JP7419729B2 - 磁壁移動素子及び磁気記録アレイ - Google Patents

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Description

本発明は、磁壁移動素子及び磁気記録アレイに関する。
微細化に限界が見えてきたフラッシュメモリ等に代わる次世代の不揮発性メモリに注目が集まっている。例えば、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、ReRAM(Resistance Randome Access Memory)、PCRAM(Phase Change Random Access Memory)等が次世代の不揮発性メモリとして知られている。
MRAMは、磁化の向きの変化によって生じる抵抗値変化をデータ記録に利用している。データ記録は、MRAMを構成する磁気抵抗変化素子のそれぞれが担っている。例えば、特許文献1には、磁気記録層内における磁壁を移動させることで、多値のデータを記録することができる磁気抵抗変化素子(磁壁移動素子)が記載されている。特許文献1には、磁気結合層と第1磁化固定領域との間に中間層を設けることが記載されている。また中間層を磁気記録層全体に接触するように形成し、中間層を下地層としてもよい旨が記載されている。
国際公開第2009/019949号
磁壁移動素子は、磁壁の位置でデータを多値又はアナログに記録するため、磁気記録層内に磁壁を維持する必要がある。磁壁は、磁気記録層内で磁化の向きがねじれることで生じる。例えば、磁気記録層の異なる位置に、異なる方向に配向した強磁性層を近接させ、磁気記録層内に異なる磁区を生み出すと、磁気記録層内で磁化の向きがねじれ、磁壁が生じる。それぞれの磁区の固定が十分でないと、磁壁の移動範囲が所望の範囲より広くなったり、場合によっては磁壁が消滅してしまう。例えば、特許文献1に示す磁気抵抗変化素子は、磁気結合によって第1磁化固定領域の磁化を固定している。しかしながら、磁気結合層と第1磁化固定領域との磁気結合が、十分得られない場合があり、磁区の固定が不十分となる場合がある。
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、磁壁の動作を安定化できる磁壁移動素子及び磁気記録アレイを提供する。
(1)第1の態様にかかる磁壁移動素子は、強磁性体を含む配線層と、前記配線層の第1面に接する非磁性層と、前記配線層の前記第1面に接続され、強磁性体を含む第1導電層と、前記配線層に前記第1導電層と離間して接続された第2導電層と、を備え、前記第1導電層の接続面の第1部分は前記配線層と直接接続し、前記接続面の前記第1部分を除く第2部分は前記配線層と前記非磁性層を介して接続されている。
(2)第2の態様にかかる磁壁移動素子は、強磁性体を含む配線層と、前記配線層の第1面に接する非磁性層と、前記配線層の前記第1面に接続され、強磁性体を含む第1導電層と、前記配線層に前記第1導電層と離間して接続された第2導電層と、を備え、前記第1導電層は、前記配線層と前記非磁性層を介して接続され、前記第1導電層と前記配線層との間のいずれかの位置における前記非磁性層の厚みは、前記第1導電層の接続面の前記第2導電層に近い側の第1端と重なる位置における前記非磁性層の厚みより薄い。
(3)上記態様にかかる磁壁移動素子において、前記第1部分の面積は、前記第2部分の面積より広くてもよい。
(4)上記態様にかかる磁壁移動素子において、前記第1導電層の前記接続面は、積層方向に窪んでおり、前記非磁性層の一部は前記接続面の窪みに嵌まっていてもよい。
(5)上記態様にかかる磁壁移動素子において、前記配線層の前記第1面は、積層方向に窪んでおり、前記非磁性層は前記第1面の窪みに嵌まっていてもよい。
(6)上記態様にかかる磁壁移動素子において、前記第1導電層と前記配線層との間において前記非磁性層は、前記接続面の前記第2導電層に近い側の第1端から離れるに従い、厚みが薄くなってもよい。
(7)上記態様にかかる磁壁移動素子において、前記第1導電層と前記配線層との間における前記非磁性層の平均厚みが10Å以下であってもよい。
(8)上記態様にかかる磁壁移動素子において、前記第2導電層は、強磁性体を含み、前記第2導電層の接続面の第1部分は前記配線層と直接接続し、前記第2導電層の接続面の第1部分を除く第2部分は前記配線層と前記非磁性層を介して接続されている。
(9)上記態様にかかる磁壁移動素子において、前記第2導電層は、強磁性体を含み、前記第2導電層と前記配線層との間のいずれかの位置における前記非磁性層の厚みは、前記第2導電層の接続面の前記第1導電層に近い側の第1端と重なる位置における前記非磁性層の厚みより薄くてもよい。
(10)上記態様にかかる磁壁移動素子は、前記配線層の前記第1面と反対側の第2面の上方にある強磁性層と、前記強磁性層と前記配線層との間にある第2非磁性層と、をさらに有してもよい。
(11)上記態様にかかる磁壁移動素子において、前記非磁性層は、前記強磁性層から離れるに従い、厚みが薄くなる狭窄部を有し、前記狭窄部は、積層方向から見て前記強磁性層と重ならなくてもよい。
(12) 上記態様にかかる磁壁移動素子において、前記非磁性層は、前記強磁性層から離れるに従い、厚みが薄くなる狭窄部を有し、前記狭窄部は、積層方向から見て前記強磁性層と一部が重なってもよい。
(13)第2の態様にかかる磁気記録アレイは、上記態様にかかる磁壁移動素子を複数有する。
上記態様にかかる磁壁移動素子及び磁気記録アレイは、磁壁の動作を安定化することができる。
第1実施形態に係る磁気記録アレイの構成図である。 第1実施形態に係る磁気記録アレイの要部の断面図である。 第1実施形態に係る磁壁移動素子の断面図である。 第1実施形態に係る磁壁移動素子の平面図である。 第1比較例に係る磁壁移動素子の断面図である。 第2比較例に係る磁壁移動素子の断面図である。 第1変形例に係る磁壁移動素子の断面図である。 第2変形例に係る磁壁移動素子の断面図である。 第2変形例の別の例に係る磁壁移動素子の断面図である。 第3変形例に係る磁壁移動素子の断面図である。 第4変形例に係る磁壁移動素子の断面図である。 第2実施形態に係る磁壁移動素子の断面図である。 第3実施形態に係る磁壁移動素子の断面図である。
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
まず方向について定義する。x方向及びy方向は、後述する基板Sub(図2参照)の一面と略平行な方向である。x方向は、後述する配線層10が延びる方向であり、後述する第1導電層30から第2導電層40へ向かう方向である。y方向は、x方向と直交する方向である。z方向は、後述する基板Subから磁壁移動素子100へ向かう方向である。z方向は積層方向の一例である。また本明細書で「x方向に延びる」とは、例えば、x方向、y方向、及びz方向の各寸法のうち最小の寸法よりもx方向の寸法が大きいことを意味する。他の方向に延びる場合も同様である。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態にかかる磁気記録アレイの構成図である。磁気記録アレイ200は、複数の磁壁移動素子100と、複数の第1配線Wp1~Wpnと、複数の第2配線Cm1~Cmnと、複数の第3配線Rp1~Rpnと、複数の第1スイッチング素子110と、複数の第2スイッチング素子120と、複数の第3スイッチング素子130とを備える。磁気記録アレイ200は、例えば、磁気メモリ、積和演算器、ニューロモーフィックデバイスに利用できる。
<第1配線、第2配線、第3配線>
第1配線Wp1~Wpnは、書き込み配線である。第1配線Wp1~Wpnは、電源と1つ以上の磁壁移動素子100とを電気的に接続する。電源は、使用時に磁気記録アレイ200の一端に接続される。
第2配線Cm1~Cmnは、共通配線である。共通配線は、データの書き込み時及び読み出し時の両方に用いることができる配線である。第2配線Cm1~Cmnは、基準電位と1つ以上の磁壁移動素子100とを電気的に接続する。基準電位は、例えば、グラウンドである。第2配線Cm1~Cmnは、複数の磁壁移動素子100のそれぞれに設けられてもよいし、複数の磁壁移動素子100に亘って設けられてもよい。
第3配線Rp1~Rpnは、読み出し配線である。第3配線Rp1~Rpnは、電源と1つ以上の磁壁移動素子100とを電気的に接続する。電源は、使用時に磁気記録アレイ200の一端に接続される。
<第1スイッチング素子、第2スイッチング素子、第3スイッチング素子>
図1に示す第1スイッチング素子110、第2スイッチング素子120、第3スイッチング素子130は、複数の磁壁移動素子100のそれぞれに接続されている。磁壁移動素子100にスイッチング素子が接続されたものを半導体装置と称する。第1スイッチング素子110は、磁壁移動素子100のそれぞれと第1配線Wp1~Wpnとの間に接続されている。第2スイッチング素子120は、磁壁移動素子100のそれぞれと第2配線Cm1~Cmnとの間に接続されている。第3スイッチング素子130は、磁壁移動素子100のそれぞれと第3配線Rp1~Rpnとの間に接続されている。
第1スイッチング素子110及び第2スイッチング素子120をONにすると、所定の磁壁移動素子100に接続された第1配線Wp1~Wpnと第2配線Cm1~Cmnとの間に書き込み電流が流れる。第1スイッチング素子110及び第3スイッチング素子130をONにすると、所定の磁壁移動素子100に接続された第2配線Cm1~Cmnと第3配線Rp1~Rpnとの間に読み出し電流が流れる。
第1スイッチング素子110、第2スイッチング素子120及び第3スイッチング素子130は、電流の流れを制御する素子である。第1スイッチング素子110、第2スイッチング素子120及び第3スイッチング素子130は、例えば、トランジスタ、オボニック閾値スイッチ(OTS:Ovonic Threshold Switch)のように結晶層の相変化を利用した素子、金属絶縁体転移(MIT)スイッチのようにバンド構造の変化を利用した素子、ツェナーダイオード及びアバランシェダイオードのように降伏電圧を利用した素子、原子位置の変化に伴い伝導性が変化する素子である。
第1スイッチング素子110、第2スイッチング素子120、第3スイッチング素子130のいずれかは、同じ配線に接続された磁壁移動素子100で、共用してもよい。例えば、第1スイッチング素子110を共有する場合は、第1配線Wp1~Wpnの上流に一つの第1スイッチング素子110を設ける。例えば、第2スイッチング素子120を共有する場合は、第2配線Cm1~Cmnの上流に一つの第2スイッチング素子120を設ける。例えば、第3スイッチング素子130を共有する場合は、第3配線Rp1~Rpnの上流に一つの第3スイッチング素子130を設ける。
図2は、第1実施形態に係る磁気記録アレイ200の要部の断面図である。図2は、図1における一つの磁壁移動素子100を配線層10のy方向の幅の中心を通るxz平面で切断した断面である。
図2に示す第1スイッチング素子110及び第2スイッチング素子120は、トランジスタTrである。トランジスタTrは、ゲート電極Gと、ゲート絶縁膜GIと、基板Subに形成されたソース領域S及びドレイン領域Dと、を有する。基板Subは、例えば、半導体基板である。第3スイッチング素子130は、電極Eと電気的に接続され、例えば、紙面奥行き方向(-y方向)に位置する。
トランジスタTrのそれぞれと磁壁移動素子100とは、接続配線Cwを介して、電気的に接続されている。接続配線Cwは、導電性を有する材料を含む。接続配線Cwは、例えば、z方向に延びる。接続配線Cwは、例えば、絶縁層90の開口部に形成されたビア配線である。
磁壁移動素子100とトランジスタTrとは、接続配線Cwを除いて、絶縁層90によって電気的に分離されている。絶縁層90は、多層配線の配線間や素子間を絶縁する絶縁層である。絶縁層90は、例えば、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)、窒化クロム、炭窒化シリコン(SiCN)、酸窒化シリコン(SiON)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)等である。
「磁壁移動素子」
図3は、磁壁移動素子100を配線層10のy方向の中心を通るxz平面で切断した断面図である。磁壁移動素子100は、配線層10と非磁性層20と第1導電層30と第2導電層40と第2非磁性層50と強磁性層60とを有する。磁壁移動素子100にデータを書き込む際は、第1導電層30と第2導電層40との間の配線層10に書き込み電流を流す。磁壁移動素子100からデータを読み出す際は、第1導電層30又は第2導電層40と強磁性層60との間に読み出し電流を流す。
「配線層」
配線層10は、x方向に延びる部分であり、書き込み電流が通電される部分である。配線層10は、例えば、z方向からの平面視で、x方向が長軸、y方向が短軸の矩形である。配線層10は、第1導電層30及び第2導電層40と接続されている。以下、配線層10の第1導電層30が接続されている側の面を第1面10aと称する。書き込み電流は、配線層10に沿って、第1導電層30から第2導電層40に向って、又は、第2導電層40から第1導電層30に向って流れる。配線層10は、非磁性層20、第1導電層30及び第2導電層40上に積層されている。
配線層10は、内部の磁気的な状態の変化により情報を磁気記録可能な層である。配線層10は、磁気記録層、磁壁移動層と呼ばれる場合がある。
配線層10は、磁化固定領域11、12と磁壁移動領域13とを有する。磁壁移動領域13は、二つの磁化固定領域11、12に挟まれる。
磁化固定領域11は、z方向から見て、配線層10の第1導電層30の接続面30aと重なる領域である。磁化固定領域12は、z方向から見て、配線層10の第2導電層40の接続面40aと重なる領域である。磁化固定領域11、12の磁化M11、M12は、磁壁移動領域13の磁化M13A、M13Bより磁化反転しにくく、磁壁移動領域13の磁化M13A、M13Bが反転する閾値の外力を印加しても磁化反転しない。そのため、磁化固定領域11、12の磁化M11、M12は、磁壁移動領域13の磁化M13A、M13Bに対して固定されていると言われる。
磁化固定領域11の磁化M11と、磁化固定領域12の磁化M12とは異なる方向に配向している。磁化固定領域11の磁化M11と、磁化固定領域12の磁化M12とは、例えば、反対方向に配向している。磁化固定領域11の磁化M11は例えば+z方向に配向し、磁化固定領域12の磁化M12は例えば-z方向に配向している。
磁壁移動領域13は、第1磁区13Aと第2磁区13Bとからなる。第1磁区13Aは、磁化固定領域11に隣接する。第1磁区13Aの磁化M13Aは、磁化固定領域11の磁化M11の影響を受けて、例えば、磁化固定領域11の磁化M11と同じ方向に配向する。第2磁区13Bは、磁化固定領域12に隣接する。第2磁区13Bの磁化M13Bは、磁化固定領域12の磁化M12の影響を受けて、例えば、磁化固定領域12の磁化M12と同じ方向に配向する。そのため、第1磁区13Aの磁化M13Aと第2磁区13Bの磁化M13Bとは、異なる方向に配向する。第1磁区13Aの磁化M13Aと第2磁区13Bの磁化M13Bとは、例えば、反対方向に配向する。
第1磁区13Aと第2磁区13Bとの境界が磁壁15である。磁壁15は、磁壁移動領域13内を移動する。磁壁15は、原則、磁化固定領域11、12には侵入しない。
磁壁移動領域13における第1磁区13Aと第2磁区13Bとの比率が変化すると、磁壁15が移動する。磁壁15は、磁壁移動領域13のx方向に書き込み電流を流すことによって移動する。例えば、磁壁移動領域13に+x方向の書き込み電流(例えば、電流パルス)を印加すると、電子は電流と逆の-x方向に流れるため、磁壁15は-x方向に移動する。第1磁区13Aから第2磁区13Bに向って電流が流れる場合、第2磁区13Bでスピン偏極した電子は、第1磁区13Aの磁化M13Aを磁化反転させる。第1磁区13Aの磁化M13Aが磁化反転することで、磁壁15は-x方向に移動する。
配線層10は、磁性体により構成される。配線層10は、Co、Ni、Fe、Pt、Pd、Gd、Tb、Mn、Ge、Gaからなる群から選択される少なくとも一つの元素を有することが好ましい。配線層10に用いられる材料として、例えば、CoとNiの積層膜、CoとPtの積層膜、CoとPdの積層膜、MnGa系材料、GdCo系材料、TbCo系材料が挙げられる。MnGa系材料、GdCo系材料、TbCo系材料等のフェリ磁性体は飽和磁化が小さく、磁壁15を移動するために必要な閾値電流が小さくなる。またCoとNiの積層膜、CoとPtの積層膜、CoとPdの積層膜は、保磁力が大きく、磁壁15の移動速度が遅くなる。
「非磁性層」
非磁性層20は、配線層10の第1面10aに接する。非磁性層20は、配線層10の第1面10a上にある。図3に示す非磁性層20は、第1面10aに形成された窪み10cに嵌っている。図3に示す非磁性層20は、磁化固定領域11の一部、磁壁移動領域13、磁化固定領域12の一部に跨っている。
非磁性層20は、z方向に磁壁移動領域13と重なる位置から、磁化固定領域11と第1導電層30との間及び磁化固定領域12と第2導電層40の間に向って延びている。非磁性層20の第1端は、磁化固定領域11と第1導電層30との間にある。非磁性層20の第2端は、磁化固定領域12と第2導電層40との間にある。
非磁性層20は非磁性体からなる。非磁性層20は、例えば、配線層10の結晶構造を規定する。非磁性層20の結晶構造により配線層10の結晶性が高まり、配線層10の磁化の配向性が高まる。非磁性層20の結晶構造は、例えば、アモルファス、(001)配向したNaCl構造、ABOの組成式で表される(002)配向したペロブスカイト構造、(001)配向した正方晶構造または立方晶構造である。
非磁性層20は、導体又は絶縁体である。非磁性層20は、導体であることが好ましい。非磁性層20が導体の場合、非磁性層20の厚みは、配線層10の厚みより薄いことが好ましい。非磁性層20は、例えば、Ta、Ru、Pt、Ir、Rh、W、Pd、Cu、Au、Cuを含む。非磁性層20は、例えば、Ta層、Pt層、Ta層とPt層との積層体である。
非磁性層20の厚みは、例えば、xy面内において略一定である。非磁性層20の平均厚みは、例えば、50Å以下である。平均厚みは、非磁性層20をx方向に等間隔に10分割するそれぞれのx方向の位置で測定した非磁性層20の厚みの平均値である。
「第1導電層及び第2強磁性層」
第1導電層30は、配線層10の第1面10aに接続される。第2導電層40は、例えば、配線層10の第1面10aに接続される。第2導電層40は、配線層10の第1面10a以外の面に接続されてもよい。第2導電層40は、第1導電層30と離間して配線層10に接続される。第1導電層30は例えば配線層10の第1端部に接続され、第2導電層40は例えば配線層10の第2端部に接続される。第1導電層30及び第2導電層40は、例えば、接続配線Cwと配線層10との接続部である。
第1導電層30は、磁性体を含む。第1導電層30の磁化M30は、一方向に配向する。磁化M30は、例えば、+z方向に配向する。第1導電層30は、磁化固定領域11の磁化M11を固定する。第1導電層30の磁化M30と磁化固定領域11の磁化M11とは、例えば、同じ方向に配向する。
第1導電層30は、例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等を含む。第1導電層30は、例えば、Co-Fe、Co-Fe-B、Ni-Fe等である。また第1導電層30の磁化容易軸をz方向とする(垂直磁化膜にする)場合は、第1導電層30をCo、Fe、Niからなる群から選択された強磁性体とPt、Pd、Ru、Rhからなる群から選択された非磁性体との積層体とすることが好ましい。また第1導電層30は、シンセティック反強磁性構造(SAF構造)でもよい。シンセティック反強磁性構造は、非磁性層を挟む二つの磁性層からなる。二つの磁性層はそれぞれ磁化が固定されており、固定された磁化の向きは反対である。
第2導電層40は、導電性を有する材料からなる。第2導電層40は、例えば、磁性体を含む。第2導電層40が磁性体を含む場合、第2導電層40の磁化M40は、第1導電層30の磁化M30と異なる方向に配向する。磁化M40は、例えば、-z方向に配向する。この場合、第2導電層40は、磁化固定領域12の磁化M12を固定し、第2導電層40の磁化M40と磁化固定領域12の磁化M12とは、例えば、同じ方向に配向する。第2導電層40は、例えば、第1導電層30と同様の材料を用いることができる。第2導電層40が磁性体を含まない場合は、磁化固定領域12の磁化M12は、例えば、外部磁場等によって固定される。
第1導電層30は、一部が配線層10と直接接し、一部が非磁性層20を介して配線層10と接している。第1導電層30の接続面30aは、一部が配線層10と接し、一部が非磁性層20と接する。以下、接続面30aのうち配線層10と直接接する部分を第1部分30a1、接続面30aのうち配線層10と非磁性層20を介して接する部分を第2部分30a2と称する。図4に示すように、例えば、第1部分30a1の面積は、第2部分30a2の面積より広い。図4は、第1実施形態に係る磁壁移動素子の平面図である。
また図3及び図4に示す第2導電層40は、一部が配線層10と直接接し、一部が非磁性層20を介して配線層10と接している。第2導電層40の接続面40aは、例えば、一部が配線層10と接し、一部が非磁性層20と接する。以下、接続面40aのうち配線層10と直接接する部分を第1部分40a1、接続面40aのうち配線層10と非磁性層20を介して接する部分を第2部分40a2と称する。図4に示すように、例えば、第1部分40a1の面積は、第2部分40a2の面積より広い。
「第2非磁性層」
第2非磁性層50は、配線層10と強磁性層60との間に位置する。第2非磁性層50は、配線層10の第2面に積層される。第2面は、第1面10aと対向する面である。
第2非磁性層50は、例えば、非磁性の絶縁体、半導体又は金属からなる。非磁性の絶縁体は、例えば、Al、SiO、MgO、MgAl、およびこれらのAl、Si、Mgの一部がZn、Be等に置換された材料である。これらの材料は、バンドギャップが大きく、絶縁性に優れる。第2非磁性層50が非磁性の絶縁体からなる場合、第2非磁性層50はトンネルバリア層である。非磁性の金属は、例えば、Cu、Au、Ag等である。非磁性の半導体は、例えば、Si、Ge、CuInSe、CuGaSe、Cu(In,Ga)Se等である。
第2非磁性層50の厚みは、20Å以上であることが好ましく、30Å以上であることがより好ましい。第2非磁性層50の厚みが厚いと、磁壁移動素子100の抵抗面積積(RA)が大きくなる。磁壁移動素子100の抵抗面積積(RA)は、1×10Ωμm以上であることが好ましく、1×10Ωμm以上であることがより好ましい。磁壁移動素子100の抵抗面積積(RA)は、一つの磁壁移動素子100の素子抵抗と磁壁移動素子100の素子断面積(第2非磁性層50をxy平面で切断した切断面の面積)の積で表される。
「強磁性層」
強磁性層60は、第2非磁性層50上にある。強磁性層60は、一方向に配向した磁化M60を有する。強磁性層60の磁化M60は、所定の外力が印加された際に磁壁移動領域13の磁化M13A、M13Bよりも磁化反転しにくい。所定の外力は、例えば外部磁場により磁化に印加される外力や、スピン偏極電流により磁化に印加される外力である。強磁性層60は、磁化固定層、磁化参照層と呼ばれることがある。
強磁性層60の磁化と磁壁移動領域13の磁化M13A、M13Bとの相対角の違いにより、磁壁移動素子100の抵抗値は変化する。第1磁区13Aの磁化M13Aは、例えば強磁性層60の磁化M60と同じ方向(平行)であり、第2磁区13Bの磁化M13Bは、例えば強磁性層60の磁化M60と反対方向(反平行)である。z方向からの平面視で強磁性層60と重畳する部分における第1磁区13Aの面積が広くなると、磁壁移動素子100の抵抗値は低くなる。反対に、z方向からの平面視で強磁性層60と重畳する部分における第2磁区13Bの面積が広くなると、磁壁移動素子100の抵抗値は高くなる。
強磁性層60は、強磁性体を含む。強磁性層60は、例えば、配線層10との間で、コヒーレントトンネル効果を得やすい材料を含む。強磁性層60は、例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等を含む。強磁性層60は、例えば、Co-Fe、Co-Fe-B、Ni-Feである。
強磁性層60は、例えば、ホイスラー合金でもよい。ホイスラー合金はハーフメタルであり、高いスピン分極率を有する。ホイスラー合金は、XYZ又はXYZの化学組成をもつ金属間化合物であり、Xは周期表上でCo、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、YはMn、V、CrあるいはTi族の遷移金属又はXの元素種であり、ZはIII族からV族の典型元素である。ホイスラー合金として例えば、CoFeSi、CoFeGe、CoFeGa、CoMnSi、CoMn1-aFeAlSi1-b、CoFeGe1-cGa等が挙げられる。
強磁性層60の膜厚は、強磁性層60の磁化容易軸をz方向とする(垂直磁化膜にする)場合は、1.5nm以下とすることが好ましく、1.0nm以下とすることがより好ましい。強磁性層60の膜厚を薄くすると、強磁性層60と他の層(第2非磁性層50)との界面で、強磁性層60に垂直磁気異方性(界面垂直磁気異方性)が付加され、強磁性層60の磁化がz方向に配向しやすくなる。
強磁性層60の磁化容易軸をz方向とする(垂直磁化膜にする)場合は、強磁性層60をCo、Fe、Niからなる群から選択された強磁性体とPt、Pd、Ru、Rhからなる群から選択された非磁性体との積層体とすることが好ましく、Ir、Ruからなる群から選択された中間層を積層体のいずれかの位置に挿入することがより好ましい。強磁性体と非磁性体を積層すると垂直磁気異方性を付加することができ、中間層を挿入することによって強磁性層60の磁化がz方向に配向しやすくなる。
強磁性層60の第2非磁性層50と反対側の面に、スペーサ層を介して、反強磁性層を設けてもよい。強磁性層60、スペーサ層、反強磁性層は、シンセティック反強磁性構造(SAF構造)となる。シンセティック反強磁性構造は、非磁性層を挟む二つの磁性層からなる。強磁性層60と反強磁性層とが反強磁性カップリングするとことで、反強磁性層を有さない場合より強磁性層60の保磁力が大きくなる。反強磁性層は、例えば、IrMn,PtMn等である。スペーサ層は、例えば、Ru、Ir、Rhからなる群から選択される少なくとも一つを含む。
磁壁移動素子100の各層の磁化の向きは、例えば磁化曲線を測定することにより確認できる。磁化曲線は、例えば、MOKE(Magneto Optical Kerr Effect)を用いて測定できる。MOKEによる測定は、直線偏光を測定対象物に入射させ、その偏光方向の回転等が起こる磁気光学効果(磁気Kerr効果)を用いることにより行う測定方法である。
次いで、磁気記録アレイ200の製造方法について説明する。磁気記録アレイ200は、各層の積層工程と、各層の一部を所定の形状に加工する加工工程により形成される。各層の積層は、スパッタリング法、化学気相成長(CVD)法、電子ビーム蒸着法(EB蒸着法)、原子レーザデポジッション法等を用いることができる。各層の加工は、フォトリソグラフィー等を用いて行うことができる。
まず基板Subの所定の位置に、不純物をドープしソース領域S、ドレイン領域Dを形成する。次いで、ソース領域Sとドレイン領域Dとの間に、ゲート絶縁膜GI、ゲート電極Gを形成する。ソース領域S、ドレイン領域D、ゲート絶縁膜GI及びゲート電極GがトランジスタTrとなる。
次いで、トランジスタTrを覆うように絶縁層90を形成する。また絶縁層90に開口部を形成し、開口部内に導電体を充填することで接続配線Cwが形成される。第1配線Wp、第2配線Cmは、絶縁層90を所定の厚みまで積層した後、絶縁層90に溝を形成し、溝に導電体を充填することで形成される。
第1導電層30及び第2導電層40は、例えば、絶縁層90及び接続配線Cwの一面に、強磁性層、非磁性層、強磁性層を順に積層し、第1導電層30及び第2導電層40となる部分以外を除去することで形成できる。除去された部分は、例えば、絶縁層90で埋める。
次いで、第1導電層30、第2導電層40及び絶縁層90上に、非磁性層20を積層する。非磁性層20の上の一部には、レジストを形成する。レジストは、磁化固定領域11の一部、磁壁移動領域13、磁化固定領域12の一部に跨って形成する。次いで、レジストを介して、非磁性層20を加工する。例えば、非磁性層20及びレジストにイオンビームを照射する。非磁性層20のうちレジストが被覆されていない部分は除去される。
次いで、配線層10、第2非磁性層50及び強磁性層60を順に積層する。その後、第2非磁性層50及び強磁性層60を所定の形状に加工することで、図3及び図4に示す磁壁移動素子100が得られる。
第1実施形態に係る磁壁移動素子100によれば、配線層10における磁壁15の動作を安定化できる。磁壁15の動作とは、例えば磁壁15の動作範囲であり、例えば磁壁15の移動しやすさである。磁壁15の制御性が高まると、誤書き込み等の誤動作を防ぐことができ、磁壁移動素子100の信頼性が向上する。
図5は、第1比較例にかかる磁壁移動素子111を配線層16のy方向の中心を通るxz平面で切断した断面図である。磁壁移動素子111は、配線層16の第1面16aが平坦であり、非磁性層21が配線層16の第1面16aの全面にある点が、磁壁移動素子100と異なる。配線層16は上述の配線層10に対応し、非磁性層21は上述の非磁性層20に対応する。磁壁移動素子111において磁壁移動素子100と同様の構成については、同様の符号を付し、説明を省く。
磁壁移動素子111において、磁化固定領域11と第1導電層30との間には、非磁性層21がある。つまり、磁化固定領域11の磁化M11は、第1導電層30の磁化M30との磁気結合によって固定されている。非磁性層21を介した磁気結合は、磁化固定領域11と第1導電層30とが直接接した場合の磁気結合より弱い。そのため、第1導電層30と第2導電層40との間に予期せぬ過電流が流れたり、磁壁移動素子111に予期せぬ熱が加わったりした場合に、磁化固定領域11の磁化M11が反転してしまう場合がある。磁化固定領域11の磁化M11が反転すると、磁壁15が磁化固定領域11、12に侵入する。また場合によっては、磁壁15が消滅してしまう。磁化固定領域11、12への磁壁15の侵入や磁壁15の消滅は、磁壁移動素子111において予定された動作ではなく、誤書き込み等の誤動作の原因となる。
これに対し、第1実施形態に係る磁壁移動素子100は、第1導電層30と配線層10及び第2導電層40と配線層10とが、第1部分30a1、40a1において直接接している。そのため、磁化固定領域11の磁化M11は、第1導電層30の磁化M30と強い磁気的な結合を有し、磁化M11は強く固定される。つまり、磁化固定領域11、12への磁壁15の侵入や磁壁15の消滅が抑制され、磁壁移動素子100の動作が安定化する。
また第1部分30a1、40a1の面積が第2部分30a2、40a2の面積より広いと、磁化固定領域11、12の磁化の固定がより強まる。その結果、熱等が加わった場合でも、磁化固定領域11、12への磁壁15の侵入や磁壁15の消滅を防ぐことができる。
また図6は、第2比較例にかかる磁壁移動素子112を配線層10のy方向の中心を通るxz平面で切断した断面図である。磁壁移動素子112は、非磁性層22が配線層10の磁壁移動領域13と重なる位置のみにある点が、磁壁移動素子100と異なる。磁壁移動素子111において磁壁移動素子100と同様の構成については、同様の符号を付し、説明を省く。
磁壁移動素子112を作製する場合、配線層10は、第1導電層30、非磁性層22、第2導電層40上に積層される。非磁性層22と第1導電層30及び第2導電層40とは材質が異なるため、非磁性層22の接続面22aと第1導電層30及び第2導電層40の接続面30a、40aとを連続させることは難しい。そのため、非磁性層22と第1導電層30の間、及び、非磁性層22と第2導電層40の間に段差stができる。磁化は、界面の影響を受けるため、段差stの近傍では磁化の配向方向が乱れる。磁化の配向方向が乱れた部分では、磁壁15の動作が一定でなくなり、トラップされる。
磁化固定領域11、12と磁壁移動領域13との境界は、磁壁15が受ける磁気的な環境が異なっており、磁壁15がトラップされやすい部分である。この部分に、段差stという構造的な磁壁15のトラップ要因が存在すると、磁壁15が強くトラップされる場合がある。磁壁15が強くトラップされると、所定の電流密度の電流を配線層10に印加しても磁壁15が正常に動作しなくなる。
これに対し、第1実施形態に係る磁壁移動素子100は、非磁性層20は、磁化固定領域11の一部、磁壁移動領域13、磁化固定領域12の一部に跨っている。そのため、磁化固定領域11、12と磁壁移動領域13との境界に段差stが形成されることは無い。したがって、磁壁15が強くトラップされることが抑制され、磁壁移動素子100の動作が安定化する。
第1実施形態に係る磁気記録アレイ200及び磁壁移動素子100の一例について詳述したが、第1実施形態に係る磁気記録アレイ200及び磁壁移動素子100は、本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、図3及び図4では、第2導電層40と配線層10とが、一部で直接接し、一部が非磁性層20を介して配線層10と接している。第2導電層40と配線層10との関係はこの場合に限られず、第2導電層40と配線層10とが全面で直接接してもよいし、全面が非磁性層20を介して接続されていてもよい。
(第1変形例)
図7は、第1変形例に係る磁壁移動素子101のyz面における断面図である。磁壁移動素子101は、配線層17及び非磁性層23の形状が磁壁移動素子100と異なる。配線層17は上述の配線層10に対応し、非磁性層23は上述の非磁性層20に対応する。磁壁移動素子101において磁壁移動素子100と同様の構成については、同様の符号を付し、説明を省く。
非磁性層23は、狭窄部23Aを有する点が、上記の非磁性層20と異なる。その他の特徴的な構成については、非磁性層20と同様である。非磁性層23は、厚みが薄くなる狭窄部23Aと、厚みが略一定な主部23Bとを有する。狭窄部23Aは、非磁性層23のx方向の中点から離れるに従い、厚みが薄くなっている。狭窄部23Aは、例えば、強磁性層60から離れるに従い、厚みが薄くなっている。
狭窄部23Aはz方向から見て強磁性層60と重ならない位置にある。例えば、第1導電層30と配線層10との間において非磁性層23は、接続面30aの第2導電層40に近い側の第1端t1から離れるに従い、厚みが薄くなる。また例えば、例えば、第2導電層40と配線層10との間において非磁性層23は、接続面40aの第1導電層30に近い側の第1端t1’から離れるに従い、厚みが薄くなる。
配線層10の磁化の配向方向は、他の層との界面の形状に強い影響を受ける。狭窄部23A上の配線層17の磁化は、例えば、z方向からy方向に傾く。狭窄部23Aの厚みを徐々に薄くすると、狭窄部23A上の配線層17の磁化の傾き角が、x方向の位置によって徐々に変化する。磁化の傾き角が徐々に変化することで、磁壁15の初動が容易になり、配線層10の磁化を反転させるために必要な反転電流密度を小さくできる。
また主部23Bはz方向から見て強磁性層60と重なる位置にあり、狭窄部23Aはz方向から見て強磁性層60と重ならない位置にある。強磁性層60と重なる位置に主部23Bがあると、磁壁移動素子100の抵抗変化率(MR比)が高まる。磁壁移動素子100のMR比は、強磁性層60と重なる位置における配線層17の磁化が所定の方向(例えば、z方向)から傾くと低下する。主部23Bの厚みが略一定であることで、主部23Bと配線層17との界面が平坦化し、磁化が所定の方向から傾くことを抑制できる。
また第1変形例においても、第1導電層30又は第2導電層40と配線層17との間における非磁性層20の平均厚みは10Å以下であることが好ましい。
第1変形例にかかる磁壁移動素子101においても、第1導電層30と配線層17とは、一部で直接接し、一部で非磁性層23を介して接している。したがって、第1変形例にかかる磁壁移動素子101も磁壁移動素子100と同様の効果が得られる。
(第2変形例)
図8は、第2変形例に係る磁壁移動素子102のyz面における断面図である。磁壁移動素子102は、非磁性層24の位置及び配線層16、第1導電層31及び第2導電層41の形状が磁壁移動素子100と異なる。配線層16は上述の配線層10に対応し、非磁性層24は上述の非磁性層20に対応し、第1導電層31は上述の第1導電層30に対応し、第2導電層41は上述の第2導電層40に対応する。磁壁移動素子102において磁壁移動素子100と同様の構成については、同様の符号を付し、説明を省く。
配線層16は、x方向に厚みが略一定である。配線層16の第1面16aは窪みを有さず、平坦である。
非磁性層24は、配線層16の第1面16aに接する。非磁性層24は、配線層16の第1面16a上にある。非磁性層24は、磁化固定領域11の一部、磁壁移動領域13、磁化固定領域12の一部に跨っている。非磁性層24の第1端は、磁化固定領域11と第1導電層31との間にある。非磁性層24の第2端は、磁化固定領域12と第2導電層41との間にある。
第1導電層31は、一部が配線層16と直接接し、一部が非磁性層24を介して配線層16と接している。接続面31aの第1部分31a1は配線層16と直接接し、第2部分31a2は非磁性層24を介して配線層16と接する。接続面31aの第2部分31a2は、第1部分31a1に対してz方向に窪んでいる。非磁性層24は、第1導電層31の窪みに嵌っている。
第2導電層41は、一部が配線層16と直接接し、一部が非磁性層24を介して配線層16と接している。接続面41aの第1部分41a1は配線層16と直接接し、第2部分41a2は非磁性層24を介して配線層16と接する。接続面41aの第2部分41a2は、第1部分41a1に対してz方向に窪んでいる。非磁性層24は、第2導電層41の窪みに嵌っている。
第2変形例にかかる磁壁移動素子102においても、第1導電層31と配線層16とは、一部で直接接し、一部で非磁性層24を介して接している。したがって、第2変形例にかかる磁壁移動素子102も磁壁移動素子100と同様の効果が得られる。また配線層16の第1面16aが平坦なことで、配線層16の磁化の配向方向が乱れることが抑制され、磁壁15がトラップされることを抑制できる。
図9は、第2変形例の別の例に係る磁壁移動素子102’のyz面における断面図である。磁壁移動素子102’は、磁壁移動素子102と非磁性層24’の形状が異なる。
非磁性層24’は、狭窄部24A’を有する点が、上記の非磁性層24と異なり、上記の非磁性層23と共通する。非磁性層24’は、厚みが薄くなる狭窄部24’Aと、厚みが略一定な主部24’Bとを有する。狭窄部24’Aは、非磁性層24のx方向の中点から離れるに従い、厚みが薄くなっている。狭窄部24’Aは、例えば、強磁性層60から離れるに従い、厚みが薄くなっている。主部24’Bはz方向から見て強磁性層60と重なる位置にあり、狭窄部24’Aはz方向から見て強磁性層60と重ならない位置にある。
磁壁移動素子102’においても、第1導電層31と配線層16とは、一部で直接接し、一部で非磁性層24’を介して接している。したがって、磁壁移動素子102’も磁壁移動素子100と同様の効果が得られる。また磁壁移動素子102’は、非磁性層24’が狭窄部24’を有するため、磁壁移動素子102と同様の効果を奏する。
(第3変形例)
図10は、第3変形例に係る磁壁移動素子103のyz面における断面図である。磁壁移動素子103は、配線層17の形状及び非磁性層25の位置関係が、磁壁移動素子101と異なる。配線層17は上述の配線層10に対応し、非磁性層25は上述の非磁性層20に対応する。磁壁移動素子103において磁壁移動素子101と同様の構成については、同様の符号を付し、説明を省く。
非磁性層25は、狭窄部25Aと、主部25Bとを有する。狭窄部25Aは、非磁性層23のx方向の中点から離れるに従い、厚みが薄くなっている。狭窄部25Aは、例えば、強磁性層60から離れるに従い、厚みが薄くなっている。
狭窄部25Aはz方向から見て強磁性層60と重なる位置にある。強磁性層60と重なる位置まで狭窄部25Aが延びることで、狭窄部25A上の配線層17の磁化の傾き角の変化率を、磁壁移動素子101と比較して緩やかにできる。また強磁性層60と重なる位置まで狭窄部25Aが延びることで、強磁性層60と第1導電層30及び第2導電層40との距離を近づけることができ、磁壁移動素子103の集積性を高めることができる。
また第3変形例においても、第1導電層30又は第2導電層40と配線層17との間における非磁性層25の平均厚みは10Å以下であることが好ましい。
第3変形例にかかる磁壁移動素子103においても、第1導電層30と配線層17とは、一部で直接接し、一部で非磁性層25を介して接している。したがって、第1変形例にかかる磁壁移動素子103も磁壁移動素子100と同様の効果が得られる。
(第4変形例)
図11は、第4変形例に係る磁壁移動素子104のyz面における断面図である。磁壁移動素子104は、配線層18、第1導電層32、第2導電層42、第2非磁性層51、強磁性層61の形状が異なる点が、磁壁移動素子101と異なる。配線層18は上述の配線層10に対応し、第1導電層32は上述の第1導電層30に対応し、第2導電層42は上述の第2導電層40に対応し、第2非磁性層51は上述の第2非磁性層50に対応し、強磁性層61は上述の強磁性層60に対応する。磁壁移動素子104において磁壁移動素子101と同様の構成については、同様の符号を付し、説明を省く。
第1導電層32、第2導電層42、第2非磁性層51及び強磁性層61は、側面が傾斜している。配線層18の各積層面は、非磁性層23の形状を反映している。
第4変形例にかかる磁壁移動素子104においても、第1導電層32と配線層18とは、一部で直接接し、一部で非磁性層23を介して接している。したがって、第4変形例にかかる磁壁移動素子104も磁壁移動素子100と同様の効果が得られる。
[第2実施形態]
図12は、第2実施形態に係る磁壁移動素子105のyz面における断面図である。磁壁移動素子105は、配線層19及び非磁性層26の形状が、磁壁移動素子101と異なる。配線層19は上述の配線層10と対応し、非磁性層26は上述の非磁性層20と対応する。磁壁移動素子105において磁壁移動素子101と同様の構成については、同様の符号を付し、説明を省く。
非磁性層26は、配線層19の第1面19aに接する。非磁性層26は、配線層19の第1面19a上にある。非磁性層26は、磁化固定領域11、磁壁移動領域13、磁化固定領域12に跨っている。
非磁性層26は、z方向に磁壁移動領域13と重なる位置から、磁化固定領域11と第1導電層30との間及び磁化固定領域12と第2導電層40の間に向って延びている。磁化固定領域11と第1導電層30との間、及び、磁化固定領域12と第2導電層40との間には、非磁性層26がある。非磁性層26は、非磁性層20と同様の材料からなる。第1導電層30又は第2導電層40と配線層19との間における非磁性層26の平均厚みは10Å以下であることが好ましい。
第1導電層30と配線層19との間のいずれかの位置における非磁性層26の厚みは、第1導電層30の接続面30aの第2導電層40に近い側の第1端t1と重なる位置における非磁性層26の厚みより薄い。また第2導電層40と配線層19との間のいずれかの位置における非磁性層26の厚みは、第2導電層40の接続面40aの第1導電層30に近い側の第1端t1’と重なる位置における非磁性層26の厚みより薄い。
第1導電層30と配線層19との間、及び、第2導電層40と配線層19との間において、非磁性層26の厚みが薄い部分を有すると、この部分において第1導電層30と配線層19の磁気結合、及び、第2導電層40と配線層19の磁気結合が強固になる。つまり、磁化固定領域11、12への磁壁15の侵入や磁壁15の消滅が抑制され、磁壁移動素子100の動作が安定化する。また磁化固定領域11、12と磁壁移動領域13との境界に段差は無く、磁壁移動素子100の動作が安定化する。
[第3実施形態]
図13は、第3実施形態に係る磁壁移動素子106のyz面における断面図である。磁壁移動素子106は、第2非磁性層50及び強磁性層60を有さない点が、磁壁移動素子100と異なる。磁壁移動素子106において磁壁移動素子101と同様の構成については、同様の符号を付し、説明を省く。
磁壁移動素子106は、光変調器として用いることができる。配線層10に対して光L1を入射し、配線層10で反射した光L2を評価する。磁気カー効果により磁化の配向方向が異なる部分で反射した光L2の偏向状態は異なる。磁壁移動素子106は、光L2の偏向状態の違いを利用した映像表示装置として用いることができる。
第3実施形態にかかる磁壁移動素子106においても、第1導電層30と配線層10とは、一部で直接接し、一部で非磁性層20を介して接している。したがって、第3実施形態にかかる磁壁移動素子106も磁壁移動素子100と同様の効果が得られる。
以上、本発明の好ましい実施の形態についてそれぞれ詳述した。それぞれの実施形態及び変形例における特徴的な構成は、それぞれ組み合わせてもよい。
10、16、17、18、19 配線層
10a、16a、19a 第1面
11、12 磁化固定領域
13 磁壁移動領域
13A 第1磁区
13B 第2磁区
15 磁壁
20、21、22、23、24、25、26 非磁性層
22a、30a、40a 接続面
23A、25A 狭窄部
23B、25B 主部
30、31、32 第1導電層
30a1、40a1 第1部分
30a2、40a2 第2部分
40、41、42 第2導電層
50、51 第2非磁性層
60、61 強磁性層
90 絶縁層
100、101、102、103、104、105、106、111、112 磁壁移動素子
110 第1スイッチング素子
120 第2スイッチング素子
130 第3スイッチング素子
200 磁気記録アレイ
st 段差
t1、t1’ 第1端

Claims (14)

  1. 強磁性体を含む配線層と、
    前記配線層の第1面に接する非磁性層と、
    前記配線層の前記第1面に接続され、強磁性体を含む第1導電層と、
    前記配線層に前記第1導電層と離間して接続された第2導電層と、を備え、
    前記第1導電層の接続面の第1部分は前記配線層と直接接続し、前記接続面の前記第1部分を除く第2部分は前記配線層と前記非磁性層を介して接続され、
    前記非磁性層は、前記第1導電層と前記第2導電層とに跨り、前記第1導電層及び前記第2導電層に接する、磁壁移動素子。
  2. 強磁性体を含む配線層と、
    前記配線層の第1面に接する非磁性層と、
    前記配線層の前記第1面に接続され、強磁性体を含む第1導電層と、
    前記配線層に前記第1導電層と離間して接続された第2導電層と、を備え、
    前記第1導電層は、前記配線層と前記非磁性層を介して接続され、
    前記第1導電層と前記配線層との間のいずれかの位置における前記非磁性層の厚みは、前記第1導電層の接続面の前記第2導電層に近い側の第1端と重なる位置における前記非磁性層の厚みより薄く、
    前記第1導電層と前記配線層との間において前記非磁性層は、前記接続面の前記第2導電層に近い側の第1端から離れるに従い、厚みが薄くなる、磁壁移動素子。
  3. 前記第1部分の面積は、前記第2部分の面積より広い、請求項1に記載の磁壁移動素子。
  4. 前記第1導電層の前記接続面は、積層方向に窪んでおり、
    前記非磁性層の一部は前記接続面の窪みに嵌まっている、請求項1又は3に記載の磁壁移動素子。
  5. 強磁性体を含む配線層と、
    前記配線層の第1面に接する非磁性層と、
    前記配線層の前記第1面に接続され、強磁性体を含む第1導電層と、
    前記配線層に前記第1導電層と離間して接続された第2導電層と、を備え、
    前記第1導電層の接続面の第1部分は前記配線層と直接接続し、前記接続面の前記第1部分を除く第2部分は前記配線層と前記非磁性層を介して接続され、
    前記配線層の前記第1面は、積層方向に窪んでおり、
    前記非磁性層は前記第1面の窪みに嵌まっている、磁壁移動素子。
  6. 前記第1導電層と前記配線層との間において前記非磁性層は、前記接続面の前記第2導電層に近い側の第1端から離れるに従い、厚みが薄くなる、請求項1、3~5のいずれか一項に記載の磁壁移動素子。
  7. 前記第1導電層と前記配線層との間における前記非磁性層の平均厚みが10Å以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の磁壁移動素子。
  8. 前記第2導電層は、強磁性体を含み、
    前記第2導電層の接続面の第1部分は前記配線層と直接接続し、前記第2導電層の接続面の第1部分を除く第2部分は前記配線層と前記非磁性層を介して接続されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の磁壁移動素子。
  9. 前記第2導電層は、強磁性体を含み、
    前記第2導電層と前記配線層との間のいずれかの位置における前記非磁性層の厚みは、前記第2導電層の接続面の前記第1導電層に近い側の第1端と重なる位置における前記非磁性層の厚みより薄い、請求項1~7のいずれか一項に記載の磁壁移動素子。
  10. 前記配線層の前記第1面と反対側の第2面の上方にある強磁性層と、
    前記強磁性層と前記配線層との間にある第2非磁性層と、をさらに有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の磁壁移動素子。
  11. 前記非磁性層は、前記強磁性層から離れるに従い、厚みが薄くなる狭窄部を有し、
    前記狭窄部は、積層方向から見て前記強磁性層と重ならない、請求項10に記載の磁壁移動素子。
  12. 前記非磁性層は、前記強磁性層から離れるに従い、厚みが薄くなる狭窄部を有し、
    前記狭窄部は、積層方向から見て前記強磁性層と一部が重なる、請求項10に記載の磁壁移動素子。
  13. 前記非磁性層は、厚みが略一定の主部と、前記主部から離れるに従い厚みが薄くなる狭窄部と、を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の磁壁移動素子。
  14. 請求項1~13のいずれか一項に記載の磁壁移動素子を複数有する、磁気記録アレイ。
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