JP7417454B2 - 口腔用組成物 - Google Patents

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本発明は、口腔用組成物における非イオン性殺菌剤による殺菌時間の短縮に関する。
う蝕や歯周病等の口腔疾患の原因となる口腔内細菌は、唾液中に浮遊した状態で存在しており、それらが歯面に形成された糖タンパク質の膜であるペリクルに付着することがバイオフィルム形成の第一歩である。よって、唾液中の浮遊細菌を殺菌・除去することは、バイオフィルムの形成を抑制し、ひいてはう蝕や歯周病等の予防に繋がる。
唾液中の浮遊細菌を殺菌するために、非イオン性殺菌剤であるチモールを配合した歯磨剤等の口腔用組成物が広く用いられており、例えば、特許文献1には、チモールに対してベンジルグリセリルエーテル、アルコール、およびノニオン性界面活性剤を含む口腔用組成物が記載されている。
特開2011-126785号公報
しかし、上記のように非イオン性殺菌剤を含む口腔用組成物を口腔内に適用する場合、使用者が口腔用組成物を口腔内に保持する時間の長さに個人差があり、使用者の利用態様によっては殺菌効果が十分に発揮されない場合があるため、より短時間で浮遊細菌に対する殺菌効果を発揮する口腔用組成物が所望されていた。
本発明者らは上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、驚くべきことに、(A)チモールに対して、(B)アミノニコチン酸、ヒドロキシニコチン酸、クロロニコチン酸、イソニコチン酸、ニコチン酸メチル、ニコチン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種とを組み合わせることで上記課題を解決し得ることを見出した。
本発明は、例えば以下に記載の発明を包含する。
項1.
(A)チモール
(B)アミノニコチン酸、ヒドロキシニコチン酸、クロロニコチン酸、イソニコチン酸、ニコチン酸メチル、ニコチン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種とを含有する口腔用組成物。
項2.
前記(A)成分の含有量が0.01~0.3質量%、
前記(B)成分の含有量が0.001~50質量%である請求項1に記載の口腔用組成物。
非イオン性殺菌剤を含む口腔用組成物を口腔内に適用した場合に、より短時間で唾液中の浮遊細菌に対する殺菌効果が発揮される口腔用組成物が提供される。
以下、本発明に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。なお、本発明は口腔用組成物、特に、(A)チモールに対して、(B)アミノニコチン酸、ヒドロキシニコチン酸、クロロニコチン酸、イソニコチン酸、ニコチン酸メチル、ニコチン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種とを含有する口腔用組成物等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本発明は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
本発明で用いられる(A)成分はチモールである。チモールは、タイム等の植物から抽出されたもの、化学的に合成されたものもいずれも用いることができ、市販品を用いることができる。また、タイム等のチモールを含有する精油を用いてもよく、これらは単独でも組み合わせて用いてもよい。精油の採取方法は特に制限されず、例えば圧搾法、水蒸気蒸留法、溶媒抽出法、油脂吸着法、超臨界流体抽出法等が挙げられ、好ましくは水蒸気蒸留法が用いられる。蒸留は、過大な熱負荷がかからない蒸留であれば特に限定されることはなく、減圧水蒸気蒸留、減圧単蒸留、減圧精密蒸留などが例示され、好ましくは減圧精密蒸留が用いられる。
(A)成分の配合量は、組成物全量に対して0.01~0.3質量%が好ましい。配合量が0.01質量%未満であれば、浮遊細菌に対する殺菌効果が発揮されない場合がある。一方、配合量が0.3%を超えると、溶解性が低いため組成物の澄明性が損なわれるとともに、保存時に沈殿を生じる恐れがある。(A)成分の配合量はより好ましくは0.02~0.2質量%、さらに好ましくは0.05~0.15質量%、最も好ましくは0.1質量%である。また、(A)成分の配合量は0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.25質量%であってもよい。
本発明に用いられる(B)成分は、アミノニコチン酸、ヒドロキシニコチン酸、クロロニコチン酸、イソニコチン酸、ニコチン酸メチル、ニコチン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらは試薬として市販されるものの他、あらゆる形態のものが使用できる。また、これらの構造異性体のいずれも好適に使用することができ、これらを適宜組み合わせて配合してもよいが、好ましい異性体はそれぞれ、2-ヒドロキシニコチン酸、2-クロロニコチン酸、6-クロロニコチン酸、2-アミノニコチン酸、5-アミノニコチン酸、である。
(B)成分の配合量は、組成物全量に対して0.001~50質量%が好ましい。配合量が0.001質量%以上であれば、(A)成分による殺菌効果がより短時間で発揮される。一方、配合量が50質量%を超えると、製剤上あるいはコスト的にも不利である。(B)成分の配合量はより好ましくは0.01~25質量%、さらに好ましくは0.05~10質量%、最も好ましくは0.1~5質量%である。また、(B)成分の配合量は0.005、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7,8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50質量%であってもよい。
本発明の口腔用組成物は常法により製造することができる。また、本発明の口腔用組成物の形態としては、練歯磨剤、液体歯磨剤、洗口剤、ジェル剤、ペースト剤、軟膏剤、塗布剤、医薬部外品、化粧品として用いることができる。
本発明の口腔用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に口腔用組成物に配合し得る公知の任意成分を、単独で又は2種以上組み合わせて、さらに配合してもよい。
このような公知の任意成分としては、例えば、界面活性剤、殺菌剤、研磨剤、湿潤剤、増粘剤、甘味剤、防腐剤、着色剤、pH調整剤、安定化剤、矯味剤、収斂剤、香料、他の薬効成分等が挙げられる。
界面活性剤として、例えば、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、または両性界面活性剤を配合することができる。具体的には、アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸塩、N-アシルアミノ酸塩、N-アシルタウリン塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸モノグリセライド硫酸塩、アルキルスルホ酢酸塩等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグリコシド、セバシン酸ジエチル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。両性イオン界面活性剤としては、例えば、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N-アシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N-アルキルアミノエチルグリシン等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。その配合量は、通常、組成物全量に対して0.1~5質量%である。
殺菌剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン等のカチオン性殺菌剤、酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸トコフェロール、またはニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロサン等の非イオン性殺菌剤などが挙げられる。これらの殺菌剤は、単独または2種以上を組み合わせてさらに配合してもよい。
研磨剤として、例えば、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水和物、リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、無水ケイ酸、シリカゲル、ケイ酸アルミニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、第3リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ポリメタクリル酸メチル、ベントナイト、ケイ酸ジルコニウム、ハイドロキシアパタイト、合成樹脂等が挙げられる。これらの研磨剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
湿潤剤として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3―ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、パラチニット、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの湿潤剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
防腐剤として、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等が挙げられる。これらの防腐剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等が挙げられる。これらのpH調製剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
安定化剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸カルシウム、ラノリン、トリアセチン、ヒマシ油、硫酸マグネシウム等が挙げられる。これらの安定化剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
矯味剤としては、例えば、チャエキス、チャ乾留液、プロポリスエキス、グルタミン酸ナトリウム等が挙げられる。
収れん剤としては、例えば、重曹、乳酸アルミニウム等が挙げられる。
他の薬効剤としては、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ素化合物;デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素;トラネキサム酸、ε-アミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アラントイン、ジヒドロコレステロール、グリチルリチン酸類、グリチルレチン酸、ビサボロール、グリセロリン酸、クロロフィル、グルコン酸銅、塩化ナトリウム、水溶性無機リン酸化合物;酢酸ピリドキシン、アスコルビン酸またはその塩等のビタミン類が挙げられる。
さらに、本発明は、(B)成分により、唾液存在下で(A)成分、チモールによる殺菌時間を短縮する方法も包含する。この場合においても、(A)成分及び(B)成分の配合量は上述の範囲であることが好ましい。
以下に実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[唾液に対する殺菌時間の評価]
(唾液の採取)
A、B、およびCの3名の被験者に界面活性剤を含まない歯磨剤にて1分間歯磨きを実施させ、1時間の飲食禁止時間を経たのちに、無刺激唾液10mlを採取した。採取した唾液は、23Gの注射針および10mlシリンジ(ともにテルモ社製)を用いて吸引と吐出を5回繰り返し分散させて用いた。
(殺菌試験)
(A)チモール0.1%(w/v)、および表1に記載の(B)の各成分0.1、0.25、0.5%(w/v)のいずれかの濃度をさらに含む溶液を調製し、96穴プレートのA列に200μlずつ分注した。なお、ニコチン酸、イソニコチン酸、ニコチン酸メチルは終濃度15%(v/v)のエタノール溶液、2-ヒドロキシニコチン酸、2-クロロニコチン酸、6-クロロニコチン酸、2-アミノニコチン酸、5-アミノニコチン酸は終濃度5%(v/v)のDMSO溶液となるよう調製した。B~H列には殺菌剤の不活性化および口腔内細菌の培養のために、TSB/Y/VH培地を200μlずつ分注した。前述の被験者唾液60μlをA列に添加し、ピペッティングにて混合した時点を計測開始点とし、30秒経過後にはA列の溶液20μlをB列に、60秒経過後にはC列に、90秒経過後にはD列に、120秒経過後にはE列に、180秒経過後にはF列に、240秒経過後にはG列に、300秒経過後にはH列にそれぞれ分取した。なお、15%(v/v)のエタノール溶液の密度は、JIS B 7548 2009付属書Aによれば、0.98024g/cmであるため、上記(A)成分0.1%(w/v)は0.10201583質量%、上記(B)成分0.5%(w/v)は0.51007916質量%である。また、JIS K 9702、JIS Z 8804より算出した5%(v/v)のDMSO溶液の密度は、0.994g/cmであるため、上記(A)成分0.1%(w/v)は、0.10060362質量%、上記(B)成分0.25%(w/v)は0.25150905質量%、0.5%(w/v)は0.50301810質量%である。
その後、アネロパック・ケンキ(三菱ガス化学社製)を用いて48時間静置して嫌気培養後、目視にて培地が混濁している場合は細菌が増殖し、溶液中の細菌が完全に殺菌されていないと判定した。当該判定を、上述のように30秒、60秒、90秒、120秒、180秒、240秒、300秒後にA列から採取した各溶液について行い、初めて培地が混濁せず、溶液中の細菌が完全に殺菌された時間を殺菌時間とした。表1には、(A)成分のチモール単独での各被験者の唾液に対する上記殺菌時間を100%とした場合の、各(B)成分を添加した際の殺菌時間を相対値で示した。
上記TSB/Y/VH培地は、Tripticase Soy Broth(TSB)30g、Yeast Extract 1g、Hemin/menadion solution 1g、レシチン 0.7g、およびTween80 5gを蒸留水に溶解させ、1Lにメスアップしたものをオートクレーブ滅菌して調製した。なお、Hemin/menadion solutionは、Hemin 0.25gを1N NaOH 5mlに溶解し、蒸留水20mlを加えたのち、menadion(VitaminK3) 0.025gを99%エタノール 25mlに溶解したものを混合して調製したものである。
以下、表1に本発明の実施例および上記殺菌試験の結果を示す。なお、(A)および(B)の各成分の濃度は%(w/v)である。
Figure 0007417454000001
例えば、実施例1では、チモールに2-アミノニコチン酸を加えたことで、チモール単独と比して、被験者A唾液では殺菌時間が50%に、被験者B唾液では33%に、被験者C唾液では83%まで殺菌時間が減少していた。(A)成分に対する、いずれの(B)成分との組み合わせにおいても少なくとも1人の被験者の唾液に対して、上記殺菌時間を減少させる効果が確認された。
チモールの殺菌時間短縮効果は、実施例1および2のように、2-アミノニコチン酸、5-アミノ配合した場合に3名の被験者すべての唾液に対して効果があり、特に好ましい。またこれらB成分は、例えば、2-ヒドロキシニコチン酸とイソニコチン酸、2-クロロニコチン酸とニコチン酸メチル、のように互いの効果を補完するように組み合わせて用いることが好ましい。
以下表2~表4に、本発明の口腔用組成物の処方例を示す。なお各処方の配合量(%)は特に記載のない限り質量%を示す。
Figure 0007417454000002
Figure 0007417454000003
Figure 0007417454000004

Claims (2)

  1. (A)チモール
    (B)アミノニコチン酸、ヒドロキシニコチン酸、クロロニコチン酸、イソニコチン酸、ニコチン酸メチル、ニコチン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種とを含有する口腔用組成物。
  2. 前記(A)成分の含有量が0.01~0.3質量%、
    前記(B)成分の含有量が0.001~50質量%である請求項1に記載の口腔用組成物。

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