JP7430131B2 - タイヤチェーンの締付装置 - Google Patents
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Description
本発明は、タイヤチェーンに係り、特に、ワイヤによる締め付けが成されるタイヤチェーンの締付装置に関する。
タイヤチェーンの締付装置については、例えば特許文献1、2に開示されているような物が知られている。いずれの文献に開示されている締付装置も、ケーシング内に、ワイヤを巻き取るための回転体と、この回転体の回転を抑制するロック手段、及びロック手段を操作するための操作手段を設けることを基本として構成されている。ここで、回転体には、鋸刃状のギアが付帯されており、ロック手段に設けられた歯が、回転体に付帯されたギアに噛み合う事により、回転体の回転が抑制されることとなる。
このような構成の締付装置では、操作手段を操作することで、ワイヤを巻き取るための状態や、引き出すための状態、及びワイヤを引き出す事も巻き取る事もできないロック状態などへの切り替えを行う事ができる。
こうしたタイヤチェーンの締付装置では、ロック手段により回転体の回転を抑制し、タイヤチェーンを締め付けた状態にある締付装置から、意図せずワイヤが引き出されることを防ぐ事ができるという作用が重要になる。
しかし、特許文献1、2に開示されている締付装置ではいずれも、ロック手段の先端に配置された1つ、あるいは2つ程度の歯を回転体に付帯する歯車に係合させることで回転体の回転を抑制する構成が採られている。このため、タイヤが空転した場合などには、ワイヤが予期せぬ力で引き出されることとなり、係合部に損傷が生ずる虞がある。
そこで本発明では、ワイヤに対して所定値以上の引っ張り荷重が加えられたとしても、係合部の損傷を防ぐことのできるタイヤチェーンの締付装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明に係るタイヤチェーンの締付装置は、ケーシング内に備えた回転体によりワイヤの送出しや巻取りを行うタイヤチェーンの締付装置であって、前記回転体の回転を抑制して前記ワイヤが引き出される事を阻害する第1ロック手段と、前記ワイヤに対して通常付与される引っ張り荷重を超える荷重が負荷された際に前記ワイヤ、または前記回転体に生じる変化に起因して稼働し、前記回転体の回転を阻害する第2ロック手段と、を備えたことを特徴とする。
また、上記のような特徴を有するタイヤチェーンの締付装置において前記ケーシングは、タイヤチェーンの締付点に対する取付基部とワイヤ引出口とを有し、前記取付基部と前記ワイヤ引出口とを結ぶ直線と、前記回転体におけるワイヤの送出し位置とが半径方向に離間しており、前記第2ロック手段は、前記ケーシングから引き出されているワイヤが前記回転体の半径方向に動く事に起因して稼働する構成とすると良い。このような特徴を有する事によれば、第2ロック手段を稼働させるための構成が不要となり、また、第2ロック手段を手動で稼働させる必要もなくなる。
また、上記のような特徴を有するタイヤチェーンの締付装置において前記第2ロック手段は、前記ワイヤの動きにより力点が移動し、作用点を前記回転体に接触させるレバーとすることができる。このような特徴を有する事によれば、第2ロック手段が確実に回転体に作用することとなる。
また、上記のような特徴を有するタイヤチェーンの締付装置において前記第2ロック手段の稼働は、前記ワイヤを挟み込む事による構成とすることもできる。このような特徴を有する事によれば、第2ロック手段が稼働部を持たないため、組付けが容易となる。
さらに、上記のような特徴を有するタイヤチェーンの締付装置において前記第2ロック手段は、前記ワイヤに負荷される引っ張り荷重に起因して傾く前記回転体に接触する突起とすることができる。このような特徴を有する事によれば、必然的に設けられる回転体とケーシングとの隙間を利用して第2ロック手段を設けるため、タイヤチェーンの締付装置の大きさが大きくなる虞が無い。
上記のような特徴を有するタイヤチェーンの締付装置によれば、ワイヤに対して所定値以上の引っ張り荷重が加えられたとしても、係合部の損傷を防ぐことができる。
以下、本発明のタイヤチェーンの締付装置に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を実施するための好適な形態の一部である。よって、その効果を奏する限りにおいて、構成の一部に変更を加えたとしても、本発明の一部とみなすことができる。
[第1実施形態:構成]
まず、図1、図2を参照して、第1実施形態に係るタイヤチェーンの締付装置に係る実施形態について説明する。なお、図面において、図1は、第1実施形態に係るタイヤチェーンの締付装置の断面構成を示す図であり、図2は、同分解斜視図である。本実施形態に係るタイヤチェーンの締付装置(以下、単に締付装置10と称す)は、ケーシング12と回転体24、第1ロック手段32、ロック解除手段34、及び第2ロック手段36を基本として構成されている。
まず、図1、図2を参照して、第1実施形態に係るタイヤチェーンの締付装置に係る実施形態について説明する。なお、図面において、図1は、第1実施形態に係るタイヤチェーンの締付装置の断面構成を示す図であり、図2は、同分解斜視図である。本実施形態に係るタイヤチェーンの締付装置(以下、単に締付装置10と称す)は、ケーシング12と回転体24、第1ロック手段32、ロック解除手段34、及び第2ロック手段36を基本として構成されている。
ケーシング12は、詳細を後述する回転体24や第1ロック手段32、ロック解除手段34、及び第2ロック手段36等を収容するケースである。ケーシング12の外周には少なくとも、詳細を後述するワイヤ38の引出口(以下、ワイヤ引出口14と称す)と、詳細を後述するロック解除手段34における解除ボタン34aの突出口(以下、押圧ボタン突出口16と称す)、及び取付基部18が設けられている。また、ケーシング12の内部には少なくとも、回転体24を支持するための回転軸20が設けられている。
本実施形態のケーシング12では、ワイヤ引出口14を長孔とし、ワイヤ引出口14におけるワイヤ38の引出位置が、回転体24の半径方向外周側へ移動することが可能な構成としている。
回転体24は、タイヤチェーンを締め付けるためのワイヤ38の巻き取りや引き出し(送り出し)を担う要素である。回転体24には、少なくとも巻取ドラム26と、鋸刃ギア28が備えられている。巻取ドラム26は、ワイヤ38を収容するための要素であり、外周にワイヤ38を巻き付けることが可能な構成とされており、回転軸20に対する取付孔24aが設けられている。鋸刃ギア28は、巻取ドラム26の側面に付帯されている要素であり、円盤の外周に鋸刃状の凹凸が形成されている。詳細を後述する第1ロック手段32や第2ロック手段36が鋸刃ギア28の凹凸に係合することで、回転体24の回転を抑制することが可能となる。
また、回転体24には、ケーシング12に固定された回転軸20を基点として付勢力を生じさせる巻取バネ30が内装されている。このような構成によれば回転体24には、ワイヤ38が引き出されると、引き出しに対する反力が発生することとなる。そして、反力の作用により、引き出されたワイヤ38が自動で回転体24(巻取ドラム26)に巻き取られることとなる。
本実施形態に係る締付装置10では、取付基部18の取付孔18aの中心点Oと、ワイヤ引出口14の下端点UDとを結ぶ直線Lと、回転体24におけるワイヤ38の送出し点Pとが離間している位置関係となるように構成されている。
第1ロック手段32は、回転体24の回転を抑制するための要素である。本実施形態に係る第1ロック手段32は、ロック部材32aとロック制御部材32b、及びトーションバネ32cとより構成されている。第1ロック手段32は、ロック部材32aにおける回動軸32a1を基点として、回動軸32a1の周囲に、第1係止歯32a2と第2係止歯32a3が設けられている。第1係止歯32a2と第2係止歯32a3との役割は、次のように定められ、その役割を果たすように配置関係が定められている。
具体的には、第1係止歯32a2は、巻取ドラム26に巻き取られたワイヤ38が引き出される方向へ回転体24が回転することを妨げる役割を担い、回転体24が図1中において時計回り(右回り)に回転する事を妨げるように、鋸刃ギア28に噛み合う。
一方、第2係止歯32a3は、巻取ドラム26がワイヤ38を巻き取る方向へ回転する回転体24の回転を妨げる役割を担い、回転体24が図1中において反時計回り(左回り)に回転する事を妨げるように、鋸刃ギア28に噛み合う。
このため、第1係止歯32a2が鋸刃ギア28に係合している状態では、第2係止歯32a3が鋸刃ギア28から離間した状態にあり、第2係止歯32a3が鋸刃ギア28に係合した状態では、第1係止歯32a2が鋸刃ギア28から離間した状態となる。
ロック制御部材32bは、ロック部材の動きを制御する部材であり、その外周部に押圧突起32b1と、支承回転部32b2が設けられている。支承回転部32b2は、ケーシング12を基点として、押圧手段32dによる押圧力が付与される要素であり、押圧力支承部aと、押圧回転部bとを有する。押圧力支承部aは、押圧力を受けた状態でロック制御部材32bを安定保持する部位であり、押圧回転部bは、付与された押圧力をロック制御部材32bを回転させる力に変換し、ロック制御部材32bを所定の方向に回動させる役割を担う。
トーションバネ32cは、ロック制御部材32bと、ロック部材32aとの間に生じる捻じれ方向の力を相対的な反発力として両者に伝達する役割を担う。このため、第1ロック手段32は、ロック制御部材32bを固定した状態で、回動軸32a1を基点として所定の回転角度内で、ロック部材32aを回動可能に支持することが可能となる。具体的には、第1ロック手段32が、鋸刃ギア28から第1係止歯32a2を離間させた状態で固定されている際、鋸刃ギア28に第2係止歯32a3が係合される位置にあっても、回転体24がワイヤ38を引き出す方向に回転した場合には、第2係止歯32a3が、鋸刃ギア28の鋸刃を乗り越え可能な範囲でロック部材32aを回動させることができる。このため、第2係止歯32a3は、ワイヤ38が引き出される方向には回転抑止の力を働かせる事無く、回転体24がワイヤ38を巻き取る方向に回転する方向にのみ、回転抑止の力を作用させることができる。
ロック解除手段34は、第1ロック手段32による回転体24の回転抑制を解除する役割を担う要素である。本実施形態に係るロック解除手段34は、解除ボタン34aと、解除突起34bを備えている。そして、解除ボタン34aが矢印Aの方向へ押し込まれる事により、回動基点34c(図2参照)を軸としてロック解除手段34が回動し、解除突起34bによりロック制御部材32bの押圧突起32b1が押圧される。この作用により、ロック制御部材32bが矢印Bの方向に回動する。
ロック制御部材32bが矢印Bの方向へ回動すると、押圧手段32dが押圧支承部aを押圧することとなり、ロック制御部材32dは安定状態となる。この状態では、ロック部材32aの第1係止歯32a2は鋸刃ギア28から離間し、第2係止歯32a3が鋸刃ギア28に係合することとなる。
この状態でワイヤ38を引き出す方向に回転体24が回転すると、鋸刃ギア28によって第2係止歯32a3が押圧され、ロック制御部材32bに矢印Bと反対方向の力が作用する。これにより、押圧手段32dによる押圧力が押圧回転部bに作用することとなり、第1ロック手段32は、第1係止歯32a2を鋸刃ギア28に係合させるロック状態に回帰する。
第2ロック手段36は、ワイヤ38に所定値以上の強い引っ張り力が作用した際に、回転体24の回転抑制を補助する役割を担う部材である。本実施形態に係る第2ロック手段36は、ケーシング12の内部に設けられた空きスペースであって、巻取ドラム26と、ケーシング12に設けられたワイヤ引出口14との間に配されるワイヤ38の外周側(回転体24の中心を基点として)に設けられている。
第2ロック手段36は、回動中心36aを支点として、第3係止歯36bと、作動レバー36cとを備える構成とされている。第3係止歯36bは、回転体24における鋸刃ギア28に係合する部位であり、作動レバー36cは、第3係止歯36bを鋸刃ギア28に押しけるための力が加えられる部位である。すなわち、回動中心36aを支点とした場合、第3係止歯36bは作用点であり、作動レバー36cは力点となる。本実施形態では、押圧手段36dを設け、作動レバー36cに対して、ケーシング12を基点とした押圧方向の付勢力を付与するように構成している。このような構成とすることにより、平常時に第2ロック手段36の第3係止歯36bが鋸刃ギア28に係合してしまうといった事態を防ぐことができる。
[作用]
上記のような構成の締付装置10は、図3に示すように、2ヶ所の締付点(本実施形態では、第1締付点(=取付基部18の中心点O)と第2締付点Qと称す)の間に配置されて使用されることとなる。具体的には、ケーシング12を構成する取付基部18を第1締付点(中心点O)に固定し、ワイヤ38を第2締付点Q側に伸ばし、タイヤチェーン側に備えられている締付ワイヤ(不図示)と接続する。このような配置形態とすることで、ワイヤ38の巻き取りにより、タイヤチェーンの締付を実施することができる。
上記のような構成の締付装置10は、図3に示すように、2ヶ所の締付点(本実施形態では、第1締付点(=取付基部18の中心点O)と第2締付点Qと称す)の間に配置されて使用されることとなる。具体的には、ケーシング12を構成する取付基部18を第1締付点(中心点O)に固定し、ワイヤ38を第2締付点Q側に伸ばし、タイヤチェーン側に備えられている締付ワイヤ(不図示)と接続する。このような配置形態とすることで、ワイヤ38の巻き取りにより、タイヤチェーンの締付を実施することができる。
上記のような構成で、上記のような配置形態を採られる締付装置10では、回転体24に対してワイヤ38を引き出す方向の力(矢印Cで示す方向の力)が加えられると第1ロック手段32により回転体24の回転が抑制(ロック)される。
回転体24の回転がロックされた状態で、さらにワイヤ38を引き出す力が加えられると、締付装置10は図4に示すように、第1締付点Oと回転体24におけるワイヤ38の送出し点(ワイヤの接線位置の点)P、及び第2締付点Qを結ぶ線の距離が短くなるように、すなわちワイヤ38の送出し点Pが、第1締付点Oと第2締付点Qとを結ぶ直線に近づくように、締付装置10が回動する。なお、締付装置10の回動は、取付基部18を基点として、矢印Dの方向に生じることとなる。
この動きにより、ワイヤ引出口14から引き出されているワイヤ38は、回転体24の半径方向外周側、すなわちワイヤ引出口14の下端点UD側から、上端点UP側へせり上がるように動くこととなる。
このワイヤ38の動きにより、第2ロック手段36の作動レバー36cが矢印Eの方向へ押圧され、第3係止歯36bが鋸刃ギア28に係合する。これにより、鋸刃ギア28には図5に示すように、第1ロック手段32による第1係止歯32a2と、第2ロック手段36による第3係止歯36bが係合することとなる。よって、回動に起因して第1係止歯32a2と鋸刃ギア28との間に生じる応力が、第3係止歯36bに分散されることとなる。
なお、ワイヤ38の送出し点Pが、第1締付点Oと第2締付点Qを結ぶ直線に近づく様子については、図6に示す。図6において(A)は、通常の引っ張り荷重の付加により、第1ロック手段32のみが作用している状態における3点の関係を示す。また、(B)は、ワイヤ38に対する引張荷重の増加により、締付装置10が矢印Dで示す方向に回動し始めた状態における3点の関係を示す。さらに(C)は、ワイヤ38に対する引張荷重に起因して、第2ロック手段36が作用している状態における3点の関係を示す。図6(A)~(C)より、三角形OPQの頂点Pが潰れて行き、第1締付点Oと第2締付点Qを結ぶ直線に近づいてきていることが読み取れる。
[効果]
上記のような締付装置10によれば、ワイヤ38に対して所定値以上の引っ張り荷重が加えられたとしても、係合部の損傷を防ぐことが可能となる。また、第2ロック手段36は、従来の締付装置の構造を有するケーシング12の内部に設けられたデッドスペースを利用、あるいは当該デッドスペースを若干広げるようにケーシング12を構成した上で配置されるため、締付装置10を大型化することなく、新たな機能を追加することが可能となる。さらに、第2ロック手段36は、ワイヤ38に負荷される引っ張り荷重が所定の値を超えた場合に生じるワイヤ38の動きを利用して作動するため、作動のための機構を付加する必要が無い。
上記のような締付装置10によれば、ワイヤ38に対して所定値以上の引っ張り荷重が加えられたとしても、係合部の損傷を防ぐことが可能となる。また、第2ロック手段36は、従来の締付装置の構造を有するケーシング12の内部に設けられたデッドスペースを利用、あるいは当該デッドスペースを若干広げるようにケーシング12を構成した上で配置されるため、締付装置10を大型化することなく、新たな機能を追加することが可能となる。さらに、第2ロック手段36は、ワイヤ38に負荷される引っ張り荷重が所定の値を超えた場合に生じるワイヤ38の動きを利用して作動するため、作動のための機構を付加する必要が無い。
[変形例]
上記実施形態では、第2ロック手段における第2ロック手段36の押圧手段36dについて、同径の弦巻バネを利用するように示した。しかしながら、押圧手段36dについては、その機能を果たす事ができれば、具体的な構成を問うものでは無い。よって、図7に示すような上下異径の弦巻バネを押圧手段36dとしても良い。さらに、図8に示すような捻りにより付勢力を生じさせるバネであっても良い。
上記実施形態では、第2ロック手段における第2ロック手段36の押圧手段36dについて、同径の弦巻バネを利用するように示した。しかしながら、押圧手段36dについては、その機能を果たす事ができれば、具体的な構成を問うものでは無い。よって、図7に示すような上下異径の弦巻バネを押圧手段36dとしても良い。さらに、図8に示すような捻りにより付勢力を生じさせるバネであっても良い。
[第2実施形態:構成]
次に、図9、図10を参照して、第2実施形態に係る締付装置について説明する。本実施形態に係る締付装置10Aの殆どの構成は、上述した第1実施形態に係る締付装置10と同様である。よって、その構成が同様な部分については、図面に同一符号を付して詳細な説明を省略することとする。
次に、図9、図10を参照して、第2実施形態に係る締付装置について説明する。本実施形態に係る締付装置10Aの殆どの構成は、上述した第1実施形態に係る締付装置10と同様である。よって、その構成が同様な部分については、図面に同一符号を付して詳細な説明を省略することとする。
本実施形態に係る締付装置10Aと、第1実施形態に係る締付装置10との相違点は、第2ロック手段36の形態にある。第1実施形態に係る締付装置10では、第2ロック手段36をレバー型としていたのに対し、本実施形態に係る締付装置では、第2ロック手段36を溝型としている。
具体的には、ケーシング12におけるワイヤ引出口14と、回転体24におけるワイヤ38の送出し点Pとの間にV字溝36eを設けた板を設け、これを第2ロック手段36としている。本実施形態に係る締付装置10Aの第2ロック手段36は、ワイヤ引出口14の下端点UD側に開口部を配置し、上端点UP側に向けて溝幅が狭くなるように構成しているV字溝36eを備えた板である。第2ロック手段36に設けられているV字溝36eは、下端側がワイヤ38の直径よりも広く形成されており、上端側に向かうに連れてワイヤ38の直径よりも狭くなるように構成されている。
また、本実施形態に係る締付装置10Aのケーシング12には、第2ロック手段36とワイヤ引出口14との間の側壁に、ワイヤ引出口14の上下方向(上端点UPと下端点UDの配置方向)に沿う方向の溝12aを設けている。そして、第2ロック手段36とワイヤ引出口14との間に設けられている間隙には、溝12aに沿ってスライド可能なスライダ40が設けられている。
スライダ40は、ワイヤ38の延設方向と交差する主面に貫通孔(不図示)が設けられており、ワイヤ38を挿通させる事を可能な構成としている。
[作用]
このような特徴を有する締付装置10Aでは、第1ロック手段32により回転体24の回転が抑制された後、さらにワイヤ38を引き出す方向の力が加えられると、第1実施形態に係る締付装置10と同様に、取付基部18を基点とした回動が生じ、ワイヤ38は、ワイヤ引出口14の下端点UD側から上端点UP側へせり上がろうとする。
このような特徴を有する締付装置10Aでは、第1ロック手段32により回転体24の回転が抑制された後、さらにワイヤ38を引き出す方向の力が加えられると、第1実施形態に係る締付装置10と同様に、取付基部18を基点とした回動が生じ、ワイヤ38は、ワイヤ引出口14の下端点UD側から上端点UP側へせり上がろうとする。
このようなワイヤ38の動きに伴い、スライダ40はワイヤ38と共に移動する。そして、ワイヤ38は、図11に示すように、第2ロック手段36のV字溝36eの幅が狭い部分へと嵌り込むこととなる。これにより、ワイヤ38には、ストッパが噛ませられた状態となり、ワイヤ38を引き出す方向の力が緩和され、回転体24に付加される回転力が抑制されることとなる。
[効果]
このような構成の締付装置10Aであっても、ワイヤ38に対して所定値以上の引っ張り荷重が加えられた場合に生じる係合部の損傷を防ぐことが可能となる。また、第2ロック手段36は、従来の締付装置の構造を有するケーシング12の内部に設けられたデッドスペースを利用、あるいは当該デッドスペースを若干広げるようにケーシング12を構成した上で配置されるため、締付装置10Aを大型化することなく、新たな機能を追加することが可能となる。さらに、第2ロック手段36は、ワイヤ38に負荷される引っ張り荷重が所定の値を超えた場合に生じるワイヤ38の動きを利用して作動するため、作動のための機構を付加する必要が無い。
このような構成の締付装置10Aであっても、ワイヤ38に対して所定値以上の引っ張り荷重が加えられた場合に生じる係合部の損傷を防ぐことが可能となる。また、第2ロック手段36は、従来の締付装置の構造を有するケーシング12の内部に設けられたデッドスペースを利用、あるいは当該デッドスペースを若干広げるようにケーシング12を構成した上で配置されるため、締付装置10Aを大型化することなく、新たな機能を追加することが可能となる。さらに、第2ロック手段36は、ワイヤ38に負荷される引っ張り荷重が所定の値を超えた場合に生じるワイヤ38の動きを利用して作動するため、作動のための機構を付加する必要が無い。
[変形例]
上記実施形態では、ワイヤ引出口14と第2ロック手段36との間にスライダ40を設ける旨記載した。スライダ40は、ワイヤ38のスライド方向を安定させるために有用であるが、図12に示すように、スライダ40を省いた状態でも、本実施形態に係る締付装置10Aとして機能させることはできる。
上記実施形態では、ワイヤ引出口14と第2ロック手段36との間にスライダ40を設ける旨記載した。スライダ40は、ワイヤ38のスライド方向を安定させるために有用であるが、図12に示すように、スライダ40を省いた状態でも、本実施形態に係る締付装置10Aとして機能させることはできる。
[第3実施形態:構成]
次に、図13から図17を参照して、第3実施形態に係る締付装置について説明する。なお、図面において、図13は、第3実施形態に係る締付装置のケーシングの一部を取り外した分解構成を示す斜視図であり、図14は、同部分拡大図である。また、図15は、第3実施形態に係る締付装置の背面図であり、図16は、図15におけるA-A断面を示す図である。さらに、図17は、図16における部分拡大図である。
次に、図13から図17を参照して、第3実施形態に係る締付装置について説明する。なお、図面において、図13は、第3実施形態に係る締付装置のケーシングの一部を取り外した分解構成を示す斜視図であり、図14は、同部分拡大図である。また、図15は、第3実施形態に係る締付装置の背面図であり、図16は、図15におけるA-A断面を示す図である。さらに、図17は、図16における部分拡大図である。
また、本実施形態に係る締付装置10Bの殆どの構成は、上述した第1、第2実施形態に係る締付装置10と同様である。よって、その構成が同様な部分については、図面に同一符号を付して詳細な説明を省略することとする。
本実施形態に係る締付装置10Bと、第1、第2実施形態に係る締付装置10,10Aとの相違点は、第2ロック手段36の配置と構成である。本実施形態に係る締付装置10Bは、ケーシング12に突起42を設けることで、第2ロック手段36を構成している。具体的には、回転体24における鋸刃ギア28を配置している側に隣接するケーシング12の側壁に突起42を設け、これを第2ロック手段36としている。
第2ロック手段36は、回転軸を通る垂線L1を基点としてワイヤ引出口14側であって、鋸刃ギア28の歯の周回上に位置する側壁に設けられている。また、第2ロック手段36は、鋸刃ギア28の歯に当接する当接面42aを有し、その高hさは、無負荷時に回転体24(鋸刃ギア28)とケーシング12との間に形成される間隙D以下とする。
[作用]
このような構成の締付装置10Bでは、第1ロック手段32により回転体24の回転が抑制された後、さらにワイヤ38を引き出す方向の力が加えられると、回転体24がワイヤ38による引っ張り方向に傾くこととなる。
このような構成の締付装置10Bでは、第1ロック手段32により回転体24の回転が抑制された後、さらにワイヤ38を引き出す方向の力が加えられると、回転体24がワイヤ38による引っ張り方向に傾くこととなる。
回転体24の傾きは、回転軸20を基点として生じる。また、回転体24には、巻取ドラム26と鋸刃ギア28が備えられており、巻取ドラム26側がより強く引っ張り荷重を受けることとなる。このため、回転軸20(例えば回転軸20の中心)を通る垂線L1よりもワイヤ引出口14側に位置する鋸刃ギア28は、ケーシング12の側壁との隙間Dを狭める方向に傾くこととなる。
このため、鋸刃ギア28の歯が第2ロック手段36を構成する突起42に係合し、回転体24の回転を抑制することとなる。
[効果]
このような構成の締付装置10Bであっても、ワイヤ38に対して所定値以上の引っ張り荷重が加えられた場合に生じる係合部の損傷を防ぐことが可能となる。また、第2ロック手段36は、従来の締付装置の構造を有するケーシング12の内部に設けられたデッドスペースを利用して配置されるため、締付装置10を大型化することなく、新たな機能を追加することが可能となる。さらに、第2ロック手段36は、ワイヤ38に負荷される引っ張り荷重が所定の値を超えた場合に生じる回転体24の傾きを利用して作動するため、作動のための機構を付加する必要が無い。
このような構成の締付装置10Bであっても、ワイヤ38に対して所定値以上の引っ張り荷重が加えられた場合に生じる係合部の損傷を防ぐことが可能となる。また、第2ロック手段36は、従来の締付装置の構造を有するケーシング12の内部に設けられたデッドスペースを利用して配置されるため、締付装置10を大型化することなく、新たな機能を追加することが可能となる。さらに、第2ロック手段36は、ワイヤ38に負荷される引っ張り荷重が所定の値を超えた場合に生じる回転体24の傾きを利用して作動するため、作動のための機構を付加する必要が無い。
なお、上記実施形態では、第1から第3の実施形態の構成をそれぞれ分けて記載したが、各構成を選択的に組み合わせたとしても、本願発明の一部となることはいうまでも無い。
10,10A,10B………締付装置、12………ケーシング、12a………溝、14………ワイヤ引出口、16………押圧ボタン突出口、18………取付基部、18a………取付孔、20………回転軸、24………回転体、26………巻取ドラム、28………鋸刃ギア、30………巻取バネ、32………第1ロック手段、32a………ロック部材、32a1………回動軸、32a2………第1係止歯、32a3………第2係止歯、32b………ロック制御部材、32b1………押圧突起、32b2………支承回転部、32c………トーションバネ、32d………押圧手段、34………ロック解除手段、34a………解除ボタン、34b………解除突起、34c………回動基点、36………第2ロック手段、36a………回動中心、36b………第3係止歯、36c………作動レバー、36d………押圧手段、36e………V字溝、38………ワイヤ、40………スライダ、42………突起、42a………当接面。
Claims (5)
- ケーシング内に備えた回転体によりワイヤの送出しや巻取りを行うタイヤチェーンの締付装置であって、
前記回転体の回転を抑制して前記ワイヤが引き出される事を阻害する第1ロック手段と、
前記ワイヤに対して通常付与される引っ張り荷重を超える荷重が負荷された際に前記ワイヤ、または前記回転体に生じる変化に起因して稼働し、前記回転体の回転を阻害する第2ロック手段と、を備えたことを特徴とするタイヤチェーンの締付装置。 - 前記ケーシングは、タイヤチェーンの締付点に対する取付基部とワイヤ引出口とを有し、前記取付基部と前記ワイヤ引出口とを結ぶ直線と、前記回転体におけるワイヤの送出し位置とが半径方向に離間しており、
前記第2ロック手段は、前記ケーシングから引き出されているワイヤが前記回転体の半径方向に動く事に起因して稼働する構成としたことを特徴とする請求項1に記載のタイヤチェーンの締付装置。 - 前記第2ロック手段は、前記ワイヤの動きにより力点が移動し、作用点を前記回転体に接触させるレバーであることを特徴とする請求項2に記載のタイヤチェーンの締付装置。
- 前記第2ロック手段の稼働は、前記ワイヤを挟み込む事による構成としたことを特徴とする請求項2に記載のタイヤチェーンの締付装置。
- 前記第2ロック手段は、前記ワイヤに負荷される引っ張り荷重に起因して傾く前記回転体に接触する突起であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤチェーンの締付装置。
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