JP7454004B2 - 積層塗膜形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、積層塗膜形成方法に関し、詳しくは、プライマー塗膜の上に発色塗膜を形成し、その上にクリア塗膜を形成する積層塗膜形成方法に関する。
自動車の塗膜は、一般に図3に模式的な断面図を示すように、被塗物50の上に、主に防錆のための電着塗装によるプライマー塗膜51(電着膜)と、中塗り塗膜52と、上塗り塗膜60とを順次積層することによって形成される。上塗り塗膜60は、発色のための顔料を含むベース塗膜53(発色層)と、その上のクリア塗膜54とで構成される。ベース塗膜53は、発色の目的の他、中塗り塗膜52とクリア塗膜54との密着性の向上や平滑性の向上という目的がある。
尚、ベース塗膜53を塗装した後、半乾き状態で、その上にクリア塗膜54が塗装される。これによりベース塗膜53とクリア塗膜54との間で化学結合が生じ、ベース塗膜53とクリア塗膜54との間に混合層55が形成される。この混合層55が形成されることにより、アンカー作用によるクリア塗膜54の剥離抑制効果が得られる。
前記中塗り塗膜52は、プライマー塗膜51及び上塗り塗膜60との密着性の向上や平滑性の向上の目的の他、耐光劣化性、耐チッピング性及び発色性を高めるという目的がある。特に、エポキシ系カチオン電着塗料によって形成したプライマー塗膜51は、紫外線が大量に照射されると、その表層部が劣化し、その上側の塗膜が剥離することになる。そこで、プライマー塗膜51を中塗り塗膜52によって紫外線から保護し、耐光劣化性を高めることがなされている。
ところで、省資源、省工程、コスト低減等の観点から、図4に示すように中塗り塗膜52をなくし、プライマー塗膜51の上に、上塗り塗膜60を直接重ねることも試みられている。
しかしながら、従来から可視光線の透過率は紫外域に比べて高いため、中塗り塗膜52を設けない場合は、上塗り塗膜60を通して可視光線がプライマー塗膜51に大量に照射されることになり、この可視光線がプライマー塗膜51の劣化に与える影響が大きいという課題があった。
このような課題に対し、特許文献1には、電着塗装等によるプライマー塗膜51の上に上塗り塗膜60を重ねるようにした積層塗膜構造において、中塗り塗膜52を設けることなく、その耐光劣化性を高めた構成が提案されている。
具体的には、上塗り塗膜60における、300nm以上390nm以下の波長域(紫外線~可視光線領域)の光線透過率平均値を0.5%未満とし、且つ390nm以上450nm以下の波長域の光線透過率平均値を6.5%以下とする。或いは上塗り塗膜の、300nm以上390nm以下の波長域の光線透過率平均値を0.5%以上とし、且つ390nm以上450nm以下の波長域の光線透過率平均値を4.5%以下とするものである。
この構成によれば、中塗り塗膜52や、中塗り塗膜52に代わるコート層を設けなくても、上塗り塗膜60における低波長域の可視光線透過率を低く抑え、塗膜の発色性ないし美装性を確保しながら、プライマー塗膜51の光劣化を大幅に抑制することができる。
特開2010-253381号公報
ところで、図3に示した従来の中塗り塗膜52を用いた積層塗膜の場合、中塗り塗膜52を十分に加熱することによりレベリング処理(平面化処理)し、プライマー塗装51の表面凹凸を隠す平滑化を施してから上塗り塗膜60のベース塗膜53を塗り重ねていた。
しかしながら、特許文献1に開示された発明の構成にように、中塗り塗膜52をなくした場合、プライマー塗膜51の表面凹凸を隠すことなく、その上に半乾き状態のベース塗膜53を塗り重ねることになる。ここで、プライマー塗膜51は中塗り塗膜52より流動性が悪いため、図4に示すようにベース塗膜53の表面53aにプライマー塗膜51の表面凹凸が転写される。その結果、平滑性が悪くなり、外観品質が低下するという課題があった。
一方、中塗り塗膜52をなくした場合でも、ベース塗膜53の流動性を高めれば、レベリングされてプライマー塗膜51の表面凹凸の転写は無くなる。しかしながら、流動性の高いベース塗膜53は下地隠蔽性が悪いため、プライマー塗膜51の表面凹凸を転写し、結果的に平滑性が悪化するという課題があった。
また、ベース塗膜53表面の平滑化は、樹脂の分子量や溶解性パラメータの調整、顔料の微粒化や分散性向上等による塗料改良、ベース塗膜53の下層を下地隠蔽性が高い層にし、上層を流動性の高い層の2層にすること、或いは塗面の研磨でも可能であるが、コストが高くなるという課題があった。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、プライマー塗膜(電着膜)の上に発色塗膜を形成し、その上にクリア塗膜を形成する積層塗膜において、平滑性の悪化を抑制し、外観品質の低下を防止することのできる積層塗膜形成方法を提供することを目的とする。
前記した課題を解決するために、本発明に係る積層塗膜形成方法は、被塗物上に積層塗膜を形成する方法であって、被塗物に電着膜を形成する工程と、前記電着膜上に発色塗膜を形成する工程と、前記発色塗膜上にクリア塗膜を形成する工程とを備え、前記電着膜上に発色塗膜を形成する工程において、前記電着膜上に発色塗膜を塗布する際の前記発色塗膜の粘度が0.02Pa・s以上0.30Pa・s以下であり、前記発色塗膜上にクリア塗膜を形成する工程において、前記発色塗膜上にクリア塗膜を塗布する際の前記発色塗膜の粘度が100Pa・s以上1000Pa・s以下であることに特徴を有する。
尚、前記電着層上に発色塗膜を形成する工程において、前記発色塗膜の乾燥膜厚を5μm以上40μm以下に形成することが望ましい。
このような構成によれば、電着膜の上に発色塗膜、その上にクリア塗膜を塗装する積層塗膜において、発色塗膜の初期流動性を高い状態(粘度0.02Pa・s以上0.30Pa・s以下)とし、その後、溶剤の揮発により発色塗膜の流動性を低い状態(粘度100Pa・s以上1000Pa・s以下)とする。
これにより、電着膜上に発色塗膜を形成したときには、流動性が高いために電着膜の表面凹凸を発色塗膜の表面に転写させずに発色塗膜の表面をレベリングし、平滑化する。
更に、発色塗膜上にクリア塗膜を塗装したときには、発色塗膜の流動性が低い状態になるために発色塗膜とクリア塗膜との混合が少なくなり混合層の厚さが小さくなる。それにより、混合層による平滑性の低下を抑制することができる。
即ち、発色塗膜において、塗料改良などせずとも、コスト上昇を抑えつつ、3層の積層塗膜における平滑性悪化を抑制し、外観品質の低下を防止することができる。
また、発色塗膜の乾燥膜厚を5μm以上40μm以下とすることにより、強度を確保するとともに、流動性を低く抑え、混合層を薄く形成し、平滑性の悪化を防止することができる。
本発明によれば、プライマー塗膜(電着膜)の上に発色塗膜を形成し、その上にクリア塗膜を形成する積層塗膜において、平滑性の悪化を抑制し、外観品質の低下を防止することのできる積層塗膜形成方法を提供することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る積層塗膜構造を模式的に示す断面図である。 図2は、クリア塗膜の塗装時における発色塗膜の乾燥膜厚と塗着粘度の範囲を示すグラフである。 図3は、従来の4層積層塗膜の構造を模式的に示す断面図である。 図4は、従来の3層積層塗膜の構造を模式的に示す断面図である。
以下、本発明にかかる積層塗膜形成方法の実施の形態につき、図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は本発明の実施形態に係る積層塗膜形成方法により形成された積層塗膜構造を示す断面図である。
図1において、被塗物1は、例えば自動車の車体外板として用いられる鋼製被塗物である。この被塗物1の表面には、下層塗膜としてのプライマー塗膜(電着膜)2が形成され、このプライマー塗膜2の上に、発色塗膜3が直接重ねられ、発色塗膜3の上にクリア塗膜4が重ねられている。
発色塗膜3とクリア塗膜4との間には、双方が混合し化学結合した混合層5が薄く形成されており、この混合層5により発色塗膜3とクリア塗膜4との間にアンカー作用が生じ、クリア塗膜4の剥離が抑制されている。
被塗物1は、鉄板、鋼鉄板、アルミニウムおよびステンレス鋼等であり、例えば、自動車の車両本体を構成する鉄板等である。
プライマー塗膜2は、被塗物1をカチオン電着塗料に浸漬し、被塗物1を陰極、電着槽内の極板を陽極として、この間に直流電流を流すことで被塗物1側に析出形成されたものである。このプライマー塗膜2の厚さは、例えば20μmに形成されている。
また、発色塗膜3は、着色剤として顔料を添加した油性(溶剤型)中塗り塗料により成膜されている。油性中塗り塗料としては、具体的には例えば、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、及び着色顔料を含むメラミン硬化型油性塗料等である。発色塗膜3の膜厚は、5μm以上40μm以下に形成されている。
また、クリア塗膜4は、これを形成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、アクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂とアミノ樹脂との組み合わせ、或いはカルボン酸・エポキシ硬化系を有するアクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂等により形成されている。クリア塗膜4の膜厚は、例えば30μmに形成されている。
また、発色塗膜3とクリア塗膜4との間に形成された混合層5の厚さが小さいと、十分なアンカー作用が得られず、クリア塗膜4の剥離が生じやすくなるため好ましくない。一方、混合層5の厚さが大きいと、平滑性が悪化するため好ましくない。
また、発色塗膜3の上面には、プライマー塗膜2の表面凹凸が転写しておらず、混合層5の面方向の凹凸が大きく抑制された状態である。
これにより、混合層5による平滑性の悪化が抑制されるとともに、発色塗膜3とクリア塗膜4との間のアンカー効果を作用させることができる。即ち、外観品質の低下と、クリア塗膜4の剥離とがともに抑制される。
続いて、本発明の積層塗膜形成方法について説明する。
本発明の積層塗膜形成方法は、プライマー塗膜の上に直接、発色塗膜を形成し、その上にクリア塗膜を形成する方法である。
(プライマー塗膜の形成)
被塗装物1は、上記したように例えば、鉄板、鋼鉄板、アルミニウムおよびステンレス鋼等である。例えば、被塗装物が自動車の鉄板等である場合、該鉄板上に予めプライマー層を形成してもよい。プライマー層は、電着塗装により車体の表面に形成する塗料や樹脂の膜であり、防食性や中塗り塗膜との密着性を確保する役割を有する。このプライマー塗膜2は、上述したように被塗物1をカチオン電着塗料に浸漬し、被塗物1を陰極、電着槽内の極板を陽極として、この間に直流電流を流すことで被塗物1側に析出形成される。このプライマー塗膜2の膜厚は、例えば20μmに形成する。
カチオン電着塗料は、カチオン性エポキシ樹脂、硬化剤及び顔料や添加剤を含む。
カチオン性エポキシ樹脂には、アミンで変性されたエポキシ樹脂が含まれる。エポキシ樹脂としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びアルキルフェノールのような樹脂で変性したもの、また、エポキシ樹脂の鎖長を延長したものを用いることができる。
カチオン性基を導入し得る化合物としては1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩、スルフィド及び酸混合物があり、例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N-ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエチルジスルフィド・酢酸混合物、アミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミンなどの1級アミンをブロックした2級アミンなどが挙げられる。
硬化剤としては、ポリイソシアネートをブロック剤でブロックして得られたブロックポリイソシアネートを用いることができる。ポリイソシアネートとしては、脂肪族系、脂環式系、芳香族-脂肪族系等のうちのいずれのものであってもよい。
ポリイソシアネートのうち、芳香族イソシアネートの例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、等が挙げられる。脂肪族イソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、及び2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。脂環式イソシアネートの例としては、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4´-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、1,3-ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、及びノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。芳香族-脂肪族系イソシアネートの例としてはキシリレンジイソシアネート(XDI)、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等が挙げられる。また、これらのイソシアネートの変性物であるウレタン化物、ビューレット、及びイソシアヌレート変性物等があげられる。これらは、単独、または2種以上併用することができる。
ブロック剤としては、ε-カプロラクタムなどのラクタム系ブロック剤、及びホルムアルドキシムなどのオキシム系ブロック剤が挙げられる。
硬化剤の量は、一般にカチオン性エポキシ樹脂の硬化剤に対する固形分重量比で表して一般に80/20~50/50の範囲であり、カチオン性エポキシ樹脂と硬化剤の量は、一般に、電着塗料組成物の全固形分の30~80重量%の範囲である。
電着塗料は着色剤として一般に顔料を含有する。着色顔料の例としては、酸化チタン、カーボンブラック及び酸化鉄、体質顔料の例としては、カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカ及びクレー、防錆顔料の例としては、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、及びモリブデン酸カルシウム等が挙げられる。顔料の量は、電着塗料組成物の全固形分の10~30重量%の範囲とすることができる。
(発色塗膜の形成)
次いで、被塗物1のプライマー塗膜2の上に、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装などにより、乾燥膜厚(完全に溶剤が揮発した状態)が5μm以上40μm以下となるように発色塗膜3を形成する。塗装の際、静電印加を行ってもよい。
発色塗膜3の乾燥膜厚が5μmより小さい場合、強度が不十分となるため好ましくない。一方、発色塗膜3の乾燥膜厚が40μmより大きい場合、混合層5が厚くなって平滑性が悪化するため好ましくない。
ここで、発色塗膜3は、油性(溶剤型)中塗り塗料の塗装によって形成することができる。油性(溶剤型)中塗り塗料は、具体的には例えば、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、着色顔料、体質顔料、タルク及び表面調整剤や分散剤等を含むメラミン硬化型油性塗料等を用いることができる。
溶剤には、例えば、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、芳香族石油系溶剤等を用い、塗装作業環境に応じ、溶剤の蒸発速度を調節し、油性発色塗料を塗布時の初期流動性が高い状態とする。具体的には、油性発色塗料の初期粘度が0.02Pa・s以上0.30Pa・s以下とされる(従来の中塗り塗膜と同程度の粘度)。これによりプライマー塗膜2の表面の凹凸にかかわらず、レベリングにより発色塗膜3の表面が平滑化される(プライマー塗膜2の表面凹凸が発色塗膜3の表面に転写しない)。
尚、油性発色塗料には着色剤として顔料を添加するが、顔料としては、例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等が挙げられる。着色顔料の例としては、有機系のアゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料などが挙げられ、無機系では黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタンなどが挙げられる。また更に、体質顔料として、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等を併用しても良い。
(クリア塗膜の形成)
前記したように発色塗膜3を形成する油性発色塗料の初期粘度は0.02Pa・s以上0.30Pa・s以下であるが、クリア塗膜3を塗布するまでに、油性発色塗料中の溶剤が常温で揮発し、発色塗膜3の粘度が100Pa・s以上1000Pa・s以下の範囲に上昇する。尚、このとき発色塗膜3の粘度が100Pa・sより小さいと、混合層5により平滑化の悪化が生じやすいため好ましくない。一方、発色塗膜3の粘度が1000Pa・sより大きいと、塗布ムラが生じやすいため好ましくない。
また、クリア塗膜3の塗装時において、発色塗膜3の膜厚(半乾き状態)は、6μm以上45μm以下であり、このときの発色塗膜3の膜厚と塗着粘度(Pa・s)との関係は、図2のグラフに示す範囲となる。
そして、発色塗膜3の上に、エアレススプレー、エアスプレー、回転霧化塗装機などによりクリア塗料を塗装する。塗装の際、静電印加を行ってもよい。乾燥膜厚が35~40μmとなるように塗装した後、140度20分間加熱し、硬化させる。
ここで、前記したように発色塗膜3上にクリア塗料を塗装した際には、発色塗膜3の粘度が100Pa・s以上1000Pa・s以下となり、流動性が低い状態であるため、発色塗膜3とクリア塗膜4との間の混合層5の厚さが小さくなり、混合層5による平滑化の悪化が抑制される。
クリア塗膜4を形成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、アクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂とアミノ樹脂との組み合わせ、或いはカルボン酸・エポキシ硬化系を有するアクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂等が挙げられる。
例えば、2液ウレタンクリア塗料は、水酸基含有アクリル樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する。水酸基含有アクリル樹脂の例としては、水酸基含有重合性不飽和モノマー、或いは他の重合性不飽和モノマーが挙げられ、水酸基含有重合性不飽和モノマーの例としては、多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物、該多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物にε-カプロラクトンを開環重合した化合物等が挙げられ、その他の重合性不飽和モノマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー、アミノアルキルアクリレート、アミノアルキルメタアクリレート、アクリルアミド、メタアクリルアミド又はその誘導体、第4級アンモニウム塩基含有モノマー、多ビニル化合物、紫外線吸収性もしくは紫外線安定性重合性不飽和モノマーなどが挙げられる。
ポリイソシアネート化合物の例としては、脂肪族ジイソシアネート類、環状脂肪族ジイソシアネート類、芳香族ジイソシアネート類、有機ポリイソシアネートそれ自体、有機ポリイソシアネート同士の環化重合体、イソシアネート・ビウレット体等が挙げられる。
有機溶剤の例としては、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、芳香族石油系溶剤等が挙げられる。
クリア塗料には、必要に応じて、顔料類、非水分散樹脂、ポリマー微粒子、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、塗面調整剤、酸化防止剤、流動性調整剤、ワックス等を適宜含有することができる。硬化触媒の例としては、有機錫化合物、トリエチルアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。紫外線吸収剤の例としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、サリシレート系、蓚酸アニリド系などの化合物、ヒンダードアミン系化合物などの紫外線安定剤が挙げられる。
以上のように本発明にかかる実施の形態によれば、プライマー塗膜2の上に発色塗膜3を塗装する積層塗膜において、発色塗膜3の初期流動性を高い状態(粘度0.02Pa・s以上0.30Pa・s以下)とし、その後、溶剤の揮発によりベース塗膜3の流動性を低い状態(粘度100Pa・s以上1000Pa・s以下)とする。
これにより、プライマー塗装2上に発色塗装3を塗装したときには、流動性が高いためにプライマー塗膜2の表面凹凸を発色塗膜3の表面に転写させずに発色塗膜3の表面をレベリングし、平滑化することができる。
更に、発色塗膜3上にクリア塗膜4を塗装したときには、発色塗膜3の流動性が低いために発色塗膜3とクリア塗膜4との混合が少なくなり混合層5の厚さが小さくなる。それにより、混合層5による平滑性の低下を抑制することができる。
即ち、発色塗膜3において、塗料改良などせずとも、コスト上昇を抑えつつ、3層の積層塗膜における平滑性悪化を抑制し、外観品質の低下を防止することができる。
尚、前記実施の形態においては、車両などの被塗物1に1色の塗料を塗布するものとしたが、本発明にあっては、その形態に限定されるものではない。
例えば、車両をツートーンに塗装することがある。例えばパトカーのように、白黒ツートーンに塗装する場合は、車両の上側部分に対し白色の発色塗膜3、クリア塗膜4を形成した後、車体の上側部分をマスキングして、下側部分を黒色の発色塗膜3、クリア塗膜4の順に塗装してもよい。
本発明に係る積層塗膜形成方法について、実施例に基づきさらに説明する。
本実施例では、プライマー塗膜上への発色塗膜の形成において、油性(溶剤型)中塗り塗料として、着色顔料等を含むメラミン硬化型油性塗料(60重量%)を用い、溶剤として、キシレン(5重量%)、酢酸ブチル(5重量%)、酢酸イソブチル(5重量%)、酢酸エチル(5重量%)、メタノール(5重量%)、1-ブタノール(5重量%)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(10重量%)を用いた。
本実施例において、上記発色塗膜の形成後の初期粘度と、5分経過後(クリア塗膜の塗装開始時の時間)の粘度とを測定した。
測定の結果、発色塗膜の初期粘度は、0.5Pa・sであり、5分経過後の粘度は、200Pa・sであった。
本実施例の結果、プライマー塗膜(電着膜)上に発色塗膜を形成したときには、発色塗膜の粘度が低く、流動性が高いためにプライマー塗膜の表面凹凸を発色塗膜の表面に転写させずに発色塗膜の表面をレベリングし、平滑化することができることを確認した。
更に、発色塗膜上にクリア塗膜を塗装する際には、発色塗膜の粘度が高くなるため、流動性が低い状態になる。そのため、発色塗膜とクリア塗膜との混合が少なくなり混合層の厚さが小さくなると考えられる。これにより、混合層による平滑性の低下を抑制することができることを確認した。
1 被塗物
2 プライマー塗膜(電着膜)
3 発色塗膜
4 クリア塗膜
5 混合層

Claims (2)

  1. 被塗物上に積層塗膜を形成する方法であって、
    被塗物に電着膜を形成する工程と、前記電着膜上に発色塗膜を形成する工程と、前記発色塗膜上にクリア塗膜を形成する工程とを備え、
    前記電着膜上に発色塗膜を形成する工程において、
    前記電着膜上に発色塗膜を塗布する際の前記発色塗膜の粘度が0.02Pa・s以上0.30Pa・s以下であり、
    前記発色塗膜上にクリア塗膜を形成する工程において、
    前記発色塗膜上にクリア塗膜を塗布する際の前記発色塗膜の粘度が100Pa・s以上1000Pa・s以下であることを特徴とする積層塗膜形成方法。
  2. 前記電着層上に発色塗膜を形成する工程において、
    前記発色塗膜の乾燥膜厚を5μm以上40μm以下に形成することを特徴とする請求項1に記載された積層塗膜形成方法。
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