<第1実施例>
図1,2,3は、本発明が適用された車椅子CH1の全体の構成を表す側面図、正面図、背面図であり、図4は図1中のA-A線における断面図、図5はB-B線における断面図、図6は上記車椅子CH1の骨格構造の平面図である。
図4,5では、車輪3,4に関わる構成を一点鎖線で表すと共に、切断線の後方に現れる構成の一部を省略する。図6でも左右のフレームの連結構造を表すために、それらの上方にある構成の図示を省略している。後続の図面でも、その図面による説明に関係しない構成の図示を省略する場合がある。
また、各図面では、前後一対の構成要素のうちの重要なものを、共通の数字の後にf(前方側)またはb(後方側)を付した符号により区別して表すが、それらの細部の要素で同一の構成を有するものは共通の数字符号のみで表す。
以下、図1~6と共に、適宜、後続の図面を参照して、この実施例の車椅子CH1の構成を説明する。
この実施例の車椅子CH1は、前輪3および後輪4と、椅子本体の骨格を形成する主フレーム1と、前後の車輪3,4を支える底部フレーム2とが左右に1つずつ設けられ、これら左右の構成要素が、前後一対の上部トラス5f,5b,前後方向の中央部に配備された下部トラス6,下部トラス6の前方および後方に配備された一対の底部連結部材7f,7bにより連結された構成のものである。さらに、この車椅子CH1には、各上部トラス5f,5bおよび下部トラス6を各々の中心部で位置合わせして繋ぐ連結軸8,主フレーム1と底部フレーム2とを両者の間隔を変更可能に連結する伸縮部材9,主フレーム1と底部フレーム2との高さ方向の位置関係を一定に保つための位置決め機構200,前輪3を真っ直ぐ前に向けた状態を維持するための機構300(以下、「前輪ストッパー300」という。)などが含まれる。
主フレーム1は、丸パイプ材の曲げ加工や溶接により製作されたもので、椅子本体の座部の側部を形成するシートフレーム10,椅子本体の背部の側部を形成するバックフレーム11およびハンドルフレーム12,前面側の骨格を形成するフロントフレーム13,フロントフレーム13に連なって側方の肘掛け部を形成するサイドフレーム14,底部フレーム2に対向する高さ位置でフロントフレーム13に連結されて前後方向に沿って延びる基部フレーム15,シートフレーム10と基部フレーム15とを繋ぐ前後一対の支柱フレーム16f,16bなどが含まれる。
左右のシートフレーム10の下端部の前方部および後方部には、それぞれ座シート101を載せる載置部材17が連設されている。座シート101の両端部はパイプによる芯材18に巻きつけられており、それらの端部が載置部材17に支持される。これらの載置部材17およびシートフレーム10と後述する上部トラス5f,5bとに支えられることによって、座シート101は利用者を載せる座部となる。
シートフレーム10は、座部に座る利用者が前のめりになるのを防ぐため、前方側が後方側よりやや高くなるように設定されている。座シート101の芯材18を含む両端部は後述するように上部トラス5f,5bに連結され、その連結によって座シート101は載置部材17に載せられた状態で保持される。
左右のバックフレーム11,11の間には背もたれクッション102が設けられ、サイドフレーム14の上面にはアームレスト104が装着されている。左右のフロントフレーム13,13の間にはレッグサポートと呼ばれる布シート105が設けられ、それぞれのフロントフレーム13の先端部に足置きプレート103が連結されている。
ハンドルフレーム12の先端部にはハンドル107やブレーキレバー110が取り付けられている(図1を参照。)。左右のシートフレーム10の外側面の前端寄りの場所にも、利用者用のブレーキレバー106が設けられる。
さらに、この実施例のハンドルフレーム12には、ハンドル107の内側になる位置に配置されるようにして、椅子本体の姿勢を調整するための操作部となる切替えレバー100が設けられている(図3,図6等を参照。)。
底部フレーム2は、後端部を上方に起立させた形の鉄製の板材である。底部フレーム2は、左右ともに、同じ側の主フレーム1の基部フレーム15より外側に配備され、前端部分に前輪支持部30を介して前輪3が連結され、後端の起立部22に後輪4の軸部40が連結される。
底部フレーム2の内面側には、下部トラス6や底部連結部材7f,7bを連結するための連結板20,21f,21bが設けられている。これらの連結板20,21f,21bも鉄製であって、それぞれ車体の前後方向に厚み方向を合わせた状態にされて、一端面が溶接により底部フレーム2に固定される(図6等を参照。)。
左右の主フレーム1,1は、前輪3の中心部よりやや後方になる場所と後輪4の中心部よりやや前方になる場所の2箇所で、それぞれ上部トラス5f,5bを介して連結かつ支持される(図1,4,5,6を参照。)。
左右の底部フレーム2,2は、前後方向の中央位置で下部トラス6を介して連結かつ支持される。さらに底部フレーム2,2の間隔と前後方向の位置関係を維持するために、下部トラス6から所定距離だけ前方の位置と、それと同等の距離だけ下部トラス6より後になる位置の2箇所で、それぞれ車体の幅方向に沿って延びる底部連結部材7f,7bにより底部フレーム2,2が連結される(図2,3,6を参照。)。
主フレーム1,1を連結する上記前後一対の上部トラス5f,5bと、底部フレーム2,2を連結する下部トラス6とは、それぞれの中央部で連結軸8を介して連結される。
図7(A)は、連結軸8の構成および連結軸8に対する上部トラス5f,5bおよび下部トラス6の連結構造を表す断面図であり、図7(B)はこの断面図の中央部分(図7(A)中の枠r1の範囲)の拡大図である。図8は上記の枠r1の左側端縁を通るラインに沿う断面図により、下部トラス6および底部連結部材7(7b)の支持構造を表したものである。以下、これらの図を参照に加えて、主フレーム1および底部フレーム2の支持や連結に関わる構成について説明する。
この実施例の連結軸8は、鉄製の棒部材80と、この棒部材80に嵌着される前後一対のパイプ部材81f,81bとにより構成される。各パイプ部材81f,81bは、それぞれ棒部材80の前端または後端よりやや離れた位置から長さ中心位置より所定距離だけ手前までの範囲に配備される。
棒部材80のパイプ部材81が設けられていない3箇所のうちの中央部には、下部トラス6を支持する支持部材となるブラケット85が取り付けられ、両端部にはそれぞれ固定ナット82が取り付けられる。
各上部トラス5f,5bは、一端部にヒンジ片51が取り付けられた一対の連結部材50.50(以下、これらを「トラス部材50」という。)を主要構成とするものである(図4,図5,図6を参照。)。各トラス部材50は、両端部から長さ中央部に向かうにつれて緩やかに幅が広がる形に形成されると共に、それぞれの長さ中央部に棒部材80が通る大きさの貫通穴53(図7(A)を参照。)が設けられている。各上部トラス5f,5bの対をなすトラス部材50,50は、ヒンジ片51がある側の端部を下に向け、それぞれの貫通穴53,53を合わせて互いに交差する姿勢になるようにして、各貫通穴53,53に通された棒部材80の一端部で、固定ナット82とパイプ部材81fまたは81bとの間に挟まれて支持される(図2,図3,図7(A)を参照。)。
各トラス部材50の下方側の端部は、ヒンジ片51を介して基部フレーム15に回転可能に支持され、上方側の端部は座シート105の端部の芯材18に連結される(図4,図5等を参照。)。なお、芯材18は、トラス部材50への連結箇所では、座シート101から露出しており、その露出箇所に溶着やネジ止めなどの方法によりトラス部材50が固定される。
棒部材80の長さ中央部に取り付けられるブラケット85は、前後の面に棒部材80を通すための開口部(符号省略)が設けられた直方体状のケース体86,このケース体86の内部に入る状態となってケース体86と共に棒部材80に取り付けられる球面軸受87,球面軸受87やケース体86とパイプ部材81f,81bとの間に配備される位置決め部材88,89などにより構成される(図7(B)を参照。)。ケース体86の背面は開口されているが、その開口部に蓋板84が合わせられ、長さが異なる2種類のボルト801,802(それぞれ2本ずつの計4本が、短い方のボルト802を上方側とし、長い方のボルト801を下方側として、ケース体8bの各コーナー部に挿通される。)とそれらに組み合わせられるナット803とによって、蓋板84とケース体86とが連結される。
下部トラス6には、一対の板状の連結部材60,60(これらも以下では「トラス部材60」という。)や,各トラス部材60の両端部にそれぞれ連結される取付金具61などが含まれる(図6,図8を参照。)。
取付金具61は、一対の取付片(符号省略)を対向配備させた二山クレビスであって、それらの取付片の並び方向をトラス部材60の幅方向に合わせてトラス部材60に連結される。
上記一対のトラス部材60,60は、トラス部材50よりはるかに大きな幅を有する板部材であって、幅方向を前後方向に沿わせて車体の幅中央より左側および右側に1本ずつ配備される。これらのトラス部材60の長さは上部トラス5f,5bのトラス部材50より短く、一方の取付金具61が上記一対の取付片の間に底部フレーム2の連結板20を挟んだ状態にされて当該連結板20に軸止めされ、他方の取付金具61が、ブラケット85のケース体86および蓋板84の下方のコーナー部を取付片の間に挟んだ状態にされて、ボルト801やナット803によって、前出の蓋板84と共に当該コーナー部に軸止めされる(図6,図7(B),図8を参照。)。
上記の取付構造によって、各トラス部材60,60は、連結軸8の下方から左下がりまたは右下がりになる姿勢をもって、ブラケット85および底部フレーム2に対して回転可能に支持される(図8を参照。)。
下部トラス6の前後に配置される底部連結部材7f,7bは、左右一対のバー部材70,70を横並びになるように連結した構成のものである。各バー部材70,70は、連結ピン(符号省略)によって互いに回転可能に連結されると共に、それぞれのバー部材70の外側の端部も、対応する側の底部フレーム2の連結板21fまたは21bに軸止めされることによって、底部フレーム2に対して回転可能に支持される(図2,図3,図6,図8を参照。)。なお、図8に示すように、下部トラス6のトラス部材60や底部連結部材7f,7bのバー部材70は、主フレーム1の基部フレーム15に干渉しない高さ位置で底部フレーム2に連結される。
上記のとおり、左右一対の主フレーム1,1は、それぞれの基部フレーム15や連結軸8に連結された上部トラス5f,5bを介して連結され、それらの連結によって、主フレーム1,1の間の間隔を安定させた状態で支持される。左右一対の底部フレーム2,2も、下部トラス6および底部連結部材7f,7bを介して連結されることによって、各々の間の間隔を安定させた状態で支持される。また、各トラス5f,5b,6の中央部が連結軸8によって位置合わせされているので、車体の幅方向における主フレーム1と底部フレーム2との位置関係も安定させることができる。
さらに、下部トラス6を支持するブラケット85が内部の球面軸受87によって連結軸8に対して前後および左右に相対的に揺動可能に支持されているので、この球面軸受87への連結位置を基準に、連結軸8およびこれに連なる上部トラス6ならびに主フレーム1を、底部フレーム2に対して前後および左右に動かすことができる。
図9~12は、車椅子CH1が折り畳まれたときの状態を、それぞれ図2に対応する正面図、図4に対応する位置(A-A線)における断面図、および図8に対応する断面図(底部フレーム2に関わる構成部分の図)、図6に対応する平面図により表したものである。
車椅子CH1を折り畳むために車体の両側が押圧されると、図9,図10に示すように、各上部トラス5f,5bの対をなすトラス部材50,50が連結軸8により支持された中央部の位置や交差姿勢を維持したまま互いに近づく方向に回転する。この動きに従って、各トラス部材50の上端部に連結されている座シート101は載置部材17から離れ、折り曲げられながら上方に変位する。
下部トラス6の各トラス部材60,60もブラケット85に連結された側の端部の位置が維持されたまま互いに近づく方向に回転する(図11を参照。)。底部連結部材7f,7bは、各バー部材70,70が連結された中間部が上方に変位して山形の形状に変化する。
これら上下のトラス5f,5b,6や底部連結部材7f,7bの変化に応じて、左右の主フレーム1と1および底部フレーム2と2も、それぞれ互いに近づき、車幅が狭められる。
伸縮部材9は、主フレーム1と底部フレーム2とを連結すると共に、上向きまたは下向きの外力がかけられたことに応じて上記の連結状態を維持したまま外力に従った方向に収縮または伸張することによって、フレーム1,2の間の間隔を変更する。以下、図13~17を参照して、この実施例の伸縮部材9の具体的構成や、伸縮部材9を動かす機構の構成について、説明する。
この実施例の伸縮部材9は全てロック式のガススプリングであるので、以下、同部材9を「ガススプリング9」という。ガススプリング9は、座部の両側部の前方部分および後方部分の4箇所の各々の下方にそれぞれ1つずつ配備され、上方のシートフレーム10と下方の底部フレーム2とに連結される。ハンドルフレーム12に設けられた切替えレバー100は、同じ側にある2つのガススプリング9のロック状態とロック解除状態とを一括で切り替えるための操作部として機能する。
図13は、上記のガススプリング9の連結構造および切替えレバー100とガススプリング9との間の係わりを、車体の一側部を内側から見た側面図(主フレーム1の一部を破断)により表している。図14(A)は後方側のガススプリング9とその近傍の範囲(図13中の枠r2内)の構成を表す拡大断面図であり、図14(B)は図14(A)中のC-C線に対応する範囲の拡大断面図である。図15は、ガススプリング9と主フレーム1および底部フレーム2との連結構造を表す拡大断面図である。図16(A)(B)は、車椅子CH1の後部の一部分を内側から見た側面図および背面図である。図17(A)(B)は、図14(A)と同様の拡大断面図により、ガススプリング9のロック状態が解除される様子を表している。なお、拡大図示を省略した前方側のガススプリング9も、図14,図15,図17に示したのと同様の構成および連結構造をもって、各フレーム1,2に連結される。
この実施例のガススプリング9は、本体部91から突き出るピストンロッド90,ピストンロッド90の内部を通って本体部91の中間位置まで延びるロック解除用のリリースピン92,ピストンロッド90の先端部および本体部91の底部にそれぞれ設けられる取付金具93,94などを具備する。取付金具93,94も一対の取付片(93a,93bまたは94a,94b)を有する二山クレビスであるが、ピストンロッド90の側の取付金具93は、基部の一端に取付片93a,93bの並び方向に直交する方向に突出する突起904が設けられた形態となっている(図14(A)を参照。)。また、符号を省略するが、取付金具93,94の各取付片93a,93b,94a,94bには、以下に述べる支持軸97を通すための貫通穴(以下、「軸穴」という。)が設けられている。
図15に示すように、底部フレーム2のガススプリング9への連結箇所には、取付用の貫通穴(符号省略)が形成され、この貫通穴に支持軸97が通される。支持軸97の中央部に球面軸受95が取り付けられると共に、その外側に位置決め部材96や軸受押えとなる環状部材98が取り付けられ、それらを各取付片94a,94bの間に挟むようにしてガススプリング9の底部の取付金具94が取り付けられる。
さらに各取付片94a,94bの外側に出た支持軸97の両端に固定ナット99,99が取り付けられて、上記の各構成要素の支持軸97への軸支状態が維持される。
丸パイプ材によるシートフレーム10のガススプリング9への連結箇所には、貫通穴(符号省略)を有する鉄製の連結板120が溶接により固定される。この連結板120にも、底部フレーム2の側と同様の連結機構(球面軸受95,位置決め部材96,支持軸97,環状部材98,および両端のナット99,99を含む。)を介してピストンロッド90側の取付金具93が連結される。
このように、ガススプリング9の上下の取付金具93,94は、球面軸受95を含む連結機構によってシートフレーム10および底部フレーム2に軸止めされるので、シートフレーム10や底部フレーム2に対し、前後および左右の各方向に揺動可能に支持された状態となる。
ピストンロッド90の側の取付金具93の突起904には、ガススプリング9のリリースピン92を押し込むためのレバー金具900が軸止めされている(図13,図14を参照。)。このレバー金具900の一端部は取付金具93の各取付片93a,93bの間の間隙に入り、他端部は取付金具93の後方に突出する。この突出部分に後部の切替えレバー100の操作を伝達するためのケーブルC1またはC2が連結される。
前方側のガススプリング9のレバー金具900に連結されたケーブルC1は、その上のシートフレーム10に形成された小孔(不図示)からシートフレーム10の内部に挿入されて背部へと導かれる。さらにケーブルC1は、バックフレーム11に設けられた筒状のガイド部材131,132,133を順に通過してハンドルフレーム12まで導かれ、ハンドル107の内側に配備された切替えレバー100に連結される(図13,図14(A),図16(A)(B)を参照。)。
なお、シートフレーム10の内部では、上記小孔の近傍位置とシートフレーム10の後端部に、それぞれケーブルC1を案内するための半球状のガイド片Gが設けられる(図13,図14(A)を参照。)。また、ケーブルC1の下端部(ガイド部材131の上部近傍位置)には後方側のケーブルC2との連結用の連結具901が設けられる。
後方側のガススプリング9のレバー金具900に連結されたケーブルC2は、シートフレーム10の下部の後端部に設けられた送りローラー902,902により案内されて背部に導かれ、先端部が上記の連結具901に通されて保持される(図13,図14(A),図16(B)を参照。)。なお、送りローラー902は、図1,図14および図16(A)に示す支持板134によって、両側位置で支持される。
バックフレーム11に設けられたケーブル案内用のガイド部材131~133のうち、一番上のガイド部材133と中間位置のガイド部材132には、後輪のブレーキ機構41とブレーキレバー110とを繋ぐケーブルC0も通される(図13,図16(A)(B)を参照。)。これらのガイド部材132,133によって、2本のケーブルC0,C1のバックフレーム11に沿う状態が保持される。
前方のガススプリング9に連結されたケーブルC1は、操作レバー100がハンドル107の側(外側)に引き寄せられることによって引き上げられる。この力は連結具901を介して後方側のガススプリング9のケーブルC2にも伝達され、これらのケーブルC1,C2のシートフレーム10の側にある範囲が後方へと引っ張られ、それらの引張り力によって各レバー金具900が回転する(図17(B)を参照。)。この回転によって取付金具93の取付片93a,93bの間に挿入されている側のレバー金具900の端部が下がってガススプリング9内のリリースピン92が押下され、ガススプリング9のロック状態が解除される。操作レバー100の引き寄せが解除されると、各ケーブルC1,C2やレバー金具900が上記とは反対の方向に動いてリリースピン92も元の位置に戻り、ガススプリング9は再びロック状態となる(図17(A)を参照。)。
主フレーム1と底部フレーム2とは、上記4個のガススプリング9のピストンロッド90の伸縮によって、両者の間隔を変更可能に連結されているが、その変更の機能を利用する必要がない(両フレーム1,2の間の間隔を一定に保って良い)ときのために、車体の背部の両側部にそれぞれ位置決め機構200が設けられている(図3を参照。)。
図18は、主フレーム1および底部フレーム2に対する位置決め機構200の関係を各フレーム1,2間の関係と共に表したものである。図18でも、位置決め機構200を明確に表すために、背面側から見て右側に位置する各フレーム1,2を車体の内側から見た状態を表している。図19(A)は、図18に示した箇所の背面図であり、図19(B)は図19(A)中のE-E線における断面図である。図20は、位置決め機構200によるフレーム1,2の間の連結が解除された状態を表す図である。
この実施例の位置決め機構200には、主フレーム1の後部側の支柱フレーム16bに連結された第1の位置決め部材201,底部フレーム2の起立部22の後端部に連結された第2の位置決め部材202,両位置決め部材201,202を連結するためのトグルピン203などが含まれる。これらの位置決め部材201,202は金属製の板材であって、厚み方向を前後方向に合わせて車体の内側に突出する姿勢になるようにして、連結対象のフレーム16b,2に溶着により固定される。また、第2の位置決め部材202は第1の位置決め部材201の背面全体に対向する大きさに設定される。
第1の位置決め部材201および第2の位置決め部材202の位置決め部材201に対向する部分には、トグルピン203を挿通させるための貫通穴(符号省略)が形成される。トグルピン203は、先端の係止片204を前面側に向けた姿勢で各貫通穴に通されると共に、図19(B)に示すように、係止片204を支柱フレーム16bに接触する位置まで回転させた姿勢にして支持される。この支持によって、支柱フレーム16bと底部フレーム2の起立部22との位置関係が一定に保たれ、支柱フレーム16bの長さ方向と底部フレーム2の面とがほぼ平行になる状態が維持される。
トグルピン203は、係止片204を前方側に回転させることによって、各貫通穴から抜き取ることができる。トグルピン203が抜き取られると、主フレーム1と底部フレーム2との上記の位置合わせ状態は解除され、前出のガススプリング9を作動させて主フレーム1と底部フレーム2との高さ方向の位置関係や支柱フレーム16bと底部フレーム2との向きの関係を変更することができる状態となる(図20を参照。)。
図示は省略するが、トグルピン203は、主フレーム1の適所に設けられた保持部材にチェーン等の手段によって連結される。また各位置決め部材201,202から抜き取られたときには、当該保持部材によりトグルピン203を装着して保持することができる。
位置決め部材201,202は板状体に限らず、他の形態にすることもできる。
位置決め部材201,202を連結する手段もトグルピン203に限らず、たとえば、係止片のない一般的なピン部材を各位置決め部材201,202に挿通させると共に、ピン部材の抜けを規制する掛け金具を位置決め部材201,202の間の隙間に出没可能に配置してもよい。この構成によれば、位置決め部材201,202の連結を解除する場合は、第1の位置決め部材201のみからピン部材を抜き取り、第2の位置決め部材202にはピン部材を通したままとして、上記の掛け金具を再びピン部材に引っ掛けることによりピン部材を保持することができる(後述する第2,第3の実施例でも同じ。)。
図21および図22は、前輪ストッパー300および底部フレーム2ならびに前輪3を含む範囲の平面図(A)、側面図(B)および正面図(C)を対応づけて表したものである。(A)(B)には、前輪ストッパー300の変位の状態も表されている。
前輪支持部30には、底部フレーム2の外側面に連結される基部31と、前輪3の回転軸を両端位置で支える二股形状のフォーク32とが含まれる。基部31には、鉛直方向に沿う支持軸33が通されている。フォーク32は、この支持軸33に連結されることによって、前輪3と共に支持軸33の軸廻りに回転可能に支持される。
前輪ストッパー300は、底部フレーム2の外側面の下端縁部に溶接等により固定された角筒型のケース体301,このケース体301に往復動可能に挿入された棒状部材302,棒状部材302の後端部に設けられる球状の操作片303等により構成され、上記前輪支持部30のフォーク32の上端部(基部31に連結される部分)に対応する高さ位置に配備される。
棒状部材302は、底部フレーム2の後方側に突出すると共に、その突出状態を維持したまま前方のフォーク32と底部フレーム2との隙間を突き抜けることができる長さに設定される。また上記の隙間に入る棒状部材302の前端部分の幅が後方部分より狭くなるように、前端部分の基部に対向する側の面が切り欠かれている。
底部フレーム2の内面側の後端位置には、山状に湾曲させた板バネ304の一端部がネジ止めされている。板バネ304の他端部は、底部フレーム2の背後に突出して棒状部材302に触れる状態になっている。
棒状部材302の後端部の内側面には上記の板バネ304の自由端が入る大きさの凹部305が形成されている。フォーク32および前輪3が正面に向けられている状態下で操作片303が前方に押されることによって棒状部材302が前方に移動すると、図21(A)に示すように、棒状体302の先端部が底部フレーム2とフォーク32との間の隙間に入って、フォーク32の支持軸33の軸廻りの回転が規制される。これにより前輪3も左右に振れることができなくなり、正面を向く姿勢で維持される。また、棒状体302の後端部の凹部305に板バネ304の自由端が入り、板バネ304の付勢力によって棒状部材302の変位後の位置が保持される。
フォーク32の回転が規制されている状態下で操作片303が後方へと引かれると、板バネ304が凹部305から抜け出して棒状部材302が後退し、棒状部材302の先端部も上記の隙間から抜ける。これにより、フォーク32を回転させて前輪3の向きを変えることが可能になる。
図22(A)(B)(C)に示すように、フォーク32を支持軸33の軸廻りに回転させて前輪3を底部フレーム2より前方に移動させた場合でも、フォーク32および前輪3が正面に向けられている状態下で前輪ストッパー300の操作片303を図21の例と同様に操作することによって、棒状部材302を底部フレーム2とフォーク32との隙間に入れてフォーク32の支持軸33の軸廻りの回転を規制することができる。よって、前輪3が底部フレーム2より前方に配置された場合でも、前輪3を正面に向けられた姿勢で維持することができる。
<第2実施例>
図23,24,25は、本発明が適用された第2の車椅子CH2の全体の構成を表す側面図、正面図、背面図であり、図26は図23中のA1-A1線に沿う断面図、図27は図23中のB1-B1線に沿う断面図である。図28は上記車椅子CH2の骨格構造を表す平面図であり、図29は、車椅子CH2の背部側から見て左手側の側部を取り外して他方の側部の内面や座部の下方の空間の構成を表した図である。なお、図23では後輪4を二点鎖線で表しており、図28では主要部のみを表している。
後続の図30~35を含め、第2実施例の図面では、第1実施例とは形状が異なっても機能の変更がない構成要素には、第1実施例と同じ符号を付している。以下の説明でも、第1実施例と実質的に同じと言える構成に関しては説明を省略または簡単な説明にとどめ、第1実施例と異なる構成について重点的に説明する。
第2実施例の車椅子CH2でも、左右の主フレーム1,1の各々の基部フレーム15の外側に前輪3および後輪4を支える底部フレーム2が配備され、これらのフレーム1,2が、上部トラス5f,5b,連結軸8,ブラケット85,下部トラス6を介して連結されている。主フレーム1の形態は第1実施例と大きくは変わらないが、第1実施例にあった支柱フレーム16bがバックフレーム11と一体になり、バックフレーム11,フロントフレーム13,前方の支柱フレーム16fの各下端部が基部フレーム15により繋がった状態になっている(図25,図29を参照。)。
底部フレーム2は、第1実施例のものより縦幅が大きくなり、その前端部に前輪支持部30を介して前輪3が連結され(図23,24,28を参照。)、後端の起立部22に後輪4が連結されている(図29を参照。)。なお、フォーク32や前輪3を配置するための空間を設ける都合で底部フレーム2の前端部の下端縁には切り欠きが設けられている。
第2実施例の車椅子CH2では、左右の主フレーム1,1を支持する上部トラス5f,5bのうちの前方の上部トラス5fが、第1実施例の場合の位置(座部の下方空間の前方部)より後退し、座部の下方空間の前後方向の中央部に配備されている。後方の上部トラス5bは、第1実施例と同様に、後輪4の軸部40よりやや前方になる箇所に配備されている。
上部トラス5f,5bは、第1実施例と同様に、長さ方向の中央部で交差させた一対のトラス部材50,50の各々を座シートの一方の芯材18とそれに対向する側の基部フレーム15とに連結した構成のものである。各交差部分に通された連結軸8によって、各上部トラス5f,5bの中央部が連結軸8と共に車体の幅方向の中央部に位置合わせされる点も第1実施例と同様である。
ただし、第1実施例のトラス部材50は、基部フレーム15に対してはヒンジ部材51を介して連結されていたが、この第2実施例では、トラス部材50は溶接加工によって基部フレーム15に直接に連結されている。そのようにしても、各トラス部材50,50が連結軸8に連結された位置を中心に回転可能になっているので、車椅子CH2の折り畳みに支障が生じることはない。
上部トラス5fの後退に伴って連結軸8も第1実施例のものより短くなるが、上部トラス5fよりある程度まで前方に突出し、その突出部分の前端部に下部トラス6を支持するブラケット85が連結されている(図23,図26,図28,図29を参照。)。連結軸8は、上部トラス5bの後方にも僅かに突出して、その突出部分に固定ナット82が連結される(図25,図28を参照。)。
図30は、上部トラス5f,5b,連結軸8,ブラケット85および下部トラス6の連結構造を表したものである。図30(A)は図29に現れている当該連結構造の側面を拡大したものであるが、ブラケット85の部分のみ、内部構造を表すために幅中央部に沿う断面図にしている。図30(B)はブラケット85と下部トラス6の上端部の拡大正面図である。
この実施例の連結軸8は、上部トラス5f,5bの連結箇所の間の外周部が拡張された段付き軸である。連結軸8の上部トラス5fとの連結箇所の前方には位置決め部材800が設けられ、その前方に球面軸受87を含むブラケット85が連結される。連結軸8の前端部には前端面からナット付きのボルト810が挿入されて固定され、このボルト810のナットと位置決め部材800との間にブラケット85が挟まれることによって、ブラケット85は上部トラス5fよりやや前方の一定の位置に保持される。
第2実施例のブラケット85も、第1実施例と同様に、球面軸受87の収容空間を有するケース体86と、ケース体86に収容される球面軸受87と、ケース体86の開口部(この実施例では前方側に向けられている。)を塞ぐ蓋板84とを有する。しかし、この実施例のケース体86は球面軸受87の収容空間よりもかなり上まで突出すると共にその突出部分が左右の各方向にも延びて、それらの延出部分に下部トラス6のトラス部材60,60が連結される。蓋板84は、連結軸8を通す穴より上および下の位置で、それぞれボルト811やナット812によってケース体86に連結される。
第2実施例の下部トラス6のトラス部材60も下方に向かうにつれて幅が広がる形態のものである。トラス部材60の両端部には、それぞれその部分の幅長さに応じたサイズの取付金具62,63(いずれも二山クレビス)が連結されている。上端側の取付金具62は、一対の取付片(符号省略)の間に上記ケース体86の左または右の延出部分を挟んだ状態にされて、ボルト821およびナット822によって当該延出部分に連結される。
底部フレーム2の内面の中央部には、トラス部材60に対する支持強度を高めるために補助板26が固定されると共に、一対の連結板25a,25bが、各々の面方向を補助板26の面に直交させ、トラス部材60の下端側の取付金具63を嵌め込むのに適した間隔を隔てて前後に並ぶ状態となって、補助板26の表面に固定されている。
トラス部材60の下端の取付金具63は、当該金具63の一対の取付片63a,63bをそれぞれ上記一対の連結板25a,25bの内面に当接させた状態にされて、一本の長ボルト64およびナット65によって、各連結板25a,25bに連結される。
上記のとおり、第2実施例では、下部トラス6のトラス部材60の上端部が連結軸8より高い位置でブラケット85に連結されているが、これには車椅子CH2が折り畳まれる際に下部トラス6が上部トラス5や連結軸8とぶつからないようにする、という目的がある。このような連結構造でも、下部トラス6はブラケット85と共に座部の下の空間の前後方向の中央部に配置され、また連結軸8に対して前後および左右に相対的に揺動可能に支持された状態となる。
両側のシートフレーム10と底部フレーム2とは、それぞれ車体の後方部で伸縮部材であるガススプリング9を介して連結されているが、前方部にはガススプリング9もそれに代わる部材も設けられておらず、両フレーム10,2は前方部では離れた状態となっている(図29を参照。)。
図31は、第2実施例におけるガススプリング9とその連結箇所(利用者や介護者の左手側にあるシートフレーム10および底部フレーム2)を拡大して表したものである。この図でも、連結箇所のみ断面図として表している。
ガススプリング9は、第1実施例と同様のロック機能を有するもので、主要な形態も第1実施例と同様であるが、上端側の取付金具93では、一方の取付片93bにレバー金具900を通すための貫通穴905が設けられ、その穴の下方から外側に延び出るように突起906が形成されている。
さらにこの実施例では、シートフレーム10や底部フレーム2にガススプリング9を連結するための手段として、表面にネジ山が形成された取付ロッド911が一体に設けられた球面軸受910(たとえば日本トムソン株式会社製のピロボール(登録商標))を使用する。これを受け、シートフレーム10の後端部には、第1実施例の連結板120に代えて、シートフレーム10の外径と同等の厚みを有する鉄製の連結ブロック140が連結されている。この連結ブロック140は取付ロッド911に螺合可能なネジ穴141を有し、当該ネジ穴141の長さ方向を車体の左右方向に沿わせた状態でシートフレーム10の下面に溶着されている。
ガススプリング9の上下の取付金具93,94は、それぞれ一対の取付片(93a,93aまたは94a,94a)の間に上記の球面軸受910の本体部や位置決め部材(符号省略)を挟んだ状態となって、当該本体部や位置決め部材と共に支持軸912に取り付けられる。取付片93a,93b,94a,94bの外側に突出した支持軸912の両端部にはナット913が連結されて、上記の取付状態が維持される(図31(A)を参照。)。
上端側の取付金具93を支持する球面軸受910は、連結ブロック140のネジ穴141に取付ロッド911が挿入されて両者が連結されることによって、取付金具93と共に連結ブロック140の外側面に支持される(図31(B)を参照。)。取付ロッド911のネジ穴140に入らなかった基端部には位置決め用のナット914が取り付けられる。
上記の連結によって、上端側の取付金具93の一対の取付片93a,93bは、貫通穴905がある側の取付片93bを後ろに向けた状態で、球面軸受910を挟んで車体の前後方向に沿って並ぶ状態となる(図31(A)を参照。)。
第2実施例のレバー金具900は細長い棒状の形態のもので、その一端部が上記の貫通穴905から取付片93a,93bの内部に挿入されると共に、当該端部の近傍位置が上記の突起906に連結される。レバー金具900の他端部はバックフレーム11に沿わせたケーブルC(図23,図29を参照。)に連結される。図23,図29では、図示を省略したが、ケーブルCは、第1実施例と同様にバックフレーム11に沿ってハンドルフレーム12の付近まで導かれ、切替えレバー100に連結されており、当該レバー100をハンドルフレーム12の側に引き寄せる操作に応じてレバー金具900の先端が下がってロックピン92が押される仕組みになっている。
底部フレーム2のガススプリング9への連結位置(この実施例では底部フレーム2の下端後方部)にも、厚み部分を貫くネジ穴250が設けられる。ガススプリング9の下端側の取付金具94を支持する球面軸受910の取付ロッド911は、底部フレーム2の内面側から上記のネジ穴250に挿入されて当該ネジ穴250に連結される(図31(B)を参照。)。この取付ロッド911とネジ穴250との連結によって、取付金具94は、取付片94a,94bの並び方向を車体の前後方向に沿わせた状態で球面軸受910と共に底部フレーム2の内面側に支持される(図31(A)を参照。)。なお、取付ロッド911は底部フレーム2の外側に突き出た状態となり、その突出部分にナット914が取り付けられる。
上記の連結機構によれば、第2実施例のガススプリング9は、第1実施例の姿勢から約90度回転した姿勢となって、シートフレーム10および底部フレーム2に対し、それぞれ前後および左右の各方向に揺動可能に連結される。
第2実施例では、車体の前方側から主フレーム1と底部フレーム2とを連結する手段(ガススプリング9)が除かれたが、左右の底部フレーム2,2の前輪3に対向する範囲を底部連結部材7fにより繋ぐことによって、底部フレーム2,2の前方部の間隔を安定させるようにしている(図28,図29を参照。)。
後方の底部連結部材7bは、底部フレーム2,2の後輪4に対向する範囲の間隔を安定させるために、各底部フレーム2の後端部(起立部22の下方)に連結されている。
なお、底部フレーム2の底部連結部材7f,7bが連結される箇所にもそれぞれ補強板27が固定され、それらの補強板27の面に面方向を直交させて固定された連結板21f,21bに底部連結部材7f,7bが連結されている。
さらに、第2実施例の車椅子CH2の後方部には、主フレーム1の高さ位置の変動を一定の範囲内に制限するための位置調整機構210が設けられる。
図32(A)はこの位置調整機構210が配備される範囲を前方側から拡大して表したもの(図27中の円形領域R1の拡大)である。図32(B)は、図32(A)のC1-C1線に沿う断面図により位置調整機構210の主要部の構成を表している。
この位置調整機構210は、第1実施例の位置決め機構200に相当する機能(主フレーム1と底部フレーム2との位置関係を一定に保つ機能)を兼ね備えるもので、主フレーム1のバックフレーム11の座部より下の所定位置に固定される第1部材211と、底部フレーム2の内面のバックフレーム11より前方になる位置(ガススプリング9が取り付けられる位置の近傍)に溶着される第2部材212と、これらの部材に連結されるトグルピン203およびガイドピン213とを、主要な構成要素とする。
第1部材211には、バックフレーム11の前面に溶着される主板部211aと、当該主板部210aにほぼ直交する関係をもって連なってバックフレーム11の内側面に溶着される副板部211b(図32(A)(B)では破線により示す。)とが含まれる。主板部211aおよび副板部211bは、いずれも、支持強度を確保できるだけの厚みを有している。
主板部211aにはバックフレーム11に溶着されずに車体の内側に突出する部分(符号省略)が含まれている。この突出した部分は、上下の各端縁から高さ中央部に向かうにつれて突出幅が広がる三角形状に形成され、その高さ中央部にトグルピン203を通すための貫通穴(図示せず。)が形成されている。主板部211aのバックフレーム11に溶着されている部分の幅中央部には、ガイドピン213を通すためのスリット穴215(主板部211aの厚み部分を貫通している。)が上下方向に沿って形成されている。
第2部材212も厚みのある金属板であって、板の面方向を第1部材212に合わせて底部フレーム2から斜め上方に向かって延びるように底部フレーム2に取り付けられると共に、上端部が主板部211aのスリット穴215や貫通穴に対向可能な範囲に配置された状態になっている。この上端部には、トグルピン203およびガイドピン213を通すための一対の貫通穴(符号省略。)が設けられている。
トグルピン203は、主フレーム1の適所にチェーンなどにより連結されると共に、第1部材211の主板部211aの突出部分の貫通穴とこれに対向する位置にある第2部材212の貫通穴とに第2部材212の側から挿脱可能に挿入される。
ガイドピン213は、スリット穴215をその長さ方向に沿って摺動可能な太さの軸を有するボルトであって、位置調整用のナット214を通した状態で第2部材212のスリット穴215に対向する位置にある貫通穴と第1部材211のスリット穴215とに挿入される。なお、ガイドピン213は、溶着等によって第2部材212に一体化してもよい。
上記の構成によれば、第1部材211および第2部材212の各々のトグルピン203用の貫通穴の高さが合う状態になっているときに、これらの貫通穴にトグルピン203を挿入し、先端の係止片を第1部材211の副板部211bやバックフレーム11の背面に係わらせておけば、主フレーム1にかかる荷重が変化しても、底部フレーム2に対する主フレーム1の相対高さをほぼ一定の位置に維持することができる。
トグルピン203が外されると共に左右のガススプリング9,9のロック状態が解除されると、主フレーム1にかかる荷重の変化に応じて底部フレーム2に対する主フレーム1の相対高さが変化する。しかし、その変化は、ガイドピン213がスリット穴215の上端部に当接したときの高さ位置からガイドピン213がスリット穴215の下端部に当接したときの高さ位置までの範囲に制限される。
なお、上記のスリット穴215は、中心部から上下の各端部に向かうにつれて幅が広がる形にされている。この形態により、幅傾斜路面などで左右の主フレーム1,1を互いに異なる方向に変位させる必要が生じた場合に、各主フレーム1,1を底部フレーム2,2に対して左右方向に傾くように回転させて上記の変位を生じさせることができる。
第2実施例では、図21~図22に示した前輪ストッパー300に代えて、前輪支持部30の基部31に、前輪3の左右方向への回転を停めるためのストッパー部材310が一体に設けられている。
図33は、ストッパー部材310を含む前輪支持部30および前輪3ならびに底部フレーム2の前方部分を、平面図(A),正面図(B),側面図(C)の各図により表したものである。図34は、図33に示した各部材を含む範囲の拡大斜視図である、図35は、ストッパー部材310により前輪3の左右方向への回転が規制された状態を表した側面図である。
上記のストッパー部材310には、前輪支持部30の基部31の前面下部に固定された支持部材311と、この支持部材311に上下動可能に連結された可動部材312と、可動部材312に連結されたレバー部材313とが含まれる。
支持部材311は、金属製のブロック体であって、上下方向の中央部の前端寄りの位置に厚み部分を貫くピン穴(符号省略。)が形成されている。
可動部材312は、前方に突出するフック部Hが上端部に連続形成された一対の側板314,314と、これらの側板314を支持部材311より高い位置で繋ぐ連結ブロック315とにより構成される。これら側板314および連結ブロック315も金属製である。各側板314の下部には上記のピン穴の径よりやや大きな幅を有するスリット孔S(貫通穴)が上下方向に沿って形成されている。また後述する回転動作を可能にするために、各側板314の下端面は前方部分や後方部分が斜め上に傾斜するように丸められた形状になっている。
上記の可動部材312と支持部材311とは、各側板314の間の空間の連結ブロック315より下の範囲に支持部材311が入り、支持部材311のピン穴がスリット孔Sに合わせられた状態になるように位置合わせされ、各スリット孔Sおよびピン穴に通された支持ピンPや当該支持ピンPの両端部に取り付けられたナット(符号省略)によって連結される。
レバー部材313は、金属製の丸棒を2箇所で屈曲させて成るもので、各屈曲部より外側の部分q1,q3が長さおよび高さを異ならせて同じ方向に向けられ、それらを繋ぐ中間部分q2が斜めになる形態となっている。以下、上記3つの部分q1,q2,q3をそれぞれ「第1片q1」「第2片q2」「第3片q3」という。
底部フレーム2の前輪支持部30に近い場所の上端面には、レバー部材313を支持するために、前後一対の凹部D1,D2が設けられている。これらの凹部D1,D2の内面は後方に向かうにつれて下がる方向に傾く傾斜面となっている。また前方側の凹部D1は後方側の凹部D2より前後方向の幅が広くなるように設定され、傾斜面も凹部D2よりも長くなっている。
上記レバー部材313の各屈曲部の外側の片q1,q3のうちの短い方の第1片q1は、可動部材313(一対の側板314,314およびそれらの間の連結ブロック315)を外側から内側に向かって突き抜ける状態となって、外側の側板314の外面にナット(符号省略)によって固定される。第1片q1に連なる第2片q2は底部フレーム2の内面に沿い、かつ傾き方向が後方に向かうにつれて高くなる方向に合わせられ、第3片q3は底部フレーム2の後方の凹部D2に支持された状態で外側に突き出た状態になる。
上記のように連結されることにより、レバー部材313は、可動部材312に通された第1片q1を軸として前方および後方に回転可能に支持される。
可動部材312と支持部材311とを繋ぐ支持ピンPはスリット孔S内を摺動可能な大きさに設定されている。したがって、可動部材312は、支持ピンPがスリット孔Sの上端部に当接する高さ位置(以下「最下位置」という。)と、支持ピンPがスリット孔Sの下端部が当接する高さ位置(以下「最高位置」という。)との間の高さ範囲内で上下動することが可能であるが、通常は、連結ブロック315の重みの作用によって最下位置で支持される。フック部Hも前方を向いた姿勢で維持される。レバー部材313も、通常は、凹部D2に支持された状態で維持される。
しかし、レバー部材313を後述する図49に示す要領で動かすことによって、可動部材312を最高位置まで引き上げた後に半回転させると、図35(A)に示すように、各側板314のフック部Hがフォーク32と前輪3との間の隙間に入り、フォーク32の回転を止める規制片として機能する状態になる。このときのレバー部材313は、底部フレーム2の前方側の凹部D1の最後部に支持される状態になる。
図35(B)に示すように、前輪3が基部31の前方に出るようにフォーク32を回転させた場合も、可動部材312を上記と同じ要領で動かすことによって各側板314のフック部Hをフォーク32と前輪3との間の隙間に入れて、フォーク32の回転を規制することができる。
<第3実施例>
図36,37,38は、本発明が適用された第3の車椅子CH3の全体の構成を表す側面図、正面図、背面図である。図39は図36中のA2-A2線に沿う断面図であり、図40は図36中のB2-B2線に沿う断面図である。図41は、上記車椅子CH3の骨格構造を表した平面図であり、図42は、車椅子CH3の背部側から見て左手側の側部を取り外して他方の側部の内面や座部の下方の空間の構成を表した図である。
第3実施例の図面でも、第1実施例や第2実施例と同一の機能を有する構成要素については、これらの実施例と同じ符号を付し、第1実施例または第2実施例と実質的に同じと言える構成については説明を省略または簡単にし、各実施例と異なる構成について重点的に説明する。
第3実施例の主フレーム1は第1実施例のものに近い形態を有する(後方の支柱フレーム16bもあり。)が、主フレーム1の主フレーム1の基部フレーム15の位置が第1実施例の図面に示した位置より高くなっている。また、図42および図43に示すように、この実施例の基部フレーム15は、長さ方向の中央部より後ろの部分が当該中央部より前の部分より太い段付きのフレームとなっている。
さらに、この実施例では、ガススプリング9の上端部が連結される連結ブロック140が、シートフレーム10の延長部分として当該シートフレーム10の後端面に溶着され、当該連結ブロック140の上面にバックフレーム11が連結され、下面に支柱フレーム16bが連結されている(図36,図41,図42を参照。)。
主フレーム1の基部フレーム15の高さの変更に伴い、底部フレーム2,2は、同じ側の主フレーム1の基部フレーム15のほぼ真下に配備される(図39,図40を参照。)。底部フレーム2の後端の起立部22は基部フレーム15より後ろに突出し、その外面に連結ブロック45を介して後輪4の軸部40が連結される(図41,図42を参照。)。底部フレーム2の前端部の外面にも、前輪用の連結ブロック35が連結され、当該連結ブロック35の外面に前輪支持部30が連結される(図37,図41を参照。)。また、第3実施例でも、フォーク32や前輪3を配置する空間を設けるために、底部フレーム2の前端部の下端縁に切り欠きが設けられている。
上部トラス5f,5bは、第2実施例と同様に、座部の下方空間の前後方向の中央部と後方部とにそれぞれ配備される。この実施例では、前後の上部トラス5f,5bの形態が若干異なり、その形態や連結軸8との関係を説明する都合から、上部トラス5fのトラス部材を符号50f1,50f2で示し、上部トラス5bのトラス部材を符号50b1,50b2で示している。
図43(A)は、上部トラス5f,5b,連結軸8,ブラケット85,下部トラス6および底部フレーム2の連結構造を表す拡大側面図(長さ方向の一部分を省略。図30と同じく、ブラケット85のみ内部構造を表す断面図にしている。)であり、図43(B)は当該連結構造に含まれる連結金具500の外観を表す斜視図である。図44(A)は、上記の連結構造を前方の上部トラス5fの前方から見た状態を表した拡大図であり、図44(B)は、上記の連結構造を後方の上部トラス5bの前方から見た状態を表した拡大図である。
第3実施例の上部トラス5f,5bも、一対のトラス部材50f1,50f2またはトラス部材50b1,50b2を長さ中央部で交差させ、それぞれのトラス部材の一端部を座シート101の左または右の側部の芯材18に連結し、他端部を反対側の側部の基部フレーム15に連結することによって、主フレーム1,1や座シート101を支持するものである。なお、この実施例でも、各トラス部材50f1,50f2,50b1,50b2の下端部は、ヒンジ部材51を介さずに直接に基部フレーム15に連結される。
連結軸8は、トラス部材50f1,50f2やトラス部材50b1,50b2が交差する位置には挿通されずに、図43(B)に示す連結金具500により各トラス部材50f1,50f2,50b1,50b2に個別に連結されることによって、これらの交差位置よりやや下の位置に支持される。
図43(B)に示すように、連結金具500は、一対の片u1,u2を鈍角になる関係をもって連続させたへの字状の部材であって、片u1の先端部にトラス部材にネジ止めするためのネジ穴501が設けられている。片u2は片u1より幅が広くなり、先端部に連結軸8を通す大きさの貫通穴502が設けられている。上部トラス5f,5bの各トラス部材50f1,50f2,50b1,50b2の連結金具500に連結される箇所にもネジ穴(図示せず。)が設けられている。
前方側の上部トラス5fでは、前方側に配置されたトラス部材50f1の裏面と後方側に配置されたトラス部材50f2の前面とに、上記の連結金具500の片u1が1つずつ連結される(図44(A)を参照。)。後方側の上部トラス5bでも、前方側に配置されたトラス部材50b1の裏面と後方側に配置されたトラス部材50b2の前面とに、上記の連結金具500の片u1が1つずつ連結される(図44(B)を参照。)。そして、前方側のトラス部材50f1,50b1に連結された連結金具500,500の片u2,u2と後方側のトラス部材50f2,50b2に連結された連結金具500,500の片u2,u2とが、それぞれの貫通穴502が連なるように重ねられ、それらの穴に連結軸8が通される。
連結軸8は、各上部トラス5f,5bの間の間隔よりやや長く、連結金具500が取り付けられる両端部を他の箇所より小さくした段付き軸である。連結軸8の両端部には、それぞれ端面で開口するネジ穴が設けられており、これらのネジ穴にナット付きのボルト810が連結される。これらのボルト810のナットと連結軸8の段差部分とに挟まれることによって、各連結金具500は連結軸8の一定の位置に保持される。
トラス部材50f1,50f2の組およびトラス部材50b1,50b2の組は、それぞれに連結された連結金具500を重ね合わせて連結軸8に取り付ける都合上、第1実施例や第2実施例の場合よりも互いの間の間隔が広がるが、上記のように各連結金具500が連結軸8の一定の位置に保持されることによって、トラス部材50f1と50f2との間の間隔やトラス部材50b1と50b2との間隔も安定し、各トラス部材と連結軸8との位置関係も一定に保たれる。よって、連結軸8は、トラス部材50f1,50f2の交差位置およびトラス部材50b1,50b2の交差位置よりやや下になる高さ位置において、これらの交差位置に対向する状態で支持される。対をなすトラス部材50f1と50f2およびトラス部材50b1と50b2は、連結軸8との位置関係や交差の状態を維持したまま互いに近づく方向に回転することができるので、車椅子CH3を支障なく折り畳むことができる。
図44(A)に示すように、前方側の上部トラス5fのトラス部材50f1,50f2の上端部には、上端面に円弧状の切り欠きが設けられた球状体55が一体に設けられている。トラス部材50f1,50f2は、それぞれ球状体55の切り欠き部分を座シート101の芯材18の下面に当接させた状態で当該芯材18に溶着される。一方、後方側のトラス部材50b1,50b2は、球状体55を有しておらず、図44(B)に示すように、各々の上端部が座シート101の芯材18に直接に溶着される。
トラス部材50f1,50f2の球状体55を除く範囲の長さは後方のトラス部材50b1,50b2と同等であるので、座シート101の両側部(芯材18)の上部トラス5fに支えられる前方部分は上部トラス5bに支えられる後方部分より高くなる。第3実施例では、この前後の支持高さの差によって、座シート101の全体が緩やかな後傾姿勢になる(図42を参照。)。
図39および図40に示すように、シートフレーム10の上部トラス5f,5bより前方の位置の下面には、それぞれその位置で座シート101を支えるのに適した形態の載置部材17f,17bが連結されている。座シート101の後方部の高さがシートフレーム10より低くなることを踏まえて、後方側の載置部材17bの上面は前方側の載置部材17fの上面より低い位置に設定されている。また座シート101の後方側の支持強度を確保するため、後方側の載置部材17bは前方側の載置部材17fより厚みの大きな部材となっている。
下部トラス6を支持するブラケット85は、上記の連結軸8の前方側の上部トラス5fへの連結位置の後ろ側であるが、上部トラス5fと同じく、座部の前後方向の中央部に対応する範囲に連結される(図42を参照。)。図43(A)に示すように、連結軸8のブラケット85が取り付けられる箇所もその後方の範囲より径が小さくなっている。
この実施例のブラケット85のケース体86は、前面およびそれに沿う断面を五角形状にした形態のものである。ケース体86の内部の球面軸受87も、連結軸8の段差部分や位置決め部材800に挟まれることで、当該連結軸8の一定の位置に保持される(図43(A)を参照。)。この球面軸受87と連結軸8との連結によって、ブラケット85は連結軸8に対して前後および左右に揺動可能に支持される。
下部トラス6のトラス部材60は、第2実施例と概ね同じ形態のもので、上端部の取付金具62が上記ケース体86の下部の左右のコーナー部に連結される(図43(A),図44(A)を参照。)。トラス部材60の下端部の取付金具63は、第2実施例と同様に、底部フレーム2の内面の補助板26に固定された一対の連結板25a,25bの間に嵌め込まれた状態でこれらの連結板25a,25に長ボルト64を介して連結される。
なお、底部フレーム2に対するトラス部材60の連結位置は、第2実施例では、底部フレーム2の上端部であったが、第3実施例では、連結軸8と底部フレーム2との距離が近くなったことに伴って、トラス部材60は底部フレーム2の下端部に連結されている。
左右の底部フレーム2,2の前方側を繋ぐ底部連結部材7fは、下部トラス6や前方側の上部トラス5fに近い場所に配置されている(図41および図42を参照。)。また、この底部連結部材7fは、主フレーム1等の姿勢の変化により下部トラス6にかかる荷重が増えたときに発生する力(底部フレーム2,2の間の間隔を変更しようとする力)への対抗力を高めるために、底部フレーム2の上端部(上部トラス5fのトラス部材50f1,50f2の下端部の連結位置より上の位置)に連結されている。
後方側の底部連結部材7bは、左右の後輪4,4の間隔を安定させるために、先の2例と同様に、底部フレーム2の後方の下端部に連結される。
前述したとおり、第3実施例の車椅子CH3は、主フレーム1の座部より下の範囲の高さ方向の幅を第1,第2の実施例の車椅子CH1,CH2より短くし、底部フレーム2を主フレーム1の基部フレーム15に下側で対向させたことにより、第1実施例や第2実施例の車椅子CH1,CH2より車幅を狭くすることができる。また、上部トラス5f,5bと下部トラス6とを繋ぐ連結軸8と基部フレーム2との距離が大幅に縮められるので、椅子本体の姿勢を調整する際の揺動に伴って生じる基部フレーム2やバックフレーム11の振れ幅を小さくすることができる。
第3実施例でも、第2実施例と同様に、主フレームのシートフレーム10と底部フレーム2とを繋ぐガススプリング9は、両側の後方部のみに設けられ、前方部では主フレーム1と底部フレーム2とは離れた状態になっている。
図45は、第2実施例におけるガススプリング9とその連結箇所(車椅子CH2の背面に向かって左側のシートフレーム10および底部フレーム2)を拡大して表したものである(第2実施例の図31に対応。)。
ガススプリング9の連結構造も第2実施例と概ね同じであるが、第3実施例では、ガススプリング9の上端部に連結される連結ブロック140がシートフレーム10の後端部に溶着され、この連結ブロック140の外側面に球面軸受910およびガススプリング9の取付金具93が支持される(図45(A)を参照。)。また、底部フレーム2が基部フレーム15に下側で対向する状態になったことをふまえ、ガススプリング9の下端側の取付金具94や球面軸受910は底部フレーム2の外面側に支持される(図38~40,図45(B)を参照。)
第3実施例の車椅子CH3の後方部分にも、主フレーム1の高さ位置の変動を一定の範囲内に制限するための位置調整機構210が設けられる。図46(A)はこの位置調整機構210が配備される範囲(図38の円領域R2の範囲)を拡大して表したものである。図46(B)は、図46(A)中のC2-C2線に沿う断面図である。
第3実施例の位置調整機構210は、バックフレーム11の下方に位置する支柱フレーム16bに溶着される第1部材211,底部フレーム2の内面に溶着される第2部材212,トグルピン203およびガイドピン213などにより構成される。各部材の機能は第2実施例と同様であるので、それぞれに第2実施例と同じ符号を付すが、この実施例の第1部材211の主板部211aは、支柱フレーム16bから突出する部分を含む全体の形状が矩形状となっている。また主板部211aは支柱フレーム16bの背面に溶着され、その溶着される箇所にトグルピン203の挿入用の穴(符号省略)が形成され、支柱フレーム16bから突出した箇所にガイドピン213を挿入するためのスリット穴215が形成されている。
第2部材212も矩形状の板部材である。この第2部材212は、底部フレーム2の後端部(支柱フレーム16bより後ろで起立部22よりやや前方の位置)に連結される。第2部材212の上端部では、支柱フレーム16bに対向する箇所にトグルピン203の挿入用の貫通穴(符号省略)が設けられ、支柱フレーム16bより内側に突出する箇所にガイドピン213の挿入用の貫通穴(符号省略)が設けられる。
さらに第3実施例では、支柱フレーム16bにも、トグルピン203を挿入するための貫通穴216(図39,図40を参照。)が設けられる。
第3実施例の車椅子CH3では、上記の位置調整機構210の各部材211,212のトグルピン203の挿入用の穴が支柱フレーム16bの上記の貫通穴216に合う高さに位置しているときに、これら3つの穴にトグルピン203を通し、支柱フレーム16bの前方に突き出た係止片を曲げて当該フレーム16bの前面に係らせることによって、底部フレーム2に対する主フレーム1の相対高さを維持することができる。
トグルピン203による規制が解除され、各ガススプリング9のロック状態も解除されると、主フレーム1にかかる荷重の変化に応じて底部フレーム2に対する主フレーム1の相対位置が変化する。しかし、その変化は、位置調整機構210のガイドピン213がスリット穴215の上端部に当接する高さ位置から当該ガイドピン213がスリット穴215の下端部に当接する高さ位置までの範囲に制限される。
第3実施例の前輪支持部30の前面にも、前輪3の左右方向への回転を規制するためのストッパー部材310が固定されている。図47は、このストッパー部材310およびそれに係わる部材の平面図(A),正面図(B),側面図(C)であり、図48は、図47に示した各部材を含む範囲(車体の一側部のみを対象とする。)の拡大斜視図である。
第3実施例のストッパー部材310は、基本部分(支持部材311および可動部材312)の構成は第2実施例のものと同じであるが、可動部材312を動かすためのレバー部材313が、中間の第2片q2を傾斜させない形態に変更されると共に、底部フレーム2の外面にレバー部材313を支持するための支持台320が設けられている。この支持台320の上端面は底部フレーム2の上端面と同じ高さに合わせられ、その上端面に第2実施例の凹部D1,D2と同じ役割を担う一対の凹部D11,D12が設けられている。なお、後方側の凹部D12は背部が開放された形態となっている。
図48に示すように、この実施例のレバー部材313は、第1片q1が可動部材312の外側に突き出るように可動部材312に通され、第3片q3の端部が支持台320の凹部D12に載せられることによって、大半が前輪支持部30やストッパー部材310より外側に突出する状態になる。第2実施例と同様に、通常の可動部材312は、フック部Hを前方に向けた状態で最下位置に支持される。
<前輪のストッパー部材の作用説明>
図49および図50は、それぞれ第2実施例および第3実施例のストッパー部材310について、フォーク31や前輪3が支持軸33の軸廻りに回転しない状態にする場合に生じる可動部材312の動きを表したものである。
いずれの実施例でも、ストッパー部材310の可動部材312は、通常は、フック部Hを前方に向けた姿勢をもって最下位置に支持される(図49(A),図50(A))。
前輪3が左右に回転せずに直進するのみになる状態にしたい場合には、前輪3が正面を向いていることを確認した上で、人の手でレバー部材313を持ち上げて前方へと回転させる。可動部材312は、このレバー部材313の回転に伴って上方へと移動し、最高位置に達した後は可動部材312も前方側に回転する(図49(B)(C),図50(B)(C))
可動部材312が上下が反転する状態にまで回転すると、各側板314のフック部Hがフォーク31と前輪3との隙間に入る状態になる(図49(D),図50(D))。このフック部Hによりフォーク32の回転が規制され、前輪3も正面を向いた姿勢で維持される。
可動部材312の上記の回転が完了した後は、レバー部材313を第3片q3が凹部D1またはD11の上方に移動するように回転させた後に、レバー部材313から手を離すことによって、レバー部材313の第3片q3が凹部D1,D11の傾斜面を摺動して後端の最も深い場所に収まる。これにより、レバー部材313は凹部D1,D11に安定して支持された状態になる。
この後、前輪3の向きを変更可能な状態に戻したい場合は、レバー部材313を再び人の手で持ち上げて、前方側にある程度まで回転させた後に回転方向を後方側に変更して回転を続けることによって、可動部材310をレバー部材313と同じ方向に回転させて各側板314のフック部Hを上記の隙間から抜き出すことができる。
さらに、レバー部材313を後方の凹部D2,D12の上方にまで回転させると、可動部材312は、フック部Hを前方に向けた姿勢で最下位置に支持される状態に戻る。そこでレバー部材313から手を離すと、レバー部材313も凹部D2,D12に支持される状態に戻る。
図35(B)に示したように、前輪3が基部31の前方に配置されるようにした場合でも、前輪3を正面に向けた状態下でレバー部材313を上記と同様の方法で動かすことによって、可動部材312を上下が反転するまで回転させてフォーク32と前輪3との間の隙間に各側板314のフック部Hを入れることができる。よって、前輪3が基部31の前方に配置されているときも、フォーク32や前輪3が支持軸33の軸廻りに回転するのを規制することができる。
このように、第2実施例や第3実施例のストッパー部材310によれば、レバー部材3313を回転させる操作によって、前輪3の進行方向が直進方向のみに限定される状態と前輪3の進行方向を自由に変更できる状態とを切り替えることができる。
第1実施例の前輪ストッパー300も、ストッパー部材310と同様の機能を有していたが、フォーク32の回転を規制するための操作を車体の後方位置 (介助者のみが操作可能な位置) で行うことを前提としていたため、介助者でなければ前輪ストッパー300を作動させることは困難であった。これに対し、第2実施例や第3実施例のストッパー部材310は、座部に座る利用者でもレバー部材313の操作により上記の切り替えを容易に行うことができるので、利用者が操作を担当することもできる。
<椅子本体の傾きを解消させる原理について>
上述した3つの実施例の車椅子CH1,CH2,CH3では、椅子本体の骨格をなす左右の主フレーム1,1を繋ぐ上部トラス5f,5bと、前輪3および後輪4を支える左右の底部フレーム2,2を繋ぐ下部トラス6とを、連結軸8と球面軸受87との連結位置を介して繋ぐことによって、当該連結位置を基準に、椅子本体が底部フレーム2に対して前後および左右に揺動可能に支持された状態になっている。したがって、底部フレーム2を車輪3,4が接する面に沿う姿勢で維持したまま、椅子本体を底部フレーム2とは異なる姿勢になるように動かすことができる。
また各実施例では、座部に利用者が座っていない初期状態のときでもガススプリング9のピストンロッド90がある程度収縮した状態になるようにピストンロッド90を付勢するようにしている。したがって、ガススプリング9のロック状態を解消すれば、収縮および伸張のいずれの方向にもピストンロッド90を動かすことができる。
ただし、第1実施例では、初期状態のときに、左右の位置決め機構200の各位置決め部材201,202がトグルピン203を介して連結可能になる(図19(B)を参照)ように、主フレーム1と底部フレーム2との高さ方向の位置関係が調整されている。第2実施例および第3実施例でも、初期状態のときに、位置調整機構210の第1部材211と第2部材212とがトグルピン203を介して連結可能になるように、主フレーム1と底部フレーム2との高さ方向の位置関係が調整されている。
したがって、いずれの実施例でも、通常はトグルピン203を介して位置決め部材201,202が連結された状態、または位置調整機構210の第1部材211と第2部材212とが連結された状態が保持されるようにすることによって、主フレーム1と底部フレーム2との位置関係を安定させて(誤って切替えレバー100が操作されてもガススプリング9は殆ど動かない。)、椅子本体を初期状態のまま維持することができる。
車椅子CH1,CH2,CH3が勾配のある路面や段差を移動する際には、従来の車椅子と同様に、車体全体がその勾配または段差の方向に沿って傾く。しかし、各位置決め部材201,202または位置調整部材210の部材211,212の間のトグルピン203による連結を解除し、各ガススプリング9のロック状態も解除して主フレーム1に上記の傾きを解消するための力を加えることによって、主フレーム1や各ガススプリング9のピストンロッド90をその力に従った方向に動かし、主フレーム1を含む椅子本体全体の傾斜姿勢を解消することができる。
まず、第1実施例の車椅子CH1を例に、椅子本体の傾斜姿勢を解消するための方法について説明する。なお、いずれの事例でも、トグルピン203による連結はあらかじめ解除されているものとする。
図51~53は、図1に対応する側面図により、第1実施例の車椅子CH1が下り坂および上り坂ならびに段差を移動する際の車体の状態を表している。図54および図55では、それぞれ図4,図5に対応する位置における断面図により、幅方向に勾配が生じた幅傾斜路面を移動する車椅子CH1の状態を表している。
車椅子CH1が下り坂に入ったときは、各車輪3,4の高さ位置の変動に従って、車体全体も斜面と同様の前下がり状態(前傾姿勢)になる。このとき、車椅子CH1を押す介助者が切替えレバー100をハンドル107の側に引き寄せて各ガススプリング9のロック状態を解除し、その解除状態を維持したままハンドル107に下向きの力を加える(ハンドル107を押圧する)と、その下向きの力は荷重を増加させる力として主フレーム1を含む椅子本体の後方部に伝達されると共に、上部トラス5b,連結軸8の後方部,後方側のガススプリング9にも当該下向きの力が伝達される。
左右の主フレーム1,1は、連結軸8の中央部に取り付けられたブラケット85(球面軸受87)を中心に底部フレーム2に対して揺動可能な状態にあるので、椅子本体の後方部に下向きの力がかけられると、連結軸8や主フレーム1の前方部には後方部にかかった力と偶力の関係になる上向きの力が発生する。この上向きの力は、荷重を減少させる力として上部トラス5fや前方側のガススプリング9にも伝達される。
各方向の力を受けた椅子本体は、それらの力に従って、連結軸8や上部トラス5f,5bと共に、連結軸8のブラケット85(球面軸受87)が連結された箇所を中心に、後方部が下がり前方部が上がる方向に回転しようとする。この動きとほぼ同時に後方側のガススプリング9のピストンロッド90が収縮を開始すると共に前方側のガススプリング9のピストンロッド90が伸張を開始し、それらによって椅子本体の上記の動きが助成された結果、図51に示すように、後方側ではシートフレーム10と底部フレーム2との間隔が狭まり、前方側ではシートフレーム10と底部フレーム2との間隔が広がって、座部は緩やかな後傾姿勢となり、椅子本体の前傾姿勢が解消する。
前傾姿勢の解消を確認した介助者が切替えレバー100を離すと、レバー100が元の位置に戻ってガススプリング9もロック状態に戻り、各ピストンロッド90の変更後の長さが維持される。これにより、下り坂を移動する間、底部フレーム2とシートフレーム10との間の間隔は、前方側で広く、後方側で狭くなる状態で維持され、椅子本体の良好姿勢が保たれる。
車椅子CH1が上り坂に入ったときは、各車輪3,4の高さ位置の変動に従って、車体全体も斜面と同様の後ろ下がり状態(後傾姿勢)になる。このとき、介助者が切替えレバー100をハンドル107の側に引き寄せて各ガススプリング9のロック状態を解除し、その解除状態を維持したままハンドル107に上向きの力を加える(ハンドル107を引っ張り上げる)と、その上向きの力は荷重を減少させる力として主フレーム1を含む椅子本体の後方部に伝達されると共に、上部トラス5b,連結軸8の後方部,後方側のガススプリング9にも当該上向きの力が伝達される。
このとき連結軸8や主フレーム1の前方部には、後方部にかかった上向きの力と偶力の関係になる下向きの力が発生する。この下向きの力は、荷重を増加させる力として上部トラス5fや前方側のガススプリング9にも伝達される。
各方向の力を受けた椅子本体は、それらの力に従って、連結軸8や上部トラス5f,5bと共に、連結軸8のブラケット85(球面軸受87)が連結された箇所を中心に、後方部が上がり前方部が下がる方向に回転しようとする。この動きとほぼ同時に後方側のガススプリング9のピストンロッド90が伸張を開始すると共に前方側のガススプリング9のピストンロッド90が収縮を開始し、それらによって椅子本体の上記の動きが助成された結果、図52に示すように、後方側ではシートフレーム10と底部フレーム2との間隔が広がり、前方側ではシートフレーム10と底部フレーム2との間隔が狭まって、座部は水平に近い姿勢となり、椅子本体の後傾姿勢が解消する。
後傾姿勢の解消を確認した介助者が切替えレバー100を離すと、レバー100が元の位置に戻ってガススプリング9もロック状態に戻り、各ピストンロッド90の変更後の長さが維持される。これにより、上り坂を移動する間、底部フレーム2とシートフレーム10との間の間隔は、前方側で狭く、後方側で広くなる状態で維持され、椅子本体の良好姿勢が保たれる。
このように、下り坂、上り坂のいずれにおいても、介助者のハンドル107を押圧する動作またはハンドル107を引っ張り上げる動作によって、主フレーム1を含む椅子本体,上部トラス5f,5bおよび連結軸8の各々を傾きが解消される方向に動かすと共に、その動きが助成される方向に各ガススプリング9のピストンロッド90を動かすことができる。
ガススプリング9もシートフレーム10や底部フレーム2に対して前後および左右に揺動可能に連結されているので、4箇所のガススプリング9の軸の向きを主フレーム1の姿勢の変化に速やかに追随させて変化させることができる。
よって、介助者がハンドル107にさほど大きな力をかけなくとも、椅子本体の傾斜姿勢を解消することができる。
段差のある場所を下る必要があるときは、図53に示すように、前輪3を前方側に動かして後輪4との間隔を広げることによって、段差を越えるときに生じる車体の傾きを小さくすることができる。このときも、図51に示した下り坂のケースと同様の方法で椅子本体の傾きを解消することができるので、座部を良好姿勢に保って段差を下ることができる。さらに、前輪ストッパー300の棒状部材302を前進させて前輪支持部30のフォーク32の回転を規制すれば、前輪3を正面に向けた姿勢で維持して段差を容易かつ安全に越えることができる。
従来は、段差を下る場合には、利用者の転落や車椅子の転倒を防ぐために、車椅子を後ろ向きにして介助者が後退しながら移動するなどの対策が必要であったが、この実施例の車椅子CH1によれば、図53に示すとおり、座部を良好姿勢に近い状態で保って通常と同様の前進移動をすることができ、下り段差を楽に乗り越えることができる。椅子本体の姿勢を調整する操作も前述の傾斜面での調整の場合と同様に、容易かつ大きな力をかけずに行うことができる。
段差を上る場合にも、前輪3を前方側に動かすことによって、段差を越えるときに生じる車体の傾きを小さくすると共に、前輪ストッパー300によって前輪支持部30のフォーク32の回転を規制し、さらに、図52に示した上り坂のケースと同様の方法で椅子本体の傾きを解消することができる。
幅方向(左右方向)に傾斜が生じた幅傾斜路面に車椅子CH1が入った場合は、車輪3,4が左右で異なる高さになったことに伴い、車体全体も左右方向に沿って傾く状態になる。このときも、介助者が切替えレバー100をハンドル107の側に引き寄せて各ガススプリング9のロック状態を解除し、高くなった側のハンドル107を下に向かって押圧し、低くなった側のハンドル107を引っ張り上げることによって、椅子本体や上部フレーム5f,5bの押圧された側にかかる荷重が高められると共に引き上げられた側にかかる荷重が軽減される。それぞれの側にあるガススプリング9にも同様の力が作用する。
これらの力により、椅子本体は、連結軸8や上部トラス5f,5bと共に、連結軸8のブラケット85(球面軸受87)が取り付けられている位置を中心に、押圧された側が下がり引き上げられた側が上がる方向に回転しようとする。この動きとほぼ同時に、押圧された側のガススプリング9が収縮を開始し、引き上げられた側のガススプリング9が伸縮を開始し、それらによって椅子本体の上記の動きが助成された結果、図54および図55に示すように、椅子本体の左右の高さを同程度にすることができる。
調整後は、介助者が切替えレバー100を離せば、ガスシリンダー9は再びロック状態となり、調整後の良好姿勢を維持することができる。さらに前輪ストッパー300の棒状部材302を前方に動かしてフォーク32の回転を規制しておけば、幅方向の勾配の影響で前輪3の向きが不安定になるのを防いでスムーズに移動することができる。
各ガススプリング9も、シートフレーム10や底部フレーム2に対して左右方向にも揺動可能に支持されているので、各ガススプリング9の軸方向の向きもシートフレーム10の傾きの変化に追随して変化させることができる。
よって、傾いた椅子本体を、その傾きを解消する方向に容易に動かすことができ、その動きを生じさせるためにハンドル107にかける力も小さくてすみ、介助者の負担を軽減することができる。
第1実施例の車椅子CH1では、ガススプリング9は車体の左右の前方部および後方部に設けられたが、少なくとも介助者の操作の力を受ける後方部の側にガススプリング9を配置して、ピストンロッド90の収縮や伸張により主フレーム1と底部フレーム2との間隔が変更される構成にすれば、主フレーム1を含む椅子本体を、連結軸8と球面軸受87との連結位置を中心にピストンロッド90の動きに応じた方向に回転させることが可能である。よって、第1実施例の車椅子CH1を前方部のガススプリング9を取り除いた構成に変更した場合でも、図51~55に示したのと同様の作用を生じさせて椅子本体の姿勢を変更することができる。
第2実施例および第3実施例の車椅子CH2,CH3では、ガススプリング9は車体の後方部にしか設けられていないが、椅子本体の骨格を形成する左右の主フレーム1,1が、その下方の底部フレーム2,2に対し、座部の下の空間の前後方向の中央部にある連結軸8と球面軸受87との連結位置を中心に前後および左右に揺動可能に支持されている構造を有している点では、第1実施例と変わらない。よって、第2実施例や第3実施例でも、第1実施例と同様の操作を行うことによって、椅子本体の傾斜姿勢を解消することができる。
以下、第3実施例の車椅子CH3が下り坂および上り坂ならびに幅傾斜路面を移動する際の車体の状態を表した図56~58を用いて、傾斜姿勢を解消するための力の方向やその作用について説明する。いずれの例でも、あらかじめ、トグルピン203による第1部材211と第2部材212との連結が解除され、ガイドピン213による制限の範囲内で主フレーム1の高さが変更可能になっているものとする。
下り坂で車体が前傾姿勢になった場合に、介助者が切替レバー100の操作により各ガススプリング9のロック状態を解除して、その解除状態を維持したままハンドル107に下向きの力をかける(ハンドル107を押圧する。)と、その下向きの力は、荷重を増加させる力として主フレーム1を含む椅子本体の後方部に伝達されると共に、上部トラス5b,連結軸8の後方部,ガススプリング9にも当該下向きの力が伝達される。さらに、椅子本体の前方部には、後方部にかかった力と偶力の関係になる上向きの力(荷重を減少させる力)が発生する。
各方向の力を受けた椅子本体は、連結軸8や上部トラス5f,5bと共に、連結軸8のブラケット85(球面軸受87)が取り付けられている位置を中心に、後方部が下がり前方部が上がる方向に回転しようとする。この動きとほぼ同時にガススプリング9のピストンロッド90も収縮を開始し、その収縮によって椅子本体の上記の動きが助成された結果、図56に示すように、後方側ではシートフレーム10と底部フレーム2との間隔が狭まり、前方側ではシートフレーム10と底部フレーム2との間隔が広がって、椅子本体の前傾姿勢が解消する。
上り坂で車体が後傾姿勢になった場合に、介助者がガススプリング9のロック状態を解除してハンドル107に上向きの力をかけると、その上向きの力は、荷重を減少させる力として主フレーム1を含む椅子本体の後方部に伝達されると共に、上部トラス5b,連結軸9の後方部、ガススプリング9にも当該上向きの力が伝達される。さらに椅子本体の前方部には、後方部にかかった力と偶力の関係になる下向きの力(荷重を増加させる力)が発生する。
各方向の力を受けた椅子本体は、連結軸8や上部トラス5f,5bと共に、連結軸8のブラケット85(球面軸受87)が取り付けられている位置を中心に、後方部が上がり前方部が下がる方向に回転しようとする。この動きとほぼ同時にガススプリング9のピストンロッド90も伸張を開始し、その伸張によって椅子本体の上記の動きが助成された結果、図57に示すように、後方側ではシートフレーム10と底部フレーム2との間隔が広がり、前方側ではシートフレーム10と底部フレーム2との間隔が狭まって、椅子本体の後傾姿勢が解消する。
幅傾斜路面において車体の左右の高さが異なる状態になったときは、介助者がガススプリング9のロック状態を解除して上がった側のハンドルを押圧し、下がった側のハンドルを引き上げることによって、椅子本体や上部トラス5f,5bの押圧された側にかかる荷重が高められると共に引き上げられた側にかかる荷重が軽減される。それぞれの側にあるガススプリング9にも同様の力が作用する。これらの力により、椅子本体は、連結軸8や上部トラス5f,5bと共に、連結軸8のブラケット85(球面軸受87)が取り付けられている位置を中心に、押圧された側が下がり引き上げられた側が上がる方向に回転しようとする。この動きとほぼ同時に、押圧された側のガススプリング9が収縮を開始し、引き上げられた側のガススプリング9が伸縮を開始し、それらによって椅子本体の上記の動きが助成された結果、図58に示すように、椅子本体の左右の高さを同程度にすることができる。
このように、第3実施例においても、ガススプリング90を収縮または伸張させることによって、主フレーム1を含む椅子本体および上部トラス5f,5bならびに連結軸8を、傾きが解消される方向に動かして椅子本体を良好な姿勢に戻すことができる。
第2実施例の車椅子CH2でも、ガススプリング9のロック状態を解除し、椅子本体をその傾きを解消する方向に回転させる力を加えることによって、上記の図56~58に示した各例と同様の作用を生じさせて、椅子本体の傾斜姿勢を解消することができる。
第2実施例や第3実施例では、底部フレーム2に対する主フレーム1の相対高さを変更できる範囲が位置調整機構210によって一定の範囲までに制限されているので、各事例の調整において主フレーム1の後方部に必要以上の荷重がかけられたとしても、椅子本体が好ましくない方向に傾くのを防ぐことができる。幅傾斜路面において椅子本体を左右方向に揺動させる場合にも、その揺動は、位置調整機構210のガイドピン213がスリット穴215の中で動くことが可能な範囲に留められる。
車椅子CH2,CH3が段差のある場所を移動する場合にも、図53の例と同様に前輪3を前方側に動かすことで段差を越えるときに生じる車体の傾きを小さくすることができる。さらにストッパー部材310の可動部材312を図49および図50に示した方法により動かして、各側板314のフック部Hをフォーク32と前輪3との間の隙間に入れることによって、前輪3が正面に向けられた状態を維持することができる。これらの対策をとった上でガススプリング9のロック状態を解除し、段差を下る場合は下り坂を進行する場合と同様の力を加え、段差を登る場合は上り坂を進行する場合と同様の力を加えることによって、椅子本体を良好姿勢にして段差を容易かつ安全に越えることができる。
第1~3の実施例のいずれにおいても、車椅子CH1,CH2,CH3が傾斜面や段差から抜けて平坦な路面に戻ると、底部フレーム2が水平方向に沿う姿勢になったことに伴って主フレーム1は良好ではない姿勢になるため、伸縮したガススプリング9のピストンロッド90を通常の長さに戻して、椅子本体を底部フレーム2に沿う姿勢に戻す必要がある。この場合も、介助者が切替えレバー100を引き寄せて、高くなっている箇所にかかる荷重が増加し、低くなっている箇所にかかる荷重が減少するような力をハンドル107に加えることによって、容易に椅子本体と底部フレーム2との関係を通常の関係に戻すことができる。このときにも、ハンドル107に大きな力をかけることなく、椅子本体の姿勢を調整することができる。
ガススプリング9には、ピストンロッド90の長さが変化しても発生荷重の大きな変化は生じない、という特性があるので、各ガススプリング9の標準のスプリング圧を椅子本体の座部より上の部分の重さに利用者の体重(想定される範囲の最大値)を加えた重量を支えるのに適した大きさに設定しておけば、各ピストンロッド90の長さが変化しても、椅子本体や利用者を安定して支持することができる。
上記のとおり、いずれの実施例でも、左右の主フレーム1,1やこれらを繋ぐ上部トラス6f,6bおよび連結軸8を、ガススプリング9の伸縮動作によって容易に動かすことができるようにしたので、椅子本体の姿勢を調整するための介助者の操作(ハンドル107の押し下げや引き上げ)に多大な力が必要になることはなく、座部に座る利用者を支持する力が弱まるおそれもない。また、左右の切替えレバー100をハンドル107の側に引き寄せる操作によって両側のガススプリング9のロック状態を解除して、ハンドル107に椅子本体の傾きを解消するのに適した方向への力をかける、という直感的に想起できる方法によって椅子本体の姿勢を調整することができる。
よって、介助者に大きな負担をかけることなく、椅子本体の姿勢を容易に調整して、利用者の安全性を確保することができる。
いずれの実施例においても、通常は、安全性を確保するため、ガススプリング9のロックを解除するのは椅子本体の姿勢を調整する必要が生じたときのみとし、移動中はガススプリング9をロック状態で維持するのが望ましい。
また、殆ど傾斜がない路面を移動する場合は、万一、ガススプリング9のロック状態が解除されても、主フレーム1と底部フレーム2との位置関係が大きく変動しないように、第1実施例では位置決め機構200の各位置決め部材201,202をトグルピン203を介して連結しておくのが望ましい。第2実施例および第3実施例でも、位置調整機構210の第1部材211と第2部材212とをトグルピン203で連結して、主フレーム1と底部フレーム2との位置関係が維持されるようにするのが望ましい。
ただし、前傾姿勢や仙骨滑りの姿勢で座ってしまう利用者に対しては、図59に示すように、平坦面においても、椅子本体が後傾姿勢になるように調整することによって、利用者を座部の奥部へと導いて姿勢も矯正し、安全性を高めることができる。利用者が左右いずれかに身体が傾いてしまう場合にも、図60に示すように、利用者が傾く方向とは反対の方向に椅子本体が傾くように調整することによって、利用者を座部の幅中央部へと導いて、安全性を高めることができる。
利用者の座位が良好な場合でも、食事などのためにテーブルの前に車椅子を停止させる際に、椅子本体を前傾姿勢にすることによって、椅子本体の前面部分をテーブルの下方に入れて、利用者の身体をテーブルに接近させることができる。
第1実施例の前輪ストッパー300や第2,第3実施例のストッパー部材310は、椅子本体の姿勢が調整されていない場合でも、必要に応じてフォーク32の回転を規制する状態に変位させることができる。こうすることによって、車椅子CH1,CH2,CH3を直進させるだけで良い場合に前輪3の向きが変更されて進行が困難になることがなくなり、車椅子をスムーズに進行させることが可能になる。
<変形例>
以上をもって、本発明が適用された3つの実施形態にかかる説明を終了し、以下、これらの実施形態の一部を変更した変形例について説明する。
主フレーム1と底部フレーム2との間に連結されて外力の変化に応じて収縮または伸張することによって、両フレーム1,2の間の間隔を変更する伸縮部材は、ガススプリング9に限るものではない。
図61および図62は、ガススプリング9に代替可能な伸縮部材9X,9Yの構成例を示したものである。これらの例では、第3実施例の車椅子CH3に適用されたものとしており、シートフレーム10や底部フレーム2に対する連結の構造は図45と同様であるので、図45と同じ符号を付すことで、連結構造に関する説明を省略または簡単にする。
なお、いずれの実施例でも、ハンドルフレーム12の部分の切替えレバー100は不要になる。
図61の例の伸縮部材9Xは、円筒体より成る可動部材920,この可動部材920の一方の開口端面から可動部材920の内部に挿入される円柱状の支持部材921,可動部材920の支持部材921が入っていない範囲に収容されるコイルスプリング922,上下一対の取付金具93,94等により構成される。可動部材920の支持部材921が挿入されていない側の端部は取付金具93や球面軸受910を介してシートフレーム10の後部の連結ブロック140に連結される。支持部材921の可動部材920に挿入されていない側の端部は取付金具94および球面軸受910を介して底部フレーム2に連結される。これらの連結によって、伸縮部材9Xは、可動部材920や支持部材921の長さ方向を上下方向に沿わせて、シートフレーム10の延長部分(連結ブロック140)と底部フレーム2とを繋ぐと共に、これらのフレーム10,2に対して前後および左右に揺動可能な状態で支持される。
コイルスプリング922は上方からの荷重が全くかかっていないときに可動部材920から飛び出すほどの長さを有しているが、取付金具93により押圧され、さらに連結ブロック140より上の構成要素からの荷重を受けることによって、座部に利用者が座っていない初期状態下でもある程度収縮した状態となって可動部材920を付勢する。なお、コイルスプリング922の両端端部は溶接や接着剤等により連結金具93および支持部材921に固定されている。
上方からの荷重が増えると、コイルスプリング922がより収縮すると共に、その収縮に応じて可動部材920が下降し、上方からの荷重が減少すると、コイルスプリング922が伸張すると共に可動部材920が上昇する。連結ブロック140が含まれる椅子本体の後方部も可動部材920と同じ方向に変位を開始し、その変位に従って椅子本体が連結軸8と球面軸受87との連結位置を中心に回転した結果、椅子本体の姿勢が変更される。
したがって、伸縮部材9Xを採用する場合は、ハンドルフレーム12を押圧する動作やハンドルフレーム12を引き上げる操作のみで、主フレーム1を含む椅子本体を動かすことができる。そのようにしても、第3実施例の車椅子CH3では、位置調整機構210によって椅子本体を動かすことができる範囲が制限されているので、椅子本体が必要以上に動いて好ましくない姿勢になるおそれはない。また、椅子本体を動かす必要がない場合にも、位置調整機構210の第1部材211と第2部材212とをトグルピン203により連結することによって、主フレーム1の高さや姿勢が変化しないようにすることができる。
なお、上記の可動部材920は、完全な円筒体に限らず、円筒体の一部または数カ所を開口した形態など、適宜、形態をアレンジすることができる。
図62の例の伸縮部材9Yは、図61の可動部材920より大きな径を有する円筒体より成る可動部材930,可動部材930の一方の開口端面から可動部材930の内部に挿入される送りネジ931,当該送りネジ931に摺動可能に連結された状態で可動部材930の送りネジ931の挿入側の開口部に嵌合固定される送りナット932,送りネジ931の可動部材930に挿入されていない側の端部に連結される傘歯車933,傘歯車933の各歯車933a,933bに挿通される一対の回転軸934,935,上下一対の取付金具93,94を主要構成とするものである。
傘歯車933も、球面軸受910と同様に、ユニット化されたものを使用することができる。また傘歯車933に代えて、はすば歯車を使用することもできる。また、この実施例の可動部材930も完全な円筒体に限らず、形態をアレンジすることができる。
一対の回転軸934,935のうちの一方の軸934は、送りネジ931に一連に連なると共に、歯車933aおよび取付金具94ならびに球面軸受910等を介して底部フレーム2に連結される。可動部材930の送りネジ931が挿入されていない側の端部は、取付金具93および球面軸受910等を介してシートフレーム10の延長部分である連結ブロック140に連結される。これらの連結によって、伸縮部材9Yは、送りネジ931や可動部材930の長さ方向を上下方向に沿わせてシートフレーム10(連結ブロック140)と底部フレーム2とを繋ぐと共に、これらのフレーム10,2に対して前後および左右に揺動可能な状態で支持される。
歯車933bに通された回転軸935は、車体の外側(図61に示す例では、車体の背面側から見て左手の方向)に向けられて、その端部に操作用のハンドル936が連結される。
上記の構成によれば、介助者がハンドル936の操作により軸935を回転させることによって、他方の軸934および送りネジ931も回転させ、その回転によって送りナット932および可動部材930を上方または下方に移動させることができる。この動きに追随して、可動部材930が連結されている連結ブロック140(シートフレーム10の延長部分)を含む椅子本体の後方部も可動部材930と同じ方向に変位を開始し、その変位に従って椅子本体が連結軸8と球面軸受87との連結位置を中心に回転した結果、椅子本体の姿勢が変更される。またハンドル936の回転方向を逆転させることによって、椅子本体の変更された姿勢を元に戻すこともできる。
上記の伸縮部材9Yでは、ハンドル936の回転方向と回転量によって、主フレーム1を含む椅子本体の姿勢の変化の方向や変化量が変動する。しかし、この場合も、位置調整機構210によって椅子本体を動かすことができる範囲が制限されているので、椅子本体が必要以上に動いて好ましくない姿勢になるのを防ぐことができる。
伸縮部材9Yは、ガスシリンダー9や伸縮部材9Xとは異なり、主フレーム1の下方側から当該フレーム1を引き下げる力(下向きの力)や当該フレーム1を押し上げる力(上向きの力)を加えることにより、主フレーム1の高さを変更するものとなる。ガスシリンダー9や伸縮部材9Xを用いる場合は、座部にかかり得る荷重の変動範囲を考慮してスプリング圧などを調整する必要があるが、伸縮部材9Yを用いる場合はそのような調整をする必要がなくなり、設計を容易にすることができる。
さらに伸縮部材9Yを使用する場合には、軸935に充電式の電動モータを取り付け、当該モータに操作スイッチを接続してハンドルフレーム12の近傍に配置することによって、主フレーム1の動きを電動で制御することもできる。
第2実施例の車椅子CH2でも、両側のガススプリング9に代えて、伸縮部材9Xまたは9Yを使用することができる。
第1実施例の車椅子CH1でも、ガススプリング9に代えて、伸縮部材9Yを使用することもできる。また、第2および第3の実施例のような位置調整機構210を設けて主フレーム1の高さ位置の移動範囲を制限できるようにすれば、ガススプリング9に代えて伸縮部材9Xを使用することもできる。
<伸縮部材の連結構造について>
伸縮部材9,9X,9Yをシートフレーム10や底部フレーム2に揺動可能に連結する手段は球面軸受に限らず、図63のような連結機構950に置き換えることもできる。
図63の例も第3実施例の構成を前提としているが、第1実施例や第2実施例の構成に置き換えることもできる。伸縮部材もガススプリング9に限らず、図61の例の伸縮部材9Xや図62の例の伸縮部材9Yに置き換えることもできる。
図63の例の連結機構950には、直方体状の金属ブロックより成る支持部材951と、1本の長軸の駒ネジ961と、一対の短軸の駒ネジ962,962とが含まれる。
支持部材951には、長手方向に沿う中心軸に中心を合わせて、駒ネジ961の駒部961aを通すための角形の孔部971が形成されると共に、孔部971の長さ方向に直交する方向に沿いかつ孔部971を挟むようにして、短軸の駒ネジ962を連結するための一対のネジ穴972,972が形成されている。
上記の支持部材951は、上記の孔部971が連結ブロック140のネジ穴141や底部フレーム2のネジ穴250に連通する状態になるように位置合わせされて、連結ブロック140および底部フレーム2の外面に固定される。
図63(B)の上段に示すように、長軸の駒ネジ961は、円柱状の駒部961aと、図45の例の球面軸受910の取付ロッド911と同等のサイズのネジ部961bと、駒部961aに一体に設けられる頭部961cとを有する。当該駒ネジ961は、駒部961aの大半が上記の孔部971に通され、ネジ部961bが連結ブロック140のネジ穴141または底部フレーム2のネジ穴250に連結されることによって、長さ方向を車体の左右方向に沿わせた状態で支持される。
短軸の駒ネジ962も、図63(A)の上段に示すように、円柱状の駒部962aとネジ部962bと頭部963cとを有する。各駒ネジ962は、駒部962aがガススプリング9の取付金具93,94の一片(取付片93a,93b,94a,94bのいずれか)の軸穴に通され、ネジ部962bが上記のネジ穴972に連結されることによって、長さ方向を車体の前後方向に沿わせた状態で支持される。なお、ネジ部962bが駒ネジ961の駒部961aに当たらないように、ネジ部963bの長さはネジ穴972より短く設定されている。また、駒部962aには座金973が取り付けられている。
図63には明示されていないが、駒ネジ961の駒部961aは孔部971より若干長くなっており、当該駒部961aの孔部971の外に出た部分によって、駒ネジ931の頭部961cと支持部材951との間に所定量の間隙が生じている。駒ネジ962でも、駒部962bに取り付けられる座金973の厚みより駒部962bの方が長くなるように調整することによって、座金973と頭部962cとの間に所定量の間隙が生じている。
上記の構成により、連結部材951は、長軸の駒ネジ961の軸の廻りに回転可能となり、当該連結部材951に連結されたガススプリング9の取付金具93,94も、短軸の駒ネジ962の軸の廻りに回転可能となる。よって、ガススプリング9の上下の取付金具93,94は、連結部材951が取り付けられた連結ブロック140(シートフレーム10の延長部分)や底部フレーム2の傾きの変化に応じて回転し、それらの回転の方向や回転角度によってガススプリング9の姿勢が変化する。
<自走式の車椅子への適用について>
本発明を自走式の車椅子に適用する場合には、第2実施例または第3実施例の構成を採用することで、利用者自身が前輪支持部30のストッパー部材310を操作して、前輪3が正面を向いた状態で維持される状態と、前輪3が左右に回転可能になる状態とを容易に切り替えることができる。
主フレーム1と底部フレーム2とを繋ぐ収縮部材としてロック機能付きのガススプリング9を使用する場合は、ガススプリング9のロック状態を解除するためのレバースイッチを利用者の手が届く場所に配備して、利用者の動作により椅子本体の姿勢を調整することができる。
たとえば、下り坂では、利用者はレバースイッチをロック状態からロック解除状態に切り替えて背もたれクッション102にもたれることによって、車体の後方への荷重を増やすと共に前方への荷重を減らし、ガススプリング9のピストンロッド90を図51や図56と同様の状態に変化させ、椅子本体の傾斜姿勢を解消することができる。上り坂でも、利用者はレバースイッチをロック解除状態に切り替えて身体を前方に傾けることによって、車体の前方への荷重を増やすと共に後方への荷重を減らし、ガススプリング9のピストンロッド90を図52や図57と同様の状態に変化させ、椅子本体の傾斜姿勢を解消することができる。
幅傾斜路面においても、利用者は、レバースイッチをロック解除状態に切り替えて高くなった側に身体を傾けることによって、高くなった側への荷重を増やすと共に低くなった側への荷重を減らし、ガススプリング9のピストンロッド90を図54,図55,図58に示したのと同様の状態に変化させ、椅子本体の傾斜姿勢を解消することができる。
いずれのケースでも、椅子本体の傾斜姿勢が解消された後はレバースイッチをロック状態に戻すことによって、各ガススプリング9のピストンロッド90を変化後の長さで維持し、椅子本体を良好姿勢にして傾斜面を移動することができる。車椅子が平坦な路面に戻ったときは、もういちどレバースイッチをロック解除状態にして傾斜面のときとは反対の側に荷重をかけることによって、各ガススプリング9のピストンロッド90を通常の長さに戻すことができる。その後は、再びレバースイッチをロック状態にしてピストンロッド90を通常の長さで維持することによって、椅子本体を良好姿勢で維持して移動することができる。
自走式の車椅子において第2実施例または第3実施例の構成を採用する場合には、両側の後方部のガススプリング9を図62に示した伸縮部材9Yに変更し、先に述べた電動モータによりこれらの伸縮部材9Yを動かすようにしてもよい。この場合も、座部の近傍にモータを動かすスイッチを配備、またはスイッチを含むコントローラをサイドフレーム14等に連結しておけば、利用者は、自身の姿勢を変更する必要なく、スイッチを操作するだけで椅子本体の傾き姿勢を容易に解消することができる。
<その他の変形例>
底部フレーム2の前方にも起立部を設けて、この起立部に、各実施例の前輪3よりも径の大きな車輪を、前輪支持部を介さずに連結することもできる。この場合には前輪ストッパー300やストッパー部材は不要になる。
第1~3の実施例では、椅子本体を回転させるための基準位置(球面軸受87と連結軸8との連結位置)を座部の下の空間の前後方向の中央部に設けたが、基準位置を中央部より前又は後にずらした場合でも、基準位置および左右の主フレーム1,1と伸縮部材9(9X,9Y)との連結位置の計3箇所の高さによって、椅子本体の姿勢を定めることができる。また、各伸縮部材9(9X,9Y)の収縮や伸張によって椅子本体の姿勢を変更することができる。
各実施例の上部トラス5や底部連結部材7f,7bを構成する部材(トラス部材50,バー部材70)は、各実施例の図面に記載されたような棒状の形態のものに限らず、より厚みのある長板状の形態にすることもできる。
また、車椅子を折り畳む必要がなければ、上部トラス5のトラス部材50の上端部を座シート101の側部ではなく、シートフレーム10に連結してもよい。
各実施例の底部フレーム2や、下部トラス6のトラス部材60や底部連結部材7などの底部フレーム2に係わる部材、ならびに上部トラス5のトラス部材50は、頑強な木材やFRP(繊維強化プラスチック)など、金属以外の材料を用いて製作することもできる。主フレーム1は既存の車椅子の部品を利用する都合上、金属製となる可能性が高いが、金属製にすることは必須要件ではない。
<まとめ>
上記の実施例や変形例により説明した本発明の車椅子は、従来と同様の構成の主フレーム1や単純な形状の板材による底部フレーム2を使用し、これらを連結するトラス5f,5b,6,底部連結部材7f,7b,連結軸8の構成も簡単である。主フレーム1の姿勢を調整するための手段も、市販のガススプリング9、または市販の部品の組み合わせにより製作できる伸縮部材9Xもしくは9Yを使用できるので、材料費が大がかりになるのを防ぐことができる。また、組み立て作業の労力も大幅に軽減して製作コスト全体を抑えることができる。
また、既存の車椅子の多くでは、左右一対のフレームを前後方向の中央位置および後端位置でトラス部材により連結しているので、この構成を利用することによって第2実施例の車椅子CH2を容易に製造することができる。
よって、傾斜姿勢になった椅子本体を容易に良好姿勢に復帰させることが可能な車椅子を手ごろな価格で提供することができ、多くの利用者や介助者が抱える不便を解消することができる。