JP7445813B1 - 自動車用内装材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
自動車の天井材はガラス繊維から構成することが多いが、ガラス繊維は飛散すると皮膚に刺さって痒みを引き起こすケースがあるため、ガラス繊維の飛散を防ぐため、内層基材の天井材側に天井裏材と呼ばれるシート体を配置して天井材の内面を被覆する。
天井裏材はポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリプロピレン繊維を原料とする不織布の一面に、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンなどを主原料とするプラスチックフィルムを貼り合わせて構成する。詳細には、例えば不織布とプラスチックフィルムの間に、溶融したオレフィン系樹脂を流し込んで圧着することで一体化する押出しラミネート法によって製造する。
特許文献1には、目付け15~40g/m2程度のPETとPE繊維よりなる不織布により形成された裏面層と、裏面層の下面に積層された通気止めフィルム層よりなり、通気止めフィルム層が、厚さが70~90μm程度のオレフィン系樹脂フィルム又はウレタン樹脂フィルムを2層または3層に重ねてなる、熱可塑性フィルムが開示されている。
<1>軽量化の問題
近年は、エネルギー効率の向上による環境負荷低減のため、自動車部品の軽量化が追求されており、天井裏材にも大幅な軽量化が求められている。
然るに、従来技術の押出しラミネート工法は、材料が不織布層、プラスチックフィルム層、及び接着剤層の3層構造となり、かつ各層の厚みに下限があるため、全体の軽量化に限界がある。
例えば、坪量(1m2あたりの重量g/m2)15g/m2~35g/m2の不織布と、20μm~30μm(坪量18g/m2~27g/m2)のプラスチックフィルムを、溶融したポリプロピレン樹脂(坪量13.5g/m2~22.5g/m2で接着する場合、全体の坪量は46.5g/m2~84.5g/m2となり、接着剤としてのポリプロピレン樹脂が全体重量の約25~30%を占めるため、大幅な軽量化を図ることが難しい。
<2>コストの問題
押出ラミネート法は、不織布の製造、プラスチックフィルムの製造、不織布とプラスチックフィルムのラミネート圧着加工、の3工程からなり、各工程に別個の製造設備と加工設備を必要とするため、製造コストがかさむ。
<3>品質上の問題
内装天井は、サイドエアバッグの展開しやすさのような機能性や、意匠上のデザイン性を向上するため、深絞り形状が求められる。このため、内装天井の成形時に型枠の形状に柔軟に追従するよう、天井裏材には高い伸縮性や柔軟性などの高品質が求められる。
然るに、押出ラミネート法の接着工程では、プラスチックフィルムの全面が190℃以上のオレフィン系樹脂と接触し、再加熱された状態で送り出し/巻取りのために一方向に引張(ドラフト)されるため、プラスチックフィルムの結晶が引張方向に配向することで、プラスチックフィルムが脆化し、加工方向で伸び性が低下したり、クロス方向で裂けやすくなる。
また、不織布の繊維間に溶融したオレフィン樹脂が入り込むことにより、不織布の柔軟性が失われて品質が損なわれたり、ドラフトにより幅が縮小しマシン方向の伸び性が低下するおそれがある。
<4>離型性の問題
不織布とプラスチックフィルムを、面状に圧着する構成であるため、圧着時に、溶融したオレフィン系樹脂が不織布を透過して表面に滲出することがある。この場合、離型時に不織布が型枠に貼り付くことで、作業ラインを停止させて、歩留まりを悪化させるおそれがある。
<5>設備の問題
不織布とプラスチックフィルムを送り出しながら間に溶融樹脂を挟んで圧着する設備は、機構が複雑で高価であり、維持管理に高いコストがかかる。
<1>軽量化
従来技術の3層構造に対し、全体重量の約25~30%を占める接着剤層を排除した不織布面とフィルム面の2面構造からなるため、従来技術に対し大幅な軽量化を達成できる。
例えば、スパンボンド法を採用した場合、坪量12g/m2の軽量不織布と20μm(坪量18g/m2)のポリプロピレンフィルムを積層することで、坪量30g/m2の最軽量の自動車用内装材の製造が可能となった。
これは、従来の最軽量の自動車用内装材(坪量46.5g/m2)と比較して35%以上の顕著な軽量化であり、エネルギー効率の向上による環境負荷低減に資する。
<2>低コスト
不織布の製造設備を利用して、不織布の製造とフィルム面への圧着を同時に行う構成であるため、従来技術の3工程に対し2設備/2工程で製造でき、かつ接着剤の材料コストがかからないため、低コストで製造できる。
<3>高品質
従来技術の押出ラミネート法のように、フィルム面の全面を加熱したり、送り出しと加工後の巻取りのために材料を強く引張する必要がない。このため、フィルム面の結晶の配向によって伸び性や柔軟性を損なうおそれがない。
また、不織布面とフィルム面の接着に接着剤を使用しないため、溶融した接着剤が不織布へ滲入するおそれがなく、不織布が高い柔軟性を保持できる。
さらに、不織布面とフィルム面を全面ではなくエンボス押圧した溶着接点のみで接着する構造であるため、伸び率や柔軟性が極めて高い。
<4>高い離型性
接着剤を使用しないため離型性が高く、型枠への貼り付きが生じにくい。
<5>簡易な設備
既存の不織布製造設備を利用して製造でき、圧着のための専用設備が必要ないため設備の導入コスト、維持管理コストを低減できる。
<1>全体の構成(図1)
自動車用内装材1は、自動車の内装において内層基材と天井材の間に配置して天井材の内面を被覆するシート状の天井裏材である。
自動車用内装材1は、熱可塑性プラスチックからなるフィルム面10と、フィルム面10の反対面である不織布面20と、を備え、フィルム面10と不織布面20は、規則的間隔で配列する複数の溶着接点30を介して一体化してなる。
フィルム面10と不織布面20の厚さは任意に設定することができるが、深絞り形状を有する内装天井に対する追従性を考慮すると、フィルム面10の厚さは40μm以下、不織布面20の坪量は30g/m2以下が好適である。
本発明の自動車用内装材1は、フィルム面10と不織布面20を、全面で圧着するのではなく、エンボス押圧した溶着接点30で点状に溶着する構造であるため、伸び率や柔軟性が極めて高い。
また、シート間に接着剤としての溶融樹脂層が介在しないため、軽量で成形自由度に優れ、天井裏材として最適である。
フィルム面10は、主として自動車用内装材1の遮水機能を発揮する面である。
フィルム面10は、熱可塑性プラスチック製のフィルムからなる。
本例ではフィルム面10として厚さ20μmのポリプロピレン(PP)フィルムを採用する。ポリプロピレンフィルムは高い耐熱性、低比重(軽量)、高強度という複数の長所を兼備するため、フィルム面10として好適である。
ただしフィルム面10はポリプロピレンフィルムに限らず、ポリエステル(PEs)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルムその他のオレフィン系樹脂フィルムであってもよい。要は製造条件に適した熱可塑性と、自動車用内装材1に適用可能な伸縮率/柔軟性等の物性を備えていればよい。
不織布面20は、主として自動車用内装材1の遮音機能/緩衝機能を発揮する面である。
不織布面20は、合成樹脂製のウェブ21を熱ロールしてなる。
本例では不織布面20として、坪量15g/m2のポリプロピレン繊維製不織布を採用する。
ただし不織布面20の原料はポリプロピレン繊維に限らず、ポリエステル(PEs)繊維、ポリエチレン(PE)繊維その他のオレフィン系樹脂繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維等であってもよい。
溶着接点30は、フィルム面10と不織布面20を天井に溶着する交点である。
溶着接点30は、後述する熱ロール工程S3において、ウェブ21を熱ロールCのエンボス点C1で点状に溶融して交絡させるとともに、背面のフィルム面10に融着させることで形成する。
本発明の自動車用内装材の製造方法は、少なくともウェブ形成工程S1と、積層工程S2と、熱ロール工程S3と、を備える。なお、ウェブ形成工程S1と積層工程S2は、説明の便宜上2つの工程に区分して記載しているが、実際には一連の製造フローにおける1つの工程である。
自動車用内装材の製造方法は、既存の不織布製造設備の熱ロールCを利用することで、ラミネート圧着加工設備を使用せずに自動車用内装材1を製造可能な点に1つの特徴を備える。
詳細には、例えば以下の手順で自動車用内装材1を製造することができる。
ウェブ形成工程S1は、不織布面20の素材であるウェブ21を形成する工程である。
本例では、ウェブ形成工程S1はスパンボンド法による。
詳細には、押出装置A内に米粒状のポリプロピレンペレットを投入し、溶融して、直径1mm以下の多数のノズルの孔から吐出し、冷却しながら牽引装置で伸ばす。これによって、原料を直径30μm程度に繊維化し、コンベアB上に均等に積層してウェブ21を形成する。
なお、ウェブ形成工程S1はスパンボンド法に限らず、所定量のウェブ21を連続して形成できれば、他の公知の方法によってもよい。
積層工程S2は、ウェブ21をフィルム面10上に積層する工程である。
本例では、コンベアBの先端(下流側)の下方にロール状に巻いたフィルム面10を配置し、フィルム面10を展開しつつ、コンベアBの先端からフィルム面10上にウェブ21を載せ替える。
なお、本例ではウェブ形成工程S1で形成したウェブ21をいったんコンベアB上に配置し、その後にフィルム面10に乗せ換えたが、ウェブ21を直接フィルム面10上に積層してもよい。
熱ロール工程S3は、熱ロールCによってウェブ21を不織布面20に生成しつつ、同時にフィルム面10と不織布面20を圧着する工程である。
熱ロールCは、フィルム面10とウェブ21を両面から挟み込んで一方向に送り出すように配置した一対のローラである。
一対の熱ロールCの内少なくとも一方には、鉄製の鏡面上に複数のエンボス点C1を規則的間隔でエッチング加工してある。本例では、一対の熱ロールCの内、上方の熱ロールCにエンボス点C1を設けている。
熱ロールCは予め表面温度110℃~150℃程度に加熱しておく。
積層工程S2によってフィルム面10上に積層したウェブ21を、フィルム面10ごと熱ロールC間に通す。
これによって、高温のエンボス点C1がウェブ21を溶融すると同時に押圧することで、ウェブ21の繊維間を交絡して不織布面20に加工し、同時に不織布面20をフィルム面10と貼り合わせて自動車用内装材1を製造する。
本発明の自動車用内装材の製造方法は、フィルム面10と不織布面20を、無数の溶着接点30で点状に溶着する構成であるため、従来技術のように全面を再加熱して結晶を配向させることがなく、伸び率が低下したり裂けやすくなるおそれがない。また、複数のエンボス点C1の間隔やパターンを選択することで、伸び率を制御することも可能である。
10 フィルム面
20 不織布面
21 ウェブ
30 溶着接点
A 押出装置
B コンベア
C 熱ロール
C1 エンボス点
S1 ウェブ形成工程
S2 積層工程
S3 熱ロール工程
Claims (4)
- スパンボンド法によってコンベア上に合成樹脂製繊維を積層してウェブを形成する、ウェブ形成工程と、
前記コンベアの先端から、ロール状から展開した熱可塑性プラスチックからなるフィルム面上に、前記ウェブを載せ替えて積層する、積層工程と、
前記フィルム面によって前記ウェブを一対の熱ロールまで搬送し、前記フィルム面と前記ウェブを前記一対の熱ロール間に通して、前記フィルム面上に不織布面を生成すると同時に前記フィルム面と前記不織布面を一体化させる、熱ロール工程と、を備え、
前記一対の熱ロールの内少なくとも一方が、周面に規則的間隔で配列するエンボス凸部を有し、
前記熱ロール工程において、前記フィルム面と前記不織布面とを、前記エンボス凸部によって形成した複数の溶着接点を介して一体化させたことを特徴とする、
自動車用内装材の製造方法。 - 前記フィルム面が、ポリプロピレンフィルムからなることを特徴とする、
請求項1に記載の自動車用内装材の製造方法。 - 前記不織布面の坪量が、30g/m2以下であることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の自動車用内装材の製造方法。 - 前記フィルム面の厚さが、40μm以下であることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の自動車用内装材の製造方法。
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