JP7429417B2 - 非水電解質二次電池、非水電解質二次電池用の正極活物質およびその製造方法 - Google Patents

非水電解質二次電池、非水電解質二次電池用の正極活物質およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、非水電解質二次電池、非水電解質二次電池用の正極活物質およびその製造方法に関する。
マグネシウムは、リチウムと比較して、高い理論容量密度を持ち、資源量が豊富で、安全性が高いなどの利点を有する。このため、マグネシウムを利用した非水電解質二次電池の実用化が期待されている。
非特許文献1には、正極活物質としてシェブレル相を有するMoを用いたマグネシウム非水電解質二次電池が開示されている。非特許文献2には、正極活物質として硫黄を用いたマグネシウム非水電解質二次電池が開示されている。
Nature,Vol.407,724-727(2000) Nature Communications,Vol.2,427(2011)
しかしながら、二価のマグネシウムイオンは、一価のリチウムイオンと比較して、相互作用が強く、固相内で拡散しにくい。このため、マグネシウム非水電解質二次電池は、電極反応が遅く、実用的な放電容量や充電速度が得られにくい。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、放電容量が高く、かつ急速充電が可能な非水電解質二次電池と、マグネシウムイオンなどのカチオンが拡散しやすく、放電容量が高く、かつ急速充電が可能な正極活物質およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、カチオンが欠陥した金属硫化物を含有する金属硫化物粒子は、マグネシウムなどのカチオンが拡散しやすく、これを正極活物質として用いた非水電解質二次電池は、高容量で、かつ急速充電が可能となることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
[1]正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、負極活物質を含む負極活物質層を有する負極と、非水電解質とを備え、前記正極活物質が、充電状態において、カチオンが欠陥した金属硫化物を含有する金属硫化物粒子を含む非水電解質二次電池。
[2]前記金属硫化物粒子は、金属硫化物相と硫黄相とを有する[1]に記載の非水電解質二次電池。
[3]カチオンが欠陥した金属硫化物を含有する金属硫化物粒子を含む非水電解質二次電池用の正極活物質。
[4]前記金属硫化物粒子は、金属硫化物相と硫黄相とを有する[3]に記載の非水電解質二次電池用の正極活物質。
[5]金属硫化物を含有する金属硫化物粒子を、溶媒中で電気化学的に酸化することによって、前記金属硫化物に含まれる金属を前記溶媒中に溶出させる非水電解質二次電池用の正極活物質の製造方法。
本発明によれば、放電容量が高く、かつ急速充電が可能な非水電解質二次電池と、マグネシウムイオンなどのカチオンが拡散しやすく、放電容量が高く、かつ急速充電が可能な正極活物質およびその製造方法を提供することが可能となる。
本発明の一実施形態に係るマグネシウム非水電解質二次電池の概略断面図である。 本発明の一実施形態に係る正極活物質の断面図である。 実施例1で作製した電気化学セルの断面図である。 実施例1で作製した硫化鉄シートのSEM写真であって、(a)は500倍率のSEM写真であり、(b)は2000倍率のSEM写真である。 実施例1で得られた充電後の硫化鉄シート(水洗浄)のSEM写真であって、(a)は500倍率のSEM写真であり、(b)は2000倍率のSEM写真である。 実施例1で得られた充電後の硫化鉄シート(トリグライム洗浄)のSEM写真であって、(a)は500倍率のSEM写真であり、(b)は2000倍率のSEM写真である。 実施例1で得られた放電後の硫化鉄シート(トリグライム洗浄後)のSEM写真であって、(a)は500倍率のSEM写真であり、(b)は2000倍率のSEM写真である。 実施例2で測定したサイクリックボルタンメトリーの測定結果である。 実施例3の条件1で行った充放電サイクル試験で得られた充放電カーブである。 実施例3の条件2で行った充放電サイクル試験で得られた充放電カーブである。 実施例3の条件3で行った充放電サイクル試験で得られた充放電カーブである。 実施例4で作製した電気化学セルの充放電サイクル試験で得られた充放電カーブである。 実施例5で作製した電気化学セルのサイクリックボルタンメトリーの測定結果である。 実施例6で作製した電気化学セルのサイクリックボルタンメトリーの測定結果である。
以下、本実施形態について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
図1は、本発明の一実施形態に係るマグネシウム非水電解質二次電池の概略断面図である。
図1に示すように、非水電解質二次電池1は、電池本体2と、この電池本体2を中温域(50~300℃)の動作温度に保持するための保温部3とを備えている。非水電解質二次電池1は、各種機器(図中、21)に接続されて用いることができる。
電池本体2は、図示しない密閉可能な電池容器内に、正極11と、負極12と、正極11および負極12の間に介在する非水電解質13と、正極11および負極12が互いに接触しないように離隔するためのセパレータ14とを備えている。正極11および負極12は、正極11における正極活物質層11bの表面と負極12における負極活物質層12bの表面とがセパレータ14を介して対向するように配置されている。これにより、正極11および負極12は、互いに直接接触しないように配置されている。
(正極)
正極11は、正極集電体11aと正極活物質層11bとを有する。
正極集電体11aの材料は、導電性を有するものであれば特に制限はない。正極集電体11aの材料としては、例えば、アルミニウム、プラチナ、炭素材料、モリブデン、タングステンを用いることができる。正極集電体11aの形状としては、例えば、板状、リボン状、箔体状、ワイヤー状などが挙げられるが、これらの形状に限定されるものではない。
正極活物質層11bは、正極活物質、導電助剤および結着剤を含む。
正極活物質は、充電状態において、カチオンが欠陥した金属硫化物を含有するカチオン欠陥金属硫化物粒子を含む。カチオン欠陥金属硫化物粒子は、カチオンが欠陥している部分にマグネシウムイオンなどのカチオンが拡散しやすい。このため、このカチオン欠陥金属硫化物粒子を正極活物質として用いた非水電解質二次電池は、高容量で、かつ急速充電が可能となる。なお、本実施形態において、充電状態とは、非水電解質二次電池1の充電率が100%である状態を意味する。
図2は、本発明の一実施形態に係る正極活物質(カチオン欠陥金属硫化物粒子)の断面図である。
図2に示すように、カチオン欠陥金属硫化物粒子100は、金属硫化物相101と硫黄相102とを有する。金属硫化物相101は表面に凹凸を有する核(コア)であり、硫黄相102は、この金属硫化物相101の表面に担持されていることが好ましい。硫黄相102は、金属硫化物相101の表面に海島構造を形成するように分散されていてもよいし、金属硫化物相101の表面全体を被覆していてもよい。カチオン欠陥金属硫化物粒子100中の硫黄の含有量は、60モル%以上99.8モル%以下の範囲内にあること好ましい。
カチオン欠陥金属硫化物粒子100に含有されているカチオン欠陥金属硫化物は、下記の一般式(1)または(2)で表される化合物であることが好ましい。
1-x=(1-x)AS+2xS・・・(1)
上記の一般式(1)において、Aは、2価から4価の金属のイオンを表す。xは、0.1以上0.998以下の範囲内にある数を表す。xは、0.43以上0.998以下の範囲内にある数であることが好ましい。
1-yS=(1-y)BS+yS・・・(2)
上記の一般式(2)において、Bは、2価の金属のイオンを表す。yは、0.1以上0.998以下の範囲内にある数を表す。yは、0.60以上0.998以下の範囲内にある数であることが好ましい。
AS又はBSで表される金属硫化物は、金属硫化物相101に含まれる。AS又はBSで表される金属硫化物は、化学量論組成である必要はなく、金属元素が欠陥していてもよい。ASで表される金属硫化物の例としては、TiS、VS、CrS、MnS、FeS、CoS、NiS、CuS、ZnS、GeS、YS、ZrS、NbS、MoS、TcS、RuS、RhS、PdS、CdS、SnS、WS、ReS、OsS、IrS、PtS、SrS、BaSを挙げることができる。これらの金属硫化物の中では、MnS、FeS、CoS、NiS、CuS、ZnS、RuS、RhS、OsS、IrSなどの結晶構造がパイライト型構造を有するものが好ましい。また、BSで表される金属硫化物の例としては、MgS、CaS、SrS、BaS、TiS、VS、CrS、MnS、FeS、CoS、NiS、CuS、ZnSを挙げることができる。
硫黄相102は、放電時にはマグネシウムが挿入されて、硫化マグネシウムを生成し、充電時にはマグネシウムを放出する。硫黄相102は、マグネシウム非水電解質二次電池1の充電時において、液体であってもよいし、固体であってもよい。硫黄相102は、金属硫化物相101に担持されているので、液体であっても、正極活物資層11bから外部に流出しにくい。充電時の硫黄相102が液体であることによって、放電時に硫黄相102内をマグネシウムが拡散しやすくなり、マグネシウム非水電解質二次電池1は、放電容量が高く、かつ急速充電が可能となる。
カチオン欠陥金属硫化物粒子100は、平均粒子径が10nm以上100μm以下の範囲内にあることが好ましい。
カチオン欠陥金属硫化物粒子100は、1種を単独で用いてもよいし、金属硫化物相101が異なる二種以上を組み合わせて用いてもよい。
カチオン欠陥金属硫化物粒子100は、例えば、カチオンが欠陥していない金属硫化物を含有する金属硫化物粒子を、溶媒中で電気化学的に酸化することによって、金属硫化物に含まれる金属を溶媒中に溶出させる方法を用いて製造することができる。原料の金属硫化物は、化学量論組成に対して硫黄が欠陥した硫黄欠陥硫化物であってもよい。溶媒としては、金属硫化物に含まれる金属を溶解し、硫黄を溶解しにくい硫黄難溶性の溶媒を用いることが好ましい。硫黄難溶性の溶媒としては、イオン液体を用いることができる。
金属硫化物粒子を電気化学的に酸化する方法としては、例えば、金属硫化物を含む正極前駆体を組み込んだ非水電解質二次電池を作製し、次いで非水電解質二次電池を充電することにより、金属硫化物を酸化溶解して、金属硫化物の金属の一部を溶出させる方法を用いることができる。また、正極前駆体を、酸化剤を含む溶媒に浸漬することによって、金属硫化物を酸化して、金属硫化物の金属の一部を溶出させる方法を用いることができる。
上記のカチオン欠陥金属硫化物粒子の製造方法では、金属硫化物の金属が溶出した部分が硫黄相を形成する。このため、上記の製造方法によって得られるカチオン欠陥金属硫化物粒子は、粒子表面に硫黄相が形成されやすくなる。
正極活物質層11bに含まれる導電助剤としては、例えば、炭素粉体、金属微粉体などの非水溶媒二次電池の正極活物質層の導電助剤として用いられる公知の導電材を用いることができる。炭素粉体としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラックを用いることかできる。
正極活物質層11bに含まれる結着剤としては、室温から中温域の温度で用いることができるものであればよい。結着剤の材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの熱可塑性フッ素樹脂、ガラス、ポリイミドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
正極活物質層11bの正極活物質(カチオン欠陥金属硫化物粒子)、導電材および結着剤の含有量は特に制限はないが、正極活物質の含有量は70質量%以上98質量%以下の範囲内にあることが好ましい。導電材の含有量は1質量%以上29質量%以下の範囲内にあることが好ましく、結着剤の含有量は1質量%以上29質量%以下の範囲内にあることが好ましい。
(負極)
負極12は、負極集電体12aと負極活物質層12bとを有する。
負極集電体12aの材料は、導電性を有するものであれば特に制限はなく、正極集電体11aの材料として例示した各種材料を用いることができる。負極集電体12aの形状としては、正極集電体11aの場合と同様に、板状、リボン状、箔体状、ワイヤー状などが挙げられるが、これらの形状に限定されるものではない。
負極活物質層12bは、負極活物質としてマグネシウムを含む。負極活物質層12bとしては、マグネシウム板、マグネシウム合金板を用いることができる。マグネシウム合金の例としては、マグネシウムとアルミニウムとの合金、マグネシウムとマンガンとの合金、マグネシウムと亜鉛との合金が挙げられる。
(非水電解質)
非水電解質13としては、マグネシウム塩とイオン液体とを含む混合物、あるいはマグネシウム塩と有機溶媒とを含む混合物を用いることができる。
マグネシウム塩の例としては、マグネシウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド[Mg(TFSA)]、マグネシウムビス(フルオロスルホニル)アミド[Mg(FSA)]を挙げることができる。マグネシウム塩は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
イオン液体の例としては、セシウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド[CsTFSA]、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[DEMETFSA]、N-メチル-N-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[PP13TFSA]、N-メチル-N-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[P13TFSA]を挙げることができる。イオン液体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶媒としては、グリコールエーテル類を用いることができる。グリコールエーテル類は両側末端の水酸基が同一の置換基で置換された対称グリコールエーテルであることが好ましい。置換基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1~4のアルキル基であることが好ましい。グリコールエーテル類の例としては、モノグライム[エチレングリコールジメチルエーテル]、エチルモノグライム[エチレングリコールジエチルエーテル]、ブチルモノグライム[エチレングリコールジブチルエーテル]、メチルジグライム[ジエチレングリコールジメチルエーテル]、エチルジグライム[ジエチレングリコールジエチルエーテル]、ブチルジグライム[ジエチレングリコールジブチルエーテル]、メチルトリグライム[トリエチレングリコールジメチルエーテル]、エチルトリグライム[トリエチレングリコールジエチルエーテル]、ブチルトリグライム[トリエチレングリコールジエチルエーテル]、メチルテトラグライム[テトラエチレングリコールジメチルエーテル]、エチルテトラグライム[テトラエチレングリコールジエチルエーテル]、ブチルテトラグライム[テトラエチレングリコールジブチルエーテル]などのグライム化合物を挙げることができる。グライム化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(セパレータ)
セパレータ14としては、例えば、多孔質フィルム、多孔質ガラス、ガラスメッシュなどの多孔質体などが挙げられる。また、正極11および負極12が互いに直接接触しないように構成されている場合は、セパレータ14を設けなくてもよい。
(保温部)
保温部3は、電池本体2の側部を覆うように設けられている。電池本体2を加熱するためのヒータ3aと電池本体2の温度を前記動作温度に維持するための断熱部材3bとを備えている。ヒータ3aは、断熱部材3bの内部に設けられている。これにより、ヒータ3aの熱エネルギーの損失を抑制することができ、電池本体2の温度を低いエネルギー消費量で所定の動作温度に保持することができる。非水電解質二次電池1は、前記中温域の動作温度で良好に用いることができる。前記動作温度は、通常、好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上であり、好ましくは200℃以下である。ただし、本実施形態の非水電解質二次電池1は室温で作動させてもよい。この場合は、保温部3は設けられていなくてもよい。
電池本体2の形状としては特に制限はなく、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角筒型などの非水電解質二次電池の形状として採用されている公知の形状とすることができる。
本実施形態のマグネシウム非水電解質二次電池1では、正極活物質として、カチオン欠陥金属硫化物粒子を用いているので、正極活物質層11bはマグネシウムイオンが拡散しやすい。このため、マグネシウム非水電解質二次電池1は、高容量で、かつ急速充電が可能となる。
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、上述の実施形態では、正極活物質として、カチオン欠陥金属硫化物粒子を用いているが、表面に、多孔質で、かつ硫黄濃度が中心部より高い多孔質硫黄リッチ層を有する金属硫化物粒子を用いてもよい。この場合、金属硫化物粒子は粒子全体としての金属と硫黄の比率が量論組成比であってもよい。
また、上述の実施形態では、非水電解質二次電池を負極活物質がマグネシウムを含むマグネシウム非水電解質二次電池として説明したが、非水電解質二次電池の負極活物質はこれに限定されるものではない。非水電解質二次電池は、負極活物質がリチウムを含むリチウム非水電解質二次電池であってもよいし、負極活物質がナトリウムを含むナトリウム非水電解質二次電池であってもよい。
リチウム非水電解質二次電池の場合は、非水電解質として、リチウム塩とイオン液体とを含む混合物、あるいはリチウム塩と有機溶媒とを含む混合物を用いることができる。リチウム塩としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、ホウフッ化リチウム(LiBF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド[Li(TFSA)]、リチウムビス(フルオロスルホニル)アミド[Li(FSA)]を用いることができる。これらのリチウム塩は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。イオン液体は、マグネシウム非水電解質二次電池の場合と同じである。有機溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状エーテル、グライム化合物を用いることができる。環状カーボネートの例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネートを挙げることができる。鎖状カーボネートの例としては、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネートを挙げることができる。環状エーテルの例としては、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランを挙げることができる。グライム化合物の例は、マグネシウム非水電解質二次電池の場合と同じである。これらの有機溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。負極活物質としては、リチウム、リチウム合金を用いることができる。リチウム合金の例としては、リチウムアルミニウム合金、リチウムケイ素合金、リチウム錫合金を挙げることができる。
ナトリウム非水電解質二次電池の場合は、非水電解質として、ナトリウム塩とイオン液体とを含む混合物、あるいはナトリウム塩と有機溶媒とを含む混合物を用いることができる。ナトリウム塩としては、ナトリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド[Na(TFSA)]、ナトリウムビス(フルオロスルホニル)アミド[Na(FSA)]を挙げることができる。ナトリウム塩は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。イオン液体および有機溶媒は、マグネシウム非水電解質二次電池の場合と同じである。負極活物質としては、ナトリウム、ナトリウム合金を用いることができる。ナトリウム合金の例としては、ナトリウムカリウム合金、ナトリウムリチウム合金、ナトリウム錫合金を挙げることができる。
[実施例1]
(1)硫化鉄シートの作製
硫化鉄(FeS)粉末と、カーボンブラック(CB)と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを、質量比で80:10:10(=硫化鉄粉末:CB:PVDF)の割合で混合した。得られた硫化鉄含有組成物と溶媒(=NMP:N-メチル-2-ピロリドン)とを、質量比で1:5(=混合物:NMP)の割合で混合して硫化鉄含有組成物ペーストを得た。プラチナ箔製の集電体の表面に、得られた硫化鉄含有組成物ペーストを、硫化鉄量が16.8μg/mmとなるように塗布し、乾燥して、プラチナ箔製の集電体の上に硫化鉄含有組成物層が形成された硫化鉄シートを得た。
(2)電気化学セルの作製
アルゴンガス雰囲気に保たれたグローブボックス内で、図3に示される三電極式の電気化学セル50を作製した。電気化学セル50は、評価用電極51(作用電極)と、対極52と、参照電極53と、電解液54と、容器55と、容器55内を所定の動作温度に保持するための保温部56とから構成されている。なお、電気化学セルは、評価用電極51を正極として充放電した。
評価用電極51は、上記(1)で得られた硫化鉄シートであり、プラチナ箔製の集電体51aと、集電体51a上に設けられた硫化鉄含有組成物層51bとを備えている。対極52は、マグネシウムリボンからなる。参照電極53は、リチウム箔からなる参照電極本体53aと、参照電極用電解液53bと、参照電極本体53aを電解液54から隔離するガラス管部53cと、ガラス管部53cと一体的に形成され、当該ガラス管部53cの内部と外部との間の電気的接続を確保するための多孔質ガラス部53dとを備えている。参照電極本体53aは、評価用電極51および対極52と電気的に接続しているが、電解液54と直接接触しないように構成されている。容器55は、容器本体55aと、蓋部55bとを備えている。保温部56は、ヒータ56aとアルミニウム製ブロック56bとを備えている。電気化学セル50の評価用電極51、対極52および参照電極53は、それぞれ、電極リード61a、61b、61cを介してポテンショスタット61に接続されている。参照電極用電解液53bは、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド[LiTFSA]を0.5モル/Lの濃度で含有するN,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[DEMETFSA]である。なお、電解液54は、マグネシウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド[Mg(TFSA)]とセシウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド[CsTFSA]とを、MgとCsを原子比で10:90(=Mg:Cs)の割合で含む混合液である。
(3)電気化学セル50の充電試験
上記(2)で得られた電気化学セル50を、電気化学測定装置[バイオロジック(BioLogic)社製、商品名:VMP3]を用いて、評価用電極51(硫化鉄シート)中の硫化鉄の質量に対して300mAhg-1の電流密度で1時間充電して、評価用電極51を酸化した。電気化学セル50の容器55内(電解液の温度)の温度は150℃とした。
(4)電気化学セル50の放電試験
上記(3)で充電した電気化学セル50を、電気化学測定装置[バイオロジック(BioLogic)社製、商品名:VMP3]を用いて、評価用電極51(硫化鉄シート)中の硫化鉄の質量に対して300mAhg-1の電流密度で1時間放電した。電気化学セル50の容器55内の温度(電解液の温度)は150℃とした。
(5)評価
(硫化鉄シートの表面形状と元素分析)
上記(1)で作製した硫化鉄シートについて、SEM(走査電子顕微鏡)による表面観察とEDX(エネルギー分散型X線分析)による元素分析を行った。図4の(a)に500倍率で観察したSEM写真を、(b)に2000倍率で観察したSEM写真を示す。また、図4(a)のSEM写真に、EDXによる元素分析を行った箇所を示し、元素分析の結果を下記の表1に示す。なお、下記の表1中、全体は、500倍率で観察したSEM写真で撮影された部分全体の元素分析の結果である。
(充電後の評価用電極(硫化鉄シート)の水洗浄の表面形状と元素分析)
上記(3)で充電した後の電気化学セル50から回収した評価用電極51(硫化鉄シート)を水で洗浄し、乾燥した。得られた充填後の硫化鉄シートについて、SEMによる表面観察とEDXによる元素分析を行った。図5の(a)に500倍率で観察したSEM写真を、(b)に2000倍率で観察したSEM写真を示す。また、図5(a)のSEM写真に、EDXによる元素分析を行った箇所を示し、元素分析の結果を下記の表1に示す。
(充電後の評価用電極(硫化鉄シート)のトリグライム洗浄の表面形状と元素分析)
上記(3)で充電した後の電気化学セル50から回収した評価用電極51(硫化鉄シート)をトリグライム(G3)で洗浄し、乾燥した。得られた充填後の硫化鉄シートについて、SEMによる表面観察とEDXによる元素分析を行った。図6の(a)に500倍率で観察したSEM写真を、(b)に2000倍率で観察したSEM写真を示す。また、図6(a)のSEM写真に、EDXによる元素分析を行った箇所を示し、元素分析の結果を下記の表1に示す。
(放電後の評価用電極(硫化鉄シート)のトリグライム洗浄の表面形状と元素分析)
上記(4)で放電した後の電気化学セル50から回収した評価用電極51(硫化鉄シート)をトリグライム(G3)で洗浄し、乾燥した。得られた充填後の硫化鉄シートについて、SEMによる表面観察とEDXによる元素分析を行った。図7の(a)に500倍率で観察したSEM写真を、(b)に2000倍率で観察したSEM写真を示す。また、図7(a)のSEM写真に、EDXによる元素分析を行った箇所を示し、元素分析の結果を下記の表2に示す。なお、下記の表2中、全体は、500倍率で観察したSEM写真で撮影された部分全体の元素分析の結果である。
Figure 0007429417000001
Figure 0007429417000002
充電前の硫化鉄シートは、図4のSEM写真から、硫化鉄粉末とカーボンブラックとポリフッ化ビニリデンを含むマトリックス部分((a)のSEM写真のAの部分)と、硫化鉄の粗大粒子部分((a)のSEM写真のBの部分)とを有することがわかる。
充電後の硫化鉄シート(水洗浄)は、図5のSEM写真から、充電前の硫化鉄シートと比較して、マトリックス部分に粗大な孔が形成されていることがわかる。この粗大な孔は、充電(酸化)によって、硫化鉄粒子に含まれる鉄が電解液中に溶出して、硫化鉄粒子に硫黄相が生成する際に生成したものと考えられる。また、表1の元素分析の結果から充電後の硫化鉄シートに含まれている硫化鉄粒子は、化学量論組成に対して鉄が欠陥した鉄欠陥硫化鉄粒子であることがわかる。特に、C部分の鉄欠陥硫化鉄粒子は、鉄の含有量が0.4モル%にまで低減していることがわかる。
一方、充電後の硫化鉄シート(トリグライム洗浄)は、図6のSEM写真から、充電後の硫化鉄シート(水洗浄)と比較して、マトリックス部分に微細な孔が形成されていることがわかる。また、表1の元素分析の結果から、充電後の硫化鉄シートに含まれている硫化鉄粒子は、化学量論組成に近いことがわかる。これは、充電(酸化)によって生成した硫黄相がトリグライム中に溶出したためであり、その硫黄相が溶出した部分が微細な孔を形成していると考えられる。
また、放電後の硫化鉄シート(トリグライム洗浄)は、図7のSEM写真から、充電後の硫化鉄シート(トリグライム洗浄)と比較して、マトリックス部分の孔が少ないことがわかる。また、表2の元素分析の結果から、充電後の硫化鉄シートに含まれている鉄量と硫黄量とから硫化鉄シート中には、多量の硫黄相が残留していることがわかる。これは、放電(還元)によって硫黄相にマグネシウムが挿入されて、化学的に安定な硫化マグネシウムが生成したことにより、硫黄相がトリグライム洗浄では溶解しなかったためである。
以上の実施例1の結果から、硫化鉄シートを有機溶媒中で電気化学的に酸化することによって、硫化鉄に含まれる鉄を溶媒中に溶出させることができ、硫化鉄相と硫黄相とを有する鉄欠陥硫化鉄粒子を得ることが可能となることが確認された。
[実施例2]
実施例1の(2)で得られた電気化学セル50と電気化学測定装置[バイオロジック(BioLogic)社製、商品名:VMP3]とを用いて、評価用電極51(硫化鉄シート)のサイクリックボルタンメトリーを測定した。サイクリックボルタンメトリーは、以下の条件で測定した。なお、測定中は、電気化学セル50の容器55内の温度(電解液の温度)を150℃に維持した。その結果を、図8(a)~(d)に示す。
(サイクリックボルタンメトリーの測定条件)
第1サイクル:開始電位から負方向に1.5V(参照電極基準)まで1.0mV/秒の速度で掃引し、正方向に3.9V(参照電極基準)まで掃引する。
第2サイクル:負方向に1.5V(参照電極基準)まで1.0mV/秒の速度で掃引し、正方向に4.4V(参照電極基準)まで1.0mV/秒の速度で掃引する。
第3~5サイクル:負方向に2.0V(参照電極基準)まで1.0mV/秒の速度で掃引し、正方向に4.4V(参照電極基準)まで1.0mV/秒の速度で掃引する。
図8(a)~(d)のサイクリックボルタモグラムにおいて、横軸は電位であり、上側の横軸にはマグネシウム基準の電位が、下側の横軸には参照電極(リチウム)基準の電位が示されている。縦軸は電流値である。
図8(a)は、第1サイクルのサイクリックボルタモグラムである。図8(a)において、電位を負方向(硫化鉄シートを還元する方向)に掃引したときに観測されるピーク1Aは、硫化鉄シート中の硫化鉄粒子のFeSとMgが反応して硫化マグネシウムが生成するコンバージョン反応に起因するピークであると考えられる。このピーク1Aから算出される硫化鉄粒子の電気容量は50mAhg-1である。一方、電位を正方向(硫化鉄シートを酸化する方向)に掃引したときに観測されるピーク1Bは、このコンバージョン反応の逆反応に起因するピークであると考えられる。
図8(b)は、第1サイクルと第2サイクルのサイクリックボルタモグラムである。図8(b)において、電位を負方向に掃引したときに観測されるピーク2Aは、硫化鉄シート中の硫化鉄粒子のFeSとMgが反応して硫化マグネシウムが生成するコンバージョン反応に起因するピークであると考えられる。一方、電位を正方向に掃引したときに観測されるピーク2Bは、このコンバージョン反応の逆反応に起因するピークであると考えられる。その後の4.4V(参照電極基準)以降に観察されるピーク2Cは、硫化鉄粒子から鉄が溶出して硫化鉄相と硫黄相とを有する鉄欠陥硫化鉄粒子が生成したことに起因するピークである。
図8(c)は、第2サイクルと第3サイクルのサイクリックボルタモグラムである。図8(c)において、電位を負方向に掃引したときに観測されるピーク3Aは、硫化鉄シート中の鉄欠陥硫化鉄粒子の硫黄相にMgが挿入されて硫化マグネシウムが生成する反応に起因するピークである。第3サイクルのピーク3Aは、第1サイクルのピーク1Aおよび第2サイクルのピーク2Aと比較して明らかに大きい。これは、上記のFeSとMgのコンバージョン反応と比較して、鉄欠陥硫化鉄粒子の硫黄相はMgが挿入されやすく、硫化マグネシウムが生成しやすいためであると考えられる。また、第3サイクルのピーク3Aは、第1サイクルのピーク1Aおよび第2サイクルのピーク2Aと比較して電位が高電位側にシフトしている。これは、上記のFeSとMgのコンバージョン反応ではなく、鉄欠陥硫化鉄粒子の硫黄相にMgが挿入されて硫化マグネシウムが生成する反応に変化したためであると考えられる。一方、電位を正方向に掃引したときに観測されるピーク3Bは、鉄欠陥硫化鉄粒子の硫黄相からMgが脱離したことに起因するピークである。その後の3.9V以降に観察されるピークCは、硫化鉄粒子からFeが溶出したことに起因するピークである。
図8(d)は、第3サイクル~第5サイクルのサイクリックボルタモグラムである。図8(d)において、電位を負方向に掃引したときに観測されるピーク4Aおよび5Aは、鉄欠陥硫化鉄粒子の硫黄相にMgが挿入されて硫化マグネシウムが生成する反応に起因するピークである。一方、電位を正方向に掃引したときに観測されるピーク4Bおよび5Bは、鉄欠陥硫化鉄粒子の硫黄相からMgが脱離したことに起因するピークである。その後の3.9V以降に観察されるピークCは、硫化鉄粒子からFeが溶出して硫化鉄相と硫黄相とを有する鉄欠陥硫化鉄粒子が生成したことに起因するピークである。ピーク3A~5Aを比較すると、ピーク3A、ピーク4A、ピーク5Aの順にピークが高くなっている。これは、サイクル毎に鉄欠陥硫化鉄粒子が多くなり、これにより鉄欠陥硫化鉄粒子の硫黄相に挿入できるMg量が増加するためであると考えられる。一方、ピーク3C~5Cを比較すると、ピーク3C、ピーク4C、ピーク5Cの順にピークが低くなっている。これは、サイクル毎に硫化鉄粒子から溶出する鉄の量が低減するためであると考えられる。
[実施例3]
上記(2)で得られた電気化学セル50について、下記の条件1~条件3に従って電気化学セル50の充放電サイクル試験を行った。条件1の充放電サイクル試験で得られた充放電カーブを図9に示し、条件2の充放電サイクル試験で得られた充放電カーブを図10に示し、条件3の充放電サイクル試験で得られた充放電カーブを図11に示す。
(条件1)
評価用電極51(硫化鉄シート)中の硫化鉄の質量に対して447mAhg-1の電流密度で、447mAhg-1(1時間)の充電を行った。その後、放電終止電位:1.8V(参照電極基準)、充電終止電位:4.5V(参照電極基準)、電流密度:硫化鉄シート中の硫化鉄の質量基準で447mAhg-1の条件で充放電サイクルを繰り返した。充放電サイクル中、容器55内の温度(電解液の温度)は150℃とした。
(条件2)
評価用電極51(硫化鉄シート)中の硫化鉄の質量に対して447mAhg-1の電流密度で、223mAhg-1(0.5時間)の充電を行った。その後、放電終止電位:2.0V(参照電極基準)、充電終止電位:4.3V(参照電極基準)、電流密度:硫化鉄シート中の硫化鉄の質量基準で447mAhg-1の条件で充放電サイクルを繰り返した。充放電サイクル中、容器55内の温度(電解液の温度)は150℃とした。
(条件3)
評価用電極51(硫化鉄シート)中の硫化鉄の質量に対して894mAhg-1の電流密度で300mAhg-1(0.67時間)充電した。その後、放電終止電位:2.0V(参照電極基準)、充電終止電位:4.3V(参照電極基準)、電流密度:硫化鉄シート中の硫化鉄の質量基準で894mAhg-1の条件で充放電サイクルを繰り返した。充放電サイクル中、容器55内の温度(電解液の温度)は150℃とした。
図9~11の充放電カーブにおいて、横軸は正極活物質の質量基準の容量である。縦軸は電位であり、左側の縦軸には参照電極基準の電位が、右側の縦軸にはマグネシウム基準の電位が示されている。
図9の結果から、条件1で充放電したときの鉄欠陥硫化鉄は、容量が最大で447mAhg-1と高い値を示すことがわかる。また、図10の結果から、条件2で充放電したときの鉄欠陥硫化鉄は、容量は最大で247.1mAhg-1であり、条件1で充放電したときと比較して低くなるが、サイクルによる容量の低下が少なくなりサイクル特性は向上することがわかる。さらに、図11の結果から、電流密度が条件1および条件2と比較して2倍高い条件3で充放電したときの鉄欠陥硫化鉄は、容量は最大で200mAhg-1と低下するが、充電開始から充電終了までの時間が15~20分と短く、かつサイクル特性も向上することがわかる。
[実施例4]
実施例1の(1)硫化鉄シートの作製において、ポリフッ化ビニリデンの代わりに、ポリテトラフルオロエチレンを用い、硫化鉄粉末と、カーボンブラック(CB)と、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)との混合割合を、質量比で70:25:5(=硫化鉄粉末:CB:PTFE)の割合で混合したこと以外は、実施例1と同様にして硫化鉄シートを作製した。得られた硫化鉄シートを用いて、実施例1と同様に、電気化学セルを作製して、下記の条件4で充放電サイクル試験を行った。この充放電サイクル試験で得られた充放電カーブを、図12に示す。
(条件4)
評価用電極51(硫化鉄シート)中の硫化鉄の質量に対して200mAhg-1の電流密度で200mAhg-1(1時間)充電した。その後、充電終止電位:4.6V(参照電極基準)、放電終止電位:2.0V(参照電極基準)、電流密度:硫化鉄シート中の硫化鉄の質量基準で200mAhg-1の条件で充放電サイクルを繰り返した。充放電サイクル中、容器55内の温度(電解液の温度)は150℃とした。
図12の充放電カーブにおいて、横軸は正極活物質の質量基準の容量である。縦軸は電位であり、左側の縦軸には参照電極基準の電位が、右側の縦軸にはマグネシウム基準の電位が示されている。
図12の結果から、実施例4で作製した電気化学セルは、実施例1で作製した電気化学セルと比較すると、容量は低下したが、サイクルによる容量の低下が少なく、サイクル特性は向上することがわかる。
以上の結果から、鉄欠陥硫化鉄を正極活物質として用いた非水溶媒二次電池は、放電容量が高く、かつ急速充電が可能であることが確認された。また、非水溶媒二次電池の電気容量やサイクル特性は、正極の組成によって調整可能であることが確認された。
[実施例5]
対極52として、リチウム箔を用いたこと、電解液54として、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド[Li(TFSA)]とセシウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド[CsTFSA]とを、LiとCsを原子比で10:90(=Li:Cs)の割合で含む混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして電気化学セル50を作製した。得られた電気化学セル50と電気化学測定装置[バイオロジック(BioLogic)社製、商品名:VMP3]とを用いて、評価用電極51のサイクリックボルタンメトリーを、実施例2と同じ条件で測定した。その結果を、図13に示す。
図13の結果から、電解液にリチウム塩を利用した場合でも充電と放電を行うことが可能であることが確認された。また、充電電圧は2.4~2.6V(参照電極基準)であり、電解液にマグネシウム塩を利用した場合よりも低くなることが確認された。
[実施例6]
電解液54として、リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド[Li(TFSA)]と、マグネシウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド[Mg(TFSA)]と、セシウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミド[CsTFSA]とを、LiとMgとCsを原子比で10:10:80(=Li:Mg:Cs)の割合で含む混合液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして電気化学セル50を作製した。得られた電気化学セル50と電気化学測定装置[バイオロジック(BioLogic)社製、商品名:VMP3]とを用いて、評価用電極51のサイクリックボルタンメトリーを、実施例2と同じ条件で測定した。その結果を、図14に示す。
図14の結果から、電解液がリチウムとマグネシウムとを含む場合でも充電と放電を行うことが可能であることが確認された。また、充電電圧は2.4~2.6V、3.2~3.4V、4.0~4.2Vの3カ所の電位(いずれも参照電極基準)にピークが見られた。2.4~2.6Vのピークはリチウムの脱離によるものであり、3.2~3.4Vと4.0~4.2Vのピークはマグネシウムの脱離によるものであると考えられる。この結果から、電解液がリチウムとマグネシウムを含む場合は、リチウムとマグネシウムが並行して、鉄欠陥硫化鉄の硫黄相に挿入脱離することが確認された。
1 非水電解質二次電池
2 電池本体
3 保温部
3a ヒータ
3b 断熱部材
11 正極
11a 正極集電体
11b 正極活物質層
12 負極
12a 負極集電体
12b 負極活物質層
13 非水電解質
14 セパレータ
50 電気化学セル
51 評価用電極
51a 集電体
51b 硫化鉄含有組成物層
52 対極
53 参照電極
53a 参照電極本体
53b 参照電極用電解液
53c ガラス管部
53d 多孔質ガラス部
54 電解液
55 容器
55a 容器本体
55b 蓋部
56 保温部
56a ヒータ
56b アルミニウム製ブロック
61a、61b、61c 電極リード
61 ポテンショスタット
100 カチオン欠陥金属硫化物粒子
101 金属硫化物相
102 硫黄相

Claims (5)

  1. 正極活物質を含む正極活物質層を有する正極と、負極活物質を含む負極活物質層を有する負極と、非水電解質とを備え、
    前記正極活物質が、充電状態において、カチオンが欠陥した金属硫化物を含有する金属硫化物粒子を含む非水電解質二次電池。
  2. 前記金属硫化物粒子は、金属硫化物相と硫黄相とを有する請求項1に記載の非水電解質二次電池。
  3. カチオンが欠陥した金属硫化物を含有する金属硫化物粒子を含む非水電解質二次電池用の正極活物質。
  4. 前記金属硫化物粒子は、金属硫化物相と硫黄相とを有する請求項3に記載の非水電解質二次電池用の正極活物質。
  5. 金属硫化物を含有する金属硫化物粒子を、溶媒中で電気化学的に酸化することによって、前記金属硫化物に含まれる金属を前記溶媒中に溶出させる非水電解質二次電池用の正極活物質の製造方法。
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