JP7454858B2 - 作業支援スーツ - Google Patents
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Description
そこで、従来技術において、作業者の負担を軽減することを目的とした様々な作業支援スーツが知られている。
例えば、特開平10-127729号に開示されているコルセットタイプの補助具は、図13(a)に示すように、つぼ等を刺激する突状部材をベルト内側に設けた健康ベルトであり、健康ベルトで腰の胴回り全体を締めて腰を固定するものである。
また、例えば、特開2003-047625号に開示されているコルセットタイプの補助具は、図13(b)に示すように、凸状の腰椎矯正具を腰ベルト本体の中央付近に配したものであり、腰をまっすぐ固定して背骨や腰椎への負担を軽減するものである。
例えば、特開2004-283423号に開示された腰痛プロテクターは、図14(a)に示すように、腰全体を固定するコルセットタイプの取り付けバンド1’の後面から背中全体にかけて弾性体である腰部プロテクト板1なるものを設けたものである。屈んだ姿勢になると腰部プロテクト板1が撓り、屈んだ姿勢から直立する動作を行う際には腰部プロテクト板1の弾性力が付与されて作業者の動きを支援するものとなっている。
また、例えば、特開昭52-137185号に開示された防腰バンドは、図14(b)に示すように、コルセットタイプの胴着の背面に板バネ7を組み込んだものである。屈んだ姿勢になると板バネ7が撓り、屈んだ姿勢から直立する動作を行う際には板バネ7の弾性力が付与されて作業者の動きを支援するものとなっている。
さらに、特開2017-064335号(特許第6671746号)に開示された作業支援スーツは背面および体側面にもバネ部材が仕込まれたものとなっている。
例えば、特開2015-39414号に開示された背筋動作補助装置は、図15に示すように、腰に巻いたサポーターと肩に巻いたサポーターの間をアクチュエータで接続し、そのアクチュエータが電気駆動により機械的にパワーを発揮するものである。作業者が腰を曲げた姿勢から直立する動作を行う際にはアクチュエータが作動して機械的な力を付与し、作業者の動きを支援するものとなっている。近年では、足にも機械的要素を装備し、重量全体も作業者ではなく機械的に支持するものも登場している。
例えば、図16に示す特開2014-23759号に開示された姿勢矯正装具は、左右の腕の付け根に巻き付ける左右の胸ベルトであって、身体への装着状態において、その端部が背中面で交差した後、更に脇近傍及び腹部に巻き付けられ、前記腹部において取り外し自在に接合される左右の胸ベルトと、身体への装着状態において、背中面に巻きつけられた前記胸ベルトが摺動自在に通過する胸ベルト挿入部を備えてなる背当て面部を備えた姿勢矯正装具である。前記左右の胸ベルト端部の接合位置を変更することにより、前記胸ベルトの腕の付け根に巻きつけられた部分を背面側の方向に向かって引っ張って矯正する力が調節可能となっている。
図16に示すように、特開2014-23759号に開示された姿勢矯正装具は、胸ベルト20aという1本の紐体が、そのパーツ部分に応じて、肩巻き付き部20-1a、第1の背中巻き付き部20-2a、第2の背中巻き付き部20-3a、胸ベルト端部23aと呼び分けているが1本の紐体である。先端方向で第1の背中巻き付き部20-2aと第2の背中巻き付き部20-3aで輪を作り、その交差部分にリベット24で留めて先端に輪を形成し、その輪を引く端部が胸ベルト端部23aとなっている。それぞれ右肩用の輪がある胸ベルト20、左肩用の輪がある胸ベルト20を備えた構造となっている。
次に、特許文献6に示したパワーアシストスーツは、機械的に大きな力を発揮できるものであるが、大掛かりな装置であり、農作業や介護現場にて常用できるようなものでなく、また、高価なものであり、低コスト化が求められる農作業や介護現場での使用に向かない。また、装着自体に大変な労力を伴うものであり、高齢者などが装着するには無理がある。
ここで、肩部に掛ける輪に掛ける力は、引張力が輪の接点であるリベット24の“点”のみを中心とするものであり、そのため、その“点”からの距離や引き締め角度によって肩部の輪の各所に掛かる力が決まってしまい、リベット24の“点”の位置や角度によらず胸ベルトが摺動してずれて力をバランスしつつ分散することができない。また、全体として、背中で一度だけクロスしたものとなっており、胸ベルト20という紐体は背当て面部30には一度も固定されず、相対的に移動自在のまま腹部前で結束されており、胸ベルト20という紐体が背当て面部30には固定されず遊離した形で肩周辺を周回させて引き締めて一周させる構造となっている。いわゆる“襷”を用いた“襷掛け”のように紐体のみで肩周辺を周回させて引き回しているだけであった。
作業者の体には微妙な左右差が存在する。この左右差は高さ方向にも存在し、ある意味では本来は立体的なバランスを要するものである。既製品の着衣型補助具では元々左右対称形に製作されているので、作業者の体の微妙な左右差が解消しないまま装着して使用していた。従来技術ではこの問題に対して、作業者の体の左右差に合わせて面ファスナーにより装着用ベルトや帯紐の締結箇所を調整することによって着衣型補助具の装着用ベルトや帯紐の長さや締結の強さを変えたりして対応することが多かった。
しかし、作業者には利き手や利き足があり、繰り返しの作業姿勢を反復するうちに普段は問題にならないような左右差が影響してくることもある。また、作業内容自体が左右対称の動きにならない場合もある。
なお、従来技術において、着衣型補助具の装着用ベルトや帯紐が伸縮性素材で形成されている場合であっても、作業者の体の微妙な左右差に起因する引張力が左右非対称のまま作業者の体に加重され続けるので疲労が蓄積され続けていくこととなる。
特許文献7に示したサポータータイプの装具では、右肩を周回した胸ベルトは左側に下してから腹部前方に出し、左肩を周回した胸ベルトは右側に下してから腹部前方に出すことで、“襷掛け”のように左右一度だけクロスすることでバランスを考慮している点はあるものの、結局、左右の紐体同士を結束して一本につながっているため、まさに、“襷掛け”の構成に過ぎず、両者が引き合って左右に移動するので、左右の微妙なバランス解消の効果は小さい。
また、特許文献7に示したサポータータイプの装具では、胸ベルト20という紐体が背当て面部30には固定されず遊離した形で肩周辺を周回させて一周して両者が一本につながっているので、紐に掛ける引張力は全部作業者がその100%の力で胸ベルト20に付加する必要があり、作業者の掛ける力が小さくて済むという工夫や効果がまったくない。
左側肩帯紐体および右側肩帯紐体はそれぞれ、背面体から外部に出て「肩掛け部」を形成するまでの間に背面体において少なくとも一度両者がクロスするものであり、さらに、背面体の外部で形成されている肩掛け部から胴部体に取り付けられた他端までの間に背面体において少なくとも両者がもう一度クロスする構造となっている。つまり、全体として、少なくとも左右に2回クロスする構造となっている。
つまり、背面体において2回クロスする。
上記構成により、左右のバランスを、上方で一度調整し、下方で再度調整することができ、左右のバランスだけでなく上下のバランスも調整できる。
次に、力学的な工夫として、左側肩帯紐体および右側肩帯紐体がそれぞれその一端が背面体に固定されており、他端が胴部体へ脱着可能に取り付けられたものとなっている。ここで、例えば、背面体に左側取付部と右側取付部が設けられ、それらに対して左側肩帯紐体の一端、右側肩帯紐体の一端がそれぞれ取り付けられる構造、例えば、縫製されて固着されている構造となっている。
つまり、上記構成により、左側肩帯紐体、右側肩帯紐体は、背面体とは遊離した状態ではなく、一端が背面体に取り付けられている。この構成により、力学的には、肩を周回する紐の一端が固定され、他端を引いて力を掛ける構造となり、いわば“動滑車”の原理で、半分の力で肩を引き締めることができる。その点、特許文献7に示したサポータータイプの装具では、胸ベルトが、ぐるりと一周しているだけであり、背面体には固定されておらず、このような力学的効果は得られない。
次に、背面体が、背中に当接する側を内面、その反対側を外面とし、内部空間と、内部空間と外部をつなげる開口を複数備えた構成とすることも好ましい。
例えば、左側取付部および右側取付部が内部下方に設けられ、上方に左側上部開口および右側上部開口が設けられ、前記作業者の脇腹付近に位置する箇所に左側脇腹付近開口および右側脇腹付近開口が設けられ、作業者の腰付近に位置する箇所に左側腰付近開口および右側腰付近開口が設けられた備えた構造とすることができる。
この「背面体」と「胴部体」に対して以下のように「右側肩帯紐体」と「左側肩帯紐体」を取り付ける。
次に、「左側肩帯紐体」は、一端が背面体下方の右側取付部に取り付けられ、背面体の内部を斜めにクロスさせて左側上部開口から引き出されて左側肩掛け部を形成し、左側脇腹付近開口から再び背面体の内部に入り、背面体の内部を斜めにクロスさせて右側腰付近開口から引き出され、胴部体の右側に他端が脱着可能に取り付ける。
上記構成により、他端も胴部体に脱着可能に取り付けられており、つまり、調整可能に胴部体に取り付けられており、「右側肩帯紐体」や「左側肩帯紐体」同士が締結されて一本の紐体となることはない。つまり、特許文献7に示したサポータータイプの装具のように、背面体や胴部体に取り付けられることなく、両者が一本の紐体として直結されてしまえば、背面体や胴部体に対して相対的に周回方向に移動してしまい、安定しない。しかし、本発明の作業支援スーツは、左右の肩帯紐体の一端が背面体に固定され、他端が胴部体に脱着可能に固定されるため、「背面体」、「胴部体」、「右側肩帯紐体」、「左側肩帯紐体」が互いに安定し合う。
なお、上記のように背面体が内部空間を備え、その内部空間に対して「右側肩帯紐体」、「左側肩帯紐体」が出入りする形であるので、上方でのクロス、下方でのクロスという紐体の掛け回しが複雑であっても、作業者が本発明の作業支援スーツの装着と脱衣を繰り返しても、内部の紐体の掛け回しは維持されやすい。一方、特許文献7に示したサポータータイプの装具では、胸ベルト20という紐体が背当て面部30には固定されず遊離した状態なので、作業支援スーツの装着と脱衣を繰り返すうちに胸ベルトのクロスする掛け回しが崩れてしまい、作業者がどのように胸ベルトを装着して良いのか困惑することが多くなる問題がある。しかし、本発明の作業支援スーツでは装着と脱衣を繰り返しても、紐体と胴部体との脱着のみで紐体全体の掛け回しが崩れることはない。
また、これら「左側肩帯紐体」および「右側肩帯紐体」の少なくとも一部は伸縮性部材により形成されていることが好ましい。
例えば、弾性体が、板バネ構造体や、可撓性のあるリング板をそれぞれ偏位させつつ多数個重ねて一方向に並べて接続したもの(リング板構造体)とすることができる。
板バネ構造体としては様々なものが採用することができる。例えば、靭性のある金属の平板でも良く、コイル状のものでも良い。なおコイル状の場合、厚みが出ないようにするため、厚み方向に圧縮したものが良い。また、個々が可撓性のあるリング板であり、それを複数個それぞれ偏位させつつ多数個重ねて一方向に並べて圧着や溶着や接着などの手段で接続したものでも良い。コイル状のバネと同様の強い弾性力が得られる一方、厚み方向が薄く、平板の板バネと変わらない程度の厚みとすることができる。
上記構成に加え、作業者の下腿部に周回させて締める「右側下腿部体」および「左側下腿部体」と、右側下腿部体および左側下腿部体を背面体に締結する「右側締結帯紐体」および「左側締結帯紐体」を備えた構造とする。なお、「右側締結帯紐体」および「左側締結帯紐体」の少なくとも一部が伸縮性部材で形成されていることが好ましい。
このように、下半身の下腿部回り(脛とふくらはぎ回り)に装着した「右側下腿部体」および「左側下腿部体」と、上半身に装着された「背面体」が伸縮性ある「右側締結帯紐体」および「左側締結帯紐体」により締結されているので、膝を曲げずに前方へかがむ姿勢を採った際に腰を後方へ引っ張って支える引張力が生じるため、前方へのかがみ姿勢が楽になる。
上記構成とすれば、いわゆるW字型に伸縮性部材が掛けられ、作業者に微妙な左右差がある場合であっても、左右の「右側連結具」「左側連結具」のいずれからも腰中央にある「中央連結具」を経由するので、左右クロスしている場合と同様左右のバランスが自然と調整される。
同様に、「背面体」の内面側の下部付近に「ポケット」を備え、ポケット内に冷媒または熱媒を装着可能とすることもできる。
作業支援スーツのいわゆる首裏のあたりや腰裏あたりに冷媒や熱媒を入れれば、夏季や冬季において体温を調節しやすくなる。
本発明の作業支援スーツによれば、左側肩帯紐体、右側肩帯紐体は、背面体とは遊離した状態ではなく、一端が背面体に取り付けられている。そのため、肩を引き締める力として他端を引く力は半分の力で済む。
本発明の作業支援スーツは、工場での各種作業、物流の運搬荷役作業、介護、農作業など、腰や背中の曲げ伸ばしを伴う作業の補助を行うことができ、広く役立つものである。
図1は作業者が装着した場合に後ろ側から見た外表面側の図、図2は作業者が装着した場合に背中に当接する側から見た内表面側の図となっている。
図1に示すように、実施例1にかかる作業支援スーツ100は、背面体110、胴部体120、肩帯紐体130を備えた構造となっている。
この例では、背面体110は、本体部分111と、左側取付部112Lおよび右側取付部112Rと、左側上部開口113Lおよび右側上部開口113Rと、左側脇腹付近開口114Lおよび右側脇腹付近開口114Rと、左側腰付近開口115Lおよび右側腰付近開口115Rを備えた構造となっている。
本体部分111の内部における左側取付部112Lおよび右側取付部112Rの配設位置や、左側肩帯紐体130Lおよび右側肩帯紐体130Rとの取り付け位置を調整可能なものとしても良いが、この例では両者とも固定された例となっている。
なお、後述するが、左側肩帯紐体130Lおよび右側肩帯紐体130Rが相互にクロスする関係にあるので、図1に示すように、起点となる左側取付部112Lには右側肩帯紐体130Rの一端が取り付けられ、右側取付部112Rには左側肩帯紐体130Lの一端が取り付けられる。例えば、縫製により固定されていても良い。
上記のように、左側肩帯紐体130Lおよび右側肩帯紐体130Rが相互にクロスする関係にあるので、図1に示すように、本体部分111内でクロスした右側肩帯紐体130Rが左側上部開口113Lから外部に引き出され、左側肩帯紐体130Lが右側上部開口113Rから外部に引き出されるようになっている。
なお、左側肩帯紐体130Lおよび右側肩帯紐体130Rは、作業者の体正面側では左右クロスせずに左右関係がそのまま維持されたままとなるので、図1に示すように、左側肩帯紐体130Lがそのまま左側脇腹付近開口114Lから内部に引き入れられ、右側肩帯紐体130Rがそのまま右側脇腹付近開口114Rから内部に引き入れられるようになっている。なお、その後、左側肩帯紐体130Lおよび右側肩帯紐体130Rが相互に2度目のクロスをする関係にある。
上記のように、左側肩帯紐体130Lおよび右側肩帯紐体130Rが本体部分111の内部で相互に2度目のクロスをする関係にあるので、図1に示すように、本体部分111内でクロスした右側肩帯紐体130Rが左側腰付近開口115Lから外部に引き出され、左側肩帯紐体130Lが右側腰付近開口115Rから外部に引き出されるようになっている。
胴部体120には、左側肩帯紐体130Lおよび右側肩帯紐体130Rの他端を取り付ける箇所がある。ここでは、左胴部体120Lには左側締結部121Lが設けられ、右胴部体120Rには右側締結部121Rが設けられている。
なお、両者の締結は長さの調整がしやすい構造であることが好ましいため、この例では、左側肩帯紐体130Lの他端部分と右側締結部121R、および、右側肩帯紐体130Rの他端部分と左側締結部121Lにはそれぞれ着脱自在なオスとメスの面ファスナーで良い。
肩帯紐体130は、帯紐であって一端が背面体110の本体部分111の内部に固定され、背面体110の本体部分111の内部から引き出され、作業者の腕と肩を通し入れる肩掛け部を形成し、再び本体部分111の内部に引き入れられ、最終的には他端が胴部体120に取り付けられたものである。肩帯紐体130の素材としては丈夫な伸縮性素材が好ましい。
この左側肩帯紐体130Lおよび右側肩帯紐体130Rは、背面体110の本体部分111の内部において2度にわたり左右をクロスするように配設されている点に特徴がある。
まず、左側肩帯紐体130Lの掛け方を追って説明する。
図1に示すように、左側肩帯紐体130Lの起点となる一端が本体部分111の内部の下方の右側取付部112Rに固定され、そこから斜め上にある左側上部開口113Lから外部に引き出される。ここで、背面体110の本体部分111の内部における一度目のクロスのため斜めに引き出されている。
さらに、左側上部開口113Lから外部に引き出された左側肩帯紐体130Lはそのまま下方に向かい、左側脇腹付近開口114Lから背面体110の本体部分111の内部に引き込まれる。ここで左側肩帯紐体130Lは左腕および左肩を通し入れる左肩掛け部が形成される。
次に、左側脇腹付近開口114Lから背面体110の本体部分111の内部に引き込まれた左側肩帯紐体130Lが、右側腰付近開口115Rから外部に引き出される。ここで、背面体110の本体部分111の内部における二度目のクロスのため斜めに引き出されている。
右側腰付近開口115Rから外部に引き出された左側肩帯紐体130Lの他端は、右胴部体120Rにある右側締結部121Rに取り付けられる。
図1に示すように、右側肩帯紐体130Rの起点となる一端が本体部分111の内部の下方の左側取付部112Lに固定され、そこから斜め上にある右側上部開口113Rから外部に引き出される。ここで、背面体110の本体部分111の内部における一度目のクロスのため斜めに引き出されている。
さらに、右側上部開口113Rから外部に引き出された右側肩帯紐体130Rはそのまま下方に向かい、右側脇腹付近開口114Rから背面体110の本体部分111の内部に引き込まれる。ここで右側肩帯紐体130Rは左腕および左肩を通し入れる左肩掛け部が形成される。
次に、右側脇腹付近開口114Rから背面体110の本体部分111の内部に引き込まれた右側肩帯紐体130Rが、左側腰付近開口115Lから外部に引き出される。ここで、背面体110の本体部分111の内部における二度目のクロスのため斜めに引き出されている。
左側腰付近開口115Lから外部に引き出された右側肩帯紐体130Rの他端は、左胴部体120Lにある左側締結部121Lに取り付けられる。
また、左側肩帯紐体130Lおよび右側肩帯紐体130Rが左右2回ずつクロスするが、一つは腰付近から肩付近にかけて大きくクロスし、他の1つは脇腹から腰付近にかけて肋骨下から腰骨までの脊柱付近においてクロスしている。このようにクロスする箇所が上下方向においても適切に分散されているため、上下の負荷のバランスも取りやすく、上半身の屈曲が多い作業と起立姿勢での作業が混在するような状況でも作業中に上半身の動きに伴う負荷バランスが補正できる。
左側肩帯紐体および右側肩帯紐体がそれぞれその一端が背面体に固定されており、他端が胴部体へ脱着可能に取り付けられたものとなっている。この構成により、力学的には、肩を周回する紐の一端が固定され、他端を引いて力を掛ける構造となり、いわば“動滑車”の原理で、半分の力で肩を引き締めることができる。
背面体が、内部空間と開口を複数備えた構成であるので、上方でのクロス、下方でのクロスという紐体の掛け回しが複雑であっても、作業者が本発明の作業支援スーツの装着と脱衣を繰り返しても、内部の紐体の掛け回しは維持されやすくなっている。
実施例2にかかる作業支援スーツ100aは、実施例1の構成に加え、作業者の下半身も連動させるものである。ここでは、背面体110a、胴部体120、肩帯紐体130については実施例1と同様の部分の説明は適宜省略し、異なる部分だけを説明する。
図3および図4は、実施例2にかかる作業支援スーツ100aの構成例を簡単に示す図である。
図3は作業者が装着した場合に後ろ側から見た外表面側の図、図4は作業者が装着した場合に背中に当接する側から見た内表面側の図となっている。
図3および図4に示すように、実施例2の作業支援スーツ100aは、背面体110a、胴部体120、肩帯紐体130に加え、下腿部体140、弾性体150を備えた構造となっている。
下腿部体の本体部分141は作業者の下腿部に周回させて締めることができるように面ファスナー143が設けられている。
この例では、一対の左側下腿部体140Lおよび右側下腿部体140Rがあり、それらには一対の下腿部体の左側本体部分141Lと下腿部体の右側本体部分141R、一対の左側締結帯紐体142Lおよび右側締結帯紐体142Rがある。
ここで、左側締結帯紐体142Lおよび右側締結帯紐体142Rは、少なくとも一部が弾性部材を形成されている。
また、左側締結帯紐体142Lが、左側連結具116L、左側下腿部体141L、中央連結具116CにかけてV字型に設けられたものとなっている。
図3および図4に示す構造とすれば、いわゆるW字型に伸縮性部材が掛けられたこととなり、左右一対のものが中央連結具116Cへの連結が共通している。
このように左右一対に分かれていても共通した連結箇所を設けることにより、作業者に微妙な左右差がある場合であっても、左右クロスしている場合と同様左右のバランスが自然と調整される。
実施例2にかかる作業支援スーツであれば、上半身の屈曲が多い作業と起立姿勢での作業が混在するような状況でも作業中に上半身の動きに伴う負荷バランスを補正しやすい。
実施例3にかかる作業支援スーツ100bは、背面体110の内面において、冷媒又は熱媒を収めることができるポケットを利用するものである。
図5は、実施例3にかかる作業支援スーツ100bの構成例を簡単に示す図である。この図5は作業者が装着した場合に背中に当接する側から見た内表面側の図となっている。
この構成例は、実施例2にかかる作業支援スーツ100aと同様のものにポケットを設けた例となっている。
図5に示すように、実施例3にかかる作業支援スーツ100bは、背面体110、胴部体120、肩帯紐体130、下腿部体140に加え、弾性体150、首裏ポケット160と、腰裏ポケット170を備えたものとなっている。
背面体110、胴部体120、肩帯紐体130、下腿部体140については、実施例1、実施例2に示したものと同様で良く、ここでの説明は省略し、実施例1では示されていない構成について詳しく説明する。
図5に示すように、弾性体150は、背面体110の内部に仕込まれている。例えば、背面体110の内面に鞘が設けられて内部に空洞が設けられており、この鞘の中に弾性体150が仕込めば良い。弾性体150は曲がることにより弾性力が発生する。
図6は、弾性体150の例である。
胴部体120の構造は曲がることにより弾性力が発生するものであれば良いが、例えば、以下の例がある。
弾性体150を用いない従来技術の状態では、作業姿勢として上半身を屈める姿勢を取る際に、作業者自身の体重でそのまま前方に転がらないように無意識に背筋で支えて足で踏ん張ることが必要であった。このため背筋に負担がかかり足腰にも負担が掛かっていた。しかし、弾性体150があれば、作業姿勢として上半身を屈める姿勢を取る動きに伴い、弾性体150がしなって弾性力が発生し、自然と作業者自身が前方に転がらない方向に弾性力が働き、その分、作業時の背筋の負担や足腰の負担が軽減される。
さらに、上半身を戻す復帰動作を行う際にも、上半身を起こす際に弾性体150の弾性力が働くため、その分、身体を起こすための復帰動作が弾性体150によって支援される。
図7として、実施例1にかかる作業支援スーツ100をベースとした物品の形状(正面、右側面図、左側面図、平面図、底面図)を示す図、図8として、実施例1にかかる作業支援スーツ100をベースとした物品の形状(背面)、図9として、実施例1にかかる作業支援スーツ100をベースとした物品の形状において、背面体を透過して内部の右肩帯紐体、左肩帯紐体の様子を示す図を添付する。
また、図10として、実施例2にかかる作業支援スーツ100aをベースとした物品の形状(正面、右側面図、左側面図、平面図、底面図)を示す図、図11として、実施例2にかかる作業支援スーツ100aをベースとした物品の形状(背面)を示す図を添付する。図12として、実施例2にかかる作業支援スーツ100aをベースとした物品の形状において背面体を透過して内部の右肩帯紐体、左肩帯紐体の様子を示す図を添付する。
110 背面体
111 本体部分
112L 左側取付部
112R 右側取付部
113L 左側上部開口
113L 右側上部開口
114L 左側脇腹付近開口
114R 右側脇腹付近開口
115L 左側腰付近開口
115R 右側腰付近開口
116L 左側連結具
116R 右側連結具
116C 中央連結具
120 胴部体
121L 左側締結部
121R 右側締結部
130L 左側肩帯紐体
130R 右側肩帯紐体
140L 左側下腿部体
140R 右側下腿部体
150 弾性体
160 首裏ポケット
170 腰裏ポケット
Claims (9)
- 作業者の背中に当接する側を内面、その反対側を外面とし、内部空間と、前記内部空間と前記外部をつなげる開口を複数備え、前記作業者が装着する背面体と、
前記作業者の胴回りを締める胴部体と、
一端が前記背面体に固定され、他端が前記胴部体へ着脱可能に取り付けられ、前記作業者の腕と肩を通し入れる肩掛け部を形成する左側肩帯紐体および右側肩帯紐体を備え、
前記背面体の前記開口として、前記背面体の上方に設けられた左側上部開口および右側上部開口と、前記作業者の脇腹付近に位置する箇所に設けられた左側脇腹付近開口および右側脇腹付近開口と、前記作業者の腰付近に位置する箇所に設けられた左側腰付近開口および右側腰付近開口が少なくとも設けられており、
前記背面体の前記内部空間の前記左側腰付近開口および前記右側腰付近開口とは異なる下方の位置に左側取付部と右側取付部が設けられており、
前記右側肩帯紐体が、前記一端が前記左側取付部に取り付けられ、前記背面体の内部を斜めにクロスさせて前記右側上部開口から引き出されて前記右側肩掛け部を形成し、前記右側脇腹付近開口から再び前記背面体の内部に入り、前記背面体の内部を斜めにクロスさせて前記左側腰付近開口から引き出され、前記胴部体の左側に前記他端が脱着可能に取り付けられ、
前記左側肩帯紐体が、前記一端が前記右側取付部に取り付けられ、前記背面体の内部を斜めにクロスさせて前記左側上部開口から引き出されて前記左側肩掛け部を形成し、前記左側脇腹付近開口から再び前記背面体の内部に入り、前記背面体の内部を斜めにクロスさせて前記右側腰付近開口から引き出され、前記胴部体の右側に前記他端が脱着可能に取り付けられ、
前記背面体の中で、前記右側肩帯紐体と前記左側肩帯紐体が互いに斜めにクロスする箇所が少なくとも2箇所と、前記右側肩帯紐体において上下方向に引き挙げられる部分と左右方向に引き締められる部分がクロスする箇所と、前記左側肩帯紐体において上下方向に引き挙げられる部分と左右方向に引き締める部分がクロスする箇所が存在することを特徴とする作業支援スーツ。 - 前記左側肩帯紐体および前記右側肩帯紐体の少なくとも一部が伸縮性部材により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の作業支援スーツ。
- 前記背面体の内部に仕込まれた弾性体を備え、前記弾性体の弾性力により前記作業者の動作を支援する請求項1に記載の作業支援スーツ。
- 前記弾性体が、板バネ構造体である請求項3に記載の作業支援スーツ。
- 前記弾性体が、可撓性のあるリング板をそれぞれ偏位させつつ多数個重ねて一方向に並べて接続したものである請求項3に記載の作業支援スーツ。
- 前記作業者の下腿部に周回させて締める右側下腿部体および左側下腿部体と、前記右側下腿部体および前記左側下腿部体を前記背面体に締結する右側締結帯紐体および左側締結帯紐体を備え、前記右側締結帯紐体および前記左側締結帯紐体の少なくとも一部が伸縮性部材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の作業支援スーツ。
- 前記背面体への締結箇所が作業者の腰付近に3か所あり、それぞれが右側連結具、中央連結具、左側連結具であり、
前記右側締結帯紐体が、前記右側連結具、前記右側下腿部体、前記中央連結具にかけてV字型に設けられ、
前記左側締結帯紐体が、前記左側連結具、前記左側下腿部体、前記中央連結具にかけてV字型に設けられたものであることを特徴とする請求項6に記載の作業支援スーツ。 - 前記背面体の前記内面側の上部付近にポケットを備え、前記ポケット内に冷媒または熱媒を装着可能とした請求項1に記載の作業支援スーツ。
- 前記背面体の前記内面側の下部付近にポケットを備え、前記ポケット内に冷媒または熱媒を装着可能とした請求項1に記載の作業支援スーツ。
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