(第1実施形態) 本発明の第1実施形態を添付した図を参照して説明する。
図1に示される緩衝器1は、減衰力発生機構31(制御弁装置)がアウタチューブ3の側壁に横付された、所謂、制御弁横付型の減衰力調整式油圧緩衝器である。便宜上、図1における上下方向を「上下方向」と称する。また、図2における左方向(左側)を「シリンダ方向(シリンダ側)」と称し、右方向(右側)を「反シリンダ方向(反シリンダ側)」と称する。
緩衝器1は、アウタチューブ3の内側にシリンダ2が設けられた複筒構造をなし、シリンダ2とアウタチューブ3との間にはリザーバ4が形成される。シリンダ2内には、シリンダ2内をシリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとの2室に区画するピストン5が摺動可能に嵌装される。緩衝器1は、下端部(一端)がピストン5に連結されて上端部(他端)がシリンダ上室2Aを通過してシリンダ2の外部へ突出されたピストンロッド6を備える。ピストンロッド6は、シリンダ2の上端部に嵌着されたロッドガイド7に挿通される。シリンダ上室2Aと外部とは、ワッシャ8に取り付けられたオイルシール9によってシールされる。
ピストン5には、シリンダ上室2Aとシリンダ下室2Bとを連通する伸び側通路11及び縮み側通路12が設けられる。伸び側通路11には、シリンダ上室2A側の圧力が設定圧力に達したときに開弁してシリンダ上室2A側の圧力をシリンダ下室2B側へ逃がすディスクバルブ13が設けられる。縮み側通路12には、シリンダ下室2Bからシリンダ上室2Aへの作動流体の流通を許容する逆止弁14が設けられる。
シリンダ2の下端部には、シリンダ下室2Bとリザーバ4とを区画するベースバルブ10が設けられる。ベースバルブ10には、シリンダ下室2Bとリザーバ4とを連通する伸び側通路15及び縮み側通路16が設けられる。伸び側通路15には、リザーバ4側からシリンダ下室2B側への作動流体の流通を許容する逆止弁17が設けられる。縮み側通路16には、シリンダ下室2B側の圧力が設定圧力に達したときに開弁してシリンダ下室2B側の圧力をリザーバ4側へ逃すディスクバルブ18が設けられる。なお、作動流体として、シリンダ2内には油液が封入され、リザーバ4内には油液及びガスが封入される。
シリンダ2の外周には、上下一対のシール部材19,19を介してセパレータチューブ20が取り付けられる。シリンダ2とセパレータチューブ20との間には、環状油路21が形成される。シリンダ2の上部側壁には、環状油路21とシリンダ上室2Aとを連通する通路22が設けられる。セパレータチューブ20の下部側壁には、径方向反シリンダ側へ突出する円筒形の接続口23が設けられる。アウタチューブ3の側壁には、接続口23と同軸に取付孔24が設けられる。アウタチューブ3の側壁には、取付孔24を囲むように円筒形のケース25が設けられる。
図2に示されるように、ケース25には、減衰力発生機構31が収容される。減衰力発生機構31は、バルブ部品が一体化されたバルブブロック33と、ソレノイド部品が一体化されたソレノイドブロック101(アクチュエータ)と、を備える。バルブブロック33は、背圧型のメインバルブ41と、メインバルブ41の開弁圧力を制御するパイロットバルブ61と、パイロットバルブ61の下流に設けられたフェイルセーフバルブ91と、を有する。
アウタチューブ3の取付孔24には、ジョイント部材28が挿通される。ジョイント部材28は、シリンダ側の端部が接続口23に挿入された円筒形の筒部29と、筒部29の反シリンダ側の開口周縁に設けられてケース25内に収容されたフランジ部30(外フランジ)と、を有する。筒部29及びフランジ部30は、シール材によって被覆される。フランジ部30は、シリンダ側の端面がケース25の内フランジ部26の反シリンダ側の端面に当接され、反シリンダ側の端面がメインボディ42のシリンダ側の環状の端面(符号省略)に当接される。なお、バルブブロック33の外周の流路35とリザーバ4とは、ケース25の内フランジ部26に設けられた複数本の溝27によって連通される。
バルブブロック33は、環状のメインボディ42と、環状のパイロットボディ62(ハウジング)と、メインボディ42とパイロットボディ62とを結合させるパイロットピン63と、を備える。メインボディ42の反シリンダ側の端面の外周縁部には、環状のシート部43が形成される。シート部43には、メインディスク44の外周縁部が離着座可能に当接される。
メインディスク44の内周部は、メインボディ42の内周部45とパイロットピン63の大径部64との間でクランプされる。メインディスク44の反シリンダ側の外周部には、環状のパッキン46が設けられる。メインボディ42の反シリンダ側の端面には、環状凹部47が設けられる。メインディスク44がシート部43に着座することで、メインボディ42とメインディスク44との間に環状通路48が形成される。環状通路48は、メインディスク44に形成されたオリフィス(符号省略)を介してメインボディ42の外周の流路35に連通される。メインボディ42のシリンダ側の端面の中央には、凹部49が形成される。凹部49と反シリンダ側の環状凹部47(環状通路48)とは、メインボディ42に形成された複数本(図2に「2本」のみ表示)の通路50によって連通される。
パイロットピン63は、反シリンダ側が開口した有底円筒形に形成される。パイロットピン63のシリンダ側の底部には、導入オリフィス65が形成される。パイロットピン63のシリンダ側は、メインボディ42の軸孔51に圧入される。パイロットピン63の反シリンダ側は、パイロットボディ62の軸孔66に圧入される。パイロットピン63の反シリンダ側の外周面には、軸方向(図2における「左右方向」)へ延びる複数本の溝が形成され、これにより、パイロットボディ62とパイロットピン63との間には、複数本(図2に「1本」のみ表示)の通路67が形成される。
パイロットボディ62は、反シリンダ側が開口した略有底円筒形に形成される。パイロットボディ62のシリンダ側には、パイロットボディ62の内周部68とパイロットピン63の大径部64とによってクランプされる可撓性ディスク69が設けられる。パイロットボディ62のシリンダ側の外周部には、パイロットボディ62と同軸の円筒部70が形成される。円筒部70の内周面(符号省略)には、メインバルブ41のパッキン46が摺動可能に当接される。これにより、メインディスク44の反シリンダ側(背面)には、パイロット室71が形成される。パイロット室71の圧力は、メインディスク44に対して閉弁方向(シート部43に押し付ける方向)に作用する。
パイロットボディ62の底部には、軸方向へ延びる複数本(図2に「2本」のみ表示)の通路72が周方向に等間隔で設けられる。パイロットボディ62のシリンダ側の端面に設けられた環状のシート部73に可撓性ディスク69が着座することにより、シート部73の内側(内周)に環状通路(符号省略)が形成される。シート部73の内側の環状通路には、通路72のシリンダ側が開口する。可撓性ディスク69は、パイロット室71の内圧を受けて撓むことにより、パイロット室71に体積弾性を付与する。
可撓性ディスク69は、複数枚のディスクを積層して構成される。パイロットピン63の大径部64に当接するディスクの内周部には、通路67とパイロット室71とを連通する切欠き75が設けられる。これにより、環状油路21の油液は、ジョイント部材28の流路36(軸孔)を介して減衰力発生機構31に導入されて、導入通路、即ち、導入オリフィス65、パイロットピン63の軸孔76、通路67、及び切欠き75、を介してパイロット室71に導入される。
パイロットボディ62の反シリンダ側には、凹部77が形成される。凹部77の底部には、弁体78が離着座可能に当接される環状のシート部79(弁座)が設けられる。シート部79は、作動流体が通過するパイロットボディ62の軸孔66の開口周縁に設けられる。弁体78は、略円筒形に形成され、シリンダ側の端部がテーパ状に形成される。弁体78の反シリンダ側には、外フランジ形のフランジ部80が設けられる。弁体78は、パイロットバネ121によってシート部79から離れる方向(反シリンダ方向)へ付勢される。パイロットバネ121は、第1実施形態に係るバネ装置120を構成する。
パイロットボディ62の反シリンダ側には、円筒部81が形成される。図2又は図5に示されるように、円筒部81には、シリンダ側から順に、パイロットバネ121、スペーサ93、フェイルセーフディスク94、リテーナ95、スペーサ96、及びワッシャ97が積層される。積層された部品は、円筒部81の外周に嵌着されたキャップ98によって固定される。キャップ98とパイロットボディ62の円筒部81との間には、凹部77(弁室)とバルブブロック33の外周の流路35とを連通する通路99が形成される。
ソレノイドブロック101は、ソレノイドケース102に、コイル103、コア104、コア105、プランジャ106、及びプランジャ106に連結された中空の作動ロッド107を組み込んで一体化させたものである。ソレノイドケース102の反シリンダ側には、スペーサ108及びカバー109が挿入される。ソレノイドケース102の反シリンダ側の端縁部を塑性加工することにより、ソレノイドケース102内の部品に軸力が作用される。プランジャ106は、コイル103への通電により、電流値に応じた推力を発生する。プランジャ106が発生する推力は、弁体78をパイロットバネ121の付勢力に抗してシート部79へ向かう方向(シリンダ方向)へ移動させるように作用する。
ソレノイドケース102は、シリンダ側が、ケース25の反シリンダ側の開口に挿入される。ソレノイドケース102とケース25との間は、シール部材110によってシールされる。作動ロッド107のシリンダ側は、凹部77(弁室)に突出する。作動ロッド107のシリンダ側の端部には、弁体78が取り付けられる。ケース25に螺合させたナット111を締め付けて環状の止め輪112を圧縮することにより、ソレノイドケース102とケース25とが固定され、バルブブロック33とソレノイドブロック101とが結合(一体化)される。
そして、図2に示されるコイル103への非通電時には、弁体78がパイロットバネ121によって反シリンダ方向へ付勢され、弁体78のフランジ部80がフェイルセーフディスク94に当接(着座)される。他方、コイル103への通電時には、プランジャ106にシリンダ方向への推力が発生し、作動ロッド107がパイロットバネ121の付勢力に抗してシリンダ方向へ移動して、弁体78がシート部79に着座される。弁体78の開弁圧力は、コイル103への通電の電流値を変化させることで制御される。コイル103への通電の電流値が小さいソフトモード時において、パイロットバルブ61は、パイロットバネ121の付勢力とプランジャ106の推力とが平衡することで、一定の開弁量(ソフト特性時開弁量)で開弁される。
緩衝器1は、ピストンロッド6の伸び行程時には、シリンダ上室2A内の圧力上昇によってピストン5の逆止弁14が閉弁して、ディスクバルブ13の開弁前には、シリンダ上室2A側の作動流体が加圧される。加圧された作動流体は、通路22および環状流路21を通って、セパレータチューブ20の接続口23から、ジョイント部材28を介して減衰力発生機構31(制御弁装置)へ導入される。このとき、ピストン5が移動した分の作動流体は、リザーバ4からベースバルブ10の逆止弁17を開弁させてシリンダ下室2Bへ流入する。なお、シリンダ上室2Aの圧力がピストン5のディスクバルブ13の開弁圧力に達してディスクバルブ13が開弁されると、シリンダ上室2Aの圧力がシリンダ下室2Bへリリーフされる。これにより、シリンダ上室2Aの過度の圧力上昇が回避される。
一方、ピストンロッド6の縮み行程時には、シリンダ下室2B内の圧力上昇によってピストン5の逆止弁14が開弁して、ベースバルブ10の伸び側通路15の逆止弁17が閉弁する。ディスクバルブ18の開弁前には、ピストン下室2Bの作動流体がシリンダ上室2Aへ流入し、ピストンロッド6がシリンダ2内に侵入した体積分の作動流体が、シリンダ上室2Aから、通路22、環状流路21、セパレータチューブ20の接続口23、及びジョイント部材28の流路36を通って減衰力発生機構31へ導入される。なお、シリンダ下室2Bの圧力がベースバルブ10のディスクバルブ18の開弁圧力に達してディスクバルブ18が開弁されると、シリンダ下室2Bの圧力がリザーバ4へリリーフされる。これにより、シリンダ下室2Bの過度の圧力上昇が回避される。
減衰力発生機構31に導入された作動流体は、パイロットピン63の導入オリフィス65、軸孔76、パイロットボディ62の凹部77、通路72、及び可撓性ディスク69を介してパイロット室71に導入される。メインバルブ41の開弁前(ピストン速度が低速域であるとき)には、凹部77に流入した作動流体は、パイロットバネ121、フェイルセーフディスク94の軸孔、ワッシャ97の軸孔、キャップ98とパイロットボディ62との間の通路99、バルブブロック33の外周の流路35、及びケース25の内フランジ部26に形成された複数本の溝27を通ってリザーバ4へ流通する。
ピストン速度が上昇して、環状油路21、ジョイント部材28の流路36、及びメインボディ42の通路50を介して環状通路48に導入された作動流体の圧力がメインバルブ41の開弁圧力に達して、メインバルブ41が開弁されると、環状通路48の作動流体は、バルブブロック33の外周の流路35、ケース25の内フランジ部26に形成された複数本の溝27を通って、リザーバ4へ流通する。
このように、減衰力発生機構31は、ピストンロッド6の伸び行程及び縮み行程の両行程において、メインバルブ41の開弁前(ピストン速度が低速域であるとき)には、作動流体が導入オリフィス65及びパイロットバルブ61を通過することで減衰力を発生する。また、メインバルブ41の開弁後(ピストン速度が中速域であるとき)には、メインバルブ41の開度に応じた減衰力を発生する。そして、コイル103への通電を制御してパイロットバルブ61の開弁圧力を調整することにより、減衰力発生機構31が発生する減衰力を直接制御することができる。
また、コイル103の断線、車載コントローラの故障等のフェイル発生時にプランジャ106の推力が失われた場合、パイロットバネ121(フェイルセーフバネを兼ねる)の付勢力によって弁体78を反シリンダ方向へ移動させてパイロットバルブ61を開弁させるとともに、弁体78のフランジ部80をフェイルセーフディスク94に当接させてバルブブロック33の内側の流路(符号省略)と外側の流路35との連通を遮断する。
これにより、フェイルセーフバルブ91の開弁圧力を調整して、環状油路21から、ジョイント部材28の流路36、パイロットピン63の導入オリフィス65、軸孔76、パイロットボディ62の凹部77、ワッシャ97の軸孔、キャップ98とパイロットボディ62との間の通路99、バルブブロック33の外周の流路35、及びケース25の内フランジ部26に形成された複数本の溝27を通ってリザーバ4へ流通する作動流体の流れを制御することにより、フェイル発生時に、一定の減衰力を発生させることができる。同時に、パイロット室71の内圧、延いてはメインバルブ41の開弁圧力を調整することが可能であり、フェイル発生時においても一定の減衰力を得ることができる。
図3乃至図6を参照して第1実施形態に係るバネ装置120を説明する。
図3に示されるように、バネ装置120は、単一の薄板バネからなるパイロットバネ121を有する。パイロットバネ121は、環状の外周固定部122及び内周可動部125を有する。内周可動部125には、弁体78が挿通される挿通孔127が設けられる。図3における、外周固定部122の外側周端123及び内側周端124と、内周可動部125の外側周端126及び挿通孔127とは、軸心Aを中心とする同心円である。
パイロットバネ121の外周固定部122及び内周可動部125は、軸平面による断面が一定の矩形に形成される。図5に示されるように、パイロットバネ121の外周固定部122は、パイロットボディ62の反シリンダ側(図5における「上側」)の端面(凹部77の開口周縁)に設けられた環状のクランプ面82に当接される。即ち、外周固定部122は、パイロットバネ121のクランプ代であり、外周固定部122の径方向(図5における「左右方向」)の幅とパイロットボディ62のクランプ面82の径方向の幅とは略同一である。内周可動部125は、挿通孔127の周縁部が弁体78のフランジ部80によって受けられる。
便宜上、図3に示されるパイロットバネ121に、軸心Aを原点とするXY座標を定める。また、原点(軸心A)から正の方向へ延びるX軸(+X軸)の角度を0度、原点から正の方向へ延びるY軸(+Y軸)の角度を90度、原点から負の方向へ延びるX軸(-X軸)の角度を180度と定める。図3を参照すると、パイロットバネ121は、一対の第1ソフト特性バネ131,131、一対の第1ハード特性バネ132,132、一対の第2ソフト特性バネ133,133、及び一対の第2ハード特性バネ134,134を備える。
ここで、対になっている第1ソフト特性バネ131,131、第1ハード特性バネ132,132、第2ソフト特性バネ133,133、及び第2ハード特性バネ134,134は、軸心Aに対して点対称に設けられる。ここでは、図3におけるX軸の+Y側(図3における「X軸の上側」)の、第1ソフト特性バネ131、第1ハード特性バネ132、第2ソフト特性バネ133、及び第2ハード特性バネ134のみを説明し、図3におけるX軸の-Y側(図3における「X軸の下側」)の、第1ソフト特性バネ131、第1ハード特性バネ132、第2ソフト特性バネ133、及び第2ハード特性バネ134の説明を省略する。
第1ハード特性バネ132は、内周可動部125の外側周端126から径方向へ一定幅(一定の断面積)で延びる。第1ハード特性バネ132は、例えば、+X軸に対して135度の角度をなす。第2ハード特性バネ134は、内周可動部125の外側周端126から径方向へ一定幅(一定の断面積)で延びる。第2ハード特性バネ134は、例えば、+X軸に対して105度の角度をなす。第2ハード特性バネ134は、第1ハード特性バネ132よりも幅(断面積)が小さく、第1ハード特性バネ132よりも径方向長さが短い。
パイロットバネ121は、外周固定部122の内側周端124の0度の位置(+X軸上)から軸心Aに向かって突出する梁部129を有する。第1ソフト特性バネ131は、梁部129と第1ハード特性バネ132の先端部である当接部C1との間を、外周固定部122の内側周端124に沿って一定幅(一定の断面積)で円弧状に延びる。第2ソフト特性バネ133は、梁部129と第2ハード特性バネ134の先端部である当接部C2との間を、第1ソフト特性バネ131の内側周端(符号省略)に沿って一定幅(一定の断面積)で円弧状に延びる。
図5に示されるように、パイロットボディ62の凹部77には、環状のバネ当接面136が形成された段部135(第1規制部材)が設けられる。段部135は、凹部77のシリンダ側の小径部83と反シリンダ側の大径部84との間に設けられる。小径部83と大径部84とは同軸に設けられ、パイロットボディ62のバネ当接面136とクランプ面82との間には、軸方向の高さ(図5における「上下方向の距離」)が一定の段差が設けられる。
図4は、第1実施形態に係るバネ装置120の概念図である。
ここで、第1ソフト特性バネ131のバネ定数をKs1、第1ハード特性バネ132のバネ定数をKh1、第2ソフト特性バネ133のバネ定数をKs2、第2ハード特性バネ134のバネ定数をKh2とすると、バネ定数Ks1、Kh1、Ks2、Kh2は、以下の不等式(1)、(2)、(3)を満たす。(1)Ks1<Kh1(2)Ks2<Kh2(3)(Ks1/Kh1)<(Ks2/Kh2)
パイロットバネ121の外周固定部122に対する内周可動部125の変位(以下「パイロットバネ121の変位」と称する)が、弁体78がシート部79(弁座)から離れた0の状態(図5参照)から、パイロットバネ121の当接部C1(第1ハード特性バネ132の先端部)がパイロットボディ62の段部135のバネ当接面136に当接されるx1までの、第1区間におけるバネ装置120のバネ定数K1は、第1ソフト特性バネ131と第1ハード特性バネ132とが直列に接続されたバネ(第1バネ)と、第2ソフト特性バネ133と第2ハード特性バネ134とが直列に接続されたバネ(第2バネ)と、が並列に接続されて構成されたバネの合成バネ定数(第1合成バネ定数)と同値となる。その値は以下の(4)となり、低バネ定数となる。(4)K1=(1/Ks1+1/Kh1)+1/(1/Ks2+1/Kh2)
また、パイロットバネ121の変位が、x1から、パイロットバネ121の当接部C2(第2ハード特性バネ134の先端部)がバネ当接面136に当接されるx2までの、第2区間におけるバネ装置120のバネ定数K2は、第1ソフト特性バネ131の撓みがバネ当接面136によって規制されるので、第1ハード特性バネ132と、第2ソフト特性バネ133と第2ハード特性バネ134とが直列に接続されたバネ(第2バネ)と、が並列に接続されて構成されたバネの合成バネ定数(第2合成バネ定数)と同値となる。その値は以下の(5)となり、中間バネ定数となる。(5)K2=Kh1+1/(1/Ks2+1/Kh2)
さらに、パイロットバネ121の変位が、x2から、弁体78がシート部79に当接されるx3までの、第3区間におけるバネ装置120のバネ定数K3は、第1ソフト特性バネ131に加えて、第2ソフト特性バネ133の撓みがバネ当接面136によって規制されるので、第1ハード特性バネ132と第2ハード特性バネ134とが並列に接続されて構成されたバネの合成バネ定数(第3合成バネ定数)と同値となる。その値は以下の(6)となり、高バネ定数となる(K1<K2<K3)。(6)K3=Kh1+Kh2
ここで、図6は、第1実施形態に係るバネ装置120のバネ荷重特性と従来の制御弁装置におけるバネ装置(特許文献1参照)のバネ荷重特性とを比較した線図である。また、図7は、第1実施形態に係る緩衝器1の減衰力特性と従来の制御弁装置を備える緩衝器の減衰力特性とを比較した線図である。
図6、図7を参照すると、従来の制御弁装置におけるバネ装置(パイロットバネ)は、例えば、ソフト特性時における弁体の開弁量(図6における「L0」)を大きく設定するとともに、ハード特性時におけるパイロットバルブ61の開弁量が小さいときのパイロットバネのバネ定数(図6における「θ0」)を大きく設定して、ソフト特性時における減衰力を小さくして車両の乗り心地を確保しつつ、ジャーク、バルブ振動を低減させて音振性を高めた場合、パイロットバネのセット荷重(図6における「F0」)が大きくなる。その結果、低速域におけるハード特性の減衰力が小さくなり、操縦安定性が低下する。
このように、従来の制御弁装置におけるバネ装置は、バネ荷重特性の変化点(C0)が1つであるため、バネ定数の調整の自由度が小さく、車両の乗り心地、音振性、操縦安定性を高いレベルで満足させた緩衝器を設計するのは困難であった。なお、ソフト特性時における弁体の開弁量L0は、バネ荷重が、ソレノイド推力(プランジャが発生する推力)に達した時点の、弁体のシート部(弁座)からの変位量である。
これに対し、第1実施形態に係るバネ装置120は、例えば、ソフト特性時における弁体78の開弁量(図6における「L1」)を大きく設定することで減衰力を小さくして車両の乗り心地を確保しつつ、ハード特性時におけるパイロットバルブ61の開弁量が小さいときのパイロットバネ121のバネ定数(図6における「θ1」)を大きく設定してジャーク、バルブ振動を低減させて音振性を高め、同時に、パイロットバネ121のセット荷重(図6における「F1」)を小さく設定して低速域におけるハード特性の減衰力を増大させ、操縦安定性を向上させることができる。
このように、第1実施形態では、第1ソフト特性バネ131と第1ハード特性バネ132とを直列に接続したバネと、第2ソフト特性バネ133と第2ハード特性バネ134とを直列に接続したバネと、を単一の板バネに並列に設けてパイロットバネ121を構成した。
そして、弁体78のストロークの第1区間、即ち、パイロットバネ121の変位が、0から当接部C1がパイロットボディ62の段部135(第1規制部材)のバネ当接面136に当接されるx1までの区間は、第1ソフト特性バネ131と第1ハード特性バネ132とが直列に接続されたバネ(第1バネ)と、第2ソフト特性バネ133と第2ハード特性バネ134とが直列に接続されたバネ(第2バネ)とが並列に接続されて構成された、合成バネ定数K1(第1合成バネ定数)のバネを作用させる。
また、弁体78のストロークの第2区間、即ち、パイロットバネ121の変位が、x1から当接部C2がバネ当接面136に当接されるx2までの区間は、第1ハード特性バネ132と、第2ソフト特性バネ133と第2ハード特性バネ134とが直列に接続されたバネ(第2バネ)とが並列に接続されて構成された、合成バネ定数K2(第2合成バネ定数、K1<K2)のバネを作用させる。
さらに、弁体78のストロークの第3区間、即ち、パイロットバネ121の変位が、x2から弁体78がシート部79に当接されるx3までの区間は、第1ハード特性バネ132と第2ハード特性バネ134とが並列に接続されて構成された、合成バネ定数K3(第3合成バネ定数、K2<K3)のバネを作用させる。
第1実施形態によれば、バネ装置120にバネ荷重特性の変化点(C1、C2)を2つ設けたことにより、バネ定数の調整の自由度が高いバネ装置120を備えた減衰力発生機構31(制御弁装置)、及び車両の乗り心地、音振性、操縦安定性を高いレベルで満足させた緩衝器1を提供することができる。
なお、第1実施形態では、ハード特性時におけるパイロットバルブ61の開弁量が小さいときの、バネ装置120のバネ定数(図6における「θ1」)を従来の制御弁装置におけると同等に設定して、減衰力発生機構31(制御弁装置)のジャーク、バルブ振動の発生リスクを低減させつつ、バネ装置120のセット荷重(図6における「F1」)を小さく設定して、緩衝器1のハード特性時の低速域における減衰力を増大させて車両の操縦安定性を向上させる仕様に対応する構成を例示した。
しかし、前述したパイロットバルブ121の設定(緩衝器1の仕様)は一例に過ぎず、第1実施形態では、バネ装置120にバネ荷重特性の変化点(C1、C2)を2つ設けたことにより、緩衝器1の仕様(要求される性能)に応じて、バネ装置120のバネ荷重特性を多様に設定することができる。
また、バネ装置120(パイロットバネ121)を構成するバネ要素は、第1実施形態のような板バネの形態に限定されるものではなく、例えば、コイルバネ等のバネ形態、或いはこれらが組み合わされて構成されたバネ形態を適用することができる。さらに、バネ要素の材料は、例えば、金属、高分子材料、或いはこれらが組み合わされて構成された材料を適用することができる。
また、第1実施形態では、第1ソフト特性バネ131,131、第1ハード特性バネ132,132、第2ソフト特性バネ133,133、及び第2ハード特性バネ134,134を線形バネとしたが、これらを、例えば断面積が一定でない非線形バネとしてもよい。この場合、各バネ要素のバネ定数は、当該バネ要素におけるバネ定数の平均値を適用する。
(第2実施形態) 次に、図8乃至図13を参照して第2実施形態を説明する。ここでは、第1実施形態との相違部分を説明する。なお、第1実施形態との共通部分については、同一の称呼及び符号を用いて重複する説明を省略する。
第1実施形態では、第1ソフト特性バネ131と第1ハード特性バネ132とを直列に接続したバネと、第2ソフト特性バネ133と第2ハード特性バネ134とを直列に接続したバネと、を単一の板バネに並列に設けてパイロットバネ121を構成した。
これに対し、第2実施形態では、第1ソフト特性バネ131と第1ハード特性バネ132とを直列に接続したバネを単一の板バネに設けて第1パイロットバネ141を構成するとともに、第2ハード特性バネ145が設けられた第2パイロットバネ142を第1パイロットバネ141と切り離して構成し、第1パイロットバネ141の第1ハード特性バネ132と、パイロットバルブ61の閉弁位置近傍のみで作用する第2パイロットバネ142の第2ハード特性バネ145と、を並列に設けることでバネ装置140を構成した。
図11に示されるように、パイロットボディ62の段部135の内周には、環状のバネ当接面148が形成された段部147(第2規制部材)が設けられる。段部135(第1規制部材)のバネ当接面136とバネ当接面148との間には、軸方向高さ(図11における「上下方向の距離」)が一定の段差が形成さる。パイロットバルブ61のシート部79(弁座)からバネ当接面148までの高さは、シート部79からバネ当接面136までの高さよりも低くなっている。他方、弁体78には、段付フランジ部150が形成される。段付フランジ部150の外周部には、第1パイロットバネ141の内周可動部125を受ける第1バネ受部151が設けられる。段付フランジ部150の内周部には、第1バネ受部151に対してシリンダ方向(図11における「下方向」)の段差を有する第2バネ受部152が設けられる。
図8に示されるように、第1ハード特性バネ132は、第1パイロットバネ141の内周可動部125の外側周端126から径方向外側へ一定幅(一定の断面積)で延び、例えば、+X軸に対して155度の角度をなす。他方、図9に示されるように、第2パイロットバネ142は、単一の薄板バネからなる。第2パイロットバネ142は、環状に形成された環状部143と、環状部143の中央に形成されて弁体78が挿通される挿通孔144と、環状部143の外周に設けられてパイロットボディ62の段部147のバネ当接面148に当接された複数個(本実施形態では「3個」)の第2ハード特性バネ145と、を有する。環状部143には、弁体78の第2バネ受部152が離着座可能に当接される当接部C2が設けられる。第2ハード特性バネ145は、第2パイロットバネ142の径方向へ突出して環状部143の外周に沿って等間隔で設けられる。
図10は、第2実施形態に係るバネ装置140の概念図である。
第1パイロットバネ141の外周固定部122に対する、内周可動部125の変位(以下「パイロットバネ141の変位」と称する)が、弁体78がシート部79(弁座)から離れた0の状態(図11参照)から、第1パイロットバネ141の当接部C1(第1ハード特性バネ132の先端部)が、パイロットボディ62の段部135(第1規制部材)のバネ当接面136に当接されるx1までの、第1区間におけるバネ装置140のバネ定数K1は、第1ソフト特性バネ131と第1ハード特性バネ132とが直列に接続されて構成されたバネの合成バネ定数と同値となる。その値は以下の(7)となり、低バネ定数となる。(7)K1=(1/Ks1+1/Kh1)
また、第1パイロットバネ141の変位が、x1から、弁体78の段付フランジ部150の第2バネ受部152が、第2パイロットバネ142の環状部143の当接部C2に当接されるx2までの、第2区間におけるバネ装置140のバネ定数K2は、第1ソフト特性バネ131の撓みがバネ当接面136によって規制されるので、第1ハード特性バネ132のバネ定数Ks2となり、中間バネ定数となる。
さらに、第1パイロットバネ141の変位が、x2から、弁体78がシート部79に当接されるx3までの、第3区間におけるバネ装置140のバネ定数K3は、第1ハード特性バネ132と第2ハード特性バネ134とが並列に接続されて構成されたバネの合成バネ定数と同値となる。その値は以下の(8)となり、高バネ定数(K1<K2<K3)となる。(8)K3=Kh1+Kh2
ここで、図12は、第2実施形態に係るバネ装置140のバネ荷重特性と、第1実施形態に係るバネ装置120のバネ荷重特性と、従来の制御弁装置における(特許文献1参照)のバネ荷重特性と、を比較した線図である。また、図13は、第2実施形態に係る緩衝器1の減衰力特性と、第1実施形態に係る緩衝器1の減衰力特性と、従来の制御弁装置を備える緩衝器の減衰力特性と、を比較した線図である。
図12、図13に示されるように、第2実施形態によれば、前述した第1実施形態と同じように、バネ装置140にバネ荷重特性の変化点(C1、C2)を2つ設けたので、バネ定数の調整の自由度が高いバネ装置140を備えた減衰力発生機構31(制御弁装置)、及び車両の乗り心地、音振性、操縦安定性を高いレベルで満足させた緩衝器1を提供することができる。
また、第2実施形態では、第1ソフト特性バネ131と第1ハード特性バネ132とが直列に接続された第1パイロットバネ141と、第2ハード特性バネ145が設けられた第2パイロットバネ142と、を別個に構成したので、第1実施形態に係るバネ装置120における第2ハード特性バネ134のバネ定数に対して、より大きいバネ定数の第2ハード特性バネ145を用いることが可能であり、バネ定数の調整の自由度をより向上させることができる。
これにより、第2実施形態では、例えば、バネ装置140のソフト特性時における弁体78の開弁量を、第1実施形態に係るバネ装置120のソフト特性時における弁体78の開弁量(図12における「L0」)と同等に設定して乗り心地を確保しつつ、バネ装置140のセット荷重(図12における「F0」)を、第1実施形態に係るバネ装置120のセット荷重と同等に設定してハード特性時の低速域における操縦安定性を確保しながら、バネ装置140のハード特性時におけるパイロットバルブ61の開弁点近傍におけるバネ定数(図12における「θ2」)を、第1実施形態に係るバネ装置120のハード特性時におけるパイロットバルブ61の開弁点近傍におけるバネ定数(図12における「θ1」)よりも大きく設定して、減衰力発生機構31(制御弁装置)のジャーク、バルブ振動の発生リスクをより低減させることができる。
(第3実施形態) 次に、図14乃至図19を参照して第3実施形態を説明する。ここでは、第1、第2実施形態との相違部分を説明する。なお、第1、第2実施形態との共通部分については、同一の称呼及び符号を用いて重複する説明を省略する。
第2実施形態では、第1パイロットバネ141と第2ハード特性バネ145とを切り離して構成するとともに、パイロットボディ62の段部135(第1規制部材)の内周に、環状のバネ当接面148が形成された段部147(第2規制部材)を設けておいて、第2パイロットバネ142をバネ当接面148で受けるように、バネ装置140を構成した。
これに対し、第3実施形態では、単一の薄板バネからなるパイロットバネ161に、第1ソフト特性バネ131、第1ハード特性バネ132、第2ソフト特性バネ162、及び第2ハード特性バネ163を設けてバネ装置160を構成した。バネ装置160は、弁体78のストロークにおける、パイロットバネ161の変位が0の状態(図16参照)から、第1ソフト特性バネ131と第1ハード特性バネ132との接続部である当接部C1(第1ハード特性バネ132の先端部)が、パイロットボディ62の段部135のバネ当接面136に当接されるx1までを第1区間とし、パイロットバネ161の変位が、x1から、第2ハード特性バネ163の先端部である当接部C2がパイロットボディ62の段部147のバネ当接面148に当接されるx2までを第2区間とし、パイロットバネ161の変位が、x2から、弁体78がシート部79に当接されるx3までを第3区間とした。
図14に示されるように、パイロットバネ161は、対になっている第1ソフト特性バネ131,131、第1ハード特性バネ132,132、第2ソフト特性バネ162,162、及び第2ハード特性バネ163,163が、軸心Aに対して点対称に設けられる。ここでは、図14におけるY軸の-X側(図14における「Y軸の左側」)の第2ソフト特性バネ164、及び図14におけるX軸の+Y側(図14における「X軸の上側」)の第2ハード特性バネ163を説明する。
第2ハード特性バネ163は、内周可動部125の外側周端126から径方向外側へ一定幅(一定の断面積)で延びる。第2ハード特性バネ163は、例えば、+X軸に対して45度の角度をなす。第2ハード特性バネ163の外側周端164は、軸心Aを中心とする円弧に沿って延びる。第2ハード特性バネ163と第1ソフト特性バネ131との間には、円弧状の一定の隙間(符号省略)が形成される。
第2ソフト特性バネ162は、例えば、+X軸に対して150度の角度をなす第1ハード特性バネ132と、図14におけるX軸の-Y側(図14における「X軸の下側」)の第2ハード特性バネ163と、の間に架設され、軸心Aを中心とする円弧に沿って延びる。第2ソフト特性バネ162の外側周端(符号省略)と、第2ハード特性バネ163の外側周端164とは、軸心Aを中心とする同一の円(円弧)上に設けられる。パイロットバネ161には、内周可動部125、第1ハード特性バネ132、第2ソフト特性バネ162、及び第2ハード特性バネ163によって囲まれた開口165が形成される。
図15を参照すると、パイロットバネ161の変位が0の状態から、第1ソフト特性バネ131と第1ハード特性バネ132との接続部である当接部C1(第1ハード特性バネ132の先端部)が、パイロットボディ62の段部135のバネ当接面136に当接されるx1までの、第1区間におけるバネ装置160のバネ定数K1は、第1ソフト特性バネ131と、第2ソフト特性バネ133と第2ハード特性バネ163とが直列に接続されたバネに第1ハード特性バネ132を並列に接続したバネと、が直列に接続されて構成されたバネの合成バネ定数と同値となる。その値は以下の(9)となり、低バネ定数となる。(9)K1=1/{1/Ks1+1/[Kh1+1/(1/Ks2+1/Kh2)]}
また、パイロットバネ161の変位が、x1から、第2ハード特性バネ163の当接部C2(第2ハード特性バネ163の先端部)が、パイロットボディ62の段部147のバネ当接面148に当接されるx2までの、第2区間におけるバネ装置160のバネ定数K2は、第1ソフト特性バネ131の撓みがバネ当接面136によって規制されるので、第1ハード特性バネ132と、第2ソフト特性バネ162と第2ハード特性バネ163とが直列に接続されたバネと、が並列に接続されて構成されたバネの合成バネ定数と同値となる。その値は以下の(10)となり、中間バネ定数となる。(10)K2=Kh1+1/(1/Ks2+1/Kh2)
さらに、パイロットバネ161の変位が、x2から、弁体78がシート部79に当接されるx3までの、第3区間におけるバネ装置160のバネ定数K3は、第1ソフト特性バネ131の撓みに加えて、第2ソフト特性バネ162の撓みが段部147のバネ当接面148によって規制されるので、第1ハード特性バネ132と第2ハード特性バネ163とが並列に接続されて構成されたバネの合成バネ定数と同値となる。その値は以下の(11)となり、高バネ定数(K1<K2<K3)となる。(11)K3=Kh1+Kh2
ここで、図17は、第3実施形態に係るバネ装置160のバネ荷重特性と、従来の制御弁装置における(特許文献1参照)のバネ荷重特性と、を比較した線図である。また、図18は、第3実施形態に係る緩衝器1における減衰力特性の第1パターンと、従来の制御弁装置を備える緩衝器の減衰力特性と、を比較した線図である。さらに、図19は、第3実施形態に係る緩衝器1における減衰力特性の第2パターンと、従来の制御弁装置を備える緩衝器の減衰力特性と、を比較した線図である。
図17、図18、図19に示されるように、第3実施形態は、前述した第1、第2実施形態と同じように、バネ装置160にバネ荷重特性の変化点(C1、C2)を2つ設けたので、バネ定数の調整の自由度が高いバネ装置160を備えた減衰力発生機構31(制御弁装置)、及び車両の乗り心地、音振性、操縦安定性を高いレベルで満足させた緩衝器1を提供することができる。
また、第3実施形態では、第1実施形態と同じように、第1ソフト特性バネ131、第1ハード特性バネ132、第2ソフト特性バネ162、及び第2ハード特性バネ163を、単一のパイロットバネ161に設けて構成したにもかかわらず、第2実施形態と同じように、第1実施形態に係るバネ装置120の第2ハード特性バネ134のバネ定数に対して、より大きいバネ定数の第2ハード特性バネ163を用いることが可能であり、部品点数を増やすことなく、また弁体78に段付フランジ部150(図11参照)を設ける必要がないので、製造コストを増大させることなく、バネ定数の調整の自由度をより向上させることができる。
図17、図18を参照すると、第3実施形態における減衰力特性の第1パターンでは、バネ装置160の、ソフト特性時における弁体78の開弁量を、従来の緩衝器におけるバネ装置の、ソフト特性時における弁体78の開弁量(図17における「L0」)と同等に設定して乗り心地を確保しつつ、バネ装置160(パイロットバネ161)のセット荷重(図17における「F1」)を、従来の制御弁装置のセット荷重(図17における「F0」)よりも小さく設定して、従来の緩衝器における減衰力特性に対して低速域におけるハード特性の減衰力を増大させてハード特性時の低速域における操縦安定性を向上させたものである。
図17、図19を参照すると、第3実施形態における減衰力特性の第2パターンでは、バネ装置160の、ソフト特性時における弁体78の開弁量を、従来の緩衝器におけるバネ装置の、ソフト特性時における弁体78の開弁量(図17における「L0」)と同等に設定して乗り心地を確保しつつ、バネ装置160の、ハード特性時におけるパイロットバルブ61の開弁点近傍におけるバネ定数(図17における「θ2」)を、従来の緩衝器におけるバネ装置の、ハード特性時におけるパイロットバルブの開弁点近傍におけるバネ定数(図17における「θ0」)よりも大きく設定して、減衰力発生機構31(制御弁装置)のジャーク、バルブ振動の発生リスクをより低減させたものである。
(第4実施形態) 次に、図20乃至図22を参照して第4実施形態を説明する。ここでは、第1乃至第3実施形態との相違部分を説明する。なお、第1乃至第3実施形態との共通部分については、同一の称呼及び符号を用いて重複する説明を省略する。
第1乃至第3実施形態では、バネ定数の調整の自由度を向上させるため、バネ荷重特性の変化点(C1、C2)を2つ設けて、バネ装置120,140,160を構成した。これに対し、第4実施形態では、バネ荷重特性の変化点(C1、C2、C3)を3つ設けて、バネ定数の調整の自由度をより向上させるように、バネ装置170を構成した。
図20に示されるように、パイロットバネ171の、対になっている第1ソフト特性バネ172,172、第1ハード特性バネ173,173、第2ソフト特性バネ174,174、第2ハード特性バネ175,175、及び第3ハード特性バネ176,176は、軸心Aに対して点対称に設けられる。ここでは、図20におけるX軸の+Y側(図20における「X軸の上側」)の、第1ソフト特性バネ172、第1ハード特性バネ173、第2ソフト特性バネ174、第2ハード特性バネ175、及び第3ハード特性バネ176のみを説明し、図20におけるX軸の-Y側(図20における「X軸の下側」)の、第1ソフト特性バネ172、第1ハード特性バネ173、第2ソフト特性バネ174、第2ハード特性バネ175、及び第3ハード特性バネ176の説明を省略する。
第1ハード特性バネ173及び第2ハード特性バネ175は、内周可動部125から径方向へ延びる。第1ハード特性バネ173は、バネ定数がKh1であり、例えば、+X軸に対して115度の角度をなす。第2ハード特性バネ175は、バネ定数がKh2(Kh1<Kh2)であり、例えば、+X軸に対して165度の角度をなす。第1ソフト特性バネ172は、梁部129と第1ハード特性バネ173の先端部である当接部C1との間を、外周固定部122の内側周端124に沿って一定幅(一定の断面積)で、円弧状に延びる。
第2ソフト特性バネ174は、当接部C1と、第2ハード特性バネ175の先端部である当接部C2との間を、外周固定部122の内側周端124に沿って一定幅(一定の断面積)で円弧状に延びる。第1ソフト特性バネ172と、第2ソフト特性バネ174とは、軸心Aを中心とする同一の円上に設けられる。パイロットバネ171には、内周可動部125、第1ハード特性バネ173、第2ソフト特性バネ174、及び第2ハード特性バネ175によって囲まれた開口177が形成される。
第3ハード特性バネ176は、内周可動部125から径方向へ一定幅(一定の断面積)で延びる。第3ハード特性バネ176は、バネ定数がKh3(Kh1<Kh2<Kh3)であり、例えば、+X軸に対して45度の角度をなす。第2ハード特性バネ176の先端部である当接部C3と、第1ソフト特性バネ172との間には、一定の隙間(符号省略)が形成される。
パイロットバネ171の変位が0の状態(図16参照)から、第1ソフト特性バネ172と第1ハード特性バネ173との接続部である当接部C1が、パイロットボディ62の段部135のバネ当接面136(図16参照)に当接されるx1までの、第1区間におけるバネ装置170のバネ定数K1は、第2ソフト特性バネ174と第2ハード特性バネ175とが直列に接続されて構成されたバネに、第1ハード特性バネ173を並列に接続して、当該バネに、第1ソフト特性バネ172を直列に接続して構成されたバネの合成バネ定数と同値となる。その値は以下の(12)となり、低バネ定数となる。(12)K1=1/{1/Ks1+1/[Kh1+1/(1/Ks2+1/Kh2)]}
また、パイロットバネ171の変位が、x1から、第2ソフト特性バネ174と第2ハード特性バネ175との接続部である当接部C2が、バネ当接面136(図16参照)に当接されるx2までの、第2区間におけるバネ装置170のバネ定数K2は、第1ソフト特性バネ172の撓みがバネ当接面136によって規制されるので、第1ハード特性バネ173と、第2ソフト特性バネ174と第2ハード特性バネ175とが直列に接続されたバネと、を並列に接続して構成されたバネの合成バネ定数と同値となる。その値は以下の(13)となり、第1中間バネ定数となる。(13)K2=Kh1+1/(1/Ks2+1/Kh2)
また、パイロットバネ171の変位が、x2から、第3ハード特性バネ176の当接部C3が、パイロットボディ62の段部147のバネ当接面148(図16参照)に当接されるx3までの、第3区間におけるバネ装置170のバネ定数K3は、第1ソフト特性バネ172及び第2ソフト特性バネ174の撓みがバネ当接面136によって規制されるので、第1ハード特性バネ173と第2ハード特性バネ175とが並列に接続されて構成されたバネの合成バネ定数と同値となる。その値は以下の(14)となり、第2中間バネ定数となる。(14)K3=Kh1+Kh2
さらに、パイロットバネ171の変位が、x3から、弁体78がシート部79に当接されるx4までの、第4区間におけるバネ装置170のバネ定数K4は、第1ハード特性バネ132と第2ハード特性バネ163と第3ハード特性バネ176と、が並列に接続されて構成されたバネの合成バネ定数と同値となる。その値は以下の(15)となり、高バネ定数(K1<K2<K3<K4)となる。(15)K4=Kh1+Kh2+Kh3
ここで、図22は、第4実施形態に係るバネ装置170のバネ荷重特性と、従来の制御弁装置における(特許文献1参照)のバネ荷重特性と、を比較した線図である。
図22に示されるように、第4実施形態によれば、バネ荷重特性の変化点(C1、C2、C3)を3つ設けてバネ装置170を構成したので、第1乃至第3実施形態に対して、バネ定数の調整の自由度がより高いバネ装置170を備えた減衰力発生機構31(制御弁装置)、及び車両の乗り心地、音振性、操縦安定性を高いレベルで満足させた緩衝器1を提供することができる。
第4実施形態では、図22に示されるパターン1のように、バネ装置170の、ソフト特性時における弁体78の開弁量を、従来の緩衝器におけるバネ装置の、ソフト特性時における弁体78の開弁量(図22における「L0」)と同等に設定して乗り心地を確保しつつ、バネ装置170の、ハード特性時におけるパイロットバルブ61の開弁点近傍におけるバネ定数(図22における「θ1」)を、従来の緩衝器におけるバネ装置の、ハード特性時におけるパイロットバルブの開弁点近傍におけるバネ定数(図示省略)よりも大きく設定して、減衰力発生機構31(制御弁装置)のジャーク、バルブ振動の発生リスクを低減させることができる。
また第4実施形態では、図22に示されるパターン2のように、バネ装置170の、ソフト特性時における弁体78の開弁量を、従来の緩衝器におけるバネ装置の、ソフト特性時における弁体78の開弁量(図22における「L0」)と同等に設定して乗り心地を確保しつつ、バネ装置170の、ハード特性時におけるパイロットバルブ61の開弁点近傍におけるバネ定数(図22における「θ2」)を、従来の緩衝器におけるバネ装置の、ハード特性時におけるパイロットバルブの開弁点近傍におけるバネ定数(図示省略)よりも大きく設定して、減衰力発生機構31(制御弁装置)のジャーク、バルブ振動の発生リスクを低減させながら、バネ装置170(パイロットバネ171)のセット荷重(図22における「F2」)を調整することができる。
(第5実施形態) 次に、図23乃至図28を参照して第5実施形態を説明する。ここでは、第1乃至第4実施形態との相違部分を説明する。なお、第1乃至第4実施形態との共通部分については、同一の称呼及び符号を用いて重複する説明を省略する。
第1実施形態では、第1ソフト特性バネ131と第1ハード特性バネ132とを直列に接続したバネと、第2ソフト特性バネ133と第2ハード特性バネ134とを直列に接続したバネと、を単一の板バネに並列に設けてパイロットバネ121を構成して、パイロットバネ121の変位が0から、当接部C1がパイロットボディ62の段部135(第1規制部材)のバネ当接面136に当接されるx1までを、弁体78(パイロットバネ121)のストロークの第1区間とし、x1から、当接部C2がバネ当接面136に当接されるx2までを、弁体78のストロークの第2区間とし、x2から、弁体78がシート部79に当接されるx3までを、弁体78のストロークの第3区間とした。
これに対し、第5実施形態では、パイロットボディ62の段部135のバネ当接面136(第1規制部材)の内周に、バネ当接面136よりもパイロットバルブ61のシート部79(弁座)からの高さ(図25における「上下方向の距離」)が低いバネ当接面187(第2規制部材)を設けて、弁体78(パイロットバネ121)のストロークの過程で、ハード特性バネ182の支点が外周側の支点P1から内周側の支点P2へ転位するように構成した。図26に示されるように、支点P1は、環状のバネ当接面136の内周端縁上に定められる。他方、図27に示されるように、支点P2は、環状のバネ当接面187の内周端縁上に定められる。
図23に示されるように、パイロットバネ181は、ソフト特性バネ182とハード特性バネ183とを直列に接続したバネを対で単一の板バネに設けて構成される。パイロットバネ181の、対になっているソフト特性バネ182,182及びハード特性バネ183,183は、軸心Aに対して点対称に設けられる。ここでは、図23におけるX軸の+Y側(図23における「X軸の上側」)のソフト特性バネ182及びハード特性バネ183のみを説明し、図23におけるX軸の-Y側(図23における「X軸の下側」)のソフト特性バネ182及びハード特性バネ183の説明を省略する。
ソフト特性バネ182(第1バネ)のバネ定数は、Ks1(第1バネ定数)に設定される。ソフト特性バネ182は、梁部129とハード特性バネ183の先端部との間を、外周固定部122の内側周端124に沿って一定幅(一定の断面積)で円弧状に延びる。他方、ハード特性バネ183は、内周可動部125から、例えば、+X軸に対して155度の角度で径方向へ延びる。
ハード特性バネ183には、支点P1(バネ当接面136)に当接される外周側の当接部C1と、支点P2(バネ当接面187)に当接される内周側の当接部C2と、が定められる。図24に示されるように、ハード特性バネ183は、見掛け上、支点P1を支点とするバネ定数がKh1(第2バネ定数)の第1ハード特性バネ184と、支点P2を支点とするバネ定数がKh2(第3バネ定数)の第2ハード特性バネ185とが、当接部C2で直列に接続されて構成される。
図24を参照すると、パイロットバネ181の変位が0の状態(図25参照)から、ソフト特性バネ182とハード特性バネ183(第1ハード特性バネ184)との接続部である当接部C1(ハード特性バネ183の先端部)が、パイロットボディ62の支点P1(バネ当接面136)に当接されるx1までの、第1区間におけるバネ装置180のバネ定数K1は、ソフト特性バネ182と、第1ハード特性バネ184と、第2ハード特性バネ185と、が直列に接続されて構成されたバネの合成バネ定数と同値となる。その値は以下の(16)となり、低バネ定数となる。(16)K1=1/(1/Ks1+1/Kh1+1/Kh2)
また、パイロットバネ181の変位が、x1から、ハード特性バネ183の当接部C2が、パイロットボディ62の支点P2(バネ当接面187)に当接されるx2までの、第2区間におけるバネ装置180のバネ定数K2は、ソフト特性バネ182の撓みがバネ当接面136によって規制されるとともに、第1ハード特性バネ184(ハード特性バネ183)が支点P1を支点に撓むので、第1ハード特性バネ184と第2ハード特性バネ185とが直列に接続されて構成されたバネの合成バネ定数と同値となる。その値は以下の(17)となり、中間バネ定数となる。(17)K2=1/(1/Kh1+1/Kh2)
さらに、パイロットバネ181の変位が、ハード特性バネ183が一定の撓み角(図27参照)に達したX2から、弁体78がシート部79に当接されるx3までの、第3区間におけるバネ装置180のバネ定数K3は、第2ハード特性バネ185(ハード特性バネ183)が内周側の支点P2を支点に撓むので、第2ハード特性バネ185のバネ定数Kh2と同値となる(K1<K2<K3)。
ここで、図28は、第5実施形態に係るバネ装置180のバネ荷重特性と、従来の制御弁装置における(特許文献1参照)のバネ荷重特性と、を比較した線図である。
図28に示されるように、第5実施形態によれば、弁体78(パイロットバネ121)のストロークの過程で、ハード特性バネ182の支点が、外周側の支点P1から内周側の支点P2へ転位されるので、前述した第1乃至第3実施形態と同じように、バネ装置180のバネ荷重特性に、2つの変化点(C1、C2)を設けることができる。
よって、第5実施形態では、バネ定数の調整の自由度が高いバネ装置180を備えた減衰力発生機構31(制御弁装置)、及び車両の乗り心地、音振性、操縦安定性を高いレベルで満足させた緩衝器1を提供することができる。
例えば、第5実施形態では、バネ装置180の、ソフト特性時における弁体78の開弁量を、従来の制御弁装置におけるバネ装置の、ソフト特性時における弁体78の開弁量(図28における「L0」)と同等に設定して乗り心地を確保しつつ、バネ装置180の、ハード特性時におけるパイロットバルブ61の開弁点近傍におけるバネ定数(図28における「θ1」)を、従来の制御弁装置におけるバネ装置の、ハード特性時におけるパイロットバルブの開弁点近傍におけるバネ定数(図28における「θ0」)よりも大きく設定することで、減衰力発生機構31(制御弁装置)のジャーク、バルブ振動の発生リスクをより低減させることができる。
(第6実施形態) 次に、図29乃至図34を参照して第6実施形態を説明する。ここでは、第1乃至第5実施形態との相違部分を説明する。なお、第1乃至第5実施形態との共通部分については、同一の称呼及び符号を用いて重複する説明を省略する。
第5実施形態では、パイロットボディ62の段部135のバネ当接面136(第1規制部材)の内周に、段差を介してバネ当接面187(第2規制部材)を設けて、弁体78(パイロットバネ181)のストロークの過程で、ハード特性バネ182の支点が、外周側の支点P1から内周側の支点P2へ転位するように構成した。
これに対し、第6実施形態では、パイロットボディ62の段部135に、パイロットボディ62の軸平面による断面(図31参照)が曲線をなすように形成したバネ当接面195を設け、パイロットバネ191の変位が、パイロットバネ191の当接部C1がバネ当接面195に当接されてから、パイロットバネ191の当接部C∞がバネ当接面195に当接されるまで、換言すれば、弁体78がシート部79(弁座)に当接されるまでの間、バネ装置190のバネ定数が、Kh1からKh∞まで連続的に変化するようにバネ装置190を構成した。
図29に示されるように、パイロットバネ191は、ソフト特性バネ192とハード特性バネ193とを直列に接続したバネを、単一の板バネに対で設けて構成される。対をなすソフト特性バネ192,192及びハード特性バネ193,193は、軸心Aに対して点対称に設けられる。ここでは、図29におけるX軸の+Y側(図29における「X軸の上側」)のソフト特性バネ192及びハード特性バネ193を説明し、図29におけるX軸の-Y側(図29における「X軸の下側」)のソフト特性バネ192及びハード特性バネ193の説明を省略する。
ソフト特性バネ192のバネ定数は、Ks1に設定される。ソフト特性バネ192は、梁部129とハード特性バネ193の先端部との間を、外周固定部122の内側周端124に沿って一定幅(一定の断面積)で円弧状に延びる。他方、ハード特性バネ193は、内周可動部125から、例えば、+X軸に対して155度の角度で径方向へ延びる。ハード特性バネ193の外周側には、バネ当接面136の最も外周側の支点P1(図32参照)に当接される当接部C1が定められる。また、ハード特性バネ193の内周側には、バネ当接面136の最も内周側の支点P∞(図32参照)に当接される当接部C∞が定められる。
図30に示されるように、ハード特性バネ193は、見掛け上、支点P1を支点とするハード特性バネ(Kh1)と、支点P2を支点とするハード特性バネ(Kh2)と、・・・、支点P∞を支点とするハード特性バネ(Kh∞)と、が直列に接続されて構成される。なお、図31、図32に示されるように、曲面からなるバネ当接面195は、シート部79(弁座)からの高さ(図31における上下方向の距離)が、最も外周側の支点P1から最も内周側支点P∞までの間で、漸次低くなるように形成される。
図30を参照すると、パイロットバネ191の変位が0の状態(図31参照)から、ハード特性バネ183の外周側の当接部C1(ハード特性バネ183の先端部)が、パイロットボディ62のバネ当接面195の支点P1に当接されるx1までの、区間におけるバネ装置190のバネ定数KSは、ソフト特性バネ192と、ハード特性バネ(Kh1)と、ハード特性バネ(Kh2)と、・・・、ハード特性バネ(Kh∞)と、が直列に接続されて構成されたバネの合成バネ定数と同値となる。その値は以下の(18)となり、低バネ定数となる。(18)KS=1/(1/Ks1+1/Kh1+1/Kh2+・・・+1/Kh∞)
そして、パイロットバネ191の変位が、x1から、弁体78がシート部79に当接される、パイロットバネ191の当接部C∞が、支点P∞(バネ当接面195)に当接されるまでの、区間におけるバネ装置190のバネ定数KHは、見掛け上、Kh1からKh∞まで連続的に変化する(Kh1<Kh2<・・・<Kh∞)。
第6実施形態によれば、ハード特性バネ193の当接部C1が、バネ当接面195の支点P1に当接されてから、ハード特性バネ193の当接部C∞が、支点P∞に当接されるまでの間、バネ装置190のバネ定数KHが、Kh1からKh∞まで連続的に変化するので、バネ定数の調整の自由度がより高いバネ装置190を備えた減衰力発生機構31(制御弁装置)、及び車両の乗り心地、音振性、操縦安定性を高いレベルで満足させた緩衝器1を提供することができる。
ここで、図33は、第6実施形態に係るバネ装置190のバネ荷重特性と、従来の制御弁装置(特許文献1参照)のバネ荷重特性と、を比較した線図である。また、図34は、第6実施形態に係る緩衝器1(制御弁装置)における減衰力特性と、従来の緩衝器の減衰力特性とを比較した線図である。
図33、図34を参照すると、第6実施形態では、バネ装置190の、ハード特性時におけるパイロットバルブ61の開弁点近傍におけるバネ定数(図33における「θ1」)を、従来の制御弁装置におけるバネ装置の、ハード特性時におけるパイロットバルブの開弁点近傍におけるバネ定数(図33における「θ0」)よりも大きく設定することで、パイロットバルブ61の開弁点前後の減衰力の変化の度合いを小さくすることが可能であり、減衰力発生機構31(制御弁装置)のジャーク、バルブ振動の発生リスクを低減させることができる。
また、第6実施形態では、バネ当接面195のプロフィール曲線を調整することで、メインバルブ41(図2参照)の開弁点近傍におけるバネ定数を滑らかに変化させることができ、延いては、メインバルブ41の開弁点近傍における減衰力を滑らかに変化させることができるので、減衰力発生機構31(制御弁装置)のジャーク、バルブ振動の発生リスクを低減させることができる。
なお、第6実施形態では、バネ当接面195のプロフィール曲線を調整して、バネ定数をKh1からKh∞まで連続的に変化させるようにバネ装置190を構成したが、例えば、バネ当接面195の断面をプロフィール曲線に沿うような折れ線に形成することで、バネ定数をKh1からKhNまで段階的に変化させるようにバネ装置190を構成することができる。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
本願は、2020年9月24日付出願の日本国特許出願第2020-159882号に基づく優先権を主張する。2020年9月24日付出願の日本国特許出願第2020-159882号の明細書、特許請求の範囲、図面、および要約書を含む全開示内容は、参照により本願に全体として組み込まれる。