JP2009154586A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡素な構成にて、その使用状態によらず良好な操舵フィーリングを確保することのできる電動パワーステアリング装置を提供すること。
【解決手段】マイコン21は、操舵角θsに基づくマップ演算により操舵速度目標値ωs*を求め、該操舵速度目標値ωs*に実際の操舵速度ωsを追従させるべくステアリング戻し制御量Isb*を演算する。また、マイコン21は、ステアリング戻し時における車両の挙動特性を測定する測定手段としての機能を有するとともに、ステアリング戻し時において基準とすべき挙動特性が登録されたデータベース36を備える。そして、このデータベース36に登録された車両の挙動特性と実際に検出された車両の挙動特性との間に乖離がある場合には、その乖離を修正すべく、そのステアリング戻し制御において操舵速度目標値演算に用いるマップ29aを補正する。
【選択図】図2

Description

本発明は、電動パワーステアリング装置に関するものである。
近年、車両用パワーステアリング装置として、モータを駆動源とする電動パワーステアリング装置(EPS)が広く採用されるようになっている。そして、こうしたEPSの多くでは、その補償制御の一つとして、円滑にステアリングを中立位置に復帰させるためのステアリング戻し制御(ハンドル戻し補償制御)が行われている。
即ち、本来、走行中であれば、特段のステアリング操作を行わなくとも、ステアリングは、転舵輪に作用するセルフアライニングトルクによって、理論上、中立位置(操舵角ゼロ)まで復帰するはずである。しかしながら、EPSの場合、そのシステムの摩擦、例えば減速機構(ボール螺子やウォーム&ホイール等)の摩擦が、上記のような転舵輪に作用するセルフアライニングトルクを上回る場合があり、これにより、ステアリングが中立位置まで戻りきらない場合がある。
そこで、上記ステアリング戻し制御の実行により、ステアリング中立方向に作用する補償成分(ステアリング戻し制御量)を演算する。例えば、特許文献1に記載のEPSは、操舵角に基づき演算される操舵速度目標値と実際の操舵速度との偏差に基づくフィードバック制御の実行によりステアリング戻し制御を実行するための補償成分を演算する。そして、その補償成分をパワーアシスト制御の基礎成分である基本アシスト制御量に重畳することにより、ステアリングの速やかな中立位置への復帰を実現し、走行路面の状態に関わらず良好なステアリングの戻り性を確保することが可能となっている。
また、個々のEPSの操舵フィーリングは、その使用状態、即ち経年変化や部品交換等に伴う各構成要素の特性変化により大きく変化する。この点を考慮して、例えば、特許文献2に記載のEPSは、各車輪の特性変化(空気圧や磨耗等)を監視するとともに、当該検出された特性変化に合わせてそのアシスト特性を修正(更新)する。即ち、ステアリングを切り込む際(所謂「切り込み」時)の手応え(操舵反力)が、上記特性変化によらず一定に維持されるよう、そのアシストマップ(駆動特性テーブル)を補正する。そして、これにより、その使用状態による影響を排除して、良好な操舵フィーリングの確保する構成となっている。
特開2006−123827号公報 特開2006−117205号公報
しかしながら、操舵フィーリングの変化は、その「切り込み」時のみならず、上記ステアリング戻し時においても、車両の挙動特性として現れやすい傾向があり、上記従来の構成が、こうしたステアリング戻し時における操舵フィーリングの変化に関してもまた有効な対策であるとは必ずしも言い切れない。そして、更に、その特性変化の監視手法として周波数解析(FFT:高速フーリエ解析)を実行するためには、極めて高い演算処理能力が要求されるという課題もあり、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、簡素な構成にて、その使用状態によらず良好な操舵フィーリングを確保することのできる電動パワーステアリング装置を提供することにある。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置と、アシスト力目標値に基づき前記操舵力補助装置の作動を制御する制御手段とを備え、前記制御手段により演算される前記アシスト力目標値は、ステアリング戻し制御を実行するための補償成分を含み、該補償成分は、操舵速度目標値と実際の操舵速度との偏差に基づくフィードバック制御の実行により演算されるとともに、前記操舵速度目標値は、操舵角に基づくマップ演算により演算される電動パワーステアリング装置であって、ステアリング戻し時における車両の挙動特性を測定する測定手段と、ステアリング戻し時において基準とすべき車両の挙動特性が登録されたデータベースとを備え、前記制御手段は、前記測定された実際の挙動特性と前記データベースに登録された前記挙動特性との比較に基づいて、前記実際の挙動特性と前記登録された挙動特性との乖離を修正すべく前記操舵速度目標値の演算に用いるマップを補正すること、を要旨とする。
上記構成によれば、その使用状態(経年変化や部品交換等に伴う各構成要素の特性変化)に関わらず、ステアリング戻し時における車両の挙動特性を理想的な状態に維持することができる。更に、周波数解析のように高度な演算処理を必要としないことから制御手段を構成する電子制御装置(マイコン)に高い演算処理能力が要求されることもない。その結果、簡素な構成にて、より安定的に、良好な操舵フィーリングを確保することができるようになる。
請求項2に記載の発明は、前記基準とすべき挙動特性は、定常旋回状態から手放し操舵状態へと移行した後のヨーレイト微分値の推移により規定され、前記データベースには、該移行した後のヨーレイト微分値の推移データが前記登録されるものであって、前記定常旋回状態にあるか否かを判定する定常旋回判定手段と、前記手放し操舵状態を検出する手放し操舵検出手段とを備え、前記制御手段は、前記定常旋回状態から前記手放し操舵状態への移行時、実際に検出された前記ヨーレイト微分値の推移データと前記データベースに登録された前記推移データとの比較に基づいて、その乖離判定を行うこと、を要旨とする。
即ち、定常旋回状態にある場合には、所謂線形モデルの適用が可能であり、当該線形モデルにおいては、操舵角とヨーレイとの間に比例関係が成立することから、これらをそれぞれ時間で微分した操舵速度とヨーレイト微分値との間にもまた比例関係が成立する。つまり、ステアリング戻し時における車両の挙動特性は、ヨーレイト微分値の変化に現れやすい傾向がある。そして、手放し操舵状態下では、ステアリングに入力される操舵トルク及びこれにより発生するアシスト力の影響を排除することが可能である。従って、上記構成によれば、より正確に車両の挙動特性を把握して、高精度の乖離判定を行うことができる。更に、操舵速度と直接的な関連性を持つヨーレイト微分値を、上記車両の挙動特性を示す指標として用いることにより、当該乖離判定の結果に基づいて、より直接的且つ効果的に、操舵速度目標値の演算に用いられるマップの補正を実行することができる。その結果、複雑な演算処理を行うことなく、高精度に上記乖離の修正を行うことができるようになる。
請求項3に記載の発明は、前記推移データは、前記移行した時点における操舵角毎に前記登録されるものであって、前記乖離判定は、該移行した時点における操舵角毎に行われること、を要旨とする。
上記構成によれば、その比較条件を一致させて、より高精度な乖離判定を行うことができる。
請求項4に記載の発明は、前記推移データは、前記移行した時点における車速毎に前記登録されるものであって、前記乖離判定は、該移行した時点における車速毎に行われること、を要旨とする。
即ち、より狭義に定義された定常旋回状態下にあるほど、線形モデルを適用することの妥当性が高くなる。従って、上記構成によれば、より正確に乖離判定を行うことができるようになる。
請求項5に記載の発明は、前記実際の推移データと前記登録された推移データとの比較は、前記乖離判定の実行に要求される所定時間において前記ヨーレイト微分値の変化を直線的変化とみなすことが可能な直線近似可能領域において行われること、を要旨とする。
即ち、車両の挙動を示す各状態量は、手放し操舵状態への移行後、ステアリング中立位置への復帰により、やがて「0」まで低減するが、その過程には、そのヨーレイト微分値の変化を直線的変化とみなすことが可能な直線近似可能領域がある。そして、上記構成のように、当該直線近似可能領域において直線近似された推移データを比較することで、その比較のための演算負荷を小さく抑えることができる。その結果、より簡素な構成にて、高精度の乖離判定を行うことができるようになる。
請求項6に記載の発明は、前記制御手段は、前記移行した後において、前記ヨーレイト微分値が所定値よりも低下した場合に、前記直線近似可能領域に突入したものと判定すること、を要旨とする。
即ち、ヨーレイト微分値の変化量は、上記移行からの時間経過とともに小さくなる。従って、上記構成により、簡素な構成にて、直線近似領域への突入の有無を判定することができる。
請求項7に記載の発明は、前記乖離判定は、前記直線近似可能領域において直線近似した前記推移データの傾きを前記比較することにより行われること、を要旨とする。
請求項8に記載の発明は、前記制御手段は、前記実際の傾きと前記登録された傾きとの差分が所定の閾値を超える場合に、前記乖離があると判定すること、を要旨とする。
上記各構成によれば、容易且つ正確に乖離判定を行うことができる。
請求項9に記載の発明は、前記制御手段は、前記乖離があると判定した場合に、前記実際の傾きが前記登録された傾きよりも大きい場合には、より小さな前記操舵速度目標値が演算されるように前記マップを補正すること、を要旨とする。
請求項10に記載の発明は、前記制御手段は、前記乖離があると判定した場合に、前記実際の傾きが前記登録された傾きよりも小さい場合には、より大きな前記操舵速度目標値が演算されるように前記マップを補正すること、を要旨とする。
上記各構成によれば、演算負荷を小さく抑えつつ、高精度なマップ補正を行うことができるようになる。
本発明によれば、簡素な構成にて、その使用状態によらず良好な操舵フィーリングを確保することが可能な電動パワーステアリング装置を提供することができる。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態の電動パワーステアリング装置(EPS)1の概略構成図である。同図に示すように、ステアリング2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック5に連結されており、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック5の往復直線運動に変換される。そして、このラック5の往復直線運動により転舵輪6の舵角、即ち転舵角が可変することにより、車両の進行方向が変更されるようになっている。
EPS1は、操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置としてのEPSアクチュエータ10と、該EPSアクチュエータ10の作動を制御する制御手段としてのECU11とを備えて構成される。
本実施形態のEPSアクチュエータ10は、その駆動源であるモータ12がラック5と同軸に配置された所謂ラックアシスト型のEPSアクチュエータであり、モータ12が発生するモータトルクは、ボール送り機構(図示略)を介してラック5に伝達される。尚、本実施形態のモータ12は、ブラシレスモータであり、ECU11から三相(U,V,W)の駆動電力の供給を受けることにより回転する。
一方、ECU11には、トルクセンサ14、車速センサ15、及びステアリングセンサ(操舵角センサ)16等、各種の状態量を検出するための複数のセンサが接続されており、同ECU11は、これらの各センサにより検出された状態量、即ち操舵トルクτ、車速V、及び操舵角θs(並びに操舵速度ωs)等に基づいてアシスト力目標値(目標アシスト力)を演算する。そして、ECU11は、その演算された目標アシスト力をEPSアクチュエータ10に発生させるべく、駆動源であるモータ12への駆動電力の供給を通じて、該EPSアクチュエータ10の作動、即ち操舵系に付与するアシスト力を制御する。
次に、本実施形態のEPSにおけるアシスト制御の態様について説明する。
図2に示すように、ECU11は、モータ制御信号を出力するマイコン21と、そのモータ制御信号に基づいて、EPSアクチュエータ10の駆動源であるモータ12に駆動電力を供給する駆動回路22とを備えている。
本実施形態では、ECU11には、モータ12に通電される実電流値Iを検出するための電流センサ23、及びモータ12の回転角θmを検出するための回転角センサ24が接続されている。そして、マイコン21は、これら各センサの出力信号に基づき検出されたモータ12の実電流値I及び回転角θm、並びに上記操舵トルクτ及び車速Vに基づいて、駆動回路22にモータ制御信号を出力する。
尚、以下に示すマイコン21内の各制御ブロックは、同マイコン21の実行するコンピュータプログラムにより実現されるものである。そして、マイコン21は、所定のサンプリング周期で上記各状態量を検出し、所定周期毎に以下の各制御ブロックに示される各演算処理を実行することにより、モータ制御信号を生成する。
詳述すると、マイコン21は、EPSアクチュエータ10に発生させるべきアシスト力目標値(目標アシスト力)に対応した電流指令値Iq*を演算する電流指令値演算部25と、電流指令値演算部25により算出された電流指令値Iq*に基づいてモータ制御信号を出力するモータ制御信号出力部26とを備えている。
本実施形態の電流指令値演算部25は、目標アシスト力の基礎的制御成分である基本アシスト制御量Ias*を演算する基本アシスト制御部27と、その補償成分として、ステアリング2を中立位置(θs=0)に復帰させるためのステアリング戻し制御量Isb*を演算するステアリング戻し制御部28とを備えている。
本実施形態では、基本アシスト制御部27には、操舵トルクτ及び車速Vが入力されるようになっており、該基本アシスト制御部27は、これら操舵トルクτ及び車速Vに基づいて、その操舵トルクτが大きいほど、また車速Vが小さいほど、より大きな基本アシスト制御量Ias*を演算する。
一方、ステアリング戻し制御部28には、車速V、及び操舵角θsが入力される。そして、ステアリング戻し制御部28は、これらの各状態量に基づいて、上記ステアリング戻し制御量Isb*、即ちステアリング中立方向に作用するステアリング戻し力を発生させるための補償成分を演算する(ステアリング戻し制御)。
具体的には、本実施形態のステアリング戻し制御部28は、上記ステアリングセンサ16(図1参照)により検出される操舵角θsに基づき演算される操舵速度目標値ωs*に実際の操舵速度ωsを追従させるべくフィードバック制御の実行によりステアリング戻し制御量Isb*を演算する。尚、本実施形態では、操舵速度ωsは、操舵角θsを微分することにより求められる。
詳述すると、ステアリング戻し制御部28に入力された操舵角θsは、操舵速度目標値演算部29へと入力され、同操舵速度目標値演算部29において、操舵速度目標値ωs*が演算される。具体的には、本実施形態のステアリング戻し制御部28は、操舵角θsと操舵速度目標値ωs*とが関連付けられたマップ29aを備えており(図3参照、操舵速度目標値演算マップ)、同マップ29aにおいて、操舵速度目標値ωs*は、操舵角θsの絶対値が大きいほど(大舵角であるほど)、より大きな絶対値を有する戻し方向の値となるように設定されている。そして、操舵速度目標値演算部29は、入力される操舵角θsをこのマップ29aに参照、つまり、該マップ29aを用いたマップ演算の実行により操舵速度目標値ωs*を演算する。
操舵速度目標値演算部29において演算された操舵速度目標値ωs*は、検出される操舵速度ωsとともに減算器30に入力され、同減算器30において、操舵速度目標値ωs*と実際の操舵速度ωsとの間の偏差Δωsが算出される。そして、F/B制御演算部31において、その偏差Δωsに所定のゲインを乗ずることにより、ステアリング戻し制御量Isb*の基礎成分である基礎制御量εsbが演算される。
また、車速Vは、車速ゲイン演算部32に入力され、同車速ゲイン演算部32において、その車速Vが大きいほど、より大きな車速ゲインKvが演算される(図4参照)。そして、本実施形態のステアリング戻し制御部28は、乗算器33において、上記F/B制御演算部31により演算された基礎制御量εsbに、その車速ゲインKvを乗じた値をステアリング戻し制御量Isb*として出力する構成となっている。
基本アシスト制御部27において演算された基本アシスト制御量Ias*、及びステアリング戻し制御部28において演算されたステアリング戻し制御量Isb*は、加算器34に入力される。そして、電流指令値演算部25は、この加算器34において基本アシスト制御量Ias*にステアリング戻し制御量Isb*を重畳することにより、アシスト力目標値(目標アシスト力)としての電流指令値Iq*を演算し、モータ制御信号出力部26に出力する。
モータ制御信号出力部26には、電流指令値演算部25が出力する電流指令値Iq*とともに、電流センサ23により検出された実電流値I、及び回転角センサ24により検出された回転角θmが入力される。そして、モータ制御信号出力部26は、目標アシスト力に対応する電流指令値Iq*に実電流値Iを追従させるべくフィードバック制御を実行することによりモータ制御信号を演算する。
具体的には、本実施形態では、モータ制御信号出力部26は、実電流値Iとして検出されたモータ12の相電流値(Iu,Iv,Iw)をd/q座標系のd,q軸電流値に変換(d/q変換)することにより、上記電流フィードバック制御を行う。
即ち、電流指令値Iq*は、q軸電流指令値としてモータ制御信号出力部26に入力され、モータ制御信号出力部26は、回転角センサ24により検出された回転角θmに基づいて相電流値(Iu,Iv,Iw)をd/q変換する。また、モータ制御信号出力部26は、そのd,q軸電流値及びq軸電流指令値に基づいてd,q軸電圧指令値を演算する。そして、そのd,q軸電圧指令値をd/q逆変換することにより相電圧指令値(Vu*,Vv*,Vw*)を演算し、当該相電圧指令値に基づいてモータ制御信号を生成する。
そして、本実施形態のECU11は、上記のように生成されたモータ制御信号をマイコン21が駆動回路22に出力し、該駆動回路22がその当該モータ制御信号に基づく三相の駆動電力をモータ12に供給することにより、EPSアクチュエータ10の作動を制御する構成となっている。
(ステアリング戻し時における挙動特性に基づく操舵速度目標値演算マップ補正制御)
次に、本実施形態のステアリング戻し時における挙動特性に基づく操舵速度目標値演算マップ補正制御の態様について説明する。
上述のように、個々のEPSの操舵フィーリングは、その使用状態、即ち経年変化や部品交換等に伴う各構成要素の特性変化により大きく変化する。そして、こうした操舵フィーリングの変化は、「切り込み」時のみならず、ステアリング戻し時においても、車両の挙動特性に現れやすい傾向がある。
しかしながら、従来技術のような「切り込み」時に焦点をあてたアシスト特性自体の修正では、このようなステアリング戻し時における操舵フィーリングの変化については、有効に対処することができない。そして、更に、その修正精度の向上を図るべく、EPSを構成する各要素の特性変化を監視する際、その監視手法として周波数解析(FFT:高速フーリエ解析)を行うことにより、極めて高い演算処理能力が要求されるという課題も存在する。
この点を踏まえ、本実施形態では、その制御手段としてのECU11(マイコン21)は、「ステアリング戻し時における理想的な挙動」として、基準とすべき挙動特性が登録されたデータベース36を備えている。そして、このデータベース36に登録された車両の挙動特性と実際に検出された車両の挙動特性との間に乖離がある場合には、その乖離を修正すべく、そのステアリング戻し制御において操舵速度目標値演算に用いるマップ29a(図3参照)を補正することにより、使用状態によらず良好な操舵フィーリングを確保する構成となっている。
詳述すると、図2に示すように、本実施形態のステアリング戻し制御部28には、上記基準とすべき挙動特性からの乖離判定、及び操舵速度目標値演算マップ(マップ29a)を補正するための補正指令S_ajの生成を実行する補正指令演算部35が設けられている。そして、本実施形態では、上記基準とすべき車両の挙動特性が登録されたデータベース36は、この補正指令演算部35内に設けられている。
具体的には、本実施形態では、データベース36には、操舵状態が定常旋回状態から所謂「手放し操舵」状態へと移行した場合において、その基準とすべきヨーレイト微分値dγの推移データが、その移行した時点における操舵角θs及び車速V毎に登録されている。また、本実施形態の補正指令演算部35には、検出される操舵角θs、操舵速度ωs、車速V、ヨーレイトγ、ヨーレイト微分値dγ、及び上記手放し操舵状態の有無を示す手放し信号S_sfが(図1参照)入力されるようになっており、補正指令演算部35は、これら各状態量(制御信号)に基づいて、定常旋回状態から手放し操舵状態への移行を検知する。尚、本実施形態では、上記ヨーレイト微分値dγは、ヨーレイトセンサ37により検出されたヨーレイトγを微分することにより求められ、手放し信号S_sfは、ステアリング2に設けられた感圧素子38(図1参照)の出力信号に基づいて、即ち、運転者の手がステアリング2から離れた状態を直接的に検知することにより生成される。そして、補正指令演算部35は、当該定常旋回状態から手放し操舵状態への移行を検知した場合、実際の車両挙動特性として検出されたヨーレイト微分値dγの推移データと上記データベース36に登録されたヨーレイト微分値dγの推移データとの比較に基づいて、その乖離判定、及び上記補正指令S_ajの生成を実行する。
即ち、転舵輪6(タイヤ)に作用する力の関係を記述したモデルには、所謂「線形モデル」と「非線形モデル」とがあり、線形モデルにおいて、「タイヤのスリップ角(切れ角)とそのタイヤに作用する横力とは比例関係にある。」とされる。従って、操舵角θsにより転舵輪6の切れ角が規定され、当該切れ角の発生により同転舵輪6に作用する横力によって車両のヨーレイトγが規定されるならば、上記線形モデルの適用下においては、操舵角θsとヨーレイトγとの間に比例関係が成立し、これらをそれぞれ時間で微分した操舵速度ωsとヨーレイト微分値dγとの間にもまた比例関係が成立する。そして、このような線形モデルは、車両が定常旋回状態にある場合(詳しくは、狭義の定常旋回:車速一定且つニュートラルステア)に適用可能であり、更にその定常旋回状態から手放し操舵状態への移行した後であれば、ステアリング2に入力される操舵トルクτ、及びこれにより発生するアシスト力の影響を排除することが可能である。
つまり、定常旋回状態から手放し操舵状態へと移行した後のヨーレイト微分値dγの推移を測定することで、現状のステアリング戻し時における挙動特性を正確に把握することが可能である。そして、該測定された推移データを、上記データベース36に登録された推移データと比較することにより、その基準とすべき挙動特性からの乖離を判定することができる。
尚、この乖離判定における推移データの比較は、その測定条件を一致させた上で、即ち移行時点における操舵角θs及び車速Vと等しい条件下において登録された推移データを用いて行われる。そして、その乖離判定に際しては、上記のように操舵速度ωsと直接的な関連性を持つヨーレイト微分値dγを、その挙動特性を示す指標として用いることにより、当該乖離判定の結果に基づいて、より直接的に上記マップ29aを補正するための補正指令S_ajを生成することができる。
さらに詳述すると、図5に示すように、その操舵状態が定常旋回状態から手放し操舵状態へと移行した場合、その後、操舵角θs及びヨーレイトγは、上記転舵輪6に作用する横力、即ちセルフアライニングトルクに基づいて、時間経過とともに次第に減少する。そして、そのヨーレイトγを時間tで微分したヨーレイト微分値dγは、手放し開始直後、急激に増加した後、時間経過とともに次第に減少する。尚、図5は、定常旋回状態から手放し操舵状態へと移行した場合における操舵角θs及びヨーレイトγ、並びにヨーレイト微分値dγの推移を模式的に示した波形図であり、同図中、破線Lは操舵角θs及びヨーレイトγの推移を示し、実線Mはヨーレイト微分値dγの推移を示している。
さて、同図に示されるように、上記各状態量は、ステアリング中立位置への復帰により、やがて「0」となるが、その過程において、上記乖離判定を実行するために要求される所定時間、即ち当該乖離判定に用いる推移データを記録する時間(ロギングタイム)、その変化を直線的変化とみなすことが可能な直線近似可能領域を有している。尚、「ロギングタイム」の設定は車種毎に異なるが、通常は、1秒〜2秒程度である。そして、本実施形態では、上記乖離判定及び補正指令S_ajの生成は、この直線近似可能領域において、測定されロギング(記録)されたヨーレイト微分値dγの推移データに基づいて行われる。
即ち、図6のフローチャートに示すように、マイコン21は、先ず、上記乖離判定を行うために必要なヨーレイト微分値dγの推移データのロギングを開始する条件が成立しているか否か、即ち、定常旋回状態から手放し操舵状態へと移行し、且つその測定するヨーレイト微分値dγの推移が上記直線近似可能領域に突入したか否かを判定する(ステップ101)。
尚、本実施形態では、このステップ101におけるロギング開始判定は、その開始条件の成立を示すロギングフラグがセットされているか否かの判定に基づき行われる。
具体的には、図7のフローチャートに示すように、マイコン21(補正指令演算部35)は、定常旋回フラグがセットされているかを判定し(ステップ201)、当該定常旋回フラグがセットされていない場合(ステップ201:NO)には、続いて手放しフラグがセットされているか否かを判定する(ステップ202)。次に、このステップ202において、手放しフラグがセットされていないと判定した場合(ステップ201:NO)、補正指令演算部35は、続いて定常旋回状態にあるか否かを判定する(ステップ203)。そして、定常旋回状態にある場合(ステップ203:YES)には、定常旋回フラグをセットする(ステップ204)。
尚、本実施形態では、このステップ203(及び以下に示すステップ205)における定常旋回状態判定は、操舵角θs、車速V、及びヨーレイトγに基づき行われる。即ち、本実施形態の補正指令演算部35は、これらの各状態量の値が一定、且つニュートラルステアである場合に、定常旋回状態にあると判定する。そして、上記ステップ203において、定常旋回状態にないと判定した場合(ステップ203:NO)には、このステップ204は実行されない。
一方、上記ステップ201において、既に定常旋回フラグがセットされていると判定した場合(ステップ201:YES)には、補正指令演算部35は、続いて定常旋回状態にあるか否かを判定し(ステップ205)、定常旋回状態にない場合(ステップ205:NO)には、定常旋回フラグをリセットする(ステップ206)。尚、上記ステップ205において、定常旋回状態にある、即ち定常旋回状態が継続していると判定した場合(ステップ205:YES)には、同ステップ206以降の処理は実行されない。
次に、上記ステップ206において定常旋回フラグをリセットした場合、又は上記ステップ202において既に手放しフラグがセットされていると判定した場合(ステップ202:YES)には、補正指令演算部35は、続いて手放し操舵状態にあるか否かを判定する(ステップ207)。そして、手放し操舵状態にある場合(ステップ207:YES)には、手放しフラグをセットする(ステップ208)。
即ち、上記ステップ201において、定常旋回フラグがセットされていると判断された(ステップ201:YES)ということは、前回の演算周期時点において既に定常旋回状態にあった(少なくとも前回の演算周期以前に上記ステップ204の処理が実行された)ということである。そして、更に、ステップ206において定常旋回状態フラグがリセットされ、且つステップ207において手放し操舵状態にあると判定された(ステップ207:YES)ということは、定常旋回状態から手放し操舵状態へ移行したということを示している。
また、上記ステップ202において既に手放しフラグがセットされていると判定され(ステップ202:YES)、且つステップ207において、手放し操舵状態にあると判定された(ステップ207:YES)ということは、少なくとも前回の演算周期以前に定常旋回状態から移行した手放し操舵状態が現在も継続しているということを示している。
尚、上記ステップ206において定常旋回状態フラグがリセットされ、且つステップ207において手放し操舵状態にないと判定された(ステップ207:NO)ということは、手放し以外の要因(積極的なステアリング操作の発生等)により、その定常旋回状態が解除されたということである。また、上記ステップ202において既に手放しフラグがセットされていると判定され(ステップ202:YES)、且つステップ207において手放し操舵状態にないと判定された(ステップ207:NO)ということは、少なくとも前回の演算周期以前に定常旋回状態から移行した手放し操舵状態が解除されたということである。従って、これらステップ207において手放し操舵状態にないと判定された場合(ステップ207:NO)、補正指令演算部35は、手放しフラグをリセットし(ステップ209)、以下に示すステップ210及びステップ211の処理を実行しない。
次に、上記ステップ207において手放し操舵状態にあると判定(ステップ207:YES、及びステップ208を実行)した場合、即ち現在、定常旋回状態から移行した手放し操舵状態にあると判定した場合、補正指令演算部35は、続いてその測定するヨーレイト微分値dγの推移が上記直線近似可能領域にあるか否かを判定する(ステップ210)。尚、本実施形態では、補正指令演算部35は、定常旋回状態から手放し操舵状態へと移行した後、測定されるヨーレイト微分値dγ(の絶対値)が所定値dγ0(図5参照、操舵角θs及び車速V毎に設定)より低下した場合に、直線近似可能領域に突入したものと判定する。そして、直線近似可能領域にあると判定した場合(dγ<dγ0、ステップ210:YES)には、上記ロギングフラグをセットする(ステップ211)。尚、上記ステップ210において、上記直線近似可能領域ではないと判定した場合(dγ≧dγ0、ステップ210:NO)には、このステップ211の処理は実行されない。
さて、このようにしてセットされたロギングフラグに基づいて、ロギング開始条件が成立したと判定された場合(図6中、ステップ101:YES)には、マイコン21(補正指令演算部35)は、上記測定されるヨーレイト微分値dγの推移データのロギングを実行する(ステップ102)。そして、そのロギングされた推移データに基づいて、上記乖離判定及び補正指令S_ajの生成を実行する(ステップ103)。
図8に示すように、本実施形態では、乖離判定及び補正指令S_ajの生成は、上記直線近似可能領域において直線近似したヨーレイト微分値dγに関する二つの推移データ、即ち実際の推移データについて直線近似した直線(実線M)の傾きαと上記データベース36に登録された推移データについて直線近似した直線(一点鎖線N)の傾きαstとの比較に基づいて行われる。
具体的には、本実施形態の補正指令演算部35は、実際の推移データの傾きαと上記登録された推移データの傾きαstとの差分(の絶対値)が所定の閾値α0を超える場合(|α−αst|>α0)に、その修正を要する乖離があるものと判定する。そして、実際の傾きα(の絶対値)が登録された傾きαst(の絶対値)よりも大きい場合には、より小さな操舵速度目標値ωs*が演算されるよう補正すべき旨の補正指令S_ajを生成し、実際の傾きαが登録された傾きαstよりも小さい場合には、より大きな操舵速度目標値ωs*が演算されるよう補正すべき旨の補正指令S_ajを生成する。
即ち、図9のフローチャートに示すように、補正指令演算部35は、先ず、実際の推移データの傾きαと上記登録された推移データの傾きαstとの差分(の絶対値)が所定の閾値α0を超えるか否かに基づいて、その乖離の存在の有無を判定する(ステップ301)。
次に、このステップ301において、上記差分(の絶対値)が閾値α0を超えると判定、即ち「乖離がある」と判定した場合(|α−αst|>α0、ステップ301:YES)には、補正指令演算部35は、続いて、実際の傾きα(の絶対値)が登録された傾きαst(の絶対値)よりも大きいか否かを判定する(ステップ302)。そして、実際の傾きα(の絶対値)が登録された傾きαst(の絶対値)よりも大きい場合(|α|>|αst|、ステップ302:YES)には、より小さな操舵速度目標値ωs*が演算されるようにマップ29aを補正すべき旨の補正指令S_ajを生成し、操舵速度目標値演算部29へと出力する(ステップ303)。
一方、上記ステップ302において、実際の傾きα(の絶対値)が登録された傾きαst(の絶対値)よりも大きくはないと判定した場合(ステップ302:NO)、補正指令演算部35は、続いて、実際の傾きα(の絶対値)が登録された傾きαst(の絶対値)よりも小さいか否かを判定する(ステップ304)。そして、実際の傾きα(の絶対値)が登録された傾きαst(の絶対値)よりも小さい場合(|α|<|αst|、ステップ304:YES)には、より大きな操舵速度目標値ωs*が演算されるようにマップ29aを補正すべき旨の補正指令S_ajを生成し、操舵速度目標値演算部29へと出力する(ステップ305)。
尚、上記ステップ301において、上記差分(の絶対値)が閾値α0以下であると判定、即ち「修正を要する乖離はない」と判定した場合(|α−αst|≦α0、ステップ301:NO)には、補正指令演算部35は、上記マップ29aの補正は必要のない旨を示す補正指令S_ajを生成し、操舵速度目標値演算部29へと出力する(ステップ306)。また、実際には、ほとんど発生しないと考えられるが(発生するとすれば例えば誤判定時等)、ステップ304において、実際の傾きα(の絶対値)が登録された傾きαst(の絶対値)よりも小さくはないと判定された場合(ステップ304:NO)もまた、このステップ306の処理が実行される。
このようにして演算された補正指令S_ajに基づいて、マイコン21(操舵速度目標値演算部29)は、操舵速度目標値演算に用いるマップ29a(図3参照、操舵速度目標値演算マップ)を補正する(図6中、ステップ104)。そして、これにより、その基準とすべき挙動特性からの実際の挙動特性の乖離を修正し、使用状態によらず良好な操舵フィーリングを確保する構成となっている。
以上、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)マイコン21は、操舵角θsに基づくマップ演算により操舵速度目標値ωs*を求め、該操舵速度目標値ωs*に実際の操舵速度ωsを追従させるべくステアリング戻し制御量Isb*を演算する。また、マイコン21は、ステアリング戻し時における車両の挙動特性を測定する測定手段としての機能を有するとともに、ステアリング戻し時において基準とすべき挙動特性が登録されたデータベース36を備える。そして、このデータベース36に登録された車両の挙動特性と実際に検出された車両の挙動特性との間に乖離がある場合には、その乖離を修正すべく、ステアリング戻し制御において操舵速度目標値演算に用いるマップ29aを補正する。
上記構成によれば、その使用状態(経年変化や部品交換等に伴う各構成要素の特性変化)に関わらず、ステアリング戻し時における車両の挙動特性を理想的な状態に維持することができる。更に、周波数解析のように高度な演算処理を必要としないことから制御手段としてのマイコン21に高い演算処理能力が要求されることもない。その結果、簡素な構成にて、より安定的に、良好な操舵フィーリングを確保することができるようになる。
(2)データベース36には、その操舵状態が定常旋回状態から所謂「手放し操舵」状態へと移行した場合において、上記基準とすべきヨーレイト微分値dγの推移データが登録される。また、マイコン21(補正指令演算部35)は、定常旋回判定手段及び手放し操舵検出手段としての機能を有する。そして、補正指令演算部35は、当該定常旋回状態から手放し操舵状態への移行を検知した場合、実際に検出されたヨーレイト微分値dγの推移データと上記データベース36に登録されたヨーレイト微分値dγの推移データとの比較に基づいて、その乖離判定、及び操舵速度目標値演算に用いるマップ29aを補正するための補正指令S_ajの生成を実行する。
即ち、定常旋回状態にある場合には、所謂線形モデルの適用が可能であり、当該線形モデルにおいては、操舵角θsとヨーレイトγとの間に比例関係が成立することから、これらをそれぞれ時間で微分した操舵速度ωsとヨーレイト微分値dγとの間にもまた比例関係が成立する。つまり、ステアリング戻し時における車両の挙動特性は、ヨーレイト微分値dγの変化として現れやすい傾向がある。そして、手放し操舵状態下では、ステアリング2に入力される操舵トルクτ及びこれにより発生するアシスト力の影響を排除することが可能である。従って、上記構成によれば、より正確に車両の挙動特性を把握して、高精度の乖離判定を行うことができる。更に、操舵速度ωsと直接的な関連性を持つヨーレイト微分値dγを、上記車両の挙動特性を示す指標として用いることにより、当該乖離判定の結果に基づいて、より直接的且つ効果的に上記マップ29aを補正するための補正指令S_ajを生成することができる。その結果、複雑な演算処理を行うことなく、高精度に乖離の修正を行うことができるようになる。
(3)データベース36には、基準とすべきヨーレイト微分値dγの推移データが、その定常旋回状態から手放し操舵状態へと移行した時点における操舵角θs及び車速V毎に登録される。そして、乖離判定における推移データの比較は、その測定条件を一致させた上で、つまり移行時点における操舵角θs及び車速Vと等しい条件下において登録された推移データを用いて行われる。
即ち、より狭義に定義された定常旋回状態下にあるほど、上記線形モデルを適用することの妥当性が高くなる。従って、上記構成によれば、より正確に乖離判定を行うことができるようになる。
(4)上記乖離判定は、当該乖離判定に用いる推移データを記録する時間(ロギングタイム)、その変化を直線的変化とみなすことが可能な直線近似可能領域において行われる。
即ち、ヨーレイト微分値dγは、手放し操舵状態への移行後、ステアリング中立位置への復帰により、やがて「0」まで低減するが、その過程には、当該ヨーレイト微分値dγの変化を直線的変化とみなすことが可能な直線近似可能領域がある。そして、上記構成のように、当該直線近似可能領域において直線近似された推移データを比較することで、その比較のための演算負荷を小さく抑えることができる。その結果、より簡素な構成にて、高精度の乖離判定を行うことができるようになる。
(5)直線近似可能領域への突入判定は、ヨーレイト微分値dγ(の絶対値)が所定値dγ0より低下したか否かにより行われる。
即ち、ヨーレイト微分値dγの変化量は、上記移行からの時間経過とともに小さくなる。従って、上記構成により、簡素な構成にて、直線近似領域への突入の有無を判定することができる。
(6)乖離判定は、直線近似可能領域において直線近似した上記推移データの傾き(α,αst)を比較することにより行われ、検出された実際の傾きαとデータベース36に登録された傾きαstとの差分が所定の閾値α0を超える場合(|α−αst|>α0)に「乖離がある」と判定される。これにより、容易且つ正確に乖離判定を行うことができる。
(7)補正指令演算部35は、実際の傾きα(の絶対値)が登録された傾きαst(の絶対値)よりも大きい場合には、より小さな操舵速度目標値ωs*が演算されるよう補正すべき補正指令S_ajを生成し、実際の傾きα(の絶対値)が登録された傾きαst(の絶対値)よりも小さい場合には、より大きな操舵速度目標値ωs*が演算されるよう補正すべき補正指令S_ajを生成する。これにより、演算負荷を小さく抑えつつ、高精度なマップ補正が可能になる。
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・本実施形態では、ヨーレイト微分値dγを、車両の挙動特性を示す指標として用いる、即ち基準とすべき挙動特性は、当該ヨーレイト微分値dγの推移により規定(表現)され、データベース36には、その推移データが登録されることとした。しかし、これに限らず、その他の状態量、例えば、ヨーレイトγや横方向加速度等、或いはこれら組み合わせにより、車両の挙動特性を規定(表現)する構成に適用してもよい。
・本実施形態では、「定常旋回状態」の定義については、車速一定且つニュートラルステアであることを条件とする狭義の定常旋回状態を採用することとしたが、より広義の定常旋回状態を採用する構成としてもよい。
・また、本実施形態では、データベース36へのヨーレイト微分値dγの推移データの登録、及び乖離判定は、定常旋回状態から手放し操舵状態へと移行した時点における操舵角θs及び車速V毎に行われることとした。しかし、これに限らず、操舵角θs毎、或いは車速V毎であってもよく、更には、これらを厳密には考慮しない構成としてもよい(例えば、上記のように「広義の定常旋回状態」を採用した場合等)。
・本実施形態では、定常旋回状態から手放し操舵状態へと移行した後、且つ直線近似領域において、上記乖離判定を行うこととした。しかし、乖離判定の開始条件は、必ずしもこれに限るものではない。即ち、データベースに登録されたステアリング戻し時において基準とすべき車両の挙動特性と実際の挙動特性との比較に基づくものであれば、乖離判定の態様はどのようなものであってもよい。
・本実施形態では、直線近似可能領域への突入判定は、ヨーレイト微分値dγ(の絶対値)が所定値dγ0より低下したか否かにより行われることとした。しかし、これに限らず、ヨーレイトγの二階微分値を用いて行うこととしてもよい(所定値との比較、或いは所定時間変化のない場合等)。
・本実施形態では、ステアリング2に設けられた感圧素子38の出力信号に基づき生成される手放し信号S_sfにより手放し操舵状態の判定を行うこととした。しかし、このように運転者の手がステアリング2から離れた状態を直接的に検知する方法以外にも、操舵トルクτや操舵トルクτの変化等に基づいて、間接的にその検知を行う方法を採用する構成としてもよい。
電動パワーステアリング装置(EPS)の概略構成図。 EPSの制御ブロック図。 操舵速度目標値演算の態様を示す説明図。 車速ゲイン演算の態様を示す説明図。 定常旋回状態から手放し操舵状態へと移行した場合における操舵角及びヨーレイト、並びにヨーレイト微分値の推移を模式的に示す波形図。 ステアリング戻し時における挙動特性に基づく操舵速度目標値演算マップ補正制御の処理手順を示すフローチャート。 推移データロギング開始判定の処理手順を示すフローチャート。 乖離判定の態様を示す説明図。 乖離判定及び補正指令生成の処理手順を示すフローチャート。
符号の説明
1…電動パワーステアリング装置(EPS)、2…ステアリング、6…転舵輪、10…EPSアクチュエータ、11…ECU、12…モータ、14…トルクセンサ、15…車速センサ、16…ステアリングセンサ、21…マイコン、25…電流指令値演算部、27…基本アシスト制御部、28…ステアリング戻し制御部、29…操舵速度目標値演算部、29a…マップ、34…加算器、35…補正指令演算部、36…データベース、37…ヨーレイトセンサ、38…感圧素子、θs…操舵角、ωs…操舵速度、ωs*…操舵速度目標値、Iq*…電流指令値、Ias*…基本アシスト制御量、Isb*…ステアリング戻し制御量、γ…ヨーレイト、dγ…ヨーレイト微分値、dγ0…所定値、α,αst…傾き、α0…閾値、S_sf…手放し信号、S_aj…補正指令、V…車速、t…時間。

Claims (10)

  1. 操舵系にステアリング操作を補助するためのアシスト力を付与する操舵力補助装置と、アシスト力目標値に基づき前記操舵力補助装置の作動を制御する制御手段とを備え、前記制御手段により演算される前記アシスト力目標値は、ステアリング戻し制御を実行するための補償成分を含み、該補償成分は、操舵速度目標値と実際の操舵速度との偏差に基づくフィードバック制御の実行により演算されるとともに、前記操舵速度目標値は、操舵角に基づくマップ演算により演算される電動パワーステアリング装置であって、
    ステアリング戻し時における車両の挙動特性を測定する測定手段と、
    ステアリング戻し時において基準とすべき車両の挙動特性が登録されたデータベースとを備え、
    前記制御手段は、前記測定された実際の挙動特性と前記データベースに登録された前記挙動特性との比較に基づいて、前記実際の挙動特性と前記登録された挙動特性との乖離を修正すべく前記操舵速度目標値の演算に用いるマップを補正すること、
    を特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 請求項1に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記基準とすべき挙動特性は、定常旋回状態から手放し操舵状態へと移行した後のヨーレイト微分値の推移により規定され、前記データベースには、該移行した後のヨーレイト微分値の推移データが前記登録されるものであって、
    前記定常旋回状態にあるか否かを判定する定常旋回判定手段と、
    前記手放し操舵状態を検出する手放し操舵検出手段とを備え、
    前記制御手段は、前記定常旋回状態から前記手放し操舵状態への移行時、実際に検出された前記ヨーレイト微分値の推移データと前記データベースに登録された前記推移データとの比較に基づいて、その乖離判定を行うこと、
    を特徴とする電動パワーステアリング装置。
  3. 請求項2に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記推移データは、前記移行した時点における操舵角毎に前記登録されるものであって、前記乖離判定は、該移行した時点における操舵角毎に行われること、
    を特徴とする電動パワーステアリング装置。
  4. 請求項2又は請求項3に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記推移データは、前記移行した時点における車速毎に前記登録されるものであって、前記乖離判定は、該移行した時点における車速毎に行われること、
    を特徴とする電動パワーステアリング装置。
  5. 請求項2〜請求項4の何れか一項に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記実際の推移データと前記登録された推移データとの比較は、前記乖離判定の実行に要求される所定時間において前記ヨーレイト微分値の変化を直線的変化とみなすことが可能な直線近似可能領域において行われること、
    を特徴とする電動パワーステアリング装置。
  6. 請求項5に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記制御手段は、前記移行した後において、前記ヨーレイト微分値が所定値よりも低下した場合に、前記直線近似可能領域に突入したものと判定すること、
    を特徴とする電動パワーステアリング装置。
  7. 請求項5又は請求項6に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記乖離判定は、前記直線近似可能領域において直線近似した前記推移データの傾きを前記比較することにより行われること、を特徴とする電動パワーステアリング装置。
  8. 請求項7に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記制御手段は、前記実際の傾きと前記登録された傾きとの差分が所定の閾値を超える場合に、前記乖離があると判定すること、を特徴とする電動パワーステアリング装置。
  9. 請求項8に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記制御手段は、前記乖離があると判定した場合に、前記実際の傾きが前記登録された傾きよりも大きい場合には、より小さな前記操舵速度目標値が演算されるように前記マップを補正すること、を特徴とする電動パワーステアリング装置。
  10. 請求項8又は請求項9に記載の電動パワーステアリング装置において、
    前記制御手段は、前記乖離があると判定した場合に、前記実際の傾きが前記登録された傾きよりも小さい場合には、より大きな前記操舵速度目標値が演算されるように前記マップを補正すること、を特徴とする電動パワーステアリング装置。
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