JP7435922B1 - 樹脂着色用顔料組成物、及び成形品 - Google Patents

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Abstract

本発明が解決しようとする課題は、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はナイロン樹脂着色用として、射出成型時における高温(例えば260-300℃)においても退色および成型前後での色相変化が生じにくい、フタロシアニン顔料を含む顔料組成物を提供することである。具体的には、本発明の樹脂着色用顔料組成物は、無金属または金属フタロシアニン顔料と遷移金属塩を含む樹脂着色用顔料組成物であって、前記樹脂がポリエチレンテレフタレート又はナイロンである。

Description

本発明は、ポリエチレンテレフタレート又はナイロン樹脂着色用顔料組成物、これを用いて成形したポリエチレンテレフタレート又はナイロン成形品に関する。
プラスチック(特にエンジニアプラスチック)着色用の顔料市場では、射出成型時の260~300℃といった高温に耐えることができる高耐熱性かつ高安定性を有する顔料が求められている。現状、このような顔料としてはフタロシアニン顔料やキナクリドン顔料などが使用されている。なかでもプラスチック着色用フタロシアニン顔料としては、下記特許文献1-3が挙げられる。
特許文献1-3には、金属フタロシアニン顔料における中心元素として、銅、鉄、亜鉛、コバルト、ニッケル、アルミニウム、チタン、マンガンが挙げられ、着色する樹脂として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン、ポリアミドが挙げられている。また、共に用いるものとして金属塩、遷移金属錯体などの記載がある。
特開2004-131612号公報 特開平9-111138号公報 特開2007-249160号公報
上記特許文献1-3には、ポリエステルおよびポリアミド系樹脂着色用途に使用した場合の耐熱性に関する記載はない。本発明者らは、検討の結果、これらの特許文献1-3に記載の金属フタロシアニン顔料および着色する樹脂のうち、ポリプロピレンおよびポリエチレンで使用可能な無金属または金属フタロシアニン顔料でも、ポリエステルおよびポリアミド系樹脂着色用途で使用すると射出成型時の変色(色相変化)が大きいことが判明した(本願比較例1参照)。
ポリエステルおよびポリアミド系樹脂は、エンジニアプラスチックとして、繊維、自動車部品、電気・電子機器、各種成形品など広く使用されており、産業界において重要な樹脂である。本発明は、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はナイロン樹脂着色用として、射出成型時における高温(例えば260-300℃)においても退色および成型前後での色相変化が生じにくい、フタロシアニン顔料を含む顔料組成物を提供することである。
本発明者らは、検討の結果、成型時の色相変化は、非共有電子対を持つポリエステルおよびポリアミド系樹脂に対して無金属または金属フタロシアニン顔料が安定化できないことが主原因であると推測した。そこで、本発明者らは、鋭意検討の結果、無金属または金属フタロシアニン顔料に遷移金属塩を添加した樹脂着色用顔料組成物が、とりわけ高温の熱履歴がかかる樹脂成形物の着色材として使用した場合、色変化つまり退色が極めて少ない樹脂成形物を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。これは遷移金属塩を添加することでフタロシアニン顔料のπ電子と遷移金属のd軌道とのインタラクションにより顔料が安定化し、遷移金属フタロシアニン顔料がPETおよびナイロン樹脂の非共有電子対に配位することで色相変化を著しく抑えられたためと考えられる。
即ち本発明は、
『項1. 無金属または金属フタロシアニン顔料と遷移金属塩を含む樹脂着色用顔料組成物であって、前記樹脂がポリエチレンテレフタレート又はナイロンである樹脂着色用顔料組成物。
項2. 前記フタロシアニン顔料の中心金属が、無金属、スズ、又はアルミニウムである項1に記載の樹脂着色用顔料組成物。
項3. 前記遷移金属塩における遷移金属が、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、又は銀である項1または2に記載の樹脂着色用顔料組成物。
項4.前記遷移金属塩の割合が、前記無金属または金属フタロシアニン顔料1molに対して、0.1~5.0molである項1~3のいずれか1項に記載の樹脂着色用顔料組成物。
項5. 項1~4のいずれか1項に記載の樹脂着色用顔料組成物を含むポリエチレンテレフタレート又はナイロン成形品。』
に関する。
本発明の樹脂着色用顔料組成物は、高い着色力を維持しつつ、PETやナイロン樹脂着色用に使用しても射出成型時の260~300℃といった高温での変色を抑制できる。そのため本発明の樹脂着色用顔料組成物は、PETおよびナイロン樹脂のマスターバッチ、ドライカラー、およびペーストカラー(リキッドマスターバッチ)に好適である。
以下、本発明を詳細に説明する。
<樹脂着色用顔料組成物>
本発明の樹脂着色用顔料組成物は、無金属または金属フタロシアニン顔料と遷移金属塩を含む樹脂着色用顔料組成物であって、前記樹脂がPET又はナイロンである。即ち本発明の顔料組成物は、PET又はナイロン着色用であり、無金属または金属フタロシアニン顔料と遷移金属塩を含む。
上記金属フタロシアニン顔料における中心金属は、例えば銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)が挙げられるが、なかでもスズ、アルミニウムが好ましい。また、中心金属のない無金属フタロシアニン顔料もスズやアルミニウムが中心金属である金属フタロシアニン顔料と同様に好ましい。フタロシアニン顔料の中心金属が、無金属、スズ、又はアルミニウムであると、高温での変色抑制という本発明の効果をより発揮することができる。本発明において無金属または金属フタロシアニン顔料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記無金属または金属フタロシアニン顔料は、製品として市販されている顔料をそのまま用いてもよく、公知慣用の方法で顔料を合成して用いてもよい。無金属フタロシアニン顔料としては、例えばピグメントブルー16(PB16;製品名「FASTOGEN BLUE 8120BS」DIC社製)、アルミフタロシアニン顔料としては、例えばピグメントブルー79(PB79;例えばJoint Venture Meilida Pigment Industry Co.,Ltd社製)、スズフタロシアニン顔料としては、例えばTin(II)phthalocyanineなどを使用することができる。
上記無金属または金属フタロシアニン顔料の一次粒子径は、例えば5~500nm、好ましくは10~400nm、より好ましくは20~300nmである。
本発明の樹脂着色用顔料組成物では、本発明の効果を損なわない範囲で、上記無金属または金属フタロシアニン顔料以外の顔料(スレン系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、フタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ顔料などの有機顔料、酸化チタン、カーボンブラックなどの無機顔料など)を含んでもよい。これらの無金属またはフタロシアニン顔料以外の顔料の割合は、顔料全量に対して、例えば10質量%以下、好ましくは5質量%以下が好ましい。
上記遷移金属塩における遷移金属としては、周期表で第3族元素から第11族元素の間に存在する元素であればよいが、なかでも鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、又は銀(Ag)が好ましい。また、塩としては、酢酸、塩酸、硝酸、又は硫酸が好ましい。具体的には遷移金属塩として、酢酸鉄、酢酸コバルト、酢酸ニッケル、酢酸銅、酢酸ルテニウム、酢酸ロジウム、酢酸パラジウム、酢酸銀、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化銅、塩化ルテニウム、塩化ロジウム、塩化パラジウム、塩化銀、硝酸鉄、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硝酸銅、硝酸ルテニウム、硝酸ロジウム、硝酸パラジウム、硝酸銀、硫酸鉄、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸銅、硫酸ルテニウム、硫酸ロジウム、硫酸パラジウム、硫酸銀が好ましい。本発明においてこれらの遷移金属塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの遷移金属塩は、市販されているものをそのまま用いることができる。
遷移金属塩の割合は、上記無金属または金属フタロシアニン顔料1molに対して、例えば0.1~5.0mol、好ましくは0.2~4.5mol、より好ましくは0.3~3.5molである。また、遷移金属塩の割合は、無金属または金属フタロシアニン顔料100質量部に対して、例えば3~157質量部、好ましくは6~141質量部、より好ましくは9~110質量部である。遷移金属塩の割合が多いほど変色抑制の効果は大きくなるが、樹脂の着色力が小さくなるため、上記の適切な範囲で含むことが好ましい。
本発明の樹脂着色用顔料組成物は、顔料及び遷移金属塩以外に顔料分散剤を含むことが好ましい。このような顔料分散剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム等の金属石けん、ステアリン酸アマイド、エチレンビスアマイド等の脂肪酸アミド、エステル系ワックス、ポリエチレンワックス、シランカップリング剤等が挙げられる。なかでもステアリン酸マグネシウムを含むことが好ましい。上記無金属または金属フタロシアニン顔料を含む顔料100質量部に対する顔料分散剤の割合は、例えば50~500質量部、好ましくは100~400質量部である。
着色用の樹脂におけるPETとしては、市販されているものを用いることができ、例えば「三井ペット J125」(三井化学株式会社製)を使用することができる。これらのPETの平均分子量は10000~80000が好ましく、20000~60000がより好ましい。PET100質量部に対する、上記無金属または金属フタロシアニン顔料を含む顔料の割合は、例えば0.001~1質量部、好ましくは0.01~0.5質量部である。
また、着色用の樹脂におけるナイロン(ポリアミド)としては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロンM5T、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロン9T、ナイロン11、ナイロン12など各種市販されているナイロン樹脂を用いることができる。ナイロンの市販品としては、例えば製品名「UBE NYLON 1013NW8」(ナイロン6;宇部興産株式会社製)を使用することができる。これらのナイロンの平均分子量は10000~25000が好ましく、12000~18000がより好ましい。当該平均分子量は、数平均分子量のことであり、ポリスチレンを標準物質としてGPC分析により測定することができる。ナイロン100質量部に対する、上記無金属または金属フタロシアニン顔料を含む顔料の割合は、例えば0.001~1質量部、好ましくは0.01~0.5質量部である。
本発明の樹脂着色用顔料組成物における樹脂着色の方法としては、マスターバッチ、ドライカラー、ペーストカラー(リキッドマスターバッチ)などいずれの方法であってもよい。例えばドライカラーは、顔料とステアリン酸マグネシウムなどの顔料分散剤と酢酸鉄などの遷移金属塩とをよく混合することで作製できる。また、着色ペレットは、樹脂に対してドライカラーを良く混合することで作製することができる。
本発明では、遷移金属塩を無金属または金属フタロシアニン顔料に添加することで、遷移金属との相互作用により安定化したフタロシアニン顔料がPETおよびナイロン樹脂の非共有電子対に配位し、色変化を抑えることができる。さらに遷移金属塩として、コバルト塩を無金属またはスズフタロシアニン顔料に添加することで、後述の参考例であるコバルトフタロシアニン顔料とほぼ同じ色を有しつつ耐熱性が同等またはそれ以上の性能を発揮することができる。
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、PET及びナイロン樹脂と、上記本発明の樹脂着色用顔料組成物を含む。PET及びナイロン樹脂としては、着色用の樹脂として上述のものが挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記PET及びナイロン以外の樹脂を含んでいてもよい。このような樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、スチレン等をモノマー成分として用いたホモポリマーやコポリマー、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン樹脂、PET以外のポリエステル樹脂(例えば、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート)、ポリスチレン樹脂、熱可塑性アイオノマー樹脂などが挙げられる。これらPET及びナイロン以外の樹脂の割合は、樹脂全量に対して、例えば10質量%以下、好ましくは5質量%以下が好ましい。
本発明の樹脂組成物は、上記樹脂および本発明の樹脂着色用顔料組成物以外に、滑剤、可塑剤、フィラー、耐候安定剤、各種添加剤等の樹脂において一般的に使用される成分を含んでいてもよい。
上記滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤いずれであってもよく、パラフィンワックス、合成ポリエチレン、流動パラフィンなどの炭化水素系化合物、ステアリン酸、ベヘニン酸、1,2-ヒドロキシステアリン酸、ステアリルアルコールなどの脂肪酸・高級アルコール系化合物、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド系化合物、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、ブチルステアレートなどのエステル系化合物が挙げられる。
上記可塑剤としては、エポキシ化大豆油(ESBO)、エポキシ化アマニ油(ELSO)等のエポキシ化植物油、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)等のフタル酸エステル類、二塩基酸(アジピン酸、セバチン酸、フタル酸など)とグリコール類(1,2-プロパンジオール、ブタンジオールなど)のポリエステル等のポリエステル系化合物が挙げられる。
上記フィラーとしては、求められる物性に応じて適当なものを添加することができ、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノトライト、石膏繊維、アルミボレート、MOS、アラミド繊維、各種ファイバー系、カーボンファイバー(炭素繊維)、グラスファイバー(ガラス繊維)、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ポリオキシベンゾイルウイスカー、炭酸カルシウム、シリカ、クレー等が挙げられる。
上記耐候安定剤としては、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系化合物などの紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤(HALS)等の光安定剤、フェノール系(ヒンダートフェノール系など)、リン系(ホスファイト系など)、イオウ系(チオエーテル系など)等の酸化防止剤、重金属不活化剤、キレート剤等が挙げられる。
上記各種添加剤としては、イントメッセント系、リン酸エステル系、ハロゲン系、無機系などの難燃剤、リン酸エステル金属塩系、ソルビトール系などの核剤、タルク、炭酸カルシウムなどの充填剤、相溶化剤(反応型、非反応型)、リン酸エステル金属塩系、ソルビトール系などの透明化剤、非イオン系、アニオン系、カチオン系などの帯電防止剤等が挙げられる。
<成形品>
本発明の成形品は、上述の本発明の樹脂着色用顔料組成物または樹脂組成物を含むポリエチレンテレフタレート又はナイロン成形品である。これらの成形品の成型方法としては、射出成型、ブロー成型、インフレーション成型、押出し成型、エンゲル成型、真空成型等いずれであってもよいが、射出成型が好ましい。射出成型では、一般的なPET及びナイロンの条件でよく、樹脂温度(シリンダー温度)は、例えば260~300℃である。
本発明の成形品は、用途は問わず、自動車・車両部品(エンジンルーム内部品、吸気系部品、燃料系部品など)、電気・電子機器(産業用機器のコネクター、スイッチ、ハウジングなど)、フィルム、シート、パイプ、板、丸棒、チューブなど加工用の射出・押出成形品、日用雑貨、容器、玩具、建築資材、スポーツ用具等である。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。
下記実施例1に記載のとおり、ポリプロピレン標準成型板、ナイロンおよびPET試験着色ペレットを作製して耐熱性評価を行った。また、実施例2-17および比較例1-7に記載のとおり実施例1から変更をし、同様に耐熱性評価を行った。これらの実施例および比較例の結果は、下記表1-3に記載のとおりである。実施例1-8では、顔料1molに対して遷移金属塩が約1molとなるようにした。また、比較例2-5では、顔料1molに対して金属塩が約1molとなるようにした。
[実施例1]
ポリプロピレン樹脂(製品名:ノバテックPP BC3、日本ポリプロ株式会社製)500gに、DIC社製FASTOGEN BLUE 8120BS(C.I.ピグメントブルー16)1gと堺化学工業社製ステアリン酸マグネシウム1gと関東化学社製酢酸鉄0.30gを事前に混合したものであるドライカラーを1g加え、よく混合した。これを射出成型機(型番:PNX60III―5A、日精樹脂工業社製、以下同じ)に投入し、280℃の滞留時間0分で成形を実施し、PP標準成型板とした。
次に、ナイロン樹脂(製品名:UBE NYLON 1013NW8、メーカー:宇部興産株式会社)1000gにDIC社製FASTOGEN BLUE 8120BS(C.I.ピグメントブルー16)1gと堺化学工業社製ステアリン酸マグネシウム1gと関東化学社製酢酸鉄0.30gを事前に混合したものであるドライカラーを1g加え、よく混合した。これを射出成型機に投入し、280℃の滞留時間0分および10分で成形を実施し、nylon試験成型板とした。
そして、PET樹脂(製品名:三井ペット J125、メーカー:三井化学株式会社)1000gにDIC社製FASTOGEN BLUE 8120BS(C.I.ピグメントブルー16)1gと堺化学工業社製ステアリン酸マグネシウム1gと関東化学社製酢酸鉄0.30gを事前に混合したドライカラーを1g加え、よく混合した。これを射出成型機に投入し、280℃の滞留時間0分および10分で成形を実施し、PET試験成型板とした。
(耐熱性評価)
上記で作製した3つの成型板を測色した。PP標準着色ペレットの滞留時間0分で射出した成型板の測色値を基準として、nylonおよびPET試験着色ペレットの滞留時間10分で射出した成型板の測色値とのdE値を算出した。測色は、分光光度計(型番:Datacolor 650、サンカラー株式会社製)にて行った。
表1および表2におけるdE1は、基準としたPP標準着色ペレットからのnylon試験着色ペレットの測色値の差(色相変化)であり、表1におけるdE2は、基準としたPP標準着色ペレットからのPET試験着色ペレットの測色値の差(色相変化)であり、表3におけるdE3は、nylon試験着色ペレットの滞留時間0分からの同じく滞留時間10分の測色値の差(色相変化)であり、表3におけるdE4は、PET試験着色ペレットの滞留時間0分からの同じく滞留時間10分の測色値の差(色相変化)である。
なお、dE値(dE1~4)が小さい顔料ほど色変化が小さく、高安定性と言える。着色力は標準着色ペレットの滞留時間0分で射出した成型板の測色値を基準として試験着色ペレットの滞留時間10分で射出した成型板の測色値から算出した装置固有の値である。着色力が60%以上ある顔料は、色変化が小さいと言える。
また、表3におけるL*a*b*測定値は、nylon試験着色ペレットの滞留時間0分の値であり、それぞれのポイント差が、成型板間で2ポイント未満であれば同じ色相と判断できる。
[実施例2]
関東化学社製酢酸鉄0.30gを関東化学社製酢酸コバルト0.31gに変えた以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[実施例3]
関東化学社製酢酸鉄0.30gを関東化学社製酢酸ニッケル0.31gに変えた以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[実施例4]
関東化学社製酢酸鉄0.30gを関東化学社製酢酸銅0.31gに変えた以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[実施例5]
関東化学社製酢酸鉄0.30gを関東化学社製塩化ルテニウム0.36gに変えた以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[実施例6]
関東化学社製酢酸鉄0.30gを関東化学社製硝酸銀0.32gに変えた以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[実施例7]
DIC社製FASTOGEN BLUE 8120BS 1gをJoint Venture Meilida Pigment Industry Co.,Ltd社製PB79 1g (C.I.ピグメントブルー79)と関東化学社製酢酸鉄0.30gを関東化学社製酢酸コバルト0.31gに変えた以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[実施例8]
DIC社製FASTOGEN BLUE 8120BS 1gを東京化成工業社製Tin(II)phthalocyanine 1gに、関東化学社製酢酸鉄0.30gを関東化学社製酢酸コバルト0.31gに変えた以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[実施例9]
関東化学社製酢酸鉄0.30gを関東化学社製酢酸銅0.08g(顔料1molに対して0.25mol)にした以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[実施例10]
関東化学社製酢酸鉄0.30gを関東化学社製酢酸銅0.16g(顔料1molに対して0.50mol)にした以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[実施例11]
関東化学社製酢酸鉄0.30gを関東化学社製酢酸銅0.24g(顔料1molに対して0.75mol)にした以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[実施例12]
関東化学社製酢酸鉄0.30gを関東化学社製酢酸銅0.31g(顔料1molに対して1.00mol)にした以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[実施例13]
関東化学社製酢酸鉄0.30gを関東化学社製酢酸銅0.39g(顔料1molに対して1.25mol)にした以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[実施例14]
関東化学社製酢酸鉄0.30gを関東化学社製酢酸銅0.47g(顔料1molに対して1.50mol)にした以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[実施例15]
関東化学社製酢酸鉄0.30gを関東化学社製酢酸銅0.63g(顔料1molに対して2.00mol)にした以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[実施例16]
関東化学社製酢酸鉄0.30gを関東化学社製酢酸銅0.94g(顔料1molに対して3.00mol)にした以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[実施例17]
関東化学社製酢酸鉄0.30gを関東化学社製酢酸銅1.26g(顔料1molに対して4.00mol)にした以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[比較例1]
関東化学社製酢酸鉄を添加しない以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[比較例2]
関東化学社製酢酸鉄0.30gを関東化学社製酢酸マグネシウム0.25gに変えた以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[比較例3]
関東化学社製酢酸鉄0.30gを関東化学社製硫酸アルミニウム0.30gに変えた以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[比較例4]
関東化学社製酢酸鉄0.30gを関東化学社製酢酸カルシウム0.27gに変えた以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[比較例5]
関東化学社製酢酸鉄0.30gを関東化学社製酢酸亜鉛0.32g変えた以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[比較例6]
DIC社製FASTOGEN BLUE 8120BS 1gをJoint Venture Meilida Pigment Industry Co.,Ltd社製PB79 1g(C.I.ピグメントブルー79)とし、関東化学社製酢酸鉄0.30gを添加しない以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[比較例7]
DIC社製FASTOGEN BLUE 8120BS 1gを東京化成工業社製Tin(II)phthalocyanine 1gとし、関東化学社製酢酸鉄0.30gを添加しない以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
[参考例1]
DIC社製FASTOGEN BLUE 8120BS 1gをCobalt phthalocyanine 1gとし、関東化学社製酢酸鉄0.30gを添加しない以外は実施例1と同様の方法で成形し、耐熱性評価を行った。
Figure 0007435922000001
Figure 0007435922000002
Figure 0007435922000003
上記表1より、処理剤として遷移金属塩を添加すると、添加しないときに比べてPP樹脂基準における測色値の差(色相変化)が小さくなり、耐熱性が向上していることが分かる。上記表2より、処理剤である酢酸銅の添加量が増えるとPP樹脂基準における測色値の差(色相変化)が小さくなり、耐熱性が向上するが、着色力が低下する傾向であることが分かる。上記表3より、同じnylonまたはPET樹脂における滞留0分を基準にしたときにおいても測色値の差(色相変化)が小さくなり、耐熱性が向上していることが分かる。表3より、コバルト塩を無金属またはスズフタロシアニン顔料に添加することで、参考例1であるコバルトフタロシアニン顔料とほぼ同じ色を有しつつ耐熱性が同等またはそれ以上の耐熱性とすることができたことが分かる。

Claims (4)

  1. フタロシアニン顔料と遷移金属塩を含む樹脂着色用顔料組成物であって、
    前記フタロシアニン顔料の中心金属が、無金属、スズ、又はアルミニウムであり、
    前記遷移金属塩が、酢酸鉄、酢酸コバルト、酢酸ニッケル、酢酸銅、酢酸ルテニウム、酢酸ロジウム、酢酸パラジウム、酢酸銀、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化銅、塩化ルテニウム、塩化ロジウム、塩化パラジウム、塩化銀、硝酸鉄、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硝酸銅、硝酸ルテニウム、硝酸ロジウム、硝酸パラジウム、硝酸銀、硫酸鉄、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、硫酸銅、硫酸ルテニウム、硫酸ロジウム、硫酸パラジウム、硫酸銀及び酢酸コバルトからなる群から選ばれる1種又は2種以上であり、
    前記樹脂がポリエチレンテレフタレート又はナイロンである樹脂着色用顔料組成物。
  2. 前記ポリエチレンテレフタレート又はナイロン100質量部に対する前記フタロシアニン顔料を含む顔料の含有量が0.001~1質量部である請求項1に記載の樹脂着色用顔料組成物。
  3. 前記遷移金属塩の割合が、前記フタロシアニン顔料1molに対して、0.1~5.0molである請求項1または2に記載の樹脂着色用顔料組成物。
  4. 請求項1または2に記載の樹脂着色用顔料組成物を含むポリエチレンテレフタレート又はナイロン成形品。
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