JP7453539B2 - 抵抗スポット溶接継手、自動車部材、ハット型部材、及び抵抗スポット溶接継手の製造方法 - Google Patents

抵抗スポット溶接継手、自動車部材、ハット型部材、及び抵抗スポット溶接継手の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、抵抗スポット溶接継手、自動車部材、ハット型部材、及び抵抗スポット溶接継手の製造方法に関する。
近年、自動車分野では、低燃費化及びCO排出量の削減等のために、車体を軽量化することが求められている。さらに自動車分野では、衝突安全性の向上のために、車体部材を高強度化することが求められている。これらの要求を満たすためには、車体部材等の各種部品の材料を、高強度鋼板とすることが有効である。
また、車体の高防錆化の観点から、部材を耐食性に優れた鋼板で構成する必要がある。亜鉛系めっき鋼板は、耐食性が良好であることが幅広く知られている。上記の軽量化、及び高強度化の観点から、自動車用として用いられる亜鉛系めっき鋼板は、高強度鋼板と接合されたり、そのめっき原板が高強度鋼板とされたりすることが通常である。
自動車の車体の組立、及び部品の取付けなどの工程では、主として、スポット溶接が使われている。しかしながら、亜鉛系めっきを有する高強度鋼板、又は亜鉛系めっき鋼板と接する高強度鋼板にスポット溶接を行うと、割れが発生するという問題がある。
この割れの原因の一つは、電極によって加えられる加圧力、並びに鋼板の熱膨張及び収縮による引張応力などが溶接箇所に加わることであると考えられている。もう一つの原因は、溶接箇所で溶融した亜鉛、及び亜鉛と電極の銅との合金等が、高強度鋼板の結晶粒界に侵入して粒界強度を低下させて引き起こされる、いわゆる液体金属脆化であると考えられている。自動車車体では、溶接箇所の割れが著しいと部材強度が低下するという問題がある。この問題を解決するために、鋼板の成分組成及び組織などを制御することにより、溶接箇所の割れを抑制する技術が知られている。
特許文献1には、少なくとも、引張強度が1180MPa以上の鋼板またはその成形体である第1の構成部材と、他の鋼板またはその成形体であって第1の構成部材に重ねられてスポット溶接された第2の構成部材とを備える重ね溶接部材が開示されている。ここで、重ね溶接部材は、スポット溶接により形成されたナゲットと、重ね溶接部材の長手方向にナゲットに隣接して少なくとも前記第1の構成部材側に設けられた長穴とを有し、長穴は、ナゲットの周囲に形成されているHAZ最軟化部にかからないように設けられている。しかしながら、特許文献1に開示された技術は、HAZ最軟化部での破断を目的とするものであり、溶接時の割れに関しては何ら検討されておらず、そのための具体的な構成も開示されていない。
特許文献2には、引張強さが980MPa以上の鋼板を他の金属板と重ね合わせて溶接により接合した構成を有する構造材において、溶接による溶接部付近を起点とする破断が発生しにくくする技術が開示されている。構造材は、引張強さが980MPa以上の鋼板である第1部材と、前記第1部材と重ね合わされる金属板である第2部材と、複数の溶接部と、複数の溶接部それぞれの周囲に形成され、ビッカース硬さが第1部材のビッカース硬さより50HV以上低い複数の熱影響部とを備える。隣り合う熱影響部の間において、第1部材の一対の端部が設けられる。隣り合う熱影響部の間における第1部材の一対の端部は、隣り合う溶接部を結ぶ線を横切る方向に延びる。しかしながら、特許文献2に記載の切り欠きは、フランジの端部から連続して設けられた物である。このような切り欠きは、継手や部材の剛性を損なう恐れがある。また、特許文献2にはフランジに穴を設ける構成が開示されているが、この穴は、溶接箇所から離れているので、溶接箇所の引張応力を緩和する効果を発揮し得ないと考えられる。
特開2015-3552号公報 国際公開第2019/087310号
本発明は、亜鉛系めっきと接する高強度鋼板を含みながら、溶接箇所での割れの発生が抑制された抵抗スポット溶接継手、自動車部材、及びハット型部材を提供することを課題とする。さらに本発明は、溶接箇所での割れの発生を抑制可能な、亜鉛系めっきと接する高強度鋼板を含む抵抗スポット溶接継手の製造方法を提供することを課題とする。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)本発明の一態様に係る抵抗スポット溶接継手は、重ねられた複数の鋼板と、前記鋼板を接合する1つ以上のナゲットと、を備え、前記鋼板のうち1枚以上は、引張強さが780MPa以上の高強度鋼板であり、前記鋼板のうち1枚以上は、その表面に亜鉛系めっきを有し、前記高強度鋼板のうち1枚以上は、前記亜鉛系めっきと接し、前記亜鉛系めっきと接する前記高強度鋼板のうち1枚以上は、1つ以上の前記ナゲットの周囲に配された1つ以上の穴を有し、平面視において、前記穴と、前記穴に最も近い前記ナゲットとの最短距離が1.5mm以上であり、平面視において、前記穴のうち、前記穴に最も近い前記ナゲットの中心から半径3.5×dn(dn:前記穴に最も近い前記ナゲットの直径)以内の領域にある部分が、有効応力緩和部と定義され、平面視において、前記有効応力緩和部の重心と前記穴に最も近い前記ナゲットの前記中心とを結んだ直線に垂直な直線に対し、前記有効応力緩和部を投影した長さがdn以上である。
(2)上記(1)に記載の抵抗スポット溶接継手では、平面視において、前記有効応力緩和部の幅が20mm以下であってもよい。
(3)上記(1)又は(2)に記載の抵抗スポット溶接継手では、前記穴の外周が面取りされていてもよい。
(4)本発明の別の態様に係る自動車部材は、上記(1)~(3)のいずれか一項に記載の抵抗スポット溶接継手を備える。
(5)本発明の別の態様に係るハット型部材は、頂面部と、前記頂面部の両側に設けられた側面部と、前記側面部の端部に設けられたフランジ部と、を有する第1部材と、平板形状を有する第2部材と、を備え、前記第1部材と前記第2部材とが、前記フランジ部において、上記(1)~(3)のいずれか一項に記載の抵抗スポット溶接継手によって接合される。
(6)上記(5)に記載のハット型部材では、前記穴が、前記第1部材に設けられ、前記穴が、前記フランジ部と前記側面部との境界である屈曲部と、前記ナゲットとの間の領域を避けて配されてもよい。
(7)本発明の別の態様に係る抵抗スポット溶接継手の製造方法は、引張強さが780MPa以上の高強度鋼板に1つ以上の穴を形成する工程と、前記穴が形成された1枚以上の前記高強度鋼板と、亜鉛系めっきとが接するように、複数の鋼板を重ね合わせる工程と、抵抗スポット溶接によってナゲットを形成する工程と、を備え、平面視において、前記穴と、前記穴に最も近い前記ナゲットとの最短距離を1.5mm以上とし、前記穴に最も近い前記ナゲットの直径をdnと定義し、平面視において、前記穴のうち、前記穴に最も近い前記ナゲットの中心から半径3.5×dn以内の領域にある部分を、有効応力緩和部と定義し、平面視において、前記有効応力緩和部の重心と前記穴に最も近い前記ナゲットの前記中心とを結んだ直線に垂直な直線に対し、前記有効応力緩和部を投影した長さをdn以上とする。
(8)上記(7)に記載の抵抗スポット溶接継手の製造方法は、前記穴を形成する工程の前に、割れが生じる領域を推定する工程と、前記割れが生じる領域を、前記ナゲットと前記穴との間とするように、前記穴及び前記ナゲットの位置を決定する工程と、をさらに備えてもよい。
(9)上記(8)に記載の抵抗スポット溶接継手の製造方法は、有限要素法を用いて推定される、前記ナゲットの周囲の引張応力発生領域を、前記割れが生じる領域と推定してもよい。
本発明によれば、亜鉛系めっきと接する高強度鋼板を含みながら、溶接箇所での割れの発生が抑制された抵抗スポット溶接継手、自動車部材、及びハット型部材を提供することができる。さらに本発明によれば、溶接箇所での割れの発生を抑制可能な、亜鉛系めっきと接する高強度鋼板を含む抵抗スポット溶接継手の製造方法を提供することができる。
本発明に係る抵抗スポット溶接継手の一例を示す断面図である。 本発明に係る抵抗スポット溶接継手の一例を示す断面図である。 本発明に係る抵抗スポット溶接継手における、ナゲット及び穴の一例の平面図である。 本発明に係るハット型部材の一例を示す斜視図である。 本発明の効果を検証するための実験例の平面図である。 本発明の効果を検証するための実験例の平面図である。 本発明の効果を検証するための実験例の平面図である。 本発明の効果を検証するための実験例の平面図である。 本発明の効果を検証するための実験例の平面図である。 本発明の効果を検証するための実験例の平面図である。 本発明の効果を検証するための実験例の平面図である。 本発明の効果を検証するための実験例の平面図である。 本発明の効果を検証するための実験例の平面図である。 本発明の効果を検証するための実験例の平面図である。
高強度鋼板を含み、且つ亜鉛系めっきを含むスポット溶接継手において、溶接部が割れる原因は、(1)抵抗スポット溶接の際に溶接部に生じる引張応力、及び(2)液体金属の存在であると推定される。これら2つの現象のうち1つを取り除くことで、溶接部の割れを抑制できると考えられる。本発明者らは、溶接部に生じる引張応力を緩和する手段について鋭意検討した。
抵抗スポット溶接の際、溶接部に引張応力を生じさせるのは、例えば以下の外乱因子であると推定される。
(a)溶接電極の軸芯と、該溶接電極と接触する鋼板表面の垂線とが平行でない状態
(b)一方の溶接電極の先端部から該先端部に最も近い鋼板表面までの距離と、他方の溶接電極の先端部から該先端部に最も近い鋼板表面までの距離が異なる状態
(c)一方の前記溶接電極の軸芯の延長線上に他方の前記溶接電極の軸芯がない状態
(d)溶接箇所の重ね合わせ面の間に隙間を有した状態
上記のような外乱因子が存在する場合、溶接電極の加圧保持終了後(電極解放後)において、溶接部のコロナボンド直外、及びコロナボンドのナゲット際に、引張応力が高くなる箇所が生じる。
これらの外乱因子を取り除く手段として、例えば製造設備の位置決め精度、及び鋼板の形状精度を高めることが考えられる。しかし、これら手段は部品の製造工程を複雑化することとなり好ましくない。
そこで本発明者らは、外乱因子の存在を許容しながら、溶接部に生じる引張応力を緩和する手段を検討した。そして本発明者らは、抵抗スポット溶接の前に、ナゲットを形成すべき箇所の近傍に所定形状の穴を設けることが、引張応力の緩和のために極めて有効であることを知見した。穴の近傍にナゲットを形成すると、たとえ上述のような外乱因子があったとしても、穴の存在により溶接部の変形に対する周囲からの拘束が低下するため、溶接部の熱膨張・収縮に伴い発生する引張応力が減少したり、電極解放時のスプリングバックに起因する引張応力が減少したりして、ひいては溶接部の割れを抑制することができる。
なお、応力緩和の効率性の観点からは、穴とナゲットとの間の距離は小さいことが好ましいことがわかった。一方、穴がナゲットに近すぎる場合、後述するように溶接中の散り発生が容易となる他、ナゲットの周囲のコロナボンド部と穴とが重なって、コロナボンド部の面積が減少し、溶接部の接合強度が低下することがわかった。従って、接合強度の観点からは、穴とナゲットとの間の距離は離れていることが好ましいと本発明者らは考えた。以上の本発明者らの知見によれば、穴とナゲットとの間の距離を最適化することが必要である。
また、穴の有効応力緩和部の投影長さがdn(ナゲット径、すなわちナゲット直径)以上である限り、部材の強度や剛性の観点から、穴の幅は小さいほうが好ましい。
以上の知見に基づいて得られた、本発明の一態様に係る抵抗スポット溶接継手1は、重ねられた複数の鋼板11と、鋼板11を接合する1つ以上のナゲット12と、を備え、鋼板11のうち1枚以上は、引張強さが780MPa以上の高強度鋼板11’であり、鋼板11のうち1枚以上は、その表面に亜鉛系めっき111を有し、高強度鋼板11’のうち1枚以上は、亜鉛系めっき111と接し、亜鉛系めっき111と接する高強度鋼板11’のうち1枚以上は、1つ以上のナゲット12の周囲に配された1つ以上の穴13を有し、平面視において、穴13と、穴13に最も近いナゲット12との最短距離が1.5mm以上であり、平面視において、穴13のうち、穴13に最も近いナゲット12の中心から半径3.5×dn(dn:穴13に最も近いナゲット12の直径)以内の領域にある部分が、有効応力緩和部131と定義され、平面視において、有効応力緩和部131の重心と穴13に最も近いナゲット12の中心とを結んだ直線に垂直な直線に対し、有効応力緩和部131を投影した長さがdn以上である。以下に、本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手1について詳細に説明する。
本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手1は、図1に示されるように、複数の鋼板11と、これらを接合する1つ以上のナゲット12とを有する。ナゲット12とは、鋼板11が抵抗スポット溶接によって溶融し、次いで凝固することにより形成された、いわゆる溶融凝固部である。ナゲット12の周囲には、コロナボンド(図示されない)が形成されることが通常である。コロナボンドとは、重ね抵抗溶接において、ナゲットの周辺に生じる固相溶接されたリング状の部分である(JIS Z 3001-6:2013「溶接用語-第6部:抵抗溶接」)。なお、本実施形態では、用語「溶接部」を、ナゲット及びコロナボンドの両方から構成される、鋼板11の接合に貢献する領域の総称として用いる場合がある。
ナゲット12の個数及び配置は特に限定されず、抵抗スポット溶接継手1の形状に応じて適宜選択することができる。例えば抵抗スポット溶接継手1が後述するハット型部材2に含まれる場合、ナゲット12は、フランジ部213の延在方向に沿って一定間隔で、複数個配されることが通常である。また、ナゲット12の大きさ及び形状も特に限定されず、通常の範囲内で適宜選択することができる。例えば、ナゲット12の直径dnを2.0~8.0mmと規定してもよい。なお、ナゲット径dnは、ナゲット中心(鋼板11を平面視したときに視認できるインデンテーションの中心に等しい)を通り、鋼板11の表面に垂直に切断した断面において測定される値である。なお、散りが発生した場合、散りとナゲットとは、区別することができる。散りを除いたナゲットの部分の直径をナゲット径とする。
ナゲット12の直径dnは、全てのナゲット12において一定でもよいし、ナゲット12毎に異ならせてもよい。なお、後述する穴13の形状と位置は、ナゲット12の直径dnに応じて規定される。ナゲット12の直径dnがナゲット12毎に相違する場合、穴13に最も近いナゲット12の直径dnに基づいて、穴13の形状と位置を特定すればよい。
複数の鋼板11の枚数は特に限定されない。図1には、鋼板11の枚数が3枚である抵抗スポット溶接継手1を例示したが、鋼板11の枚数が2枚であっても、4枚以上であってもよい。
鋼板11のうち少なくとも1枚は、引張強さが780MPa以上とされる。本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手1では、引張強さが780MPa以上の鋼板を、高強度鋼板11’と称し、それ以外の鋼板を低強度鋼板11’’と称する。抵抗スポット溶接継手1を構成する複数の鋼板11のうち1枚以上を高強度鋼板11’とすることで、抵抗スポット溶接継手1の強度を飛躍的に高めることができる。
なお、高強度鋼板11’の枚数、及び配置は特に限定されない。図1に例示された抵抗スポット溶接継手1では、高強度鋼板11’が2枚である。しかしながら、高強度鋼板11’が1枚、又は3枚であってもよい。また、図1に例示された抵抗スポット溶接継手1では、2枚の高強度鋼板11’が接している。しかしながら、2枚の高強度鋼板11’の間に低強度鋼板11’’が挟まれていてもよい。
さらに、鋼板11のうち少なくとも1枚は、その表面に亜鉛系めっき111を有する。即ち、鋼板11のうち1枚以上は亜鉛系めっき鋼板である。亜鉛系めっき111とは、亜鉛を主成分とするめっきであり、例えば溶融亜鉛めっき(GI)、合金化溶融亜鉛めっき(GA)、及び電気亜鉛めっき(EG)等である。亜鉛系めっき鋼板は耐食性に優れるので、抵抗スポット溶接継手1を構成する鋼板11のうち1枚以上の表面に亜鉛系めっき111を設けることにより、抵抗スポット溶接継手1の耐食性を高めることができる。
なお、亜鉛系めっき111をいずれの鋼板11に配してもよい。図1に例示された抵抗スポット溶接継手1では、亜鉛系めっき111が、抵抗スポット溶接継手1の片方の表面に配された低強度鋼板11’’のみに設けられている。しかしながら、亜鉛系めっき111が、2枚以上の鋼板11に配されていてもよい。また、図2に例示されるように、亜鉛系めっき111が高強度鋼板11’に配されていてもよい。また、図1及び図2のいずれにおいても、亜鉛系めっき111は鋼板11の両面に配されているが、亜鉛系めっき111が鋼板11の片面のみに配されてもよい。
抵抗スポット溶接継手1を構成する複数の鋼板11のうち1枚以上を高強度鋼板11’とし、且つ、複数の鋼板11のうち1枚以上を亜鉛系めっき鋼板とした場合、高強度鋼板11’と亜鉛系めっき111とが接しうる。ここで、「高強度鋼板11’と亜鉛系めっき111とが接する」とは、亜鉛系めっき111が設けられていない高強度鋼板11’が、亜鉛系めっき111が設けられた鋼板11と接していること、及び、高強度鋼板11’の表面に亜鉛系めっき111が設けられていることの両方を意味する。
例えば、図1に例示される抵抗スポット溶接継手1では、上から一番目の低強度鋼板11’’だけがその両面に亜鉛系めっき111を有し、上から二番目、及び三番目の高強度鋼板11’は亜鉛系めっき111を有しない。この図1の抵抗スポット溶接継手1では、上から一番目の低強度鋼板11’’と上から二番目の高強度鋼板11’との間で、高強度鋼板11’と亜鉛系めっき111とが接している。図1の抵抗スポット溶接継手1では、上から二番目の高強度鋼板11’が、亜鉛系めっき111と接する高強度鋼板11’である。
また、図2に例示される抵抗スポット溶接継手1では、上から三番目に配された高強度鋼板11’だけがその両面に亜鉛系めっき111を有し、上から一番目の低強度鋼板11’’、及び上から二番目の高強度鋼板11’は亜鉛系めっき111を有しない。この図2の抵抗スポット溶接継手1では、上から二番目の高強度鋼板11’と三番目の高強度鋼板11’との間、及び抵抗スポット溶接継手1の下側の表面において、高強度鋼板11’と亜鉛系めっき111とが接している。図2の抵抗スポット溶接継手1では、上から二番目の高強度鋼板11’及び上から三番目の高強度鋼板11’が、亜鉛系めっき111と接する高強度鋼板11’である。
亜鉛系めっき111と接する高強度鋼板11’に形成された溶接部においては、割れが生じやすい。この原因は、(1)抵抗スポット溶接の際に溶接部に生じる引張応力、及び(2)液体金属の存在であると推定される。なお、液体金属脆化は、亜鉛系めっき111が高強度鋼板11’の表面に設けられている場合も、亜鉛系めっき111が高強度鋼板11’に接する低強度鋼板の表面に設けられている場合も生じうる。
そこで、本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手1では、亜鉛系めっき111と接する高強度鋼板11’のうち1枚以上において、ナゲット12の周囲に穴13を形成する。この穴13は、抵抗スポット溶接をしてナゲット12を形成する前に、予め高強度鋼板11’に設けられるものである。穴13は、抵抗スポット溶接の際に種々の外乱因子によって生じる引張応力を緩和する。そのため、穴13は、抵抗スポット溶接時に生じる割れを抑制することができる。
なお、亜鉛系めっき111と接する高強度鋼板11’が2枚以上ある場合、いずれの高強度鋼板11’に穴13を設けてもよい。穴13を設ける高強度鋼板11’の枚数も、1枚以上の任意の数とすることができる。図2に例示される抵抗スポット溶接継手1では、穴13は、亜鉛系めっき111と接する2枚の高強度鋼板11’のうち、上から二番目のもののみに形成されている。しかし、穴13を、亜鉛系めっき111と接する高強度鋼板11’のうち上から三番目のもののみに形成してもよいし、上から二番目及び三番目の高強度鋼板11’の両方に形成してもよい。割れを抑制する観点からは、穴を設ける高強度鋼板11’の数が多いほうが好ましく、継手強度を確保する観点からは、穴を設ける高強度鋼板11’の数が少ないほうが好ましい。抵抗スポット溶接継手1の用途及び形状などに応じて、穴を設ける高強度鋼板11’の数を適宜選択することが好ましい。
一方、穴13の位置及び大きさを最適化しなければ、望ましい抵抗スポット溶接継手1を得ることはできない。以下に、穴13の位置及び大きさを、図3を参照しながら説明する。図3は、本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手1のナゲット12及び穴13を平面視したものである。図3において、ナゲット12の平面視での形状は円とされているが、散りが発生すると円ではなくなる。しかし、散りとナゲットとは区別できるので、散りを除いたナゲットの部分で直径を測定する。
まず、穴13とナゲット12との間隔が小さすぎると、コロナボンドが生じる箇所と穴13とが重なるおそれがある。この場合、穴13においてコロナボンドが形成されず、接合強度が低下する。また、穴13とナゲット12との間隔が小さすぎると、抵抗スポット溶接の際に、穴13から溶融金属が散りとして飛散するおそれがある。従って、平面視において、穴13とナゲット12との間の最短距離を1.5mm以上とする必要がある。即ち穴13は、抵抗スポット溶接継手1を平面視した図面である図3に示される、ナゲット12の端部から1.5mm未満の領域aの内部に入り込んでいてはならない。好ましくは、平面視において、穴13とナゲット12との間の最短距離は1.7mm以上、2.0mm以上、又は2.2mm以上である。
また、穴13とナゲット12との間隔が大きすぎると、応力緩和効果が期待できない。具体的には、平面視において、ナゲット12の中心から、ナゲットの直径dn(散りがある場合は、散りを除いたナゲット12の直径)の3.5倍超離れた領域に設けられた穴は、応力緩和効果を発揮しないと考えられる。換言すると、図3に示された、ナゲット12の中心から3.5×dn以下の領域bの内部に存在する穴13だけが、応力緩和効果を発揮すると考えられる。本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手1では、ナゲット12の中心から3.5×dn以下の領域bの内部に存在する穴13を、有効応力緩和部131と称する。
本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手1では、この有効応力緩和部131がナゲット12を覆う範囲が規定される。具体的には、平面視において、穴13の有効応力緩和部131の重心と、この穴13に最も近いナゲット12の中心とを結んだ直線cに関して垂直な直線dに、前記有効応力緩和部を投影した長さe(以下、投影長さeと称する場合がある)が、最も近いナゲット12の直径dn以上と規定される。投影長さeがdn未満である場合、穴13による応力緩和が不十分となり、高強度鋼板11’の割れを効果的に抑制できないおそれがある。投影長さeを1.1×dn以上、1.2×dn以上、又は1.5×dn以上としてもよい。
上述の規定を満たす限り、穴13の構成は特に限定されず、抵抗スポット溶接継手1の用途に応じて適宜変更することができる。以下に、穴13の好適な例について述べる。
有効応力緩和部131の幅wは、平面視において、20mm以下であることが好ましい。ここで「有効応力緩和部131の幅w」とは、ナゲット12の中心を通る任意の仮想的な直線のうち、有効応力緩和部131と重なる箇所の長さの最大値である。従って、有効応力緩和部131の幅wを求める際は、例えば、(1)ナゲット12及び穴13が視野内に含まれるように、抵抗スポット溶接継手1の平面視の写真を撮影し、(2)ナゲット12の中心を通る直線を、その直線と有効応力緩和部131とが重なる箇所が最も長くなるように、写真に記入し、(3)その直線と有効応力緩和部131とが重なる箇所の長さを測定すればよい。
一方、有効応力緩和部131の幅wの下限値は特に規定されない。例えば、穴13(及び有効応力緩和部131)は、平面視において、幅が実質的に0mmであるスリット状であってもよい。この場合であっても、穴13は抵抗スポット溶接時の鋼板の歪みに応じて変形するので、応力緩和効果を発揮する。本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手における「穴」とは、切込み(スリット)をも含む概念である。ただし、穴13がスリット状であった場合、抵抗スポット溶接の完了後に、穴13の終端における応力集中が問題となるおそれがある。そのため、平面視において、有効応力緩和部131の幅wを0.2mm以上とすることが好ましい。また、同様の理由により、穴13の終端が0.1mm以上の曲率半径を有することが好ましい。
穴13は、任意の形状とすることができる。図3には、平面視で長方形形状を有する穴13が例示されているが、例えば平面視での穴13の外周が、面取りされていてもよい。面取りされた外周とは、応力集中が生じるような角部を含まない外周(即ち、直線部と、これら直線部を接続する曲線部とからなる外周)を意味する。穴13の外周が角部を含まない場合、抵抗スポット溶接継手1の強度を一層高めることができる。また、穴13は、ナゲット12の外形に沿った円弧状とすることが好ましい。
ナゲットを複数備える抵抗スポット溶接継手の場合、穴13の個数は特に限定されず、抵抗スポット溶接継手1の形状に応じて適宜選択することができる。例えば抵抗スポット溶接継手1が後述するハット型部材2に含まれる場合、ナゲット12は、フランジ部213の延在方向に沿って一定間隔で、複数個配されることが通常である。この場合、穴13は、各ナゲット12の周囲に配置することができる。ただし、全てのナゲット12の周囲に穴13を配置する必要はない。引張応力の生じやすさは、部材形状に影響される。部材の形状次第で、引張応力が生じやすいナゲット12と、引張応力が生じにくいナゲット12とが、抵抗スポット溶接継手1において混在し得る。この場合、引張応力が生じやすいと考えられるナゲット12の周囲のみに穴13を配置すればよい。
次に、本発明の別の態様に係る自動車部材について述べる。本実施形態に係る自動車部材は、上述された本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手1を備える。これにより、本実施形態に係る自動車部材は、亜鉛系めっきと接する高強度鋼板を含みながら、溶接箇所での割れの発生が抑制されている。自動車部材の例として、バンパー、Aピラー、Bピラー、サイドシル、フロアメンバー、フロントサイドメンバー、リアサイドメンバー、シート骨格、シートレールおよびそれらのピラー同士の結合部(Bピラーとサイドシルの結合部、Bピラーとルーフレールの結合部、ルーフクロスメンバーとルーフレールの結合部)等を挙げることができる。
次に、本発明の別の態様に係るハット型部材について述べる。ハット型部材とは、図4に示されるような、頂面部211と、頂面部211の両側に設けられた側面部212と、側面部212の端部に設けられたフランジ部213と、を有する第1部材21と、平板形状を有する第2部材22と、を備え、第1部材21と第2部材22とが、フランジ部213において接合された部材である。第1部材21の頂面部211、側面部212、及びフランジ部213は、平板を折り曲げたような形状を有する。そのため、フランジ部213と側面部212との境界は、屈曲部214となっている。なお、第1部材21は平板を折り曲げて形成することが通常であるが、絞り加工などによって製造されることも妨げられない。
本実施形態に係るハット型部材2は、第1部材21と第2部材22とが、フランジ部213において、本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手1によって接合される。これにより、本実施形態に係るハット型部材2は、亜鉛系めっきと接する高強度鋼板を含みながら、溶接箇所での割れの発生が抑制されている。なお、図4では、穴13の記載は省略している。
本実施形態に係るハット型部材2において、穴13の位置は特に限定されない。例えば、穴13が第1部材21のフランジ部213に設けられる場合、穴13は、フランジ部213と側面部212との境界である屈曲部214と、ナゲット12との間の領域を避けて配されてもよい。この構成によれば、ハット型部材2が、第1部材21と第2部材22とを離隔させる方向の応力を受けた場合に、穴13を起点としたフランジ部213の破断を抑制することができる。
一方、屈曲部214と、ナゲット12との間の領域において引張応力が生じやすい場合、穴13を屈曲部214と、ナゲット12との間の領域に設けてもよい。穴13が、屈曲部214を越えて、側面部212に及んでもよい。この場合、穴13とナゲット12との最短距離、有効応力緩和部131の投影長さe及び、ナゲット12の中心を基準とした穴13の幅wは、第1部材21を平板形状に曲げ戻して(又は、曲げ戻したと仮定して)測定される値とされる。なお、抵抗スポット溶接継手1及び自動車部材において穴13が設けられた高強度鋼板11’が平板形状ではない場合も、ハット型部材2において穴13が屈曲部214を越えて側面部212に及ぶときと同様に、各パラメータ値を測定する。
また、ハット型部材2が、フランジ部213以外においてナゲット12及び穴13を有してもよい。例えば図4に示されるように、ハット型部材2が、第1部材21を補強する第3部材23をさらに有し、第1部材21と第3部材23とが、頂面部211及び/又は側面部212において接合されてもよい。この際、ナゲット12は第1部材21頂面部211及び/又は側面部212に設けられることとなる。図4においては省略されているが、穴13を、これらナゲット12の周囲に配するために、頂面部211及び/又は側面部212に形成してもよい。
次に、本発明の別の態様に係る抵抗スポット溶接継手1の製造方法について述べる。本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手1の製造方法は、引張強さが780MPa以上の高強度鋼板11’に1つ以上の穴13を形成する工程と、穴13が形成された1枚以上の高強度鋼板11’と、亜鉛系めっき111とが接するように、複数の鋼板11を重ね合わせる工程と、抵抗スポット溶接によってナゲット12を形成する工程と、を備え、平面視において、穴13と、穴13に最も近いナゲット12との最短距離を1.5mm以上とし、穴13に最も近いナゲット12の直径をdnと定義し、平面視において、穴13のうち、穴13に最も近いナゲット12の中心から半径3.5×dn以内の領域にある部分を、有効応力緩和部131と定義し、平面視において、有効応力緩和部131の重心と穴13に最も近いナゲット12の中心とを結んだ直線に垂直な直線に対し、有効応力緩和部131を投影した長さをdn以上とする。
まず、穴13を形成する工程S1では、引張強さが780MPa以上の高強度鋼板11’に穴13を形成する。穴13を形成する手段は特に限定されず、レーザ加工、パンチング、ワイヤー放電加工、フライス加工、ドリル加工等の種々の手段を用いることができる。
ここで、穴13を用いて抵抗スポット溶接時の割れを防止するために、平面視において、穴13と、この穴13に最も近いナゲット12との最短距離を1.5mm以上とし、平面視において、穴13の有効応力緩和部131の投影長さeをdn以上とする必要がある。しかしながら、穴13を形成する工程S1は、後述する抵抗スポット溶接工程S3より先に行われる。従って、穴13を形成する時点で、ナゲット12は形成されていない。上述の要件を満たすように穴13を形成するためには、ナゲット12を形成する位置を予め定めておくことが好ましい。また、抵抗スポット溶接工程S3を模擬した溶接試験を予め行い、ナゲット12の直径dnを予想することが好ましい。ただし、穴13を形成する工程S1においてはナゲット12の位置を精密に考慮せず、抵抗スポット溶接工程S3において、穴13の位置に応じてナゲット12の形成位置を決めることもできる。また、既に別の抵抗スポット溶接継手の製造において用いられている溶接条件を用いる等、ナゲット12の直径dnを予想できる事情があれば、溶接試験は不要である。
次に、重ね合わせ工程S2では、1枚以上の穴13が形成された高強度鋼板11’と、亜鉛系めっき111とが接するように、複数の鋼板11を重ね合わせる。ここで「高強度鋼板11’と亜鉛系めっき111とが接する」とは、上述のように、亜鉛系めっき111が設けられていない高強度鋼板11’が、亜鉛系めっき111が設けられた鋼板11と接していること、及び、高強度鋼板11’の表面に亜鉛系めっき111が設けられていることの両方を意味する。高強度鋼板11’の表面に亜鉛系めっき111が設けられている場合、重ね合わせ工程S2において特段の配慮をしなくとも、高強度鋼板11’と、亜鉛系めっき111とが接するように、複数の鋼板11を重ね合わせることとなる。
抵抗スポット溶接工程S3では、穴13の近傍に、抵抗スポット溶接によってナゲット12を形成する。ナゲット12と穴13との位置関係は、上述した範囲内とされる。ナゲット12の大きさ及び位置を正確に予想した上で穴13を作成しているのであれば、抵抗スポット溶接工程S3において特段の配慮は不要である。一方、抵抗スポット溶接工程S3において、ナゲット12の位置及び大きさを、穴13の位置及び大きさ等に応じて制御してもよい。
上述の要件を満たす限り、穴13の位置に関わらず、応力緩和効果が得られ、抵抗スポット溶接工程S3での割れ発生を抑制できる。一方、予め割れが生じる領域を予想できるのであれば、割れが生じる領域の近傍に穴13を配することが好ましい。これにより割れを一層確実に抑制することができる。そこで、本実施形態に係る抵抗スポット溶接継手1の製造方法は、穴13を形成する工程S1の前に、割れが生じる領域を推定する工程と、割れが生じる領域の近傍に穴13を形成し、ナゲット12の位置を決定する工程と、をさらに備えてもよい。
割れが生じる領域の推定は、種々の手段によって行うことができる。例えば、鋼板11の形状に起因して生じるナゲット12の周囲の引張応力発生領域を、有限要素法を用いて推定し、この引張応力発生領域を、割れが生じる領域と推定することができる。また、抵抗スポット溶接装置の外乱要因(溶接電極の軸芯と、該溶接電極と接触する鋼板表面の垂線とがなす角度など)を調査して、その結果に基づき、割れが生じる領域を推定してもよい。また、穴13を形成することなく抵抗スポット溶接継手を製造する予備溶接を行い、この予備溶接における割れの発生状況に基づいて、割れが生じる領域を推定してもよい。
スポット溶接時の割れの発生頻度、及び散り発生の有無を調査するために、以下に示す手順で種々の評価を行った。
まず、表1に開示された板厚及び引張強さを有する高強度亜鉛系めっき鋼板を2枚重ねたものに対して、1か所でスポット溶接を実施した。各抵抗スポット溶接継手において、同じ種類の鋼板を母材として用いた。
スポット溶接の前に、一部の例を除き、ナゲットの近傍に穴を形成した。ナゲットの直径(ナゲット径dn)、穴とナゲットとの最短距離、穴の形状、有効応力緩和部の投影長さe、及び穴の幅を表1に示す。なお、2枚の鋼板両方に、同じ形状の穴を形成し、穴の外縁が一致するように2枚の鋼板を重ね合わせて、抵抗スポット溶接を行った。また、表1に記載のナゲット径は、ナゲット形成後にナゲットの中心(即ちインデンテーションの中心)を通り、鋼板の表面に対し垂直に切断し、切断面において測定することによって得られた実測値である。また、一部の試験体においては、穴が形成されたものの、その穴の位置が不適切であり、有効応力緩和部が存在しなかった。この場合、有効応力緩和部の投影長さ及び幅は0mmとなる。ただし、このような継手に関しては、穴の大きさを参考値として表に記載した。すなわち、記号「※」が付された値については、有効応力緩和部の投影長さ及び幅ではなく、穴の投影長さ及び幅を記した。さらに、参考のために、穴の大きさ、形状、及び位置の詳細を図5A~図5Jに示した。このような試験体を、各条件につき10個ずつ作成した。
Figure 0007453539000001
ここで、図5A,5B,5C,5Jは、穴の長手方向の中心とナゲットの中心とを結んだ直線が、穴の長手方向に対し、垂直に配置された例である。
図5Gは、穴の上端とナゲットの中心との距離が8mm、穴の下端とナゲットの中心との距離が8mmとなるように配置された例である。
図5Hは、穴の上端とナゲットの中心との距離が23mm、穴の下端とナゲットの中心との距離が23mmとなるように配置された例である。
図5Jは、穴の一部が、有効応力緩和部になっている例である。
これにより得られた試験片において、割れの数及び散りの有無を調査した。調査結果を表2に示す。なお、割れの数とは、試験体数10個のうち、割れた試験片の数である。割れの有無は、溶接後の溶接部断面観察によって確認した。割れの数が3以下であり、且つ、スポット溶接の際に散りが発生しなかった試験片を、合格と判断した。
Figure 0007453539000002
穴を有しない試験片No.1は、従来の抵抗スポット溶接継手にあたる。ここでは、散りが発生しなかったものの、割れが多く発生した。
試験片No.2及びNo.7は、穴がナゲットに近すぎたので、散りが発生した。
試験片No.5及びNo.9は、穴がナゲットから遠すぎて、有効応力緩和部が形成されなかった。そのため、割れを十分に抑制することができなかった。
試験片No.6は、穴の有効応力緩和部の投影長さが不足したので、割れを十分に抑制することができなかった。
一方、本発明の要件を満たす試験片については、散りが発生せず、且つ割れを十分に抑制することができた。
本発明によれば、亜鉛系めっきと接する高強度鋼板を含みながら、溶接箇所での割れの発生が抑制された抵抗スポット溶接継手、自動車部材、及びハット型部材を提供することができる。さらに本発明によれば、溶接箇所での割れの発生を抑制可能な、亜鉛系めっきと接する高強度鋼板を含む抵抗スポット溶接継手の製造方法を提供することができる。そのため、本発明は高い産業上の利用可能性を有する。
1 抵抗スポット溶接継手
11 鋼板
11’ 高強度鋼板
11’’低強度鋼板
111 亜鉛系めっき
12 ナゲット(穴に最も近いナゲット)
13 穴
131 有効応力緩和部
2 ハット型部材
21 第1部材
211 頂面部
212 側面部
213 フランジ部
214 屈曲部
22 第2部材
23 第3部材
a ナゲットの端部から1.5mm未満の領域
b ナゲットの端部から1.2×dn以下の領域
c 有効応力緩和部の重心とナゲットの中心とを結んだ直線
d 直線cに垂直な直線
e 有効応力緩和部の投影長さ

Claims (9)

  1. 重ねられた複数の鋼板と、
    前記鋼板を接合する1つ以上のナゲットと、
    を備える抵抗スポット溶接継手であって、
    前記鋼板のうち1枚以上は、引張強さが780MPa以上の高強度鋼板であり、
    前記鋼板のうち1枚以上は、その表面に亜鉛系めっきを有し、
    前記高強度鋼板のうち1枚以上は、前記亜鉛系めっきと接し、
    前記亜鉛系めっきと接する前記高強度鋼板のうち1枚以上は、1つ以上の前記ナゲットの周囲に配された1つ以上の穴を有し、
    平面視において、前記穴と、前記穴に最も近い前記ナゲットとの最短距離が1.5mm以上であり、
    平面視において、前記穴のうち、前記穴に最も近い前記ナゲットの中心から半径3.5×dn(dn:前記穴に最も近い前記ナゲットの直径)以内の領域にある部分が、有効応力緩和部と定義され、
    平面視において、前記有効応力緩和部の重心と前記穴に最も近い前記ナゲットの前記中心とを結んだ直線に垂直な直線に対し、前記有効応力緩和部を投影した長さがdn以上である抵抗スポット溶接継手。
  2. 平面視において、前記有効応力緩和部の幅が20mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の抵抗スポット溶接継手。
  3. 前記穴の外周が面取りされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の抵抗スポット溶接継手。
  4. 請求項1~3のいずれか一項に記載の抵抗スポット溶接継手を備える自動車部材。
  5. 頂面部と、前記頂面部の両側に設けられた側面部と、前記側面部の端部に設けられたフランジ部と、を有する第1部材と、
    平板形状を有する第2部材と、
    を備え、
    前記第1部材と前記第2部材とが、前記フランジ部において、請求項1~3のいずれか一項に記載の抵抗スポット溶接継手によって接合されるハット型部材。
  6. 前記穴が、前記第1部材に設けられ、
    前記穴が、前記フランジ部と前記側面部との境界である屈曲部と、前記ナゲットとの間の領域を避けて配されることを特徴とする請求項5に記載のハット型部材。
  7. 引張強さが780MPa以上の高強度鋼板に1つ以上の穴を形成する工程と、
    前記穴が形成された1枚以上の前記高強度鋼板と、亜鉛系めっきとが接するように、複数の鋼板を重ね合わせる工程と、
    抵抗スポット溶接によってナゲットを形成する工程と、
    を備え、
    平面視において、前記穴と、前記穴に最も近い前記ナゲットとの最短距離を1.5mm以上とし、
    前記穴に最も近い前記ナゲットの直径をdnと定義し、
    平面視において、前記穴のうち、前記穴に最も近い前記ナゲットの中心から半径3.5×dn以内の領域にある部分を、有効応力緩和部と定義し、
    平面視において、前記有効応力緩和部の重心と前記穴に最も近い前記ナゲットの前記中心とを結んだ直線に垂直な直線に対し、前記有効応力緩和部を投影した長さをdn以上とする
    抵抗スポット溶接継手の製造方法。
  8. 前記穴を形成する工程の前に、
    割れが生じる領域を推定する工程と、
    前記割れが生じる領域を、前記ナゲットと前記穴との間とするように、前記穴及び前記ナゲットの位置を決定する工程と、
    をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の抵抗スポット溶接継手の製造方法。
  9. 有限要素法を用いて推定される、前記ナゲットの周囲の引張応力発生領域を、前記割れが生じる領域と推定する
    ことを特徴とする請求項8に記載の抵抗スポット溶接継手の製造方法。
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