以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
まず、図1および図2を参照して、本発明の実施形態に係るトンネル掘削機1の全体構成について説明する。図1は、トンネル掘削機1の全体構成を示す断面模式図である。なお、図1中の矢印Fはトンネル掘削機1の前方向(つまり、進行方向)を示し、矢印Bはトンネル掘削機1の後方向を示す。つまり、図1中の矢印Fは切羽側を向き、矢印Bは坑口側を向く。
トンネル掘削機1は、地盤を掘削可能な土圧式(泥土圧式を含む。)のシールド掘削機である。図1に示すように、トンネル掘削機1は、掘削機本体10を備える。掘削機本体10は、筒状(例えば、円筒状または矩形筒状等)である。掘削機本体10の軸方向は、トンネル掘削機1の前後方向と一致する。以下では、掘削機本体10の軸方向を単に軸方向とも呼び、掘削機本体10の径方向を単に径方向とも呼び、掘削機本体10の周方向を単に周方向とも呼ぶ。
掘削機本体10の前端には、カッタヘッド11が設けられる。カッタヘッド11は、略円盤状の回転体である。カッタヘッド11の中心部には、カッタ中心軸12の前端が嵌入されており、カッタヘッド11は、カッタ中心軸12を中心に回転可能に軸支されている。
カッタヘッド11は、外周リング11aと、内周リング11bと、カッタスポーク11cと、フィッシュテールカッタ11dと、カッタビット11eなどを有する。このうち、外周リング11aは、カッタヘッド11の外周部を形成しており、内周リング11bは、外周リング11aよりも径方向内側に配置されている。また、複数のカッタスポーク11cは、カッタヘッド11の前面において、カッタ中心軸12を中心として放射状に配置されている。カッタヘッド11の前面の中心部には、フィッシュテールカッタ11dが装着されている。さらに、カッタスポーク11cの前面には、多数のカッタビット11eが装着されている。なお、フィッシュテールカッタ11dおよびカッタビット11eは、着脱可能であってもよく、着脱可能でなくてもよい。
そして、カッタヘッド11には、上記外周リング11a、内周リング11bおよびカッタスポーク11cの相互の間に、複数の開口部が形成されている。当該開口部は、カッタヘッド11によって地盤(切羽)を掘削した際に発生する掘削土砂を、掘削機本体10内(後述するチャンバ17内)に取り込むための掘削土砂取込口として機能する。
掘削機本体10におけるカッタヘッド11よりも後方には、隔壁13が配置されている。隔壁13は、軸方向(トンネル延伸方向)に対して垂直に配置される板状(例えば、円板状)の壁体であり、隔壁13の外周縁は掘削機本体10の内周面に取り付けられる。カッタヘッド11と隔壁13は、軸方向(トンネル延伸方向)に所定間隔を空けて配置される。隔壁13の後方側には、トンネル掘削機1の各種設備が配置されており、隔壁13は、切羽で生じる掘削土砂から当該設備を隔離する。隔壁13の下部には、掘削土砂を排出するための開口部である排出口13aが形成されている。
隔壁13の中心部には、カッタ中心軸12が回転可能に支持されている。さらに、隔壁13には、環状の回転リング14が、カッタ中心軸12を中心として回転可能に支持されている。回転リング14の前部には、複数の連結ビーム15が周方向に所定の間隔で設けられている。複数の連結ビーム15は、カッタヘッド11と回転リング14を連結する。連結ビーム15の前端は、カッタヘッド11の内周リング11bとカッタスポーク11cとの接続部に連結されている。一方、回転リング14の後部には、リングギヤ14aが設けられている。なお、リングギヤ14aは、外歯式であってもよく、内歯式であってもよい。さらに、隔壁13の後方にはカッタ旋回用モータ16が設けられている。このカッタ旋回用モータ16の駆動ギヤ16aは、回転リング14のリングギヤ14aと噛み合っている。
カッタ旋回用モータ16を駆動させることにより、その駆動ギヤ16aの回転がリングギヤ14aから回転リング14および連結ビーム15に伝達される。これにより、カッタヘッド11を、カッタ中心軸12を中心として回転させることができる。この結果、回転するカッタヘッド11の前面を後述するシールドジャッキ21を利用して地盤(切羽)に押し付けて、地盤を掘削することができる。
カッタヘッド11と隔壁13との間には、チャンバ17が画成されている。チャンバ17は、カッタヘッド11の後面と、隔壁13の前面と、掘削機本体10の内周面とにより区画された空間(例えば、略円柱状の空間)である。カッタヘッド11による地盤の掘削に伴って発生する掘削土砂は、カッタヘッド11に貫通形成された上記開口部(掘削土砂取込口)を通じて、チャンバ17内に取り込まれる。チャンバ17は、掘削土砂を一時的に蓄えるための空間(室)として機能する。チャンバ17内に取り込まれた掘削土砂は、隔壁13の下部にある排出口13aを通じて、チャンバ17からスクリューコンベヤ18内に排出される。
スクリューコンベヤ18は、掘削機本体10内における隔壁13の後方側に設けられる。スクリューコンベヤ18は、掘削機本体10内において、後方側に向かうにつれて上方に傾斜して配置される。スクリューコンベヤ18の前端の開口部は、隔壁13の排出口13aに接続されている。これにより、スクリューコンベヤ18の内部空間は、隔壁13の排出口13aを通じてチャンバ17と連通する。スクリューコンベヤ18内には、螺旋状の羽根を備えたスクリュー状の回転体であるスクリュー羽根18aが設けられている。スクリュー羽根18aを回転駆動させることで、チャンバ17内に蓄えられた掘削土砂をスクリューコンベヤ18内に取り込んで、掘削機本体10の後方に向けて運搬し、排出することができる。
また、掘削機本体10の隔壁13よりも後方側には、エレクタ装置19が設けられる。エレクタ装置19は、覆工部材であるセグメント20を把持可能であり、把持したセグメント20をトンネルTの内壁面(坑壁)に沿って組み立てる。セグメント20は、掘削されたトンネルTの内壁面に沿った湾曲形状を有する環片である。エレクタ装置19を駆動させることにより、複数のセグメント20を周方向に沿って環状に組み立てることができる。これにより、トンネルTの内壁面が複数のセグメント20により覆工され、内壁面の崩落を防止できる。
ここで、図1に加えて図2を参照して、エレクタ装置19について、より詳細に説明する。図2は、エレクタ装置19を示す正面図である。具体的には、図2は、エレクタ装置19を後方から見た図である。図1および図2に示すように、エレクタ装置19は、リングフレーム191と、支持ローラ192と、吊りビーム193と、ガイドロッド194と、昇降ジャッキ195と、把持部196とを備える。
リングフレーム191は、掘削機本体10の内周面に沿って設けられる円環状の部材である。リングフレーム191は、掘削機本体10の周方向に延在する。リングフレーム191の中心軸は、掘削機本体10の中心軸と同軸上に配置される。リングフレーム191は、当該リングフレーム191の中心軸を中心に回動可能に複数の支持ローラ192によって支持されている。支持ローラ192は、掘削機本体10の内周面に掘削機本体10の中心軸と平行に取り付けられる。支持ローラ192は、図2に示すように、掘削機本体10の周方向に間隔を空けて複数配置される。図2に示すリングフレーム191の回動方向D3は、掘削機本体10の周方向と一致する。リングフレーム191は、図示しない駆動用モータ等のアクチュエータによって回動駆動される。
吊りビーム193は、リングフレーム191にガイドロッド194を介して取り付けられている。具体的には、リングフレーム191の後部には、後方に突出するブラケット191aが設けられる。ブラケット191aの先端には、径方向に昇降可能にガイドロッド194が取り付けられている。図2に示すように、リングフレーム191のうち径方向に離隔した2つの部分のそれぞれにガイドロッド194が設けられる。リングフレーム191において各ガイドロッド194が設置される周方向位置は、例えば、略180°ずれている。2つのガイドロッド194は、当該2つのガイドロッド194の離隔方向に直交する方向に延びており、当該方向に伸縮可能である。吊りビーム193は、2つのガイドロッド194の間に掛け渡されている。
また、図1に示すように、ブラケット191aのうち各ガイドロッド194の近傍には、昇降ジャッキ195が各ガイドロッド194の延在方向に沿って取り付けられている。昇降ジャッキ195の先端は、吊りビーム193に当接している。吊りビーム193は、昇降ジャッキ195の伸縮に伴って昇降ジャッキ195の伸縮方向に移動する。吊りビーム193の移動方向D1(つまり、昇降ジャッキ195の伸縮方向)は、掘削機本体10の径方向と一致する。
吊りビーム193は、2つのガイドロッド194の間において、リングフレーム191に沿って周方向に延びている。吊りビーム193の延在方向における中央側には、支持フレーム193aが設けられる。支持フレーム193aは、吊りビーム193における他の部分に対して掘削機本体10の軸方向後側に突出している。支持フレーム193aは、吊りビーム193の移動方向D1に略直交する平面上に延在する。支持フレーム193aの径方向外側には、把持部196が取り付けられている。把持部196は、掘削機本体10の軸方向に移動可能に支持フレーム193aによって支持されている。図1に示す把持部196の移動方向D2は、掘削機本体10の軸方向と一致する。把持部196の移動方向D2の移動は、図示しないジャッキ等のアクチュエータによって駆動される。
把持部196は、セグメント20を把持可能である。なお、把持部196によりセグメント20が把持される仕組みの詳細については、後述する。エレクタ装置19は、セグメント20を把持部196に把持させた状態で把持部196を移動させることによって、セグメント20を所望の位置に移動させることができる。具体的には、吊りビーム193を移動方向D1に移動させることによって、把持部196および把持されたセグメント20を掘削機本体10の径方向に移動させることができる。また、把持部196を移動方向D2に移動させることによって、把持部196および把持されたセグメント20を掘削機本体10の軸方向に移動させることができる。また、リングフレーム191を回動方向D3に回動させることによって、把持部196および把持されたセグメント20を掘削機本体10の周方向に移動させることができる。なお、把持部196を各方向に移動させるための機構は、図1および図2を参照して説明した例に特に限定されず、適宜設計され得る。
以下では、セグメント20のうち、トンネルTの内壁面に既に覆工されている既設のセグメント20を既設セグメント20aと呼ぶ。また、セグメント20のうち、トンネルTの内壁面に覆工される前のものであり、エレクタ装置19により把持される対象となるセグメント20を把持対象セグメント20bと呼ぶ。
図1および図2に示すように、既設セグメント20aは周方向に沿って環状に組み立てられている。把持対象セグメント20bは、トンネルTの坑口側から切羽側に搬送されて、複数の既設セグメント20aのうちの下側かつ切羽側に位置する既設セグメント20a上に載置される。掘削機本体10内には、図示しないセグメント搬送装置が設けられており、セグメント搬送装置によって把持対象セグメント20bが搬送される。このように搬送された把持対象セグメント20bが、エレクタ装置19により把持され、既設セグメント20aに対して取り付けられることによって、セグメント20が組み立てられる。
図1に示すように、掘削機本体10内には、複数のシールドジャッキ21が、周方向に相互に間隔を空けて設けられている。各シールドジャッキ21は、掘削機本体10の内周面に沿って、掘削機本体10の軸方向に延びるように設けられる。シールドジャッキ21は、例えば、油圧ジャッキであるが、トンネル掘削機1の推力を発生可能であれば、他の種類のジャッキ、アクチュエータ等であってもよい。シールドジャッキ21の後端には、伸縮可能な駆動ロッド21aが設けられている。駆動ロッド21aの先端は、既設セグメント20aの前端面と対向している。シールドジャッキ21の駆動ロッド21aを、後方に向けて伸長し、既設セグメント20aを押圧することにより、掘削機本体10に推進反力(つまり、推力)を付与することができる。すなわち、シールドジャッキ21が既設セグメント20aを押圧したときに発生する推力によって、掘削機本体10は前進可能である。
掘削機本体10の後端部内周と既設セグメント20aの外周との間には、テールブラシ22が設けられる。テールブラシ22は、掘削機本体10の後端部内周に取り付けられており、既設セグメント20aの外周と摺接する。テールブラシ22は、掘削機本体10内への水、土砂または裏込材等の侵入を防止するために設けられている。
トンネル掘削機1には、制御装置100が設けられている。制御装置100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)、および、CPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等を含む。
制御装置100は、エレクタ装置19の動作を制御する装置である。セグメント20の組立作業では、作業者は、例えば、制御装置100と接続される入力装置を使用することによって、エレクタ装置19を操作する。
セグメント20の組立作業では、一般に、作業者は、エレクタ装置19を目視しながら、エレクタ装置19を操作する。なお、以下では、作業者は、後述するカメラ23を介して間接的にエレクタ装置19を目視しながら、エレクタ装置19を操作する。ただし、作業者は、直接的にエレクタ装置19を目視しながら、エレクタ装置19を操作してもよい。
ここで、把持部196により把持されているセグメント(つまり、後述する把持済セグメント20c)を既設セグメント20aに組み付ける組み付け時において、作業者は、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの位置関係(具体的には、両セグメント間の段差の有無)を目視により認識する必要がある。これにあたり、トンネル壁面全周への様々な姿勢での組み立てにおいて目視で直接段差を確認するのに困難な場合がある。また、既設セグメント20aと把持済セグメント20cとは同一のものなので、作業環境(例えば、照明の状態など)によっては、段差を目視で視認するのが困難な場合がある。このような事情に起因して、エレクタ装置19の操作の難易度が高くなり、作業者の負担および作業時間が増大しやすい。そこで、本実施形態では、エレクタ装置19の操作性を向上させるための工夫が施されている。
図3は、エレクタ装置19の把持部196の周辺を示す拡大図である。図3に示すように、エレクタ装置19は、操作性を向上させるための工夫として、カメラ23と、第1レーザー照射部24と、第2レーザー照射部25と、画像処理装置200とを備える。
なお、以下では、図3中の右側、および、後述する図5および図6中の右側を単に右側と呼び、図3中の左側、および、後述する図5および図6中の左側を単に左側と呼ぶ。
カメラ23は、エレクタ装置19の把持部196または吊りビーム193に取り付けられ、セグメント20(具体的には、セグメント20の内周部)を撮像する。図3の例では、カメラ23として、カメラ23aと、カメラ23bとが、エレクタ装置19に設けられている。カメラ23aは、吊りビーム193のうち支持フレーム193aよりも右側の部分に取り付けられている。カメラ23bは、吊りビーム193のうち支持フレーム193aよりも左側の部分に取り付けられている。
ただし、カメラ23の数および配置は、図3の例に限定されない。例えば、カメラ23の数は1つであってもよく、3つ以上であってもよい。なお、カメラ23の数が複数である場合、カメラ23の数が1つである場合と比べて、撮像範囲をより広くしたり、離れた複数の場所を撮像したり、エレクタ装置19の周囲の状況確認をより確実に行うことができる。また、例えば、カメラ23は、把持部196に取り付けられていてもよい。
画像処理装置200は、演算処理装置であるCPU、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM、および、CPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM等を含む。画像処理装置200は、カメラ23により取得される画像データを画像処理する。
画像処理装置200は、例えば、複数のカメラ23により取得される画像データを合成することによって、エレクタ装置19の把持部196の周辺が映る合成画像を生成する。画像処理装置200により得られる合成画像は、例えば、作業者が利用する液晶ディスプレイ等の表示装置に表示される。画像処理装置200は、複数のカメラ23により取得される画像データを公知のアルゴリズムを用いて繋ぎ合わせることによって、1つのカメラ23を用いて得られる画像と比較して広い範囲を映す合成画像を得ることができる。得られる合成画像は、セグメント20を把持部196側から俯瞰した画像(アラウンドビュー)となる。
ただし、画像処理装置200は、合成画像を生成しなくてもよい。例えば、画像処理装置200は、各カメラ23の撮像範囲を映す画像をそれぞれ別々に生成してもよい。
第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25は、エレクタ装置19の把持部196または吊りビーム193に取り付けられ、セグメント20(具体的には、セグメント20の内周面)に対してレーザーを照射する。第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25は、互いに異なる位置に配置される。
図3の例では、第1レーザー照射部24として、第1レーザー照射部24aと、第1レーザー照射部24bとが、エレクタ装置19に設けられている。第1レーザー照射部24aは、把持部196の上部の右端部に取り付けられている。第1レーザー照射部24bは、把持部196の上部の左端部に取り付けられている。また、第2レーザー照射部25として、第2レーザー照射部25aと、第2レーザー照射部25bとが、エレクタ装置19に設けられている。第2レーザー照射部25aは、把持部196の下部の右端部に取り付けられている。第2レーザー照射部25bは、把持部196の下部の左端部に取り付けられている。
図3の例では、第1レーザー照射部24aおよび第2レーザー照射部25aが1つのペアをなす。また、第1レーザー照射部24bおよび第2レーザー照射部25bが別の1つのペアをなす。このように、図3の例では、第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25のペアが2つ存在する。
ただし、第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25のペア数は、図3の例に限定されない。例えば、上記ペア数は1つであってもよく、3つ以上であってもよい。また、第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25の配置は、図3の例に限定されない。例えば、第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25の一方が把持部196に取り付けられており、他方が吊りビーム193に取り付けられていてもよく、第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25の双方が吊りビーム193に取り付けられていてもよい。
本実施形態では、主に、第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25によるレーザーの照射によって、エレクタ装置19の操作性の向上が実現される。なお、第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25によるレーザーの照射の詳細については、後述する。
以下、第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25によるレーザーの照射の詳細の説明に先立って、図3~図5を参照して、把持部196によりセグメント20が把持される仕組みの詳細について説明する。
図3に示すように、エレクタ装置19の把持部196には、セグメント20の内周面に形成されている把持穴26と係合するツイストロック196aが設けられる。図4は、セグメント20の把持穴26および把持部196のツイストロック196aを示す平面図である。具体的には、図4は、セグメント20の把持穴26を径方向内側から見た図に対してツイストロック196aを重ね合わせた図である。
図3および図4に示すように、ツイストロック196aは、把持部196の径方向外側(図3中の下側)に設けられる。ツイストロック196aは、支持棒196aaと、係止突起196abとを有する。支持棒196aaは、把持部196から径方向外側(図3中の下側)に突出する。係止突起196abは、支持棒196aaの先端に設けられ、支持棒196aaに交差(例えば、直交)する方向に延在する。係止突起196abは、支持棒196aaの先端から両側に突出する。ツイストロック196aは、略T字形状を有する。支持棒196aaの横断面形状は、例えば、円形状である。係止突起196abの横断面形状は、例えば、矩形状である。ただし、支持棒196aaおよび係止突起196abの横断面形状は、上記の例と異なっていてもよい。
ここで、把持部196の他の部分に対するツイストロック196aの姿勢は、変更可能となっていてもよい。例えば、ツイストロック196aの姿勢は、ロール方向(つまり、トンネル掘削機1の軸方向(つまり、前後方向)の軸を中心に回動する方向)、ピッチ方向(つまり、トンネル掘削機1の周方向(図3では左右方向)の軸を中心に回動する方向)、および、ヨー方向(つまり、トンネル掘削機1の径方向(図3では上下方向)の軸を中心に回動する方向)の3方向に変更可能であってもよい。なお、この場合、上記3方向の姿勢の変更は、球面軸受および各種アクチュエータを用いることによって実現され得る。
また、例えば、ツイストロック196aの姿勢は、上記3方向のうちの一部の方向に変更可能であってもよい。なお、ツイストロック196aの姿勢を各方向に変更するための機構は、特に限定されず、適宜設計され得る。なお、ここにおいて、ツイストロック196aの姿勢は、把持対象セグメント20bの把持穴26に対するツイストロック196aの姿勢調整として機能するが、ツイストロック196aの係合により把持対象セグメント20bを把持した後は、ツイストロック196aの姿勢調整は、そのまま把持済みのセグメント20(つまり、後述する把持済セグメント20c)の姿勢調整として機能する。
また、把持部196自体を径方向(図3中の矢印D1の方向)に移動させることによってツイストロック196aを径方向D1に移動させることができるが、本実施形態においては、把持部196の他の部分に対してツイストロック196aを径方向D1に伸縮させることによっても、ツイストロック196aを径方向D1に移動させることができる。これは、把持対象セグメント20bの把持において、把持部196全体を動かすよりもツイストロック196aだけを動かした方が装置の動きがコンパクトになる点でメリットがあるからである。ツイストロック196aの姿勢の変更および伸縮は、図示しないジャッキ等のアクチュエータによって実現される。
セグメント20の把持穴26は、セグメント20の内周面(例えば、内周面の中央側)に形成されている。把持穴26の径方向に直交する断面(以下、単に断面と呼ぶ)の形状は、矩形状を有する。把持穴26のうちセグメント20の内周面側の部分26aの断面は、把持穴26のうちセグメント20の内部側の部分26bの断面と比べて小さくなっている。図4に示すように、把持穴26の内周面側の部分26aの周方向の幅d1(図3、図4中の左右方向の幅)は、把持穴26の内部側の部分26bの周方向の幅d2より短い。
図4に示すように、径方向内側から見た場合、把持穴26の内周面側の部分26aの周方向の幅d1(図4中の左右方向の幅)は、ツイストロック196aの係止突起196abの短辺(図4中の左右方向の辺)の長さd4より長い。また、把持穴26の内周面側の部分26aの軸方向の幅d3(図4中の上下方向の幅)は、ツイストロック196aの係止突起196abの長辺(図4中の上下方向の辺)の長さd5より長い。
ここで、把持穴26の内周面側の部分26aの周方向の幅d1は、ツイストロック196aの係止突起196abの長辺の長さd5より短い。ゆえに、図4のように、係止突起196abが軸方向に延びる姿勢を取る場合、ツイストロック196aを径方向外側に移動させることによって、係止突起196abを把持穴26内に進入させることができる。
図4に示すように、径方向内側から見た場合、把持穴26の内部側の部分26bの軸方向の幅d3は、把持穴26の内周面側の部分26aの軸方向の幅d3と一致している。ゆえに、把持穴26の内部側の部分26bの軸方向の幅d3は、ツイストロック196aの係止突起196abの長辺の長さd5より長い。ここで、把持穴26の内部側の部分26bの周方向の幅d2も、ツイストロック196aの係止突起196abの長辺の長さd5より長くなっている。
図4には、係止突起196abを把持穴26の内部側の部分26bまで進入させた状態で、ツイストロック196aをヨー方向に略90°回動させた場合の係止突起196abが二点鎖線によって示されている。このように、把持穴26の内部側の部分26bで係止突起196abを周方向に延びる姿勢にした場合、ツイストロック196aを径方向内側に引き上げると、係止突起196abが把持穴26と係合する。それにより、セグメント20をツイストロック196aにより把持して、移動させることができる。
図5は、エレクタ装置19が把持対象セグメント20bを把持している様子を示す図である。図5では、図4で二点鎖線によって示される状態と同様に、把持穴26の内部側の部分26bで係止突起196abが周方向に延びる姿勢を取っている。それにより、係止突起196abが把持穴26と係合し、把持対象セグメント20bがツイストロック196aにより把持されている。この状態で、把持部196を移動させることによって、セグメント20を所望の位置に移動させることができる。以下では、セグメント20のうち、エレクタ装置19の把持部196により把持されているセグメント20を把持済セグメント20cと呼ぶ。セグメント20の組立作業では、把持対象セグメント20bの把持、および、把持済セグメント20cの既設セグメント20aへの組み付けが順に繰り返される。
以下、図6~図11を参照して、第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25によるレーザーの照射の詳細について説明する。第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25によるレーザーの照射は、把持済セグメント20cを既設セグメント20aに組み付ける組み付け時に行われる。第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25の動作は、例えば、制御装置100によって制御される。
図6は、把持済セグメント20cを既設セグメント20aに組み付ける組み付け時におけるエレクタ装置19の様子を示す図である。図6の例では、把持済セグメント20cよりも右側に位置する既設セグメント20aに対して、当該把持済セグメント20cが組みつけられる。この際、図6に示すように、右側の第1レーザー照射部24a、および、右側の第2レーザー照射部25aは、既設セグメント20aと把持済セグメント20cとに跨るように、既設セグメント20aおよび把持済セグメント20cに対してレーザーを照射する。
把持済セグメント20cよりも左側に位置する既設セグメント20aに対して、当該把持済セグメント20cが組みつけられる際には、左側の第1レーザー照射部24b、および、左側の第2レーザー照射部25bから同様にレーザーが照射される。なお、後述するように、第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25は、把持済セグメント20cに対してレーザーを照射せず、既設セグメント20aのみに対してレーザーを照射してもよい。
第1レーザー照射部24から照射されるレーザーを第1レーザーL1と呼ぶ。第2レーザー照射部25から照射されるレーザーを第2レーザーL2と呼ぶ。第1レーザーL1の照射範囲と、第2レーザーL2の照射範囲とは、大凡一致する。本実施形態では、上述したように、エレクタ装置19に、カメラ23および画像処理装置200が設けられる。カメラ23は、既設セグメント20aおよび把持済セグメント20cを撮像し、画像処理装置200は、既設セグメント20aおよび把持済セグメント20cが映る画像を生成する。ただし、既設セグメント20aのみに対してレーザーが照射される場合を加味すると、カメラ23は、少なくとも既設セグメント20aを撮像し、画像処理装置200は、少なくとも既設セグメント20aが映る画像を生成すればよい。
具体的には、カメラ23は、セグメント20のうち、第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25によりレーザーが照射される部分を含む領域を撮像する。例えば、図6の例では、既設セグメント20aおよび把持済セグメント20cの内周部のうち、右側の第1レーザー照射部24a、および、右側の第2レーザー照射部25aからレーザーが照射されている部分(つまり、既設セグメント20aと把持済セグメント20cとに跨る部分)を含む領域が、右側のカメラ23aによって撮像される。当該領域は、既設セグメント20aの内周部と、把持済セグメント20cの内周部と、両セグメント間の継ぎ目を含む。そして、このような領域が映る画像が、画像処理装置200によって生成される。
作業者は、画像処理装置200によって生成される画像(つまり、既設セグメント20aおよび把持済セグメント20cが映る画像)を見ながらエレクタ装置19を操作することによって、把持済セグメント20cを既設セグメント20aに組み付ける組み付け作業を行う。組み付け作業では、把持済セグメント20cの位置が既設セグメント20aを基準とした適切な組付け位置になるように、把持済セグメント20cの位置調整を行う。なお、組み付け作業では、把持済セグメント20cの位置調整に加えて、把持済セグメント20cの姿勢の調整も行われる。
ここで、適切な組付け位置は、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差(具体的には、両セグメント20の内周面どうしの径方向D1の距離)がほぼ無くなるような位置である必要がある。ゆえに、組み付け作業において、作業者は、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差が無くなるように、把持済セグメント20cの位置を径方向D1に調整する。なお、把持済セグメント20cの姿勢に起因して段差が生じている場合(例えば、把持済セグメント20cが既設セグメント20aに対してピッチ方向に傾いている場合)には、作業者は、把持済セグメント20cの姿勢の調整も行う。
図7は、位置調整の完了前における既設セグメント20aおよび把持済セグメント20cが映る画像im1の一例を示す図である。画像im1は、右側のカメラ23aにより取得される画像データを画像処理することによって画像処理装置200により生成される画像の例である。
図7では、第1レーザー照射部24から照射される第1レーザーL1により表される第1図形S1が実線で示されている。また、第2レーザー照射部25から照射される第2レーザーL2により表される第2図形S2が破線で示されている。このように、画像im1には、第1図形S1および第2図形S2が映っている。
本実施形態では、第1図形S1の形状と、第2図形S2の形状とは、互いに同一である。具体的には、第1図形S1および第2図形S2は、二次元的な広がりを持つ二次元形状を有する。より具体的には、第1図形S1および第2図形S2は、グリッド形状(つまり、格子形状)を有する。この場合、第1レーザー照射部24、第2レーザー照射部25はそれぞれ、第1図形S1、第2図形S2を表すレーザーグリッドを照射することになる。また、第1レーザーL1の色と、第2レーザーL2の色とは、互いに異なる。
第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25は、対象物に対して光を照射することによって、意図した形状および色を有する図形を対象物に映す装置であればよい。例えば、第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25は、レーザー発振器を有する装置である。ただし、第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25は、レーザー発振器を有する装置以外であってもよく、例えば、光源から発せられる光をフィルタに通すことによって、意図した形状および色を有する図形を対象物に映す装置であってもよい。
上述したように、第1レーザーL1の照射範囲は、既設セグメント20aと把持済セグメント20cとに跨る。また、第2レーザーL2の照射範囲も、同様に、既設セグメント20aと把持済セグメント20cとに跨る。よって、図7に示すように、第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25は、第1図形S1および第2図形S2が既設セグメント20aと把持済セグメント20cとに跨って投影されるように、第1レーザーL1および第2レーザーL2をそれぞれ既設セグメント20aおよび把持済セグメント20cに対して照射する。
具体的には、第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25は、既設セグメント20aと把持済セグメント20cとに跨って投影される第1図形S1および第2図形S2が把持済セグメント20cにおいて互いに重なり合うように、第1レーザーL1および第2レーザーL2をそれぞれ既設セグメント20aおよび把持済セグメント20cに対して照射する。
上述したように、第1レーザーL1の色と、第2レーザーL2の色とは、互いに異なっているので、第1図形S1および第2図形S2が互いに重なり合う箇所では、第1レーザーL1の色と第2レーザーL2の色とが合成され、第1レーザーL1の色とも第2レーザーL2の色とも異なる色が表示される。例えば、第1レーザーL1の色が赤色で、第2レーザーL2の色が緑色である場合、第1図形S1および第2図形S2が互いに重なり合う箇所の色は黄色となる。よって、作業者は、第1レーザーL1および第2レーザーL2が照射されている部分の色を見ることによって、第1図形S1および第2図形S2が互いに重なっているか否かを容易に認識できる。
図7の例では、把持済セグメント20cの位置調整が完了していないので、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間に段差が生じている。上述したように、第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25は、互いに異なる位置に配置される。ゆえに、第1レーザーL1および第2レーザーL2は、互いに異なる方向から照射されるので、位置調整の完了前には、第1図形S1および第2図形S2は、把持済セグメント20cにおいて互いに重なり合うものの、既設セグメント20aにおいて互いに重ならないか、または部分的に重なる。
図8は、位置調整の完了後における既設セグメント20aおよび把持済セグメント20cが映る画像im1の一例を示す図である。図8の例では、把持済セグメント20cの位置調整が完了しているので、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差はほぼ無くなっている。ゆえに、径方向D1において、把持済セグメント20cの内周面の位置と、既設セグメント20aの内周面の位置とはほぼ一致し、面一となっている。よって、図8に示すように、位置調整の完了後には、第1図形S1および第2図形S2は、把持済セグメント20cのみならず、既設セグメント20aにおいても互いに重なり合う。
以上説明したように、本実施形態に係るエレクタ装置19は、互いに異なる位置に配置される第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25を備える。そして、把持済セグメント20cを既設セグメント20aに組み付ける組み付け時において、第1レーザー照射部24は、第1図形S1を表す第1レーザーL1を少なくとも既設セグメント20aに対して照射し、第2レーザー照射部25は、第2図形S2を表す第2レーザーL2を少なくとも既設セグメント20aに対して照射する。それにより、作業者は、既設セグメント20aにおける第1図形S1および第2図形S2の位置関係(上記の例では、第1図形S1および第2図形S2が既設セグメント20aにおいて互いに重なり合っているか否か)を判断材料にして、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差の有無を容易に認識することができる。ゆえに、エレクタ装置19の操作性を向上させることができる。よって、エレクタ装置19の操作の難易度が低くなり、作業者の負担および作業時間を軽減できる。
なお、上記では、第1レーザーL1および第2レーザーL2が既設セグメント20aと把持済セグメント20cとに跨って照射される例を説明した。ただし、第1レーザーL1および第2レーザーL2は、把持済セグメント20cに対しては照射されず、既設セグメント20aのみに対して照射されてもよい。その場合においても、既設セグメント20aにおける第1図形S1および第2図形S2の位置関係を判断材料にして、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差の有無を容易に認識することができる。
また、上記では、把持済セグメント20cに対して回動方向D3に隣り合う既設セグメント20a、および、当該把持済セグメント20cに対してレーザーが照射される例を説明した。この例では、把持済セグメント20cに対して回動方向D3に隣り合う既設セグメント20aに当該把持済セグメント20cを組み付ける際の操作性を向上させることができる。ただし、把持済セグメント20cに対して軸方向D2に隣り合う既設セグメント20a、および、当該把持済セグメント20cに対してレーザーが照射されてもよい。
図9は、位置調整の完了後における既設セグメント20aおよび把持済セグメント20cが映る画像im1の他の例を示す図である。図9の例では、第1図形S1および第2図形S2が把持済セグメント20cと当該把持済セグメント20cに対して軸方向D2に隣り合う既設セグメント20aとに跨って投影されるように、第1レーザーL1および第2レーザーL2が照射される。ゆえに、図9に示すように、位置調整の完了後において、第1図形S1および第2図形S2は、把持済セグメント20cのみならず、当該把持済セグメント20cに対して軸方向D2に隣り合う既設セグメント20aにおいても互いに重なり合う。この場合には、把持済セグメント20cに対して軸方向D2に隣り合う既設セグメント20aに当該把持済セグメント20cを組み付ける際の操作性を向上させることができる。
また、把持済セグメント20cに対して回動方向D3に隣り合う既設セグメント20aと当該把持済セグメント20cに対して軸方向D2に隣り合う既設セグメント20aの交差部(角部)、および、当該把持済セグメント20cに跨ってレーザーが照射されるようにして、当該把持済セグメント20cと、両方向に隣り合う既設セグメント20a、20aとの段差の有無を、同時に、容易に認識できるようにすることでも、当該把持済セグメント20cを組み付ける際の操作性を向上させることができる。例えば、以上に記述したような構成を組み合わせて、第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25のペア数を複数とした場合、レーザーの照射箇所が増えることで、より多くの状況において、把持済セグメント20cの位置調整状況が把握できるようになるため、エレクタ装置19の操作性を向上させることができる。
特に、本実施形態では、第1図形S1の形状と、第2図形S2の形状とは、互いに同一である。それにより、第1図形S1および第2図形S2が既設セグメント20aにおいて互いに重なり合うか否かを判断材料にして、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差の有無を、より正確かつ容易に認識することができる。ゆえに、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差の有無をより感覚的に認識することができる。よって、エレクタ装置19の操作性を効果的に向上させることができる。
ただし、第1図形S1の形状と、第2図形S2の形状とは、互いに異なっていてもよい。以下、図10を参照して、このような例を説明する。
図10は、第1の変形例に係る位置調整の完了後における既設セグメント20aおよび把持済セグメント20cが映る画像im1の一例を示す図である。図10に示す第1の変形例では、第1図形S1は円形状を有する。一方、第2図形S2は矩形状を有する。また、第1レーザーL1および第2レーザーL2は、把持済セグメント20cに対しては照射されず、既設セグメント20aのみに対して照射される。ゆえに、第1図形S1および第2図形S2は、既設セグメント20aのみに映る。
図10の例では、把持済セグメント20cの位置調整が完了しており、径方向D1において、把持済セグメント20cの内周面の位置と、既設セグメント20aの内周面の位置とはほぼ一致している。この状態において、円形状の第1図形S1の中心点と、矩形状の第2図形S2の中心点とが一致し、円形状の第1図形S1が、矩形状の第2図形S2に内接している。つまり、図10に示す第1の変形例では、作業者は、円形状の第1図形S1が、矩形状の第2図形S2内に、位置のずれや形状のゆがみや形状の大きさの違いがなく収まっている(例えば、矩形状の第2図形S2に内接している)ことをもって、把持済セグメント20cの位置調整が完了したと判断できる。
なお、第1図形S1の形状と、第2図形S2の形状とが互いに異なる場合において、第1図形S1の形状と第2図形S2の形状の組み合わせは、図10の例に限定されない。
特に、本実施形態では、第1レーザー照射部24により照射される第1レーザーL1の色と、第2レーザー照射部25により照射される第2レーザーL2の色とは、互いに異なる。それにより、第1図形S1および第2図形S2が互いに重なっているか否かを、色を見ることによって容易に認識できる。よって、第1図形S1および第2図形S2が既設セグメント20aにおいて互いに重なり合うか否かを判断材料にして、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差の有無を認識することがより容易になる。ゆえに、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差の有無をさらに感覚的に認識することができる。よって、エレクタ装置19の操作性をより効果的に向上させることができる。
例えば、第1図形S1の形状と、第2図形S2の形状が互いに同一である図7から図9の例では、図形全体が重なり合うか否かを色で判断することができ、また、第1図形S1の形状と、第2図形S2の形状が互いに異なる図10のような例においても、両図形の一致点(円形と矩形の内接点)が重なり合うか否かを色で判断することができるため、第1図形S1の形状と、第2図形S2の形状は、互いに同一の形状であっても互いに異なる形状であってもよい。
特に、本実施形態では、第1図形S1および第2図形S2は、二次元形状を有する。ここで、第1図形S1および第2図形S2は、二次元的な広がりを持たない形状(例えば、直線形状などの一次元的な形状)であってもよい。しかしながら、第1図形S1および第2図形S2が直線形状である場合、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差が存在したとしても、把持済セグメント20cの姿勢が特定の姿勢を取る状況において、第1図形S1および第2図形S2が既設セグメント20aにおいて互いに重なり合ってしまうことがあるため、段差がないと誤判定してしまう可能性がある。また、第1図形S1および第2図形S2が二次元的な広がりを持たない場合、前述のような図形の意図しない重なり合いの発生に加えて、図形のゆがみも直線形状の曲がりなど二次元的な形状と比べて限られることで、把持セグメント20cの姿勢が正しいかどうかを正確に判定できない可能性がある。ゆえに、第1図形S1および第2図形S2の形状として二次元形状を採用することによって、広がりを持った形状に対して重なり合いを確認することで、図形に部分的な意図しない重なり合いが発生していても、図形全体の重なり合いをみることで誤判定がないようにすることができ、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差の有無をより正確に把握することができる。さらに、第1図形S1および第2図形S2として二次元形状を採用することによって、段差の有無だけでなく、二次元形状の図形のゆがみ具合などによって、把持セグメント20cの姿勢が正しいかどうか(つまり、既設セグメント20aに対して傾いた姿勢でないか)を正確に判定できる。なお、図7から図9では、第1図形S1および第2図形S2は、互いに同一の二次元形状を有する例として説明したが、図10の例のように第1図形S1および第2図形S2は、互いに異なる二次元形状を有してもよい。
特に、本実施形態では、第1図形S1および第2図形S2は、グリッド形状を有する。グリッド形状は、互いに交差する複数の線分を有する。ゆえに、第1図形S1および第2図形S2の形状としてグリッド形状を採用することによって、グリッド形状ではない簡単な形状(例えば互いに交差する複数の線分のない外枠だけの形状)が採用される場合と比較して、互いに交差する複数の線分があることで、図形の外枠だけでなく内側部分を含めた図形全体について万遍なく重なり合っているかどうかを把握できるため、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差の有無をより感覚的に認識しやすくすることができる。さらに、第1図形S1および第2図形S2としてグリッド形状を採用することによって、図形のゆがみについても図形全体について万遍なく確認できるため、段差の有無だけでなく、把持セグメント20cの姿勢が正しいかどうか(つまり、既設セグメント20aに対して傾いた姿勢でないか)をより正確に判定できる。
特に、本実施形態では、第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25は、第1図形S1および第2図形S2が既設セグメント20aと把持済セグメント20cとに跨って投影されるように、第1レーザーL1および第2レーザーL2をそれぞれ既設セグメント20aおよび把持済セグメント20cに対して照射する。それにより、作業者は、既設セグメント20aにおける第1図形S1および第2図形S2の位置関係が、把持済セグメント20cにおける第1図形S1および第2図形S2の位置関係と一致したか否かを判断材料にして、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差の有無を認識することができる。ゆえに、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差の有無をより感覚的に認識しやすくすることができる。さらに、作業者は、把持セグメント20cの内周面上で2つの図形が重なり合った状態と、既設セグメント20aの内周面上で2つの図形がずれた状態とを見比べながら、把持セグメント20cの位置を調整でき、把持セグメント20cの内周面上と同様に、既設セグメント20aの内周面上でも2つの図形が重なり合う状態となったことをもって、両セグメントの位置関係が正しい位置関係になっていると容易に認識できる。
なお、図10のような、第1図形S1の形状と、第2図形S2の形状とが互いに異なる場合においても、既設セグメント20aと把持済セグメント20cとに跨って投影されるように、第1レーザーL1および第2レーザーL2をそれぞれ既設セグメント20aおよび把持済セグメント20cに対して照射することにより、把持済セグメント20c上では2つの図形は内接状態となり、既設セグメント20a上で内接になるかどうかによって、両セグメントの位置関係が正しい位置関係になっているかを確認できる。
特に、本実施形態では、第1レーザー照射部24および第2レーザー照射部25は、既設セグメント20aと把持済セグメント20cとに跨って投影される第1図形S1および第2図形S2が把持済セグメント20cにおいて互いに重なり合うように、第1レーザーL1および第2レーザーL2をそれぞれ既設セグメント20aおよび把持済セグメント20cに対して照射する。それにより、第1図形S1および第2図形S2が既設セグメント20aにおいて互いに重なり合うか否かを判断材料にして、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差の有無を認識することが適切に実現される。ゆえに、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差の有無を感覚的に認識することが適切に実現される。
特に、本実施形態では、組み付け時において、カメラ23は、少なくとも既設セグメント20a(上記の例では、既設セグメント20aおよび把持済セグメント20c)を撮像し、画像処理装置200は、少なくとも既設セグメント20a(上記の例では、既設セグメント20aおよび把持済セグメント20c)が映る画像im1を生成し、画像im1には、第1図形S1および第2図形S2が映っている。それにより、作業者は、画像処理装置200によって生成される画像im1を見ながら組み付け作業を行うことができる。ゆえに、第1図形S1および第2図形S2を直接的に目視することが困難な場合においても、第1図形S1および第2図形S2を判断材料にして、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差の有無を認識することができる。
ここで、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差の有無をより認識しやすくする観点では、画像処理装置200は、既設セグメント20aと把持済セグメント20cとの位置関係を示す位置関係オブジェクトを画像im1に重畳してもよい。以下、図11を参照して、このような例を説明する。
図11は、第2の変形例に係る位置調整の完了前における既設セグメント20aおよび把持済セグメント20cが映る画像im1の一例を示す図である。図11に示す第2の変形例では、画像im1に位置関係オブジェクトoj1が重畳されている。位置関係オブジェクトoj1は、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差の長さを示す文字である。画像処理装置200は、例えば、第1図形S1と第2図形S2との位置関係に基づいて、位置関係オブジェクトoj1を生成する。それにより、位置関係オブジェクトoj1を精度良く生成することができる。具体的には、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差の長さを、位置関係オブジェクトoj1によって精度良く表すことができる。そして、作業者は、位置関係オブジェクトoj1を判断材料として把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差の有無をより認識しやすくすることができる。
なお、位置関係オブジェクトoj1の画像im1上での表示位置は、図11の例に限定されない。また、位置関係オブジェクトoj1の表示内容は、図11の例に限定されない。例えば、位置関係オブジェクトoj1は、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間の段差の長さに加えて、又は、替えて、既設セグメント20aを基準とする把持済セグメント20cの姿勢に関する情報(例えば、把持済セグメント20cと既設セグメント20aとの間での姿勢のずれ量)を示してもよい。また、例えば、位置関係オブジェクトoj1は、把持済セグメント20cと既設セグメント20aの隙間(例えば、回動方向D3の隙間や軸方向D2の隙間)を示してもよい。
なお、以上では、図7から図11を画像の一例として説明したが、図11に示した位置関係オブジェクトoj1以外の、既設セグメント20aや把持済セグメント20c、および、当該セグメントに照射された第1レーザーL1および第2レーザーL2の状態は、実際の状態を示すものであり、当然、目視でも同様のものが確認できるので、これを目視しながら操作してもよい。
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
例えば、上記では、土圧式(泥土圧式を含む。)のトンネル掘削機1を説明したが、本発明に係るトンネル掘削機は、泥水式であってもよい。
また、例えば、上記では、図面を参照して、トンネル掘削機1の各構成要素を説明したが、図面における各構成要素の寸法および位置関係はあくまでも例示に過ぎないので、トンネル掘削機1の各構成要素の寸法および位置関係は図面に示す例に限定されない。また、図面に例示されたトンネル掘削機1に対して構成要素が適宜追加、削除または変更されてもよい。例えば、第1レーザー照射部24と第2レーザー照射部25との位置関係が適切になり、第1レーザーL1と第2レーザーL2との重なり具合が、把持済セグメント20c上で、また、位置調整の完了時の既設セグメント20aの上で、適切になるようにするために、各レーザー照射部の位置や姿勢を調整する機構が設けられてもよい。
また、例えば、上記では、図面を参照して、エレクタ装置19の各構成要素を説明したが、図面における各構成要素の寸法および位置関係はあくまでも例示に過ぎないので、エレクタ装置19の各構成要素の寸法および位置関係は図面に示す例に限定されない。また、図面に例示されたエレクタ装置19に対して構成要素が適宜追加、削除または変更されてもよい。