JP2007283313A - 異材接合体 - Google Patents
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Abstract
【課題】鋼材とアルミニウム材との十分な継手強度あるいは接合強度を有する、異材接合体を提供することを目的とする。
【解決手段】板厚が3mm以下のアルミニウム合金材と板厚が3mm以下の鋼材とを互いにスポット溶接にて接合した異材接合部を有する異材接合体であって、この異材接合部において、前記鋼材2を前記アルミニウム合金材1、3の間に挟み込んだ形で互いに重ね合わされた上で、スポット溶接4がなされているものとする。
【選択図】図1
【解決手段】板厚が3mm以下のアルミニウム合金材と板厚が3mm以下の鋼材とを互いにスポット溶接にて接合した異材接合部を有する異材接合体であって、この異材接合部において、前記鋼材2を前記アルミニウム合金材1、3の間に挟み込んだ形で互いに重ね合わされた上で、スポット溶接4がなされているものとする。
【選択図】図1
Description
本発明は、自動車、鉄道車両などの輸送分野、機械部品、建築構造物等の構造部材などとして好適で、特に、自動車用車体などの組立工程の際に必要となる、アルミニウム合金材と鋼材との異材接合体に関する。
アルミニウム合金材(純アルミニウムおよびアルミニウム合金を総称:板、形材、鍛造材、鋳造材などを含む)を、鋼材(鋼板、鋼型材、条鋼、などを含む)との、異種金属部材同士の接合体(異材接合体)に適用することができれば、自動車などの構造材として、車体の軽量化等に著しく寄与することができる。
このため、自動車車体における鋼材とアルミニウム材とを溶接接合した異材接合体として、例えば、以下の例が知られ、また採用されている。
(1)ドアビーム(アルミニウム合金中空形材製補強材)と鋼製ドアパネル。
(2)鋼製センターピラーやサイドシルなどの鋼製パネル構造体内へのアルミニウム合金中空形材補強。
(3)鋼製バンパやサイドメンバとアルミニウム合金中空形材製バンパステイやクラッシャブルボックス。
(4)フードやドアなどの大型パネルにおける鋼製パネル構造体のインナパネルかアウタパネルのアルミニウム合金板化。
(5)アルミニウム合金板製のルーフパネルと鋼製のサイドメンバアウタ や鋼製のルーフサイドレール。
(1)ドアビーム(アルミニウム合金中空形材製補強材)と鋼製ドアパネル。
(2)鋼製センターピラーやサイドシルなどの鋼製パネル構造体内へのアルミニウム合金中空形材補強。
(3)鋼製バンパやサイドメンバとアルミニウム合金中空形材製バンパステイやクラッシャブルボックス。
(4)フードやドアなどの大型パネルにおける鋼製パネル構造体のインナパネルかアウタパネルのアルミニウム合金板化。
(5)アルミニウム合金板製のルーフパネルと鋼製のサイドメンバアウタ や鋼製のルーフサイドレール。
また、これら、アルミニウム合金材と鋼材との異材接合体を、スポット溶接できれば、自動車用車体などの組立工程の際に、鋼材のみを使用した自動車用車体のスポット溶接工程がそのまま使用できる、大きな利点がある。特に、大きな異材接合面積(長い異材接合長さ)を有する異材接合体、例えば、アルミニウム合金板を成形したパネルと、鋼板を成形したパネルとの異材接合体(異材接合パネル)を、スポット溶接できれば、この利点が大きい。
しかし、鋼材とアルミニウム材とを溶接接合する場合、接合部に脆い金属間化合物が生成しやすいために、信頼性のある高強度を有する接合部(接合強度)を得ることは非常に困難であった。したがって、従来では、これら異材接合体の接合には、ボルトやリベット等、あるいは接着剤を併用した接合がなされている。このため、前記した自動車用車体構造物などの組立工程の効率が低下し、また、接合継手の信頼性、コスト等の問題もある。
そこで、従来より、これら異材接合体のスポット溶接法について多くの検討がなされてきている。例えば、アルミニウム材と鋼材の間に、アルミニウム−鋼クラッド材をインサートする方法が提案されている(特許文献1〜6参照)。また、鋼材側に融点の低い金属をめっきしたり、インサートしたりする方法が提案されている(特許文献7〜9参照)。更に、アルミニウム材と鋼材の間に絶縁体粒子を挟む方法(特許文献10参照)や、部材に予め凹凸を付ける方法(特許文献11参照)なども提案されている。
更に、アルミニウム材の不均一な酸化膜を除去した後、大気中で200 〜450 ℃、8 時間までの加熱を行って均一な酸化膜を形成し、アルミニウム表面の接触抵抗が高められた状態で、アルミニウム−鋼2 層の複層鋼板をインサート材に用いてスポット溶接する方法も提案されている(特許文献12参照)。
また、これら高価なクラッド材またはインサート材を用いることなく、異種材料を確実にかつ高強度に接合できるスポット溶接方法として、鋼板同士の間にアルミニウム板を挟み込んで、三層あるいは四層、六層など多層に重ねることが開示されている(特許文献13、14、15参照)。
この技術では、これら多層の重ね部を一対の電極で挟持し、電極間に大電流を短時間流して、スポット溶接域からアルミニウム板の溶融部を排除してしまう。この結果、溶接部としては、アルミニウム板を介さずに、鋼板同士を直接的に接合させ、接合界面に金属間化合物が生成するのを抑えるものである。そして、この実施の形態として、鋼板の端縁部をヘミング加工により曲げ返すと同時に、この曲げ返し片と鋼板との間にアルミ板を挟み込み、この三層の重ね部をスポット溶接する例などが開示されている。
特開平4−55066公報(全文)
特開平4−127973公報(全文)
特開平4−253578公報(全文)
特開平5−111778公報(全文)
特開平6−63763号公報(全文)
特開平7−178563号公報(全文)
特開平4−251676号公報(全文)
特開平7−24581号公報(全文)
特開平4−14383号公報(全文)
特開平5−228643号公報(全文)
特開平9−174249号公報(全文)
特開平6−63763号公報(全文)
特開平7−328774号公報(全文)
特開平9−155561号公報(全文)
特開2003−236673号公報(全文)
確かに、これら従来技術でも、スポット溶接による継手の接合強度の向上効果は認められる。しかし、これら鋼材とアルミニウム材とを溶接接合した異材接合体(あるいは異材溶接継手)を自動車などの構造部材に適用することを考えると、自動車の衝突時などに負荷される大荷重(応力)に対する継手強度が必要である。これに対する十分な継手強度あるいは接合強度を、これら従来技術では、未だ得られていない。この結果、鋼材とアルミニウム材とのスポット溶接は、自動車などの構造部材に、未だ実用化されていない。
この十分な継手強度あるいは接合強度が得られない傾向は、鋼板表面に電気亜鉛めっきや溶融亜鉛合金化めっきが施されている、亜鉛めっき鋼板(亜鉛めっき鋼材)の場合に著しい。そして、自動車車体用には、この種亜鉛めっき鋼板が周知の通り汎用されている。したがって、この点も、前記した、鋼材とアルミニウム材とのスポット溶接が、自動車などの構造部材で未だ実用化されていない大きな要因となっていた。例えば、前記特許文献13〜15などでは、亜鉛めっき鋼板も適用可能としているものの、その実施例において、実際に亜鉛めっき鋼板を適用して裏付けている例は無い。
このため、本発明は、例え亜鉛めっき鋼材を使用した場合でも、十分な継手強度あるいは接合強度を有する、異材接合体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための、本発明の異材接合体の要旨は、板厚が3mm以下のアルミニウム合金材と板厚が3mm以下の鋼材とを互いにスポット溶接にて接合した異材接合部を有する異材接合体であって、この異材接合部において、前記鋼材を前記アルミニウム合金材の間に挟み込んだ形で互いに重ね合わされた上で、スポット溶接がなされていることである。
前記した通り、異材接合体を、スポット溶接しようとする場合には、アルミニウム合金板乃至パネルの単板(1枚)と、鋼板乃至パネルの単板(1枚)とを、互いに重ね合わせてスポット溶接することが常識であった。
しかし、このような重ね合わせ方では、鋼材とアルミニウム材との界面温度を高めることができず、スポット溶接における短時間の大電流化など、入熱量を著しく高める必要が生じ、アルミニウム材側の飛散(チリの発生)など、新たな問題を生じていた。
また、前記特許文献13のように、接合界面に金属間化合物が生成するのを抑える観点から、鋼板同士の間にアルミニウム板を挟み込んだとしても、アルミニウム板に入熱が集中する。このため、溶接部のアルミニウム板が溶融、飛散して、接合部から排除され、異材接合とはならず、アルミニウム板を介さずに、鋼板同士を直接的に接合させることとなってしまう。
これに対して、本発明者らは、逆転の発想により、アルミニウム合金材で鋼材を挟み込んだ形で互いに重ね合わせた異材積層体とすれば、常識に反して、スポット溶接部の接合強度が高くなることを知見した。
そして、この異材積層体におけるスポット溶接性向上の傾向は、これも常識に反して、従来は、裸の鋼板よりも、スポット溶接性が悪いとされていた、亜鉛めっき鋼板(亜鉛めっき鋼材)の場合にも良好であることが確認された。
この理由は、鋼材をアルミニウム合金材で挟み込んだ形で重ね合わせることによって、スポット溶接時の鋼材側の抵抗発熱の逃げ場がなく、鋼材とアルミニウム材との界面温度、特に鋼材の温度が、アルミニウムの溶融温度を越えて高くなるためと推考される。これによって、アルミニウムの鋼との界面での拡散速度が著しく速くなり、鋼側にアルミニウムが拡散して、良好な接合状態がいち早く確保されるためと推考される。また、亜鉛めっき鋼板の場合、融点の差により亜鉛めっき層が先行して溶融するが、その結果、界面における熱分布を均一化する効果があると考えられる。
このように、本発明は、鋼材をアルミニウム合金材で挟み込んだ形で、スポット溶接時の抵抗発熱の逃げ場を無くし、鋼材とアルミニウム材との界面温度を高くする。これによって、鋼材とアルミニウム材との十分な継手強度あるいは接合強度を有する異材接合体を提供できる。したがって、鋼材とアルミニウム材との異材接合のスポット溶接の、自動車などの構造部材での実用化に道を拓くものである。
以下に、本発明の実施態様と、本発明の各要件の限定理由とを具体的に説明する。図1に、本発明異材接合体における、異材接合部分の基本的な態様を各々示す。図1において、1、3は各々アルミニウム合金材、2は鋼材、4はスポット溶接部、5、5はスポット溶接用電極を示す。
図1では、アルミニウム合金材1、3の間に、鋼材2を挟み込んで互いに重ね合わせている。鋼材2は、鋼材の板厚が3mm以下の薄板であることを前提に、通常の条件範囲でスポット溶接可能であれば、一枚のみでなくとも、二枚以上の多層に積層しても良い。また、アルミニウム合金材1、3の方も、各々3mm以下の板厚であることを前提に、通常の条件範囲でスポット溶接可能であれば、一枚のみでなくとも、二枚以上の多層に積層しても良い。
このアルミニウム合金材1、3による鋼材2の挟み込みに際しては、両側のアルミニウム合金材1、3によって、真中の鋼材2を加圧する必要は無い。本発明で言う挟み込みとは、あくまで、互いの重ね合わせの態様(形)を表現したものである。後述するスポット溶接において、これら重ね合わせられたアルミニウム合金材1、3と鋼材2とは、電極によって挟み込まれ、加圧される。このため、異材接合体やパネルの使用態様や必要性に応じて、両側のアルミニウム合金材1、3によって真中の鋼材2を加圧しても良いが、基本的には不要である。
図1のスポット溶接自体は、これら異材同士を重ね合わせた上で、スポット溶接用電極5、5が、これら異材同士の積層体を挟み込んで(加圧した状態で)スポット溶接(打点)する。図1では、左方向の矢印で示すように、このスポット溶接が連続的に(連続した打点にて)行なわれる。
図1の本発明態様では、スポット溶接用電極5、5により、加圧しつつ通電することにより、アルミニウム合金材1、3間に挟み込まれた鋼材2の、アルミニウム合金材1、3との各界面が複合して抵抗発熱する。ここで、鋼材2はアルミニウム合金材1、3で挟み込んだ形で重ね合わせられており、鋼材側の抵抗発熱の逃げ場がなく、高い温度が得られる。この結果、鋼材2とアルミニウム合金材1、3との界面温度が1000℃を越えて高くなるものと推測される。この界面温度は、アルミニウム合金材1、3の溶融温度約700℃に比して著しく高い。これによって、アルミニウム合金材1、3の鋼材2との各界面での拡散速度が著しく速くなり、鋼材2側にアルミニウム1、3が拡散して、良好な接合状態がいち早く確保される。
この結果、アルミニウム合金材1、3と鋼材2とが、互いに良好にスポット接合される。これらは、多数の連続打点の際にも、打点毎の電極の鋼材とアルミニウム材との接触状態を極めて安定させ、異材接合体の、十分な継手強度あるいは接合強度が得られる。
これに対して、例えば、逆に、アルミニウム合金材の方を、2枚の鋼材で上下に挟み込んだ場合には、挟み込まれたアルミニウム合金材の方に、抵抗発熱量が入り過ぎる(集中する)ために、溶接部のアルミニウム合金材が溶解、飛散、消滅しやすくなる(チリが多量に発生しやすくなる)という大きな問題がある。
また、例えば、従来のように、アルミニウム合金材と鋼材とを2枚重ね合わせただけの場合には、鋼材側の抵抗発熱の逃げ場が多い。このため、鋼材とアルミニウム合金材との界面温度が、アルミニウム合金材の溶融温度約700℃を越えて、著しく高くはなり難い。この結果、アルミニウム合金材の鋼材との界面での拡散速度が遅くなり、接合状態が良好とはならない。
(鋼材)
本発明で使用する鋼材は、パネルに成形される前の素材鋼材であっても良く、また、成形後のパネルであっても良い。自動車などのパネル用としては鋼板が基本となるが、重ね合わせに際しては、その他、型鋼や鋼管などであっても良い。例えば、熱間圧延鋼板、冷間圧延鋼板(SPCC鋼板)などの軟鋼あるいは高張力鋼の板や条鋼(条、線、棒、管など)、これに亜鉛メッキなどの表面処理を施した鋼板、またはステンレス鋼板など、抵抗スポット溶接可能な鋼材であるならばいずれでもよい。ただ、自動車車体などの軽量化と高強度化の両方が求められる場合には、高張力鋼を用いることが好ましい。本発明では前記した通り、亜鉛めっき鋼板の場合であっても、あるいは裸の鋼板の場合であっても、スポット溶接が可能となるため、これら広範な種類、あるいは汎用されている鋼材が使用可能である。
本発明で使用する鋼材は、パネルに成形される前の素材鋼材であっても良く、また、成形後のパネルであっても良い。自動車などのパネル用としては鋼板が基本となるが、重ね合わせに際しては、その他、型鋼や鋼管などであっても良い。例えば、熱間圧延鋼板、冷間圧延鋼板(SPCC鋼板)などの軟鋼あるいは高張力鋼の板や条鋼(条、線、棒、管など)、これに亜鉛メッキなどの表面処理を施した鋼板、またはステンレス鋼板など、抵抗スポット溶接可能な鋼材であるならばいずれでもよい。ただ、自動車車体などの軽量化と高強度化の両方が求められる場合には、高張力鋼を用いることが好ましい。本発明では前記した通り、亜鉛めっき鋼板の場合であっても、あるいは裸の鋼板の場合であっても、スポット溶接が可能となるため、これら広範な種類、あるいは汎用されている鋼材が使用可能である。
(アルミニウム合金材)
本発明で使用するアルミニウム合金材は、パネルに成形される前の素材アルミニウム合金材であっても良く、また、成形後のパネルであっても良い。自動車などのパネル用としては、熱間圧延板、冷間圧延板などのアルミニウム合金板が基本となる。ただ、鋼材を挟み込む重ね合わせに際しては、中空あるいはソリッドの押出形材、鍛造材、鋳造材が適宜使用できる。アルミニウム合金材は、純アルミニウムでもよいが、自動車車体などとして、軽量化と高強度化、あるいは高成形性、溶接性などの要求特性が特に求められる場合には、このような特性に優れたアルミニウム合金を選択する。例えば、成形性の良いAl−Mn系(3000系)合金、成形性や溶接性の良いAl−Mg系(5000系)合金、強度の高いAl−Mg−Si系(6000系)合金などが例示される。
本発明で使用するアルミニウム合金材は、パネルに成形される前の素材アルミニウム合金材であっても良く、また、成形後のパネルであっても良い。自動車などのパネル用としては、熱間圧延板、冷間圧延板などのアルミニウム合金板が基本となる。ただ、鋼材を挟み込む重ね合わせに際しては、中空あるいはソリッドの押出形材、鍛造材、鋳造材が適宜使用できる。アルミニウム合金材は、純アルミニウムでもよいが、自動車車体などとして、軽量化と高強度化、あるいは高成形性、溶接性などの要求特性が特に求められる場合には、このような特性に優れたアルミニウム合金を選択する。例えば、成形性の良いAl−Mn系(3000系)合金、成形性や溶接性の良いAl−Mg系(5000系)合金、強度の高いAl−Mg−Si系(6000系)合金などが例示される。
(板厚)
本発明では、上記鋼材やアルミニウム材の形状にかかわらず、異材接合部における、これらの厚みを板厚と称する。本発明では、異材接合部における鋼材の板厚としては3mm以下、アルミニウム材の板厚としては3mm以下とする。例えば、異材接合部が鋼材やアルミニウム材の各フランジ部(接合用フランジ)の場合には、これらの各フランジ部の板厚を上記板厚とする。但し、これら異材接合部である各フランジ部以外の本体部分では、鋼材やアルミニウム材の板厚をフランジ部と同じ板厚としても良く、また、フランジ部と違う板厚としても良い。
本発明では、上記鋼材やアルミニウム材の形状にかかわらず、異材接合部における、これらの厚みを板厚と称する。本発明では、異材接合部における鋼材の板厚としては3mm以下、アルミニウム材の板厚としては3mm以下とする。例えば、異材接合部が鋼材やアルミニウム材の各フランジ部(接合用フランジ)の場合には、これらの各フランジ部の板厚を上記板厚とする。但し、これら異材接合部である各フランジ部以外の本体部分では、鋼材やアルミニウム材の板厚をフランジ部と同じ板厚としても良く、また、フランジ部と違う板厚としても良い。
異材接合部における鋼材が3mmを越えた場合や、アルミニウム材の板厚が3mmを越えた場合、後述する通常のスポット溶接条件においては、前記した複合抵抗発熱量が大きくなり過ぎる。このため、アルミニウム合金材1が溶融して、鋼材2、3との界面に脆い金属間化合物を形成しやすくなり、特に、アルミニウム合金材1が鋼材2、3に対して拡散接合されにくくなる。また、散りの発生も多くなる。この結果、異材接合体の、十分な継手強度あるいは接合強度が得られ難くなる。また、多数の連続打点の際には、打点毎の電極の鋼材とアルミニウム材との接触状態が安定せず、電極寿命も著しく低下する。
(スポット溶接条件)
本発明方法で用いる抵抗スポット溶接に際しては、殊更、高電流、高加圧力にする必要は無く、通常のアルミニウム合金材側に合わせた、鋼材同士よりは高電流側の、通常のスポット溶接条件が選択される。好適な電流、時間は、8〜35kAの電流(電極5、5間の電流)を、アルミニウム材の板厚t(mm)との関係で、400×t msec以下の通電時間で流すことが好ましい。
本発明方法で用いる抵抗スポット溶接に際しては、殊更、高電流、高加圧力にする必要は無く、通常のアルミニウム合金材側に合わせた、鋼材同士よりは高電流側の、通常のスポット溶接条件が選択される。好適な電流、時間は、8〜35kAの電流(電極5、5間の電流)を、アルミニウム材の板厚t(mm)との関係で、400×t msec以下の通電時間で流すことが好ましい。
スポット溶接条件が、35kAを越えて、高電流となり過ぎた場合、前記した複合抵抗発熱量が大きくなり過ぎる。このため、特に、アルミニウム合金材1が溶融しやすくなる。この結果、アルミニウム合金材1がスポット溶接域から除かれたり、そこまでいかずとも、鋼材との界面に脆い金属間化合物(界面反応層)を形成しやすくなる。したがって、アルミニウム合金材1が鋼材2、3に対して拡散接合されにくくなり、散りの発生も多くなる。このため、十分な継手強度あるいは接合強度が得られ難く、多数の連続打点の際に、打点毎の電極の鋼材とアルミニウム材との接触状態が安定せず、異材接合体の、電極寿命も著しく低下する。
一方、8kA未満の低電流の場合、ナゲットが形成、成長するのに十分な入熱量が得られない。また、通電時間が400×t msecを超える長時間の場合、必要なナゲット径は確保できるが 、チリの発生や界面に脆い金属間化合物の成長をもたらす可能性が高くなる。
なお、通常の同種金属での溶接と同様に、接合される鋼材やアルミニウム材の板厚の増加に伴って、上記各範囲内で、通電時間のみならず、電流量も増加させることが好ましい。
スポット溶接時の加圧力については、特に規定するものではないが、異種材料間、電極と材料間の電気的接触を安定化し、ナゲット内の溶融金属をナゲット周辺の未溶融部で支え、さらにチリの発生を抑制するために、ある程度高い加圧力を必要とする。ただし、加圧力を増加するとナゲット径が小さくなる傾向にあるので、それに伴って電流量を増加することが好ましい。
スポット溶接の電極形状については、特に規定するものではないが、特にアルミニウム材側の電極については、Rの大きいR型形状の電極が、通電初期の電流効率を上げるために望ましい。鋼材側の電極はドーム型などのR型でもF型でも構わないが、同様にRの大きい方が望ましい。また、極性についても、アルミニウム材で鋼材を挟み込むために関係なくなるゆえ、規定するものではない。
(異材接合体の態様)
以下に、本発明異材接合体の、自動車車体における異材接合体としての態様を例示して説明する。
以下に、本発明異材接合体の、自動車車体における異材接合体としての態様を例示して説明する。
(ルーフ)
図2は、アルミニウム合金製のルーフパネル10(アルミニウム合金板をプレス成形)と、鋼製のサイドメンバアウタパネル 20(鋼板をプレス成形)、アルミニウム合金製のルーフサイドレール、あるいはサイドメンバインナパネル 30(アルミニウム合金板をプレス成形)とを接合する態様を、斜視図で部分的に示している。
図2は、アルミニウム合金製のルーフパネル10(アルミニウム合金板をプレス成形)と、鋼製のサイドメンバアウタパネル 20(鋼板をプレス成形)、アルミニウム合金製のルーフサイドレール、あるいはサイドメンバインナパネル 30(アルミニウム合金板をプレス成形)とを接合する態様を、斜視図で部分的に示している。
この図2の場合は、アルミニウム合金製ルーフパネル10 のフランジ部 (側縁部)10aと、 アルミニウム合金製サイドメンバインナパネル30のフランジ部 (側縁部) 30aとによって、これらの間に鋼製サイドメンバアウタ20のフランジ部 (側縁部) 20aが挟み込まれた状態で、前記図1の態様でスポット溶接される。この際、これらスポット溶接の接合部4は前記した板厚条件を満足するものとする。その上で、これらスポット溶接の接合部4は、図2に示すように、各フランジ部の長手方向(車体前後方向)全域に亙って、所定の間隔を開けて連続打点される。
(ヘム部)
図4は、フードやドアなどの大型パネル構造体における、鋼製のアウタパネル21(鋼板をプレス成形)と、アルミニウム合金製のインナパネル11(アルミニウム合金板をプレス成形)とを、インナパネル11のヘム部31で互いに接合する態様を示す。
図4は、フードやドアなどの大型パネル構造体における、鋼製のアウタパネル21(鋼板をプレス成形)と、アルミニウム合金製のインナパネル11(アルミニウム合金板をプレス成形)とを、インナパネル11のヘム部31で互いに接合する態様を示す。
アウタパネルとインナパネルとからなる大型パネル構造体では、特にフードなどで、インナパネル11の周縁部11aを内側に180度ヘミング加工(折り曲げ加工)して、ヘム部31を形成し、このヘム部31によって、アウタパネル21の周縁部21aを挟み込むことが多い。
この場合に、アルミニウム合金製インナパネル11の周縁部11aとヘム部31とで、これらの間にアウタパネル21の周縁部21aを挟み込めば、本発明の鋼材のアルミニウム合金材による挟み込みの態様となる。この状態で、前記図1の態様で、前記した板厚条件を満足しつつ、スポット溶接される。これらスポット溶接の接合部4は、図3に示すように、ヘム部31の全長に亙って、所定の間隔を開けて連続打点される。
なお、このようなアルミニウム合金板の折り曲げによる鋼材の挟み込みの態様の場合、鋼材21aを挟み込んでいるアルミニウム合金製インナパネル周縁部11aとヘム部31とは、同じ部材であって折り曲げ部を介して連続している。このため、スポット溶接時において、電流が、電極間ではなく、折り曲げ部を介してアルミニウム合金間で流れないようにする必要がある。この点、前記した好ましいスポット溶接条件範囲では、インナパネル周縁部11a乃至ヘム部31の折り曲げ端部(図3における湾曲部端部)と電極間との距離を十分にとれば、アルミニウム合金間で電流が流れることは回避できる。
なお、これら図2、3の接合部4は、従来の異材接合では、スポット溶接が使用できないために、セルフピアシングリベットや通常のリベット、ボルトなどの機械的な接合や接着剤を用いた接合によって、一体に接合されていたものである。また、例え、仮に、スポット溶接が用いられていたとしても、これら機械的な接合や接着剤を用いた接合との併用の上で、部分的、局部的にしか用いられておらず、接合部の全域乃至全長に亙って、連続打点されるものではなかった。
この他、センターピラー、サイドシル(ロッカー)、サイドメンバなどの大型パネル構造体に、本発明異材接合体を適用しても良い。図示はしないが、例えば、これらパネル構造体における、アルミニウム合金製のアウタパネル(アルミニウム合金板をプレス成形)の端部乃至フランジ部と、補強用のアルミニウム合金材(アルミニウム合金中空押出形材)に設けたフランジ部とによって、鋼製のインナパネル (鋼板をプレス成形)の端部乃至フランジ部を挟み込んで互いに重ね合わせる。その上で、この異材積層体(異材積層部、接合部)に対してスポット溶接接合しても良い。
この際も、スポット溶接の接合部は前記した板厚条件を満足するものとする。その上で、これらスポット溶接の接合部は、例えば、各フランジ部の長手方向(車体前後方向)全域に亙って、所定の間隔を開けて連続打点される。
このような接合部も、従来の異材接合では、スポット溶接が使用できないために、セルフピアシングリベットや通常のリベット、ボルトなどの機械的な接合や接着剤を用いた接合によって、一体に接合されていたものである。
この他、本発明では、アルミニウム合金製のアウタパネルとインナパネルとの間に挟み込まれる鋼製ドアビームなど、アルミニウム合金製部材によって鋼製部材を挟み込んで互いに重ね合わせたような態様の自動車部材などに適宜適用できる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより、下記実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(実施例1)
前記図2のルーフパネルなどにおける異材接合を模擬した接合試験を行なった。即ち、6022アルミニウム合金板1、3によって、鋼板2を間に挟み込んだ形で、十字となるように積層して、この十字の中心となる1点を異材接合(スポット溶接)した。試験片は、共通して、各々幅50mm×長さ150mmの長方形の試験片とした。これら各試験片(板)は、図4に斜視図で示すように、アルミニウム合金板1と鋼板2とが同じ向きで互いに重なるように、そして、これらアルミニウム合金板1と鋼板2に対して、アルミニウム合金板3を上側に、互いに十字となるように(長辺が互いに直角に交わるように)合計3枚重ね合わせた。
前記図2のルーフパネルなどにおける異材接合を模擬した接合試験を行なった。即ち、6022アルミニウム合金板1、3によって、鋼板2を間に挟み込んだ形で、十字となるように積層して、この十字の中心となる1点を異材接合(スポット溶接)した。試験片は、共通して、各々幅50mm×長さ150mmの長方形の試験片とした。これら各試験片(板)は、図4に斜視図で示すように、アルミニウム合金板1と鋼板2とが同じ向きで互いに重なるように、そして、これらアルミニウム合金板1と鋼板2に対して、アルミニウム合金板3を上側に、互いに十字となるように(長辺が互いに直角に交わるように)合計3枚重ね合わせた。
そして、図4に示すように、これら3枚重ね合わせた異材接合体の、アルミニウム合金板1および鋼板2側を固定端、アルミニウム合金板側3の両端部側を同時に上方へ引っ張る移動端とした十字引張試験を行い、前記した十字の中心となるスポット溶接部の剥離強度を求めた。その結果を表1に示す。
剥離強度の評価は、1.5kN以上を用途に係わらず使用可能として◎と評価した。また、1.0kN以上を○と評価し、1.0kN未満、0.7kN以上を溶接条件や用途を変更すれば使用可能として△と評価した。更に、0.7kN未満を溶接条件や用途を変更しても使用不可として×と評価した。
(溶接条件)
溶接機:単相交流式抵抗スポット溶接機を使用。電極:16mmΦで、先端曲率半径が150mmのR型電極(R150:クロム銅合金)や、先端曲率半径が40mmのDR型電極(DR40:クロム銅合金)を使用。加圧力、溶接電流、加圧通電時間の各条件は表1に記載する。
溶接機:単相交流式抵抗スポット溶接機を使用。電極:16mmΦで、先端曲率半径が150mmのR型電極(R150:クロム銅合金)や、先端曲率半径が40mmのDR型電極(DR40:クロム銅合金)を使用。加圧力、溶接電流、加圧通電時間の各条件は表1に記載する。
(アルミニウム合金材条件)
表1には(表2も同様)、アルミニウム合金の種類(規格)と板厚(mm)とを示し、6022アルミニウム合金冷延板(T5処理:0.2%耐力145MPa、板厚1.2mm、表には6022と略記)として、裸のものを使用し、表面処理を施していない。
表1には(表2も同様)、アルミニウム合金の種類(規格)と板厚(mm)とを示し、6022アルミニウム合金冷延板(T5処理:0.2%耐力145MPa、板厚1.2mm、表には6022と略記)として、裸のものを使用し、表面処理を施していない。
(鋼材条件)
表1には(表2も同様)、鋼材の種類と板厚(mm)とを示し、溶融亜鉛合金化めっき鋼板(GAめっき鋼板:引張強度270MPa、板厚1.2mm、表にはGA270と略記)を用いた。
表1には(表2も同様)、鋼材の種類と板厚(mm)とを示し、溶融亜鉛合金化めっき鋼板(GAめっき鋼板:引張強度270MPa、板厚1.2mm、表にはGA270と略記)を用いた。
表1から明らかな通り、発明例1、4〜8、10〜12、14、16〜19は、アルミニウム合金板1、3によって、鋼板2を間に挟み込んだ形で積層した異材接合例である。これら発明例は、溶融亜鉛合金化めっき鋼板を用いているにもかかわらず、各比較例2、3、9、13、15、20に比して、1.0kN以上の剥離強度が得られており、実用化できる程度に剥離強度が大きい。また、発明例では、上記発明例の各スポット溶接条件のように、スポット溶接条件が広い範囲で1.0kN以上の剥離強度が得られていることも分かる。
なお、発明例同士の比較において、互いに、加圧力、電流、通電時間などのスポット溶接条件を、前記した好ましい範囲の中で変えているので、これらの影響も勿論受けて、接合強度は変わっている。したがって、接合強度を高くするために、前提となる板同士の溶接条件に応じて、前記した好ましい範囲の中から、より最適なスポット溶接条件を選択する必要があることが分かる。
(実施例2)
前記図3のフードパネルなどにおけるヘム部の異材接合を模擬した接合試験を行なった。即ち、図3のヘム加工を模擬し、6022アルミニウム合金板端部をフラットヘムの形に180度折り曲げ加工し、鋼板端部をこの折り曲げ部間に挟み込んで、鋼板にアルミニウム合金板折り曲げ部からの加圧力を加えた形で、積層し、この積層部分の中心部分1点を異材接合(スポット溶接)した。試験片は、共通して、各々幅50mm×長さ150mmの長方形とし、板同士が同じ向きとなるように、重ね合わせた。
前記図3のフードパネルなどにおけるヘム部の異材接合を模擬した接合試験を行なった。即ち、図3のヘム加工を模擬し、6022アルミニウム合金板端部をフラットヘムの形に180度折り曲げ加工し、鋼板端部をこの折り曲げ部間に挟み込んで、鋼板にアルミニウム合金板折り曲げ部からの加圧力を加えた形で、積層し、この積層部分の中心部分1点を異材接合(スポット溶接)した。試験片は、共通して、各々幅50mm×長さ150mmの長方形とし、板同士が同じ向きとなるように、重ね合わせた。
ここで、折り曲げ部を介して、アルミニウム合金板間で電流が流れることを回避するために、折り曲げ部端部(湾曲部端部)とスポット溶接電極間との距離は20mmとした。
フードパネルなどにおけるヘム部の異材接合では、前記ルーフパネルなどにおける構造物としての剥離強度ではなく、剪断強度が問題となる。このため、これら異材接合体の引張試験を行い、引張強度を求めた。なお、各例とも共通して、試験は各々4個の試験体について行い、引張強度はその平均とした。その結果を表2に示す。
(溶接条件)
溶接機:単相交流式抵抗スポット溶接機を使用。電極:16mmΦで、先端曲率半径が150mmのR型電極(R150:クロム銅合金)や、先端曲率半径が40mmのDR型電極(DR40:クロム銅合金)を使用。加圧力、溶接電流、加圧通電時間の各条件は表2に記載する。
溶接機:単相交流式抵抗スポット溶接機を使用。電極:16mmΦで、先端曲率半径が150mmのR型電極(R150:クロム銅合金)や、先端曲率半径が40mmのDR型電極(DR40:クロム銅合金)を使用。加圧力、溶接電流、加圧通電時間の各条件は表2に記載する。
(鋼材、アルミニウム合金材条件)
使用鋼材、アルミニウム合金材は、実施例1と同じとした。
使用鋼材、アルミニウム合金材は、実施例1と同じとした。
ここで、表2には、参考例25として、鋼板を用いず、アルミニウム合金板同士を挟み込んだ例(アルミニウム合金板端部を折り曲げ加工し、加圧力を加えた形で、別のアルミニウム合金板端部を、この折り曲げ部間に挟み込んで積層した例)を示した。
表2から明らかな通り、発明例21〜24は、アルミニウム合金板1、3によって、鋼板2を間に挟み込んだ形で積層した異材接合例である。これら発明例は、溶融亜鉛合金化めっき鋼板を用いているにもかかわらず、実用化できる程度に引張強度が大きい。
一方、アルミニウム合金板同士を挟み込んだ参考例25は、引張強度が発明例に比して同等か、それ以下である。したがって、これらの結果から、本発明によれば、鋼材とアルミニウム材との異材接合体として、実用に耐える十分な継手強度あるいは接合強度が得られていることが裏付けられる。
本発明によれば、十分な継手強度あるいは接合強度を有する、異材接合体を提供できる。したがって、鋼材とアルミニウム材とのスポット溶接の、自動車などの構造部材での実用化に道を拓くものである。
1、10、11:アルミニウム合金材、
2、20、21:鋼材、
3、30、31:アルミニウム合金材、
4:溶接部、5:電極、
2、20、21:鋼材、
3、30、31:アルミニウム合金材、
4:溶接部、5:電極、
Claims (1)
- 板厚が3mm以下のアルミニウム合金材と板厚が3mm以下の鋼材とを互いにスポット溶接にて接合した異材接合部を有する異材接合体であって、この異材接合部において、前記鋼材を前記アルミニウム合金材の間に挟み込んだ形で互いに重ね合わされた上で、スポット溶接がなされていることを特徴とする異材接合体。
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2006
- 2006-04-12 JP JP2006110070A patent/JP2007283313A/ja active Pending
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