JP7417102B2 - 溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材 - Google Patents

溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材 Download PDF

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本発明は、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材に関する。
家電、自動車、建材または土木の分野では、耐食性に優れた溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材が使用されることが多い。特許文献1~6には、各種の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材が記載されている。先に例示した分野では、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材を所定の部品形状になるように切断することで鋼材断面が露出する場合があり、また、所定の部品形状になるように曲げ加工等の塑性加工が施されることでめっき層が変形する場合がある。
特許文献1には、鋼板の表面に、Mg:1~10重量%、Al:2~19重量%、Si:0.01~2重量%を含有し、かつ、MgとAlが下式、Mg(%)+Al(%)≦20%を満たし、残部がZn及び不可避的不純物よりなるZn合金めっき層を有し、Zn合金めっき層が〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に〔MgSi相〕と〔MgZn相〕及び〔Zn相〕が混在した金属組織を有する耐食性に優れためっき鋼板が記載されている。
特許文献2には、Al:4.0~10重量%、Mg:1.0~4.0重量%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融Zn-Al-Mgめっき層を鋼板表面に形成した溶融Zn基めっき鋼板であって、当該めっき層が、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に〔Al相〕が混在した金属組織を有する耐食性および表面外観の良好な溶融Zn-Al-Mgめっき鋼板が記載されている。
特許文献3には、鋼板の片面または両面に、Al:4~10質量%、Mg:1~5質量%、Ti:0.01質量%以下を含有し残部が亜鉛及び不可避的不純物よりなる亜鉛系めっき層を有し、中間層としてクロメート皮膜もしくはりん酸塩被膜の化成被膜を有し、上層として0.2~100μm厚の有機被膜層を有する鮮映性の優れた高耐食性塗装鋼板が記載されている。
特許文献4には、Mg:2.8%以上、Al:10.5%以上、Si:0.01~0.5%含有し、残りがZnおよび不可避的不純物よりなるZn合金めっき層を有し、このZn合金めっき層中でMgZn11/MgZnのX線強度比が0.5以下である均一外観を有する溶融Zn-Al-Mg-Siめっき鋼板が記載されている。
特許文献5には、鋼板と、4質量%以上22質量%以下のAlと、1質量%以上5質量%以下のMgとを含有し、残部がZn及び不可避的不純物を含む溶融めっき層と、を備え、溶融めっき層の表面に平行な前記溶融めっき層の断面における、Al相の(200)面のX線回折強度I(200)とAl相の(111)面のX線回折強度I(111)との比である回折強度比I(200)/1(111)が、0.8以上であるZn-AI一Mg系溶融めっき鋼板が記載されている。
特許文献6には、鋼材の表面に、Al:5~18質量%、Mg:1~10質量%、Si:0.01~2質量%、残部Zn及び不可避的不純物とからなるめっき層を有するめっき鋼材表面に、〔Al相〕が1mm当たり200個以上存在する表面性状に優れた溶融Zn-Al-Mg-Siめっき鋼材が記載されている。
上述のように、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材を所定の部品形状に切断すると、切断面を含む端部に、鋼材とめっき層の断面が現れる。鋼板断面にはめっき層が存在しないため、耐食性が劣位になる場合がある。また、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材に対して曲げ加工等の塑性加工を施すと、曲げ部においてめっき層が変形し、この変形箇所から腐食が進展する場合がある。
このため、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材には、端部の耐食性の向上と、加工部の耐食性の向上とがより一層強く求められている。
特開2000-104154号公報 特開平10-226865号公報 特開2004-225157号公報 特開2006-193791号公報 国際公開第2011/001662号 特開2001-355053号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、端部の耐食性及び加工部の耐食性に優れた溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 鋼材と、前記鋼材の表面に形成されためっき層とを備え、
前記めっき層は、平均組成で、Mg:1~10質量%、Al:4~22質量%を含有し、残部がZn及び不純物からなり、
前記めっき層には、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、前記めっき層の断面における面積率で10~70%の〔Al・Zn混合組織〕を含んでおり、
前記〔Al・Zn混合組織〕には、Zn濃度が75質量%以上85質量%未満の範囲である第1領域と、前記第1領域の内側にあって、Zn濃度が67質量%以上75質量%未満の範囲である第2領域とを含み、
前記めっき層の断面での前記〔Al・Zn混合組織〕における前記第2領域の面積率が40%以上80%以下であることを特徴とする溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
[2] 前記めっき層の平均組成が、Mg:1~10質量%、Al:8~22質量%を含有し、残部がZn及び不純物であり、
前記〔Al・Zn混合組織〕には、前記第1領域と、前記第2領域と、前記第2領域の内側にあって、Zn濃度が55質量%以上67質量%未満の範囲である第3領域とを含むことを特徴とする[1]に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
[3] 前記めっき層をめっき厚方向の1/2位置にて前記鋼材側とめっき層表面側とに2等分に分割した場合に、前記〔Al・Zn混合組織〕の核生成点のうちの個数割合で60%以上の核生成点が、前記めっき層の鋼材側の領域に存在することを特徴とする[1]または[2]に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
[4] 前記めっき層に更に、平均組成で、0.0001~2質量%のSiを含有することを特徴とする[1]乃至[3]の何れか一項に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
[5] 前記めっき層に更に、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Srのいずれか1種または2種以上を合計で0.0001~2質量%の範囲で含有することを特徴とする[1]乃至[4]の何れか一項に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
[6] 前記めっき層に更に、平均組成で、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfのいずれか1種または2種以上を合計で、0.0001~2質量%の範囲で含有することを特徴とする[1]乃至[5]の何れか一項に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
本発明によれば、端部の耐食性及び加工部の耐食性に優れた溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材を提供できる。
試料No.1のめっき層の断面を走査型電子顕微鏡で撮影した写真であってめっき層の反射電子像を示す写真。
溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、Mgと、Alと、残部Zn及び不純物を含む成分を有し、金属組織として、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔MgZn相〕、〔Zn相〕、〔Al・Zn混合組織〕の少なくとも1種が混在しためっき層を有している。また、Zn、Al、Mgに加えて溶融めっき層にSiが含有される場合は、上記の相及び組織に加え、〔MgSi相〕が含まれることがある。めっき層を形成する際には、Mg、Al及びZnを含むめっき浴に鋼材を浸漬させてから鋼材を引き上げることにより、鋼材表面に付着させた溶融金属を凝固させる。めっき層が凝固する際には、〔Al・Zn混合組織〕が晶出し、その後、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地が晶出することで形成される。
このような溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材の端部の耐食性を向上させるために本発明者らが鋭意検討したところ、〔Al・Zn混合組織〕が腐食の初期の起点になることを突き止めた。〔Al・Zn混合組織〕は、Al-Zn-Mgの三元系平衡状態図における高温のAl″相(Znを固溶するAl固溶体であって少量のMgを含むことが多い)に由来するものであり、状態図によれば、常温では微細なZn相と微細なAl相とを含む状態にある。この〔Al・Zn混合組織〕の構造について詳細に検討したところ、Zn濃度が比較的高い第1領域とZn濃度が比較的低い第2領域とに分けることができ、第2領域の存在割合がある範囲から外れると端部の耐食性及び加工部の耐食性が低下する傾向にあることがわかった。そして、従来の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、第2領域の存在割合が、今回判明した好ましい範囲から外れていることがわかった。そこで、第2領域の存在割合を適切な範囲にするための製造条件を選択することで、端部の耐食性及び加工部の耐食性が更に優れた溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材が得られることを知見した。
本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、鋼材と、鋼材の表面に形成されためっき層とを備え、めっき層は、平均組成で、Mg:1~10質量%、Al:4~22質量%を含有し、残部がZn及び不純物からなり、めっき層には、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、めっき層の断面における面積率で10~70%の〔Al・Zn混合組織〕を含んでおり、〔Al・Zn混合組織〕には、Zn濃度が75質量%以上85質量%未満の範囲である第1領域と、第1領域の内側にあって、Zn濃度が67質量%以上75質量%未満の範囲である第2領域とを含み、めっき層の断面での〔Al・Zn混合組織〕における第2領域の面積率が40%以上80%以下である。
また、本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、めっき層の平均組成が、Mg:1~10質量%、Al:8~22質量%を含有し、残部がZn及び不純物である場合に、〔Al・Zn混合組織〕に、第1領域と、第2領域と、第2領域の内側にあって、Zn濃度が55質量%以上67質量%未満の範囲である第3領域とが含まれていてもよい。
更に、めっき層をめっき厚方向の1/2位置にて鋼材側とめっき層表面側とに2等分に分割した場合に、〔Al・Zn混合組織〕の核生成点のうちの個数割合で60%以上の核生成点が、めっき層の鋼材側の領域に存在することが好ましい。
以下、本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材について説明する。
めっき層の下地となる鋼材は、材質に特に制限はない。材質として、一般鋼、Alキルド鋼や一部の高合金鋼に適用することが可能であり、形状にも特に制限はない。また、鋼材には、Niプレめっきを施してもよい。鋼材に対して後述する溶融めっき法を適用することで、本実施形態に係るめっき層が形成される。
次に、めっき層の化学成分について説明する。
本実施形態に係るめっき層は、平均組成で、Mg:1~10質量%、Al:4~22質量%を含有し、残部としてZnおよび不純物を含んでいる。また、めっき層は、平均組成で、Si:0.0001~2質量%を含有していてもよい。更に、めっき層は、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Srのいずれか1種または2種以上を合計で、0.0001~2質量%含有していてもよい。更にまた、めっき層は、平均組成で、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfのいずれか1種または2種以上を合計で、0.0001~2質量%を含有していてもよい。
Mgの含有量は、平均組成で1~10質量%の範囲である。Mgは、めっき層の耐食性を向上させるために必要な元素である。めっき層中のMgの含有量が1質量%未満では、耐食性を向上させる効果が不十分になり、10質量%を超えるとめっき浴でのドロス発生が著しくなり、安定的にめっき鋼材を製造するのが困難となる。耐食性とドロス発生のバランスの観点から、好ましくは1.5~6質量%とする。より好ましくは2~5質量%の範囲とする。
Alの含有量は、平均組成で4~22質量%の範囲である。Alは、耐食性を確保するために必要な元素である。めっき層中のAlの含有量が4質量%未満では、耐食性を向上させる効果が不十分になり、22質量%を超えると耐食性を向上させる効果が飽和する。耐食性の観点から、好ましくは8~22質量%とする。より好ましくは9~13質量%とする。
また、めっき層は、Siを0.0001~2質量%の範囲で含有していてもよい。Siは、めっき層の密着性を向上させるのに有効な元素である。Siを0.0001質量%以上含有させることで密着性を向上させる効果が発現するため、Siを0.0001質量%以上含有させることが好ましい。一方、2質量%を超えて含有させてもめっき密着性を向上させる効果が飽和するため、Siの含有量は2質量%以下とする。めっき密着性の観点からは、0.02~1質量%の範囲にしてもよく、0.03~0.8質量%の範囲にしてもよい。
また、めっき層中には、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Srのいずれか1種または2種以上を合計で、0.0001~2質量%含有していてもよい。これらの元素を含む金属間化合物は、〔Al・Zn混合組織〕の晶出核として作用し、〔Al/MgZn/Znの三元共晶組織〕をより微細、均一にして、めっき層の外観や平滑性を向上させる。これらの元素の1種または2種以上を合計で0.0001~2質量%とした理由は、0.0001質量%未満では、凝固組織を微細均一にする効果が不十分になるためであり、2質量%を超えると、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕を微細化させる効果が飽和するばかりか、逆にめっき層の表面粗度を大きくして外観が悪くなるため、上限を2質量%とする。特に外観向上を目的として添加する場合、0.001~0.5質量%を含有させることが望ましい。より好ましくは0.001~0.05質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.002~0.01質量%の範囲である。
めっき層中には、平均組成で、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfの1種又は2種以上を合計で0.0001~2質量%を含有していてもよい。これらの元素を含有することで、さらに耐食性を改善することができる。REMは、周期律表における原子番号57~71の希土類元素の1種または2種以上である。
めっき層の化学成分の残部は、亜鉛及び不純物である。
次に、めっき層の組織について説明する。本実施形態に係るめっき層は、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、面積率で10~70%の〔Al・Zn混合組織〕を含んでいる。また、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中には、〔Al・Zn混合組織〕の他に、〔MgZn相〕、〔Zn相〕が含まれてもよく、また、溶融めっき層にSiが含まれる場合は、〔MgSi相〕が含まれていてもよい。
〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕とは、Al相と、Zn相と、金属間化合物であるMgZn相との三元共晶組織であり、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕を形成しているAl相は例えばAl-Zn-Mgの三元系平衡状態図における高温での「Al″相」(Zn相を固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含むことが多い)に相当するものである。この高温でのAl″相は常温では通常は微細なAl主体相と微細なZn主体相に分離して現れる。また、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕中のZn相は少量のAlを固溶し、場合によってはさらに少量のMgを固溶したZn固溶体である。〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕中のMgZn相は、Zn-Mgの二元系平衡状態図のZn:約84質量%の付近に存在する金属間化合物相である。状態図で見る限りそれぞれの相にはSi、その他の元素を固溶していても少量であると考えられ、その量は通常の分析では明確に区別できないため、この3つの相からなる三元共晶組織を本明細書では〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕と表す。
次に、〔Al・Zn混合組織〕について説明する。本実施形態では、高温相のAl相が冷却時に微細なZn主体相と微細なAl主体相に分離して形成された組織を〔Al・Zn混合組織〕と称する。なお、Zn主体相は、AlとMgを固溶することがある。Al主体相は、ZnとMgを固溶することがある。
〔Al・Zn混合組織〕は、走査型電子顕微鏡の反射電子像において、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、これは例えばAl-Zn-Mgの三元系平衡状態図における高温での「Al″相」(Zn相を固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含む)に相当するものである。この高温でのAl″相はめっき浴のAlやMg濃度に応じて固溶するZn量やMg量が相違する。この高温でのAl″相は常温では通常は微細なAl主体相と微細なZn主体相に分離するが、常温で見られる島状の形状は高温でのAl″相の形骸を留めたものであると見てよい。状態図で見る限りこの相にはSi、その他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられるが通常の分析では明確に区別できないため、この高温でのAl″相に由来し且つ形状的にはAl″相の形骸を留めている組織を本明細書では〔Al・Zn混合組織〕と呼ぶ。この〔Al・Zn混合組織〕は〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕を形成しているAl相とは走査型電子顕微鏡の反射電子像において明瞭に区別できる。
めっき層の断面における〔Al・Zn混合組織〕の面積率は10~70%の範囲である必要がある。〔Al・Zn混合組織〕の面積率がこの範囲であれば、端部及び加工部の耐食性を向上させることができる。
面積率の測定方法は、めっき層の断面を走査型電子顕微鏡の反射電子像で観察する。倍率を1000倍に拡大した状態で、5箇所の写真を撮影する。写真は、めっき層の厚み全体が視野に入るように撮影する。写真撮影位置はランダムに選択する。面積率の計算結果を受けて撮影位置を任意に再選択してはならない。更に、走査型電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線元素分析装置を用いて、撮影した写真に対応する元素マッピングデータを取得し、〔Al・Zn混合組織〕を特定する。そして、全部の断面写真に現れている〔Al・Zn混合組織〕の全断面積を測定し、これを、全部の断面写真に現れているめっき層の断面積で除することで、〔Al・Zn混合組織〕の面積率を測定する。
また、〔Zn相〕とは、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、実際には少量のAlさらには少量のMgを固溶していることもある。状態図で見る限りこの相にはSi、その他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。この〔Zn相〕は〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕を形成しているZn相とは走査型電子顕微鏡の反射電子像において明瞭に区別できる。本実施形態のめっき層には、製造条件により〔Zn相〕が含まれる場合も有るが、実験では平面部耐食性向上に与える影響はほとんど見られなかったため、めっき層に〔Zn相〕が含まれても特に問題はない。
また、〔MgZn相〕とは、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、実際には少量のAlを分散・固溶していることもある。状態図で見る限りこの相にはSi、その他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。この〔MgZn相〕は〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕を形成しているMgZn相とは走査型電子顕微鏡の反射電子像において明瞭に区別できる。本実施形態のめっき層には、製造条件により〔MgZn相〕が含まれない場合も有るが、ほとんどの製造条件ではめっき層中に含まれる。
また、〔MgSi相〕とは、Siを含有するめっき層の凝固組織中に明瞭な境界をもって島状に見える相である。状態図で見る限りZn、Al、その他の添加元素は固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。この〔MgSi相〕はめっき中では走査型電子顕微鏡の反射電子像において明瞭に区別できる。
次に、〔Al・Zn混合組織〕の微細構造について説明する。〔Al・Zn混合組織〕は、上述のように、高温でのAl″相の形骸を留めた島状の形状を示す。また、〔Al・Zn混合組織の内部構造〕は、状態図によると常温で微細なAl相と微細なZn相に分離した形態を示すと推測される。
一方、〔Al・Zn混合組織〕のZn濃度の分布を見ると、〔Al・Zn混合組織〕は少なくとも、第1領域と、第1領域の内側にあって第1領域よりも平均Zn濃度が低い第2領域とに区分できる。また、めっき層の平均Al濃度が8~22質量%の場合は、第2領域の内側に、第2領域よりも平均Zn濃度が低い第3領域が含まれる。第1領域は、めっき層を断面視した場合に〔Al・Zn混合組織〕の最も外側に位置しており、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕との境界を構成している。第2領域は、第1領域の内側にあり、第3領域は、第2領域の更に内側にある。
第1領域は、Zn濃度が75質量%以上85質量%未満の領域であり、第2領域は、Zn濃度が67質量%以上75質量%未満の領域であり、第3領域は、Zn濃度が55質量%以上67質量%未満の領域である。Zn以外の残部は、Al及び不純物である。また、めっき層がSiを含有する場合は、第1領域、第2領域及び第3領域の何れかまたは全部の領域にSiが含まれる場合がある。
〔Al・Zn混合組織〕における第2領域の割合は、めっき層を断面視した場合の面積率で、〔Al・Zn混合組織〕に対して40%以上80%以下の範囲である必要があり、40%超80%以下であることが好ましく、50~70%の範囲であってもよい。〔Al・Zn混合組織〕における第2領域はその存在割合が上記の範囲であることで、端部の耐食性および加工部の耐食性が向上する。第2領域が40%未満では、第2領域の腐食によって生成する腐食生成物が少なくなり、鋼材の端部や加工部を腐食生成物によって防食できなくなる。また、第2領域が80%を超えると、局所的に腐食する可能性が高くなる。腐食が開始されると、めっき層の〔Al・Zn混合組織〕のうち、特にZn濃度67質量%以上75質量%未満の第2領域が優先的に腐食されることを確認している。従って、腐食の起点となる第2領域を所定の範囲にして、鋼材の端部または加工部を腐食生成物によって防食することで、端部や加工部の耐食性が向上するものと推測される。
なお、第1領域及び第3領域の面積率については特に限定する必要はない。
〔Al・Zn混合組織〕の微細構造の特定方法について説明する。〔Al・Zn混合組織〕の微細構造の特定方法は、〔Al・Zn混合組織〕の面積率の測定に用いた写真の元素マッピングデータを活用する。まず、〔Al・Zn混合組織〕内部のZn濃度の分布を分析する。分析する際は、走査型電子顕微鏡(SEM)に付属するエネルギー分散型X線元素分析装置を用い、SEMの加速電圧を15kVに設定する。この場合、特性X線の脱出深さの関係から、実質上、Zn濃度は約1μmの領域毎に測定される。これをマッピング化することで約1μmのメッシュでの成分分析が可能になる。その成分分析結果から得られたZn濃度(質量%)を基に、第1領域、第2領域及び第3領域の範囲を決定する。
具体的には、成分分析結果から、Zn濃度が75質量%以上85質量%未満の範囲の領域を第1領域と特定し、Zn濃度が67質量%以上75質量%未満の範囲の領域を第2領域と特定し、Zn濃度が55質量%以上67質量%未満の範囲の領域を第3領域と特定する。そして、それぞれの領域の断面積を測定する。以上の測定を、全ての写真に現れている全部の〔Al・Zn混合組織〕について実施し、全部の〔Al・Zn混合組織〕における第2領域の全面積を測定する。そして、第2領域の全面積を、測定対象とした〔Al・Zn混合組織の全断面積〕で除することで、第2領域の面積率を測定する。
本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、後述するように、鋼材をめっき浴に浸漬させてから鋼材を引き上げることにより、鋼材表面に付着させた溶融金属を凝固させることにより形成する。前述したように、めっき層が凝固する際には、まず〔Al・Zn混合組織〕が晶出し、その後、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地が晶出する。最初に晶出する〔Al・Zn混合組織〕は、Al-Zn-Mgの三元系平衡状態図における高温のAl″相に由来し、この高温のAl″相は、最終的に、本実施形態における〔Al・Zn混合組織〕となる。〔Al・Zn混合組織〕においては、まず、溶融金属中において発生する核生成点が起点となり、核生成点から一次アームが成長し、更に一次アームから二次アームが生成する。そのため、〔Al・Zn混合組織〕は、核生成点を起点とするデンドライト状の組織になっている。
そして、本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材では、めっき層をめっき厚方向の1/2位置にて鋼材側とめっき層表面側とに2等分に分割した場合に、Al・Zn混合組織の核生成点のうちの個数割合で60%以上の核生成点が、めっき層の鋼材側の領域に存在することが好ましい。これにより、めっき層の構成組織のうち、腐食の初期の起点となる〔Al・Zn混合組織〕が、鋼材側の領域に多く存在するようになり、めっき層の表面側の領域における〔Al・Zn混合組織〕の存在割合が少なくなる。これにより、めっき層の加工部の耐食性がより高められる。
また、〔Al・Zn混合組織〕が鋼材側の領域に多く存在することで、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材を任意の位置で切断した場合の切断端面における鋼材の犠牲防食性の向上も期待できる。〔Al・Zn混合組織〕が鋼材の近くにあるため、Al・Zn混合組織の腐食によって生成する腐食生成物が鋼材を直ちに覆うことが可能となり、鋼材の端面および加工部の広い範囲に渡って犠牲防食性が向上するようになる。
〔Al・Zn混合組織〕の核生成点の分布の測定方法は、次の通りとする。まず、めっき層の断面観察を行うことでめっき層の厚みを測定する。続いて、めっき層の表面において、一辺が1mmの正方形の領域を測定領域とする。次いで、測定領域におけるめっき層を表面から徐々に研削し、新たに現れた研削面を電子顕微鏡によって観察する。具体的には、めっき層の全厚をtとしたとき、研削によってめっき層表面から深さ方向にt/4位置、t/2位置及び3t/4位置を順次露出させ、各研削面において、都度、〔Al・Zn混合組織〕の形態を電子顕微鏡で確認する。研削する深さは事前に付与した圧痕の形状変化を観察することで制御する。
〔Al・Zn混合組織〕における核生成点は、〔Al・Zn混合組織〕の一次アーム同士の結合点である。〔Al・Zn混合組織〕の核生成点から比較的離れた研削面では、一次アームが離散して配置されているように見えるが、核生成点に比較的近い研削面では、4つまたは6つの一次アームが近接するように見える。そこで、各研削面を観察した際に、核生成点が観察中の研削面の鋼材側にあるのか、またはめっき層の表面側にあるかを、各研削面における一次アームの形状の変化から推測する。このようにして、めっき層表面から深さ方向にt/4位置、t/2位置及び3t/4位置における研削面において、都度、〔Al・Zn混合組織〕の形態を確認することで、核生成点が、t/2位置よりも鋼材側にあるか、めっき層表面側にあるかを確認できる。そして、測定領域内において観察された〔Al・Zn混合組織〕の核生成点の全個数のうち、t/2位置よりも鋼材側にある核生成点の個の割合を求める。以上の方法を計5か所の測定領域に対して実施し、得られた値の平均を当該めっき層のt/2位置よりも鋼材側にある核生成点の個の割合とする。
めっき層の付着量は、10~300g/mの範囲が好ましく、20~250g/mの範囲でもよい。めっき層の付着量が少ないと耐食性を十分に確保できない。また、めっき層の付着量が厚すぎると、部品形状等に加工する際にめっき層に割れが生じるおそれがある。
次に、本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材の製造方法を説明する。本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、鋼材表面にめっき浴を付着させ、次いで、鋼材をめっき浴から引き上げて鋼材表面に付着した溶融金属を凝固させる所謂溶融めっき法により形成する。
めっき浴の組成は、Mg:1~10質量%、Al:4~22質量%を含有し、残部としてZnおよび不純物を含むものがよい。また、めっき浴には、Si:0.0001~2質量%を含有していてもよい。更に、めっき浴には、Ni、Ti、Zr、Srのいずれか1種または2種以上を合計で、0.0001~2質量%含有していてもよい。更にまた、めっき浴には、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfのいずれか1種または2種以上を合計で、0.0001~2質量%を含有していてもよい。
めっき浴の温度は、380℃超600℃以下の範囲が好ましく、400~600℃の範囲であってもよい。
めっき浴に浸漬させる前の鋼材は、還元性雰囲気中で加熱することにより、表面を還元処理することが好ましい。例えば、窒素と水素の混合雰囲気中で600℃以上、望ましくは750℃以上で30秒以上熱処理する。還元処理が終了した鋼材は、めっき浴の温度まで冷却した後、めっき浴に浸漬させる。浸漬時間は例えば1秒以上でよい。めっき浴に浸漬した鋼材を引き上げる際に、ガスワイピングによってめっきの付着量を調整する。付着量は、上述したように、10~300g/mの範囲が好ましく、20~250g/mの範囲でもよい。
本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材の製造方法では、めっき浴から引き上げ後の冷却条件が重要である。冷却条件は、次の2通りがあり、どちらの条件を採用してもよい。
なお、めっき浴から引き上げた後、350℃以上365℃未満の温度に到達するまでの冷却条件は、特に限定されるものではなく、通常の冷却条件である5~10℃/秒程度であればよい。
第1の冷却条件は、鋼材をめっき浴から引き上げた後、350℃以上365℃未満の温度範囲内で一定の温度で保持し、その後に急冷する条件とする。ここでの温度は、溶融金属(めっき層)の表面温度である。350℃以上365℃未満の温度範囲内で一定の温度で保持する場合の保持時間は、10~300秒の範囲が好ましい。また、350℃以上365℃未満で一定保持後に急冷する場合の平均冷却速度は、20~100℃/秒の範囲が好ましい。急冷は、温度保持時間の終了後に直ちに急冷するとよい。また、急冷は、めっき層の温度が100℃以下になるまで行うとよい。
第2の冷却条件は、鋼材をめっき浴から引き上げた後、365℃未満から350℃までの間を徐冷し、その後、急冷する条件とする。ここでの温度は、溶融金属(めっき層)の表面温度である。365℃未満から350℃までの温度範囲を徐冷する場合の平均冷却速度は、0.1~2℃/秒の範囲が好ましい。また、徐冷後に急冷する場合の平均冷却速度は、20~100℃/秒の範囲が好ましい。急冷は、徐冷の終了後に直ちに急冷するとよい。また、急冷は、めっき層の温度が100℃以下になるまで行うとよい。
上記の冷却条件から外れると、第2領域の面積率を40%~80%の範囲にすることができなくなる。
以上により、本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材を製造できる。
本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、端部及び加工部における耐食性をより向上できる。
板厚0.8mmまたは2.3mmのSPCC(JIS G3141)を脱脂後、東栄社製の溶融めっきシミュレーターでN-H雰囲気中で800℃、60秒加熱還元処理し、めっき浴温まで冷却した後、表1に示すめっき層の平均組成と同じ組成の500℃のめっき浴に3秒浸漬し、その後、Nワイピングで、めっき付着量を片面で135g/mとした。
〔Al・Zn混合組織〕の制御は、めっき後の冷却制御で行い、350℃以上365℃未満の間で20~300秒間保持または滞留させ、その後、20~100℃/秒の平均冷却速度で100℃以下まで急冷することで目的とする構成組織とした。発明例2は、365℃未満から350℃までの間で7.5秒間徐冷(徐冷時の平均冷却速度0.1~2℃/秒の範囲内)した後に100℃以下まで急冷し、他の発明例は364℃で表1に示す保持時間だけ保持してから100℃以下まで急冷した。比較例5~6は350℃以上365℃未満の間での保持または徐冷を行わなかった。作製試料No.1の断面SEM像の一例として発明例No.1のめっき層の断面写真を図1に示す。結果を表1A、表1B、表2A及び表2Bに示す。
表1A、表1Bには、めっき後の冷却条件と、めっき層の平均組成を示す。表2A、表2Bには、めっき層断面における〔Al・Zn混合組織〕の面積率、〔Al・Zn混合組織〕における第2領域の面積率、第1領域、第2領域及び第3領域の平均Zn濃度、〔Al・Zn混合組織〕の核生成点の位置を示す。また、端面耐食性及び加工部耐食性の評価結果を示す。
めっき層の平均組成は、めっき層を剥離して溶解した後、誘導結合プラズマ発光分析法により、めっき層に含まれる元素の含有量を分析することで測定した。
めっき層における〔Al・Zn混合組織〕の面積率は、めっき層の断面を、走査型電子顕微鏡で1000倍に拡大した状態で、反射電子像を5箇所撮影した。写真は、めっき層の厚み全体が視野に入るように撮影した。写真撮影位置はランダムに選択した。更に、走査型電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線元素分析装置を用いて、撮影した写真に対応する元素マッピングデータを取得し、〔Al・Zn混合組織〕を特定した。そして、全部の断面写真に現れている〔Al・Zn混合組織〕の全断面積を測定し、これを、全部の断面写真に現れているめっき層の断面積で除することで、〔Al・Zn混合組織〕の面積率を測定した。
〔Al・Zn混合組織〕における第2領域の面積率、第1領域、第2領域及び第3領域の平均Zn濃度は次のようにして測定した。
めっき層の断面を、走査型電子顕微鏡で1000倍に拡大した状態で、反射電子像を5箇所撮影した。写真は、めっき層の厚み全体が視野に入るように撮影した。写真撮影位置はランダムに選択した。更に、走査型電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線元素分析装置を用いて、撮影した写真に対応する元素マッピングデータを取得し、〔Al・Zn混合組織〕を特定した。元素マッピングデータの取得時のSEMの加速電圧は15kVに設定した。この場合、約1μmの領域毎にZn濃度が測定されるようになり、約1μmのメッシュでの成分分析が可能になる。元素マッピングデータの成分分析結果から得られたZn濃度(質量%)を基に、第1領域、第2領域及び第3領域の範囲を決定した。
具体的には、Zn濃度が75質量%以上85質量%未満の範囲の領域を第1領域と特定し、Zn濃度が67質量%以上75質量%未満の範囲の領域を第2領域と特定し、Zn濃度が55質量%以上67質量%未満の範囲の領域を第3領域と特定した。そして、それぞれの領域の断面積を測定した。以上の測定を、全ての写真に現れている全部の〔Al・Zn混合組織〕について実施し、全部の〔Al・Zn混合組織〕における第2領域の全面積を測定する。そして、第2領域の全面積を、測定対象とした〔Al・Zn混合組織〕の全断面積で除することで、第2領域の面積率を測定した。
また、第1領域、第2領域及び第3領域のZn濃度の測定結果から、各領域におけるZnの平均濃度を求めた。
〔Al・Zn混合組織の〕核生成点の分布の測定方法は、次の通りとした。まず、めっき層の断面観察を行うことでめっき層の厚みを測定した。続いて、めっき層の表面において、一辺が1mmの正方形の領域を測定領域とした。次いで、測定領域におけるめっき層を表面から徐々に研削し、新たに現れた研削面を電子顕微鏡によって観察した。具体的には、めっき層の全厚をtとしたとき、めっき層表面から深さ方向にt/4位置、t/2位置及び3t/4位置において研削面を順次露出させ、各研削面において、都度、Al・Zn混合組織の形態を電子顕微鏡で確認した。研削する深さは事前に付与した圧痕の形状変化を観察して制御した。
〔Al・Zn混合組織〕における核生成点は、〔Al・Zn混合組織〕の一次アーム同士の結合点である。〔Al・Zn混合組織〕の核生成点から比較的離れた研削面では、一次アームが離散して配置されているように見えるが、核生成点に比較的近い研削面では、4つまたは6つの一次アームが近接するように見える。そこで、各研削面を観察した際に、核生成点が観察中の研削面の鋼材側にあるのか、またはめっき層の表面側にあるかを、各研削面における一次アームの形状の変化から推測した。このようにして、めっき層表面から深さ方向にt/4位置、t/2位置及び3t/4位置における研削面において、都度、〔Al・Zn混合組織〕の形態を確認することで、核生成点が、t/2位置よりも鋼材側にあるか、めっき層表面側にあるかを確認した。そして、測定領域内において観察された〔Al・Zn混合組織〕の核生成点の全個数のうち、t/2位置よりも鋼材側にある核生成点の個の割合を求めた。以上の方法を計5か所の測定領域に対して実施し、得られた値の平均を当該めっき層のt/2位置よりも鋼材側にある核生成点の個の割合とした。
表2A、表2Bに、〔Al・Zn混合組織〕の核生成点の位置の欄を設け、めっき層をめっき厚方向の1/2位置にて鋼材側とめっき層表面側とに2等分に分割した場合に、〔Al・Zn混合組織〕の核生成点のうちの個数割合で60%以上の核生成点が、めっき層の鋼材側の領域に存在する場合を、○とし、そうでない場合を×とした。
(端面耐食性(端部耐食性))
板厚2.3mmの板を使用して得られた合金めっき鋼板を、100mm×50mmに切断し、端面耐食性試験に供した。端面耐食性の評価は屋外曝露試験(環境中の塩化物イオン濃度が100ppm以下の場所である。)で行い、3日後の端面赤錆面積率で評価した。評価基準は下記の通りとし、◎、○、△を合格とした。
◎:赤錆面積率 0%以上20%未満
○:赤錆面積率 20%以上30%未満
△:赤錆面積率 30%以上40%未満
×:赤錆面積率 40%以上100%以下
(加工部耐食性)
板厚0.8mmの板を使用して得られた合金めっき鋼板を、30×60mmに切断し、2T曲げ後に加工部耐食性に供した。加工部耐食性の評価は、CCT試験(塩水噴霧(0.5%NaCl、35℃)6時間→乾燥(50℃、45%RH)3時間→湿潤(50℃、95%RH)14時間→乾燥(50℃、45%RH)1時間)で行い、頭頂部の赤錆発生サイクル数で評価した。評価基準は下記の通りとし、◎、○、△を合格とした。
◎:赤錆発生サイクル数 100サイクル以上
○:赤錆発生サイクル数 80以上100サイクル未満
△:赤錆発生サイクル数 60以上80サイクル未満
×:赤錆発生サイクル数 60サイクル以下
Figure 0007417102000001
Figure 0007417102000002
Figure 0007417102000003
Figure 0007417102000004
図1に示すように、発明例No.1のめっき層は、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔Al・Zn混合組織〕を含んでいた。
同様に、発明例のNo.2~46、比較例No.1~6のめっき層は、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔Al・Zn混合組織〕を含んでいた。
表1A、表1B、表2A及び表2Bに示すように、発明例のNo.1~46の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、いずれも本発明の範囲を満たしており、端面耐食性及び加工部耐食性が良好である。また、表2に示すように、〔Al・Zn混合組織〕の核生成点の位置が「○」と評価された溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、端面耐食性及び加工部耐食性がより優れている。
一方、比較例No.1の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、めっき層のAl含有量が低く、めっき層における〔Al・Zn混合組織〕の面積率が低く、また、〔Al・Zn混合組織〕中に第2領域が含まれなかった。このため、端面耐食性及び加工部耐食性が劣位になった。
比較例No.2の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、めっき層のAl含有量が過剰であり、めっき層における〔Al・Zn混合組織〕の面積率が高くなり、端面耐食性及び加工部耐食性が劣位になった。
比較例No.3の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、めっき層中にMgが含まれず、また、〔Al・Zn混合組織〕中の第2領域の面積率が低くなり、端面耐食性及び加工部耐食性が劣位になった。
比較例No.4の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、めっき層中のMg含有量が過剰であったため、端面耐食性及び加工部耐食性が劣位になった。
比較例No.5、6の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、350℃以上365℃未満の間での保持または徐冷を行わなかったため、〔Al・Zn混合組織〕中の第2領域の面積率が発明範囲から外れ、端面耐食性及び加工部耐食性が劣位になった。

Claims (6)

  1. 鋼材と、前記鋼材の表面に形成されためっき層とを備え、
    前記めっき層は、平均組成で、Mg:1~10質量%、Al:4~22質量%を含有し、残部がZn及び不純物からなり、
    前記めっき層には、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、前記めっき層の断面における面積率で10~70%の〔Al・Zn混合組織〕を含んでおり、
    前記Al・Zn混合組織には、Zn濃度が75質量%以上85質量%未満の範囲である第1領域と、前記第1領域の内側にあって、Zn濃度が67質量%以上75質量%未満の範囲である第2領域とを含み、
    前記めっき層の断面での前記〔Al・Zn混合組織〕における前記第2領域の面積率が40%以上80%以下であることを特徴とする溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
  2. 前記めっき層の平均組成が、Mg:1~10質量%、Al:8~22質量%を含有し、残部がZn及び不純物であり、
    前記〔Al・Zn混合組織〕には、前記第1領域と、前記第2領域と、前記第2領域の内側にあって、Zn濃度が55質量%以上67質量%未満の範囲である第3領域とを含むことを特徴とする請求項1に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
  3. 前記めっき層をめっき厚方向の1/2位置にて前記鋼材側とめっき層表面側とに2等分に分割した場合に、前記〔Al・Zn混合組織〕の核生成点のうちの個数割合で60%以上の核生成点が、前記めっき層の鋼材側の領域に存在することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
  4. 前記めっき層に更に、平均組成で、0.0001~2質量%のSiを含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
  5. 前記めっき層に更に、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Srのいずれか1種または2種以上を合計で0.0001~2質量%の範囲で含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
  6. 前記めっき層に更に、平均組成で、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfのいずれか1種または2種以上を合計で、0.0001~2質量%の範囲で含有することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
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