JP7454562B2 - ハンドル角とヨーレートに応じてステアリングホイールの目標速度を算出する戻し関数に基づいて設定トルクを決定する方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電動パワーステアリングシステムの分野に関し、より詳しくは、車両の電動パワーステアリングシステムのステアリングホイールの設定トルクを決定する方法に関する。
車両のステアリングシステムの目的は、運転者が車両の軌道を制御できるようにすることである。この軌道は、車両が時間の経過に伴って占める連続的な位置の集合で表される。車両の軌道は、測定または算出が可能なパラメータの集合で定められる曲線である。前記パラメータは、車両に動きが生じるように加えられている力の状態に応じて変化する。以下、力の状態を車両の動的状態と称する。
車両の車輪の方向角度を変えることにより、運転者は、車両の動的状態のパラメータに影響を与えて車両の軌道を変化させる。特に車輪の方向角度は、以下「ハンドル角」と称するステアリングホイールの角度と連動する。運転者は、以下「操舵トルク」と称するステアリングホイールへの力を用いることによりハンドル角を変化させる。
一般に、ステアリングシステムは、前記ステアリングホイール、ラック、及びタイロッドにそれぞれ接続される2つの車輪を含む複数の構成要素を有する。ラックは、車輪の操作を可能に、言い換えると、タイロッドを介して、車輪の方向角度の変更を可能にする部品である。ラックにより、ハンドル角の変化を車両の車輪の方向として伝達できる。
電動パワーステアリングシステムは、以下で設定トルクと称する、特にステアリングホイールを操作する時に運転者が感知するトルクを決定するコンピュータを有する。
一般に、設定トルクは、複数の関数、好ましくは3つの関数の合計によって決定される。一つの関数により、設定トルクの一部分を決定することができる。
例えば、減衰関数(damping function)により、以下で操舵速度と称するステアリングホイールの回転速度に基づいて、設定トルクの一部分を決定できる。
制御関数(control function)により、ラックに加わる力に基づいて設定トルクの一部分を決定できる。
戻し関数(reversibility function)により、ハンドル角を「中心に」すること、つまり、以下「中心角度」と称する、車両が直進軌道を描くハンドル角に向かうこと、を可能にする設定トルクの一部分を決定できる。言い換えると、戻し関数により、車両が直進軌道を描くようにステアリングホイールを戻すことができる。この関数は、例えば旋回軌道から抜け出すときに特に有効である。この場合、運転者は、ステアリングホイールを保持して曲がってから、ステアリングホイールが「自然に」中心に戻るようにステアリングホイールを離す。
戻し関数を実施するために、まず、ステアリングホイールの目標速度をハンドル角に応じて決定することが知られている。目標速度は、ハンドル角が中心角度から離れているときに大きくなり、ハンドル角が中心角度に近づくと小さくなる。したがって、ステアリングホイールは、最初は素早く中心角度に向かい、その後は中心角度に達するまでゆっくりと戻る。
この目標速度の決定の欠点は、その決定が、車両の動的状態を考慮せず、静的な情報であるハンドル角に基づいていることである。そのため、特定の角度における目標速度は、車両の動的状態や路面の種類に関わらず同一になる。そうすると、目標速度が車両の動的状態に適さず、運転者の運転感覚が不自然になることがある。
最後に、設定トルクが決定されると、コンピュータは制御モータによって操舵トルクを設定トルクに向かってサーボ制御する。制御モータは、操舵トルクが設定値と等しくなるようにモータトルクを作用させる。
機械式の電動パワーステアリングシステムでは、ステアリングホイールとラックの間に、一般にステアリングコラムによって形成される機械的なリンクがある。そして、制御モータは、ラックまたはステアリングコラムにモータトルクを作用させることにより、ステアリングホイールに間接的にモータトルクを作用させる。
「ワイヤ」方式の電動パワーステアリングは、2つの電気機械(motorization)を有する。ハンドル角を計測または算出して、操舵モータがラックを介して車両の車輪の向きを変化させる。そして、制御モータがステアリングホイールに直接にモータトルクを作用させることにより、特に運転者にラックの慣性すなわちラックの重量を意識させる。
本発明は、車両のパワーステアリングシステムのステアリングホイールの設定トルクを決定するための方法を提案することによって、運転者の運転感覚を改善することを目的とする。この方法は、前記設定トルクが、制御モータによりステアリングホイールに直接的または間接的に加えられるモータトルクを決定することを可能にし、前記設定トルクが、少なくともステアリングホイールのハンドル角を車両が直進軌道を描くハンドル角にするための戻し関数によって決定され、前記戻し関数が、ステアリングホイールの目標速度がハンドル角に対応して決定される第1ステップを有し、特徴は、目標速度が車両のヨーレートにも対応することである。
ヨーレートは、垂直軸、すなわち車両が軌道を描く平面に直角の軸の周りでの車両の旋回を表す。
本発明によれば、目標速度が、静的な情報であるハンドル角と動的な情報であるヨーレートに基づいて決定される。したがって、目標速度には、運転者の運転感覚が自然になるような車両の動的状態が考慮される。
言い換えると、同じハンドル角に対して、ハンドル角が中心角に戻る目標速度がヨーレートに応じて速くなったり遅くなったりする。したがって、運転者がステアリングホイールを中心角に戻るように離すと、ステアリングホイールの速度が車両のヨーレートに適応する。
本発明の1つの特徴によれば、第1ステップは、車両のヨーレート、等価ゲイン及び車両の縦速度に基づいてハンドル角相当値を算出する決定フェーズを有する。
車両の縦速度は、前記車両の長手方向軸に沿って形成される車両の軌道の速度に対応する。
より詳細には、ハンドル角相当値は以下の式で算出される。
ここで:Aveq:度(°)で表されるハンドル角相当値、Keq:度(m)で表される等価ゲイン、V:車両のヨーレート(°/s)、V:車両の縦速度(m/s)である。
このように、車両のヨーレートと縦速度からハンドル角相当値が決定される。
本発明の1つの特徴によれば、決定フェーズは、車両の縦速度がゼロであるときに0による除算の実行を回避できるようにする保護を有する。
本発明の1つの特徴によれば、等価ゲインが車両の縦速度で定められる。
車両の縦速度によって等価ゲインを変化させることにより、ハンドル角とハンドル角相当値との整合性を高めることができる。実際に、車両の動的状態は、車両の速度(アンダーステア勾配(understeer gradient)、空力特性など)によって定められる。
例えば、等価ゲインは、以下の関係式により、アンダーステア勾配に応じて定められる。
eq=L+K・V
ただし、L:車両のホイールベース、K:アンダーステア勾配、V:車両の縦速度である。
本発明の1つの特徴によれば、第1ステップは、ハンドル角相当値とハンドル角とから最終ハンドル角を決定する統合フェーズを有する。
したがって、目標速度は、ハンドル角の情報と、ハンドル角相当値を通じたヨーレートの情報を有する最終ハンドル角から決定される。
本発明の1つの特徴によれば、最終ハンドル角が統合ゲイン(fusion gain)によって定められる。
より具体的には、最終ハンドル角は以下の式で算出される。
=G・A+(1-G)・Aveq
ここで、A:最終ハンドル角、G:統合ゲイン、A:ハンドル角、Aveq:ハンドル角相当値である。
上式において、統合ゲインは、ハンドル角とハンドル角相当値をシンメトリカルに(釣り合う状態で)加重する。そうすることにより、最終ハンドル角は信頼できる値を保つ。
また、統合ゲインにより、ハンドル角またはハンドル角相当値からの情報入手を促進できる。
本発明の1つの特徴によれば、統合ゲインは車両の縦速度に応じて変化する。
したがって、車両の動的状態を考慮して統合ゲインを容易に調整できる。
本発明の1つの特徴によれば、統合ゲインが0と1の間で変化する。
統合ゲインは、無次元の値である。
したがって、統合ゲインが1に近いときはハンドル角からの情報が優先され、統合ゲインが0に近いときはハンドル角相当値からの情報が優先される。
本発明の特徴によれば、この決定方法は、目標速度から戻し関数の設定トルクを決定する第2ステップを有する。
戻し関数の設定トルクは、設定トルクに対応するか、または設定トルクが複数の関数によって決定される場合は前記設定トルクの一部分にのみ対応する。
図1は、モータトルクの決定を可能にするアルゴリズムのロジックダイアグラムである。 図2は、本発明に係る設定トルクの決定を可能にする図1に係るロジックダイアグラムの一部である。 図3は、本発明に係る戻し関数の第1のステップのロジックダイアグラムである。
本発明は、添付の概略図を参照して説明される非限定的な例である本発明に係る実施形態に関する以下の説明により、よりよく理解されるであろう。
本発明は、車両、より詳しくは人々の輸送を目的とする自動車のパワーステアリングシステムのステアリングホイールの設定トルクCを決定する方法に関する。
公知の方法では、前記パワーステアリングシステムはステアリングホイールを備え、運転者は、前記ステアリングホイールに「操舵トルク」Cと呼ばれる力を加えることによって前記パワーステアリングシステムを操作することができる。
このパワーステアリングは機械式の電動パワーステアリングである。しかしながら、言うまでもなく、本発明は「ワイヤ操作」方式の電動パワーステアリングシステムにも関する。
したがって、ステアリングホイールは、車両に旋回可能に案内されるステアリングコラムに取り付けるのが好ましく、ステアリングコラムはステアリングピニオンによってステアリングラックに噛み合い、ステアリングラックはそれ自体が前記車両に固定されたステアリングケーシング内で並進可能に案内される。
好ましくは、前記ステアリングラックの端部は、それぞれステアリングホイールのステアリングナックルに連結されるステアリングタイロッドに連結するのが好ましく(左ホイール及び右ホイールのそれぞれ)、ラックの長手方向の並進移動により、操舵された車輪のハンドル角(ヨー角)を変化させることができる。ハンドル角は、少なくとも部分的には、以下ではハンドル角Aと称するステアリングホイールの角度によって決定される。
さらに、操舵輪は駆動輪であることが好ましい。
また、パワーステアリングシステムは、前記パワーステアリングシステムの操作を補助するためのモータトルクCを提供するための制御モータを有する。
制御モータは、動作方向が2方向の電気モータであるのが好ましく、ブラシレスタイプの回転電気モータであるのが好ましい。
制御モータは、ギヤ減速機タイプの減速機を介して、「シングルピニオン」機構と呼ばれる機構を形成するようにステアリングコラム自体に、または「ダブルピニオン」機構と呼ばれる機構を形成するようにステアリングコラムをラックに係合可能にする、ステアリングピニオンとは異なる第2のピニオンによって、ステアリングラックに直接に係合させることができ、あるいは前記ステアリングピニオンから離れた前記ラックの対応する歯と協働するボールネジによって係合させることができる。
図1は、モータトルクCを決定できるアルゴリズムの、簡略化したロジックダイアグラムである。前記モータトルクCは、制御モータによってステアリングホイールに直接的または間接的に加えられる。
より詳しくは、このアルゴリズムは設定トルクCCのTTG展開(TTG development)ステップを有する。TTG展開ステップは、車両の動的状態で定められる複数のパラメータを入力として受ける。これらのパラメータは、車両のコンピュータによって測定または算出される。
設定トルクCは、運転者がステアリングホイールを回すときに感知することが望ましい操舵トルクである。したがって、操舵トルクCが設定トルクCと等しいことが望まれる。設定トルクCは、例えば、運転者によるステアリングホイールの回転を容易にしたり逆に阻止したりできるように決定される。
運転者が設定トルクCを感知するために、TFCサーボ制御ステップ中に操舵トルクCが設定トルクCに向かってサーボ制御される。
TFCサーボ制御ステップ中に、設定トルクCと操舵トルクCが等しくなるように、制御モータからステアリングホイールに直接的または間接的に与えられるモータトルクCが決定される。
このように、制御モータの目的は、運転者がステアリングホイールに加える操舵トルクCを設定トルクCに向かってサーボ制御することである。
設定トルクCの決定を、TTG展開ステップを表す図2に関してより具体的に説明する。
TTG展開ステップは、設定トルクCの第1部分CC1を決定可能にする減衰関数Fを含む。減衰関数Fは、車両の縦速度V、操舵トルクC、ハンドル角A、及びステアリングホイールの回転速度V(以下「ステアリングホイール速度」と称する)を入力として受ける。
TTG展開ステップは、設定トルクCの第2部分CC2を決定できる制御関数Fを含む。制御関数Fは、車両の横加速度相当値Atot及び縦速度Vを入力として受ける。横加速度相当値Atotは、加速度(L・T-2)の次元を有する実質的な値である。横加速度相当値は、ラックに加わる少なくとも1つの力、すなわち車輪に加わる力を代表する力から算出される。
TTG展開ステップは、ハンドル角Aを「中心」、つまり以下「中心角」と称する、車両が直進軌道を描くハンドル角Aにすることができる設定トルクCの第3部分CC3を決定できる戻し関数Fを含む。戻し関数Fは、車両の縦速度V、操舵トルクC、ハンドル角A、ステアリングホイール速度V、及び車両のヨーレートVを入力として受ける。
戻し関数Fは、図3に示される第1ステップE1を有し、ステアリングホイールの目標速度Vが決定される。
より具体的には、第1ステップE1は、ハンドル角相当値Aveqを以下の式により算出する決定フェーズP1を有する。
ここで:Aveq:度(°)で表されるハンドル角相当値、Keq:度(m)で表される等価ゲイン、V:車両のヨーレート(°/s)、V:車両の縦速度(m/s)、P:保護値である。
等価ゲインKeqは、車両の縦速度Vに応じて定められる。
さらに、縦速度Vが0のときに0による除算を実行しないため、上式は保護値Pと縦速度Vの間で選択される最大値で除算される。なお、保護値Pは0に近い定数である。
次に、第1ステップE1は、最終ハンドル角Aが以下の式によって決定される統合フェーズP2を有する。
=G・A+(1-G)Aveq
ここで、A:最終ハンドル角、G:統合ゲイン、A:ハンドル角、Aveq:ハンドル角相当値である。
統合ゲインGは、車両の縦速度Vによって定められる。
最後に、算出フェーズP3において、最終ハンドル角Aと縦速度Vから目標速度Vが決定される。
戻し関数Fは、目標速度Vから設定トルクCの第3部分CC3が当業者に知られている方法で決定される第2ステップを有する。
TTG展開ステップは、設定トルクCが得られるように、第1部分CC1、第2部分CC2、及び第3部分CC3を加算する。
言うまでもなく、本発明は、明細書で説明され、添付の図に表された実施形態に限定されるものではない。特に種々の要素の構成の観点から、または技術的な均等物の置換により、本発明の保護範囲を逸脱することなく変更することが可能である。

Claims (7)

  1. 車両のパワーステアリングシステムのステアリングホイールの設定トルク(C)を決定する決定方法において、前記設定トルク(C)が、制御モータによりステアリングホイールに直接的または間接的に加えられるモータトルク(C)を決定することを可能にし、前記設定トルク(C)が、少なくともステアリングホイールのハンドル角(A)を車両が直進軌道を描くハンドル角(A)にするための戻し関数(F)によって決定され、前記戻し関数(F)が、ステアリングホイールの目標速度(V)がハンドル角(A)に対応して決定される第1ステップ(E1)を有し、
    特徴は、目標速度(V)が車両のヨーレート(V)にも対応することであり、
    第1ステップ(E1)が、車両のヨーレート(V )、等価ゲイン(K eq )及び車両の縦速度(V )に応じてハンドル角相当値(A veq )を算出する決定フェーズ(P1)を有する決定方法。
  2. 請求項決定方法において、
    等価ゲイン(Keq)が車両の縦速度(V)で定められる決定方法。
  3. 請求項1または2の決定方法において、
    前記第1ステップ(E1)が、ハンドル角相当値(Aveq)とハンドル角(A)とから最終ハンドル角(A)を決定する統合フェーズ(P2)を有する決定方法。
  4. 請求項の決定方法において、
    最終ハンドル角(A)は、統合ゲイン(G)によって定められる決定方法。
  5. 請求項の決定方法において、
    統合ゲイン(G)が車両の縦速度(V)に応じて変化する決定方法。
  6. 請求項の決定方法において、
    統合ゲイン(G)が0と1の間で変化する決定方法。
  7. 請求項1から6の何れか1つの決定方法において、
    目標速度(V)から前記戻し関数(F)の前記設定トルク(CC3)を決定する第2ステップを有する決定方法。
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