JP2009056492A - 異材接合体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アルミニウム合金材と鋼材とのT形すみ肉接合の異材接合体において、接合強度が高く実用性が優れているめっき鋼板とアルミニウム合金板との異材接合体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム合金板1を水平に配置し、めっき層3が施されためっき鋼板2を垂直に配置し、このめっき層3の端面を、アルミニウム合金板1の表面に当接させる。そして、垂直めっき鋼板2と水平アルミニウム合金板1とのT形状の隅部を、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる溶加材を使用して、ミグ溶接機により、接合する。これにより、この隅部にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる溶着金属4が形成される。
【選択図】図1

Description

本発明はめっき鋼板とアルミニウム又はアルミニウム合金材との異材同士をT形状にすみ肉接合した異材接合体及びその製造方法に関する。なお、アルミニウム又はアルミニウム合金材を総称して、以下、アルミニウム合金材という。
自動車等の構造材では、軽量化を目的として鋼材に替わってアルミニウム合金材の使用が広がっている。しかし、鋼材は成形性及び材料コスト等の面で優れているため、アルミニウム合金材と鋼材の両者の利点を生かした構造材の開発が行われている、
自動車の構造材として、テーラードブランク材がある。このテーラードブランクは部分的に異なる材料を接合して得た素材であり、鋼材同士のテーラードブランク材の技術は実用化されているが、鋼材とアルミニウム合金材とのテーラードブランク材は実用化されていないのが現状である。
この鋼材とアルミニウム合金材との接合方法については、特許文献1及び特許文献2に記載されている。
特許文献1では、鋼板とアルミニウム合金板の初期重ね代と、接合部のアルミニウム合金板への圧下率と、接合部のアルミニウム合金板の接合部厚さとを規定して、鋼板とアルミニウム合金板からなるテーラードブランク材を製造する方法が記載されている。
また、特許文献2では、融点が異なる板材をレーザ突合せ溶接するため、融点が低い金属板よりも、融点の高い金属板の方に照射するエネルギを大きくすることにより、鋼板とアルミニウム合金板とを突き合わせ溶接する方法が記載されている。
しかし、特許文献1に記載されたマッシュシーム接合と呼ばれる接合法は、その原理上、継手構造は重ね継手となり突合せ継手を作成することができない。そのため、接合部にできた段差により、プレス機を使用した場合の成形性に難がある。
また、特許文献2に記載されたレーザ接合では、異材同士の突合せ継手が可能であるが、装置が高価である上、鋼板にレーザを照射して溶融させると鋼板とアルミニウム合金板との間に厚い金属間化合物が生成されるため継手強度が劣りやすい。また、鋼板の表面が露出する場合があるため、耐食性が低くなりやすい。
そこで、本願発明者等は、このような従来技術の欠点を解消した異材接合継手を既に出願した(特願2007−093561)。
特開平11−47946号公報 特開2005−254282号公報
しかし、上記特許文献1及び特許文献2に開示された従来技術と、本願発明者等による先願発明は、いずれも、突き合わせ接合である。自動車構造材として、インパネリインフォース(ステアリングサポート)があり、このインパネリインフォースを異材接合継手で製造しようとすると、インパネ内にアルミニウム合金製横棒を配置し、この横棒に鋼製ブラケットを接合することが考えられる。また、異材接合継手としては、自動車のサブフレームをアルミニウム合金製で製造し、このサブフレームに鋼製ブラケットを接合することも考えられる。これらの異材接合継手は、T形状をなし、鋼板とアルミニウム合金板とをすみ肉接合することにより製造される。
このようなT形すみ肉継手は、部材の立体的な結合を効率的に可能とするものであるが、現状において、このようなT形すみ肉接合の異材接合継手は、実用化されていない。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、アルミニウム合金材と鋼材とのT形すみ肉接合の異材接合体において、接合強度が高く実用性が優れているめっき鋼板とアルミニウム合金板との異材接合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る異材接合体は、めっき鋼板とアルミニウム又はアルミニウム合金板との異材接合体において、前記めっき鋼板の端面が、前記アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面に当接され、前記めっき鋼板と前記アルミニウム又はアルミニウム合金板とがすみ肉接合によりT形状に接合されていることを特徴とする。なお。T形状とは、略T字の形状をなしていれば本発明に含まれるものである。
前記めっき鋼板には、例えば、アルミニウムめっき又は亜鉛アルミニウムマグネシウム系めっきが施されている。又は、前記めっき鋼板には、例えば、亜鉛系めっきが施されている。
本発明に係る異材接合体の製造方法は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金板を水平に、めっき鋼板を垂直に配置し、アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面に、めっき鋼板の端面を当接させて、前記アルミニウム又はアルミニウム合金板と前記めっき鋼板とをT形状に配置し、その当接部をアルミニウム又はアルミニウム合金溶加材を使用してすみ肉接合することを特徴とする。
この場合に、前記当接部をミグ溶接機を使用して、アルミニウム又はアルミニウム合金溶加材によりすみ肉接合することができる。
本発明によれば、めっき鋼板を垂直に配置してT形状の隅部をすみ肉接合するから、溶接熱を受けたときのめっき鋼板の蓄熱効果により、溶着金属が垂直配置のめっき鋼板の表面に拡がりやすく、のど厚を大きくすることができる。このため、この接合部の強度が高く、実用性が優れたT形状の異材継手を得ることができる。
以下、本発明の実施形態に係る異材接合体及びその製造方法について、添付の図面を参照して説明する。なお、本実施形態は、以下に示すように、アルミニウム合金板1を水平に、めっき鋼板2を垂直に配置しているが、本発明は、これに限らず、アルミニウム合金板1が水平方向から、まためっき鋼板2が垂直方向から傾斜していても本発明の効果を奏する。
図1(a)は本発明の実施形態に係る異材接合体を示す正面図、図1(b)はその溶着金属の形状を示す模式図である。この異材接合体の製造方法においては、アルミニウム合金板1を水平に配置し、めっき層3が施されためっき鋼板2を垂直に配置し、このめっき層3の端面を、アルミニウム合金板1の表面に当接させる。そして、垂直めっき鋼板2と水平アルミニウム合金板1との略T形状の隅部を、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる溶加材を使用して、ミグ溶接機により、接合する。これにより、この隅部にアルミニウム又はアルミニウム合金からなる溶着金属4が形成される。めっき層3の厚さは、例えば、片面で5乃至50μmである。
このめっき鋼板2のめっき層3は、例えば、アルミニウムめっき、亜鉛系めっき、又は亜鉛アルミニウムマグネシウム系めっきの層である。
このようにして、アルミニウム合金板1の表面に、めっき鋼板2の端面が当接され、その隅部がすみ肉接合されたT形状継手からなる異材接合体が得られる。
次に、上述の如く構成された異材接合体の動作について説明する。本実施形態においては、めっき鋼板2が垂直に配置され、アルミニウム合金板1が水平に配置されているので、ミグ溶接機によりアーク加熱を受けたときに、熱伝導率が低いめっき鋼板2の方が、熱伝導率が高いアルミニウム合金板1よりも蓄熱効果が大きい。このため、アルミニウム溶加材が溶融して生成した溶着金属4は、めっき鋼板2の表面に濡れて拡がりやすい。
これに対し、図2(a)、(b)に示すように、めっき鋼板2を水平に配置し、アルミニウム合金板1を垂直に配置して、アルミニウム合金板1の端面をめっき鋼板2の表面に当接させ、その隅部をすみ肉接合した場合は、得られる溶着金属5が水平のめっき鋼板2の表面に濡れて拡がり、垂直のアルミニウム合金板1の表面には拡がらない。このため、図1(b)と図2(b)との対比から明らかなように、のど厚が、図1(a)のように、めっき鋼板2を垂直に配置した場合の方が大きい。こののど厚は、接合部の強度に大きく影響しており、のど厚が大きい方が、接合部の強度が高い。よって、本発明の実施形態の場合は、高い接合強度が得られる。
本実施形態においては、アルミニウム又はアルミニウム合金溶加材を使用して、ミグ溶接機等によりアーク接合しているので、図3(a)に示すように、本発明の実施形態の場合は、水平に配置されたアルミニウム合金板1の隅部近傍の表面が溶融し、この溶融部分は、溶着金属4と共に凝固する。しかし、垂直のめっき鋼板2の鋼素地は溶融せず、溶着金属と鋼素地の間に金属間化合物層6が形成される。このとき、溶着金属4とめっき鋼板2との間には、図3(c)に示すように厚さ数μm〜数10μmの金属間化合物が生成する。従って、めっき鋼板2をアルミニウム合金板1から離隔する方向に引張応力を印加した場合は、めっき鋼板2の表面と溶着金属4との間に形成された金属間化合物層6には、せん断力が印加される。
これに対し、図2(a)に示すように、アルミニウム合金板1を垂直に配置した場合は、同様に、アーク加熱により、アルミニウム合金板1の表面が溶融し、溶着金属5と一体となって凝固する。しかし、水平のめっき鋼板2の鋼素地は溶融せず、溶着金属5と鋼素地の間に金属間化合物層6が形成される。このように、接合界面に金属間化合物6が生成すると、アルミニウム合金板1に対しめっき鋼板2から離隔する方向に引張応力を印加して、溶着金属5とめっき鋼板1との界面に剥離応力を作用させたときに、この接合部で容易に破断してしまう。
即ち、めっき鋼板2と溶着金属との界面は、せん断応力には強いが、剥離応力には弱く、本発明の実施形態のようにせん断応力が作用する場合(図1)は、継手に引張応力が印加された場合に、接合部で破断しにくく、接合強度が高い。このようにして、本実施形態により、接合強度が高いT形状継手が得られる。
以下、本発明の効果を実証するために行った試験結果について説明する。図4に示すT形状継手を製造した。下記表1は、垂直板及び水平板の構成材料を示す。
Figure 2009056492
上述の組み合わせで、垂直板と水平板とを配置した。なお、垂直板がめっき鋼板の場合は、端面に切断面が現れているものを使用しても良い。また、亜鉛めっき鋼板はめっき厚さが片側6μmで、引張強度が270N/mmである。アルミニウムめっき鋼板はめっき厚が片側30μmで、引張強度が390N/mmである。また、亜鉛アルミニウムマグネシウムめっき鋼板は、めっき厚さが片側6μmで、引張強度が270N/mmである。実施例1、2及び3並びに比較例1、2及び3のアルミニウム合金押出形材は、JIS A7003であり、比較例4のアルミニウム合金板はJIS A5182、押出形材はJIS A7003である。また、比較例5の押出形材はJIS A7003である。
溶接条件は、直径が1.2mmのJIS4000系アルミニウム合金溶加材を使用し、アルミニウム用ミグ溶接機を使用し、溶接電流が80A、溶接速度が50cm/分である。
そして、得られたT形状の継手10に対し、幅が25mmになるように切断して、図5に示す引張試験を実施した。この引張試験は以下のようにして行った。即ち、この継手10を、下面に垂直棒13が立設された平板状の治具11の上に載置し、継手10の水平板の上に鉄板12を載置して、この鉄板12を治具11にボルトで固定することにより、継手10を鉄板12と治具11との間で挟持した。そして、垂直棒13と継手10の垂直板とを握持して、引張試験を実施し、引張破断強度及び破断位置を求めた。その結果及び評価を下記表2に示す。
Figure 2009056492
この表2に示すように、アルミニウム材同士を接合した比較例4に対し、実施例1、2及び3は、引張強度が向上しており、破断位置が鋼板であったのに対し、比較例1、2及び3は、垂直板にアルミニウム合金板を使用したため、強度が低いものであり、しかも異材接合界面で破断していた。比較例4のように、鋼板にのっきが無い鋼板を使用した場合には、溶着金属の連続性が損なわれて、引張強度が極端に低かった。アルミニウム合金材に関しては、JISA7003を用いたが、押出形材JISA6063及び圧延材のJIS5182を用いても同様の効果が得られた。アルミニウム製溶加材に関しては、5000系合金を用いても同様の効果が得られた。また、溶接機に関しては、上述のミグ溶接機の他、ティグ溶接機、レーザ溶接機又はプラズマ溶接機を用いても同様の効果が得られることを確認した。
次に、継手の曲げ性能試験を実施した。図6に示すように、T形状継手の水平板を固定し、垂直板に対し、水平板と平行に応力を負荷し、破断の有無を調査した。この印加応力は油圧を使用した負荷機構により発生させた。その結果、本発明の実施例1,2及び3の場合には、比較例4のアルミニウム材同士の場合と同様に、いずれも溶着金属の止端部を支点にして垂直板のめっき鋼板が曲がり、破断に至らないのに対し、比較例1,2,3,及び5の場合には、いずれも溶着金属と鋼板との間の接合界面で破断した。よって、本発明により、引張強度のみならず、曲げ強度も優れたT形状継手を得ることができることが実証された。
(a)は本発明の実施形態に係る異材接合体を示す正面図、(b)はのど厚を示す模式図である。 (a)は比較例に係る異材接合体を示す正面図、(b)はのど厚を示す模式図である。 (a)乃至(c)は本発明の原理を説明する図である。 実施例の引張試験方法を示す図である。 実施例の測定方法を示す図である。 実施例の曲げ試験方法を示す図である。
符号の説明
1:アルミニウム合金板
2:めっき鋼板
3:めっき層
4,5:溶着金属
6:金属間化合物
10:継手
11:治具
12:鉄板
13:垂直棒

Claims (5)

  1. めっき鋼板とアルミニウム又はアルミニウム合金板との異材接合体において、前記めっき鋼板の端面が、前記アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面に当接され、前記めっき鋼板と前記アルミニウム又はアルミニウム合金板とがすみ肉接合によりT形状に接合されていることを特徴とする異材接合体。
  2. 前記めっき鋼板には、アルミニウムめっき又は亜鉛アルミニウムマグネシウムめっきが施されていることを特徴とする請求項1に記載の異材接合体。
  3. 前記めっき鋼板には、亜鉛系めっきが施されていることを特徴とする請求項1に記載の異材接合体。
  4. アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面に、めっき鋼板の端面を当接させて、前記アルミニウム又はアルミニウム合金板と前記めっき鋼板とをT形状に配置し、その当接部をアルミニウム又はアルミニウム合金溶加材を使用してすみ肉接合することを特徴とする異材接合体の製造方法。
  5. 前記当接部を、ミグ溶接機を使用して、アルミニウム又はアルミニウム合金溶加材によりすみ肉接合することを特徴とする請求項4に記載の異材接合体の製造方法。
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