JP7108961B2 - 操舵装置 - Google Patents

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Description

この発明は、運転者によってハンドルに加えられるドライバトルクを推定することが可能な操舵装置に関する。
下記特許文献1には、トーションバーのねじれを検出する操舵トルクセンサと、コラムシャフトの回転角(操舵角)を検出する操舵角センサと、操舵トルクセンサによって得られる操舵トルク検出値および操舵角センサによって得られる操舵角検出値に基づいてハンドル端トルク(ドライバトルク)を演算するトルク生成部とを含むステアリングシステムが開示されている。
特開2006-151360号公報
この発明の目的は、高精度にドライバトルクを推定できる操舵装置を提供することである。
本発明の一実施形態は、車両を操舵するためのハンドル(2)が連結された第1軸(8)と、前記第1軸にトーションバー(10)を介して連結された第2軸(9)と、前記トーションバーに加えられているトーションバートルクを検出するためのトルク検出手段(11)と、運転者によって前記ハンドルに加えられるドライバトルクを推定するドライバトルク推定手段(51)とを含み、前記ドライバトルク推定手段は、前記ハンドルの回転角を演算するハンドル回転角演算手段(63,64)と、前記トーションバートルクと、前記ハンドル回転角の2階微分値とハンドル慣性モーメントとの積であるハンドル慣性トルク補償値と、前記ハンドルの重心に作用する重力によって前記第1軸に与えられる重力トルクの補償値とを加算した加算値を含む値を、ドライバトルクとして演算するドライバトルク演算手段(65~67,71,72,76)とを含む、操舵装置を提供する。
この構成では、トーションバートルクおよびハンドル慣性トルクの他に、ハンドルの重心に作用する重力によって第1軸に与えられる重力トルクを考慮して、ドライバトルクが演算されるため、高精度にドライバトルクを推定できる。
本発明の一実施形態では、前記第2軸の回転角を検出するための回転角検出手段(23,61,62)をさらに含み、前記ハンドル回転角演算手段は、前記第2軸の回転角および前記トーションバートルクを用いて前記ハンドルの回転角を演算するように構成されている。
本発明の一実施形態では、前記ドライバトルク演算手段は、前記加算値に、前記第1軸および前記ハンドルに作用する粘性摩擦トルクの補償値を加算して前記ドライバトルクを演算するように構成されており、粘性摩擦トルクの補償値は、前記ハンドル回転角の1階微分値と所定の粘性摩擦トルク係数との積である。
この構成では、第1軸およびハンドルに作用する粘性摩擦トルクをも考慮して、ドライバトルクが演算されるため、より高精度にドライバトルクを推定できる。
本発明の一実施形態では、前記ドライバトルク演算手段は、前記加算値に、前記第1軸および前記ハンドルに作用するクーロン摩擦トルクの補償値を加算して前記ドライバトルクを演算するように構成されており、前記クーロン摩擦トルクの補償値は、所定のクーロン摩擦トルク変化勾配と前記ハンドル回転角の1階微分値との積の双曲線正接値と、所定のクーロン摩擦トルク係数との積である。
この構成では、前記第1軸および前記ハンドルに作用するクーロン摩擦トルクをも考慮して、ドライバトルクが演算されるため、より高精度にドライバトルクを推定できる。
本発明の一実施形態では、前記ハンドルが車両に搭載された状態で、前記ハンドルの回転中心位置を通る鉛直線が前記ハンドルの回転平面となす角をハンドル傾き角とし、前記ハンドル回転角は、車両の向きが直進方向となるハンドル位置を中立位置として、中立位置からの回転量および回転方向に応じた角度であり、前記重力トルクの補償値は、前記ハンドルの重心位置と回転中心位置との間の距離と、前記ハンドルの質量と、前記ハンドル回転角の正弦値と、前記ハンドル傾き角の余弦値との積である。
本発明の一実施形態では、前記ハンドルの重心に作用する車両横方向の加速度を演算する手段をさらに含み、前記ドライバトルク演算手段は、前記加算値に、前記ハンドルの重心に作用する車両横方向の加速度によって前記第1軸に与えられる横加速度トルクの補償値を加算して前記ドライバトルクを演算するように構成されている。
この構成では、ハンドルの重心に作用する車両横方向の加速度によって第1軸に与えられる横加速度トルクをも考慮して、ドライバトルクが演算されるため、より高精度にドライバトルクを推定できる。
本発明の一実施形態では、前記横加速度トルクの補償値は、前記ハンドルの重心位置と回転中心位置との間の距離と、前記ハンドルの質量と、前記ハンドルの重心に作用する車両横方向の加速度と、前記ハンドル回転角の余弦値との積である。
本発明の一実施形態では、前記ドライバトルク推定手段によって推定されたドライバトルクに基づいて、ハンズオン状態であるかハンズオフ状態であるかを判定するハンズオン/オフ判定手段をさらに含む。
本発明の一実施形態では、舵角制御用の電動モータ(18)と、手動操舵指令値を生成する手動操舵指令値生成部(141)と、自動操舵指令値に前記手動操舵指令値を加算して、統合角度指令値を演算する統合角度指令値演算部(142)と、前記統合角度指令値に基づいて、前記電動モータを角度制御する制御部(143)とを含み、前記手動操舵指令値生成部は、前記ドライバトルク推定手段(51)によって推定されたドライバトルクを用いて、前記手動操舵指令値を生成するように構成されている。
この構成では、自動操舵指令値に手動操舵指令値が加算されて、統合角度指令値が演算され、この統合角度指令値に基づいて電動モータが制御される。これにより、手動操舵制御と自動操舵制御との間で切り替えを行うことなく、自動操舵制御主体での操舵制御を行いながら手動操舵が可能な協調制御を実現できる。これにより、手動操舵制御と自動操舵制御との間での移行をシームレスに行うことができるので、運転者の違和感を低減することができる。
また、この構成では、運転者がハンドルを操作していない可能性が高い場合に、ドライバトルク以外の外乱に基づいて、手動操舵指令値が設定されるのを抑制することができる。
本発明の一実施形態では、前記手動操舵指令値生成部は、前記ドライバトルク推定手段によって推定されたドライバトルクに基づいて、アシストトルク指令値を設定するアシストトルク指令値設定部(151)を含み、前記手動操舵指令値生成部は、前記ドライバトルクと前記アシストトルク指令値とを用いて、前記手動操舵指令値を生成するように構成されている。
本発明の一実施形態では、舵角制御用の電動モータ(18)と、手動操舵指令値を生成する手動操舵指令値生成部(141A)と、自動操舵指令値に前記手動操舵指令値を加算して、統合角度指令値を演算する統合角度指令値演算部(142)と、前記統合角度指令値に基づいて、前記電動モータを角度制御する制御部(143)とを含み、前記手動操舵指令値生成部は、前記ドライバトルク推定手段(51)によって推定されたドライバトルクの絶対値が所定値以上の場合にのみ、前記トルク検出手段によって検出されるトーションバートルクを用いて、前記手動操舵指令値を生成するように構成されている。
この構成では、手動操舵制御と自動操舵制御との間で切り替えを行うことなく、自動操舵制御主体での操舵制御を行いながら手動操舵が可能な協調制御を実現できる。これにより、手動操舵制御と自動操舵制御との間での移行をシームレスに行うことができるので、運転者の違和感を低減することができる。
また、この構成では、運転者がハンドルを操作していない場合に、ドライバトルク以外の外乱に基づいて、手動操舵指令値が設定されるのを抑制することができる。
本発明の一実施形態では、前記手動操舵指令値生成部は、前記トルク検出手段によって検出されるトーションバートルクに基づいて、アシストトルク指令値を設定するアシストトルク指令値設定部(151)を含み、前記手動操舵指令値生成部は、前記ドライバトルク推定手段によって推定されたドライバトルクの絶対値が所定値以上の場合にのみ、前記トーションバートルクと前記アシストトルク指令値とを用いて、前記手動操舵指令値を生成するように構成されている。
本発明の一実施形態では、舵角制御用の電動モータ(18)と、手動操舵指令値を生成する手動操舵指令値生成部(141B)と、自動操舵指令値に前記手動操舵指令値を加算して、統合角度指令値を演算する統合角度指令値演算部(142)と、前記統合角度指令値に基づいて、前記電動モータを角度制御する制御部(143)とを含み、前記手動操舵指令値生成部は、前記ハンズオン/オフ判定手段(42)によってハンズオン状態であると判定されている場合にのみ、前記トルク検出手段によって検出されるトーションバートルクを用いて、前記手動操舵指令値を生成するように構成されている。
この構成では、手動操舵制御と自動操舵制御との間で切り替えを行うことなく、自動操舵制御主体での操舵制御を行いながら手動操舵が可能な協調制御を実現できる。これにより、手動操舵制御と自動操舵制御との間での移行をシームレスに行うことができるので、運転者の違和感を低減することができる。
また、この構成では、運転者がハンドルを操作していない場合に、ドライバトルク以外の外乱に基づいて、手動操舵指令値が設定されるのを抑制することができる。
本発明の一実施形態では、前記手動操舵指令値生成部は、前記トルク検出手段によって検出されるトーションバートルクに基づいて、アシストトルク指令値を設定するアシストトルク指令値設定部(151)を含み、前記手動操舵指令値生成部は、前記ハンズオン/オフ判定手段によってハンズオン状態であると判定されている場合にのみ、前記トーションバートルクと前記アシストトルク指令値とを用いて、前記手動操舵指令値を生成するように構成されている。
本発明の第1実施形態に係る操舵装置が適用された電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。 ECUの電気的構成を示すブロック図である。 ハンドル操作状態判定部の電気的構成を示すブロック図である。 ハンドル角速度dθsw/dtと粘性摩擦トルク補償値Tとの関係の一例を示すグラフである。 ハンドルの重心位置と第1軸の中心軸線とを示す図解的な正面図である。 図5Aの図解的な側面図である。 ハンドル角度推定値θswと重力トルク補償値Tとの関係の一例を示すグラフである。 ハンドル角度推定値θswと横加速度トルク補償値Tlatとの関係の一例を示すグラフである。 ハンドル角速度dθsw/dtとクーロン摩擦トルク補償値Tとの関係の一例を示すグラフである。 ハンドル角速度dθsw/dtとクーロン摩擦トルク補償値Tとの関係の他の例を示すグラフである。 ドライバトルク推定部の構成を示すブロック図である。 ハンズオン/オフ判定部の動作を説明するための状態遷移図である。 本発明の第2実施形態に係るモータ制御装置が適用された電動パワーステアリングシステムの概略構成を示す模式図である。 モータ制御用ECUの電気的構成を説明するためのブロック図である。 図13の手動操舵指令値生成部の構成を示すブロック図である。 ドライバトルクTに対するアシストトルク指令値Tacの設定例を示すグラフである。 指令値設定部で用いられるリファレンスEPSモデルの一例を示す模式図である。 手動操舵指令値生成部の変形例を示すブロック図である。 モータ制御用ECUの変形例を示すブロック図である。 図18の手動操舵指令値生成部の構成を示すブロック図である。
図1は、本発明の第1実施形態に係る操舵装置が適用された電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。
この電動パワーステアリング装置(車両用操舵装置)1は、コラム部に電動モータと減速機とが配置されているコラムアシスト式電動パワーステアリング装置(以下、「コラム式EPS」という)である。
コラム式EPS1は、車両を操向するための操舵部材としてのステアリングホイール(以下、「ハンドル」という)2と、このハンドル2の回転に連動して転舵輪3を転舵する転舵機構4と、運転者の操舵を補助するための操舵補助機構5とを備えている。ハンドル2と転舵機構4とは、ステアリングシャフト6、第1ユニバーサルジョイント28、中間軸7および第2ユニバーサルジョイント29を介して機械的に連結されている。
ステアリングシャフト6は、ハンドル2に連結された第1軸8と、第1ユニバーサルジョイント28を介して中間軸7に連結された第2軸9とを含む。第1軸8と第2軸9とは、トーションバー10を介して相対回転可能に連結されている。
ステアリングシャフト6の周囲には、トルクセンサ11が設けられている。トルクセンサ11は、第1軸8および第2軸9の相対回転変位量に基づいて、トーションバー10に加えられているトーションバートルクTtbを検出する。トルクセンサ11によって検出されるトーションバートルクTtbは、ECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit)12に入力される。
転舵機構4は、ピニオン軸13と、転舵軸としてのラック軸14とを含むラックアンドピニオン機構からなる。ラック軸14の各端部には、タイロッド15およびナックルアーム(図示略)を介して転舵輪3が連結されている。ピニオン軸13は、第2ユニバーサルジョイント29を介して中間軸7に連結されている。ピニオン軸13の先端には、ピニオン16が連結されている。
ラック軸14は、車両の左右方向に沿って直線状に延びている。ラック軸14の軸方向の中間部には、ピニオン16に噛み合うラック17が形成されている。このピニオン16およびラック17によって、ピニオン軸13の回転がラック軸14の軸方向移動に変換される。ラック軸14を軸方向に移動させることによって、転舵輪3を転舵することができる。
ハンドル2が操舵(回転)されると、この回転が、ステアリングシャフト6および中間軸7を介して、ピニオン軸13に伝達される。そして、ピニオン軸13の回転は、ピニオン16およびラック17によって、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。
操舵補助機構5は、操舵補助力を発生するための電動モータ18と、電動モータ18の出力トルクを増幅して転舵機構4に伝達するための減速機19とを含む。この実施形態では、電動モータ18は、三相ブラシレスモータである。減速機19は、ウォームギヤ20と、このウォームギヤ20と噛み合うウォームホイール21とを含むウォームギヤ機構からなる。減速機19は、ギヤハウジング22内に収容されている。以下において、減速機19の減速比(ギヤ比)をrwgで表す場合がある。減速比rwgは、ウォームホイール21の角速度ωwwに対するウォームギヤ20の角速度ωwgの比ωwg/ωwwとして定義される。
ウォームギヤ20は、電動モータ18によって回転駆動される。ウォームホイール21は、第2軸9に一体回転可能に連結されている。ウォームホイール21は、ウォームギヤ20によって回転駆動される。
電動モータ18は運転者の操舵状態に応じて駆動され、電動モータ18によってウォームギヤ20が回転駆動される。これにより、ウォームホイール21が回転駆動され、ステアリングシャフト6にモータトルクが付与されるとともにステアリングシャフト6(第2軸9)が回転する。そして、ステアリングシャフト6の回転は、中間軸7を介してピニオン軸13に伝達される。ピニオン軸13の回転は、ラック軸14の軸方向移動に変換される。これにより、転舵輪3が転舵される。すなわち、電動モータ18によってウォームギヤ20を回転駆動することによって、電動モータ18による操舵補助が可能となっている。
電動モータ18のロータの回転角(以下、「ロータ回転角」という)は、レゾルバ等の回転角センサ23によって検出される。また、車速Vは車速センサ24によって検出される。また、車体加速度(車両加速度)aは、車体加速度センサ25によって検出される。また、車体回転角速度(車両回転角速度)ωは、ヨーレートセンサ26によって検出される。回転角センサ23の出力信号、車速センサ24によって検出される車速V、車体加速度センサ25によって検出される車体加速度aおよびヨーレートセンサ26によって検出される車体回転角速度ωは、ECU12に入力される。電動モータ18は、ECU12によって制御される。
図2は、ECU12の電気的構成を示す概略図である。
ECU12は、マイクロコンピュータ40と、マイクロコンピュータ40によって制御され、電動モータ18に電力を供給する駆動回路(3相インバータ回路)31と、電動モータ18に流れる電流(以下、「モータ電流」という)を検出するための電流検出部32とを備えている。
マイクロコンピュータ40は、CPUおよびメモリ(ROM、RAM、不揮発性メモリなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、モータ制御部41と、ハンドル操作状態判定部42とが含まれる。
モータ制御部41は、車速センサ24によって検出される車速V、トルクセンサ11によって検出されるトーションバートルクTtb、回転角センサ23の出力に基づいて演算されるロータ回転角および電流検出部32によって検出されるモータ電流に基づいて、駆動回路31を駆動制御することによって、操舵状況に応じた適切な操舵補助を実現する。
具体的には、モータ制御部41は、トーションバートルクTtbおよび車速Vに基づいて、電動モータ18に流れるモータ電流の目標値である電流指令値を設定する。電流指令値は、操舵状況に応じた操舵補助力(アシストトルク)の目標値に対応している。そして、モータ制御部41は、電流検出部32によって検出されるモータ電流が電流指令値に近づくように、駆動回路31を駆動制御する。
ハンドル操作状態判定部42は、トルクセンサ11によって検出されるトーションバートルクTtb、回転角センサ23の出力に基づいて演算されるロータ回転角、車体加速度センサ25によって検出される車体加速度aおよびヨーレートセンサ26によって検出される車体回転角速度ωに基づいて、運転者がハンドルを握っているハンズオン状態であるか運転者がハンドルを握っていないハンズオフ状態(手放し状態)であるかを判定する。
図3は、ハンドル操作状態判定部42の電気的構成を示すブロック図である。
ハンドル操作状態判定部42は、ドライバトルク推定部51と、ローパスフィルタ52と、ハンズオン/オフ判定部53とを含む。ドライバトルク推定部51は、回転角センサ23の出力信号と、トルクセンサ11によって検出されるトーションバートルクTtbと、車体加速度センサ25によって検出される車体加速度aと、ヨーレートセンサ26によって検出される車体回転角速度ωとに基づいて、ドライバトルクTを推定する。
ローパスフィルタ52は、ドライバトルク推定部51によって推定されたドライバトルクTに対してローパスフィルタ処理を行う。ハンズオン/オフ判定部53は、ローパスフィルタ52によるローパスフィルタ処理後のドライバトルクT’に基づいて、ハンズオン状態かハンズオフ状態かを判定する。以下、これらについて説明する。
ドライバトルク推定部51は、この実施形態では、次式(1)に基づいて、ドライバトルクTを演算する。
=Jsw・dθsw/dt+Ttb+T+T+Tlat+T …(1)
sw:ハンドル慣性モーメント
θsw:ハンドル角度推定値(ハンドル回転角)
θsw/dt:ハンドル角加速度(ハンドル角度推定値の2階微分値)
sw・dθsw/dt:ハンドル慣性トルク補償値{=-(ハンドル慣性トルク推定値)}
tb:トーションバートルク(この実施形態では、トルクセンサ11によって検出されるトーションバートルク)
:粘性摩擦トルク補償値{=-(粘性摩擦トルク推定値)}
:重力トルク補償値{=-(重力トルク推定値)}
Tlat:横加速度トルク補償値{=-(横加速度トルク推定値)}
:クーロン摩擦トルク補償値{=-(クーロン摩擦トルク推定値)}
トーションバートルクTtbおよびドライバトルクTの符号は、この実施形態では、左操舵方向のトルクの場合には正となり、右操舵方向のトルクの場合には負となるものとする。ハンドル角度推定値θswは、ハンドルの中立位置からの正逆回転量を表し、この実施形態では、中立位置から左方向への回転量が正の値となり、中立位置から右方向への回転量が負の値となるものとする。
ハンドル慣性トルク推定値(-Jsw・dθsw/dt)、粘性摩擦トルク推定値(-T)およびクーロン摩擦トルク推定値(-T)は、ドライバトルクTの方向とは反対方向に作用する。このため、粘性摩擦トルク推定値(-T)およびクーロン摩擦トルク推定値(-T)の符号は、ドライバトルクTの符号とは反対となる。したがって、ハンドル慣性トルク補償値Jsw・dθsw/dt、粘性摩擦トルク補償値Tおよびクーロン摩擦トルク補償値Tの符号は、ドライバトルクTの符号と同じとなる。
重力トルク推定値(-T)および横加速度トルク推定値(-Tlat)の符号は、ハンドル角度推定値θswによって、ドライバトルクTの方向と同じになる場合と反対になる場合とがある。したがって、重力トルク補償値Tおよび横加速度トルク補償値Tlatの符号は、ハンドル角度推定値θswによって、ドライバトルクTの方向と同じになる場合と反対になる場合とがある。
[ハンドル角度推定値θswの演算方法]
ハンドル角度推定値θswは、車両(車体)の向きが直進方向となるハンドル位置を中立位置として、中立位置からの回転量および回転方向に応じた角度を表す。この実施形態では、ハンドル角度推定値θswは、中立位置から反時計方向の回転量を表す場合には正の値となり、中立位置から時計方向の回転量を表す場合には負の値となる。
ハンドル角度推定値θswは、次式(2)によって表される。
θsw=(Ttb/ktb)+θww …(2)
tb:トーションバー10の剛性
θww:第2軸9の回転角度(第2軸回転角)
第2軸回転角θwwは、次式(3.1)に基づいて演算される。
θww=(θ/rwg)+(T/kgear) …(3.1)
θ:電動モータ18の回転角(この実施形態では、回転角センサ23によって検出されるロータ回転角)
:モータトルク推定値
gear:ウォームギヤとウォームホイール間の剛性
モータトルク推定値Tは、例えば、電流検出部32(図2参照)によって検出されるモータ電流に電動モータ18のトルク定数を乗算することによって演算することができる。
第2軸回転角θwwは、次式(3.2)に基づいて演算されてもよい。
θww=θ/rwg …(3.2)
式(3.1)からわかるように、kgearが大きい場合には(T/kgear)の値は小さな値となるが、kgearが小さい場合には(T/kgear)の値は大きな値となる。したがって、kgearが大きい場合には、式(3.2)に基づいて第2軸回転角θwwを演算してもよいが、kgearが小さい場合には、式(3.1)に基づいて第2軸回転角θwwを演算することが好ましい。
[粘性摩擦トルク補償値Tの演算方法]
粘性摩擦トルク推定値(-T)は、第1軸8およびハンドル2に作用する粘性摩擦トルクの推定値である。粘性摩擦トルクは、第1軸8を支持する軸受やハンドル2に接続されるスパイラルケーブル等の摺動に起因して発生する。
粘性摩擦トルク推定値(-T)は、次式(4-1)に基づいて演算される。
-T=-G・dθsw/dt …(4-1)
:粘性摩擦トルク係数
dθsw/dt:ハンドル角速度(θswの1階微分値)
したがって、粘性摩擦トルク補償値Tは、次式(4-2)に基づいて演算される。
=G・dθsw/dt …(4-2)
粘性摩擦トルク係数Gは、次のようにして求めることができる。手放し状態で、電動モータ18を駆動し、ハンドル角速度dθsw/dtをパラメータとして定常状態におけるトーションバートルクTtbを測定する。定常状態とは、ハンドル2に回転角加速度が発生していない状態、つまり、ハンドル角加速度dθsw/dtが0である状態をいう。そして、ハンドル角速度dθsw/dtに対するトーションバートルクTtbの変化率(勾配)を粘性摩擦トルク係数Gとして求める。この際、ハンドル角速度dθsw/dtとトーションバートルクTtbとの関係が線形でない場合には、それらの関係を任意の多項式にて近似してもよい。
ハンドル角速度dθsw/dtと粘性摩擦トルク補償値Tとの関係の一例を図4に示す。粘性摩擦トルク補償値Tの絶対値は、ハンドル角速度dθsw/dtの絶対値が大きくなるほど大きくなる。
[重力トルク補償値Tの演算方法]
重力トルク推定値(-T)について説明する。図5Aに示すように、ハンドル2の回転平面における重心位置Gと、回転中心C(ハンドル2の回転平面と第1軸8の中心軸線との交点)とは一致しない。ハンドル2の回転平面における重心位置Gと回転中心位置Cとの間の距離をオフセット距離dcgということにする。また、ハンドル2の質量をmとし、重力加速度をgcgとする。さらに、図5Bに示すように、ハンドル2が車両に搭載された状態で、ハンドル2の回転中心位置Cを通る鉛直線がハンドル2の回転平面となす角をハンドル傾き角δとする。
重力トルク推定値(-T)は、ハンドル2の重心Gに作用する重力m・gcgによって第1軸8に与えられるトルクの推定値である。具体的には、重力トルク推定値(-T)は、次式(5-1)に基づいて演算される。
-T=-Ggr・sin(θsw) …(5-1)
grは、重力トルク係数であり、ハンドル2の質量mと重力加速度gcgとオフセット距離dcgとハンドル傾き角δの余弦値cos(δ)との積m・gcg・dcg・cos(δ)に応じた値である。sin(θsw)は、ハンドル角度推定値θswの正弦値である。
したがって、重力トルク補償値Tは、次式(5-2)に基づいて演算される。
=Ggr・sin(θsw) …(5-2)
オフセット距離dcg、ハンドル2の質量mおよびハンドル傾き角δがわかっている場合には、重力トルク係数Ggrは、Ggr=m・dcg・gcg・cos(δ)の式から求めることができる。
重力トルク係数Ggrは、次のようにして求めることもできる。すなわち、手放し状態でハンドル角度推定値θswをパラメータとして定常状態におけるトーションバートルクTtbを測定する。ハンドル角度推定値θswが90度のときのトーションバートルクTtbの絶対値を、重力トルク係数Ggrとして求める。
ハンドル角度推定値θswと重力トルク補償値Tとの関係の一例を図6に示す。ハンドル2の重心に作用する重力m・gcgは、鉛直方向の力であるため、重力トルク補償値Tの絶対値は、ハンドル角度推定値θswが±90[deg]のときと、±270[deg]のときとに最大となる。
[横加速度トルク補償値Tlatの演算方法]
横加速度トルク推定値(-Tlat)は、ハンドル2の重心Gに作用する車体横方向の加速度alat(より詳しくは、車体横方向の加速度alatとハンドル重量mとの積m・alat(図5A参照))によって、第1軸8に与えられるトルクの推定値である。具体的には、横加速度トルク推定値(-Tlat)は、次式(6-1)に基づいて演算される。
-Tlat=-Glat・cos(θsw) …(6-1)
latは、横加速度トルク係数であり、ハンドル2の質量mと、ハンドル2の重心Gに作用する車体横方向の加速度alatと、オフセット距離dcgとの積m・alat・dcgに応じた値である。cos(θsw)は、ハンドル角度推定値θswの余弦値である。
したがって、横加速度トルク補償値Tlatは、次式(6-2)に基づいて演算される。
lat=Glat・cos(θsw) …(6-2)
横加速度トルク係数Glatは、例えば、次のようにして求められる。すなわち、車体加速度センサ25によって計測される車体加速度の車体横方向成分をalat1として求める。ヨーレートセンサ26によって計測される車体回転角速度ωの2乗とオフセット距離dcgとの積である遠心加速度の車体横方向成分をalat2として求める。車体加速度の車体横方向成分alat1と、遠心加速度の車体横方向成分alat2との和(alat1+alat2)を、ハンドル2の重心Gに作用する車体横方向の加速度alatとして求める。そして、Glat=m・alat・dcgの式から、横加速度トルク係数Glatを求める。横加速度トルク係数Glatは、車両の走行状態に応じて変化する。
ハンドル角度推定値θswと横加速度トルク補償値Tlatとの関係の一例を図7に示す。ハンドル2の重心Gに作用する車体横方向の加速度alatは、横方向の力であるため、横加速度トルク補償値Tlatの絶対値は、ハンドル角度推定値θswが0[deg]のときと180[deg]の時に最大となる。
[クーロン摩擦トルク補償値Tの演算方法]
クーロン摩擦トルク推定値(-T)は、第1軸8およびハンドル2に作用するクーロン摩擦トルクの推定値である。クーロン摩擦トルクは、第1軸8を支持する軸受やハンドル2に接続されるスパイラルケーブル等で発生する。
クーロン摩擦トルク推定値(-T)は、次式(7-1)に基づいて演算される。
(-T)=-G・tanh(η・dθsw/dt) …(7-1)
:クーロン摩擦トルク係数
η:クーロン摩擦トルク変化勾配
したがって、クーロン摩擦トルク補償値Tは、次式(7-2)に基づいて演算される。
=G・tanh(η・dθsw/dt) …(7-2)
クーロン摩擦トルク係数Gは、次のようにして求めることができる。手放し状態で、電動モータ18により第2軸9に付与されるモータトルクを徐々に大きくし、ハンドル角速度dθsw/dtの絶対値がゼロよりも大きくなった時点、即ち、ハンドル2が動き始めた時点でのトーションバートルクTtbの絶対値をクーロン摩擦トルク係数Gとして求める。クーロン摩擦トルク変化勾配ηについては、チューニングによって決定する。
ハンドル角速度dθsw/dtとクーロン摩擦トルク補償値Tとの関係の一例を図8に示す。クーロン摩擦トルク補償値Tの絶対値は、ハンドル角速度dθsw/dtの絶対値が0から大きくなると、ハンドル角速度dθsw/dtの絶対値が小さい範囲では比較的大きな変化率で大きくなり、その後、クーロン摩擦トルク係数Gの大きさに収束していく。ハンドル角速度dθsw/dtの絶対値が小さい範囲での、ハンドル角速度dθsw/dtに対するクーロン摩擦トルク補償値Tの変化率は、クーロン摩擦トルク変化勾配ηが大きいほど大きくなる。
なお、ハンドル角速度dθsw/dtとクーロン摩擦トルク補償値Tとの関係を表すマップを予め作成し、このマップに基づいてクーロン摩擦トルク補償値Tを演算するようにしてもよい。この場合、ハンドル角速度dθsw/dtとクーロン摩擦トルク補償値Tとの関係は、図9に示すような関係であってもよい。この例では、ハンドル角速度dθsw/dtが-A以下の範囲では、クーロン摩擦トルク補償値Tは-Gの値をとる。ハンドル角速度dθsw/dtが+A以上の範囲では、クーロン摩擦トルク補償値Tは+Gの値をとる。ハンドル角速度dθsw/dtが-Aから+Aまでの範囲では、クーロン摩擦トルク補償値Tfは、ハンドル角速度dθsw/dtが大きくなるにしたがって、-Gから+Gまで線形的に変化する。
図10は、ドライバトルク推定部51の構成を示すブロック図である。
ドライバトルク推定部51は、ロータ回転角演算部61と、第2軸回転角演算部(θww演算部)62と、第1乗算部63と、第1加算部64と、第1微分演算部65と、第2微分演算部66と、第2乗算部67とを含む。ドライバトルク推定部51は、さらに、第3乗算部68と、tanh演算部69と、第4乗算部70と、sin演算部71と、第5乗算部72と、cos演算部73と、加速度トルク係数演算部(Glat演算部)74と、第6乗算部75と、第2加算部76とを含む。
ロータ回転角演算部61は、回転角センサ23の出力信号に基づいて、電動モータ18の回転角(ロータ回転角)θを演算する。第2軸回転角演算部(θww演算部)62は、前記式(3.1)に基づいて、第2軸回転角θwwを演算する。第2軸回転角演算部(θww演算部)62は、前記式(3.2)に基づいて、第2軸回転角θwwを演算するものであってもよい。
第1乗算部63は、トルクセンサ11によって検出されるトーションバートルクTtbに、トーションバー10の剛性ktbの逆数を乗算する。第1加算部64は、第1乗算部63の乗算結果Ttb/ktbに、第2軸回転角演算部62によって演算された第2軸回転角θwwを加算することにより、ハンドル角度推定値θswを演算する(前記式(2)参照)。
第1微分演算部65は、第1加算部64によって演算されたハンドル角度推定値θswを時間微分することにより、ハンドル角速度dθsw/dtを演算する。第2微分演算部66は、第1微分演算部65によって演算されたハンドル角速度dθsw/dtを時間微分することにより、ハンドル角加速度dθsw/dtを演算する。
第2乗算部67は、第2微分演算部66によって演算されたハンドル角加速度dθsw/dtに、ハンドル慣性モーメントJswを乗算することにより、ハンドル慣性トルク補償値Jsw・dθsw/dtを演算する。
第3乗算部68は、第1微分演算部65によって演算されたハンドル角速度dθsw/dtに、粘性摩擦トルク係数Gを乗算することにより、粘性摩擦トルク補償値Tを演算する(前記式(4-2)参照)。
tanh演算部69は、第1微分演算部65によって演算されたハンドル角速度dθsw/dtと、クーロン摩擦トルク変化勾配ηとを用いて、tanh(η・dθsw/dt)を演算する。第4乗算部70は、tanh演算部69によって演算されたtanh(η・dθsw/dt)に、クーロン摩擦トルク係数Gを乗算することにより、クーロン摩擦トルク補償値Tを演算する(前記式(7-2)参照)。
sin演算部71は、第1加算部64によって演算されたハンドル角度推定値θswの正弦値sin(θsw)を演算する。第5乗算部72は、sin演算部71によって演算されたハンドル角度推定値θswの正弦値sinθswに、重力トルク係数Ggrを乗算することにより、重力トルク補償値Tを演算する(前記式(5-2)参照)。
cos演算部73は、第1加算部64によって演算されたハンドル角度推定値θswの余弦値cos(θsw)を演算する。加速度トルク係数演算部(Glat演算部)74は、前述したように、車体加速度センサ25によって計測される車体加速度aおよびヨーレートセンサ26によって計測される車体回転角速度ωに基づいて、ハンドル2の重心Gに作用する車体横方向の加速度alatを求める。そして、加速度トルク係数演算部74は、Glat=m・alat・dcgの式から、横加速度トルク係数Glatを求める。
第6乗算部75は、加速度トルク係数演算部74によって演算された横加速度トルク係数Glatに、cos演算部73によって演算されたハンドル角度推定値θswの余弦値cos(θsw)を乗算することにより、横加速度トルク補償値Tlatを演算する(前記式(6-2)参照)。
第2加算部76は、トルクセンサ11によって検出されるトーションバートルクTtbに、第2、第3、第4、第5および第6乗算部67、68、70、72および75それぞれによって演算されたJsw・dθsw/dt、T、T、TおよびTlatを加算することにより、ドライバトルク(推定値)Tを演算する。
この実施形態では、ハンドル慣性トルク推定値(-Jsw・dθsw)およびトーションバートルクTtbの他に、粘性摩擦トルク推定値(-T)、重力トルク推定値(-T)、クーロン摩擦トルク推定値(-T)および横加速度トルク推定値(-Tlat)をも考慮して、ドライバトルクTが演算されているので、高精度にドライバトルクを推定できる。
図3に戻り、ローパスフィルタ52は、ドライバトルク推定部51によって演算されたドライバトルクTのうち、所定のカットオフ周波数fcより高い周波数成分を減衰させる。カットオフ周波数fcは、例えば、3[Hz]以上7[Hz]以下の範囲内の値に設定される。ローパスフィルタ52は、この実施形態では、2次のバターワースフィルタからなる。ローパスフィルタ52によるローパスフィルタ処理後のドライバトルクT’は、ハンズオン/オフ判定部53に与えられる。
図11は、ハンズオン/オフ判定部53の動作を説明するための状態遷移図である。
ハンズオン/オフ判定部53の動作説明においては、ローパスフィルタ52によるローパスフィルタ処理後のドライバトルクTを、単に「ドライバトルクT’」ということにする。
ハンズオン/オフ判定部53は、ドライバのハンドル操作状態として、「閾値より上のハンズオン状態(ST1)」と、「閾値以下のハンズオン状態(ST2)」と、「閾値以下のハンズオフ状態(ST3)」と、「閾値より上のハンズオフ状態(ST4)」との4状態を識別する。
「閾値より上のハンズオン状態(ST1)」は、ドライバトルクT’の絶対値が所定の閾値α(>0)より大きいハンズオン状態である。「閾値以下のハンズオン状態(ST2)」は、ドライバトルクT’の絶対値が閾値α以下であるハンズオン状態である。「閾値以下のハンズオフ状態(ST3)」は、ドライバトルクT’の絶対値が閾値α以下であるハンズオフ状態である。「閾値より上のハンズオフ状態(ST4)」は、ドライバトルクT’の絶対値が閾値αより大きいハンズオフ状態である。「閾値αは、たとえば、0.1[Nm]以上0.3[Nm]以下の範囲内の値に設定される。
演算開始時において、ドライバトルクT’の絶対値が閾値αよりも大きいときには、ハンズオン/オフ判定部53は、ハンドル操作状態が「閾値より上のハンズオン状態(ST1)」であると判定する。そして、ハンズオン/オフ判定部53は、出力信号(out)を“1”に設定するとともにタイムカウンタ値hod_timerを0に設定する。出力信号(out)は、判定結果を表す信号であり、“1”は判定結果がハンズオンであることを表し、“0”は判定結果がハンズオフであることを表す。
「閾値より上のハンズオン状態(ST1)」において、ドライバトルクT’の絶対値が閾値α以下になると、ハンズオン/オフ判定部53は、ハンドル操作状態が「閾値以下のハンズオン状態(ST2)」になったと判定する。そして、ハンズオン/オフ判定部53は、出力信号(out)を“1”に設定する。また、ハンズオン/オフ判定部53は、「閾値以下のハンズオン状態(ST2)」であると判定している場合には、所定時間Ts[sec]が経過する毎に、タイムカウンタ値hod_timerを、現在値(hod_timer)にTsを加算した値に更新する。
「閾値以下のハンズオン状態(ST2)」において、タイムカウンタ値hod_timerが所定のハンズオフ判定用閾値β(>0)に達する前に、ドライバトルクT’の絶対値が閾値αよりも大きくなると、ハンズオン/オフ判定部53は、ハンドル操作状態が「閾値より上のハンズオン状態(ST1)」になったと判定し、タイムカウンタ値hod_timerを0に設定する。
「閾値以下のハンズオン状態(ST2)」において、ドライバトルクT’の絶対値が閾値αよりも大きくなることなく、タイムカウンタ値hod_timerがハンズオフ判定用閾値βに達すると、ハンズオン/オフ判定部53は、ハンドル操作状態が「閾値以下のハンズオフ状態(ST3)」になったと判定する。そして、ハンズオン/オフ判定部53は、出力信号(out)を“0”に設定するとともにタイムカウンタ値hod_timerを0に設定する。ハンズオフ判定用閾値βは、たとえば、0.5[sec]以上1.0[sec]以下の範囲内の値に設定される。
「閾値以下のハンズオフ状態(ST3)」において、ドライバトルクT’の絶対値が閾値αよりも大きくなると、ハンズオン/オフ判定部53は、ハンドル操作状態が「閾値より上のハンズオフ状態(ST4)」になったと判定する。そして、ハンズオン/オフ判定部53は、出力信号(out)を“0”に設定する。また、ハンズオン/オフ判定部53は、「閾値より上のハンズオフ状態(ST4)」であると判定している場合には、所定時間Ts[sec]が経過する毎に、タイムカウンタ値hod_timerを、現在値(hod_timer)にTsを加算した値に更新する。
「閾値より上のハンズオフ状態(ST4)」において、タイムカウンタ値hod_timerが所定のハンズオン判定用閾値γ(>0)に達する前に、ドライバトルクT’の絶対値が閾値α以下になると、ハンズオン/オフ判定部53は、ハンドル操作状態が「閾値以下のハンズオフ状態(ST3)」になったと判定し、タイムカウンタ値hod_timerを0に設定する。ハンズオン判定用閾値γは、たとえば、0.05[sec]以上0.1[sec]以下の範囲内の値に設定される。
「閾値より上のハンズオフ状態(ST4)」において、ドライバトルクT’の絶対値が閾値α以下になることなく、タイムカウンタ値hod_timerがハンズオン判定用閾値γに達すると、ハンズオン/オフ判定部53は、ハンドル操作状態が「閾値より上のハンズオン状態(ST1)」になったと判定する。そして、ハンズオン/オフ判定部53は、出力信号(out)を“1”に設定するとともにタイムカウンタ値hod_timerを0に設定する。
なお、演算開始時において、ドライバトルクT’の絶対値が閾値α以下であるときには、ハンズオン/オフ判定部53は、ハンドル操作状態が「閾値以下のハンズオフ状態(ST3)」であると判定する。そして、ハンズオン/オフ判定部53は、出力信号(out)を“0”に設定するとともにタイムカウンタ値hod_timerを0に設定する。
この第1実施形態では、ドライバトルク推定部51によって高精度にドライバトルクTが推定される。そして、推定されたドライバトルクTの高周波数成分が除去される。この高周波数成分除去後のドライバトルクT’に基づき、トルク閾値αとタイムカウンタ値hod_timerとを用いてハンズオン/オフ判定が行われる。このため、運転者がハンドルを握っているハンズオン状態であるか運転者がハンドルを握っていないハンズオフ状態であるかを高精度に判定できる。
ハンズオン/オフ判定結果は、たとえば、運転モードとして自動運転モードと手動運転モードとが用意されている車両において、運転モードを自動運転モードから手動運転モードに切り替える際に、ハンズオン状態であることを確認してから、手動運転モードに切り替えるといったモード切替制御に利用することができる。
以上、この発明の第1実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の第1実施形態では、ドライバトルク推定部51は、前記式(1)に基づいて、ドライバトルクTを演算しているが、ドライバトルク推定部51は、次式(8)、(9)、(10)または(11)に基づいて、ドライバトルクTを演算してもよい。
=Jsw・dθsw/dt+Ttb+T …(8)
=Jsw・dθsw/dt+Ttb+T+T …(9)
=Jsw・dθsw/dt+Ttb+T+T+T …(10)
=Jsw・dθsw/dt+Ttb+T+T+Tlat …(11)
また、前述の第1実施形態では、トーションバートルクTtbおよび第2軸回転角θwwを用いて演算されたハンドル角度推定値θswをハンドル2の回転角としてドライバトルクTを演算しているが、第2軸回転角θwwをハンドル2の回転角としてドライバトルクTを演算してもよい。また、ハンドル2の回転角を検出する舵角センサを第1軸8に設け、舵角センサが検出するハンドル2の回転角に基づいてドライバトルクTを演算してもよい。
また、前述の第1実施形態では、ハンドル操作状態判定部42(図3参照)内のローパスフィルタ52は、ドライバトルク推定部51の後段項に設けられているが、ドライバトルク推定部51の前段に設けるようにしてもよい。
また、前述の第1実施形態では、電動モータ18は三相ブラシレスモータであったが、電動モータ18はブラシ付き直流モータであってもよい。
図12は、本発明の第2実施形態に係る操舵装置が適用された電動パワーステアリング装置の概略構成を示す模式図である。図12において、前述の図1の各部に対応する部分には同じ符号を付して示す。
図12の電動パワーステアリング装置1Aの機械的構成は、前述の図1の電動パワーステアリング装置1の機械的構成と同様なので、その説明を省略する。この第2実施形態では、減速機19の減速比をNで表すことにする。
車両には、車両の進行方向前方の道路を撮影するCCD(Charge Coupled Device)カメラ125、自車位置を検出するためのGPS(Global Positioning System)126、道路形状や障害物を検出するためのレーダー127および地図情報を記憶した地図情報メモリ128が搭載されている。
CCDカメラ125、GPS126、レーダー127および地図情報メモリ128は、自動支援制御や自動運転制御を行うための上位ECU(ECU:Electronic Control Unit)201に接続されている。上位ECU201は、CCDカメラ125、GPS126およびレーダー127によって得られる情報および地図情報を元に、周辺環境認識、自車位置推定、経路計画等を行い、操舵や駆動アクチュエータの制御目標値の決定を行う。
この実施形態では、上位ECU201は、自動操舵のための自動操舵指令値θadacを設定する。この実施形態では、自動操舵制御は、例えば、目標軌道に沿って車両を走行させるための制御である。自動操舵指令値θadacは、車両を目標軌道に沿って自動走行させるための操舵角の目標値である。このような自動操舵指令θadacを設定する処理は、周知であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
上位ECU201によって設定される自動操舵指令θadacは、車載ネットワークを介して、モータ制御用ECU202に与えられる。モータ制御用ECU202には、上位ECU201の他、トルクセンサ11、回転角センサ23、車体加速度センサ25、ヨーレートセンサ26等が接続されている。
トルクセンサ11は、第1軸8および第2軸9の相対回転変位量に基づいて、トーションバー10に加えられているトーションバートルクTtbを検出する。回転角センサ23は、電動モータ18のロータの回転角(以下、「ロータ回転角」という)を検出する。車体加速度センサ25は、車体加速度(車両加速度)aを検出する。ヨーレートセンサ26は、車体回転角速度(車両回転角速度)ωを検出する。モータ制御用ECU202は、これらのセンサの出力信号および上位ECU201から与えられる情報に基づいて、電動モータ18を制御する。
図13は、モータ制御用ECU202の電気的構成を説明するためのブロック図である。
モータ制御用ECU202は、マイクロコンピュータ140と、マイクロコンピュータ140によって制御され、電動モータ18に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)131と、電動モータ18に流れる電流(以下、「モータ電流I」という)を検出するための電流検出回路132とを備えている。
マイクロコンピュータ140は、CPUおよびメモリ(ROM、RAM、不揮発性メモリなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、ドライバトルク推定部51と、手動操舵指令値生成部141と、統合角度指令値演算部142と、制御部143とを含む。
ドライバトルク推定部51は、回転角センサ23の出力信号と、トルクセンサ11によって検出されるトーションバートルクTtbと、車体加速度センサ25によって検出される車体加速度aと、ヨーレートセンサ26によって検出される車体回転角速度ωとに基づいて、ドライバトルクTを推定する。ドライバトルク推定部51の構成は、前述した図3のドライバトルク推定部51と同様なので、その詳細な説明を省略する。
手動操舵指令値生成部141は、運転者がハンドル2を操作した場合に、当該ハンドル操作に応じた操舵角(より正確には第2軸9の回転角θ)を手動操舵指令値θmdacとして設定するために設けられている。手動操舵指令値生成部141は、ドライバトルク推定部51によって推定されたドライバトルクTを用いて手動操舵指令値θmdacを生成する。手動操舵指令値生成部141の詳細については後述する。
統合角度指令値演算部142は、上位ECU201によって設定される自動操舵指令値θadacに手動操舵指令値θmdacを加算して、統合角度指令値θacmdを演算する。
制御部143は、統合角度指令値θacmdに基づいて、電動モータ18を角度制御する。より具体的には、制御部143は、操舵角θ(第2軸9の回転角θ)が統合角度指令値θacmdに近づくように、駆動回路131を駆動制御する。
制御部143は、例えば、角度制御部144とトルク制御部(電流制御部)145とを含む。角度制御部144は、統合角度指令値θacmdと、回転角センサ23の出力信号に基づいて演算される実操舵角θとの偏差に対するPD(比例微分)演算を行うことにより、電動モータ18のモータトルクの目標値であるモータトルク指令値Tmcを演算する。
トルク制御部145は、例えば、まず、モータトルク指令値Tmcを電動モータ18のトルク定数Kで徐算することにより、電流指令値Icmdを演算する。そして、トルク制御部145は、電流検出回路132によって検出されるモータ電流Iが電流指令値Icmdに近づくように駆動回路131を駆動する。
図14は、手動操舵指令値生成部141の構成を示すブロック図である。
手動操舵指令値生成部141は、アシストトルク指令値設定部151と、指令値設定部152とを含む。
アシストトルク指令値設定部151は、手動操舵に必要なアシストトルクの目標値であるアシストトルク指令値Tacを設定する。アシストトルク指令値設定部151は、ドライバトルク推定部51によって推定されたドライバトルクTに基づいて、アシストトルク指令値Tacを設定する。ドライバトルクTに対するアシストトルク指令値Tacの設定例は、図15に示されている。ドライバトルクTは、例えば左方向への操舵のためのトルクが正の値にとられ、右方向への操舵のためのトルクが負の値にとられている。また、アシストトルク指令値Tacは、電動モータ18から左方向操舵のための操舵補助力を発生させるべきときには正の値とされ、電動モータ18から右方向操舵のための操舵補助力を発生させるべきときには負の値とされる。
アシストトルク指令値Tacは、ドライバトルクTの正の値に対しては正をとり、ドライバトルクTの負の値に対しては負をとる。そして、アシストトルク指令値Tacは、ドライバトルクTの絶対値が大きくなるほど、その絶対値が大きくなるように設定される。
なお、アシストトルク指令値設定部151は、ドライバトルクTに予め設定された定数を乗算することによって、アシストトルク指令値Tacを演算してもよい。
指令値設定部152は、この実施形態では、リファレンスEPSモデルを用いて、手動操舵指令値θmdacを設定する。
図16は、指令値設定部152で用いられるリファレンスEPSモデルの一例を示す模式図である。
このリファレンスEPSモデルは、ロアコラムを含む単一慣性モデルである。ロアコラムは、第2軸9およびウォームホイール21に対応する。図16において、Jは、ロアコラムの慣性であり、θはロアコラムの回転角であり、Ttbは、トーションバートルクである。ロアコラムには、トーションバートルクTtb、電動モータ18から第2軸9に作用するトルクN・Tmcおよび路面負荷トルクTrlが与えられる。路面負荷トルクTrlは、ばね定数kおよび粘性減衰係数cを用いて、次式(12)で表される。
rl=-k・θ-c(dθ/dt) …(12)
この実施形態におけるばね定数kおよび粘性減衰係数cは、予め実験・解析等で求められた所定値が設定されている。
リファレンスEPSモデルの運動方程式は、次式(13)で表される。
・dθ/dt=Ttb+N・Tmc-k・θ-c(dθ/dt)…(13)
指令値設定部152は、この式(13)を利用して、手動操舵指令値θmdacを設定する。その際、N・Tmcとしては、アシストトルク指令値設定部151(図14参照)によって設定されるアシストトルク指令値Tacが用いられる。
式(13)のTtbにトルクセンサ11によって検出されるトーションバートルクTtbを代入して、式(13)の微分方程式を解くことによってコラム角度θを演算し、得られたコラム角度θを手動操舵指令値θmdacとして設定することが考えられる。しかしながら、トルクセンサ11によって検出されるトーションバートルクTtbには、運転者によってハンドル2に実際に加えられたドライバトルク以外の外乱も含まれている。このため、式(13)のTtbにトーションバートルクTtbを代入して手動操舵指令値θmdacを演算した場合には、運転者がハンドル2を操作していないときであっても、ドライバトルク以外の外乱に基づいて、手動操舵指令値θmdacが設定されるおそれがある。
そこで、この実施形態では、指令値設定部152は、前記式(13)のTtbに、ドライバトルク推定部51によって推定されたドライバトルクTを代入して、式(13)の微分方程式を解くことによってコラム角度θを演算する。そして、指令値設定部152は、得られたコラム角度θを手動操舵指令値θmdacとして設定する。これにより、運転者がハンドル2を操作していない場合に、ドライバトルク以外の外乱に基づいて、手動操舵指令値θmdacが設定されるのを抑制することができる。
図12の電動パワーステアリング装置1Aでは、自動操舵指令値に手動操舵指令値が加算されて、統合角度指令値が演算され、この統合角度指令値に基づいて電動モータ18が制御される。これにより、手動操舵制御と自動操舵制御との間で切り替えを行うことなく、自動操舵制御主体での操舵制御を行いながら手動操舵が可能な協調制御を実現できる。これにより、手動操舵制御と自動操舵制御との間での移行をシームレスに行うことができるので、運転者の違和感を低減することができる。
また、図12の電動パワーステアリング装置1Aでは、前述したように、運転者がハンドル2を操作していない場合に、ドライバトルク以外の外乱に基づいて、手動操舵指令値θmdacが設定されるのを抑制することができる。
図17は、図14の手動操舵指令値生成部の変形例を示すブロック図である。図17において、前述の図14の各部に対応する部分には、図14と同じ符号を付して示す。
手動操舵指令値生成部141Aは、アシストトルク指令値設定部151Aおよび指令値設定部152Aを含んでいる。指令値設定部152Aには、トルクセンサ11によって検出されるトーションバートルクTtbおよびアシストトルク指令値設定部151Aによって設定されたアシストトルク指令値Tacが入力する。アシストトルク指令値設定部151Aは、トルクセンサ11によって検出されるトーションバートルクTtbに基づいて、アシストトルク指令値Tacを設定する。トーションバートルクTtbに対するアシストトルク指令値Tacの設定例は、図15の横軸をドライバトルクTからトーションバートルクTtbに置き換えたものを用いることができる。また、指令値設定部152Aには、ドライバトルク推定部51によって推定されたドライバトルクTが与えられる。
ドライバトルクTの絶対値|T|が所定の閾値ψ(ψ>0)以上である場合には、指令値設定部152Aは、前記式(13)のTtbおよびN・Tmcに、それぞれ指令値設定部152Aに入力されたトーションバートルクTtbおよびアシストトルク指令値Tacを代入して、式(13)の微分方程式を解くことによって、手動操舵指令値θmdac(=θ)を設定する。一方、ドライバトルクTの絶対値|T|が閾値ψ未満である場合には、前記式(13)のTtbおよびN・Tmcに、それぞれ零を代入して、式(13)の微分方程式を解くことによって、手動操舵指令値θmdac(=θ)を設定する。
この手動操舵指令値生成部141Aでは、トーションバートルクTtbを用いて手動操舵指令値θmdacを設定しているが、ドライバトルクTの絶対値|T|が閾値ψ未満である場合には手動操舵指令値生成部141Aに入力されるトーションバートルクTtbが実質的に零にされる。これにより、運転者がハンドル2を操作していない場合に、ドライバトルク以外の外乱に基づいて、手動操舵指令値θmdacが設定されるのを抑制することができる。また、トーションバートルクTtbを用いて手動操舵指令値θmdacを設定しているので、ドライバトルク推定部51によって推定されたドライバトルクTを用いる場合に比べて、運転者のハンドル操作に対する手動操舵指令値θmdacの時間遅れを小さくできる。
図18は、図13のモータ制御用ECUの変形例を示すブロック図である。図18において、前述の図13の各部に対応する部分には、図13と同じ符号を付して示す。
モータ制御用ECU202Aは、図13のモータ制御用ECU202と比べて、マイクロコンピュータ140A内のCPUによって実現される機能処理部の構成が異なっている。マイクロコンピュータ140Aは、機能処理部として、ハンドル操作状態判定部42と、手動操舵指令値生成部141Bと、統合角度指令値演算部142と、制御部143とを含む。
ハンドル操作状態判定部42は、回転角センサ23の出力信号、トーションバートルクTtb、車体加速度aおよび車体回転角速度ωに基づいて、運転者がハンドルを握っているハンズオン状態であるか運転者がハンドルを握っていないハンズオフ状態であるかを判定する。ハンドル操作状態判定部42の構成は、前述した図2および図3のハンドル操作状態判定部42と同様なので、その詳細な説明を省略する。ハンドル操作状態判定部42は、ハンドル操作状態がハンズオン状態であると判定したときにはハンズオン状態信号を出力し、ハンドル操作状態がハンズオフ状態であると判定したときにはハンズオフ状態信号を出力するものとする。
手動操舵指令値生成部141Bは、ハンドル操作状態判定部42の出力信号(ハンズオン/オフ状態信号)と、トルクセンサ11によって検出されるトーションバートルクTtbとを用いて手動操舵指令値θmdacを生成する。手動操舵指令値生成部141Bの詳細については後述する。
統合角度指令値演算部142は、上位ECU201によって設定される自動操舵指令値θadacに手動操舵指令値θmdacを加算して、統合角度指令値θacmdを演算する。
制御部143は、統合角度指令値θacmdに基づいて、電動モータ18を角度制御する。制御部143の構成は、図13の制御部143と同様なので、その詳細な説明を省略する。
図19は、手動操舵指令値生成部141Bの構成を示すブロック図である。
手動操舵指令値生成部141Bは、アシストトルク指令値設定部151Aと、指令値設定部152Bとを含む。
アシストトルク指令値設定部151Aは、手動操舵に必要なアシストトルクの目標値であるアシストトルク指令値Tacを設定する。アシストトルク指令値設定部151Aの動作は、図17のアシストトルク指令値設定部151Aの動作と同様なので、その詳細な説明を省略する。
指令値設定部152Bには、トルクセンサ11によって検出されるトーションバートルクTtbおよびアシストトルク指令値設定部151Aによって設定されたアシストトルク指令値Tacが入力する。また、指令値設定部152Bには、ハンドル操作状態判定部42の出力信号(ハンズオン/オフ状態信号)が与えられる。
ハンドル操作状態判定部42の出力信号がハンズオン状態信号である場合には、指令値設定部152Bは、前記式(13)のTtbおよびN・Tmcに、それぞれ指令値設定部154Bに入力されたトーションバートルクTtbおよびアシストトルク指令値Tacを代入して、式(13)の微分方程式を解くことによって、手動操舵指令値θmdac(=θ)を設定する。一方、ハンドル操作状態判定部42の出力信号がハンズオフ状態信号である場合には、指令値設定部152Bは、前記式(13)のTtbおよびN・Tmcに、それぞれ零を代入して、式(13)の微分方程式を解くことによって、手動操舵指令値θmdac(=θ)をに設定する。
この手動操舵指令値生成部141Bでは、トーションバートルクTtbを用いて手動操舵指令値θmdacを設定しているが、ハンドル操作状態判定部42の出力信号がハンズオフ状態信号である場合には手動操舵指令値生成部141Bに入力されるトーションバートルクTtbが実質的に零にされる。これにより、運転者がハンドル2を操作していない場合に、ドライバトルク以外の外乱に基づいて、手動操舵指令値θmdacが設定されるのを抑制することができる。また、トーションバートルクTtbを用いて手動操舵指令値θmdacを設定しているので、ドライバトルク推定部51によって推定されたドライバトルクTを用いる場合に比べて、運転者のハンドル操作に対する手動操舵指令値θmdacの時間遅れを小さくできる。
以上、この発明の第2実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。例えば、前述の第2実施形態では、指令値設定部152、152A、152B(図14、図17、図19参照)は、リファレンスEPSモデルに基づいて手動操舵指令値θmdacを設定しているが、指令値設定部152、152A、152Bは他の方法によって手動操舵指令値θmdacを設定してもよい。
例えば、指令値設定部152、152A、152Bは、ドライバトルクT(図14の場合)またはトーションバートルクTtb(図17または図19の場合)と手動操舵指令値θmdacとの関係を記憶したマップを用いて、手動操舵指令値θmdacを設定してもよい。
また、前述のおよび第2実施形態では、この発明をコラムタイプEPSに適用した場合の例を示したが、この発明は、コラムタイプ以外のEPSにも適用することができる。また、この発明は、ステアバイワイヤシステムにも適用することができる。
その他、この発明は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1,1A…コラム式EPS、8…第1軸、9…第2軸、10…トーションバー、11…トルクセンサ、12…ECU、18…電動モータ、19…減速機、20…ウォームギヤ、21…ウォームホイール、23…回転角センサ、25…車体加速度センサ、26…ヨーレートセンサ、42…ハンドル操作状態判定部、51…ドライバトルク推定部、52…ローパスフィルタ、53…ハンズオン/オフ判定部、141,141A,141B…手動操舵指令値生成部、142…統合角度指令値演算部、143…制御部、151,151A…アシストトルク指令値設定部、152,152A,152B…指令値設定部、201…上位ECU、202…モータ制御用ECU

Claims (14)

  1. 車両を操舵するためのハンドルが連結された第1軸と、
    前記第1軸にトーションバーを介して連結された第2軸と、
    前記トーションバーに加えられているトーションバートルクを検出するためのトルク検出手段と、
    運転者によって前記ハンドルに加えられるドライバトルクを推定するドライバトルク推定手段とを含み、
    前記ドライバトルク推定手段は、
    前記ハンドルの回転角を演算するハンドル回転角演算手段と、
    前記トーションバートルクと、前記ハンドル回転角の2階微分値とハンドル慣性モーメントとの積であるハンドル慣性トルク補償値と、前記ハンドルの重心に作用する重力によって前記第1軸に与えられる重力トルクの補償値とを加算した加算値を含む値を、ドライバトルクとして演算するドライバトルク演算手段とを含 み、
    前記ドライバトルク演算手段は、前記加算値に、前記第1軸および前記ハンドルに作用するクーロン摩擦トルクの補償値を加算して前記ドライバトルクを演算するように構成されており、
    前記クーロン摩擦トルクの補償値は、所定のクーロン摩擦トルク変化勾配と前記ハンドル回転角の1階微分値との積の双曲線正接値と、所定のクーロン摩擦トルク係数との積である、 操舵装置。
  2. 前記第2軸の回転角を検出するための回転角検出手段をさらに含み、
    前記ハンドル回転角演算手段は、前記第2軸の回転角および前記トーションバートルクを用いて前記ハンドルの回転角を演算するように構成されている、請求項1に記載の操舵装置。
  3. 前記ドライバトルク演算手段は、前記加算値に、前記第1軸および前記ハンドルに作用する粘性摩擦トルクの補償値を加算して前記ドライバトルクを演算するように構成されており、
    粘性摩擦トルクの補償値は、前記ハンドル回転角の1階微分値と所定の粘性摩擦トルク係数との積である、請求項1または2に記載の操舵装置。
  4. 前記ハンドルが車両に搭載された状態で、前記ハンドルの回転中心位置を通る鉛直線が前記ハンドルの回転平面となす角をハンドル傾き角とし、
    前記ハンドル回転角は、車両の向きが直進方向となるハンドル位置を中立位置として、中立位置からの回転量および回転方向に応じた角度であり、
    前記重力トルクの補償値は、前記ハンドルの重心位置と回転中心位置との間の距離と、前記ハンドルの質量と、前記ハンドル回転角の正弦値と、前記ハンドル傾き角の余弦値との積である、請求項1~のいずれか一項に記載の操舵装置。
  5. 前記ハンドルの重心に作用する車両横方向の加速度を演算する手段をさらに含み、
    前記ドライバトルク演算手段は、前記加算値に、前記ハンドルの重心に作用する車両横方向の加速度によって前記第1軸に与えられる横加速度トルクの補償値を加算して前記ドライバトルクを演算するように構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の操舵装置。
  6. 前記横加速度トルクの補償値は、前記ハンドルの重心位置と回転中心位置との間の距離と、前記ハンドルの質量と、前記ハンドルの重心に作用する車両横方向の加速度と、前記ハンドル回転角の余弦値との積である、請求項に記載の操舵装置。
  7. 車両を操舵するためのハンドルが連結された第1軸と、
    前記第1軸にトーションバーを介して連結された第2軸と、
    前記トーションバーに加えられているトーションバートルクを検出するためのトルク検出手段と、
    運転者によって前記ハンドルに加えられるドライバトルクを推定するドライバトルク推定手段と、
    前記ハンドルの重心に作用する車両横方向の加速度を演算する手段とを含み、
    前記ドライバトルク推定手段は、
    前記ハンドルの回転角を演算するハンドル回転角演算手段と、
    前記トーションバートルクと、前記ハンドル回転角の2階微分値とハンドル慣性モーメントとの積であるハンドル慣性トルク補償値と、前記ハンドルの重心に作用する重力によって前記第1軸に与えられる重力トルクの補償値とを加算した加算値を含む値を、ドライバトルクとして演算するドライバトルク演算手段とを含み、
    前記ドライバトルク演算手段は、前記加算値に、前記ハンドルの重心に作用する車両横方向の加速度によって前記第1軸に与えられる横加速度トルクの補償値を加算して前記ドライバトルクを演算するように構成されており、
    前記横加速度トルクの補償値は、前記ハンドルの重心位置と回転中心位置との間の距離と、前記ハンドルの質量と、前記ハンドルの重心に作用する車両横方向の加速度と、前記ハンドル回転角の余弦値との積である、操舵装置。
  8. 前記ドライバトルク推定手段によって推定されたドライバトルクに基づいて、ハンズオン状態であるかハンズオフ状態であるかを判定するハンズオン/オフ判定手段をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の操舵装置である。
  9. 舵角制御用の電動モータと、
    手動操舵指令値を生成する手動操舵指令値生成部と、
    自動操舵指令値に前記手動操舵指令値を加算して、統合角度指令値を演算する統合角度指令値演算部と、
    前記統合角度指令値に基づいて、前記電動モータを角度制御する制御部とを含み、
    前記手動操舵指令値生成部は、前記ドライバトルク推定手段によって推定されたドライバトルクを用いて、前記手動操舵指令値を生成するように構成されている、前記請求項1~7のいずれか一項に記載の操舵装置。
  10. 前記手動操舵指令値生成部は、前記ドライバトルク推定手段によって推定されたドライバトルクに基づいて、アシストトルク指令値を設定するアシストトルク指令値設定部を含み、
    前記手動操舵指令値生成部は、前記ドライバトルクと前記アシストトルク指令値とを用いて、前記手動操舵指令値を生成するように構成されている、請求項9に記載の操舵装置。
  11. 車両を操舵するためのハンドルが連結された第1軸と、
    前記第1軸にトーションバーを介して連結された第2軸と、
    前記トーションバーに加えられているトーションバートルクを検出するためのトルク検出手段と、
    運転者によって前記ハンドルに加えられるドライバトルクを推定するドライバトルク推定手段と、
    舵角制御用の電動モータと、
    手動操舵指令値を生成する手動操舵指令値生成部と、
    自動操舵指令値に前記手動操舵指令値を加算して、統合角度指令値を演算する統合角度指令値演算部と、
    前記統合角度指令値に基づいて、前記電動モータを角度制御する制御部とを含み、
    前記ドライバトルク推定手段は、
    前記ハンドルの回転角を演算するハンドル回転角演算手段と、
    前記トーションバートルクと、前記ハンドル回転角の2階微分値とハンドル慣性モーメントとの積であるハンドル慣性トルク補償値と、前記ハンドルの重心に作用する重力によって前記第1軸に与えられる重力トルクの補償値とを加算した加算値を含む値を、ドライバトルクとして演算するドライバトルク演算手段とを含み、
    前記手動操舵指令値生成部は、前記ドライバトルク推定手段によって推定されたドライバトルクの絶対値が所定値以上の場合にのみ、前記トルク検出手段によって検出されるトーションバートルクを用いて、前記手動操舵指令値を生成するように構成されている、操舵装置。
  12. 前記手動操舵指令値生成部は、前記トルク検出手段によって検出されるトーションバートルクに基づいて、アシストトルク指令値を設定するアシストトルク指令値設定部を含み、
    前記手動操舵指令値生成部は、前記ドライバトルク推定手段によって推定されたドライバトルクの絶対値が所定値以上の場合にのみ、前記トーションバートルクと前記アシストトルク指令値とを用いて、前記手動操舵指令値を生成するように構成されている、請求項11に記載の操舵装置。
  13. 車両を操舵するためのハンドルが連結された第1軸と、
    前記第1軸にトーションバーを介して連結された第2軸と、
    前記トーションバーに加えられているトーションバートルクを検出するためのトルク検出手段と、
    運転者によって前記ハンドルに加えられるドライバトルクを推定するドライバトルク推定手段と、
    前記ドライバトルク推定手段によって推定されたドライバトルクに基づいて、ハンズオン状態であるかハンズオフ状態であるかを判定するハンズオン/オフ判定手段と、
    舵角制御用の電動モータと、
    手動操舵指令値を生成する手動操舵指令値生成部と、
    自動操舵指令値に前記手動操舵指令値を加算して、統合角度指令値を演算する統合角度指令値演算部と、
    前記統合角度指令値に基づいて、前記電動モータを角度制御する制御部とを含み、
    前記ドライバトルク推定手段は、
    前記ハンドルの回転角を演算するハンドル回転角演算手段と、
    前記トーションバートルクと、前記ハンドル回転角の2階微分値とハンドル慣性モーメントとの積であるハンドル慣性トルク補償値と、前記ハンドルの重心に作用する重力によって前記第1軸に与えられる重力トルクの補償値とを加算した加算値を含む値を、ドライバトルクとして演算するドライバトルク演算手段とを含み、
    前記手動操舵指令値生成部は、前記ハンズオン/オフ判定手段によってハンズオン状態であると判定されている場合にのみ、前記トルク検出手段によって検出されるトーションバートルクを用いて、前記手動操舵指令値を生成するように構成されている、操舵装置。
  14. 前記手動操舵指令値生成部は、前記トルク検出手段によって検出されるトーションバートルクに基づいて、アシストトルク指令値を設定するアシストトルク指令値設定部を含み、
    前記手動操舵指令値生成部は、前記ハンズオン/オフ判定手段によってハンズオン状態であると判定されている場合にのみ、前記トーションバートルクと前記アシストトルク指令値とを用いて、前記手動操舵指令値を生成するように構成されている、請求項13に記載の操舵装置。
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