JP2009050793A - 複層塗膜形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】中塗り塗膜の形成を省略しても、種々の塗色において従来の中塗り塗膜を含む複層塗膜と比較して遜色ない意匠性を得ることができる複層塗膜形成方法を提供すること。
【解決手段】カチオン電着塗料組成物を電着塗装して電着塗膜を形成し、得られた電着塗膜を加熱硬化させて硬化電着塗膜を得る、電着塗装工程;得られた硬化電着塗膜の上に、上塗りベース塗料組成物を塗布して、未硬化の上塗りベース塗膜を形成する工程;得られた未硬化の上塗りベース塗膜の上にクリヤー塗料組成物を塗布して、未硬化の上塗りクリヤー塗膜を形成する工程、および;これらの未硬化の上塗りベース塗膜および未硬化の上塗りクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる加熱工程;を包含する、複層塗膜形成方法であって、カチオン電着塗料組成物は、明度指数L値が75以上である硬化電着塗膜が形成されるカチオン電着塗料組成物である、複層塗膜形成方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、中塗り塗膜の形成を省略しても、種々の塗色において従来の中塗り塗膜を含む複層塗膜と比較して遜色ない意匠性を得ることができる複層塗膜形成方法に関する。
自動車などの基材の表面には、種々の役割を持つ複数の塗膜を形成して、基材を保護すると同時に美しい外観が付与されている。自動車車体等の塗装は一般に、導電性基材である被塗物に電着塗装がなされ、次いで中塗り塗装、上塗り塗装がなされている。
しかし、近年、省エネルギーおよびコストダウンの要請から、上記塗装工程の1部を省く方法も採用されつつある。この塗装工程の簡略化の1態様として、中塗り塗装を省く方法が挙げられる。
電着塗装によって得られる電着塗膜は、一般に黒色または灰色などの無彩色である。そして中塗り塗装を省いて、電着塗膜の上に白色または有彩色の上塗り塗料組成物を直接塗装する場合、上塗り塗膜の隠ぺい性が不十分であるためにその下にある電着塗膜の色の影響を受けてしまうことがある。このような場合において得られる複層塗膜は、目的とする色彩を発現させることができず、中塗り塗膜を有する塗膜と比較して意匠性に劣るという問題がある。
特開2002−35691号公報(特許文献1)には、工程1:自動車ボディなどの金属製被塗物に、塗膜の塗色(色彩)が有彩色又は無彩色の白であるカチオン電着塗料を塗装して電着塗膜を形成する工程、工程2:被塗物を水洗し、余分に付着したカチオン電着塗料を除去する工程、工程3:次いで、塗膜を加熱して、硬化乾燥させる工程、工程4:下地の電着塗膜の塗色と、マンセル表示の色相で同系色の有彩色、又は無彩色の白である上塗り塗料を塗装する工程、工程5:次いで、硬化させる工程、を含むことを特徴とする塗膜形成方法が記載されている。そしてこの方法によって、上塗り塗膜の下地隠ぺい性が改善され、中塗り塗装工程を省略することが可能になると記載されている。この方法は、電着塗料と上塗り塗料が同系色であることを特徴としている。一方、自動車ボディの塗色としては、ユーザーの要望に応じるため、非常に多くの色が求められている。このような現状においてこの方法で塗装を行う場合は、塗装する色の数に応じた設備を設けなければならず、設備費用面において不利である。また本願発明は、特定の電着塗料組成物1種類を用いることによって、様々な色相の上塗り塗料組成物を用いた複層塗膜の形成に対応できる発明であり、特許文献1に記載される発明とは異なる。
特開2002−53997号公報(特許文献2)には、工程1:自動車ボディなどの金属製被塗物に、塗膜の色彩(塗色)が有彩色、又は無彩色の白であるカチオン電着塗料を塗装して電着塗膜を形成する工程、工程2:被塗物を水洗し、余分に付着したカチオン電着塗料を除去する工程、工程3:次いで、塗膜を加熱して硬化させる工程、工程4:下地の電着塗膜の塗色と、マンセル表示の色相で同系色の有彩色、又は無彩色の白である上塗り塗料を塗装する工程であり、該塗料が着色ベースコート(A)、メタリックベースコート(B)、クリアートップコート(C)の3層を塗装する工程、工程5:上塗り塗膜を加熱して硬化させる工程、を含むことを特徴とする塗膜形成方法が記載されている。この方法もまた、上記と同様に設備費用の面で不利である。また本願発明は、特定の電着塗料組成物1種類を用いることによって、様々な色相の上塗り塗料組成物を用いた複層塗膜の形成に対応できる発明であり、特許文献2に記載される発明とは異なる。
特開2002−285082号公報(特許文献3)には、工程1:金属製被塗物に、その組成物中に導電剤を含有し硬化塗膜の塗膜固有抵抗が1012Ω・cm以下となるカチオン電着塗料を塗装し水洗後、得られた塗膜を加熱して硬化乾燥し塗膜を形成する工程、工程2:カチオン電着塗膜を有する被塗物に、塗膜の塗色が有彩色、又は白であるアニオン電着塗料を塗装し水洗後、プレヒート又は焼き付け硬化する工程、工程3:さらに上塗り塗料を塗装し、得られた複層塗膜を同時に加熱して硬化乾燥させる工程を含む塗膜形成方法が記載されている。この方法は、中塗り塗膜を形成しない方法であるが、しかしながらカチオン電着塗膜およびアニオン電着塗膜の2つの電着塗膜を順次形成する方法である。そしてこの特許文献3に記載される発明においても、上記発明と同様に、アニオン電着塗膜の色相は上塗り塗料と同系色の有色または白であることが好ましいとされている。一方で本願発明は、特定の電着塗料組成物1種類を用いることによって、様々な色相の上塗り塗料組成物を用いた複層塗膜の形成に対応できる発明であり、特許文献3に記載される発明とは異なる。
ところで、被塗物に形成された複層塗膜は、その塗膜の塗色などによって太陽熱遮熱効果が異なることが知られている。例えば白色以外の塗色、特に濃色の塗色の複層塗膜においては太陽光吸収率が高く、これにより太陽熱遮熱効果が減退し、塗装された建物または自動車などの内部温度が上昇し、これにより内部温度を冷却する必要性が高くなる。これは省エネルギーなどの観点から好ましくない。
特開2002−35691号公報 特開2002−53997号公報 特開2002−285082号公報
本発明の目的は、環境および省エネルギーの観点から中塗り塗膜の形成を省略しても、種々の塗色において従来の中塗り塗膜を含む複層塗膜と比較して遜色ない意匠性を得ることができる、複層塗膜形成方法を提供することにある。
本発明は、
カチオン電着塗料組成物を電着塗装して電着塗膜を形成し、得られた電着塗膜を加熱硬化させて硬化電着塗膜を得る、電着塗装工程、
得られた硬化電着塗膜の上に、上塗りベース塗料組成物を塗布して、未硬化の上塗りベース塗膜を形成する工程、
得られた未硬化の上塗りベース塗膜の上にクリヤー塗料組成物を塗布して、未硬化の上塗りクリヤー塗膜を形成する工程、および
この未硬化の上塗りベース塗膜および未硬化の上塗りクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる加熱工程、
を包含する、複層塗膜形成方法であって、
このカチオン電着塗料組成物は、明度指数L値が75以上である硬化電着塗膜が形成されるカチオン電着塗料組成物である、
複層塗膜形成方法、を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
上記カチオン電着塗料組成物は、
黄色顔料、赤紫色顔料および青色顔料から構成される太陽熱遮熱顔料、および
白色顔料、
を含むのが好ましい。
本発明はまた、上記複層塗膜形成方法により得られる複層塗膜も提供する。
本発明の複層塗膜形成方法により、特定の明度指数L値を有する硬化電着塗膜を用いて中塗りレスの複層塗膜を形成することによって、複層塗膜の塗色に左右されることなく、良好な意匠性が確保されることが確認できた。本発明の方法においては、電着塗料組成物として、特定の明度指数L値となる電着塗料組成物を1種類のみ用いればよい。このような電着塗料組成物を用いることによって、その後に様々な色相の上塗り塗膜を形成する場合であっても、得られる複層塗膜の塗色に関わらず、良好な意匠性が確保される。つまり本発明の複層塗膜形成方法は、中塗り塗膜の形成が省略されておりそしてただ1種類の電着塗料組成物のみ用いられているにも関わらず、従来の中塗り塗膜を含む複層塗膜と比較して遜色ない仕上がり外観および意匠性(色相、発色性)が得られることを特徴とする。
本発明の複層塗膜形成方法はまた、中塗り塗膜の形成が省略されているため、塗装工程において生じる揮発性成分が低減される(低VOC)という利点もある。本発明の複層塗膜形成方法は、中塗り塗膜形成工程を含んでいないため、塗装工程における総工程数が減少されており、これにより塗装工程における省エネルギー化を達成することが可能となっている。本発明の複層塗膜形成方法においては、中塗り塗膜形成に関する維持管理などの塗装設備コストおよび労力を削減することができる。
本発明の複層塗膜形成方法は、下記工程
カチオン電着塗料組成物を電着塗装して電着塗膜を形成し、得られた電着塗膜を加熱硬化させて硬化電着塗膜を得る、電着塗装工程、
得られた硬化電着塗膜の上に、上塗りベース塗料組成物を塗布して、未硬化の上塗りベース塗膜を形成する工程、
得られた未硬化の上塗りベース塗膜の上にクリヤー塗料組成物を塗布して、未硬化の上塗りクリヤー塗膜を形成する工程、および
該未硬化の上塗りベース塗膜および未硬化の上塗りクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる加熱工程、
を包含する。そして本発明の複層塗膜形成方法で用いられるカチオン電着塗料組成物は、明度指数L値が75以上である硬化電着塗膜が形成されるカチオン電着塗料組成物であることを特徴とする。
カチオン電着塗料組成物
本発明で用いるカチオン電着塗料組成物は、アミン変性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤および顔料を含む。そして本発明で用いられるカチオン電着塗料組成物は、明度指数L値が75以上である硬化電着塗膜が形成されるカチオン電着塗料組成物である。
硬化電着塗膜の明度指数L値
硬化電着塗膜の明度指数L値は、JIS Z 8722およびJIS Z 8730に準拠して求められる。分光測定器による標準光Cを用いて、380〜780nmの波長範囲で透過法により測定されたXYZ系における三刺激値X、Y、Z値に基づき、JIS規格Z8730で規定された式:L=10Y1/2により算出される。このL値は、ハンターの色差式における明度指数と呼ばれるものであり、その数値が増加するに従い被測定物質の白色度が増すこと、その数値が低下するに従い被測定物質の黒色度が増すことを意味する指数である。この明度指数L値は、例えば、「CM512m−3」(ミノルタ社製変角色差計)を用いて測定することができる。
本発明においては、硬化電着塗膜の明度指数L値が75以上であるのが好ましく、80以上であるのがより好ましい。硬化電着塗膜の明度指数L値を上記範囲に調整することによって、中塗り塗膜の形成を省略し、電着塗膜の上に種々の色相の上塗りベース塗膜を形成する場合であっても、複層塗膜の塗色に左右されることなく、良好な意匠性が確保されることとなる。つまり電着塗料組成物として、特定の明度指数L値となる電着塗料組成物を1種類のみ用いることによって、その後に様々な色相の上塗り塗膜を形成する場合であっても、得られる複層塗膜の塗色に関わらず、良好な意匠性が確保されることとなる。
カチオン電着塗料組成物から得られる硬化電着塗膜の明度指数L値を上記範囲に調製する方法の一例として、カチオン電着塗料組成物において白色顔料として酸化チタンを、そして黒色顔料としてカーボンブラックをそれぞれ用いることによって、得られる硬化電着塗膜の明度指数L値を上記範囲に調節する方法が挙げられる。このような態様においては、カチオン電着塗料組成物中に、酸化チタンおよびカーボンブラックを、酸化チタン/カーボンブラックの重量比率[(カーボンブラック)/{(酸化チタン)+(カーボンブラック)}×100]が0.004〜0となる量で含めるのが好ましい。
カチオン電着塗料組成物から得られる硬化電着塗膜の明度指数L値を75以上に調製する方法の他の一例として、カチオン電着塗料組成物において、酸化チタンなどの白色顔料と、黄色顔料、赤紫色顔料および青色顔料から構成される太陽熱遮熱顔料と、を用いることによって、得られる硬化電着塗膜の明度指数L値を上記範囲に調節する方法が挙げられる。この態様においては、黄色顔料、赤紫色顔料および青色顔料を組み合わせた太陽熱遮熱顔料を用いることによって、黒色または黒みの色相を生じさせている。そしてこの態様においては、カーボンブラック、鉄黒、鋼クロムブラックなどの太陽光吸収率の高い黒色顔料を用いることなく、得られる硬化電着塗膜の明度指数L値を上記範囲に調節することができる。これにより、太陽光吸収率を低くすることができ、太陽熱遮熱効果が得られることとなる。
上記態様において用いることができる黄色顔料として、例えば、SYMULER FAST YELLOW 4192 ベンツイミダゾロン(大日本インキ工業(株)製);イエロー10401(CERDEC社製);イエロー10408(CERDEC社製);およびFASTONGN SUPER VIOLET RVS ジオキサジン(大日本インキ工業(株)製)などが挙げられる。
用いることができる赤紫色顔料として、FASTONGN SUPER RED 500RG キナクリドン(大日本インキ工業(株)製):FASTONGN SUPER RED ATY ジアミノアンスラキノニル(大日本インキ工業(株)製);FASTONGN SUPER MAGENTA R キナクリドン(大日本インキ工業(株)製);ブラウン10348(CERDEC社製);ブラウン10364(CERDEC社製);ブラウン10363(CERDEC社製)などが挙げられる。
また用いることができる青色顔料として、グリーン10405(CERDEC社製);FASTONGN SUPER BULE 6070S インダンスロン(大日本インキ工業(株)製);FASTONGN BULE RSK フタロシアニン α(大日本インキ工業(株)製);FASTONGN BULE 5380 フタロシアニン β(大日本インキ工業(株)製);FASTONGN GREEN MY ハロゲン化フタロシアニン(大日本インキ工業(株)製);ブルー 10336(CERDEC社製)などが挙げられる。
これらの顔料は、黄色顔料、赤紫色顔料および青色顔料としてそれぞれ1種を単独で使用してもよく、黄色顔料、赤紫色顔料および青色顔料としてそれぞれ2種以上を混合して使用してもよい。
硬化電着塗膜の明度指数L値を上記範囲に調整するのに用いられる上記顔料は、下記する顔料分散ペーストを調製して電着塗料組成物中に配合するのが望ましい。なお本発明においては、明度指数L値の調整に用いられる顔料と、その他の顔料とを別々に用いて顔料分散ペーストを調製してもよく、またこれらの顔料を併せて用いて顔料ペーストを調製してもよい。
顔料
本発明の方法に用いられるカチオン電着塗料組成物は、明度指数L値の調整に用いられる上記顔料以外にも、通常用いられる顔料を含んでもよい。使用できる顔料の例としては、通常使用される無機顔料、例えば、カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料、そしてリン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、及びリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料、などが挙げられる。電着塗料組成物中にこれらの顔料が含まれる場合の顔料の量は、カチオン電着塗料組成物の固形分に対して1〜30重量%であるのが好ましい。
顔料を電着塗料の成分として用いる場合、一般に顔料を予め高濃度で水性溶媒に分散させてペースト状(顔料分散ペースト)にする。顔料は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。
顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散樹脂と共に水性溶媒中に分散させて調製する。顔料分散樹脂としては、一般に、カチオン性又はノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基及び/又は3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等のようなカチオン性重合体を用いる。水性溶媒としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等を用いる。一般に、顔料分散樹脂は、顔料100質量部に対して固形分比20〜100質量部の量で用いる。顔料分散樹脂と顔料とを混合した後、その混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミル等の通常の分散装置を用いて分散させて、顔料分散ペーストを得ることができる。
カチオン性エポキシ樹脂
カチオン性エポキシ樹脂には、アミンで変性されたエポキシ樹脂が含まれる。カチオン性エポキシ樹脂は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環の全部をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環するか、または一部のエポキシ環を他の活性水素化合物で開環し、残りのエポキシ環をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環して製造される。
ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例はビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。前者の市販品としてはエピコート828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量180〜190)、エピコート1001(同、エポキシ当量450〜500)、エピコート1010(同、エポキシ当量3000〜4000)などがあり、後者の市販品としてはエピコート807(同、エポキシ当量170)などがある。
これらのエポキシ樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、および単官能性のアルキルフェノールのような適当な樹脂で変性しても良い。また、エポキシ樹脂はエポキシ基とジオール又はジカルボン酸との反応を利用して鎖延長することができる。
これらのエポキシ樹脂は、開環後0.3〜4.0meq/gのアミン当量となるように、より好ましくはそのうちの5〜50%が1級アミノ基が占めるように活性水素化合物で開環するのが望ましい。
カチオン性基を導入し得る活性水素化合物としては1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩、スルフィド及び酸混合物がある。活性水素化合物としてアミンを用いる場合、エポキシ樹脂と2級アミンとを反応させると、3級アミノ基を有するアミン変性エポキシ樹脂が得られる。また、エポキシ樹脂と1級アミンとを反応させると、2級アミノ基を有するアミン変性エポキシ樹脂が得られる。さらに、1級アミノ基および2級アミノ基を有する化合物を用いることにより、1級アミノ基を有するアミン変性エポキシ樹脂を調製することができる。ここで、1級アミノ基および2級アミノ基を有する化合物を用いて、1級アミノ基を有するアミン変性エポキシ樹脂を調製する場合は、エポキシ樹脂と反応させる前に、化合物の1級アミノ基をケトンでブロック化してケチミンにしておいて、これをエポキシ樹脂に導入した後に脱ブロック化することによって調製することができる。
1級アミン、2級アミンおよびケチミンの具体例としては、例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエチルジスルフィド・酢酸混合物などがある。さらに、アミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミンなどの、ブロックされた1級アミンを有する2級アミン、がある。これらのアミン類等は2種以上を併用して用いてもよい。
ブロックイソシアネート硬化剤
ブロックイソシアネート硬化剤の調製にはポリイソシアネートが使用される。このポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれであってもよい。
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、及びナフタレンジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等のような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、及び1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトンイミン、ビューレット及び/又はイソシアヌレート変性物);等があげられる。これらは、単独で、または2種以上併用することができる。
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーもブロックイソシアネート硬化剤に使用してよい。
ブロック剤は、ポリイソシアネート基に付加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得るものである。
他の成分
上記カチオン電着塗料組成物は、上記成分の他に、上記ブロックイソシアネート硬化剤のブロック剤解離を促進する触媒などを含んでもよい。このような触媒として、例えば、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシドなどの有機錫化合物、N−メチルモルホリンなどのアミン類、ストロンチウム、コバルト、銅などの金属塩などが挙げられる。触媒の濃度は、カチオン電着塗料組成物中のカチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤合計の100固形分質量部に対し0.1〜6質量部であるのが好ましい。
カチオン電着塗料組成物の調製
本発明で用いられるカチオン電着塗料組成物は、上に述べたカチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、及び顔料分散ペーストを水性溶媒中に分散することによって調製される。また、通常、水性溶媒にはカチオン性エポキシ樹脂を中和して、バインダー樹脂エマルションの分散性を向上させるために中和酸を含有させる。中和酸は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。
使用される中和酸の量は、カチオン性エポキシ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂固形分100gに対して、10〜25mg当量の範囲であるのが好ましい。上記下限は15mg当量であるのがより好ましく、上記上限は20mg当量であるのがより好ましい。中和酸の量が10mg当量未満であると水への親和性が十分でなく水への分散が困難となるおそれがある。一方、中和酸の量が25mg当量を超える場合は、析出に要する電気量が増加し、塗料固形分の析出性が低下し、つきまわり性が劣る状態となるおそれがある。
ブロックイソシアネート硬化剤の量は、硬化時にカチオン性エポキシ樹脂中の1級、2級アミノ基、水酸基、等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分な量が必要とされる。好ましいブロックイソシアネート硬化剤の量は、カチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤との固形分重量比(カチオン性エポキシ樹脂/硬化剤)で表して90/10〜50/50、より好ましくは80/20〜65/35の範囲である。カチオン性エポキシ樹脂とブロックイソシアネート硬化剤との固形分量比の調整により、造膜時の塗膜(析出膜)の流動性および硬化速度が改良され、塗膜の平滑性が向上する。
カチオン電着塗料組成物に通常含まれる有機溶媒としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。
カチオン電着塗料組成物は、上記のほかに、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤などの常用の塗料用添加剤を含むことができる。アミノ基含有アクリル樹脂、アミノ基含有ポリエステル樹脂等を含んでもよい。
電着塗装工程
電着塗装は、被塗物を陰極として陽極との間に、通常、50〜450Vの電圧を印加して行う。印加電圧が50V未満であると電着が不充分となるおそれがあり、450Vを超えると、塗膜が破壊され異常外観となるおそれがある。電着塗装時、塗料組成物の浴液温度は、通常10〜45℃に調節される。
電着塗装工程は、カチオン電着塗料組成物に被塗物を浸漬する過程、及び、上記被塗物を陰極として陽極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる過程、から構成される。また、電圧を印加する時間は、電着条件によって異なるが、一般には、2〜4分とすることができる。
電着塗膜の膜厚は、好ましくは5〜40μm、より好ましくは10〜25μmとする。膜厚が5μm未満であると、防錆性が不充分となるおそれがある。一方40μmを超えると、塗料の浪費につながる。
上述のようにして得られる電着塗膜を、電着過程の終了後、そのまま又は水洗した後、120〜260℃、好ましくは140〜220℃で、10〜30分間焼付けることによって、焼き付け硬化された電着塗膜が形成される。
複層塗膜形成方法
本発明の複層塗膜形成方法は、
カチオン電着塗料組成物を電着塗装して電着塗膜を形成し、得られた電着塗膜を加熱硬化させて硬化電着塗膜を得る、電着塗装工程、
得られた硬化電着塗膜の上に、上塗りベース塗料組成物を塗布して、未硬化の上塗りベース塗膜を形成する工程、
得られた未硬化の上塗りベース塗膜の上にクリヤー塗料組成物を塗布して、未硬化の上塗りクリヤー塗膜を形成する工程、および
これらの未硬化の上塗りベース塗膜および未硬化の上塗りクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる加熱工程、
を包含する方法である。以下、本発明の方法に用いることができる上塗りベース塗料組成物および上塗りクリヤー塗料組成物を記載する。
上塗りベース塗料組成物
上塗りベース塗料組成物は、上塗りベース樹脂成分、顔料および溶媒を含む。この上塗りベース塗料組成物は、水分散系または有機溶媒分散系を含む、水性型または溶剤型のものである。
上塗りベース塗料組成物が水性上塗りベース塗料組成物である場合、顔料分散剤を用いて予め顔料を分散させた顔料分散ペーストを用いて調製することができる。顔料分散剤としては、市販されているものを使用することができる。市販品としては、例えば、Disperbyk 190、Disperbyk 182、Disperbyk 184(いずれもビックケミー社製)、EFKAPOLYMER4550(EFKA社製)、ソルスパース27000、ソルスパース41000、ソルスパース53095(いずれもアビシア社製)等を挙げることができる。この顔料分散剤の数平均分子量は、1000〜10万であることが好ましい。1000未満であると十分な分散安定性が得られないおそれがあり、10万を超えると粘度が高すぎて取り扱いが困難となるおそれがある。より好ましくは、2000〜5万であり、更に好ましくは、4000〜5万である。
上記顔料分散剤は、顔料とともに公知の方法に従って混合分散して、顔料分散ペーストを得る。上記顔料分散ペースト中の上記顔料分散剤の配合割合は、顔料分散ペーストの固形分に対して、1〜20重量%であることが好ましい。1重量%未満であると、顔料を安定に分散することができず、20重量%を超えると、塗膜の物性に劣る場合がある。好ましくは、5〜15重量%である。
上塗りベース塗料組成物に含まれる顔料としては、例えば、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等の有機系着色顔料;二酸化チタン、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック等の無機着色顔料等が挙げられる。さらに、顔料として、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等の体質顔料を使用してもよい。このような着色顔料、体質顔料を用いることができるほか、光輝性顔料を配合してメタリックベース塗料として用いることもできる。さらに、光輝性顔料を配合せずにレッド、ブルーあるいはブラック等の着色顔料及び/又は体質顔料を配合してソリッド型の上塗りベース塗料組成物として用いることもできる。
上記光輝性顔料としては特に限定されず、例えば、金属又は合金等の無着色若しくは着色された金属性光輝材及びその混合物、干渉マイカ粉、着色マイカ粉、ホワイトマイカ粉、グラファイト又は無色有色偏平顔料等を挙げることができる。分散性に優れ、透明感の高い塗膜を形成することができるため、金属又は合金等の無着色若しくは着色された金属性光輝材及びその混合物が好ましい。その金属の具体例としては、アルミニウム、酸化アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ等を挙げることができる。
上記光輝性顔料の形状は特に限定されず、更に、着色されていてもよいが、例えば平均粒径(D50)が2〜50μmであり、厚さが0.1〜5μmである鱗片状のものが好ましい。平均粒径10〜35μmの範囲のものが光輝感に優れ、より好ましい。
上記顔料は、1種又は2種以上を使用することができ、着色顔料及び体質顔料、並びに、必要に応じ、偏平顔料及び光輝性顔料のなかから、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。光輝性顔料を用いる場合は、着色顔料を主要成分としたカラーベース塗料組成物を用いて塗膜を形成し、その上に光輝性顔料を主要成分とした光輝ベース塗料組成物を用いて塗膜を形成することも可能である。このような方法によって上塗りベース塗膜を形成することも可能であり、そして本発明においては、このような上塗りベース塗膜形成の態様も含んでいる。
水性上塗りベース塗料組成物における、顔料分散ペースト中の顔料分散剤の配合割合は、顔料分散ペーストの固形分に対して、3〜50重量%であることが好ましい。3重量%未満であると、顔料を安定に分散することができず、50重量%を超えると、得られる塗膜の物性が低下するおそれがある。
水性上塗りベース塗料組成物は、上記顔料分散ペーストと、上塗りベース樹脂成分である上塗りベース樹脂及び上塗りベース硬化剤とを混合して調製することができる。上記光輝性顔料及びその他の全ての顔料を含めた上塗りベース塗料組成物中の顔料濃度(PWC)は、一般的には0.1〜50重量%であり、好ましくは0.5〜40重量%であり、より好ましくは1〜30重量%である。50重量%を超えると塗膜外観が低下するおそれがある。
上記水性上塗りベース塗料組成物中の顔料分散剤の含有量は、固形分基準で1〜20重量%であることが好ましい。1重量%未満であると、顔料分散剤の配合量が少ないために顔料の分散安定性に劣る場合がある。20重量%を超えると、得られる塗膜の物性が低下するおそれがある。
上塗りベース塗料樹脂としては特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。また上塗りベース塗料硬化剤としては、例えばメラミン樹脂、アミノ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤などが挙げられる。顔料分散性や作業性の点から、上塗りベース樹脂および上塗りベース硬化剤の組み合わせとして、アクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂と、メラミン樹脂および/またはブロックイソシアネート樹脂を組み合わせたものが好ましい。上塗りベース塗料樹脂および上塗りベース硬化剤はそれぞれ、1種のみ使用することもでき、また塗膜性能のバランス化を計るために、2種又はそれ以上の種類を使用することもできる。
上塗りベース塗料組成物が水性上塗りベース塗料組成物である場合は、上塗りベース塗料樹脂は水溶性のものを使用するか、又は、分散樹脂、界面活性剤等の分散剤を適用して乳化分散することによって、水性上塗りベース塗料中に安定に存在せしめることができる。水性上塗りベース塗料は、更に、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、表面調整剤、ワキ防止剤等の添加剤成分を添加することができる。
上塗りベース塗料組成物が溶剤上塗りベース塗料組成物である場合、上記の上塗りベース塗料樹脂、上塗りベース硬化剤および顔料を、有機溶媒中で撹拌することによって、調製することができる。上記成分の好ましい量は上記と同様である。溶剤上塗りベース塗料組成物の調製に用いることができる有機溶媒として、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトールなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;などが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、また混合して用いてもよい。また、さらに上記成分の他に必要に応じて、顔料分散剤、表面調整剤、粘性制御剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等、当業者によってよく知られている各種添加剤を含むことができる。
上塗りクリヤー塗料組成物
上塗りクリヤー塗料組成物は、上塗りクリヤー樹脂成分、各種添加剤および溶媒を含有する。上塗りクリヤー塗料組成物に含まれる上塗りクリヤー樹脂成分は、上塗りクリヤー塗料樹脂と必要に応じた上塗りクリヤー塗料硬化剤とから構成される。上記上塗りクリヤー塗料組成物に含まれる上塗りクリヤー樹脂成分、各種添加剤および有機溶媒としては、上記上塗りベース塗料組成物に関して記載したものがいずれも使用できる。上塗りクリヤー樹脂成分として、酸無水物基含有アクリル樹脂、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂、または、水酸基とエポキシ基とを有するアクリル樹脂を用いるのがより好ましい。
上塗りクリヤー塗料組成物は、上記の上塗りベース塗料組成物を塗装後、未硬化の状態で塗装するため、粘性制御剤を添加剤として含有することが好ましい。粘度制御剤を加えることによって、塗膜の層間のなじみや反転、またはタレなどを防止することができる。粘性制御剤の添加量は、上塗りクリヤー塗料組成物の樹脂固形分100重量部に対して0.01〜10重量部であるのが好ましく、0.02〜8重量部であるのがより好ましく、0.03〜6重量部であるのがとりわけ好ましい。10重量部を超えると、塗膜外観が低下するおそれがあり、また0.1重量部未満であると、粘性制御効果が得られず、タレ等の不具合を起こす原因となるおそれがある。
上塗りクリヤー塗料組成物は、溶剤型、水性型(水溶性、水分散性、エマルジョン)、非水分散型、粉体型のいずれであってもよい。上塗りクリヤー塗料組成物は、上記成分に加えて、必要に応じて硬化触媒、表面調整剤などを含んでもよい。上塗りクリヤー塗料組成物は、透明性を損なわない程度に上述した着色顔料や光輝材を配合することができ、更に、硬化促進剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を使用することができる。
上塗りクリヤー塗料組成物は、水性上塗りベース塗料組成物または溶剤上塗りベース塗料組成物と同様に調製することができる。また上塗りクリヤー塗料組成物は、例えば特開2002−224613号公報記載の公知の方法によって調製することもできる。また粉体上塗りクリヤー塗料組成物として、例えば、水酸基を有するアクリル樹脂やポリエステル樹脂と、この高分子化合物と反応可能な化合物、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート、ブロックイソシアネート等とを組み合わせたもの、エポキシ基を有するアクリル樹脂と多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物等とを組み合わせたもの等であって、実質的に水や有機溶媒を含有しないものを調製することができる。
複層塗膜形成工程
本発明の複層塗膜形成方法においては、上記電着塗料組成物を用いて形成された硬化電着塗膜の上に未硬化の上塗りベース塗膜を形成する。未硬化の上塗りベース塗膜を形成する方法として、スプレー法、ロールコーター法などを用いて上塗りベース塗料組成物を塗装する方法が挙げられる。塗装方法として具体的には、「リアクトガン」といわれるエアー静電スプレーを用いたり、「マイクロ・マイクロ(μμ)ベル」、「マイクロ(μ)ベル」、「メタベル」などといわれる回転霧化式の静電塗装機を用いたりして塗装するのが好ましい。上塗りベース塗料組成物を自動車車体等に対して塗装する場合の具体的な塗装方法として、エアー静電スプレーによる多ステージ塗装、好ましくは2ステージ塗装を行なうことによって、意匠性を高めることができる。または、エアー静電スプレーと上記の回転式霧化式の静電塗装機とを組合せた塗装方法により、塗装してもよい。
この上塗りベース塗膜を形成することにより、主として意匠性が付与される。上塗りベース塗料組成物は一般に、硬化上塗りベース塗膜の膜厚が5〜50μmとなるよう塗装される。
上塗りベース塗膜の形成後は、加熱硬化させることなく次工程の上塗りクリヤー塗膜の形成工程に移る。上塗りクリヤー塗膜を形成する前に、加熱硬化(焼付け)処理で用いられる温度より低い温度でプレヒートを行なってもよい。
上塗りクリヤー塗膜は、上塗りベース塗膜上に、上塗りクリヤー塗料組成物を塗装することによって得られる。この上塗りクリヤー塗料組成物は、ウェットオンウェット方式で、未硬化の上塗りベース塗膜上に塗装される。
上記上塗りクリヤー塗膜を形成する方法は特に限定されないが、スプレー法、ロールコーター法等が好ましい。上記上塗りクリヤー塗膜の乾燥膜厚は、1コートにつき20〜50μmが好ましく、25〜40μmがより好ましい。上塗りクリヤー塗膜を形成することにより、上塗りベース塗膜が保護され、および得られる複層塗膜に深み感を付与することができる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、重量基準による。
製造例1 アミン変性エポキシ樹脂の調製
攪拌機、冷却管、窒素導入管、温度計および滴下漏斗を装備したフラスコに、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(重量比=8/2)92部、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKと略す)95部およびジブチル錫ジラウレート0.5部を仕込んだ。反応混合物を攪拌下、メタノール21部を滴下した。反応は、室温から始め、発熱により60℃まで昇温した。その後、30分間反応を継続した後、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル50部を滴下漏斗より滴下した。更に、反応混合物に、ビスフェノールA−プロピレンオキシド5モル付加体53部を添加した。反応は主に、60〜65℃の範囲で行い、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失するまで継続した。
次に、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンから既知の方法で合成したエポキシ当量188のエポキシ樹脂365部を反応混合物に加えて、125℃まで昇温した。その後、ベンジルジメチルアミン1.0部を添加し、エポキシ当量410になるまで130℃で反応させた。
続いて、ビスフェノールA61部およびオクチル酸33部を加えて120℃で反応させたところ、エポキシ当量は1190となった。その後、反応混合物を冷却し、ジエタノールアミン11部、N−エチルエタノールアミン24部およびアミノエチルエタノールアミンのケチミン化物の79重量%MIBK溶液25部を加え、110℃で2時間反応させた。その後、MIBKで不揮発分80%となるまで希釈し、アミン変性エポキシ樹脂(樹脂固形分80%)を得た。
製造例2 ブロックイソシアネート硬化剤の調製
ジフェニルメタンジイソシアナート1250部およびMIBK266.4部を反応容器に仕込み、これを80℃まで加熱した後、ジブチル錫ジラウレート2.5部を加えた。ここに、ε−カプロラクタム226部をブチルセロソルブ944部に溶解させたものを80℃で2時間かけて滴下した。さらに100℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、MIBK336.1部を加えてガラス転移温度が0℃のブロックイソシアネート硬化剤を得た。
製造例3 顔料分散樹脂の調製
まず、攪拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器に、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す)222.0部を入れ、MIBK39.1部で希釈した後、ここヘジブチル錫ジラウレート0.2部を加えた。その後、これを50℃に昇温した後、2−エチルヘキサノール131.5部を攪拌下、乾燥窒素雰囲気中で2時間かけて滴下した。適宜、冷却することにより、反応温度を50℃に維持した。その結果、2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(樹脂固形分90.0%)が得られた。
次いで、適当な反応容器に、ジメチルエタノールアミン87.2部、75%乳酸水溶液117.6部およびエチレングリコールモノブチルエーテル39.2部を順に加え、65℃で約半時間攪拌して、4級化剤を調製した。
次に、エポン(EPON)829(シェル・ケミカル・カンパニー社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量193〜203)710.0部とビスフェノールA289.6部とを適当な反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、150〜160℃に加熱したところ、初期発熱反応が生じた。反応混合物を150〜160℃で約1時間反応させ、次いで、120℃に冷却した後、先に調製した2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(MIBK溶液)498.8部を加えた。
反応混合物を110〜120℃に約1時間保ち、次いで、エチレングリコールモノブチルエーテル463.4部を加え、混合物を85〜95℃に冷却し、均一化した後、先に調製した4級化剤196.7部を添加した。酸価が1となるまで反応混合物を85〜95℃に保持した後、脱イオン水964部を加えて、エポキシ−ビスフェノールA樹脂において4級化を終了させ、4級アンモニウム塩部分を有する顔料分散用樹脂を得た(樹脂固形分50%)。
製造例4 顔料分散ペーストおよびカチオン電着塗料組成物(1)の調製
サンドグラインドミルに製造例3で得た顔料分散用樹脂を84部、二酸化チタン39.95部、カーボンブラック0.05部、焼成カオリン60部、ジブチル錫オキサイド4.2部およびイオン交換水100.0部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分50%)。
製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られたブロックイソシアネート硬化剤とを固形分比で80/20で均一になるよう混合した。これに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量(MEQ(A))が30になるよう氷酢酸を添加し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のエマルションを得た。
このエマルション291部および上記顔料分散ペースト107部と、イオン交換水394部とを混合して、固形分20重量%のカチオン電着塗料組成物(1)を得た。なお塗料固形分は、180℃で30分間加熱した後の残渣の質量の、元の質量に対する百分率として求めることができる(JIS K5601に準拠)。
こうして得られたカチオン電着塗料組成物(1)を、リン酸亜鉛処理した溶融亜鉛めっき鋼板(JIS G3302規格品、150×70×0.8mm)に、乾燥塗膜が15μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間焼き付け、硬化電着塗膜を形成し、次いで得られた硬化電着塗膜の色相について、色彩色差計(ミノルタCR300、ミノルタ社製)を用いて、明度指数L値を測定したところL値78であった。
製造例5 顔料分散ペーストおよびカチオン電着塗料組成物(2)の調製
サンドグラインドミルに製造例3で得た顔料分散用樹脂を84部、二酸化チタン40部、焼成カオリン60部、ジブチル錫オキサイド4.2部およびイオン交換水100.0部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分50%)。
製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られたブロックイソシアネート硬化剤とを固形分比で80/20で均一になるよう混合した。これに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量(MEQ(A))が30になるよう氷酢酸を添加し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のエマルションを得た。
このエマルション291部および上記顔料分散ペースト107部と、イオン交換水394部とを混合して、固形分重量20%のカチオン電着塗料組成物(2)を得た。得られたカチオン電着塗料組成物(2)を用いて、製造例4の記載と同様に硬化電着塗膜を形成しその明度指数L値を測定したところ、L値80であった。
製造例6 顔料分散ペーストおよびカチオン電着塗料組成物(3)の調製
サンドグラインドミルに製造例3で得た顔料分散用樹脂を84部、二酸化チタン39.84部、カーボンブラック0.16部、焼成カオリン60部、ジブチル錫オキサイド4.2部およびイオン交換水100.0部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分50%)。
製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られたブロックイソシアネート硬化剤とを固形分比で80/20で均一になるよう混合した。これに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量(MEQ(A))が30になるよう氷酢酸を添加し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のエマルションを得た。
このエマルション291部および上記顔料分散ペースト107部と、イオン交換水394部とを混合して、固形分重量20%のカチオン電着塗料組成物(3)を得た。得られたカチオン電着塗料組成物(3)を用いて、製造例4の記載と同様に硬化電着塗膜を形成しその明度指数L値を測定したところ、L値75であった。
製造例7 顔料分散ペーストおよびカチオン電着塗料組成物(4)の調製
サンドグラインドミルに製造例3で得た顔料分散用樹脂を84部、二酸化チタン98部、SYMULER FAST YELLOW 4192 ベンツイミダゾロン(黄色顔料、大日本インキ工業(株)製)0.8部、FASTONGN SUPER MAGENTA R キナクリドン(赤紫色顔料、大日本インキ工業(株)製)0.8部、FASTONGN SUPER BULE 6070S インダンスロン(青色顔料、大日本インキ工業(株)製)0.8部、ジブチル錫オキサイド4.2部およびイオン交換水100.0部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分50%)。
製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られたブロックイソシアネート硬化剤とを固形分比で80/20で均一になるよう混合した。これに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量(MEQ(A))が30になるよう氷酢酸を添加し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のエマルションを得た。
このエマルション291部および上記顔料分散ペースト107部と、イオン交換水394部とを混合して、固形分重量20%のカチオン電着塗料組成物(4)を得た。得られたカチオン電着塗料組成物(4)を用いて、製造例4の記載と同様に硬化電着塗膜を形成しその明度指数L値を測定したところ、77であった。
比較製造例1 顔料分散ペーストおよびカチオン電着塗料組成物(5)の調製
サンドグラインドミルに製造例3で得た顔料分散用樹脂を84部、二酸化チタン37.4部、カーボンブラック2.6部、焼成カオリン60部、ジブチル錫オキサイド4.2部およびイオン交換水100.0部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分50%)。
製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られたブロックイソシアネート硬化剤とを固形分比で80/20で均一になるよう混合した。これに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量(MEQ(A))が30になるよう氷酢酸を添加し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のエマルションを得た。
このエマルション291部および上記顔料分散ペースト107部と、イオン交換水394部とを混合して、固形分重量20%のカチオン電着塗料組成物(5)を得た。得られたカチオン電着塗料組成物(5)を用いて、製造例4の記載と同様に硬化電着塗膜を形成しその明度指数L値を測定したところ、L値28であった。
比較製造例2 顔料分散ペーストおよびカチオン電着塗料組成物(6)の調製
サンドグラインドミルに製造例3で得た顔料分散用樹脂を84部、二酸化チタン39.08部、カーボンブラック0.92部、焼成カオリン60部、ジブチル錫オキサイド4.2部およびイオン交換水100.0部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分50%)。
製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られたブロックイソシアネート硬化剤とを固形分比で80/20で均一になるよう混合した。これに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量(MEQ(A))が30になるよう氷酢酸を添加し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のエマルションを得た。
このエマルション291部および上記顔料分散ペースト107部と、イオン交換水394部とを混合して、固形分20重量%のカチオン電着塗料組成物(6)を得た。得られたカチオン電着塗料組成物(6)を用いて、製造例4の記載と同様に硬化電着塗膜を形成しその明度指数L値を測定したところ、L値48であった。
比較製造例3 顔料分散ペーストおよびカチオン電着塗料組成物(7)の調製
サンドグラインドミルに製造例3で得た顔料分散用樹脂を84部、二酸化チタン39.44部、カーボンブラック0.56部、焼成カオリン60部、ジブチル錫オキサイド4.2部およびイオン交換水100.0部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分50%)。
製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られたブロックイソシアネート硬化剤とを固形分比で80/20で均一になるよう混合した。これに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量(MEQ(A))が30になるよう氷酢酸を添加し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のエマルションを得た。
このエマルション291部および上記顔料分散ペースト107部と、イオン交換水394部とを混合して、固形分重量20%のカチオン電着塗料組成物(7)を得た。得られたカチオン電着塗料組成物(7)を用いて、製造例4の記載と同様に硬化電着塗膜を形成しその明度指数L値を測定したところ、L値59であった。
実施例1
リン酸亜鉛処理した溶融亜鉛めっき鋼板(JIS G3302規格品、150×70×0.8mm)に、製造例4より得られたカチオン電着塗料組成物(1)を、乾燥塗膜が15μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間焼き付け、硬化電着塗膜を得た。
得られた硬化電着塗膜上に、アクアレックス2000ホワイト、パールホワイト、赤、シルバーメタリック、黒(いずれも日本ペイント社製水性塗料組成物)のいずれかをエアスプレー塗装にて硬化塗膜の膜厚が15μmとなるように塗装し、80℃で3分プレヒートを行った。更に、その塗板にマックフローO−1800W−2クリヤー(日本ペイント社製酸エポキシ硬化型クリヤー塗料組成物)をエアスプレー塗装にて35μm塗装した後、140℃で30分焼付けを行い、複層塗膜を有する試験片を得た。なお、水性上塗りベース塗料組成物(アクアレックスAR−2000ベース)、上塗りクリヤー塗料組成物(マックフローO−1800W−2クリヤー)は、下記条件で希釈し、塗装した。
希釈溶媒:イオン交換水、45秒/No.4フォードカップ/20℃(水性上塗りベース塗料組成物)
希釈溶媒:EEP(エトキシエチルプロピオネート)/S−150(エクソン社製芳香族系炭化水素溶剤)=1/1、30秒/No.4フォードカップ/20℃(上塗りクリヤー塗料組成物)
実施例2〜4および比較例1〜3
カチオン電着塗料組成物(1)の代わりに、カチオン電着塗料組成物(2)〜(7)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、複層塗膜を形成した。
複層塗膜の色相評価
実施例および比較例で得られた複層塗膜の色相について、色彩色差計(ミノルタCR300、ミノルタ社製)を用いて、L値、a値、b値を測色し、標準塗色(基準板)との△Eを求めた。△Eは下記式より求めた。
Figure 2009050793
なお、上記L値、a値及びb値は、JIS Z 8722およびJIS Z 8730に準拠して求められる値である。L値は明度指数であり、a値及びb値は、ハンターの色差式におけるクロマティクネス指数と呼ばれるものである。クロマティクネス指数であるa値は、0を基準に、数値がマイナスになる場合は被測定物質の色相において緑色度が、数値がプラスになる場合は赤色度が増すことを意味する。クロマティクネス指数であるb値は、0を基準に、数値がマイナスになる場合は被測定物質の色相が青色度を、プラスになる場合は黄色度を増すことを意味する。
基準板の作成は以下の通り行った。リン酸亜鉛処理した溶融亜鉛めっき鋼板(JIS G3302規格品、150×70×0.8mm)に、カチオン電着塗料「パワートップU−50」(日本ペイント社製)を含む電着槽にて乾燥塗膜が15μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間焼き付け、硬化電着塗膜を得た。硬化電着塗膜上に、グレー色の中塗り塗料「オルガP−2グレー」(日本ペイント社製、ポリエステル・メラミン樹脂系塗料)を、乾燥膜厚が30μmとなるようにスプレー塗装し、140℃で20分間焼き付けて、中塗り塗膜を形成した。得られた中塗り塗膜上に、各実施例または比較例で用いた上塗りベース塗料組成物および上塗りクリヤー塗料組成物を、各実施例または比較例と同様に塗装および焼き付け硬化を行い、基準板である、複層塗膜を有する標準塗装塗板を作製した。
得られた複層塗膜と基準板との数値間の差が小さい程、つまり△E値が小さい程、基準板との色差が小さく良好である事を示す。評価基準を下記に示す。
○ :△Eが1以下である。
△ :△Eが1を超え3以下である。
× :△Eが3を超える。
Figure 2009050793
本実験例においては、特定の明度L値を有する硬化電着塗膜を用いて、白、赤、シルバー、黒といった様々な塗色の複層塗膜を形成している。
なお基準板として、中塗り塗膜を形成した複層塗膜を用いている。そして実施例の方法においては、特定の明度L値の硬化電着塗膜の上に様々な塗色の複層塗膜を形成した場合であっても、基準板との△E値が小さく、中塗り塗膜を含む複層塗膜と比較して遜色ない意匠性(色相、発色性)が得られていることが確認できた。実施例においては、明度指数L値が特定範囲となる電着塗料組成物1種類を用いることによって、中塗り塗膜を形成しない場合であっても、様々な色相の上塗り塗料組成物を用いた複層塗膜の形成に対応できることが確認できた。
一方、比較例の方法においては、ホワイト、パールホワイトといった淡色塗色において、基準板との△E値が大きくなることが確認された。
また実施例4の結果から分かるように、本発明の方法において太陽熱遮熱顔料を用いても良好な意匠性が確保されることが確認できた。このように太陽熱遮熱顔料を用いることによって、上記効果に加えてさらに、カーボンブラックを用いていないことにより塗装物内部温度上昇抑制効果が得られるという利点がある。
本発明の複層塗膜形成方法は、中塗り塗膜の形成が省略されているにも関わらず、従来の中塗り塗膜を含む複層塗膜と比較して遜色ない意匠性(色相、発色性)が得られることを特徴とする。本発明の複層塗膜形成方法は、中塗り塗膜の形成が省略されているため、塗装工程において生じる揮発性成分が低減されている。また本発明の複層塗膜形成方法は、中塗り塗膜形成工程を含んでいないため、塗装工程における総工程数が減少されており、これにより塗装工程における省エネルギー化が達成されている。

Claims (3)

  1. カチオン電着塗料組成物を電着塗装して電着塗膜を形成し、得られた電着塗膜を加熱硬化させて硬化電着塗膜を得る、電着塗装工程、
    得られた硬化電着塗膜の上に、上塗りベース塗料組成物を塗布して、未硬化の上塗りベース塗膜を形成する工程、
    得られた未硬化の上塗りベース塗膜の上にクリヤー塗料組成物を塗布して、未硬化の上塗りクリヤー塗膜を形成する工程、および
    該未硬化の上塗りベース塗膜および未硬化の上塗りクリヤー塗膜を同時に加熱硬化させる加熱工程、
    を包含する、複層塗膜形成方法であって、
    該カチオン電着塗料組成物は、明度指数L値が75以上である硬化電着塗膜が形成されるカチオン電着塗料組成物である、
    複層塗膜形成方法。
  2. 前記カチオン電着塗料組成物は、
    黄色顔料、赤紫色顔料および青色顔料から構成される太陽熱遮熱顔料、および
    白色顔料、
    を含む、請求項1記載の複層塗膜形成方法。
  3. 請求項1または2記載の複層塗膜形成方法により得られる複層塗膜。
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