JP7103117B2 - 化粧シート用の透明性樹脂層及びその製造方法、並びに当該透明性樹脂層を備えた化粧シート及び化粧板 - Google Patents

化粧シート用の透明性樹脂層及びその製造方法、並びに当該透明性樹脂層を備えた化粧シート及び化粧板 Download PDF

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Description

本発明は、化粧シート用の透明性樹脂層及びその製造方法、並びに当該透明性樹脂層を備えた化粧シート及び化粧板に関する。
従来、建築物の内装材(建具、床、壁等)の表皮材、自動車の内外装や日用品の表皮材などには耐熱性及び耐傷性が求められており、当該表皮材としてはアイオノマーを含むフィルムを用いることが知られている。詳細には、アイオノマーを含むフィルムを透明性樹脂層として有する化粧シートを表皮材として用いることが挙げられる。
例えば、特許文献1は架橋物、フィルム、及び接着性フィルムに関し、「エチレン-α,β-不飽和カルボン酸系共重合体のアイオノマー(A)と、エポキシ化合物(B)と、ポリオレフィン(C)とを含む樹脂組成物を電子線照射してなる架橋物。(請求項1)」、当該架橋物を含むフィルム(請求項9)、当該フィルムと接着層とを含む接着性フィルム(請求項10)等が開示されている。
特許文献1においては、アイオノマー(A)に加えてエポキシ化合物(B)を含有することにより、アイオノマー(A)が有するカルボニル基と反応して第1の架橋を構成し、電子線照射による第2の架橋と組み合わせることで架橋物の耐摩耗性や耐熱性が向上するとされている([0035]、[0068]段落等)。また、特許文献1においては、アイオノマー(A)に加えてポリオレフィン(C)を含有することにより、他成分の分散性が向上して耐熱性が良好になるとされている([0052]段落)。
アイオノマーを含むフィルムの耐傷性に関しては、アイオノマー特有の復元性が寄与する部分が大きいが、特許文献1のようにアイオノマー(A)に加えてエポキシ化合物(B)のような添加剤やポリオレフィン(C)のような他の樹脂が添加される場合には、相対的にアイオノマー特有の復元性が低下するという問題がある。
よって、アイオノマーを含む従来品のフィルムは耐熱性及び耐傷性の両方を満足するという課題においては未だ改善の余地がある。特にアイオノマー以外の樹脂成分及び添加剤(架橋剤など)を含有しないアイオノマー単体の単層フィルムにおいて優れた耐熱性及び耐傷性を発揮する製品は未だ開発されていない。
特開2014-148652号公報
本発明は、アイオノマー以外の樹脂成分及び添加剤(架橋剤など)を含有しないアイオノマー単体の単層フィルムからなる化粧シート用の透明性樹脂層であって、優れた耐熱性及び耐傷性を発揮する透明性樹脂層及びその製造方法、並びに当該透明性樹脂層を備えた化粧シート及び化粧板を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定のアイオノマーの電子線架橋物からなるフィルムであって、当該フィルムがDSCで測定した特定の融点、寸法変化率及び貯蔵弾性率の要件を満たす場合には上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の化粧シート用の透明性樹脂層及びその製造方法、並びに当該透明性樹脂層を備えた化粧シート及び化粧板に関する。
1.化粧シート用の透明性樹脂層であって、
(1)前記透明性樹脂層は、エチレン-メタクリル酸共重合体と亜鉛イオンとからなるアイオノマーの電子線架橋物により構成されており、
(2)前記透明性樹脂層は、DSCで測定した融点が74~88℃であり、引張モード90℃の熱機械分析により測定した寸法変化率が5%以下であり、且つ、引張モード100℃の動的粘弾性分析により測定した貯蔵弾性率が2×10~1×10である、
ことを特徴とする透明性樹脂層。
2.引張モード150℃の動的粘弾性分析により測定した貯蔵弾性率が5×10~1×10である、上記項1に記載の透明性樹脂層。
3.化粧シート用の透明性樹脂層の製造方法であって、
(1)エチレン-メタクリル酸共重合体と亜鉛イオンとからなるアイオノマーを製膜することによりフィルムを得る工程であって、前記アイオノマーのDSCで測定した融点が88~94℃である工程1、
(2)前記フィルムに電子線を照射することにより前記アイオノマーが架橋した透明性樹脂層を得る工程であって、前記透明性樹脂層のDSCで測定した融点が74~88℃であり、引張モード90℃の熱機械分析により測定した寸法変化率が5%以下であり、且つ、引張モード100℃の動的粘弾性分析により測定した貯蔵弾性率が2×10~1×10である工程2、
を有することを特徴とする透明性樹脂層の製造方法。
4.前記電子線の照射量が60Mrad以上150Mrad以下である、上記項3に記載の製造方法。
5.上記項1又は2に記載の透明性樹脂層を備えた化粧シート。
6.厚さ方向において順に、基材シートと、上記項1又は2に記載の透明性樹脂層とを少なくとも備える積層体から構成される化粧シート。
7.厚さ方向において順に、化粧板基材と、上記項5又は6に記載の化粧シートとを備える積層体から構成される化粧板。
本発明の透明性樹脂層は、
(1)エチレン-メタクリル酸共重合体と亜鉛イオンとからなるアイオノマーの電子線架橋物により構成されており、
(2)DSCで測定した融点が74~88℃であり、引張モード90℃の熱機械分析により測定した寸法変化率が5%以下であり、且つ、引張モード100℃の動的粘弾性分析により測定した貯蔵弾性率が2×10~1×10である、
ことにより、前記アイオノマー以外の樹脂成分及び添加剤(架橋剤など)を含有しない前記アイオノマー単体の単層フィルムの状態でも優れた耐熱性及び耐傷性を発揮する。
このような本発明の透明性樹脂層は化粧シート用の透明性樹脂層として有用であり、透明性樹脂層のフィルム、並びにそれを備えた化粧シート又は化粧板の態様で、建築物の内装材(建具、床、壁等)の表皮材、自動車の内外装や日用品の表皮材として有用である。
本発明の製造方法は、上記本発明の透明性樹脂層の製造方法として有用である。
本発明の透明性樹脂層を備えた化粧シートの一態様を示す断面図である。 本発明の透明性樹脂層を備えた化粧シートの一態様を示す断面図である。 本発明の透明性樹脂層を備えた化粧板の一態様を示す断面模式図である。
以下、本発明の化粧シート用の透明性樹脂層及びその製造方法、並びに当該透明性樹脂層を備えた化粧シート及び化粧板について詳細に説明する。なお、本明細書では、基材シートから見て透明性表面保護層が積層されている方向を「上」又は「おもて面」と称し、基材シートから見て裏面プライマー層が積層されている方向を「下」又は「裏面」と称する。化粧シート又は化粧板の「おもて(側)の面」又は「透明性表面保護層(側)の面」とは、化粧シート又は化粧板の施工後に視認される面を意味する。また、以下において、「~」で表される数値範囲の下限上限は「以上以下」を意味する(例えば、α~βならば、α以上β以下である)。
1.化粧シート用の透明性樹脂層、及びその製造方法
本発明の化粧シート用の透明性樹脂層(以下、「透明性樹脂層」と略記する)は、
(1)エチレン-メタクリル酸共重合体と亜鉛イオンとからなるアイオノマーの電子線架橋物により構成されており、
(2)DSCで測定した融点が74~88℃であり、引張モード90℃の熱機械分析により測定した寸法変化率が5%以下であり、且つ、引張モード100℃の動的粘弾性分析により測定した貯蔵弾性率が2×10~1×10である、
ことを特徴とする。
上記特徴を有する本発明の透明性樹脂層は、前記アイオノマー以外の樹脂成分及び添加剤(架橋剤など)を含有しない前記アイオノマー単体の単層フィルムの状態でも優れた耐熱性及び耐傷性を発揮する。よって、透明性樹脂層のフィルム、並びにそれを備えた化粧シート又は化粧板の態様で建築物の内装材(建具、床、壁等)の表皮材、自動車の内外装や日用品の表皮材として有用である。
また、本発明の透明性樹脂層は、
(1)エチレン-メタクリル酸共重合体と亜鉛イオンとからなるアイオノマーを製膜することによりフィルムを得る工程であって、前記アイオノマーのDSCで測定した融点が88~94℃である工程1、
(2)前記フィルムに電子線を照射することにより前記アイオノマーが架橋した透明性樹脂層を得る工程であって、前記透明性樹脂層のDSCで測定した融点が74~88℃であり、引張モード90℃の熱機械分析により測定した寸法変化率が5%以下であり、且つ、引張モード100℃の動的粘弾性分析により測定した貯蔵弾性率が2×10~1×10である工程2、
を有することを特徴とする製造方法(以下、「本発明の製造方法」)
により好適に製造することができる。
上記原料としてのアイオノマーは、エチレン-メタクリル酸共重合体と亜鉛イオンとからなるアイオノマーであって、DSCで測定した融点(アイオノマーフィルムの融点)が88~94℃の範囲であるものを用いる。
なお、本明細書におけるDSCで測定した融点は、示差走査熱量計DSCを用いて、前記フィルム試料又は透明性樹脂層(各5mg)を窒素雰囲気下で30℃から冷却速度10℃/分で-30℃まで冷却し、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温した後、再度冷却速度10℃/分で-30℃まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で200℃まで昇温する操作を2回繰り返した時の2回目の吸熱ピークのピークトップ(℃)を意味する。
上記アイオノマーとしては、JIS K7210:1999(190℃、2.16kg荷重)において測定したメルトマスフローレイトが0.5~5.5g/10分であるものが好ましく、特に0.8~1.5g/10分であるものが好ましい。
上記アイオノマーを構成するエチレン-メタクリル酸共重合体中におけるメタクリル酸の含有量は限定的ではないが、2~35重量%であるものが好ましく、特に5~30重量%であるものが好ましい。また、上記アイオノマーを構成する亜鉛イオンは、上記共重合体中のカルボキシル基の20~90%を中和したものであることが好ましく、特に50~80%を中和したものであることが好ましい。アイオノマーを構成する金属イオンとしては、亜鉛イオン以外にナトリウムイオンなども知られているが、本発明で用いるアイオノマーは金属イオンが実質的に亜鉛イオンであることが必要であり、ナトリウムイオンなどの他の金属イオンは含まれていないことが好ましい。特にナトリウムイオンを含む場合には吸湿性が高くなり透明性樹脂層やそれを備える化粧シートなどに影響を及ぼす可能性がある。なお、本発明では前記アイオノマー以外の樹脂成分及び添加剤(架橋剤など)を含有しないことが好ましく、実質的に上記アイオノマーのみである。
工程1においてアイオノマーを製膜する際は公知の製膜法を幅広く使用できる。例えば、アイオノマーのペレットをキャストフィルム製造機を用いてフィルムに成形することにより簡便に製膜することができる。この場合の加工温度は限定的ではないが、200~250℃程度が好ましい。また、製膜したフィルムの厚みは限定的ではないが、40μm以上300μm以下が好ましく、その中でも60μm以上200μm以下がより好ましく、80μm以上120μm以下が最も好ましい。フィルムの厚さを上記範囲に設定することにより、本発明の透明性樹脂層を備えた化粧シートを作製した際に、深いエンボスを形成することができると共に、耐傷性を良好にでき、更には絵柄模様層の摩耗による削れ(絵柄取られ)を抑制する効果が得られ易い。なお、工程1におけるフィルムを得る工程には、上記のようにアイオノマーのペレットからフィルムに製膜する態様、市販のアイオノマーフィルムを用いる態様等のいずれも包含される。
次いで、第1工程で得た前記フィルムに対して第2工程で電子線を照射することによりアイオノマーが架橋した透明性樹脂層を得る。電子線照射により透明性樹脂層のDSCで測定した融点は74~88℃となり、引張モード90℃の熱機械分析(TMA)により測定した寸法変化率(TMA寸法変化率ともいう)が5%以下となり、且つ、引張モード100℃の動的粘弾性分析(DMA)により測定した貯蔵弾性率(DMA貯蔵弾性率ともいう)が2×10~1×10となる。
電子線照射量は、電子線照射後の透明性樹脂層の上記DSCで測定した融点、TMA寸法変化率、及びDMA貯蔵弾性率が所定範囲となる照射量であればよいが、60Mrad以上が好ましく、上限は150Mrad程度である。すなわち、60Mrad以上150Mrad以下の照射量が好ましく、150Mradを超えると透明性樹脂層の伸びが不十分、つまり復元性が不十分となるおそれがある。なお、電子線照射する際は、例えば60MRadを照射する場合に60MRadを一度に照射するとフィルムの劣化が促進する可能性があるため、好ましくは10MRadずつ複数回(60MRadであれば6回)に分けて照射することが好ましい。
透明性樹脂層のDSCで測定した融点は74~88℃であればよいが、その中でも74~80℃が好ましい。
透明性樹脂層の引張モード90℃のTMA寸法変化率は5%以下であればよいが、その中でも4.5~2.5%が好ましい。なお、本明細書におけるTMA寸法変化率は引張モードで荷重70mN/mm、10℃/minで110℃まで昇温した時の90℃でのTMA%を寸法変化率としており、各N=3で測定した平均値である。
透明性樹脂層の引張モード100℃のDMA貯蔵弾性率は2×10~1×10であればよいが、その中でも2.5×10~1×10が好ましい。また、透明性樹脂層の引張モード150℃のDMA貯蔵弾性率は5×10~1×10が好ましく、その中でも5.5×10~1×10がより好ましい。なお、本明細書におけるDMA貯蔵弾性率は、測定モード:周波数依存性、チャック:引っ張り、波形:正弦波、サンプル幅:5mm、厚み:約80μm、長さ:20mmにおいて、開始温度:0℃、ステップ温度:2℃、終了温度:200℃、昇温速度:3℃/min、ホールド時間:0s、周波数:10Hz、静荷重:一定15gの条件で測定した値である。
上記本発明の製造方法により本発明の透明性樹脂層を好適に得ることができる。得られた透明性樹脂層は、単層(フィルム)の状態で各種の表皮材として用いてもよく、下記に示すようにこれを備えた化粧シート又は化粧板の態様で用いることもできる。
2.化粧シート
本発明の化粧シートは、上記本発明の透明性樹脂層を備えるものであり、好適には厚さ方向において順に、基材シートと、本発明の透明性樹脂層とを少なくとも備える積層体から構成される。
例えば、化粧シートとしては、基材シート上に少なくとも絵柄模様層、接着剤層、本発明の透明性樹脂層が順に積層されている態様が挙げられる。本発明の透明性樹脂層の上に更に透明性表面保護層を設けてもよい。また、化粧シートの最表面層には、エンボス加工により凹凸模様が付与されてもよい。
以下、上記の化粧シートを例示して各層について説明する。
≪基材シート≫
基材シートは、その表面(おもて面)には絵柄模様層等が順次積層される。
基材シートとしては、樹脂製フィルム、紙、樹脂含浸紙等の種々のものを例示することができるが、樹脂製フィルムの中でも熱可塑性樹脂により形成されたものが好適である。具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等が挙げられる。上記の中でもポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましい。
基材シートは、着色されていてもよい。例えば、熱可塑性樹脂に対して着色剤(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色剤としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料のほか、各種の染料も使用することができる。これらは、1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色剤の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すればよい。
基材シートには、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
基材シートの厚みは、最終製品の用途、使用方法等により適宜設定できるが、一般には50~250μmが好ましい。
基材シートは、必要に応じて、絵柄模様層を形成するインキの密着性を高めるために表面(おもて面)にコロナ放電処理を施してもよい。コロナ放電処理の方法・条件は、公知の方法に従って実施すればよい。また、必要に応じて、基材シートの裏面にコロナ放電処理を施したり、絵柄模様層(いわゆるバックプリント)を形成したり、裏面プライマー層、後述するバッカー層等を形成したりしてもよい。
≪絵柄模様層(絵柄層)≫
絵柄層は、化粧シートに所望の絵柄(意匠)を付与するものであり、絵柄の種類等は限定的ではない。例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
絵柄層の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着材樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)して得られるインキを用いた印刷法により、基材シート表面に形成すればよい。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤には、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等がさらに配合してもよい。
結着材樹脂としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、親水性処理されたポリエステル系ウレタン樹脂のほか、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリスチレン-アクリレート共重合体、ロジン誘導体、スチレン-無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂なども併用できる。
より具体的には、例えば、ポリウレタン-ポリアクリル系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリN-ビニルピロリドン系樹脂、水溶性ポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂、水溶性アミノ系樹脂、水溶性フェノール系樹脂、その他の水溶性合成樹脂;ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類等の水溶性天然高分子;等を使用できる。また、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリ酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン-ポリアクリル系樹脂変性又は混合樹脂、その他の樹脂も使用できる。上記結着材樹脂は、単独又は2種以上で使用できる。
絵柄層の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、全面ベタ状の絵柄模様層(これを着色隠蔽層とも言う)を形成する場合には、例えば、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法も挙げられる。
上記以外にも、例えば、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法などを用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いたりしてもよい。
絵柄層の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、塗工時の層厚は0.1~10μm程度である。
≪接着剤層≫
接着剤層は、絵柄層と透明性樹脂層との間に存在する。接着剤層で使用する接着剤は、絵柄層又は透明性樹脂層を構成する成分等に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂等を含む各種接着剤を使用できる。また、反応硬化タイプのほか、ホットメルトタイプ、電離放射線硬化タイプ、紫外線硬化タイプ等の接着剤でもよい。
接着剤層は、絵柄層が認識できる限り、透明でも半透明でもよい。
なお、本発明では、必要に応じ、コロナ放電処理、プラズマ処理、脱脂処理、表面粗面化処理等の公知の易接着処理を接着面に施すこともできる。
接着剤層は、例えば、接着剤を絵柄模様層の上に塗布後、一度乾燥し、それから、透明性樹脂を積層することにより形成できる。接着剤の塗布方法は特に限定されず、例えば、ロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムースコート、コンマコート等の方法が採用できる。
接着剤層の厚みは、透明性保護層、使用する接着剤の種類等によって異なるが、一般的には0.1~30μm程度である。
≪透明性樹脂層≫
透明性樹脂層は、透明である限り絵柄層が視認できる範囲内で半透明であってもよい。
本発明では、透明性樹脂層として前述の本発明の透明性樹脂層を用いる。
≪透明性表面保護層≫
透明性樹脂層の上には、透明性表面保護層を形成してもよい。透明性表面保護層は限定的ではないが、樹脂成分として電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂を含有することが好ましい。実質的には、これらの樹脂から形成されているものが好ましい。電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂により透明性表面保護層を形成する場合には、化粧シートの耐摩耗性、耐衝撃性、耐汚染性、耐擦傷性、耐候性等を高め易い。本発明では、これらの中でも最表層が電離放射線硬化型樹脂層であることが好ましい。
電離放射線硬化型樹脂としては特に限定されず、紫外線、電子線等の電離放射線の照射により重合架橋反応可能なラジカル重合性二重結合を分子中に含むプレポリマー(オリゴマーを含む)及び/又はモノマーを主成分とする透明性樹脂が使用できる。これらのプレポリマー又はモノマーは、単体又は複数を混合して使用できる。硬化反応は、通常、架橋硬化反応である。
具体的には、前記プレポリマー又はモノマーとしては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物が挙げられる。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましい。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの分子量としては、通常250~100000程度が好ましい。
ラジカル重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、単官能モノマーとして、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーが挙げられる。また、チオールとしては、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールが挙げられる。ポリエンとしては、例えば、ジオール及びジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したものが挙げられる。
電離放射線硬化型樹脂を硬化させるために用いる電離放射線としては、電離放射線硬化型樹脂(組成物)中の分子を硬化反応させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常は紫外線又は電子線を用いればよいが、可視光線、X線、イオン線等を用いてもよい。
紫外線源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用できる。紫外線の波長としては、通常190~380nmが好ましい。
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。その中でも、特に100~1000keV、好ましくは100~300keVのエネルギーをもつ電子を照射できるものが好ましい。
2液硬化型ウレタン系樹脂としては特に限定されないが、中でも主剤としてOH基を有するポリオール成分(アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール等)と、硬化剤成分であるイソシアネート成分(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート等)とを含むものが使用できる。
透明性表面保護層は、必要に応じて、可塑剤、安定剤、充填剤、分散剤、染料,顔料等の着色剤、溶剤等を含んでもよい。
透明性表面保護層は、例えば、透明性樹脂層の上に電離放射線硬化型樹脂又は2液硬化型ウレタン系樹脂をグラビアコート、ロールコート等の公知の塗工法により塗工後、樹脂を硬化させることにより形成できる。電離放射線硬化型樹脂の場合には、電子線照射により樹脂硬化する。
透明性表面保護層の厚さは特に限定されず、最終製品の特性に応じて適宜設定できるが、通常0.1~50μm、好ましくは1~20μm程度である。
≪エンボス加工≫
化粧シートは、透明性表面保護層側からエンボス加工が施されていてもよい。
エンボス加工は、化粧シートに木目模様等の所望のテクスチャーを付与するために行う。例えば、透明性保護層を加熱軟化させた後、所望の形の凹凸模様を有するエンボス板で加圧及び賦型し、冷却固定することによりテクスチャーを付与する。エンボス加工は、公知の枚葉又は輪転式エンボス機で行える。
エンボス加工の凹凸模様としては、例えば、木目導管溝、浮造模様(浮出した年輪の凹凸模様)、ヘアライン、砂目、梨地等が挙げられる。
エンボス加工を施した場合には、必要に応じて、エンボス凹部にワイピング加工によりインキを充填してもよい。例えば、エンボス凹部にドクターブレードで表面をかきながらインキを充填する。充填するインキ(ワイピングインキ)としては、通常は2液硬化型のウレタン樹脂をバインダーとするインキを用いることができる。特に木目導管溝凹凸に対してワイピング加工を行うことによって、より実際の木目に近い意匠を表現することにより商品価値を高めることができる。
本発明では、透明性表面保護層中に他の成分が含まれていても良い。例えば、溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散剤、光安定剤、艶調整剤、ブロッキング防止剤、滑剤等の添加剤を配合できる。
化粧シートの各層に含まれる各種添加剤のベシクル化
本発明の化粧シートの上述の各層に添加される各種添加剤(プライマー層や表面保護層に添加される無機フィラー等)は、当該各種添加剤がベシクル化されていることが好ましい。各種添加剤をベシクル化する方法としては特に限定されず、公知の方法によりベシクル化することができ、中でも超臨界逆相蒸発法が好ましい。
以下、超臨界逆相蒸発法について詳細に説明する。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は超臨界点以上の温度若しくは圧力条件下の二酸化炭素にベシクルの外膜を形成する物質を均一に溶解させた混合物中に、水溶性または親水性の封入物質としての各種添加剤を含む水相を加えて、一層の膜で封入物質としての各種添加剤を包含したカプセル状のベシクルを形成する方法である。なお、超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)および臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度若しくは圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度のみ、又は、臨界圧力のみが臨界条件を超えた条件下の二酸化炭素を意味する。当該方法により、直径50~800nmの単層ラメラベシクルを得ることができる。一般に、ベシクルとは、球殻状に閉じた膜構造を有する小胞の内部に液相を含むものの総称であり、特に、外膜がリン脂質等の生体脂質から構成されるものをリポソームと称する。
上記リン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオリピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられる。
外膜を構成する物質としては、また、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類若しくはトリアシルグリセロールの混合物等の分散剤を用いることができる。
上記ノニオン系界面活性剤としては、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン-ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン-ポリ2-ビニルピリジン、ポリスチレン-ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド-ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン-ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記コレステロール類としては、コレステロール、α-コレスタノール、β-コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5,24-コレスタジエン-3β-オール)、コール酸ナトリウム、コレカルシフェロール等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成されていてもよい。本発明の化粧シートにおいては、外膜をリン脂質から形成したリポソームとすることで、各層の主成分である樹脂組成物と各種添加剤との相溶性を良好なものとすることができる。
3.化粧板
本発明の化粧板は、厚さ方向において順に、化粧板基材と、前述の本発明の化粧シートとを備える積層体から構成される。
図3に、化粧板基材8上に本発明の化粧シート1(表面保護層側とは反対面と化粧板基材11とを貼り合わせる)がこの順に積層された化粧板9の一例を示す。
化粧板基材としては限定的ではないが、例えば、中密度木質繊維板、高密度木質繊維板、パーティクルボード、針葉樹合板、広葉樹合板、早成樹合板、コルクシート、コルク含有複合基材、熱可塑性樹脂板(ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂等を主成分とする樹脂板、又はそれらを発泡させたもの)等の少なくとも1種が挙げられる。これらの化粧板基材は、単独又は2種以上を組み合わせて積層することにより使用してもよい。
ここで、針葉樹としては、例えば、椴松、唐松、蝦夷松、杉、ヒノキ、パイン、セコイヤ、トウヒ等が挙げられる。広葉樹としては、例えば、ラワン、シナ、カバ、セン、ブナ、ナラ、メランチ等が挙げられる。また、早成樹としては、ポプラ、ファルカタ、アカシア、カメレレ、ユーカリ、ターミナリア等が挙げられる。
針葉樹合板、広葉樹合板、早成樹合板等の木質合板を用いる場合の木質単板の積層数(プライ数)は限定的ではないが、通常3~7枚が好ましく、5~7枚がより好ましい。また、木質合板作製時に用いる接着剤も限定されず、公知の木工用接着剤が広く使用できる。接着剤としては、例えば、アクリル、ウレタン、アクリル-ウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマー、ブタジエン-アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等を有効成分とする接着剤が挙げられる。また、熱硬化型接着剤として、メラミン系、フェノール系、ユリア系(酢酸ビニル-尿素系など)等の接着剤も挙げられる。
前記コルクシートとしては、コルク樫の樹皮のコルク組織を剥離及び加工した弾力性に富む素材であるいわゆる天然コルクだけでなく、コルクに似せて作られたいわゆる合成コルクのいずれも用いることができる。なお、コルクシートは単層であってもよく、弾性率や密度が異なる複数のコルクシートの積層体であってもよい。
前記コルク含有複合基材としては、コルクシートと他の材質(例えば、中密度木質繊維板、高密度木質繊維板)とを積層して貼り合わせてなる複合材などが挙げられる。
化粧板基材の厚さは限定的ではないが、2~15mm程度が好ましく、2~12mm程度がより好ましい。
化粧シート及び化粧板基材を積層する積層方法は限定的でなく、例えば接着剤によりそれぞれを貼着する方法等を採用することができる。接着剤は、被着材の種類等に応じて公知の接着剤から適宜選択すればよい。例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマー等のほか、ブタジエン-アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等が挙げられる。これら接着剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いる。
以下に実施例及び比較例並びに試験例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に示す内容に限定されない。
実施例1
(化粧シートの作製)
(1)0.06mm厚の着色ポリプロピレンフィルムである基材シートに厚み2μmの絵柄模様層を印刷したシートを作製した。
(2)アイオノマーAのペレットをキャストフィルム製造機にて加工温度230℃の条件で成形し、80μmのアイオノマーフィルムを作製した(なお、アイオノマーA、及び後述のアイオノマーB、Cの詳細は後記表の脚注に記載)。
(3)(2)で作製したアイオノマーフィルムに対して電子線照射機を用いて165kV×60Mradの条件で電子線を照射することにより透明性樹脂層を作製した。なお、実施例及び比較例でアイオノマーフィルムに対して電子線照射を行う際は、165kV×10Mradの電子線照射を複数回(実施例1であれば6回)行うことにより行った。
(4)(1)で作製したシート上に、ウレタン系ドライラミネート用接着剤を用いて(3)で作製した透明性樹脂層を接着した。
(5)透明性樹脂層上に電子線硬化型の透明性表面保護層形成用組成物の塗膜(15μm)を形成し、その後に塗膜を硬化させるために165kV×5Mradの条件で電子線を照射して透明性表面保護層を作製した。
(化粧板の作製)
作製した化粧シートの裏面に後述する接着剤を介して3mmMDF(中密度繊維板)を貼着して化粧板を作製した。当該貼着にはウレタン変性エチレン-酢酸ビニル系エマルジョン接着剤(100g/mwet)を利用した。
実施例2~4
上記(3)工程において、電子線照射量を90Mrad(実施例2)、120Mrad(実施例3)、150Mrad(実施例4)に換えた以外は実施例1と同様にして化粧シート及び化粧板を作製した。
実施例5
透明性表面保護層を作製しない以外は実施例1と同様にして化粧シート及び化粧板を作製した。
比較例1~4
上記(3)工程において、電子線照射量を30Mrad(比較例1)、5Mrad(比較例2~4)に換えるとともに、アイオノマーの種類をアイオノマーB(比較例3)、アイオノマーC(比較例4)に換えた以外は実施例1と同様にして化粧シート及び化粧板を作製した。
比較例5
上記(3)工程において、アイオノマーフィルムに電子線を照射せずに上記(5)の透明性表面保護層形成用組成物の塗膜の形成まで行い、その後に当該塗膜側から電子線を照射することにより透明性樹脂層と透明性表面保護層を同時に形成する以外は、実施例1と同様にして化粧シート及び化粧板を作製した。
試験例1
透明性樹脂層の単体に対して目視により色味を評価した。また、化粧板に対してJAS湿熱試験、ホフマンスクラッチ試験及びデュポン衝撃試験を行った。
(透明性樹脂層の単体に対する目視による色味の評価)
目視による評価基準は次の通りとした。
++:問題なし、+:やや黄味がかっている、-:着色が認められる
+以上が合格である。
(JAS湿熱試験)
化粧板を水平に固定した後、化粧板表面に沸騰水を滴下し、その上に0.5Lの沸騰水を入れた1L容量のアルミニウム容器を20分間放置した後、乾燥した布で水分をふき取りそのまま24時間静置した。24時間経過後の外観変化の有無を目視により確認した。
目視による評価基準は次の通りとした。
++:問題なし、+:やや白化している、-:白化し表面にしわが生じている、
+以上が合格である。
(ホフマンスクラッチ試験)
化粧板の耐傷性を、ホフマンスクラッチ試験機(BYK-Gardnar製)を用いて確認した。具体的には、化粧板の表面に対して、45度の角度で接するようにスクラッチ刃(直径7mmの円柱のエッジ部)をセットし、該スクラッチ刃を引っ張るように移動させて表面を擦った。その際、300~1500g荷重の範囲で100gずつスクラッチ刃にかける荷重を変化させて、前記表面に傷が発生する傷付き荷重を確認した。
(デュポン衝撃試験)
化粧板の耐衝撃性を、デュポン衝撃試験機(JIS K5600-5-3に準拠)を用いて評価した。具体的には、10cm、20cm、30cm、40cm、50cmの各高さから規定重量の錘を化粧板表面に落下させて表面に割れが生じるか否かを確認した。10~50cmの各高さでの割れの有無を確認した。
考 察
実施例1~5で作製した透明性樹脂層は、電子線照射量の増加に伴って熱安定性が向上し、TMA寸法変化率及びDMA貯蔵弾性率の値が向上した。しかしながら、実施例4(電子線照射量150Mrad)に関しては目視にてやや黄味がかる結果であった。
比較例1~2で作製した透明性樹脂層は、実施例1~5と同じアイオノマーを使用しているが、電子線照射量が少ないために、TMA寸法変化率及びDMA貯蔵弾性率の値が低くなっている。また、高融点アイオノマーに変更した比較例3、4でも十分なTMA寸法変化率値及びDMA貯蔵弾性率は得られていない。
実施例1~4及び表面保護層なしの実施例5で作製した透明性樹脂層は、十分な耐熱性とホフマンスクラッチ試験、デュポン衝撃試験での高い物性値が得られた。実施例1~5と同じアイオノマーを使用した比較例1、2でもホフマンスクラッチ試験及びデュポン衝撃試験での十分な物性を得られるが、耐熱性が劣るという欠点がある。比較例3~4で作製した透明性樹脂層は、アイオノマーを変更することでイオン凝集部が減少し、ホフマンスクラッチ試験及びデュポン衝撃試験において性能劣化するといった課題がある。
比較例5で作製した透明性樹脂層は、アイオノマーフィルムに電子線を照射せずに透明性表面保護層形成用組成物の塗膜の形成まで行い、その後に当該塗膜側から電子線を照射することにより透明性樹脂層と透明性表面保護層を同時に形成しており、電子線により接着樹脂層が分解して表面凹凸の大きい膨れが発生し、評価が不可能であった。
Figure 0007103117000001
アイオノマーA:エチレン-メタクリル酸共重合体と亜鉛イオンとの組み合わせからなるアイオノマー
Figure 0007103117000002
アイオノマーB:エチレン-メタクリル酸共重合体と亜鉛イオンとの組み合わせからなるアイオノマー
アイオノマーC:エチレン-メタクリル酸共重合体と亜鉛イオンとの組み合わせからなるアイオノマー
※アイオノマーフィルムに電子線を照射せずに透明性表面保護層形成用組成物の塗膜の形成まで行い、その後に当該塗膜側から電子線を照射することにより透明性樹脂層と透明性表面保護層を同時に形成。
1.化粧シート
2.基材シート
3.絵柄模様層
4.透明性接着剤層
5.透明性樹脂層
6.透明性表面保護層
7.裏面プライマー層
8.化粧板基材
9.化粧板

Claims (7)

  1. 化粧シート用の透明性樹脂層であって、
    (1)前記透明性樹脂層は、エチレン-メタクリル酸共重合体と亜鉛イオンとからなるアイオノマーの電子線架橋物により構成されており、
    (2)前記透明性樹脂層は、DSCで測定した融点が74~88℃であり、引張モード90℃の熱機械分析により測定した寸法変化率が5%以下であり、且つ、引張モード100℃の動的粘弾性分析により測定した貯蔵弾性率が2×10~1×10である、
    ことを特徴とする透明性樹脂層。
  2. 引張モード150℃の動的粘弾性分析により測定した貯蔵弾性率が5×10~1×10である、請求項1に記載の透明性樹脂層。
  3. 化粧シート用の透明性樹脂層の製造方法であって、
    (1)エチレン-メタクリル酸共重合体と亜鉛イオンとからなるアイオノマーを製膜することによりフィルムを得る工程であって、前記アイオノマーのDSCで測定した融点が88~94℃である工程1、
    (2)前記フィルムに電子線を照射することにより前記アイオノマーが架橋した透明性樹脂層を得る工程であって、前記透明性樹脂層のDSCで測定した融点が74~88℃であり、引張モード90℃の熱機械分析により測定した寸法変化率が5%以下であり、且つ、引張モード100℃の動的粘弾性分析により測定した貯蔵弾性率が2×10~1×10である工程2、
    を有することを特徴とする透明性樹脂層の製造方法。
  4. 前記電子線の照射量が60Mrad以上150Mrad以下である、請求項3に記載の製造方法。
  5. 請求項1又は2に記載の透明性樹脂層を備えた化粧シート。
  6. 厚さ方向において順に、基材シートと、請求項1又は2に記載の透明性樹脂層とを少なくとも備える積層体から構成される化粧シート。
  7. 厚さ方向において順に、化粧板基材と、請求項5又は6に記載の化粧シートとを備える積層体から構成される化粧板。
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