベロープウイルスであるインフルエンザウイルスのみに対する効果を期待するのであれば、スチレンポリマー誘導体化合物のみが含まれていればよく、その中でもスチレン樹脂単体のみが含まれていれば十分に効果が得られる場合もある。
上記無機系の抗ウイルス剤としては、生体毒性が無く安全性に優れる観点から銀系の抗ウイルス剤が好ましく、中でもリン酸系ガラス銀担持化合物または銀ゼオライト化合物、及び酸化モリブデン銀複塩化合物は、少量でも抗ウイルス性能を発現することから添加量を抑制することができるため、更に好ましい。
上記銀系の抗ウイルス剤を表面保護層に含有する場合、表面保護層によっては変色する(添加した塗料の状態で熱・光により変色する場合や、表面保護層形成後に熱・光により変色する場合がある)が、この場合は紫外線防止剤、光安定剤等を適時添加することにより改善することが可能である。例えば、上記酸化モリブデン銀複塩化合物に対しては、ベンゾトリアゾール系化合物を用いると変色改善効果が期待できる。
上記抗アレルゲン剤は、無機化合物又は有機化合物のいずれか一方を含むものであり、各々単体で用いても良いし、異なる2種以上を混合させても良い。無機化合物としては金属を担持してなる材料であることが好ましい。第1表面保護層に含有する場合には、抗アレルゲン剤の添加量は第1表面保護層の樹脂成分100質量部に対して1〜10質量部が好ましいが、詳細は抗アレルゲン剤の種類に応じて適宜調整することができる。
無機化合物の無機材料としては例えば、酸化チタン、リン酸カルシウム、珪酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、ゼオライト、シリカアルミナ、珪酸マグネシウム及びリン酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、この中でも酸化チタン、リン酸ジルコニウム等が好ましい。
無機材料に担持される金属としては、例えば金、銀、白金、亜鉛及び銅からなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、この中でも銀、亜鉛等が好ましい。市販品として例えば、大原パラヂウム製「パラファインANV−100:無機化合物に銀担持」、日揮触媒製「アトミーボールTZ−R:酸化チタンに亜鉛担持」等を好適に用いることができ、これらの抗アレルゲン剤は、ダニや花粉などの種々のアレルゲンに対して有効に作用するものである。
有機化合物としては、フェノール性水酸基を含有する非水溶性高分子又はポリフェノール化合物が無機固体酸に担持されたもの、スチレンスルホン酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも1種の単量体成分を含む重合体であることが好ましい。
フェノール性水酸基を含有する非水溶性高分子としては、市販品として例えば積水化学工業株式会社製「アレルバスター(商品名)」、丸善石油株式会社製「マルカリンカーM(商品名)」等を使用することができる。また、ポリフェノール化合物とジルコニウム化合物とを組み合わせたものとしては、東亜合成株式会社製「アレリムーブ(商品名)」などが挙げられる。これらの抗アレルゲン剤は、ダニや花粉など種々のアレルゲンに対して有効に作用するものである。
スチレンスルホン酸及びその塩からなる群から選択される少なくとも一種の単量体成分としては、特許第6136433号に示されるような材料を用いることができる。好適な例としては、スチレンスルホン酸塩の単独重合体、スチレンスルホン酸塩−スチレンスルホン酸共重合体、スチレンスルホン酸塩−スチレン共重合体、スチレンスルホン酸−スチレン共重合体、スチレンスルホン酸塩−スチレンスルホン酸−スチレン三元共重合体等が挙げられる。
その他に、有機化合物と無機化合物とを混合させる場合は、例えばアニオン性フェノール系と抗アレルゲン性を有する亜鉛系材料が挙げられる。
アニオン性フェノール系材料としては、タンニン、タンニン酸・吐酒石、フェノールスルホン酸ホルムアルデヒド樹脂、ノボラツク型樹脂のスルホン化合物、ノボラツク型樹脂のメタンスルホン酸、レゾール型樹脂のメタンスルホン酸、ベンジル化フェノールスルホン酸、チオフェノール系化合物、ジ・ヒドロオキシ、ジ・フェニルスルホン系化合物、リガント化合物及びこれらの金属キレート化合物などから適宜選択して用いられる。
亜鉛系材料としては、水溶性亜鉛化合物又は非水溶性亜鉛化合物、亜鉛/金属酸化物複合素材などから適宜選択され、非水溶性亜鉛化合物及び/又は非水溶性亜鉛・金属酸化物の複合粒子が水分散され、粒子径が50μm以下であり、前記金属酸化物がチタニア、シリカ、アルミナいずれかを少なくとも一種含むものであることが好ましい。
表面保護層は、例えば、プライマー層上に上記特定の電離放射線硬化型樹脂を含有するコーティング剤をグラビアコート、ロールコート等の公知の塗工法により塗工後、樹脂を硬化させることにより形成できる。例えば、プライマー層上に第2表面保護層を形成後、続いて第1表面保護層を形成できるほか、各表面保護層を形成するための塗膜を積層した後、同時に電離放射線を照射することにより各塗膜を硬化させて第1表面保護層及び第2表面保護層としてもよい。
第1表面保護層の厚さは限定的ではないが、3μm以上30μm以下が好ましく、10μm以上15μm以下がより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、前述のプライマー層との組み合わせにより、本発明の化粧シートに折り曲げ加工性や耐傷性を付与し易い。
第2表面保護層の厚さは限定的ではないが、5μm以上15μm以下が好ましく、10μm以上12μm以下がより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、第1表面保護層との組み合わせにより、表面保護層に衝撃が加わった際や加工時の割れやクラックの発生を更に抑制することができ、特に高荷重条件下での耐傷性を高め易い。
第2表面保護層を形成する樹脂組成物は、例えばプライマー層上に塗工した段階でその塗膜がタックフリー(低粘着性)であることが好ましい。タックフリーであれば、電離放射線の照射、高温の焼付け等による半硬化処理をすることなく、第1表面保護層を形成前にロール状に巻き取って一時保管をしても他層にブロッキング(裏移り)するおそれを低下させることができる。また、タックフリーであれば第1表面保護層を積層する工程を円滑に行うことができる。第2表面保護層を塗工時にタックフリーとするには、第2表面保護層を形成する樹脂成分の重量平均分量を適宜調整するほか、無機フィラーを添加することによっても達成することができる。
エンボス加工
エンボス加工は、化粧シートに木目模様等の所望のテクスチャーを付与するために行い、透明性樹脂層上、及び/又は、表面保護層上からエンボス加工が施されていてもよい。例えば、表面保護層を加熱軟化させた後、所望の形の凹凸模様を有するエンボス板で加圧及び賦型し、冷却固定することによりテクスチャーを付与する。エンボス加工は、公知の枚葉又は輪転式エンボス機で行える。
エンボス加工の凹凸模様としては、例えば、木目導管溝、浮造模様(浮出した年輪の凹凸模様)、ヘアライン、砂目、梨地等が挙げられる。
エンボス加工を施した場合には、必要に応じて、エンボス凹部にワイピング加工によりインキを充填してもよい。例えば、エンボス凹部にドクターブレードで表面をかきながらインキを充填する。充填するインキ(ワイピングインキ)としては、通常は2液硬化型のウレタン樹脂をバインダーとするインキを用いることができる。特に木目導管溝凹凸に対してワイピング加工を行うことによって、より実際の木目に近い意匠を表現することにより商品価値を高めることができる。
裏面プライマー層
基材シートの裏面には、必要に応じて裏面プライマー層を設けてもよい。例えば、基材シートと化粧板基材とを接着して化粧板を作製する際に効果的である。
裏面プライマー層は、公知のプライマー剤を基材シートに塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂(アクリルウレタン系共重合体樹脂)、ポリカーボネート系アクリルウレタン共重合体樹脂等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン−セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。
プライマー剤には、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、クレー等の充填剤、水酸化マグネシウム等の難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。
裏面プライマー層の厚さは特に限定されないが、通常0.01〜10μm、好ましくは0.1〜1μm程度である。
合成樹脂製バッカー層
基材シートの裏面には、必要に応じて合成樹脂製バッカー層を設けてもよい。合成樹脂製バッカー層を有することにより、化粧シートの耐衝撃性がより一層向上する。なお、前述の裏面プライマー層も設ける場合には、基材シートの裏面に基材シート側から合成樹脂製バッカー層及び裏面プライマー層の順に設ける。
合成樹脂製バッカー層を構成する樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリメチレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、耐熱性の高いポリアルキレンテレフタレート〔例えば、エチレングリコールの一部を1,4−シクロヘキサンジメタノールやジエチレングリコール等で置換したポリエチレンテレフタレートである、いわゆる商品名PET−G(イーストマンケミカルカンパニー製)〕、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合体、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアミド、ABS、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴムなどのジエン系ゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴムなどの非ジエン系ゴム、天然ゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの樹脂は単独又は2種以上で使用できる。
合成樹脂製バッカー層の厚みは、0.1〜0.6mmが好ましく、0.15〜0.45mmがより好ましく、0.20〜0.40mmが更に好ましい。合成樹脂製バッカー層の厚みの下限が上記範囲であることにより、化粧シートの耐衝撃性がより一層向上する。また、合成樹脂製バッカー層の厚みの上限が上記範囲であることにより、化粧シートの反りがより一層抑制される。
合成樹脂製バッカー層のナノインデンテーション硬さは、化粧材に良好な耐衝撃性を付与する観点からは60MPa以上300MPa以下であることが好ましく、130MPa以上250MPa以下であることがより好ましい。合成樹脂製バッカー層のナノインデンテーション硬さの測定方法は、前記表面保護層のナノインデンテーション硬さの測定方法と同じである。また、合成樹脂製バッカー層のナノインデンテーション硬さは合成樹脂製バッカー層を構成する樹脂の種類、又は二種以上の樹脂を含有する場合にはその含有割合を調整することにより調整することができる。
化粧シートの各層に含まれる各種添加剤のベシクル化
本発明の化粧シートの上述の各層に添加される各種添加剤(プライマー層や表面保護層に添加される無機フィラー等)は、当該各種添加剤がベシクル化されていることが好ましい。各種添加剤をベシクル化する方法としては特に限定されず、公知の方法によりベシクル化することができ、中でも超臨界逆相蒸発法が好ましい。
ベシクル化処理方法としては、超臨界逆相蒸発法の他に、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、逆相蒸発法、凍結融解法などが挙げられる。このようなベシクル化処理方法について簡単に説明すると、Bangham法は、フラスコなどの容器にクロロホルムまたはクロロホルム/メタノール混合溶媒を入れ、さらにリン脂質を入れて溶解する。その後、エバポレータを用いて溶媒を除去して脂質からなる薄膜を形成し、添加剤の分散液を加えた後、ボルテックスミキサーで水和・分散させることよりベシクルを得る方法である。エクストルージョン法は、薄膜のリン脂質溶液を調液し、Bangham法において外部摂動として用いたミキサーに代わってフィルターを通過させることによりベシクルを得る方法である。水和法は、Bangham法とほぼ同じ調製方法であるが、ミキサーを用いずに、穏やかに攪拌して分散させてベシクルを得る方法である。逆相蒸発法は、リン脂質をジエチルエーテルやクロロホルムに溶解し、添加剤を含んだ溶液を加えてW/Oエマルジョンを作り、当該エマルジョンから減圧下において有機溶媒を除去した後、水を添加することによりベシクルを得る方法である。凍結融解法は、外部摂動として冷却・加熱を用いる方法であり、この冷却・加熱を繰り返すことによってベシクルを得る方法である。
以下、超臨界逆相蒸発法について詳細に説明する。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は超臨界点以上の温度若しくは圧力条件下の二酸化炭素にベシクルの外膜を形成する物質を均一に溶解させた混合物中に、水溶性または親水性の封入物質としての各種添加剤を含む水相を加えて、一層の膜で封入物質としての各種添加剤を包含したカプセル状のベシクルを形成する方法である。なお、超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)および臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度若しくは圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度のみ、又は、臨界圧力のみが臨界条件を超えた条件下の二酸化炭素を意味する。当該方法により、直径50〜800nmの単層ラメラベシクルを得ることができる。一般に、ベシクルとは、球殻状に閉じた膜構造を有する小胞の内部に液相を含むものの総称であり、特に、外膜がリン脂質等の生体脂質から構成されるものをリポソームと称する。
上記リン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
外膜を構成する物質としては、また、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類若しくはトリアシルグリセロールの混合物等の分散剤を用いることができる。
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン−ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン−ポリ2−ビニルピリジン、ポリスチレン−ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン−ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記コレステロール類としては、コレステロール、α−コレスタノール、β−コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5,24−コレスタジエン−3β−オール)、コール酸ナトリウム、コレカルシフェロール等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成されていてもよい。本発明の化粧シートにおいては、外膜をリン脂質から形成したリポソームとすることで、各層の主成分である樹脂組成物と各種添加剤との相溶性を良好なものとすることができる。
2.化粧板
本発明の化粧板は、厚さ方向において順に、化粧板基材と、前述の本発明の化粧シートとを備える積層体から構成される。
図2に、化粧板基材11上に本発明の化粧シート1(表面保護層側とは反対面と化粧板基材119とを貼り合わせる)がこの順に積層された化粧板12の一例を示す。
化粧板基材としては限定的ではないが、例えば、中密度木質繊維板、高密度木質繊維板、パーティクルボード、針葉樹合板、広葉樹合板、早成樹合板、コルクシート、コルク含有複合基材、熱可塑性樹脂板(ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂等を主成分とする樹脂板、又はそれらを発泡させたもの)等の少なくとも1種が挙げられる。これらの化粧板基材は、単独又は2種以上を組み合わせて積層することにより使用してもよい。
ここで、針葉樹としては、例えば、椴松、唐松、蝦夷松、杉、ヒノキ、パイン、セコイヤ、トウヒ等が挙げられる。広葉樹としては、例えば、ラワン、シナ、カバ、セン、ブナ、ナラ、メランチ等が挙げられる。また、早成樹としては、ポプラ、ファルカタ、アカシア、カメレレ、ユーカリ、ターミナリア等が挙げられる。
針葉樹合板、広葉樹合板、早成樹合板等の木質合板を用いる場合の木質単板の積層数(プライ数)は限定的ではないが、通常3〜7枚が好ましく、5〜7枚がより好ましい。また、木質合板作製時に用いる接着剤も限定されず、公知の木工用接着剤が広く使用できる。接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマー、ブタジエン−アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等を有効成分とする接着剤が挙げられる。また、熱硬化型接着剤として、メラミン系、フェノール系、ユリア系(酢酸ビニル−尿素系など)等の接着剤も挙げられる。
前記コルクシートとしては、コルク樫の樹皮のコルク組織を剥離及び加工した弾力性に富む素材であるいわゆる天然コルクだけでなく、コルクに似せて作られたいわゆる合成コルクのいずれも用いることができる。なお、コルクシートは単層であってもよく、弾性率や密度が異なる複数のコルクシートの積層体であってもよい。
前記コルク含有複合基材としては、コルクシートと他の材質(例えば、中密度木質繊維板、高密度木質繊維板)とを積層して貼り合わせてなる複合材などが挙げられる。
化粧板基材の厚さは限定的ではないが、2〜15mm程度が好ましく、2〜12mm程度がより好ましい。
化粧シート及び化粧板基材を積層する積層方法は限定的でなく、例えば接着剤によりそれぞれを貼着する方法等を採用することができる。接着剤は、被着材の種類等に応じて公知の接着剤から適宜選択すればよい。例えば、ウレタン、アクリル、ウレタン−アクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマー等のほか、ブタジエン−アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等が挙げられる。これら接着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いる。
前述の本発明の化粧シートは、表面保護層が長期間に亘り耐汚染性、耐アルカリ性等に優れるとともに、衝撃が加わった際や加工時に割れやクラックの発生が抑制されている。よって、本発明の化粧シートを用いて化粧材を作製する際の折り曲げ加工(ラッピング加工)にも耐性があり、本発明の化粧シートを化粧板基材に貼着し、その後、化粧板基材側からVカット加工などを施した後に曲げ加工したものを各種用途の化粧板として好適に利用することができる。また、得られた化粧板は耐汚染性、耐アルカリ性等に優れているため、日常生活で用いる液体物質や各種薬品(例えば、毛染め液)が付着し易い床材として好適に使用することができる。つまり、本発明の化粧シート及び化粧板は、床用化粧シート及び床用化粧材として好適である。
以下に実施例及び比較例並びに試験例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に示す内容に限定されない。
実施例1
基材シートとして60μm厚の着色ポリプロピレンフィルムを用意し、基材シートの裏面に裏面プライマー層(厚さ2μm)を形成して、基材シートのおもて面に、厚さ2μmとなるように絵柄模様層をグラビア印刷により形成した。絵柄模様層上に、予めコロナ処理を施した厚さ188μmの2次延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムをドライラミネートしてポリエステル系樹脂層を形成した。次いで、ポリエステル系樹脂層上に、厚さ100μmとなるように透明熱可塑性樹脂のシート(透明ポリプロピレン系樹脂)を押出しラミネート方式で積層して透明熱可塑性樹脂層を形成した。
次いで、その表面にコロナ放電処理を施した後、プライマー剤を厚さ2μmで塗工することによりプライマー層を形成した。
プライマー層のおもて面に、表1に示す第2表面保護層形成用コーティング剤〔直鎖多官能脂肪族ウレタンアクリレートである脂環骨格を有さない樹脂Cとイソシアヌレート骨格を有さない脂環骨格を有する樹脂Bを、第2表面保護層のナノインデンテーション硬さが140MPaになるように樹脂を配合したコーティング剤(第1表面保護層との密着性を考慮し1Mradの条件で電子線を照射して試作)〕をグラビアコート方式で塗工(12μm)した後、上層に表1に示す第1表面保護層形成用コーティング剤(第1表面保護層のナノインデンテーション硬さが240MPaとなるように電離放射線硬化型樹脂にイソシアヌレート骨格を有する樹脂Aとイソシアヌレート骨格を有さない脂環骨格を有する樹脂Bとを混合し、樹脂成分100質量部に対して疎水化処理された無機フィラーを20質量部含むコーティング剤)をグラビアコート方式で塗工(15μm)し、次いで酸素濃度200ppm以下の環境下、電子線照射装置を用いて加速電圧165KeV、5Mradの条件で電子線を照射して、電子線硬化型樹脂を硬化させることで第2表面保護層及び第1表面保護層を形成した。なお、樹脂Aはヘキサメチレンジイソシアネートの三量体により形成されたイソシアヌレート骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートであり、樹脂Bは水素添加ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(水添MDI)のPG変性ジアクリレート(イソシアヌレート骨格を有さない)であり、樹脂Cはペンタエリストール系多官能アクリレート(イソシアヌレート骨格及び脂環骨格を有さない)である(以下同様)。
実施例2
表1に示す通り、第2表面保護層形成用コーティング剤として、直鎖多官能脂肪族ウレタンアクリレートである脂環骨格を有さない樹脂Cとイソシアヌレート骨格を有さない脂環骨格を有する樹脂Bを、第2表面保護層のナノインデンテーション硬さが215MPaになるように樹脂を配合したコーティング剤(第1表面保護層との密着性を考慮し1Mradの条件で電子線を照射して試作)を用いた以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
実施例3
表1に示す通り、第2表面保護層形成用コーティング剤として、直鎖多官能脂肪族ウレタンアクリレートである脂環骨格を有さない樹脂Cとイソシアヌレート骨格を有さない脂環骨格を有する樹脂Bを、第2表面保護層のナノインデンテーション硬さが270MPaになるように樹脂を配合したコーティング剤(第1表面保護層との密着性を考慮し1Mradの条件で電子線を照射して試作)を用いた以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
実施例4
表1に示す通り、第2表面保護層形成用コーティング剤として、直鎖多官能脂肪族ウレタンアクリレートである脂環骨格を有さない樹脂Cのみを用いて、第2表面保護層のナノインデンテーション硬さが80MPaになるように調製したコーティング剤(第1表面保護層との密着性を考慮し1Mradの条件で電子線を照射して試作)を用いた以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
実施例5
実施例1で用いた第1表面保護層形成用コーティング剤100重量部に対して、抗ウイルス剤としてリン酸系ガラス銀担持化合物(興亜硝子製/PG−711)を3重量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
実施例6
実施例1で用いた第1表面保護層形成用コーティング剤に対して、抗アレルゲン性を有するアニオン性フェノール系材料(DIC社製「EXP20530A」)及び抗アレルゲン性を有する亜鉛系材料(DIC社製「EXP20530B」)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。上記アニオン性フェノール系材料及び上記亜鉛系材料は、配合後のコーティング剤100質量%中、それぞれ固形分割合で23質量%となるように配合した。
比較例1
絵柄模様層上に、ポリエステル系樹脂層を形成しない以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。
床用化粧材の作製
上述のようにして作製した実施例1〜4及び比較例1の化粧シートの裏面プライマー層側が木質基材(2.7mmMDF)と接するようにして、化粧シートを水系接着剤(BA−10L/BA−11B 中央理化工業株式会社製、塗布量7g/尺角)を用いて木質基材に貼り合わせることにより、実施例1〜4及び比較例1の床用化粧材を作製した。
試験例1
各床用化粧材について下記の各物性を調べた。
<耐汚染性>
各床用化粧材の表面に毛染め剤(ホーユー株式会社製 メンズビゲンワンプッシュ6Aアッシュブラウン)を直径3cm大に付着させた。室温で24時間放置後、乾拭き、水拭き、エタノール拭きの順で毛染め剤を拭き取り、汚染度合いを目視にて観察評価した。
評価基準は以下の通りとした。
++:汚染が認められなかった
+:軽微汚染が認められた
−:著しい汚染が認められた。
<耐アルカリ性>
各床用化粧材の表面に10%水酸化ナトリウムをコットンに含ませ時計皿にて被覆し、室温で24時間放置後、乾拭き、水拭き、エタノール拭きの順で拭き取り、白化度合いを目視にて観察評価した。評価基準は以下の通りとした。
++:白化が認められなかった
+:軽微白化が認められた
−:著しい白化が認められた。
<耐衝撃性(デュポン衝撃)>
JISK5600−5−3(1999)のデュポン式の衝撃試験に従って、各床用化粧材に、半径6.3mmの半球形状の先端を有した撃ち型を静置させ、上記撃ち型上に500g荷重のおもりを高さ10cm、高さ50cmから落下させることにより評価した。各5回評価実施し、化粧シートの割れを目視にて確認評価した。
++:化粧シートの割れが発生しなかった(割れ個数:0個)
+:化粧シートの割れが若干発生した(割れ個数:1個以上〜4個以内)
−:化粧シートの割れが発生した(割れ個数:5個以上)。
<Vカット加工性>
各床用化粧材の裏面側から、MDFと水系接着材層との界面まで達する断面V字型の溝を切削加工で設け、溝を閉じるようにして合板をL字型に折り曲げて試験し、目視にて加工部を観察し、以下の基準にて評価した。加工時の温度は常温とした。
++:化粧シート加工部に微小なクラックが発生したが、外観上問題は発生しなかった
−:化粧シート加工部が割れ、外観上問題が発生した。
<軽荷重耐傷性試験(ホフマンスクラッチ試験)>
米国BYK−GADNER社製のホフマンスクラッチ試験機を用いて試験を行った。具体的には、各床用化粧材の表面に対して45°の角度で接するようスクラッチ刃(φ7の円柱形の刃)をセットし、試験機を各床用化粧材で移動させた。徐々に荷重(錘)を高めていき、化粧シートの表面に摺り傷、圧痕等が生じるまで試験を繰り返した。
評価基準は、以下の通りとした。
++:1000g荷重以上1500g荷重未満において、傷が発生しなかった
+ :500g荷重以上1000g荷重未満において、傷が発生しなかった
− :500g荷重未満において、傷が発生した。
<耐摩耗性>
各床用化粧材について、下記の方法により耐摩耗性を評価した。
JAS フローリングの日本農林規格に規定される耐摩耗試験において、絵柄の消失が始まるまでの回転数を確認した。摩耗紙の交換は1000回転毎とした。
評価基準は以下の通りとした。
++:3000回転以上であった
+:2500回転以上3000回転未満であった
−:2500回転未満であった。
Figure 2021142750
樹脂A:ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体により形成されたイソシアヌレート骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレート
樹脂B:水素添加ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(水添MDI)のPG変性ジアクリレート(イソシアヌレート骨格を有さない)
樹脂C:ペンタエリストール系多官能アクリレート(イソシアヌレート骨格及び脂環骨格を有さない)
試験例2
実施例1、5及び6で作製した化粧シートについて下記の各物性を調べた。
(抗ウイルス性能)
実施例1及び5で作製した化粧シートについて、抗ウイルス試験方法(ISO21702)に準拠した方法で抗ウイルス性能試験を行い、インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性値を下記評価基準に基づいて評価した。評価基準は下記の通りである。
〇:抗ウイルス活性値2.0以上であった
×:抗ウイルス活性値2.0未満であった。
結果を表2に示す。
Figure 2021142750
(抗アレルゲン性能)
実施例1及び6で作製した化粧シートについて、アレルゲン性能を評価した。具体的には、実施例1及び実施例6で作製した化粧シートを細かく切断し、ダニアレルゲン水溶液中に1日間浸した後のアレルゲン量を水平展開クロマト法(マイティチェッカー)で目視にて確認し、下記評価基準に従って評価した。評価基準は下記の通りである。
〇:アレルゲン量の減少が確認できた(ダニアレルゲンレベル判定が+判定以下(すなわち100匹程度/m以下)
×:アレルゲン量の減少が確認できなかった(ダニアレルゲンレベル判定が+判定超過)
結果を表3に示す。
Figure 2021142750
チェッカーの色濃度の違いから、実施例1の化粧シートと比べて実施例6の化粧シートが抗アレルゲン性能を有することが確認された。
1.化粧シート
2.基材シート
3.絵柄模様層
4.第1透明性接着剤層
5.ポリエステル系樹脂層
6.第2透明性接着剤層
7.透明熱可塑性樹脂層、
8.プライマー層
9−1.第1表面保護層
9−2.第2表面保護層
10.裏面プライマー層
11.化粧板基材
12.化粧板
a.第1表面保護層の厚さ
b.第2表面保護層の厚さ

Claims (12)

  1. 厚さ方向において順に、基材シートと、ポリエステル系樹脂層と、透明熱可塑性樹脂層と、表面保護層とを少なくとも備える積層体から構成される化粧シートであって、前記表面保護層は、前記基材シート側から第2表面保護層と第1表面保護層とが順に隣接して積層されており、
    (1)前記第1表面保護層は、樹脂A及び樹脂Bの二種類の脂肪族ウレタンアクリレートを含む電離放射線硬化型樹脂を含有し、前記樹脂Aはイソシアヌレート骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートであり、前記樹脂Bはイソシアヌレート骨格を有さず、脂環骨格を有する脂肪族ウレタンアクリレートであり、
    (2)前記第1表面保護層は、ナノインデンテーション硬さが160MPa以上240MPa以下であり、
    (3)前記第2表面保護層は、ナノインデンテーション硬さが100MPa以上240MPa以下で、且つ、前記第1表面保護層よりもナノインデンテーション硬さが小さく、
    (4)前記透明熱可塑性樹脂層の厚みは50μm以上150μm以下であり、前記ポリエステル系樹脂層は2軸延伸されており、前記ポリエステル系樹脂層の厚みは50μm以上300μm以下であり、前記ポリエステル系樹脂層の厚みと前記透明熱可塑性樹脂層の厚みとの合計値は150μm以上450μm以下である、
    ことを特徴とする化粧シート。
  2. 前記脂環骨格は、イソホロン及びシクロヘキサンの少なくとも一種である、請求項1に記載の化粧シート。
  3. 前記電離放射線硬化型樹脂は、電子線硬化型樹脂である、請求項1又は2に記載の化粧シート。
  4. 前記第1表面保護層は、無機フィラーを含有する、請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
  5. 前記無機フィラーは、疎水化処理された無機フィラーである、請求項4に記載の化粧シート。
  6. 前記第1表面保護層は、厚さが5μm以上30μm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の化粧シート。
  7. 前記第1表面保護層は、抗菌剤、抗ウイルス剤及び抗アレルゲン剤からなる群から選択される少なくとも一種を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の化粧シート。
  8. 前記第2表面保護層は、厚さが5μm以上15μm以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の化粧シート。
  9. 前記ポリエステル系樹脂層は、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート層である、請求項1〜8のいずれかに記載の化粧シート。
  10. 床用化粧板の部材として用いられる、請求項1〜9のいずれかに記載の化粧シート。
  11. 厚さ方向において順に、化粧板基材と、請求項1〜10のいずれかに記載の化粧シートとを少なくとも備える積層体から構成される化粧板。
  12. 前記化粧板基材は、中密度木質繊維板、高密度木質繊維板、パーティクルボード、針葉樹合板、広葉樹合板、早成樹合板、コルクシート、コルク含有複合基材及び熱可塑性樹脂板からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項11に記載の化粧板。
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