JP7417103B2 - 溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材 - Google Patents

溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材 Download PDF

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Description

本発明は、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材に関する。
建材、土木の分野では、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材が未塗装の状態で使用されることが多い。そこで、平面部の耐食性に優れた溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材が求められている。また、最近では、家電や自動車の分野でも溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材が使用されている。家電や自動車の分野では、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材が塗装された状態で使用されることが多い。また、建材分野でも塗装して使用される場合が増えてきた。そこで、腐食に起因する塗膜膨れが起きにくい溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材が求められている。特許文献1~6には、各種の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材が記載されている。
特許文献1には、鋼板の表面に、Mg:1~10重量%、Al:2~19重量%、Si:0.01~2重量%を含有し、かつ、MgとAlが下式、Mg(%)+Al(%)≦20%を満たし、残部がZn及び不可避的不純物よりなるZn合金めっき層を有し、Zn合金めっき層が〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に〔MgSi相〕と〔MgZn相〕及び〔Zn相〕が混在した金属組織を有する耐食性に優れためっき鋼板が記載されている。
特許文献2には、Al:4.0~10重量%、Mg:1.0~4.0重量%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融Zn-Al-Mgめっき層を鋼板表面に形成した溶融Zn基めっき鋼板であって、当該めっき層が、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に〔Al相〕が混在した金属組織を有する耐食性および表面外観の良好な溶融Zn-Al-Mgめっき鋼板が記載されている。
特許文献3には、鋼板の片面または両面に、Al:4~10質量%、Mg:1~5質量%、Ti:0.01質量%以下を含有し残部が亜鉛及び不可避的不純物よりなる亜鉛系めっき層を有し、中間層としてクロメート皮膜もしくはりん酸塩被膜の化成被膜を有し、上層として0.2~100μm厚の有機被膜層を有する鮮映性の優れた高耐食性塗装鋼板が記載されている。
特許文献4には、Mg:2.8%以上、Al:10.5%以上、Si:0.01~0.5%含有し、残りがZnおよび不可避的不純物よりなるZn合金めっき層を有し、このZn合金めっき層中でMgZn11/MgZnのX線強度比が0.5以下である均一外観を有する溶融Zn-Al-Mg-Siめっき鋼板が記載されている。
特許文献5には、鋼板と、4質量%以上22質量%以下のAlと、1質量%以上5質量%以下のMgとを含有し、残部がZn及び不可避的不純物を含む溶融めっき層と、を備え、溶融めっき層の表面に平行な前記溶融めっき層の断面における、Al相の(200)面のX線回折強度I(200)とAl相の(111)面のX線回折強度I(111)との比である回折強度比I(200)/1(111)が、0.8以上であるZn-AI一Mg系溶融めっき鋼板が記載されている。
特許文献6には、鋼材の表面に、Al:5~18質量%、Mg:1~10質量%、Si:0.01~2質量%、残部Zn及び不可避的不純物とからなるめっき層を有するめっき鋼材表面に、〔Al相〕が1mm当たり200個以上存在する表面性状に優れた溶融Zn-Al-Mg-Siめっき鋼材が記載されている。
しかしながら、最近では、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材に対して、平面部の耐食性の更なる向上が求められ、また、塗膜膨れの防止がより一層強く求められている。
特開2000-104154号公報 特開平10-226865号公報 特開2004-225157号公報 特開2006-193791号公報 国際公開第2011/001662号 特開2001-355053号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、表面耐食性に優れ、また、めっき表面に塗膜が形成された場合でも塗膜膨れを防止可能な溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 鋼材と、前記鋼材の表面に形成されためっき層とを備え、
前記めっき層は、平均組成で、Mg:1~10質量%、Al:4~22質量%を含有し、残部がZn及び不純物からなり、
前記めっき層には、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、前記めっき層の断面における面積率で10~70%の〔Al・Zn混合組織〕を含んでおり、
前記〔Al・Zn混合組織〕には、Zn濃度が75質量%以上85質量%未満の範囲である第1領域と、前記第1領域の内側にあって、Zn濃度が67質量%以上75質量%未満の範囲である第2領域とを含み、
前記第2領域には、Zn相とAl相とが混在しており、前記めっき層の断面における前記第2領域の面積1μm当たりの前記Zn相と前記Al相との界面長さが20μm以下であることを特徴とする溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
[2] 前記めっき層の平均組成が、Mg:1~10質量%、Al:8~22質量%を含有し、残部がZn及び不純物であり、
前記〔Al・Zn混合組織〕には、前記第1領域と、前記第2領域と、前記第2領域の内側にあって、Zn濃度が55質量%以上67質量%未満の範囲である第3領域とを含むことを特徴とする[1]に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
[3] 前記めっき層に更に、平均組成で、0.0001~2質量%のSiを含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
[4]前記めっき層をめっき厚方向の1/2位置にて前記鋼材側とめっき層表面側とに2等分に分割した場合に、前記〔Al・Zn混合組織〕の核生成点のうちの個数割合で60%以上の核生成点が、前記めっき層の鋼材側の領域に存在することを特徴とする[1]乃至[3]の何れか一項に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
[5] 前記めっき層に更に、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Srのいずれか1種または2種以上を合計で0.0001~2質量%の範囲で含有することを特徴とする[1]乃至[4]の何れか一項に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
[6] 前記めっき層に更に、平均組成で、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfのいずれか1種または2種以上を合計で、0.0001~2質量%の範囲で含有することを特徴とする[1]乃至[5]の何れか一項に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
本発明によれば、表面耐食性に優れ、また、めっき表面に塗膜が形成された場合でも塗膜膨れを防止可能な溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材を提供できる。
図1は、発明例1及び比較例6のめっき層の断面を走査型電子顕微鏡の反射電子モードで観察した反射電子像写真。 図2は、平面腐食性の評価後の、発明例1及び比較例6のめっき層の断面を走査型電子顕微鏡の反射電子モードで観察した反射電子像写真。 図3は、めっき層中の〔Al・Zn混合組織〕の核生成点の位置を決定する方法を説明するためのめっき層の模式図であって、めっき層断面における〔Al・Zn混合組織〕の形態と、t/2位置の研削面における〔Al・Zn混合組織〕の形態を説明する模式図。 図4は、めっき層の深さ方向の位置と、〔Al・Zn混合組織〕の一次アーム間距離の平均値との関係を示すグラフ。
溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、Mgと、Alと、残部Zn及び不純物を含む成分を有し、金属組織として、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、〔ZnMg相〕、〔Zn相〕、〔Al相〕の少なくとの1種が混在しためっき層を有している。また、Zn、Al、Mgに加えてめっき層にSiが含有される場合は、上記の相及び組織に加え、〔MgSi相〕が含まれることがある。めっき層を形成する際には、Mg、Al及びZnを含むめっき浴に鋼材を浸漬させてから鋼材を引き上げることにより、鋼材表面に付着させた溶融金属を凝固させる。めっき層が凝固する際には、〔Al相〕が晶出し、その後、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地が晶出することで形成される。
このような溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材の表面耐食性を向上させるために本発明者らが鋭意検討したところ、〔Al・Zn混合組織〕が腐食の初期の起点になることを突き止めた。〔Al・Zn混合組織〕は、Al-Zn-Mgの三元系平衡状態図における高温のAl″相(Znを固溶するAl固溶体であって少量のMgを含むことが多い)に由来するものであり、状態図によれば、常温では微細なZn相と微細なAl相とを含む状態にある。この〔Al・Zn混合組織〕の構造について詳細に検討したところ、Zn濃度が比較的高い第1領域とZn濃度が比較的低い第2領域とに分けることができ、第2領域の存在割合が大きいほど表面耐食性が低下する傾向にあることがわかった。そして、従来の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、第2領域の存在割合が比較的高くなっていることが判明した。その一方で、第1領域は第2領域に比べて腐食しにくい傾向にあった。第2領域及び第1領域は、いずれも、微細なZn相と微細なAl相とを含むが、これらZn相とAl相の析出形態が第2領域と第1領域との間で差があることを知見した。そこで、第2領域におけるZn相及びAl相の析出形態を、第1領域におけるこれらの相の析出形態に近づけることで、平坦部の耐食性に優れた溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材が得られることを知見した。また、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材の平坦部の耐食性が向上することで、溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材のめっき層表面に塗膜を形成した場合でも、塗膜膨れを予防することができるようになることが判明した。
本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、鋼材と、鋼材の表面に形成されためっき層とを備え、めっき層は、平均組成で、Mg:1~10質量%、Al:4~22質量%を含有し、残部がZn及び不純物からなり、めっき層には、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、めっき層の断面における面積率で10~70%の〔Al・Zn混合組織〕を含んでおり、〔Al・Zn混合組織〕には、Zn濃度が75質量%以上85質量%未満の範囲である第1領域と、前記第1領域の内側にあって、Zn濃度が67質量%以上75質量%未満の範囲である第2領域とを含み、第2領域には、Zn相とAl相とが混在しており、めっき層の断面における第2領域の面積1μm当たりの前記Zn相と前記Al相との界面長さが20μm以下である。
また、本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材では、めっき層の平均組成が、Mg:1~10質量%、Al:8~22質量%を含有し、残部がZn及び不純物である場合に、〔Al・Zn混合組織〕に、第1領域と、第2領域と、第2領域の内側にあって、Zn濃度が55質量%以上67質量%未満の範囲である第3領域とが含まれていてもよい。
更に、めっき層をめっき厚方向の1/2位置にて鋼材側とめっき層表面側とに2等分に分割した場合に、〔Al・Zn混合組織〕の核生成点のうちの個数割合で60%以上の核生成点が、めっき層の鋼材側の領域に存在することが好ましい。
以下、本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材について説明する。
めっき層の下地となる鋼材は、材質に特に制限はない。材質として、一般鋼、Alキルド鋼や一部の高合金鋼に適用することが可能であり、形状にも特に制限はない。また、鋼材には、Niプレめっきを施してもよい。鋼材に対して後述する溶融めっき法を適用することで、本実施形態に係るめっき層が形成される。
次に、めっき層の化学成分について説明する。
本実施形態に係るめっき層は、平均組成で、Mg:1~10質量%、Al:4~22質量%を含有し、残部としてZnおよび不純物を含んでいる。また、めっき層は、平均組成で、Si:0.0001~2質量%を含有していてもよい。更に、めっき層は、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Srのいずれか1種または2種以上を合計で、0.0001~2質量%含有していてもよい。更にまた、めっき層は、平均組成で、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfのいずれか1種または2種以上を合計で、0.0001~2質量%を含有していてもよい。
Mgの含有量は、平均組成で1~10質量%の範囲である。Mgは、めっき層の耐食性を向上させるために必要な元素である。めっき層中のMgの含有量が1質量%未満では、耐食性を向上させる効果が不十分になり、10質量%を超えるとめっき浴でのドロス発生が著しくなり、安定的にめっき鋼材を製造するのが困難となる。耐食性とドロス発生のバランスの観点から、好ましくは1.5~6質量%とする。より好ましくは2~5質量%の範囲とする。
Alの含有量は、平均組成で4~22質量%の範囲である。Alは、耐食性を確保するために必要な元素である。めっき層中のAlの含有量が4質量%未満では、耐食性を向上させる効果が不十分になり、22質量%を超えると耐食性を向上させる効果が飽和する。耐食性の観点から、好ましくは8~22質量%とする。より好ましくは9~13質量%とする。
また、めっき層は、Siを0.0001~2質量%の範囲で含有していてもよい。Siは、めっき層の密着性を向上させるのに有効な元素である。Siを0.0001質量%以上含有させることで密着性を向上させる効果が発現するため、Siを0.0001質量%以上含有させることが好ましい。一方、2質量%を超えて含有させてもめっき密着性を向上させる効果が飽和するため、Siの含有量は2質量%以下とする。めっき密着性の観点からは、0.02~1質量%の範囲にしてもよく、0.03~0.8質量%の範囲にしてもよい。
また、めっき層中には、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Srのいずれか1種または2種以上を合計で、0.0001~2質量%含有していてもよい。これらの元素を含む金属間化合物は、〔Al・Zn混合組織〕の晶出核として作用し、〔Al/MgZn/Znの三元共晶組織〕をより微細、均一にして、めっき層の外観や平滑性を向上させる。これらの元素の1種または2種以上を合計で0.0001~2質量%とした理由は、0.0001質量%未満では、凝固組織を微細均一にする効果が不十分になるためであり、2質量%を超えると、〔Al/MgZn/Znの三元共晶組織〕を微細化させる効果が飽和するばかりか、逆にめっき層の表面粗度を大きくして外観が悪くなるため、上限を2質量%とする。特に外観向上を目的として添加する場合、0.001~0.5質量%を含有させることが望ましい。より好ましくは0.001~0.05質量%の範囲であり、さらに好ましくは0.002~0.01質量%の範囲である。
めっき層中には、平均組成で、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfの1種又は2種以上を合計で0.0001~2質量%を含有していてもよい。これらの元素を含有することで、さらに耐食性を改善することができる。REMは、周期律表における原子番号57~71の希土類元素の1種または2種以上である。
めっき層の化学成分の残部は、亜鉛及び不純物である。
次に、めっき層の組織について説明する。本実施形態に係るめっき層は、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、面積率で10~70%の〔Al・Zn混合組織〕を含んでいる。また、〔〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕〕の素地中には、〔Al・Zn混合組織〕の他に、〔MgZn相〕、〔Zn相〕、〔MgSi相〕が含まれていてもよい。
〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕とは、Al相と、Zn相と、金属間化合物であるMgZn相との三元共晶組織であり、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕を形成しているAl相は例えばAl-Zn-Mgの三元系平衡状態図における高温での「Al″相」(Zn相を固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含む)に相当するものである。この高温でのAl″相は常温では通常は微細なAl相と微細なZn相に分離して現れる。また、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕中のZn相は少量のAlを固溶し、場合によってはさらに少量のMgを固溶したZn固溶体である。〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕中のMgZn相は、Zn-Mgの二元系平衡状態図のZn:約84質量%の付近に存在する金属間化合物相である。状態図で見る限りそれぞれの相にはSi、その他の元素を固溶していても少量であると考えられ、その量は通常の分析では明確に区別できないため、この3つの相からなる三元共晶組織を本明細書では〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕と表す。
次に、〔Al・Zn混合組織〕について説明する。本実施形態では、高温相のAl相が冷却時に微細なZn主体相と微細なAl主体相に分離して形成された組織を〔Al・Zn混合組織〕と称する。なお、Zn主体相は、AlとMgを固溶することがある。Al主体相は、ZnとMgを固溶することがある。
〔Al・Zn混合組織〕は、走査型電子顕微鏡の反射電子像において、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、これは例えばAl-Zn-Mgの三元系平衡状態図における高温での「Al″相」(Zn相を固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含む)に相当するものである。この高温でのAl″相はめっき浴のAlやMg濃度に応じて固溶するZn量やMg量が相違する。この高温でのAl″相は常温では通常は微細なAl相と微細なZn相に分離するが、常温で見られる島状の形状は高温でのAl″相の形骸を留めたものであると見てよい。状態図で見る限りこの相にはSi、その他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられるが通常の分析では明確に区別できないため、この高温でのAl″相に由来し且つ形状的にはAl″相の形骸を留めている組織を本明細書では〔Al・Zn混合組織〕と呼ぶ。この〔Al・Zn混合組織〕は前記の〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕を形成しているAl相とは走査型電子顕微鏡の反射電子像において明瞭に区別できる。
めっき層の断面における〔Al・Zn混合組織〕の面積率は10~70%の範囲が好ましい。〔Al・Zn混合組織〕の面積率がこの範囲であれば、平面部の耐食性を向上させることができる。
面積率の測定方法は、めっき層の断面を走査型電子顕微鏡の反射電子像で観察する。倍率を1000倍に拡大した状態で、5箇所の写真を撮影する。写真は、めっき層の厚み全体が視野に入るように撮影する。写真撮影位置はランダムに選択する。面積率の計算結果を受けて撮影位置を任意に再選択してはならない。更に、走査型電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線元素分析装置を用いて、撮影した写真に対応する元素マッピングデータを取得し、〔Al・Zn混合組織〕を特定する。そして、全部の断面写真に現れている〔Al・Zn混合組織〕の全断面積を測定し、これを、全部の断面写真に現れているめっき層の断面積で除することで、〔Al・Zn混合組織〕の面積率を測定する。
また、〔Zn相〕とは、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、実際には少量のAlさらには少量のMgを固溶していることもある。状態図で見る限りこの相にはSi、その他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。この〔Zn相〕は〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕を形成しているZn相とは走査型電子顕微鏡の反射電子像において明瞭に区別できる。本実施形態のめっき層には、製造条件により〔Zn相〕が含まれる場合も有るが、実験では平面部耐食性向上に与える影響はほとんど見られなかったため、めっき層に〔Zn相〕が含まれても特に問題はない。
また、〔MgZn相〕とは、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に明瞭な境界をもって島状に見える相であり、実際には少量のAlを固溶していることもある。状態図で見る限りこの相にはSi、その他の添加元素を固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。この〔MgZn相〕は〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕を形成しているMgZn相とは走査型電子顕微鏡の反射電子像において明瞭に区別できる。本実施形態のめっき層には、製造条件により〔MgZn相〕が含まれない場合も有るが、ほとんどの製造条件ではめっき層中に含まれる。
また、〔MgSi相〕とは、Siを含有するめっき層の凝固組織中に明瞭な境界をもって島状に見える相である。状態図で見る限りZn、Al、その他の添加元素は固溶していないか、固溶していても極微量であると考えられる。この〔MgSi相〕はめっき中では走査型電子顕微鏡の反射電子像において明瞭に区別できる。
次に、〔Al・Zn混合組織〕の微細構造について説明する。〔Al・Zn混合組織〕は、上述のように、高温でのAl″相の形骸を留めた島状の形状を示す。また、〔Al・Zn混合組織〕の内部構造は、状態図によると、微細なAl相と微細なZn相に分離した形態を示すと推測される。後述するように、〔Al・Zn混合組織〕は第1領域と第2領域と第3領域とに分けられる。微細なAl相と微細なZn相は、走査型電子顕微鏡の反射電子像などで判別できる。
〔Al・Zn混合組織〕のZn濃度の分布を見ると、〔Al・Zn混合組織〕は少なくとも、第1領域と、第1領域の内側にあって第1領域よりも平均Zn濃度が低い第2領域とに区分できる。また、めっき層の平均Al濃度が8~22質量%の場合は、第2領域の内側に、第2領域よりも平均Zn濃度が低い第3領域が含まれる。第1領域は、めっき層を断面視した場合に〔Al・Zn混合組織〕の最も外側に位置しており、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕との境界を構成している。第2領域は、第1領域の内側にあり、第3領域は、第2領域の更に内側にある。
第1領域は、Zn濃度が75質量%以上85質量%未満の領域であり、第2領域は、Zn濃度が67質量%以上75質量%未満の領域であり、第3領域は、Zn濃度が55質量%以上67質量%未満の領域である。Zn以外の残部は、Al及び不純物である。また、めっき層がSiを含有する場合は、第1領域、第2領域及び第3領域の何れかの領域にSiが含まれる場合がある。
第2領域には、Zn相とAl相とが混在しているが、第2領域の面積1μm当たりの前記Zn相と前記Al相との界面長さが20μm以下であることが好ましい。第2領域におけるZn相とAl相の界面長さを20μm以下にすることで、第2領域が優先して腐食されることが防止され、これにより、平坦部の耐食性が向上すると推測される。第2領域における面積1μm当たりの前記Zn相と前記Al相との界面長さが20μmを超えると、第2領域が優先して腐食して平坦部の耐食性が低下するので好ましくない。腐食が開始されると、めっき層の〔Al・Zn混合組織〕のうち、特に平均Zn濃度67質量%以上75質量%未満の第2領域が優先的に腐食されることを確認している。従って、腐食の起点となる第2領域の微細結晶組織を第1領域に近づけることで、平坦部の耐食性が向上するものと推測される。
また、〔Al・Zn混合組織〕における第2領域の割合は、めっき層を断面視した場合の面積率で、〔Al・Zn混合組織〕に対して5%以上40%以下の範囲であることが好ましく、15~35%の範囲であってもよい。〔Al・Zn混合組織〕における第2領域はその存在割合が少なければ少ないほど、表面耐食性が向上する。しかしながら、第2領域の面積率を0%にすることは製造上困難が伴うので、下限を0%超にする。また、第2領域が40%を超えると、平坦部の耐食性が低下するので、上限を40%以下とする。
なお、第1領域及び第3領域の面積率については特に限定する必要はないが、これらの領域が存在することで、平坦部の耐食性が高められる。
〔Al・Zn混合組織〕の微細構造の特定方法について説明する。〔Al・Zn混合組織〕の微細構造の特定方法は、〔Al・Zn混合組織〕の面積率の測定に用いた写真の元素マッピングデータを活用する。まず、〔Al・Zn混合組織〕内部のZn濃度の分布を分析する。分析する際は、走査型電子顕微鏡(SEM)に付属するエネルギー分散型X線元素分析装置を用い、SEMの加速電圧を15kVに設定する。この場合、特性X線の脱出深さの関係から、実質上、Zn濃度は約1μmの領域毎に測定される。これをマッピング化することで1μmのメッシュでの成分分析が可能になる。その成分分析結果から得られたZn濃度(質量%)を基に、第1領域、第2領域及び第3領域の範囲を決定する。
具体的には、成分分析結果から、Zn濃度が75質量%以上85質量%未満の範囲の領域を第1領域と特定し、Zn濃度が67質量%以上75質量%未満の範囲の領域を第2領域と特定し、Zn濃度が55質量%以上67質量%未満の範囲の領域を第3領域と特定する。そして、それぞれの領域の断面積を測定する。以上の測定を、全ての写真に現れている全部の〔Al・Zn混合組織〕について実施し、全部の〔Al・Zn混合組織〕における第2領域の全面積を測定する。そして、第2領域の全面積を、測定対象とした〔Al・Zn混合組織〕の全断面積で除することで、第2領域の面積率を測定する。
また、第2領域における面積1μm当たりのZn相とAl相との界面長さは次のように測定する。まず、めっき層の断面において、走査型電子顕微鏡の50000倍にて〔Al・Zn混合組織〕の各領域の反射電子像を5か所ずつ撮影する。組成コントラストによりAl相は暗く、Zn相は明るく観察される。汎用画像処理ソフト(例えば、アドビ社製 Adobe Photoshop(登録商標))を用い、得られた画像を二値化し、白い領域と黒い領域の界面長さを測定する。上記の方法で測定した界面長さを、観察した全面積で除することで、面積1μm当たりのZn相とAl相の界面長さとする。
本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、後述するように、鋼材をめっき浴に浸漬させてから鋼材を引き上げることにより、鋼材表面に付着させた溶融金属を凝固させることにより形成する。前述したように、めっき層が凝固する際には、まず〔Al・Zn混合組織〕が晶出し、その後、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地が晶出する。最初に晶出する〔Al・Zn混合組織〕は、Al-Zn-Mgの三元系平衡状態図における高温のAl″相に由来し、この高温のAl″相は、最終的に、本実施形態における〔Al・Zn混合組織〕となる。〔Al・Zn混合組織〕においては、まず、溶融金属中において発生する核生成点が起点となり、核生成点から一次アームが成長し、更に一次アームから二次アームが生成する。そのため、〔Al・Zn混合組織〕は、核生成点を起点とするデンドライト状の組織になっている。
そして、本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材では、めっき層をめっき厚方向の1/2位置にて鋼材側とめっき層表面側とに2等分に分割した場合に、〔Al・Zn混合組織〕の核生成点のうちの個数割合で60%以上の核生成点が、めっき層の鋼材側の領域に存在することが好ましい。これにより、めっき層の構成組織のうち、腐食の初期の起点となる〔Al・Zn混合組織〕が、鋼材側の領域に多く存在するようになり、めっき層の表面側の領域における〔Al・Zn混合組織〕の存在割合が少なくなる。これにより、めっき層の平坦部の耐食性がより高められる。
また、〔Al・Zn混合組織〕は、めっき層上に塗膜を形成する場合に、めっき層と塗膜との密着性の阻害要因となりうる。めっき層の鋼板側の領域に〔Al・Zn混合組織〕が多く存在することによって、相対的に表面に露出する〔Al・Zn混合組織〕の割合が低下するため、めっき表面に塗膜が形成された場合の塗膜膨れを防止する効果がより高められる。
〔Al・Zn混合組織〕の核生成点の分布の測定方法は、次の通りとする。まず、めっき層の断面観察を行うことでめっき層の厚みを測定する。続いて、めっき層の表面において、一辺が1mmの正方形の領域を測定領域とする。次いで、測定領域におけるめっき層を表面から徐々に研削し、新たに現れた研削面を電子顕微鏡によって観察する。具体的には、めっき層の全厚をtとしたとき、研削によってめっき層表面から深さ方向にt/4位置、t/2位置及び3t/4位置を順次露出させ、各研削面において、都度、〔Al・Zn混合組織〕の形態を電子顕微鏡で確認する。研削する深さは事前に付与した圧痕の形状変化を観察することで制御する。
〔Al・Zn混合組織〕における核生成点は、〔Al・Zn混合組織〕の一次アーム同士の結合点である。〔Al・Zn混合組織の核生成点〕から比較的離れた研削面では、一次アームが離散して配置されているように見えるが、核生成点に比較的近い研削面では、4つまたは6つの一次アームが近接するように見える。そこで、各研削面を観察した際に、核生成点が観察中の研削面の鋼材側にあるのか、またはめっき層の表面側にあるかを、各研削面における一次アームの形状の変化から推測する。このようにして、めっき層表面から深さ方向にt/4位置、t/2位置及び3t/4位置における研削面において、都度、〔Al・Zn混合組織〕の形態を確認することで、核生成点が、t/2位置よりも鋼材側にあるか、めっき層表面側にあるかを確認できる。そして、測定領域内において観察された〔Al・Zn混合組織〕の核生成点の全個数のうち、t/2位置よりも鋼材側にある核生成点の個の割合を求める。以上の方法を計5か所の測定領域に対して実施し、得られた値の平均を当該めっき層のt/2位置よりも鋼材側にある核生成点の個数の割合とする。
めっき層の付着量は、10~300g/mの範囲が好ましく、20~250g/mの範囲でもよい。めっき層の付着量が少ないと耐食性を十分に確保できない。また、めっき層の付着量が厚すぎると、部品形状等に加工する際にめっき層に割れが生じるおそれがある。
次に、本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材の製造方法を説明する。本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、鋼材表面にめっき浴を付着させ、次いで、鋼材をめっき浴から引き上げて鋼材表面に付着した溶融金属を凝固させる所謂溶融めっき法により形成する。
めっき浴の組成は、Mg:1~10質量%、Al:4~22質量%を含有し、残部としてZnおよび不純物を含むものがよい。また、めっき浴には、Si:0.0001~2質量%を含有していてもよい。更に、めっき浴には、Ni、Ti、Zr、Srのいずれか1種または2種以上を合計で、0.0001~2質量%含有していてもよい。更にまた、めっき浴には、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfのいずれか1種または2種以上を合計で、0.0001~2質量%を含有していてもよい。
めっき浴の温度は、340~600℃の範囲が好ましく、400~600℃の範囲であってもよい。
めっき浴に浸漬させる前の鋼材は、還元性雰囲気中で加熱することにより、表面を還元処理することが好ましい。例えば、窒素と水素の混合雰囲気中で600℃以上、望ましくは750℃以上で30秒以上熱処理する。還元処理が終了した鋼材は、めっき浴の温度まで冷却した後、めっき浴に浸漬させる。浸漬時間は例えば1秒以上でよい。めっき浴に浸漬した鋼材を引き上げる際に、ガスワイピングによってめっきの付着量を調整する。付着量は、上述したように、10~300g/mの範囲が好ましく、20~250g/mの範囲でもよい。
本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材の製造方法では、めっき浴から引き上げ後の冷却条件が重要である。めっき浴から引き上げ後、めっき層の表面温度が110℃~250℃の範囲になるまで平均冷却速度3~6℃/秒の範囲で冷却した後、放冷する。放冷時の平均冷却速度は0~0.3℃/秒の範囲に制御する。平均冷却速度を0℃/秒として実質的に温度を一定に維持してもよい。放冷時間は150~400秒とする。放冷開始温度を110℃未満にすると、長時間の放冷が必要となり製造コスト増大を招くため、110℃以上が好ましい。また、放冷開始温度を250℃より高温にすると反応が短時間となるため制御が困難であるため250℃以下とした。放冷時間が150秒以上であれば、第2領域におけるZn相とAl相の界面長さを20μm以下にできる。また、放冷時間は400秒以上でも効果が見込まれるが、製造コストの増大があるため400秒未満とするのが好ましい。放冷時間終了後は、水冷して室温付近まで冷却するとよい。水冷時の平均冷却速度は例えば10℃/秒以上とすればよい。
めっき層の表面温度が110℃~250℃の範囲になるまで冷却することで、めっき層が凝固して〔Al・Zn混合組織〕及び〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕が形成される。その後、上記の平均冷却速度で放冷することで、第2領域の微細組織を制御して、第2領域の単位面積当たりのZn相とAl相との界面長さを20μm以下にする。上記の冷却条件から外れると、第2領域の界面長さを本発明範囲に制御することが困難になる。
以上により、本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材を製造できる。
本実施形態の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、表面耐食性に優れ、また、めっき表面に塗膜が形成された場合でも塗膜膨れを防止できる。
板厚0.8mmのSPCC (JIS G3141)を脱脂後、東栄社製の溶融めっきシミュレーターでN-H雰囲気中、800℃で加熱還元処理し、めっき浴温まで冷却した後、表1に記載のめっき層の平均組成に対応する種々の組成のめっき浴に浸漬、その後、Nワイピングでめっき付着量を片面で135g/mとした。めっき浴温度は450℃とした。
〔Al・Zn混合組織〕の制御は、めっき後の冷却制御で行った。めっき後の鋼板を平均冷却速度4℃/秒で放冷開始温度150℃まで冷却し、150℃に達してから300秒間放冷した。放冷時の平均冷却速度は、0~0.1℃/秒の範囲に制御した。放冷時間終了後は水冷して室温まで冷却した。このようにして、表1に示す発明例1~40及び比較例1~5のめっき鋼材を製造した。
また、板厚0.8mmのSPCC(JIS G3141)を脱脂後、東栄社製の溶融めっきシミュレーターでN-H雰囲気中、800℃で加熱還元処理し、めっき浴温まで冷却した後、めっき組成をZn-11%Al-3%Mg-0.2%Siに調整しためっき浴に浸漬、その後、Nワイピングでめっき付着量を片面で135g/mとした。めっき浴温度は450℃とした。
〔Al・Zn混合組織〕の制御は、めっき後の冷却制御で行った。めっき後の鋼板を平均冷却速度4℃/秒で放冷開始温度50~250℃まで冷却し、放冷開始温度に達してから140~400秒間放冷した。放冷時の平均冷却速度は、0.1℃/秒の範囲に制御した。放冷時間終了後は水冷して室温まで冷却した。このようにして、表2に示す発明例41~49及び比較例6~8のめっき鋼材を製造した。
発明例1~49及び比較例1~8のめっき鋼材について、めっき層の断面を走査型電子顕微鏡の反射電子像で観察した。倍率を1000倍に拡大した状態で、5箇所の写真を撮影した。写真は、めっき層の厚み全体が視野に入るように撮影した。写真撮影位置はランダムに選択した。そして、全部の断面写真に現れている〔Al・Zn混合組織〕の全断面積を測定し、これを、全部の断面写真に現れているめっき層の断面積で除することで、〔Al・Zn混合組織〕の面積率を測定した。
また、〔Al・Zn混合組織〕の第2領域を以下のようにして特定した。走査型電子顕微鏡に付属するエネルギー分散型X線元素分析装置を用いて、撮影した写真に対する元素マッピングデータを取得し、〔Al・Zn混合組織〕内部のZn濃度の分布を分析した。分析する際は、SEMの加速電圧を15kVに設定した。この場合、1μmの領域毎にZn濃度が測定される。これをマッピング化することで1μmのメッシュでの成分分析が可能になる。その成分分析結果から得られたZn濃度(質量%)を基に、第2領域の範囲を決定した。具体的には、Zn濃度が67質量%以上75質量%未満の範囲の領域を第2領域と特定した。
また、第2領域の特定とともに、第1領域及び第3領域の有無を確認した。〔Al・Zn混合組織〕中に、Zn濃度が75質量%以上85質量%未満の領域があった場合はこの領域を第1領域と特定し、Zn濃度が55質量%以上67質量%未満の領域があった場合はこの領域を第3領域とした。
次いで、第2領域におけるZn相とAl相の界面長さを測定した。めっき断面を走査型電子顕微鏡の50000倍にて〔Al・Zn混合組織〕の第2領域の反射電子像を5か所ずつ撮影した。組成コントラストによりAl相は暗く、Zn相は明るく観察される。そこで、汎用画像処理ソフト(アドビ社製 Adobe Photoshop(登録商標))を用い、得られた画像を二値化し、白い領域と黒い領域の界面長さを測定した。上記の方法で測定した界面長さを、観察した全面積で除することで、第2領域の面積1μm当たりのZn相とAl相の界面長さとした。
〔Al・Zn混合組織の〕核生成点の分布の測定方法は、次の通りとした。まず、めっき層の断面観察を行うことでめっき層の厚みを測定した。続いて、めっき層の表面において、一辺が1mmの正方形の領域を測定領域とした。次いで、測定領域におけるめっき層を表面から徐々に研削し、新たに現れた研削面を電子顕微鏡によって観察した。具体的には、めっき層の全厚をtとしたとき、めっき層表面から深さ方向にt/4位置、t/2位置及び3t/4位置において研削面を順次露出させ、各研削面において、都度、〔Al・Zn混合組織〕の形態を電子顕微鏡で確認した。研削する深さは事前に付与した圧痕の形状変化を観察して制御した。
〔Al・Zn混合組織〕における核生成点は、〔Al・Zn混合組織〕の一次アーム同士の結合点である。〔Al・Zn混合組織〕の核生成点から比較的離れた研削面では、一次アームが離散して配置されているように見えるが、核生成点に比較的近い研削面では、4つまたは6つの一次アームが近接するように見える。そこで、各研削面を観察した際に、核生成点が観察中の研削面の鋼材側にあるのか、またはめっき層の表面側にあるかを、各研削面における一次アームの形状の変化から推測した。このようにして、めっき層表面から深さ方向にt/4位置、t/2位置及び3t/4位置における研削面において、都度、〔Al・Zn混合組織〕の形態を確認することで、核生成点が、t/2位置よりも鋼材側にあるか、めっき層表面側にあるかを確認した。具体的には、図3に模式的に示すように、各位置における相対する一次アームの間隔距離aを測定し、図4の様にその平均点の変化から核生成点がt/2位置よりも鋼材側かめっき層表面側かを決定する。なお、図4に例示すように、核生成点がt/2位置よりもめっき層表面側にある場合は距離aが単純増加する傾向となり、核生成点がt/2位置よりも鋼材側にある場合は、距離aがt/2位置付近において最小になる傾向になる。距離aがt/2位置で最小となるときは、t/4と3t/4位置の距離aを比較し、t/4位置の距離aの方が小さければ、核生成点は、t/2位置よりもめっき層表面側にあると決定し、3t/4位置の距離aの方が小さければ、核生成点は、t/2位置よりも鋼材側にあると決定する。また、t/4位置の距離aが最小であるときは、核生成点は、t/2位置よりもめっき表層側にあると決定し、3t/4位置の距離aが最小であるときは、核生成点は、t/2位置よりも鋼材側にあると決定する。そして、測定領域内において観察された〔Al・Zn混合組織〕の核生成点の全個数のうち、t/2位置よりも鋼材側にある核生成点の個の割合を求めた。以上の方法を計5か所の測定領域に対して実施し、得られた値の平均を当該めっき層のt/2位置よりも鋼材側にある核生成点の個の割合とした。
また、得られためっき鋼材を、100mm×50mmに切断し、平面耐食性評価試験に供した。平面耐食性の評価はJASO-CCT-M609で規定された腐食促進試験で行い、120サイクル後、腐食減量を比較することで行った。これを性能1と称す。評価基準は下記の通りとし、◎、○、△を合格とした。
◎ :腐食減量 40g/m未満
○ :腐食減量 40g/m以上60g/m未満
△ :60g/m以上80g/m未満
× :腐食減量 80g/m以上
塗装後耐食性(塗装後の塗膜剥がれ)は、平板の試験片に対し、膜厚1.2μmの化成処理層を形成し、膜厚20μmの塗膜層を形成した後、おもて面に対して、カッターナイフで地鉄に達するカット疵を付与し、SST4hr→乾燥2hr→湿潤2hrを1サイクルとするCCTを120サイクル行い、評価した。試験終了後のカット傷の片側の最大膨れ幅にて判定した。化成処理層及び塗膜層の詳細は以下の通りであった。
<化成処理層>
シランカップリング剤、タンニン酸、シリカ、及びポリエステル樹脂を混合したクロメートフリー化成処理液をめっき層に塗布し、乾燥することで化成処理膜を形成した。
<塗膜層>
化成処理膜の上に、下記に記載のプライマー塗料樹脂及びトップコート塗料樹脂を塗布することで、塗膜層を形成した。プライマー塗料樹脂からなる層の厚みは5μmとし、トップコート塗料樹脂からなる層の厚みは15μmとし、合計で20μmとした。
<塗膜層の造膜成分>
(1)おもて面・裏面のプライマー塗料樹脂
ポリエステル/メラミン+イソシアネート併用硬化型(日本ファインコーティングス社製FLC687塗料樹脂)
(2)おもて面のトップコート塗料樹脂
高分子ポリエステル/メラミン硬化型(日本ファインコーティングス社製FLC7000塗料樹脂)
(3)裏面のトップコート塗料樹脂
ポリエステル/メラミン硬化型(日本ファインコーティングス社製FLC100HQ塗料樹脂)
塗装後耐食性の評価基準を以下に示す。以下に示す評点づけで判定した。◎、○、△を合格とした。これを性能2と称す。
◎:最大膨れ幅 5mm未満
○:最大膨れ幅 5mm以上8mm未満
△:8mm以上10mm未満
×:最大膨れ幅 10mm以上
<めっき組成の影響>
表1に示すように、発明例1~40のめっき鋼材は、めっき層の平均組成、〔Al・Zn混合組織〕の面積率、及び第2領域におけるZn相とAl相の界面長さがいずれも本発明の範囲内にあり、平面耐食性(性能1)及び塗装後耐食性(性能2)の両方に優れていた。また、表2に示すように、〔Al・Zn混合組織〕の核生成点の位置が「○」と評価された溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材は、平面耐食性及び塗装耐食性がより優れていた。
一方、比較例1のめっき鋼材は、めっき層のAl含有量が低く、第2領域における界面長さが20μmを超えた。このため、平面耐食性及び塗装後耐食性が劣位になった。
比較例2のめっき鋼材は、めっき層のAl含有量が過剰であり、第2領域における界面長さが20μmを超えた。このため、平面耐食性及び塗装後耐食性が劣位になった。
比較例3のめっき鋼材は、めっき層中にMgが含まれず、第2領域における界面長さが20μmを超えた。このため、平面耐食性及び塗装後耐食性が劣位になった。
比較例4のめっき鋼材は、めっき層中のMg含有量が過剰であり、第2領域における界面長さが20μmを超えた。このため、平面耐食性及び塗装後耐食性が劣位になった。
比較例5のめっき鋼材は、めっき層中のSiが過剰であり、第2領域における界面長さが20μmを超えた。このため、平面耐食性及び塗装後耐食性が劣位になった。
なお、発明例1、4~40及び比較例2~5のめっき層の〔Al・Zn混合組織〕には、第2領域のほかに、第1領域及び第3領域の存在が確認された。また、発明例2、3及び比較例1のめっき層の〔Al・Zn混合組織〕には、第2領域のほかに、第1領域の存在が確認された。また、発明例1~40及び比較例1~5の〔Al・Zn混合組織〕における第2領域の割合は、いずれも、めっき層を断面視した場合の面積率で、〔Al・Zn混合組織〕に対して5%以上40%以下の範囲であった。
<放冷条件の影響>
表2に示すように、発明例41~49は、めっき後の冷却条件が好ましい範囲であったため、〔Al・Zn混合組織〕の面積率、及び第2領域におけるZn相とAl相の界面長さがいずれも本発明の範囲内にあり、平面耐食性(性能1)及び塗装後耐食性(性能2)の両方に優れていた。
一方、比較例6のめっき鋼材は、放冷開始温度が50℃と低く、第2領域における界面長さが20μmを超えた。このため、平面耐食性及び塗装後耐食性が劣位になった。
比較例7のめっき鋼材は、放冷開始温度が100℃と低く、第2領域における界面長さが20μmを超えた。このため、平面耐食性及び塗装後耐食性が劣位になった。
比較例8のめっき鋼材は、放冷時間が140秒と短く、第2領域における界面長さが20μmを超えた。このため、平面耐食性及び塗装後耐食性が劣位になった。
なお、発明例41~49及び比較例6~8のめっき層の平均組成は、いずれも、質量%で11%Al-3%Mg-0.2Si-残部Zn及び不純物だった。これらのめっき層の〔Al・Zn混合組織〕には、第2領域のほかに、第1領域及び第3領域の存在が確認された。また、発明例41~49及び比較例6~8の〔Al・Zn混合組織〕における第2領域の割合は、いずれも、めっき層を断面視した場合の面積率で、〔Al・Zn混合組織〕に対して5%以上40%以下の範囲であった。
Figure 0007417103000001
Figure 0007417103000002
また、図1には、発明例1と、比較例6のめっき層のSEM写真と各領域の平均組成を示す。いずれも反射電子像である。どちらの例においても、〔Al・Zn混合組織〕中に、第1領域、第2領域、第3領域が形成されていることがわかる。第2領域のZn濃度は、発明例1、比較例6の両方とも、67質量%以上75質量%未満であり、平均濃度は、Alが28質量%であり、Znが72質量%であった。
更に、図2には、平面腐食性の評価後の、発明例1と、比較例6のめっき層のSEM写真を示す。いずれも反射電子像である。発明例1では、第2領域の腐食が抑制されているのに対し、比較例6では、第2領域が黒変している。これは第2領域が酸化されて酸素の濃度が高まり、反射電子像において黒色として現れたためである。比較例6では、第2領域の腐食が進んだ結果、平面耐食性が劣位になったことが明らかになった。

Claims (6)

  1. 鋼材と、前記鋼材の表面に形成されためっき層とを備え、
    前記めっき層は、平均組成で、Mg:1~10質量%、Al:4~22質量%を含有し、残部がZn及び不純物からなり、
    前記めっき層には、〔Al/Zn/MgZnの三元共晶組織〕の素地中に、前記めっき層の断面における面積率で10~70%の〔Al・Zn混合組織〕を含んでおり、
    前記〔Al・Zn混合組織〕には、Zn濃度が75質量%以上85質量%未満の範囲である第1領域と、前記第1領域の内側にあって、Zn濃度が67質量%以上75質量%未満の範囲である第2領域とを含み、
    前記第2領域には、Zn相とAl相とが混在しており、前記めっき層の断面における前記第2領域の面積1μm当たりの前記Zn相と前記Al相との界面長さが20μm以下であることを特徴とする溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
  2. 前記めっき層の平均組成が、Mg:1~10質量%、Al:8~22質量%を含有し、残部がZn及び不純物であり、
    前記〔Al・Zn混合組織〕には、前記第1領域と、前記第2領域と、前記第2領域の内側にあって、Zn濃度が55質量%以上67質量%未満の範囲である第3領域とを含むことを特徴とする請求項1に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
  3. 前記めっき層に更に、平均組成で、0.0001~2質量%のSiを含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
  4. 前記めっき層をめっき厚方向の1/2位置にて前記鋼材側とめっき層表面側とに2等分に分割した場合に、前記〔Al・Zn混合組織〕の核生成点のうちの個数割合で60%以上の核生成点が、前記めっき層の鋼材側の領域に存在することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
  5. 前記めっき層に更に、平均組成で、Ni、Ti、Zr、Srのいずれか1種または2種以上を合計で0.0001~2質量%の範囲で含有することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
  6. 前記めっき層に更に、平均組成で、Fe、Sb、Pb、Sn、Ca、Co、Mn、P、B、Bi、Cr、Sc、Y、REM、Hfのいずれか1種または2種以上を合計で、0.0001~2質量%の範囲で含有することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の溶融Zn-Al-Mg系めっき鋼材。
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