[第1実施形態]
本発明に係る第1実施形態を図1~図3に基づいて説明する。なお、以下においては、説明の便宜上、図面における上側を「上」とし、図面における下側を「下」として説明する。
第1実施形態の緩衝器1は、図1に示すように、いわゆる複筒型の油圧緩衝器であり、作動流体としての油液(図示略)が封入されるシリンダ2を備えている。シリンダ2は、円筒状の内筒3と、この内筒3よりも大径で内筒3を覆うように同心状に設けられた有底円筒状の外筒4とを有しており、内筒3と外筒4との間にリザーバ室6が形成されている。
外筒4は、円筒状の胴部材11と、胴部材11の下部側に嵌合され溶接により固定されて胴部材11の下部を閉塞する底部材12とからなっている。底部材12には、胴部材11とは反対の外側位置に取付アイ13が溶接により固定されている。
緩衝器1は、シリンダ2の内筒3の内部に摺動可能に設けられるピストン18を備えている。このピストン18は、内筒3内に、一方のシリンダ内室である上室19と、他方のシリンダ内室である下室20との2つの室を画成している。言い換えれば、ピストン18は、シリンダ2内に摺動可能に設けられてシリンダ2内を一側の上室19と他側の下室20とに区画している。内筒3内の上室19および下室20内には作動流体としての油液が封入され、内筒3と外筒4との間のリザーバ室6内には作動流体としての油液とガスとが封入されている。
緩衝器1は、軸方向の一端側部分がシリンダ2の内筒3の内部に配置されてピストン18に連結固定されると共に他端側部分がシリンダ2の外部に延出されるピストンロッド21を備えている。ピストンロッド21は、上室19内を貫通しており、下室20は貫通していない。よって、上室19は、ピストンロッド21が貫通するロッド側室であり、下室20はシリンダ2の底側のボトム側室である。
ピストン18およびピストンロッド21は一体に移動する。ピストンロッド21がシリンダ2からの突出量を増やす緩衝器1の伸び行程において、ピストン18は上室19側へ移動することになり、ピストンロッド21がシリンダ2からの突出量を減らす緩衝器1の縮み行程において、ピストン18は下室20側へ移動することになる。
内筒3および外筒4の上端開口側には、ロッドガイド22が嵌合されており、外筒4にはロッドガイド22よりもシリンダ2の外部側である上側にシール部材23が嵌合されている。ロッドガイド22およびシール部材23は、いずれも円環状をなしており、ピストンロッド21は、これらロッドガイド22およびシール部材23のそれぞれの内側に摺動可能に挿通されてシリンダ2の内部から外部に延出されている。
ロッドガイド22は、ピストンロッド21を、その径方向移動を規制しつつ軸方向移動可能に支持して、このピストンロッド21の移動を案内する。シール部材23は、その外周部で外筒4に密着し、その内周部で、軸方向に移動するピストンロッド21の外周部に摺接する。これにより、シール部材23は、内筒3内の油液と、外筒4内のリザーバ室6の高圧ガスおよび油液とが外部に漏洩するのを防止する。
ロッドガイド22は、その外周部が、下部よりも上部が大径となる段差状をなしており、小径の下部において内筒3の上端の内周部に嵌合し、大径の上部において外筒4の上部の内周部に嵌合する。外筒4の底部材12上には、下室20とリザーバ室6とを画成するベースバルブ25が設置されており、このベースバルブ25に内筒3の下端の内周部が嵌合されている。外筒4の上端部は、径方向内方に加締められて係止部26となっており、この係止部26とロッドガイド22とがシール部材23を挟持している。
ピストンロッド21は、主軸部27と、主軸部27よりも小径の取付軸部28と、取付軸部28の主軸部27とは反対側のネジ軸部31とを有している。ピストンロッド21は、主軸部27が、ロッドガイド22およびシール部材23に摺動可能に嵌合され、取付軸部28およびネジ軸部31がシリンダ2内に配置されてピストン18等に連結されている。主軸部27の取付軸部28側の端部は、軸直交方向に広がる軸段部29となっている。取付軸部28の外周部には、軸方向の中間位置に軸方向に延在する通路切欠部30が形成されている。通路切欠部30は、例えば、取付軸部28の外周部を、取付軸部28の中心軸線に平行な面で平面状に切り欠いて形成されている。通路切欠部30は、取付軸部28の周方向の180度異なる二カ所の位置を平面状に平行に切り欠いて形成された、いわゆる二面幅の形状に形成できる。取付軸部28は、通路切欠部30以外の部分が円筒面となっている。ネジ軸部31は、ピストンロッド21におけるシリンダ2内側の先端位置に設けられており、外周部にオネジ32が形成されている。
緩衝器1は、例えばピストンロッド21のシリンダ2からの突出部分が上部に配置されて車体により支持され、シリンダ2側の取付アイ13が下部に配置されて車輪側に連結される。これとは逆に、シリンダ2側が車体により支持され、ピストンロッド21が車輪側に連結されるようにしても良い。
図2に示すように、ピストン18は、ピストンロッド21に連結される金属製のピストン本体35と、ピストン本体35の外周面に一体に装着されて内筒3内を摺動する円環状の合成樹脂製の摺動部材36とによって構成されている。
ピストン本体35には、上室19と下室20とを連通可能な複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴37と、上室19と下室20とを連通可能とする複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴39とが設けられている。ピストン本体35は、焼結品である。
複数の通路穴37は、ピストン本体35の円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路穴39を挟んで等ピッチで形成されており、通路穴37,39のうちの半数を構成する。複数の通路穴37は、2カ所の屈曲点を有するクランク形状であり、ピストン18の軸方向一側(図2の上側)がピストン18の径方向における外側に、ピストン18の軸方向他側(図2の下側)が一側よりもピストン18の径方向における内側に開口している。ピストン本体35には、軸方向の下室20側に、複数の通路穴37を連通させる円環状の環状溝55が形成されている。
環状溝55の下室20側には、環状溝55内および複数の通路穴37内の通路を開閉して減衰力を発生する第1減衰力発生機構41が設けられている。第1減衰力発生機構41が下室20側に配置されることで、複数の通路穴37内および環状溝55内の通路は、ピストン18の上室19側への移動、つまり伸び行程において上流側となる上室19から下流側となる下室20に向けて油液が流れ出す伸び側の通路となる。これら複数の通路穴37内および環状溝55内の通路に対して設けられた第1減衰力発生機構41は、伸び側の複数の通路穴37内および環状溝55内の通路から下室20への油液の流動を抑制して減衰力を発生する伸び側の減衰力発生機構となっている。
通路穴37,39のうちの残りの半数を構成する通路穴39は、ピストン本体35の円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路穴37を挟んで等ピッチで形成されている。複数の通路穴39は、2カ所の屈曲点を有するクランク形状であり、ピストン18の軸線方向他側(図2の下側)がピストン18の径方向における外側に、ピストン18の軸線方向一側(図2の上側)が他側よりもピストン18の径方向における内側に開口している。ピストン本体35には、軸方向の上室19側に複数の通路穴39を連通させる円環状の環状溝56が形成されている。
環状溝56の上室19側には、複数の通路穴39内および環状溝56内の通路を開閉して減衰力を発生する第1減衰力発生機構42が設けられている。第1減衰力発生機構42が上室19側に配置されることで、複数の通路穴39内および環状溝56内の通路は、ピストン18の下室20側への移動、つまり縮み行程において上流側となる下室20から下流側となる上室19に向けて油液が流れ出す縮み側の通路となる。これら複数の通路穴39内および環状溝56内の通路に対して設けられた第1減衰力発生機構42は、縮み側の複数の通路穴39内および環状溝56内の通路から上室19への油液の流動を抑制して減衰力を発生する縮み側の減衰力発生機構となっている。
ピストン本体35は、略円板形状をなしており、その径方向の中央には、ピストンロッド21の取付軸部28が挿入される挿入穴44が軸方向に貫通して形成されている。挿入穴44は、ピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる軸方向一側の小径穴部45と、小径穴部45よりも大径の軸方向他側の大径穴部46とを有する段付き形状をなしている。
ピストン本体35の軸方向の下室20側の端部には、環状溝55の下室20側の開口よりも、ピストン本体35の径方向における内側に円環状の内側シート部47が形成されている。また、ピストン本体35の軸方向の下室20側の端部には、環状溝55の下室20側の開口よりも、ピストン本体35の径方向における外側に、第1減衰力発生機構41の一部を構成する円環状のバルブシート部48が形成されている。
ピストン本体35の軸方向の上室19側の端部には、環状溝56の上室19側の開口よりもピストン本体35の径方向における内側に円環状の内側シート部49が形成されている。また、ピストン本体35の軸方向の上室19側の端部には、環状溝56の上室19側の開口よりも、ピストン本体35の径方向における外側に、第1減衰力発生機構42の一部を構成する円環状のバルブシート部50が形成されている。
ピストン本体35の挿入穴44は、大径穴部46が、小径穴部45よりも軸方向の内側シート部47側に設けられている。ピストン本体35の大径穴部46内の通路は、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路と軸方向の位置を重ね合わせて常時連通している。
ピストン本体35において、バルブシート部48よりも径方向外側は、バルブシート部48よりも軸線方向高さが低い段差状をなしており、この段差状の部分に縮み側の通路穴39の下室20側の開口が配置されている。また、同様に、ピストン本体35において、バルブシート部50よりも径方向外側は、バルブシート部50よりも軸線方向高さが低い段差状をなしており、この段差状の部分に伸び側の通路穴37の上室19側の開口が配置されている。
縮み側の第1減衰力発生機構42は、ピストン18のバルブシート部50を含んでおり、軸方向のピストン18側から順に、一枚のディスク62と、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には四枚)のディスク63と、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には二枚)のディスク64とを有している。ディスク64のディスク63とは反対側には、ディスク64側から順に、一枚のディスク65と、一枚のディスク66と、一枚の環状部材67とが設けられている。環状部材67が、ピストンロッド21の軸段部29に当接している。ディスク62~66および環状部材67は、金属製であり、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さ且つ径方向幅一定の有孔円形平板状をなしている。
ディスク62は、ピストン18の内側シート部49の外径よりも大径であってバルブシート部50の内径よりも小径の外径となっており、内側シート部49に常時当接している。複数枚のディスク63は、ピストン18のバルブシート部50の外径と略同等の外径となっており、バルブシート部50に着座可能となっている。
複数枚のディスク64は、ディスク63の外径よりも小径の外径となっている。ディスク65は、ディスク64の外径よりも小径であってピストン18の内側シート部49の外径よりも小径の外径となっている。ディスク66は、ディスク64の外径よりも大径であってディスク63の外径よりも小径の外径となっている。環状部材67は、ディスク66の外径よりも小径であってピストンロッド21の軸段部29の外径よりも大径の外径となっている。環状部材67は、ディスク62~66よりも厚く高剛性となっている。
薄い金属板からなる複数枚のディスク63および複数枚のディスク64が、撓み可能であってバルブシート部50に離着座可能な縮み側のメインバルブ71を構成している。メインバルブ71は、バルブシート部50から離座することで、環状溝56内および複数の通路穴39内の通路を上室19に連通させると共に、バルブシート部50との間の油液の流れを抑制して減衰力を発生する。環状部材67は、ディスク66とによって、メインバルブ71の開方向への規定以上の変形を規制する。
開弁時に出現するメインバルブ71およびバルブシート部50の間の通路と、環状溝56内および複数の通路穴39内の通路とが、ピストン18の下室20側への移動によりシリンダ2内の上流側となる下室20から下流側となる上室19に油液が流れ出す縮み側の第1通路部72を構成している。よって、第1通路部72は、ピストン18に形成されている。
減衰力を発生する縮み側の第1減衰力発生機構42は、メインバルブ71とバルブシート部50とを含んでおり、よって、この第1通路部72に設けられている。第1通路部72は、バルブシート部50を含むピストン18に設けられており、ピストンロッド21およびピストン18が縮み側に移動するときに油液が通過する。
ここで、縮み側の第1減衰力発生機構42には、バルブシート部50およびこれに当接するメインバルブ71のいずれにも、これらが当接状態にあっても上室19と下室20とを連通させる固定オリフィスは形成されていない。すなわち、縮み側の第1減衰力発生機構42は、バルブシート部50およびメインバルブ71が全周にわたって当接状態にあれば、上室19と下室20とを連通させることはない。言い換えれば、第1通路部72は、上室19と下室20とを常時連通させる固定オリフィスが形成されておらず、上室19と下室20とを常時連通させる通路ではない。
伸び側の第1減衰力発生機構41は、ピストン18のバルブシート部48を含んでおり、軸方向のピストン18側から順に、一枚のディスク82と、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には五枚)のディスク83とを有している。ディスク83のディスク82とは反対側には、一枚のディスク84が設けられている。ディスク82~84は、金属製であり、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなしている。ディスク83,84は、いずれも径方向幅一定となっている。
ディスク82は、ピストン18の内側シート部47の外径よりも大径であってバルブシート部48の内径よりも小径の外径となっており、内側シート部47に常時当接している。ディスク82には、図3に示すように、切欠部88が、径方向の内側シート部47よりも外側の途中位置から内周縁部まで形成されている。切欠部88は、環状溝55内および複数の通路穴37内の通路を、ピストン18の大径穴部46内の通路およびピストンロッド21の通路切欠部30内の通路に常時連通させる。切欠部88は、ディスク82のプレス成形時に形成されている。
図2に示すように、複数枚のディスク83は、ピストン18のバルブシート部48の外径と略同等の外径となっており、バルブシート部48に着座可能となっている。ディスク84は、ディスク83の外径よりも小径であってピストン18の内側シート部47の外径よりも小径の外径となっている。
薄い金属板からなる複数枚のディスク83が、撓み可能であってバルブシート部48に離着座可能な伸び側のメインバルブ91を構成している。メインバルブ91は、バルブシート部48から離座することで、環状溝55内および複数の通路穴37内の通路を下室20に連通させると共に、バルブシート部48との間の油液の流れを抑制して減衰力を発生する。
開弁時に出現するメインバルブ91およびバルブシート部48の間の通路と、環状溝55内および複数の通路穴37内の通路とが、ピストン18の上室19側への移動によりシリンダ2内の上流側となる上室19から下流側となる下室20に油液が流れ出す伸び側の第1通路部92を構成している。よって、第1通路部92は、ピストン18に形成されている。
減衰力を発生する伸び側の第1減衰力発生機構41は、メインバルブ91とバルブシート部48とを含んでおり、よって、この第1通路部92に設けられている。第1通路部92は、バルブシート部48を含むピストン18に設けられており、ピストンロッド21およびピストン18が伸び側に移動するときに油液が通過する。
伸び側の第1減衰力発生機構41には、バルブシート部48およびこれに当接するメインバルブ91のいずれにも、これらが当接状態にあっても上室19と下室20とを連通させる固定オリフィスは形成されていない。すなわち、伸び側の第1減衰力発生機構41は、バルブシート部48およびメインバルブ91が全周にわたって当接状態にあれば、上室19と下室20とを連通させることはない。言い換えれば、第1通路部92は、上室19と下室20とを常時連通させる固定オリフィスは形成されておらず、上室19と下室20とを常時連通させる通路ではない。
伸び側のメインバルブ91のピストン18とは反対側には、メインバルブ91側から順に、上記した一枚のディスク84と、一つの第1ケース部材100(支持部材)と、一枚のディスク101と、一枚のディスクバルブ102と、一枚のディスク103と、一枚のディスク104と、一枚のディスク105(支持部材)と、一つの第2ケース部材106(支持部材)とが、ピストンロッド21の取付軸部28をそれぞれの内側に嵌合させて設けられている。
ピストンロッド21には、取付軸部28の主軸部27とは反対側であって、第2ケース部材106よりもピストン18とは反対側に突出する部分にネジ軸部31が形成されており、このネジ軸部31のオネジ32にナット108が螺合されている。ナット108は、第2ケース部材106に当接している。ネジ軸部31は、ナット108に螺合する完全ネジ部であるオネジ32と、取付軸部28側の端部の不完全ネジ部109とを有しており、この不完全ネジ部109を第2ケース部材106が覆っている。
第1ケース部材100、ディスク101,103~105、ディスクバルブ102および第2ケース部材106は、いずれも金属製である。ディスク101,103~105およびディスクバルブ102は、内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さ且つ径方向幅一定の有孔円形平板状をなしている。第1ケース部材100および第2ケース部材106は、内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な円環状をなしている。
第1ケース部材100は、有底筒状の一体成形品であり、有孔円板状の底部111と、底部111の外周縁部から、底部111の軸方向一側に突出する円筒状の筒状部112と、底部111の内周縁部から、筒状部112とは軸方向の逆側に突出する円環状の環状突出部113とを有している。筒状部112は、底部111の中心軸線を中心とする円筒状であり、環状突出部113は、底部111の中心軸線を中心とする円環状である。
第1ケース部材100は、環状突出部113が底部111よりもピストン18側に位置する向きで配置されており、底部111の内周部において取付軸部28に嵌合し、環状突出部113の先端面においてディスク84に当接している。
底部111は、軸方向の筒状部112側に、径方向外側から順に、第1ケース部材100の軸直交方向に広がる平坦な外側底部115と、径方向内側ほど軸方向に筒状部112から離れるように傾斜するテーパ状の中間底部116と、第1ケース部材100の軸直交方向に広がる平坦な内側底部117とを有している。底部111は、径方向内側ほど厚さが薄くなっている。
筒状部112は全周にわたって連続する円筒状をなしており、内周面が、一定内径のストレートな円筒面となっている。筒状部112の外周面は、底部111の外周面と同一の円筒面を構成している。
第1ケース部材100は、その径方向の中央に、底部111および環状突出部113を軸方向に貫通して、ピストンロッド21の取付軸部28およびネジ軸部31が挿通される挿通穴125が形成されている。
ディスク101,103~105およびディスクバルブ102は、いずれも外周面において第1ケース部材100の筒状部112の内周面に嵌合可能な外径となっている。筒状部112の内周面は、挿通穴125と同軸状をなしている。また、ディスク101,103~105およびディスクバルブ102は、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を挿通可能な内径となっている。
ディスク101は、その内径が、外側底部115の内径よりも小径となっている。ディスクバルブ102は、その内径が、ディスク101の内径よりも小径となっている。ディスク103は、その内径が、ディスク101の内径よりも小径であってディスクバルブ102の内径よりも大径となっている。ディスク104は、その内径が、ディスク101の内径よりも大径となっている。ディスク105は、その内径が、ディスク104の内径よりも大径であって外側底部115の内径と同等となっている。
第2ケース部材106は、有孔円板状の一体成形品であり、有孔円板状の基部131と、基部131の内周縁部から、軸方向一側に突出する通路形成部132とを有している。基部131には外周部に径方向内方に凹む通路溝134が軸方向に貫通して形成されている。基部131には、通路溝134が、基部131の周方向に間隔をあけて複数形成されている。基部131は、通路形成部132側の端面が軸直交方向に広がる平面となっている。
通路形成部132は、基部131の内周縁部から軸方向一側に突出する首部135と、首部135よりも外径が大径で、首部135から軸方向の基部131とは反対側に突出する頭部136とを有している。
図3に示すように、首部135は、基部131の中心軸線を中心とする円筒状をなしており、その外周面141が一定径の円筒面となっている。
頭部136は、基部131の中心軸線を中心とする円筒状をなしており、その外周面142が一定径の中間円筒面143と、中間円筒面143の首部135側にあって首部135側ほど小径となる首元テーパ面144と、中間円筒面143の首部135とは反対側にあって首部135から離れるほど小径となる頂側テーパ面145とを有している。首元テーパ面144と頂側テーパ面145とは、中間円筒面143に対し同等の角度で傾斜している。中間円筒面143の外径は、ディスクバルブ102の内径よりも所定量小径となっている。
第2ケース部材106は、その径方向の中央に、基部131および通路形成部132を軸方向に貫通して、ピストンロッド21の取付軸部28およびネジ軸部31が挿通される挿通穴151が形成されている。基部131の外径面、首部135の外周面141および頭部136の外周面142は、挿通穴151と同軸状となっている。
第2ケース部材106は、通路形成部132が基部131よりもピストン18側に位置する向きで配置されており、挿通穴151において取付軸部28に嵌合し、基部131の外周部において第1ケース部材100の筒状部112に嵌合されている。第1ケース部材100の底部111の外側底部115と、第2ケース部材106の基部131との間に、ディスク101、ディスクバルブ102、ディスク103~105が挟持される。このとき、ディスクバルブ102は、その外周側が、ディスク101,103,104の外周側とともに、第1ケース部材100の外側底部115とディスク105とで軸方向にクランプされる。ディスクバルブ102の円筒面からなる内周面155は、第2ケース部材10の通路形成部132の頭部136の中間円筒面143と軸方向の位置を重ね合わせて径方向に対向する。
第1ケース部材100、第2ケース部材106およびディスク105は、ピストンロッド21に一体に連結されて、ディスクバルブ102の外周側をディスク101,103,104を介して片持ち支持することになり、ディスクバルブ102は、内周端が自由端となっている。ディスクバルブ102に加えてディスク101,103,104も、内周側が自由端となっており、弾性変形可能となっている。ディスクバルブ102およびディスク101,103,104は、外周側がピストンロッド21に一体的に移動するように連結され、内周側が弾性変形可能なサブバルブ161を構成している。ディスクバルブ102は、有孔円板状であって自由端である内周部が、通路形成部132を介してピストンロッド21に対向している。
第1ケース部材100および第2ケース部材106は、ディスク101、ディスクバルブ102,ディスク103,104,105を挟持した状態で、第1ケース部材100の内側底部117と第2ケース部材106の通路形成部132とが軸方向に離間して対向しており、これらの間に、ピストンロッド21の通路切欠部30が開口している。
第2ケース部材106は、ピストンロッド21の不完全ネジ部109を覆っている。第2ケース部材106の基部131の軸方向の範囲内に、不完全ネジ部109が配置されており、その軸方向両側の取付軸部28およびオネジ32も配置されている。
第1ケース部材100および第2ケース部材106は、これらの内側にケース内室165を形成している。ディスクバルブ102を含むサブバルブ161は、ケース内室165に設けられている。第2ケース部材106は、基部131の軸方向の通路形成部132とは反対側の所定範囲が、ピストンロッド21の不完全ネジ部109を覆っており、この範囲がワッシャ部166となっている。また、第2ケース部材106は、通路形成部132と基部131の軸方向の通路形成部132側の所定範囲とが、ケース内室165を形成するケース部167となっている。言い換えれば、第2ケース部材106は、ケース内室165を形成するケース部167と、ピストンロッド21の不完全ネジ部109を覆うワッシャ部166とを含んで一体成形されている。
ワッシャ部166の軸方向の範囲内に、不完全ネジ部109が配置されており、その軸方向両側の取付軸部28およびオネジ32も配置されている。第2ケース部材106は、ワッシャ部166が取付軸部28に嵌合して径方向に位置決めされる。ワッシャ部166が不完全ネジ部109を覆うことで、ナット108が完全ネジ部であるオネジ32と軸方向位置を完全に重ね合わせて適正に螺合できることになる。ワッシャ部166は、ナット108の締結軸力の安定化および均衡化の役割も果たす。
第1ケース部材100の内側底部117と第2ケース部材106の通路形成部132との間に、ピストンロッド21の通路切欠部30が開口しているため、内側底部117と通路形成部132との間を含むケース内室165は、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路に常時連通している。よって、ケース内室165は、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路と、ピストン18の大径穴部46内の通路と、ディスク82の切欠部88内の通路と、ピストン18の環状溝55内および複数の通路穴37内の通路とを介して、図2に示す上室19に常時連通している。また、ケース内室165は、第2ケース部材106の通路溝134内の通路を介して下室20に常時連通している。
ケース内室165は、ディスクバルブ102を含むサブバルブ161によって、上室19側の上室連通室171と、下室20側の下室連通室172とに仕切られており、これら上室連通室171および下室連通室172は、ディスクバルブ102と通路形成部132との間の可変通路173を介して常時連通している。ディスク101,103,104とともに、第1ケース部材100、ディスク105および第2ケース部材106に片持ち支持されたディスクバルブ102は、上室連通室171および下室連通室172間の差圧、すなわち上室19および下室20間の差圧により弾性変形する。
図3に示すように、可変通路173は、ディスクバルブ102が弾性変形せずに頭部136の中間円筒面143と軸方向の位置を重ね合わせた状態では、流路断面積が最小となり、ディスクバルブ102が弾性変形して頭部136から離れるほど流路断面積が大きくなる。
第2ケース部材106の通路溝134内の通路と、下室連通室172と、サブバルブ161および通路形成部132の間の可変通路173と、上室連通室171と、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路と、ピストン18の大径穴部46内の通路と、ディスク82の切欠部88内の通路と、ピストン18の環状溝55内および複数の通路穴37内の通路とが、ピストン18の下室20側への移動によりシリンダ2内の上流側となる下室20から下流側となる図2に示す上室19に油液が流れ出す第2通路部181を構成している。
第2通路部181は、ピストン18の上室19側への移動により、シリンダ2内の上流側となる上室19から下流側となる下室20にも油液が流れ出す。よって、第2通路部181は、ピストン18の下室20側への移動、つまり縮み行程において上流側となる下室20から下流側となる上室19に向けて油液が流れ出す縮み側の通路となるとともに、ピストン18の上室19側への移動、つまり伸び行程において上流側となる上室19から下流側となる下室20に向けて油液が流れ出す伸び側の通路になる。
この第2通路部181と、ピストン18に設けられた第1通路部72,92とが、ピストン18の移動によりシリンダ2内の上室19および下室20のうちの上流側となる一方から下流側となる他方に作動流体が流れ出す通路185を構成している。通路185は、ピストン18を軸方向に縦断して上室19と下室20とを連通可能である。
第2通路部181は、ピストンロッド21を切り欠いて形成される通路切欠部30内の通路を含んでおり、言い換えれば、その一部がピストンロッド21を切り欠いて形成されている。ピストンロッド21を切り欠いて形成する以外にも、第1ケース部材100の内側底部117と第2ケース部材106の通路形成部132との間に一端が開口し、ピストン18の大径穴部46内の通路に他端が開口するように、ピストンロッド21の内部を穴状に貫通して通路を形成しても良い。
サブバルブ161と、第2ケース部材106の通路形成部132とが、第1通路部72,92および第2通路部181からなる通路185のうち伸縮両行程で油液が流通する第2通路部181に設けられ、この第2通路部181を開閉し、この第2通路部181での油液の流動を抑制して減衰力を発生する伸縮両行程での第2減衰力発生機構182を構成している。
第2通路部181において、図3に示すディスク82の切欠部88内の通路が、流路断面積が固定の部分の中で最も狭くなって前後よりも絞られることになり、第2通路部181におけるオリフィス175となる。オリフィス175は、縮み行程において第2通路部181で油液が流れる際の油液の流れのサブバルブ161よりも下流側に配置されており、伸び行程において第2通路部181で油液が流れる際の油液の流れのサブバルブ161よりも上流側に配置されている。言い換えれば、図2に示すように、オリフィス175は、第2通路部181におけるサブバルブ161よりも上室19側に配置されている。
上室19と下室20とを連通可能な第2通路部181は、上室19と下室20とを連通可能な縮み側の通路である第1通路部72と並列しており、第1通路部72に第1減衰力発生機構42が、第2通路部181に第2減衰力発生機構182が、それぞれ設けられている。よって、第1減衰力発生機構42および第2減衰力発生機構182は、並列に配置されている。
上室19と下室20とを連通可能な第2通路部181は、上室19と下室20とを連通可能な伸び側の通路である第1通路部92と上室19側の複数の通路穴37内および環状溝55内の通路を除いて並列しており、並列部分には、第1通路部92に第1減衰力発生機構41が、第2通路部181に第2減衰力発生機構182が、それぞれ設けられている。よって、第1減衰力発生機構41および第2減衰力発生機構182は、並列に配置されている。
図1に示すように、外筒4の底部材12と内筒3との間には、上記したベースバルブ25が設けられている。このベースバルブ25は、下室20とリザーバ室6とを仕切るベースバルブ部材191と、このベースバルブ部材191の下側つまりリザーバ室6側に設けられるディスク192と、ベースバルブ部材191の上側つまり下室20側に設けられるディスク193と、ベースバルブ部材191にディスク192およびディスク193を取り付ける取付ピン194とを有している。
ベースバルブ部材191は、円環状をなしており、径方向の中央に取付ピン194が挿通される。ベースバルブ部材191には、下室20とリザーバ室6との間で油液を流通可能な複数の通路穴195と、これら通路穴195よりもベースバルブ部材191の径方向の外側にて、下室20とリザーバ室6との間で油液を流通可能な複数の通路穴196とが形成されている。リザーバ室6側のディスク192は、下室20から通路穴195を介するリザーバ室6への油液の流れを許容する一方で、リザーバ室6から下室20への通路穴195を介する油液の流れを抑制する。ディスク193は、リザーバ室6から通路穴196を介する下室20への油液の流れを許容する一方で、下室20からリザーバ室6への通路穴196を介する油液の流れを抑制する。
ディスク192は、ベースバルブ部材191とによって、緩衝器1の縮み行程において開弁して下室20からリザーバ室6に油液を流すとともに減衰力を発生する縮み側の減衰バルブ機構197を構成している。ディスク193は、ベースバルブ部材191とによって、緩衝器1の伸び行程において開弁してリザーバ室6から下室20内に油液を流すサクションバルブ機構198を構成している。なお、サクションバルブ機構198は、主としてピストンロッド21のシリンダ2からの伸び出しにより生じる液の不足分を補うようにリザーバ室6から下室20に実質的に減衰力を発生することなく油液を流す機能を果たす。
図2に示すように、ピストンロッド21にピストン18等を組み付ける場合、ピストンロッド21のネジ軸部31および取付軸部28を挿通させながら、軸段部29に、環状部材67と、ディスク66と、ディスク65と、複数枚のディスク64と、複数枚のディスク63と、ディスク62と、ピストン18とが順に重ねられる。このとき、ピストン18は、小径穴部45が大径穴部46よりも軸段部29側に位置する向きとされる。加えて、ネジ軸部31および取付軸部28を挿通させながら、ピストン18に、ディスク82と、複数枚のディスク83と、ディスク84と、第1ケース部材100とが順に重ねられる。このとき、第1ケース部材100は、環状突出部113が、底部111よりもピストン18側に位置する向きとされ、環状突出部113でディスク84に当接する。加えて、ネジ軸部31および取付軸部28を挿通させながら、第1ケース部材100の底部111に、ディスク101と、ディスクバルブ102と、ディスク103と、ディスク104と、ディスク105と、第2ケース部材106とが順に重ねられる。このとき、ディスク101、ディスクバルブ102およびディスク103,104,105は、第1ケース部材100の筒状部112に嵌合される。また、このとき、第2ケース部材106は、通路形成部132が基部131よりもピストン18側に位置する向きとされ、基部131で筒状部112に嵌合するとともにディスク105に当接する。
この状態で、第2ケース部材106よりも突出するピストンロッド21のネジ軸部31のオネジ32にナット108を螺合させて、ナット108と軸段部29とで、これらを軸方向にクランプする。すると、ナット108の締結軸力は、ナット108の内周側と、第2ケース部材106の基部131の内周側と、第2ケース部材106の基部131の外周側と、ディスク105と、サブバルブ161の外周側と、第1ケース部材100の外側底部115と、第1ケース部材100の環状突出部113と、ディスク84と、メインバルブ91の内周側と、ディスク82の内周側と、ピストン18の内側シート部47と、ピストン18の内側シート部49と、ディスク62の内周側と、メインバルブ71の内周側と、ディスク65と、ディスク66の内周側と、環状部材67の内周側と、軸段部29とを結ぶ経路で伝達される。
この状態で、メインバルブ71は、ディスク62を介してピストン18の内側シート部49とディスク65とに内周側がクランプされるとともに、ピストン18のバルブシート部50に全周にわたって当接する。また、この状態で、メインバルブ91は、ディスク82を介してピストン18の内側シート部47とディスク84とに内周側がクランプされるとともに、ピストン18のバルブシート部48に全周にわたって当接する。
また、この状態で、サブバルブ161を構成するディスク101、ディスクバルブ102およびディスク103,104は、第1ケース部材100の外側底部115とディスク105とに外周側がクランプされる。このとき、サブバルブ161は、内周側はクランプされない。よって、ディスクバルブ102を含むサブバルブ161が、第1ケース部材100、ディスク105および第2ケース部材106に片持ち支持される。第1ケース部材100、ディスク105および第2ケース部材106は、サブバルブ161の外周部とともにピストンロッド21に一体的に連結される。
なお、ディスク101,103~105およびディスクバルブ102は、第1ケース部材100の外側底部115に嵌合されることで第1ケース部材100に対し径方向に位置決めされる。よって、第1ケース部材100の筒状部112と第2ケース部材106の基部131とを締まり嵌めとすることで、第1ケース部材100、ディスク101,103~105、ディスクバルブ102および第2ケース部材106を一体化でき、サブアッセンブリ化できる。よって、第1ケース部材100、ディスク101,103~105、ディスクバルブ102および第2ケース部材106は、サブアッセンブリの状態でピストンロッド18に組み付けることができる。
伸び側の第1減衰力発生機構41および第2減衰力発生機構182のうち、第1減衰力発生機構41のメインバルブ91は、第2減衰力発生機構182のサブバルブ161よりも剛性が高く開弁圧が高い。よって、伸び行程において、ピストン速度が所定値よりも低速の極微低速領域では第1減衰力発生機構41は閉弁した状態で第2減衰力発生機構182が開弁する。また、ピストン速度がこの所定値以上の通常速度領域では、第1減衰力発生機構41および第2減衰力発生機構182がともに開弁することになる。言い換えれば、ピストン18を軸方向に縦断して上室19と下室20と連通可能な通路185のうちの第1通路部92に設けられた第1減衰力発生機構41は、ピストン速度が低速の領域では閉弁し、ピストン速度が低速よりも大きい速度領域では開弁することになり、通路185のうちの第2通路部181に設けられた第2減衰力発生機構182はピストン速度が低速の領域から開弁する。サブバルブ161は、伸び行程において、ピストン速度が極微低速の領域で開弁して減衰力を発生させる極微低速バルブである。
すなわち、伸び行程においては、ピストン18が上室19側に移動することで上室19の圧力が高くなり、下室20の圧力が低くなるが、ピストン速度が、第1所定値未満での伸び行程においては、第2通路部181が、流路断面積が最小の状態の可変通路173を介して上室19と下室20とを連通させている。よって、上室19の油液が、ピストン18の複数の通路穴37内および環状溝55内の通路と、オリフィス175と、ピストン18の大径穴部46内の通路と、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路と、上室連通室171と、流路断面積が最小の状態の可変通路173と、下室連通室172と、第2ケース部材106の通路溝134内の通路とを介して下室20に流れる。
そして、ピストン速度が、第1所定値よりも高速の領域であって、第1所定値よりも高速の第2所定値よりも低速の極微低速領域では、第1減衰力発生機構41は閉弁した状態で、第2減衰力発生機構182のサブバルブ161が下室連通室172側に変形し開弁して可変通路173を含む第2通路部181で上室19から下室20に油液を流す。このとき、ピストン速度の増大に応じてサブバルブ161の下室連通室172側への変形量が大きくなり、通路形成部132との間の可変通路173が拡大する。これにより、ピストン速度が第2所定値よりも低速の極微低速領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する特性)の減衰力が得られる。
また、伸び行程において、ピストン速度が第2所定値以上の通常速度領域では、上記のように第2減衰力発生機構182のサブバルブ161が下室連通室172側に変形して開弁量を大きくした状態のまま、第1減衰力発生機構41が開弁する。つまり、サブバルブ161が下室連通室172側に変形して可変通路173を含む第2通路部181で上室19から下室20に油液を流すことになるが、このとき、第2通路部181においてサブバルブ161よりも上流側に設けられたオリフィス175で油液の流れが絞られることにより、メインバルブ91に加わる圧力が高くなって差圧が高まり、メインバルブ91がバルブシート部48から離座して、伸び側の第1通路部92で上室19から下室20に油液を流す。よって、上室19の油液が、複数の通路穴37内および環状溝55内の通路と、メインバルブ91およびバルブシート部48の間の通路とを介して下室20に流れる。
ここで、伸び行程において、ピストン速度が第2所定値以上の通常速度領域では、上室19と下室20との差圧は、第1所定値以上第2所定値未満の低速領域よりも大きくなるが、第1通路部92にはオリフィスによる絞りがないため、メインバルブ91が開弁することで油液を第1通路部92を介して大流量で流すことができる。これと、第2通路部181をオリフィス175で絞ることとにより、サブバルブ161の変形を抑制することができる。
緩衝器1は、伸び行程で上室19から下室20に油液を流す流路を第1通路部92と第2通路部181との並列で設け、メインバルブ91とサブバルブ161とを並列で設けている。また、オリフィス175はサブバルブ161と直列に接続されている。
以上のように、伸び行程において、ピストン速度が第2所定値以上の通常速度領域では、メインバルブ91が開弁することで油液を第1通路部92を介して大流量で流すことができる。これにより、サブバルブ161および通路形成部132の間の可変通路173を流れる流量が小さくなる。このため、サブバルブ161のバルブ剛性を下げることができる。よって、例えば、ピストン速度が通常速度領域でのピストン速度の上昇に対する減衰力の増加率を下げること等ができる。言い換えれば、通常速度領域におけるピストン速度の上昇に対する伸び側の減衰力の増加率の傾きを、極微低速領域よりも寝かせることができる。これにより、設計自由度を拡大することができる。
縮み側の第1減衰力発生機構42および第2減衰力発生機構182のうち、第1減衰力発生機構42のメインバルブ71は、第2減衰力発生機構182のサブバルブ161よりも剛性が高く開弁圧が高い。よって、縮み行程において、ピストン速度が所定値よりも低速の極微低速領域では第1減衰力発生機構42は閉弁した状態で第2減衰力発生機構182が開弁し、ピストン速度がこの所定値以上の通常速度領域では、第1減衰力発生機構42および第2減衰力発生機構182がともに開弁することになる。言い換えれば、ピストン18を軸方向に縦断して上室19と下室20と連通可能な通路185のうちの第1通路部72に設けられた第1減衰力発生機構42は、ピストン速度が低速の領域では閉弁し、ピストン速度が低速よりも大きい速度領域では開弁することになり、通路185のうちの第2通路部181に設けられた第2減衰力発生機構182はピストン速度が低速の領域から開弁する。サブバルブ161は、縮み行程においても、ピストン速度が極微低速の領域で開弁して減衰力を発生させる極微低速バルブである。
すなわち、縮み行程においては、ピストン18が下室20側に移動することで下室20の圧力が高くなり、上室19の圧力が低くなるが、ピストン速度が、第3所定値未満での伸び行程においては、第2通路部181が、流路断面積が最小の状態の可変通路173を介して上室19と下室20とを連通させている。よって、下室20の油液が、第2ケース部材106の通路溝134内の通路と、下室連通室172と、流路断面積が最小の状態の可変通路173と、上室連通室171と、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路と、ピストン18の大径穴部46内の通路と、オリフィス175と、ピストン18の環状溝55内および複数の通路穴37内の通路とを介して上室19に流れる。
そして、ピストン速度が、第3所定値よりも高速の領域であって、第3所定値よりも高速の第4所定値よりも低速の極微低速領域では、第1減衰力発生機構42は閉弁した状態で第2減衰力発生機構182のサブバルブ161が上室連通室171側に変形して開弁して可変通路173を含む第2通路部181で下室20から上室19に油液を流す。このとき、ピストン速度の増大に応じてサブバルブ161の上室連通室171側への変形量が大きくなり、通路形成部132との間の可変通路173が拡大する。これにより、ピストン速度が第4所定値りも低速の極微低速領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する特性)の減衰力が得られる。
また、縮み行程において、ピストン速度が上記第4所定値以上の通常速度領域では、上記のように第2減衰力発生機構182のサブバルブ161が上室連通室171側に変形して開弁量を大きくした状態のまま、第1減衰力発生機構42が開弁する。つまり、サブバルブ161が上室連通室171側に変形して可変通路173を含む第2通路部181で下室20から上室19に油液を流すことになるが、このとき、第2通路部181はオリフィス175で油液の流量が絞られていることから、メインバルブ71に生じる差圧が大きくなり、メインバルブ71がバルブシート部50から離座して、縮み側の第1通路部72で下室20から上室19に油液を流す。よって、下室20の油液が、複数の通路穴39内および環状溝56内の通路と、メインバルブ71およびバルブシート部50の間の通路とを介して流れる。これにより、ピストン速度が第4所定値以上の通常速度領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が得られる。通常速度領域におけるピストン速度の増加に対する縮み側の減衰力の増加率は、極微低速領域におけるピストン速度の増加に対する縮み側の減衰力の増加率よりも低くなる。言い換えれば、通常速度領域におけるピストン速度の上昇に対する縮み側の減衰力の増加率の傾きを、極微低速領域よりも寝かせることができる。
縮み行程において、ピストン速度が第4所定値以上の通常速度領域では、下室20と上室19との差圧は低速領域よりも大きくなるが、第1通路部72はオリフィスによる絞りがないため、メインバルブ71が開弁することで油液を第1通路部72を介して大流量で流すことができる。これにより、サブバルブ161を流れる流量が小さくなるため、サブバルブ161のバルブ剛性を下げることができる。よって、ピストン速度が通常速度領域での減衰力を下げること等ができ、設計自由度を拡大することができる。
また、このとき(ピストン速度が速い場合)、下室20と上室19との差圧は大きくなるものの、第2通路部181をオリフィス175で絞ることにより、上室19にオリフィス175を介して連通する上室連通室171内の圧力は、下室20と上室19との間の圧力となるので、下室20との差圧が大きくなり過ぎることを抑制できる。これと、メインバルブ71が開弁することで油液を第1通路部72を介して大流量で流すことができることとによって、サブバルブ161の変形を抑制することができる。
以上の緩衝器1は、縮み行程で下室20から上室19に油液を流す流路を第1通路部72と第2通路部181との並列で設け、メインバルブ71とサブバルブ161とを並列で設けている。また、オリフィス175は、第2通路部181においてサブバルブ161と直列に接続されている。
なお、縮み行程においては、減衰バルブ機構197による減衰力特性も合わせた特性となる。
上記した特許文献1には、同一行程で開弁するバルブを2つ有する緩衝器が記載されている。同一行程で開弁するバルブを2つ有すると、生産性が低下してしまうという課題があり、このような緩衝器において生産性の低下を抑制することが求められている。
第1実施形態の緩衝器1は、第1ケース部材100、ディスク105および第2ケース部材106に、ディスク101,103,104とともに片持ち支持されて上室19および下室20間の差圧により弾性変形するディスクバルブ102の自由端が、ピストンロッド21に通路形成部132を介して対向している。このため、通路形成部132との間の最小流路断面積が小さくても通路形成部132との間の径方向隙間は大きくできる。
すなわち、ディスクバルブの外周側を自由端とすると、自由端の径が大きくなり、自由端の周方向長さが長くなるため、所定の最小流路断面積を形成するための対向部品との径方向隙間が狭くなって部品精度を確保するための加工が面倒になってしまう。これに対し、第1実施形態の緩衝器1は、ディスクバルブ102の自由端が、ピストンロッド21に対向している。具体的には、ディスクバルブ102は有孔円板状であって内周部の自由端が、ピストンロッド21に通路形成部132を介して対向しており、第1ケース部材100、ディスク105および第2ケース部材106が、ピストンロッド21に一体的に連結されてディスクバルブ102の外周側をディスク101,103,104の外周側とともに片持ち支持する。このため、ディスクバルブ102の自由端の径が小さくなり、自由端の周方向長さが短くなるため、通路形成部132との間に同じ所定の最小流路断面積を形成するための通路形成部132との間の径方向隙間を大きくできる。したがって、組み付けが容易となって、生産性の低下を抑制することが可能になる。また、自由端の周方向長さが短くなるため、部品精度を確保するための加工が容易となり、この点からも生産性の低下を抑制することが可能になる。加えて、緩衝器1の減衰力の個体間でのバラツキを抑えることができる。
また、ディスクバルブ102の外周側をディスク101,103,104の外周側とともに片持ち支持する第1ケース部材100、ディスク105および第2ケース部材106のうちの第2ケース部材106に、ディスクバルブ102の内周部に対向する通路形成部132が一体に形成されているため、ディスクバルブ102と通路形成部132との位置決めが容易となる。
また、第2ケース部材106は、ケース内室165を形成するケース部167と、ピストンロッド21の不完全ネジ部109を覆うワッシャ部166と、を有するため、これらを別体とする場合と比べて部品点数を低減することができる。
また、第2通路部181の伸び行程時の流れのサブバルブ161よりも上流側および縮み行程時の流れのサブバルブ161よりも下流側にオリフィス175を配置している。これにより、伸縮両行程において、サブバルブ161の変形を抑制でき、サブバルブ161の耐久性を向上させることができる。
また、オリフィス175が、伸び側の第1減衰力発生機構41のうち、ピストン18に当接するディスク82を切り欠いて形成されているため、オリフィス175を容易に形成することができる。
また、第2通路部181は、その一部がピストンロッド21を切り欠いて形成されているため、第2通路部181を容易に形成することができる。
また、ケース内室165と下室20の差圧が、伸縮両行程において、大きくならないので、ディスクバルブ102を含むサブバルブ161として薄板のプレス部品を用いることが可能となり、サブバルブ161の製造性および軽量化の面で有利である。
また、サブバルブ161を外周側で支持する構造とすることで、第1ケース部材100、サブバルブ161、ディスク105および第2ケース部材106をサブアッセンブリ化でき、これらをサブアッセンブリの状態でピストンロッド18に組み付けることができる。したがって、生産性の低下をさらに抑制することが可能になる。
ここで、ディスクバルブ102を、その内周側を自由端とする内周側撓みとすることで、外周側を自由端とする外周側撓みの場合と比べて、剛性が高くなり、大きく撓ませることができない。また、バルブリフト量に対する応力も高くなる。よって、このような内周側撓みの構造は、リフト量が直列に対して大きくならない、第2減衰力発生機構182が第1減衰力発生機構41,42に対し並列の第1実施形態の構成にすることで成立しやすく、望ましい。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を主に図4に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第2実施形態の緩衝器1Aにおいては、図4に示すように、第1実施形態のピストンロッド21とは一部異なるピストンロッド21Aが用いられている。ピストンロッド21Aは、取付軸部28とは一部異なる取付軸部28Aを有しており、取付軸部28Aには、通路切欠部30が形成されていない。
また、第2実施形態の緩衝器1Aにおいては、第1実施形態のピストン18とは一部異なるピストン18Aが用いられている。ピストン18Aはピストン本体35Aがピストン本体35とは一部異なっている。ピストン本体35Aには、軸方向に貫通する複数の通路穴37Aと、軸方向に貫通する複数(図4では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴39Aとが形成されている。
複数の通路穴37Aは、ピストン本体35Aの軸方向に沿って直線状に延びる形状であり、ピストン本体35Aの円周方向に等ピッチで形成されている。ピストン本体35Aには、軸方向の上室19とは反対側に、複数の通路穴37Aを連通させる円環状の環状溝55Aが形成されている。環状溝55Aの上室19とは反対側には、伸び側の第1減衰力発生機構41Aが設けられている。
複数の通路穴39Aは、ピストン本体35Aの軸方向に沿って直線状に延びる形状であって、ピストン本体35Aの円周方向に所定のピッチで形成されている。すべての通路穴39Aは、すべての通路穴37Aよりもピストン本体35Aの径方向における外側に形成されている。複数の通路穴39Aの上室19側には、縮み側の第1減衰力発生機構42Aが設けられている。
ピストン本体35Aは、略円板形状をなしており、その径方向の中央には、ピストンロッド21Aの取付軸部28Aが挿入される挿入穴44Aが軸方向に貫通して形成されている。挿入穴44Aは、ストレート形状であり、ピストンロッド21Aの取付軸部28Aを嵌合させている。
ピストン本体35Aの軸方向の上室19とは反対側の端部には、環状溝55Aの上室19とは反対側の開口よりも、ピストン本体35Aの径方向における内側に環状の内側シート部47Aが形成されている。ピストン本体35Aの軸方向の上室19とは反対側の端部には、環状溝55Aの上室19とは反対側の開口よりも、ピストン本体35Aの径方向における外側に第1減衰力発生機構41Aの一部を構成する円環状のバルブシート部48Aが形成されている。バルブシート部48Aには、これを径方向に貫通する通路溝210が形成されている。
ピストン本体35Aの軸方向の上室19側の端部には、複数の通路穴37Aの上室19側の開口よりもピストン本体35Aの径方向における内側に環状の内側シート部49Aが形成されている。また、ピストン本体35Aの軸方向の上室19側の端部には、複数の通路穴39Aの一つまたは複数の上室19側の開口を囲むように、環状で異形のバルブシート部50Aが形成されている。バルブシート部50Aは、ピストン本体35Aの周方向に間隔をあけて複数形成されている。複数の通路穴37Aは、バルブシート部50A間の隙間を介して上室19に常時連通している。
縮み側の第1減衰力発生機構42Aは、ピストン18Aのバルブシート部50Aを含んでおり、第1実施形態のディスク62は設けられておらず、第1実施形態のディスク63よりも外径が大径の、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には四枚)のディスク63Aと、第1実施形態と同様の複数枚のディスク64とを有している。複数枚のディスク63Aは、内側シート部49Aに常時当接しており、バルブシート部50Aに着座してバルブシート部50Aを閉塞可能となっている。薄い金属板からなる複数枚のディスク63Aおよび複数枚のディスク64が、撓み可能であってバルブシート部50Aに離着座可能な縮み側のメインバルブ71Aを構成している。
伸び側の第1減衰力発生機構41Aは、ピストン18Aのバルブシート部48Aを含んでおり、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には二枚)のディスク83Aを有している。ディスク83Aのバルブシート部48Aとは反対側には、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には二枚)のディスク84Aが設けられている。ディスク83A,84Aは、金属製であり、いずれも内側にピストンロッド21Aの取付軸部28Aを嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなしている。複数枚のディスク83Aは、内側シート部47Aに常時当接しており、バルブシート部48Aに着座してバルブシート部48Aを閉塞可能となっている。ディスク84Aは、ディスク83Aの外径よりも小径であってピストン18Aの内側シート部47Aの外径よりも小径の外径となっている。薄い金属板からなる複数枚のディスク83Aが、撓み可能であってバルブシート部48Aに離着座可能な伸び側のメインバルブ91Aを構成している。
ピストン本体35Aには、バルブシート部48Aよりもピストン本体35Aの径方向における外側に、バルブシート部48Aよりも上室19とは反対側に突出する円環状の嵌合筒部211が形成されている。嵌合筒部211は内周面が、挿入穴44Aと同軸状の円筒面となっている。
ディスク84Aの上室19とは反対側には、第1実施形態の第1ケース部材100とは一部異なる第1ケース部材100A(支持部材)が、ピストンロッド21Aの取付軸部28Aをその内側に嵌合させて設けられている。第1ケース部材100Aのディスク84Aとは反対側に、第1実施形態と同様の、ディスク101とディスクバルブ102とディスク103とディスク104とディスク105と第2ケース部材106とがピストンロッド21Aの取付軸部28Aをそれぞれの内側に嵌合させて設けられている。
第1ケース部材100Aは、第1ケース部材100の環状突出部113は形成されておらず、底部111とは一部異なる底部111Aを有している。底部111Aは、外周面が筒状部112の外周面と同一円筒面をなす大径部215と、外径が大径部215よりも小径の小径部216とを有している。第1ケース部材100Aは、小径部216の円筒面からなる外周面でピストン18Aの嵌合筒部211の内周面に嵌合することになり、底部111Aにおいてディスク84Aに当接する。
底部111Aには、径方向の中間底部116の位置に、底部111Aを軸方向に貫通する貫通穴221が形成されている。貫通穴221は、底部111Aの周方向に間隔をあけて複数形成されている。
第1ケース部材100Aは、その径方向の中央に、底部111Aを軸方向に貫通して、ピストンロッド21Aの取付軸部28Aおよびネジ軸部31Aが挿通される挿通穴125Aが形成されている。挿通穴125Aは小径部216と同軸状をなしており、取付軸部28Aを嵌合させる。
第2ケース部材106の通路溝134内の通路と、下室連通室172と、サブバルブ161および通路形成部132の間の可変通路173と、上室連通室171と、第1ケース部材100Aの貫通穴221内の通路と、第1ケース部材100Aおよび第2ケース部材106の間の中間室225と、ピストン18Aの複数の通路穴39Aと、開弁時に出現するメインバルブ71Aおよびバルブシート部50Aの間の通路とが、縮み行程において上流側となる下室20から下流側となる上室19に向けて油液が流れ出す縮み側の通路部231を構成している。減衰力を発生する縮み側の第1減衰力発生機構42Aは、メインバルブ71Aとバルブシート部50Aとを含んでおり、よって、この通路部231に設けられている。通路部231は、ピストン18Aに形成された通路溝210内、環状溝55A内および複数の通路穴37A内の通路も含んでいる。通路溝210内の通路はオリフィス175Aを構成している。
ピストン18Aの複数の通路穴37A内および環状溝55A内の通路と、開弁時に出現するメインバルブ91Aおよびバルブシート部48Aの間の通路と、第1ケース部材100Aおよび第2ケース部材106の間の中間室225と、第1ケース部材100Aの貫通穴221内の通路と、上室連通室171と、サブバルブ161および通路形成部132の間の可変通路173と、下室連通室172と、第2ケース部材106の通路溝134内の通路とが、伸び行程において上流側となる上室19から下流側となる下室20に向けて油液が流れ出す伸び側の通路部232となる。減衰力を発生する伸び側の第1減衰力発生機構41Aは、メインバルブ91Aとバルブシート部48Aとを含んでおり、よって、この通路部232に設けられている。通路部232は、ピストン18Aに形成された通路溝210内の通路を含んでいる。通路部231,232は、ピストン18Aの移動によりシリンダ2内の上室19および下室20のうちの上流側となる一方から下流側となる他方に作動流体が流れ出す通路185Aを構成している。
開弁時に出現するメインバルブ71Aおよびバルブシート部50Aの間の通路と、複数の通路穴39A内の通路とが、ピストン18Aの下室20側への移動により上室19に油液が流れ出す縮み側の第1通路部72Aを構成している。よって、第1通路部72Aは、ピストン18Aに形成されている。第1通路部72Aに、これを開閉して減衰力を発生する縮み側の第1減衰力発生機構42Aが設けられている。
開弁時に出現するメインバルブ91Aおよびバルブシート部48Aの間の通路と、環状溝55A内および複数の通路穴37A内の通路とが、ピストン18Aの上室19側への移動によりシリンダ2内の上流側となる上室19からの油液が流れ出す伸び側の第1通路部92Aを構成している。よって、第1通路部92Aは、ピストン18Aに形成されている。第1通路部92Aに、これを開閉して減衰力を発生する伸び側の第1減衰力発生機構41Aが設けられている。
第1ケース部材100Aおよび第2ケース部材106の間の中間室225と、第1ケース部材100Aの貫通穴221内の通路と、上室連通室171と、サブバルブ161および通路形成部132の間の可変通路173と、下室連通室172と、第2ケース部材106の通路溝134内の通路とが、通路部231および通路部232に共通する第2通路部181Aとなっている。第2通路部181Aは、縮み行程において上流側となる下室20から下流側となる上室19に向けて油液が流れ出す縮み側の通路となるとともに、伸び行程において上流側となる上室19から下流側となる下室20に向けて油液が流れ出す伸び側の通路になる。減衰力を発生する第2減衰力発生機構182は、サブバルブ161および通路形成部132を含んでおり、よって、通路部231および通路部232に共通の第2通路部181Aに設けられている。
第2通路部181Aは、縮み側の第1通路部72Aと直列しており、第1通路部72Aに第1減衰力発生機構42Aが、第2通路部181Aに第2減衰力発生機構182がそれぞれ設けられている。よって、第1減衰力発生機構42Aおよび第2減衰力発生機構182は、直列に配置されている。
第2通路部181Aは、伸び側の第1通路部92Aと直列しており、第1通路部92Aに第1減衰力発生機構41Aが、第2通路部181Aに第2減衰力発生機構182がそれぞれ設けられている。よって、第1減衰力発生機構41Aおよび第2減衰力発生機構182は、直列に配置されている。
ピストンロッド21Aにピストン18A等を組み付ける場合、ピストンロッド21Aのネジ軸部31および取付軸部28Aを挿通させながら、軸段部29に、環状部材67と、ディスク66と、ディスク65と、複数枚のディスク64と、複数枚のディスク63Aと、ピストン18Aとが順に重ねられる。このとき、ピストン18Aは、内側シート部49Aおよびバルブシート部50Aが軸段部29側に位置する向きとされる。加えて、ネジ軸部31および取付軸部28Aを挿通させながら、ピストン18Aに、複数枚のディスク83Aと、複数枚のディスク84Aと、第1ケース部材100Aとが順に重ねられる。このとき、第1ケース部材100Aは、底部111Aの小径部216が、大径部215よりもピストン18A側に位置する向きとされ、小径部216においてピストン18Aの嵌合筒部211に嵌合されて、底部111Aでディスク84Aに当接する。加えて、ネジ軸部31および取付軸部28Aを挿通させながら、第1ケース部材100Aの底部111Aに、ディスク101と、ディスクバルブ102と、ディスク103と、ディスク104と、ディスク105と、第2ケース部材106とが順に重ねられる。このとき、ディスク101、ディスクバルブ102およびディスク103,104,105は、第1ケース部材100Aの筒状部112に嵌合される。また、このとき、第2ケース部材106は、通路形成部132が、基部131よりもピストン18A側に位置する向きとされ、基部131で筒状部112に嵌合するとともにディスク105に当接する。
この状態で、第2ケース部材106よりも突出するピストンロッド21Aのネジ軸部31のオネジ32にナット108を螺合させて、ナット108と軸段部29とで、これらを軸方向にクランプする。
この状態で、メインバルブ71Aは、ピストン18Aの内側シート部49Aとディスク65とに内周側がクランプされるとともに、ピストン18Aの全部のバルブシート部50Aの全周に当接する。また、この状態で、メインバルブ91Aは、ピストン18Aの内側シート部47Aとディスク84Aとに内周側がクランプされるとともに、ピストン18Aのバルブシート部48Aに全周にわたって当接する。
また、この状態で、サブバルブ161を構成するディスク101、ディスクバルブ102およびディスク103,104は、第1ケース部材100Aの外側底部115とディスク105とに、第1実施形態と同様、外周側がクランプされる。よって、ディスクバルブ102を含むサブバルブ161が、第1ケース部材100A、ディスク105および第2ケース部材106に片持ち支持される。第1ケース部材100A、ディスク105および第2ケース部材106は、サブバルブ161の外周部とともにピストンロッド21Aに一体的に連結される。
第2実施形態においても、第1ケース部材100A、ディスク101,103~105、ディスクバルブ102および第2ケース部材106は、サブアッセンブリ化でき、サブアッセンブリの状態でピストンロッド18Aに組み付けることができる。
伸び側の第1減衰力発生機構41Aおよび第2減衰力発生機構182のうち、第1減衰力発生機構41Aのメインバルブ91Aは、第2減衰力発生機構182のサブバルブ161よりも剛性が高く開弁圧が高い。よって、伸び行程において、ピストン速度が所定値よりも低速の極微低速領域では第1減衰力発生機構41Aは閉弁した状態で第2減衰力発生機構182が開弁する。また、ピストン速度がこの所定値以上の通常速度領域では、第1減衰力発生機構41Aおよび第2減衰力発生機構182がともに開弁することになる。
すなわち、伸び行程においては、ピストン18Aが上室19側に移動することで上室19の圧力が高くなり、下室20の圧力が低くなるが、ピストン速度が、第5所定値未満での伸び行程においては、通路部232が、流路断面積が最小の状態の可変通路173を介して上室19と下室20とを連通させている。よって、上室19の油液が、ピストン18Aの複数の通路穴37A内および環状溝55A内の通路と、オリフィス175Aと、中間室225と、第1ケース部材100Aの貫通穴221内の通路と、上室連通室171と、流路断面積が最小の状態の可変通路173と、下室連通室172と、第2ケース部材106の通路溝134内の通路とを介して下室20に流れる。
そして、ピストン速度が、第5所定値よりも高速の領域であって、第5所定値よりも高速の第6所定値よりも低速の極微低速領域では、第1減衰力発生機構41Aは閉弁した状態で、第2減衰力発生機構182のサブバルブ161が下室連通室172側に変形し開弁して可変通路173を含む通路部232で上室19から下室20に油液を流す。このとき、ピストン速度の増大に応じてサブバルブ161の下室連通室172側への変形量が大きくなり、通路形成部132との間の可変通路173が拡大する。これにより、ピストン速度が第6所定値よりも低速の極微低速領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する特性)の減衰力が得られる。
また、伸び行程において、ピストン速度が第6所定値以上の通常速度領域では、上記のように第2減衰力発生機構182のサブバルブ161が下室連通室172側に変形して開弁量を大きくした状態のまま、第1減衰力発生機構41Aが開弁する。つまり、サブバルブ161が下室連通室172側に変形して可変通路173を含む通路部232で上室19から下室20に油液を流すことになるが、このとき、通路部232においてサブバルブ161よりも上流側に設けられたオリフィス175Aで油液の流れが絞られることにより、通路部232においてメインバルブ91Aに加わる圧力が高くなって差圧が高まり、メインバルブ91Aがバルブシート部48Aから離座して上室19から下室20に油液を流す。よって、上室19の油液が、複数の通路穴37A内および環状溝55A内の通路と、メインバルブ91Aおよびバルブシート部48Aの間の通路と、中間室225と、第1ケース部材100Aの貫通穴221内の通路と、上室連通室171と、流路断面積が拡大している状態の可変通路173と、下室連通室172と、第2ケース部材106の通路溝134内の通路とを介して下室20に流れる。
縮み側の第1減衰力発生機構42Aおよび第2減衰力発生機構182のうち、第1減衰力発生機構42Aのメインバルブ71Aは、第2減衰力発生機構182のサブバルブ161よりも剛性が高く開弁圧が高い。よって、縮み行程において、ピストン速度が所定値よりも低速の極微低速領域では第1減衰力発生機構42Aは閉弁した状態で第2減衰力発生機構182が開弁し、ピストン速度がこの所定値以上の通常速度領域では、第1減衰力発生機構42Aおよび第2減衰力発生機構182がともに開弁することになる。
すなわち、縮み行程においては、ピストン18Aが下室20側に移動することで下室20の圧力が高くなり、上室19の圧力が低くなるが、ピストン速度が、第7所定値未満での伸び行程においては、通路部231が、流路断面積が最小の状態の可変通路173を介して上室19と下室20とを連通させている。よって、下室20の油液が、第2ケース部材106の通路溝134内の通路と、下室連通室172と、流路断面積が最小の状態の可変通路173と、上室連通室171と、第1ケース部材100Aの貫通穴221内の通路と、中間室225と、オリフィス175Aと、ピストン18Aの環状溝55A内および複数の通路穴37A内の通路とを介して上室19に流れる。
そして、ピストン速度が、第7所定値よりも高速の領域であって、第7所定値よりも高速の第8所定値よりも低速の極微低速領域では、第1減衰力発生機構42Aは閉弁した状態で第2減衰力発生機構182のサブバルブ161が上室連通室171側に変形し開弁する。このとき、ピストン速度の増大に応じてサブバルブ161の上室連通室171側への変形量が大きくなり、通路形成部132との間の可変通路173が拡大する。これにより、ピストン速度が第8所定値よりも低速の極微低速領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する特性)の減衰力が得られる。
また、縮み行程において、ピストン速度が上記第8所定値以上の通常速度領域では、上記のように第2減衰力発生機構182のサブバルブ161が上室連通室171側に変形して開弁量を大きくした状態のまま、第1減衰力発生機構42Aが開弁する。つまり、サブバルブ161が上室連通室171側に変形して可変通路173を含む通路部231で下室20から上室19に油液を流すことになるが、このとき、通路部231は一方の流れがオリフィス175Aでの油液の流量が絞られていることから、他方の流れのメインバルブ71Aに生じる差圧が大きくなり、メインバルブ71Aがバルブシート部50Aから離座して下室20から上室19に油液を流す。よって、下室20の油液が、第2ケース部材106の通路溝134内の通路と、下室連通室172と、流路断面積が拡大した状態の可変通路173と、上室連通室171と、第1ケース部材100Aの貫通穴221内の通路と、中間室225と、複数の通路穴39A内の通路と、メインバルブ71Aおよびバルブシート部50Aの間の通路とを介して流れる。これにより、ピストン速度が第8所定値以上の通常速度領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が得られる。
上記第1,第2実施形態は、複筒式の油圧緩衝器に本発明を用いた例を示したが、これに限らず、外筒をなくしシリンダ2内の下室20の上室19とは反対側に摺動可能な区画体でガス室を形成するモノチューブ式の油圧緩衝器に用いてもよく、ディスクにシール部材を設けた構造のパッキンバルブを使用した圧力制御バルブを含むあらゆる緩衝器に用いることができる。
以上に述べた実施形態の第1の態様は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に設けられ、該シリンダ内を2室に区画するピストンと、前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、前記ピストンの移動により前記シリンダ内の上流側となる前記室から下流側となる前記室に作動流体が流れ出す通路と、前記通路に設けられ、ピストン速度が低速の領域では閉弁し、ピストン速度が低速よりも大きい速度領域では開弁する第1減衰力発生機構と、前記通路に設けられ、ピストン速度が低速の領域から開弁する第2減衰力発生機構と、を有し、前記第2減衰力発生機構は、支持部材に片持ち支持されて前記2室間の差圧により弾性変形するディスクバルブを有し、前記ディスクバルブの自由端が、前記ピストンロッドに対向している。これにより、生産性の低下を抑制することが可能となる。
第2の態様は、第1の態様において、前記ディスクバルブは有孔円板状であって内周部が前記ピストンロッドに対向しており、前記支持部材は、前記ピストンロッドに一体的に連結されて前記ディスクバルブの外周側を片持ち支持する。