JP7197350B2 - ポリアミド樹脂組成物、キット、成形品の製造方法および成形品 - Google Patents
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Description
ここで、上述の通り、臭素系難燃剤を用いる場合、難燃助剤として、三酸化アンチモンを用いることが一般的である。しかしながら、本発明者が検討を行ったところ、ポリアミド樹脂に、三酸化アンチモンを配合すると、黒ずんでしまう場合があることが分かった。このような黒ずみは、通常の用途では何ら問題にはならないが、光透過性部材として用いる場合には、光線透過率が低くなってしまう。このような光線透過率の低下は、レーザー溶着性が劣る原因となりえる。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、難燃性を有し、かつ、光線透過率が高いポリアミド樹脂組成物、ならびに、キット、成形品の製造方法および成形品を提供することを目的とする。
<1>半芳香族ポリアミド樹脂25~50質量%と、臭素系難燃剤3~20質量%と、錫酸亜鉛1.5~10質量%と、光透過性色素を含む、ポリアミド樹脂組成物。
<2>前記半芳香族ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、
前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、<1>に記載のポリアミド樹脂組成物。
<3>さらに、脂肪族ポリアミド樹脂を0.5~10質量%含む、<1>または<2>に記載のポリアミド樹脂組成物。
<4>前記脂肪族ポリアミド樹脂が、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612およびポリアミド6/66から選択される少なくとも1種を含む、<3>に記載のポリアミド樹脂組成物。
<5>前記臭素系難燃剤と前記錫酸亜鉛の合計含有量が、ポリアミド樹脂組成物の12~25質量%である、<1>~<4>のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物。
<6>前記臭素系難燃剤と前記錫酸亜鉛の含有比率である、臭素系難燃剤/錫酸亜鉛が、1.5~2.8である、<1>~<5>のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物。
<7>さらに、ガラス繊維を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物。
<8>前記臭素系難燃剤が、臭素化ポリスチレンを含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物。
<9>前記ポリアミド樹脂組成物を、1mmの厚さに成形し、近赤外分光光度計で透過法による測定を行った際、波長1070nmにおける光線透過率が25%以上である<1>~<8>のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物。
<10>前記ポリアミド樹脂組成物を、1.5mmの厚さに成形したとき、UL94燃焼性試験においてV-0に適合する、<1>~<9>のいずれか1つに記載のポリアミド樹脂組成物。
<11><1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物と、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含む光吸収性樹脂組成物とを有するキット。
<12><1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品と、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含む光吸収性樹脂組成物から形成された成形品を、レーザー溶着させることを含む、成形品の製造方法。
<13><1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂組成物、または、<11>に記載のキットから形成された成形品。
すなわち、臭素系難燃剤を用いる場合、難燃助剤として、三酸化アンチモンを用いることが一般的である。しかしながら、ポリアミド樹脂には、合成時に用いられるリン含有酸化物などが含まれており、三酸化アンチモンが、これらのリン含有酸化物と還元反応を起こし、黒ずんでしまう。この黒ずみは、通常の用途で問題になるレベルではないが、レーザー溶着用の光透過性部材のように、高い光線透過率を求められる用途に用いる場合には、必ずしも十分とは言えないことが分かった。そこで、本発明では、臭素系難燃剤を用い、かつ、難燃助剤として、錫酸亜鉛を用いることとした。
さらに、樹脂組成物中の臭素系難燃剤の量を多くすると、難燃性は高まるが、光透過性色素による染色が十分ではないことが分かった。これは、臭素系難燃剤の中に、光透過性色素は入り込まないため、光透過性色素による染色が不十分となってしまうと推測された。一方、ポリアミド樹脂成分(樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂のことをいう、以下同じ。)の含有量を多くすれば、不十分な染色の問題は解決するが、難燃性が劣ってしまう。本発明では、ポリアミド樹脂と臭素系難燃剤の量のバランスを図ることにより、この問題を回避した。
尚、本発明の樹脂組成物は、レーザー溶着用の光を透過する側の樹脂組成物(光透過性樹脂組成物)として主として用いられるが、これ以外でも、難燃性および高い光透過性が求められる用途に広く用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、半芳香族ポリアミド樹脂を含む。
ここで、半芳香族ポリアミド樹脂とは、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位およびジカルボン酸由来の構成単位の合計構成単位の20~80モル%が芳香環を含む構成単位であることをいう。このような半芳香族ポリアミド樹脂を用いることにより、得られる樹脂成形品の機械的強度を高くすることができる。
半芳香族ポリアミド樹脂としては、テレフタル酸系ポリアミド樹脂(ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T)、後述するキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂などが例示される。
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジアミン由来の構成単位は、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上、一層好ましくは70モル%以上、より一層好ましくは80モル%以上、さらに一層好ましくは90モル%以上がキシリレンジアミンに由来する。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂のジカルボン酸由来の構成単位は、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、一層好ましくは90モル%以上、より一層好ましくは95モル%以上が、炭素数が4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する。
また、本発明におけるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の好ましい他の一実施形態として、ジアミン由来の構成単位の30モル%以上(好ましくは30~70モル%)がメタキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の50モル%以上(好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上)がセバシン酸に由来するポリアミド樹脂が例示される。
このようなキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、結晶化速度が遅いため、無機結晶核剤の添加効果が顕著である。
融点は、示差走査熱量に従い、JIS K7121およびK7122に準じて測定できる。
半芳香族ポリアミド樹脂は1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、脂肪族ポリアミド樹脂を含んでいてもよい。
脂肪族ポリアミド樹脂としては、ラクタムの開環重合、アミノカルボン酸の重縮合、ジアミンと二塩基酸の重縮合により得られる酸アミド等のアミド結合で連結した構成単位とする高分子であって、原料モノマーの80モル%超(好ましくは90モル%以上)が非芳香族化合物であるものをいう。
本発明では、脂肪族ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上(好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上)が、炭素数4~20の脂肪族ジアミンに由来し、前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上(好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上)が、炭素数4~20の脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂が好ましい例として挙げられる。炭素数4~20の脂肪族ジアミンとしては、炭素数4~10の脂肪族ジアミンであることが好ましい。脂肪族ジアミンは、α,ω‐直鎖脂肪族ジアミンが一例として挙げられる。炭素数4~20の脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数4~10のα,ω‐直鎖脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。脂肪族ジカルボン酸は、α,ω‐直鎖脂肪族ジカルボン酸が一例として挙げられる。
脂肪族ポリアミド樹脂を構成するジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、ドデカン二酸、エイコジオン酸等が例示される。
脂肪族ポリアミド樹脂は1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂成分の好ましい第一の実施形態は、半芳香族ポリアミド樹脂がポリアミド樹脂成分の95質量%超である形態であり、98質量%以上である形態がより好ましい。
本発明の樹脂組成物に含まれるポリアミド樹脂成分の好ましい第二の実施形態は、ポリアミド樹脂成分が83~95質量%の半芳香族ポリアミド樹脂と、5~17質量%の脂肪族ポリアミド樹脂を含む形態である。
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂成分以外の他の樹脂成分を含んでいてもよい。
他の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂成分以外の他の樹脂を実質的に配合しない構成としてもよく、例えば、他の樹脂が、樹脂組成物に含まれる樹脂成分全量の5質量%以下であることをいい、さらには、1質量%以下、特には、0.4質量%以下とすることもできる。
すなわち、本発明の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂成分が、樹脂組成物に含まれる樹脂成分の95質量%以上を占めることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、臭素系難燃剤を含む。臭素系難燃剤を含むことにより、難燃性を高くすることができる。
臭素系難燃剤としては、芳香族系化合物が挙げられ、具体的には、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂、臭素化フェノキシ樹脂、臭素化ポリフェニレンエーテル樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ビスフェノールA、グリシジル臭素化ビスフェノールA、ペンタブロモベンジルポリアクリレート、臭素化イミド(臭素化フタルイミド等)等が挙げられ、臭素化ポリスチレンが好ましい。
臭素化ポリスチレンは、ポリスチレンを臭素化するか、または、臭素化スチレンモノマーを重合することによって製造するかのいずれであってもよいが、臭素化スチレンを重合したものは遊離の臭素(原子)の量が少ないので好ましい。
また、臭素化ポリスチレンは、他のビニルモノマーが共重合された共重合体であってもよい。この場合のビニルモノマーとしてはスチレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、ブタジエンおよび酢酸ビニル等が挙げられる。
臭素系難燃剤は1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、錫酸亜鉛を含む。錫酸亜鉛を含むことにより酸化アンチモンを含有しなくても、高い難燃性を達成することが可能になる。錫酸亜鉛は、通常、難燃助剤として働く。
錫酸亜鉛としては、三酸化スズ亜鉛(ZnSnO3)および六水酸化スズ亜鉛(ZnSn(OH)6)の少なくともいずれか一方を使用することが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、錫酸亜鉛を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、酸化アンチモンを実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、酸化アンチモンの含有量が、錫酸亜鉛の含有量の10質量%以下であることをいい、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、錫酸亜鉛以外の難燃助剤を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、錫酸亜鉛以外の難燃助剤の含有量が、錫酸亜鉛の含有量の10質量%以下であることをいい、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
本発明ではさらに、臭素系難燃剤と錫酸亜鉛の含有比率である、臭素系難燃剤/錫酸亜鉛が、1.5~2.8であることが好ましく、1.8~2.5であることがより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、光透過性色素を含む。
本発明で用いる光透過性色素は、通常、黒色色素であり、具体的には、ニグロシン、ナフタロシアニン、アニリンブラック、フタロシアニン、ポルフィリン、ペリノン、クオテリレン、アゾ染料、アントラキノン、ピラゾロン、スクエア酸誘導体、およびインモニウム染料等が挙げられる。
市販品としては、オリエント化学工業社製の着色剤であるe-BIND(商品名) LTW-8731H(型番)、e-BIND(商品名) LTW-8701H(型番)、有本化学社製の着色剤であるPlast Yellow 8000、Plast Red M 8315、Oil Green 5602、LANXESS社製の着色剤であるMacrolex Yellow 3G、Macrolex Red EG、Macrolex Green 3等が例示される。
特に、光透過性色素として、ピラゾロン、ペリノンおよびアントラキノンの少なくとも1種を含むポリアミド樹脂組成物を用いると、得られる成形品の湿熱試験後の色移りを効果的に抑制できる。
本発明の樹脂組成物における光透過性色素の含有量は、樹脂組成物100質量部に対し、0.001質量部以上であることが好ましく、0.006質量部以上であることがより好ましく、さらには、0.018質量部以上、0.024質量部以上、0.030質量部以上、0.050質量部以上であってもよい。また、光透過性色素の含有量の上限値は、樹脂組成物の5.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以下であることが一層好ましく、0.20質量部以下、0.10質量部以下、0.060質量部以下であってもよい。
本発明の樹脂組成物における光透過性色素の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、光透過性色素の含有量の上限値は、樹脂組成物の5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%であることが一層好ましい。
光透過性色素は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は、カーボンブラックを実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、例えば、樹脂組成物の0.0001質量%以下であることをいう。
本発明の樹脂組成物は、ガラス繊維を含むことが好ましい。
ガラス繊維は、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Rガラス、Sガラスなどのガラス組成からなり、特に、Eガラス(無アルカリガラス)が好ましい。
ガラス繊維の形態は、単繊維や複数本撚り合わせたものを連続的に巻き取った「ガラスロービング」、カット長(数平均繊維長が)1~10mmである「チョップドストランド」、粉砕長さ(数平均繊維長)10~500μmである「ミルドファイバー」などのいずれであってもよい。かかるガラス繊維としては、旭ファイバーグラス社より、「グラスロンチョップドストランド」や「グラスロンミルドファイバー」の商品名で市販されており、容易に入手可能である。ガラス繊維は、形態が異なるものを併用することもできる。
本発明で用いるガラス繊維は、集束剤で集束されていてもよい。この場合の集束剤としては、無水マレイン酸などを含む酸系や、ウレタン系集束剤が好ましい。
本発明の樹脂組成物は、ガラス繊維を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、結晶化速度を調整するために、核剤を含んでいてもよい。核剤の種類は、特に、限定されるものではないが、タルク、窒化ホウ素、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、窒化珪素、チタン酸カリウムおよび二硫化モリブデンが好ましく、タルクおよび窒化ホウ素がより好ましく、タルクがさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物が核剤を含む場合、その含有量は、ポリアミド樹脂成分100質量部に対し、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~8質量部がより好ましく、0.1~6質量部がさらに好ましい。また、この範囲でタルクを添加しても極端に光線透過率は低下しない。
本発明の樹脂組成物は、核剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、滑剤を含んでいてもよい。
滑剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル、ケトンワックス、ライトアマイドなどが挙げられる。
これらの中では、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはポリエチレンワックスの部分酸化物が好ましく、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスがより好ましい。
本発明の樹脂組成物が滑剤を含む場合、その含有量は、特定ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.05~1質量部であることが好ましく、0.1~0.8質量部がより好ましく、0.2~0.6質量部がさらに好ましい。
本発明の樹脂組成物は、滑剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
本発明の樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。このような添加剤としては、ガラス繊維以外のフィラー、光安定剤、酸化防止剤、フォスファゼン系難燃剤以外の難燃剤、亜鉛金属酸化物以外の難燃助剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。これらの成分は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明の樹脂組成物は、各成分の合計が100質量%となるように、樹脂成分および光透過性色素、さらには、ガラス繊維や他の添加剤の含有量等が調整される。
本発明の樹脂組成物は、1mmの厚さに成形し、近赤外分光光度計で透過法による測定を行った際、波長1070nmにおける光線透過率が25%以上であることが好ましく、27%以上であることがより好ましい。上限は、100%であってもよいが、実際には、50%以下、35%以下で十分に要求性能を満たす。
本発明の樹脂組成物は、2mmの厚さに成形し、近赤外分光光度計で透過法による測定を行った際、波長1070nmにおける光線透過率が10%以上であることが好ましく、13%以上であることがより好ましい。上限は、100%であってもよいが、実際には、30%以下、25%以下で十分に要求性能を満たす。光線透過率は、後述する実施例に記載の方法に従う。
また、本発明の樹脂組成物は、1.5mmの厚さに成形したとき、UL94燃焼性試験においてV-0に適合することが好ましい。UL94燃焼性試験の詳細は、後述する実施例に記載の方法に従う。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、特に制限されないが、ベント口から脱揮できる設備を有する1単軸または2軸の押出機を混練機として使用する方法が好ましい。上記ポリアミド樹脂成分、ガラス繊維および必要に応じて配合される他の添加剤は、混練機に一括して供給してもよいし、ポリアミド樹脂成分に他の配合成分を順次供給してもよい。ガラス繊維は、混練時に破砕するのを抑制するため、押出機の途中から供給することが好ましい。また、各成分から選ばれた2種以上の成分を予め混合、混練しておいてもよい。
本発明では、光透過性色素は、ポリアミド樹脂等で、マスターバッチ化したものをあらかじめ調製した後、他の成分(ポリアミド樹脂、ガラス繊維等)と混練して、本発明における樹脂組成物を調整してもよい。
本発明は、また、上記樹脂組成物と、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含む光吸収性樹脂組成物とを有するキットを開示する。本発明のキットは、レーザー溶着による成形品の製造に好ましく用いられる。
すなわち、キットに含まれる樹脂組成物は、光透過性樹脂組成物としての役割を果たし、光透過性樹脂組成物を成形してなる成形品は、レーザー溶着の際のレーザー光に対する透過樹脂部材となる。一方、光吸収性樹脂組成物を成形してなる成形品は、レーザー溶着の際のレーザー光に対する吸収樹脂部材となる。
本発明で用いる光吸収性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含む。
熱可塑性樹脂は、ポリアミド樹脂、オレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等が例示され、樹脂組成物との相溶性が良好な点から、特に、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましく、ポリアミド樹脂がさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂は1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
光吸収性樹脂組成物に用いるポリアミド樹脂としては、その種類等を定めるものではないが、上述キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂が好ましい。
無機フィラーは、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ、アルミナ、タルク、カーボンブラックおよびレーザーを吸収する材料をコートした無機粉末等のレーザー光を吸収しうるフィラーが例示され、ガラス繊維が好ましい。ガラス繊維は、上記本発明の樹脂組成物に配合してもよいガラス繊維と同義であり、好ましい範囲も同様である。
光吸収性色素としては、照射するレーザー光波長の範囲、すなわち、本発明では、波長800nm~1100nmの範囲に極大吸収波長を持つものであり、無機顔料(カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック、ランプブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラックなど)などの黒色顔料、酸化鉄赤などの赤色顔料、モリブデートオレンジなどの橙色顔料、酸化チタンなどの白色顔料)、有機顔料(黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、緑色顔料など)などが挙げられる。なかでも、無機顔料は一般に隠ぺい力が強く好ましく、黒色顔料がさらに好ましい。これらの光吸収性色素は2種以上組み合わせて使用してもよい。光吸収性色素の含有量は、樹脂成分100質量部に対し0.01~30質量部であることが好ましい。
次に、レーザー溶着方法について説明する。本発明では、本発明の樹脂組成物を成形してなる成形品(透過樹脂部材)と、上記光吸収性樹脂組成物を成形してなる成形品(吸収樹脂部材)を、レーザー溶着させて成形品を製造することができる。レーザー溶着することによって透過樹脂部材と吸収樹脂部材を接着剤を用いずに、強固に溶着することができる。
部材の形状は特に制限されないが、部材同士をレーザー溶着により接合して用いるため、通常、少なくとも面接触箇所(平面、曲面)を有する形状である。レーザー溶着では、透過樹脂部材を透過したレーザー光が、吸収樹脂部材に吸収されて、溶融し、両部材が溶着される。本発明の樹脂組成物の成形品は、レーザー光に対する透過性が高いので、透過樹脂部材として好ましく用いることができる。ここで、レーザー光が透過する部材の厚み(レーザー光が透過する部分におけるレーザー透過方向の厚み)は、用途、樹脂組成物の組成その他を勘案して、適宜定めることができるが、例えば5mm以下であり、好ましくは4mm以下である。
このようにして透過樹脂部材と吸収樹脂部材を溶着された成形品は、高い溶着強度を有する。なお、本発明における成形品とは、完成品や部品の他、これらの一部分を成す部材も含む趣旨である。
ポリアミド樹脂
MXD6:ポリメタキシリレンアジパミド、三菱ガス化学社製、6000、リン原子濃度は350ppm
MP6:ポリメタパラキシリレンアジパミド、下記方法によって合成した。
PA66:ポリアミド66、ソルベイ社製、STAVAMID26AE1K
アジピン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を撹拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)とメタキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)のモル比が3:7の混合ジアミンを、加圧(0.35MPa)下でジアミンとアジピン酸(ローディア社製)とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を270℃まで上昇させた。滴下終了後、0.06MPaまで減圧し10分間反応を続け分子量1,000以下の成分量を調整した。その後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミド樹脂を得た。リン原子濃度は350質量ppmであった。
HP-3010:臭素化ポリスチレン、アルベマール日本社製
錫酸亜鉛
Flamtard S:日本軽金属社製
三酸化アンチモン
PATOX-M:日本精鉱社製
5000A、林化成社製、ミクロンホワイト5000A、タルク
T-211H:日本電気硝子社製
CS-8CP:モンタン酸カルシウム、日東化成工業社製
LTW-8701H:オリエント化学工業社製、e-BIND LTW-8701H、ポリアミド66と光透過性色素のマスターバッチ
<コンパウンド>
後述する下記表1に記載の光透過部材形成用ペレット(樹脂組成物)を製造した。
具体的には、後述する下記表1に示す各成分であって、ガラス繊維以外の成分を表1に示す割合(単位は、質量%である)をそれぞれ秤量し、ドライブレンドした後、二軸押出機(東芝機械社製、TEM26SS)のスクリュー根元から2軸スクリュー式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE-W-1-MP)を用いて投入した。また、ガラス繊維については振動式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE-V-1B-MP)を用いて押出機のサイドから上述の二軸押出機に投入し、樹脂成分等と溶融混練し、光透過部材形成用ペレット(樹脂組成物)を得た。押出機の温度設定は、280℃とした。
上記で得られた光透過部材形成用ペレットを、120℃で4時間乾燥した後、射出成形機(住友重機械工業社製、SE-50D)を用いて、光透過部材用試験片(1.0mm厚、2.0mm厚、1.5mm厚)をそれぞれ作製した。成形に際し、シリンダー温度は280℃、金型表面温度は130℃にて実施した。
また、上記で得られた光透過部材形成用ペレットを、120℃で4時間乾燥させた後、日精樹脂工業社製、NEX140IIIを用いて、4mm厚さのISO引張り試験片を射出成形した。成形に際し、シリンダー温度は280℃、金型表面温度は130℃にて実施した。
上記で得られた光透過部材用試験片(1.0mm厚、2.0mm厚)を用いて、ISO13468-1またはISO13468-2に従い波長1070nmにおける光線透過率(単位:%)を測定した。
上記で得られた光透過部材用試験片(1.5mm厚)を用いて、UL94燃焼性試験(米国Under Writers Laboratories Incで定められた規格)の方法を用いて測定を行った。
難燃等級には、UL94垂直燃焼試験によって分類される難燃性のクラスを示した。分類方法の概要は以下の通りである。その他の詳細はUL94規格に準じる。
V-0:綿着火無し、最大燃焼時間10秒以下
V-1:綿着火無し、最大燃焼時間30秒以下
V-2:綿着火有り、最大燃焼時間30秒以下
V不適合:上記3項目に該当しないものや試験片を保持するクランプまで燃え上がってしまった場合
また、総燃焼時間(Total)、最大燃焼時間(max)についても表1に記載した。
ISO178に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、23℃の温度で曲げ強さ(単位:MPa)を測定した。
実施例1において、表1または表2に示す通り変更した他は同様に行った。下記表に結果を示す。
一方、半芳香族ポリアミド樹脂の含有量が50質量%を超える場合(比較例1~4、7)、難燃性が劣っていた。
また、難燃助剤として、三酸化アンチモンを用いた場合(比較例8)、難燃性には優れていたが、光線透過率が0%であった。
上記実施例1~4で作製した1.5mm厚の試験片(透過樹脂部材)と1.5mm厚さの試験片(吸収樹脂部材)を重ねあわせて溶着した。透過樹脂部材側から、レーザー照射を行った。レーザー照射は、ガルバノミラー式スキャン(販売元:株式会社ファインデバイス)を用い、プレス圧600N、溶着スポット径:直径2mm、レーザー出力30W~200W、スキャン速度70~2000mm/sec、幅レーザー16mm、溶着した際の総エネルギー投入量160Jにて行った。適切にレーザー溶着していることを確認した。
Claims (14)
- 半芳香族ポリアミド樹脂25~50質量%と、
臭素系難燃剤3~20質量%と、
錫酸亜鉛1.5~10質量%と、
光透過性色素を含み、
レーザー溶着用の光透過性部材に用いられる、ポリアミド樹脂組成物。 - 前記半芳香族ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、
前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来する、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。 - さらに、脂肪族ポリアミド樹脂を0.5~10質量%含む、請求項1または2に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記脂肪族ポリアミド樹脂が、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612およびポリアミド6/66から選択される少なくとも1種を含む、請求項3に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記臭素系難燃剤と前記錫酸亜鉛の合計含有量が、ポリアミド樹脂組成物の12~25質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記臭素系難燃剤と前記錫酸亜鉛の含有比率である、臭素系難燃剤/錫酸亜鉛が、1.5~2.8である、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
- さらに、ガラス繊維を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記臭素系難燃剤が、臭素化ポリスチレンを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記ポリアミド樹脂組成物を、1mmの厚さに成形し、近赤外分光光度計で透過法による測定を行った際、波長1070nmにおける光線透過率が25%以上である請求項1~8のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 前記ポリアミド樹脂組成物を、1.5mmの厚さに成形したとき、UL94燃焼性試験においてV-0に適合する、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
- 請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物と、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含む光吸収性樹脂組成物とを有するキット。
- 請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形品と、熱可塑性樹脂と光吸収性色素とを含む光吸収性樹脂組成物から形成された成形品を、レーザー溶着させることを含む、成形品の製造方法。
- 請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された、レーザー溶着用の光透過性部材である、成形品。
- 請求項11に記載のキットから形成された成形品。
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