JP7415451B2 - 固体電解質複合粒子、粉末および複合固体電解質成形体の製造方法 - Google Patents

固体電解質複合粒子、粉末および複合固体電解質成形体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、固体電解質複合粒子、粉末および複合固体電解質成形体の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池に求められる特性として、近年では急速充放電特性が求められるようになってきており、急速充放電時に生じる充放電容量の劇的な低下が問題となっている。そのため電池の構成部材である活物質層の電気抵抗や、セパレーター層のイオン伝導抵抗等のいわゆる内部抵抗を低減する試みが行われており、特に、電池の内部抵抗のうち大きな割合を占める正極活物質層の内部抵抗低減技術が注目されている。正極活物質層の内部抵抗を低減するため、活物質合材を薄く成形して抵抗値を低下させる例や、導電助剤にカーボンナノチューブを採用する例、正極活物質を構成する酸素の一部を窒素で置換し、正極活物質自身の電子伝導性を高める例等が既に実用化されている。
しかしながら、正極活物質と固体電解質との間をリチウムイオンが出入りする際に生じる電荷移動過程において、界面形成が不十分であると界面近傍でリチウムイオンが欠乏し、電荷移動反応が進行しなくなるため、電気的な設計手段によって内部抵抗を低減しても、実用に耐えうる全固体電池を形成するには限界があった。
そこで近年では、正極活物質と固体電解質との電荷移動が生じる界面の電気的状態に作用する材料を配置することで、電荷移動抵抗を低減し、また、高率充放電時のイオン欠乏を回避する試みが注目されている。
例えば、特許文献1には、正極活物質の表面に強誘電体が配置された構造の正極材料が開示されており、これにより、局所的にリチウムイオン濃度が高い、いわゆるホットスポットを作り出し電荷移動頻度を高めることで高率充放電時の電荷移動抵抗の低減を図っている。
また、特許文献2には、特定の活物質粒子を特定の被覆層で被覆した構造の正極活物質が開示されており、これにより、上記と同様の効果を図っている。
特開2018-147726号公報 特開2019-3786号公報
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、強誘電体自身はイオン伝導性が欠落しているため、常用的に使用される低負荷充放電ではかえって内部抵抗が上昇してしまい、容量が低下してしまう問題があった。
また、特許文献2に記載の構成では、イオン伝導体がポーラスになりやすく、低負荷での充放電容量維持率改善効果はみられるものの、高負荷での充放電性能を抜本的に改善する技術たりえなかった。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することができる。
本発明の適用例に係る固体電解質複合粒子は、少なくともリチウムを含む第1の固体電解質で構成された母粒子と、
前記第1の固体電解質とは異なる酸化物、リチウム化合物およびオキソ酸化合物を含む材料で構成され、前記母粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層と、を有し、
前記酸化物の結晶相がパイロクロア型結晶であり、
前記オキソ酸化合物は、オキソアニオンとして、硝酸イオン、硫酸イオンのうちの少なくとも一方を含んでいることを特徴とする。
また、本発明の他の適用例に係る固体電解質複合粒子では、前記第1の固体電解質は、酸化物固体電解質である。
また、本発明の他の適用例に係る固体電解質複合粒子では、前記第1の固体電解質は、ガーネット型酸化物固体電解質である。
また、本発明の他の適用例に係る固体電解質複合粒子では、前記母粒子の平均粒径は、1.0μm以上30μm以下である。
また、本発明の他の適用例に係る固体電解質複合粒子では、前記被覆層の平均厚さは、0.002μm以上3.0μm以下である。
また、本発明の他の適用例に係る固体電解質複合粒子では、前記被覆層は、前記母粒子の表面の10%以上の面積を被覆している。
また、本発明の適用例に係る粉末は、本発明に係る固体電解質複合粒子を複数個含むことを特徴とする。
また、本発明の適用例に係る複合固体電解質成形体の製造方法は、本発明に係る固体電解質複合粒子を複数個含む組成物を、成形して、成形体を得る成形工程と、
前記成形体に対して熱処理を施すことにより、前記被覆層の構成材料を酸化物である第2の固体電解質へと変換し、前記第1の固体電解質および前記第2の固体電解質を含む複合固体電解質成形体を形成する熱処理工程とを有することを特徴とする。
また、本発明の他の適用例に係る複合固体電解質成形体の製造方法では、前記熱処理工程での前記成形体の加熱温度は、700℃以上1000℃以下である。
図1は、本発明の固体電解質複合粒子を模式的に示す断面図である。 図2は、第1実施形態のリチウムイオン二次電池の構成を模式的に示す概略斜視図である。 図3は、第2実施形態のリチウムイオン二次電池の構成を模式的に示す概略斜視図である。 図4は、第2実施形態のリチウムイオン二次電池の構造を模式的に示す概略断面図である。 図5は、第3実施形態のリチウムイオン二次電池の構成を模式的に示す概略斜視図である。 図6は、第3実施形態のリチウムイオン二次電池の構造を模式的に示す概略断面図である。 図7は、第4実施形態のリチウムイオン二次電池の構成を模式的に示す概略斜視図である。 図8は、第4実施形態のリチウムイオン二次電池の構造を模式的に示す概略断面図である。 図9は、第1実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法を示すフローチャートである。 図10は、第1実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法を模式的に示す概略図である。 図11は、第1実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法を模式的に示す概略図である。 図12は、固体電解質層の他の形成方法を模式的に示す概略断面図である。 図13は、第2実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法を示すフローチャートである。 図14は、第2実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法を模式的に示す概略図である。 図15は、第2実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法を模式的に示す概略図である。 図16は、第3実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法を示すフローチャートである。 図17は、第3実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法を模式的に示す概略図である。 図18は、第3実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法を模式的に示す概略図である。 図19は、第4実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法を示すフローチャートである。 図20は、第4実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法を模式的に示す概略図である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[1]固体電解質複合粒子
まず、本発明の固体電解質複合粒子について説明する。
図1は、本発明の固体電解質複合粒子を模式的に示す断面図である。なお、図1では、便宜上、母粒子P11の全表面が被覆層P12で被覆されているように図示されているが、これに限らない。
本発明の固体電解質複合粒子P1は、後に詳述する複合固体電解質成形体の形成に用いられるものである。特に、固体電解質複合粒子P1は、通常、複数個の固体電解質複合粒子P1の集合体である粉末P100として用いられるものである。すなわち、本発明の粉末P100は、複数個の固体電解質複合粒子P1を含むものである。図1に示すように、固体電解質複合粒子P1は、母粒子P11と、母粒子P11の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層P12とを有する。母粒子P11は、少なくともリチウムを含む第1の固体電解質で構成されている。被覆層P12は、前記第1の固体電解質とは異なる酸化物、リチウム化合物およびオキソ酸化合物を含む材料で構成されている。
これにより、固体電解質の粒界抵抗が低く、イオン伝導度に優れ、緻密度の高い固体電解質で構成された複合固体電解質成形体の製造に好適に用いることができる固体電解質複合粒子を提供することができる。より具体的には、オキソ酸化合物が被覆層P12に含まれることにより、被覆層P12中に含まれる前記酸化物の融点を低下させることができる。これにより、比較的低温、比較的短時間の熱処理である焼成処理で、結晶成長を促進しつつ被覆層P12の構成材料を酸化物である第2の固体電解質へと変換するとともに、母粒子P11を構成する第1の固体電解質との密着性、各固体電解質複合粒子P1の被覆層P12に対応する第2の固体電解質同士の密着性等を優れたものとすることができる。その結果、形成される複合固体電解質成形体は、緻密度が高く、固体電解質の粒界抵抗が低く、イオン伝導度に優れたものとなる。また、反応時に被覆層P12に含まれる酸化物にリチウムイオンを取り込ませる反応を生じることができる作用のため、低温でリチウム含有複酸化物である第2の固体電解質を形成することができる。したがって、例えば、リチウムイオンの揮散によるイオン伝導率の低下を抑制でき、高負荷での電池容量に優れる全固体電池の製造に好適に適用することができる。
これに対し、上記のような条件を満たさない場合には、満足のいく結果が得られない。
例えば、本発明の固体電解質複合粒子に代わり、被覆層を有さない前記第1の固体電解質のみで構成された粒子では、複数個の当該粒子を含む組成物を焼成した際に、当該粒子間に隙間が残りやすく、緻密度が十分に高い固体電解質を得ることができない。その結果、得られる固体電解質は、粒界抵抗が高く、イオン伝導度に劣ったものとなる。特に、組成物の焼成を後述するような比較的低い温度で行った場合に、このような問題がより顕著に発生する。
また、前記母粒子を有さない、前記被覆層の構成材料のみで構成された粒子では、複数個の当該粒子を含む組成物を焼成した際に、緻密度を十分に高めることが困難となる。
また、母粒子の表面に被覆層が設けられた構造の粒子であっても、被覆層がオキソ酸化合物を含まない場合、前記酸化物の融点を低下させる効果が得られず、複数個の当該粒子を含む組成物を焼成した際に、当該粒子間に隙間が残りやすく、緻密度が十分に高い固体電解質を得ることができない。その結果、得られる固体電解質は、粒界抵抗が高く、イオン伝導度に劣ったものとなる。特に、組成物の焼成を後述するような比較的低い温度で行った場合に、このような問題がより顕著に発生する。
また、母粒子の表面に被覆層が設けられた構造の粒子であっても、被覆層が前記酸化物を含まない場合、リチウム含有複酸化物である固体電解質を形成することができない。
また、母粒子の表面に被覆層が設けられた構造の粒子であっても、被覆層がリチウム化合物を含まない場合、リチウム含有複酸化物である固体電解質を形成することができない。
以下、母粒子P11と母粒子P11を被覆する被覆層P12とを有する固体電解質複合粒子P1について、詳細に説明する。
[1-1]母粒子
固体電解質複合粒子P1を構成する母粒子P11は、第1の固体電解質で構成されたものである。固体電解質複合粒子P1がコアシェル構造を有するものとすると、母粒子P11は、コアシェル構造におけるコアに相当するものである。
第1の固体電解質は、それ自体が固体電解質として機能するものであれば、いかなる組成のものであってもよく、例えば、酸硫化物、酸窒化物であってもよいが、酸化物であるのが好ましい。
これにより、有毒ガスの発生が押さえられ、大気安定性が向上する。
第1の固体電解質としては、いかなる結晶相を有するものであってもよく、例えば、ガーネット型酸化物固体電解質、ペロブスカイト型酸化物固体電解質、NASICON型酸化物固体電解質等が挙げられる。
第1の固体電解質が、ガーネット型酸化物固体電解質であると、焼結後の固体電解質のイオン伝導度が高くなる、また機械的強度が大きくなる、安定性が向上して電池の安全性が高くなる、という効果が得られる。
第1の固体電解質が、ペロブスカイト型酸化物固体電解質であると、より低温での焼結性が可能になる。
第1の固体電解質が、NASICON型酸化物固体電解質であると、大気安定性が向上する。
ガーネット型酸化物固体電解質としては、例えば、LiLaZrをはじめとして、そのLi, La, Zrサイトを各種金属で一部置換した材料、例えばLi6.75LaZr1.75Ta0.25,Li6.3LaZr1.3Sb0.5Ta0.2,Li6.7Al0.1LaZr等が挙げられる。
ペロブスカイト型酸化物固体電解質としては、例えば、La0.57Li0.29TiO等が挙げられる。
NASICON型酸化物固体電解質としては、例えば、Li1+xAlTi2-x(PO等が挙げられる。
母粒子P11の平均粒径は、特に限定されないが、1.0μm以上30μm以下であるのが好ましく、2.0μm以上25μm以下であるのがより好ましく、3.0μm以上20μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、固体電解質複合粒子P1を、好適な大きさに調整しやすくなり、固体電解質複合粒子P1の流動性、取り扱いのしやすさをより良好なものとすることができる。また、固体電解質複合粒子P1の大きさを好適なものとする上で、被覆層P12の厚さや、母粒子P11の平均粒径に対する被覆層P12の平均厚さの比率を、好適な範囲内の数値に調整しやすくなる。その結果、固体電解質複合粒子P1を用いて製造される複合固体電解質成形体を、粒界抵抗がより低く、イオン伝導度、緻密度がより高いものとすることができる。また、固体電解質複合粒子P1の生産性の向上、生産コストの低減の観点からも有利である。
なお、本明細書において、平均粒径とは、体積基準の平均粒径を言い、例えば、サンプルをメタノールに添加し、超音波分散器で3分間分散した分散液をコールターカウンター法粒度分布測定器(COULTER ELECTRONICS INS製TA-II型)にて、50μmのアパチャーを用いて測定することにより求めることができる。
図中、母粒子P11は、真球状をなすものであるが、母粒子P11の形状は、これに限定されない。
粉末P100は、母粒子P11の条件が互いに異なる固体電解質複合粒子P1を含んでいてもよい。例えば、粉末P100は、母粒子P11の条件が異なる固体電解質複合粒子P1として、母粒子P11の粒径が異なる固体電解質複合粒子P1、母粒子P11の組成が異なる固体電解質複合粒子P1等を含んでいてもよい。
[1-2]被覆層
母粒子P11を被覆する被覆層P12は、前記第1の固体電解質とは異なる酸化物、リチウム化合物およびオキソ酸化合物を含む材料で構成されたものである。固体電解質複合粒子P1がコアシェル構造を有するものとすると、被覆層P12は、コアシェル構造におけるシェルに相当するものである。
[1-2-1]酸化物
被覆層P12を構成する酸化物は、母粒子P11を構成する第1の固体電解質とは異なるものである。より具体的には、例えば、母粒子P11を構成する第1の固体電解質が酸化物固体電解質である場合でも、被覆層P12を構成する酸化物は、母粒子P11を構成する酸化物とは、組成や常温常圧での結晶相が異なるものである。
以下、被覆層P12を構成する酸化物を「前駆酸化物」ともいう。
なお、本明細書において、常温常圧とは、25℃、1気圧のことを言う。また、本明細書において、結晶相について「異なる」とは、結晶相の型が同一でないことの他、型が同じでも少なくとも1つの格子定数が異なるもの等をも含む広い概念である。
前駆酸化物の結晶相は、いかなるものであってもよいが、パイロクロア型結晶であるのが好ましい。
これにより、固体電解質複合粒子P1に対する熱処理を、より低温、より短時間とした場合であっても、イオン伝導性が特に優れた複合固体電解質成形体を好適に得ることができる。特に、第1の固体電解質の結晶相が立方晶ガーネット型結晶である場合に、前駆酸化物の結晶相がパイロクロア型結晶であると、母粒子P11を構成する第1の固体電解質と、被覆層P12の構成材料により形成される第2の固体電解質との密着性をより優れたものとすることができる。その結果、固体電解質複合粒子P1を用いて製造される複合固体電解質成形体を、粒界抵抗がより低く、イオン伝導度、緻密度がより高いものとすることができる。
なお、前駆酸化物の結晶相としては、上記のパイロクロア型結晶以外の結晶相、例えば、ペロブスカイト構造、岩塩型構造、ダイヤモンド構造、蛍石型構造、スピネル型構造等の立方晶、ラムスデライト型等の斜方晶、コランダム型等の三方晶等であってもよい。
前駆酸化物の組成は、特に限定されないが、前駆酸化物は、Mを、Nb、TaおよびSbよりなる群から選択される少なくとも1種の元素としたとき、La、ZrおよびMを含む複酸化物であるのが好ましい。
これにより、固体電解質複合粒子P1に対する熱処理を、より低温、より短時間とした場合であっても、イオン伝導性が特に優れた複合固体電解質成形体を好適に得ることができる。また、例えば、全固体電池において、形成される固体電解質の正極活物質や負極活物質に対する密着性をより優れたものとすることができ、より良好な密着界面をもつように合材化することができ、全固体電池の特性、信頼性をより優れたものとすることができる。
前記Mは、Nb、TaおよびSbよりなる群から選択される少なくとも1種の元素であればよいが、Nb、TaおよびSbよりなる群から選択される2種以上の元素であるのが好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
前駆酸化物が、La、ZrおよびMを含む複酸化物である場合、当該前駆酸化物中に含まれるLaとZrとMとの物質量の比率は、3:2-x:xであり、かつ、0<x<2.0の関係を満たすのが好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
前駆酸化物の結晶粒径は、特に限定されないが、10nm以上200nm以下であるのが好ましく、15nm以上180nm以下であるのがより好ましく、20nm以上160nm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、表面エネルギーの増大に伴う融点降下現象である、いわゆる、Gibbs-Thomson効果によって、前駆酸化物の溶融温度や、固体電解質複合粒子P1の焼成温度をさらに低下させることができる。また、固体電解質複合粒子P1を用いて形成される固体電解質と、異種材料との接合を向上させたり、欠陥密度を低減したりするうえでも有利である。
前駆酸化物は、実質的に単独の結晶相で構成されているものであるのが好ましい。
これにより、固体電解質複合粒子P1を用いて複合固体電解質成形体を製造する際、すなわち、高温結晶相が生成する際に経る結晶相遷移が実質的に1回になるため、結晶相転移にともなう元素の偏析や熱分解による夾雑結晶の生成が抑制され、製造される複合固体電解質成形体の各種特性がさらに向上する。
なお、固体電解質複合粒子P1について、TG-DTAで昇温レート10℃/分で測定した際に、300℃以上1,000℃以下の範囲における発熱ピークが1つのみ観測される場合には、「実質的に単独の結晶相で構成されている」と判断することができる。
被覆層P12中における前駆酸化物の含有率は、特に限定されないが、35質量%以上85質量%以下であるのが好ましく、45質量%以上85質量%以下であるのがより好ましく、55質量%以上85質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、固体電解質複合粒子P1に対する熱処理を、より低温、より短時間とした場合であっても、イオン伝導性が特に優れた複合固体電解質成形体を好適に得ることができる。
固体電解質複合粒子P1は、複数種の前駆酸化物を含有していてもよい。固体電解質複合粒子P1が複数種の前駆酸化物を含有している場合、固体電解質複合粒子P1中における前駆酸化物の含有率の値としては、これらの含有率の和を採用するものとする。
[1-2-2]リチウム化合物
被覆層P12は、リチウム化合物を含んでいる。
これにより、被覆層P12により形成される第2の固体電解質を、リチウム含有複酸化物で構成されたものとすることができ、イオン伝導度等の特性に優れたものとすることができる。
被覆層P12中に含まれるリチウム化合物としては、例えば、LiH、LiF、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiClO、LiNO、LiNO、LiN、LiN、LiNH、LiSO、LiS、LiOH、LiCO等の無機塩、ギ酸リチウム、酢酸リチウム、プロピオン酸リチウム、2-エチルヘキサン酸リチウム、ステアリン酸リチウム等のカルボン酸塩、乳酸リチウム、リンゴ酸リチウム、クエン酸リチウム等のヒドロキシ酸塩、シュウ酸リチウム、マロン酸リチウム、マレイン酸リチウム等のジカルボン酸塩、メトキシリチウム、エトキシリチウム、イソプロポキシリチウム等のアルコキシド、メチルリチウム、n-ブチルリチウム等のアルキル化リチウム、n-ブチル硫酸リチウム、n-ヘキシル硫酸リチウム、ドデシル硫酸リチウム等の硫酸エステル、2,4-ペンタンジオナトリチウム等のジケトン錯体、およびこれらの水和物、ハロゲン置換物等の誘導体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、リチウム化合物としては、LiCOおよびLiNOよりなる群から選択される1種または2種であるのが好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
被覆層P12中におけるリチウム化合物の含有率は、特に限定されないが、10質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、12質量%以上18質量%以下であるのがより好ましく、15質量%以上17質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、固体電解質複合粒子P1に対する熱処理を、より低温、より短時間とした場合であっても、イオン伝導性が特に優れた複合固体電解質成形体を好適に得ることができる。
被覆層P12中における前駆酸化物の含有率をXP[質量%]、被覆層P12中におけるリチウム化合物の含有率をXL[質量%]としたとき、0.13≦XL/XP≦0.58の関係を満足するのが好ましく、0.15≦XL/XP≦0.4の関係を満足するのがより好ましく、0.18≦XL/XP≦0.3の関係を満足するのがさらに好ましい。
これにより、固体電解質複合粒子P1に対する熱処理を、より低温、より短時間とした場合であっても、イオン伝導性が特に優れた複合固体電解質成形体を好適に得ることができる。
被覆層P12は、複数種のリチウム化合物を含有していてもよい。被覆層P12が複数種のリチウム化合物を含有している場合、被覆層P12中におけるリチウム化合物の含有率の値としては、これらの含有率の和を採用するものとする。
[1-2-3]オキソ酸化合物
被覆層P12は、リチウム以外の金属元素を含まないオキソ酸化合物を含んでいる。
このようにオキソ酸化合物を含むことにより、前駆酸化物の融点を好適に降下させ、リチウム含有複酸化物の結晶成長を促進することができ、比較的低温でかつ比較的短時間での熱処理により、固体電解質の粒界抵抗が低く、イオン伝導度に優れ、緻密度の高い固体電解質で構成された複合固体電解質成形体を好適に形成することができる。
オキソ酸化合物は、オキソアニオンを含む化合物である。
オキソ酸化合物を構成するオキソアニオンとしては、例えば、ハロゲンオキソ酸;ホウ酸イオン;炭酸イオン;オルト炭酸イオン;カルボン酸イオン;ケイ酸イオン;亜硝酸イオン;硝酸イオン;亜リン酸イオン;リン酸イオン;ヒ酸イオン;亜硫酸イオン;硫酸イオン;スルホン酸イオン;スルフィン酸イオン等が挙げられる。ハロゲンオキソ酸としては、例えば、次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、次亜臭素酸イオン、亜臭素酸イオン、臭素酸イオン、過臭素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、ヨウ素酸イオン、過ヨウ素酸イオン等が挙げられる。
特に、オキソ酸化合物は、オキソアニオンとして、硝酸イオン、硫酸イオンのうちの少なくとも一方を含んでいるのが好ましく、硝酸イオンを含んでいるのがより好ましい。
これにより、前駆酸化物の融点をより好適に降下させ、リチウム含有複酸化物の結晶成長をより効果的に促進することができる。その結果、固体電解質複合粒子P1に対する熱処理を、より低温、より短時間とした場合であっても、イオン伝導性が特に優れた複合固体電解質成形体を好適に得ることができる。
オキソ酸化合物を構成するカチオンとしては、特に限定されず、例えば、水素イオン、アンモニウムイオン、リチウムイオン、ランタンイオン、ジルコニウムイオン、ニオブイオン、タンタルイオン、アンチモンイオン等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、被覆層P12により形成される第2の固体電解質の構成金属元素のイオンであるのが好ましい。
これにより、形成される第2の固体電解質中に、好ましくない不純物が残存することをより効果的に防止することができる。
なお、オキソ酸化合物が、オキソアニオンとともにリチウムイオンを含む化合物である場合には、当該化合物は、オキソ酸化合物であるとともに、リチウム化合物であると言える。
被覆層P12中におけるオキソ酸化合物の含有率は、特に限定されないが、0.1質量%以上20質量%以下であるのが好ましく、1.5質量%以上15質量%以下であるのがより好ましく、2.0質量%以上10質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、被覆層P12により形成される第2の固体電解質中に、オキソ酸化合物が不本意に残存することをより確実に防止しつつ、固体電解質複合粒子P1に対する熱処理を、より低温、より短時間とした場合であっても、イオン伝導性が特に優れた複合固体電解質成形体を好適に得ることができる。
被覆層P12中における前駆酸化物の含有率をXP[質量%]、被覆層P12中におけるオキソ酸化合物の含有率をXO[質量%]としたとき、0.013≦XO/XP≦0.58の関係を満足するのが好ましく、0.021≦XO/XP≦0.34の関係を満足するのがより好ましく、0.02≦XO/XP≦0.19の関係を満足するのがさらに好ましい。
これにより、被覆層P12により形成される第2の固体電解質中に、オキソ酸化合物が不本意に残存することをより確実に防止しつつ、固体電解質複合粒子P1に対する熱処理を、より低温、より短時間とした場合であっても、イオン伝導性が特に優れた複合固体電解質成形体を好適に得ることができる。
被覆層P12中におけるリチウム化合物の含有率をXL[質量%]、被覆層P12中におけるオキソ酸化合物の含有率をXO[質量%]としたとき、0.05≦XO/XL≦2の関係を満足するのが好ましく、0.08≦XO/XL≦1.25の関係を満足するのがより好ましく、0.11≦XO/XL≦0.67の関係を満足するのがさらに好ましい。
これにより、被覆層P12により形成される第2の固体電解質中に、オキソ酸化合物が不本意に残存することをより確実に防止しつつ、固体電解質複合粒子P1に対する熱処理を、より低温、より短時間とした場合であっても、イオン伝導性が特に優れた複合固体電解質成形体を好適に得ることができる。
被覆層P12は、複数種のオキソ酸化合物を含有していてもよい。被覆層P12が複数種のオキソ酸化合物を含有している場合、被覆層P12中におけるオキソ酸化合物の含有率の値としては、これらの含有率の和を採用するものとする。
[1-2-4]その他の成分
被覆層P12は、前述したような、前駆酸化物、リチウム化合物およびオキソ酸化合物を含んでいるが、さらに、これら以外の成分を含んでいてもよい。以下、被覆層P12を構成する成分のうち、前駆酸化物、リチウム化合物、オキソ酸化合物以外の成分を「その他の成分」という。
被覆層P12中に含まれるその他の成分としては、例えば、第1の固体電解質、第2の固体電解質、固体電解質複合粒子P1の製造過程で用いた溶媒成分等が挙げられる。
被覆層P12中におけるその他の成分の含有率は、特に限定されないが、10質量%以下であるのが好ましく、5.0質量%以下であるのがより好ましく、0.5質量%以下であるのがさらに好ましい。
被覆層P12は、その他の成分として複数種の成分を含有していてもよい。この場合、被覆層P12中におけるその他の成分の含有率の値としては、これらの含有率の和を採用するものとする。
Mを、Nb、TaおよびSbよりなる群から選択される少なくとも1種の元素としたとき、被覆層P12は、LiとLaとZrとMとを含むものであるのが好ましい。特に、被覆層P12中に含まれるLiとLaとZrとMとの物質量の比率は、7-x:3:2-x:xであり、かつ、0<x<2.0の関係を満たすのが好ましい。
これにより、被覆層P12により形成される第2の固体電解質のイオン伝導性をさらに優れたものとすることができ、固体電解質複合粒子P1を用いて製造される複合固体電解質成形体全体としてのイオン伝導性もさらに優れたものとすることができる。
ここで、xは、0<x<2.0の条件を満足するものであるが、0.01<x<1.75の条件を満足するのが好ましく、0.1<x<1.25の条件を満足するのがより好ましく、0.2<x<1.0の条件を満足するのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
被覆層P12の平均厚さは、0.002μm以上3.0μm以下であるのが好ましく、0.03μm以上2.0μm以下であるのがより好ましく、0.05μm以上1.5μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、固体電解質複合粒子P1の大きさ、および、母粒子P11の平均粒径に対する被覆層P12の平均厚さの比率をより好適な範囲に調整しやすくなる。その結果、例えば、固体電解質複合粒子P1の流動性、取り扱いのしやすさをより良好なものとし、また、固体電解質複合粒子P1を用いて製造される複合固体電解質成形体を、粒界抵抗がより低く、イオン伝導度、緻密度がより高いものとすることができる。また、固体電解質複合粒子P1の生産性の向上、生産コストの低減の観点からも有利である。また、固体電解質複合粒子P1を適用したリチウムイオン二次電池についての高負荷での充放電性能をより優れたものとすることができる。
なお、本明細書において、被覆層P12の平均厚さとは、粉末P100全体に含まれる母粒子P11と被覆層P12との比率から、各母粒子P11がその平均粒径と同一の直径を有する真球状をなすものであり、各母粒子P11の外表面全体に均一な厚さの被覆層P12が形成されているものと仮定した場合に求められる被覆層P12の厚さのことを言う。
また、母粒子P11の平均粒径をD[μm]、被覆層P12の平均厚さをT[μm]としたとき、0.0004≦T/D≦1.0の関係を満足するのが好ましく、0.0010≦T/D≦0.30の関係を満足するのがより好ましく、0.0020≦T/D≦0.15の関係を満足するのがさらに好ましい。
これにより、固体電解質複合粒子P1の大きさ、および、被覆層P12の平均厚さをより好適な範囲に調整しやすくなる。その結果、例えば、固体電解質複合粒子P1の流動性、取り扱いのしやすさをより良好なものとし、また、固体電解質複合粒子P1を用いて製造される複合固体電解質成形体を、粒界抵抗がより低く、イオン伝導度、緻密度がより高いものとすることができる。また、固体電解質複合粒子P1の生産性の向上、生産コストの低減の観点からも有利である。また、固体電解質複合粒子P1を適用したリチウムイオン二次電池についての高負荷での充放電性能をより優れたものとすることができる。
被覆層P12は、母粒子P11の表面の少なくとも一部を覆うものであればよく、母粒子P11の外表面に対する被覆層P12の被覆率、すなわち、母粒子P11の外表面全面積に対する被覆層P12の被覆部分の面積の割合は、特に限定されないが、10%以上であるのが好ましく、30%以上であるのがより好ましく、50%以上であるのがさらに好ましい。また、被覆率の上限は、100%でも、100%未満でもよい。
これにより、固体電解質複合粒子P1を用いて製造される複合固体電解質成形体を、粒界抵抗がより低く、イオン伝導度、緻密度がより高いものとすることができる。また、固体電解質複合粒子P1を適用したリチウムイオン二次電池についての高負荷での充放電性能をより優れたものとすることができる。
固体電解質複合粒子P1の全質量に対する被覆層P12の質量の割合は、2質量%以上55質量%以下であるのが好ましく、10質量%以上45質量%以下であるのがより好ましく、25質量%以上35質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、固体電解質複合粒子P1を用いて製造される複合固体電解質成形体を、粒界抵抗がより低く、イオン伝導度、緻密度がより高いものとすることができる。また、固体電解質複合粒子P1を適用したリチウムイオン二次電池についての高負荷での充放電性能をより優れたものとすることができる。
固体電解質複合粒子P1を構成する被覆層P12は、条件の異なる部位を有していてもよい。例えば、被覆層P12は、母粒子P11の一部の表面を被覆する第1の部分と、当該母粒子P11の第1の部分で被覆されていない表面を被覆する第2の部分とを有するものであり、第1の部分と第2の部分とが異なる組成を有するものであってもよい。また、固体電解質複合粒子P1を構成する被覆層P12は、組成の異なる複数の層を備えた積層体であってもよい。また、母粒子P11を被覆する被覆層P12は、互いに厚さの異なる複数の領域を有するものであってもよい。
粉末P100は、被覆層P12の条件が互いに異なる固体電解質複合粒子P1を含んでいてもよい。例えば、粉末P100は、被覆層P12の条件が異なる固体電解質複合粒子P1として、被覆層P12の厚さが異なる固体電解質複合粒子P1、被覆層P12の組成が異なる固体電解質複合粒子P1等を含んでいてもよい。
[1-3]その他の構成
固体電解質複合粒子P1は、前述した母粒子P11および被覆層P12を有していればよく、さらに、他の構成を有していてもよい。このような構成としては、例えば、母粒子P11と被覆層P12との間に設けられた少なくとも1層の中間層、母粒子P11の外表面のうち被覆層P12で被覆されていない部位に設けられかつ被覆層P12とは異なる材料で構成された他の被覆層等が挙げられる。
ただし、固体電解質複合粒子P1中における、母粒子P11および被覆層P12以外の構成の占める割合は、3.0質量%以下であるのが好ましく、1.0質量%以下であるのがより好ましく、0.3質量%以下であるのがさらに好ましい。
また、粉末P100は、前述した固体電解質複合粒子P1を複数個含むものであればよいが、固体電解質複合粒子P1に加えて、さらに、他の構成を含むものであってもよい。
このような構成としては、例えば、母粒子P11と同様の材料で構成され被覆層P12で被覆されていない粒子、被覆層P12と同様の材料で構成され母粒子P11に付着していない粒子等が挙げられる。さらには、前記他の構成としては、母粒子P11と同様の材料で構成され被覆層P12以外の材料で被覆された粒子、前述した母粒子P11以外の材料で構成された粒子を母粒子として、その表面が被覆層P12と同様の材料で被覆された粒子、母粒子P11とは異なる材料で構成された固体電解質の粒子等も挙げられる。
ただし、粉末P100中における、固体電解質複合粒子P1以外の構成の占める割合は、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましく、5質量%以下であるのがさらに好ましい。
粉末P100中における、固体電解質複合粒子P1の占める割合は、80質量%以上100質量%以下であるのが好ましく、90質量%以上100質量%以下であるのがより好ましく、95質量%以上100質量%以下であるのがさらに好ましい。
母粒子P11と被覆層P12との境界は、図1に示すように明確であってもよいが、境界部が必ずしも明確でなくてもよく、例えば、母粒子P11と被覆層P12とのうちの一方の構成成分の一部が、他方に移行していてもよい。
また、粉末P100は、当該粉末P100を構成する固体電解質複合粒子P1のうち、半数以上の固体電解質複合粒子P1が、前述した条件を満足するのが好ましい。また、前述した固体電解質複合粒子P1についての好ましい条件のうち数値の条件は、各固体電解質複合粒子P1についての平均値が満足しているのが好ましい。
[2]固体電解質複合粒子の製造方法
次に、固体電解質複合粒子の製造方法について説明する。
固体電解質複合粒子は、例えば、混合液調製工程と、乾燥工程と、酸化物形成工程とを有する方法を用いて、好適に製造することができる。
混合液調製工程は、リチウム化合物とリチウム以外の金属元素を含む金属化合物とが溶解しているとともに、第1の固体電解質の粒子が分散している混合液を調製する工程である。
乾燥工程は、前記混合液から液体成分を除去して、固体状の混合物を得る工程である。
酸化物形成工程は、前記固体状の混合物に熱処理を施して、前記金属化合物を反応させて酸化物を形成することにより、第1の固体電解質の粒子を母粒子P11として、その表面に、第1の固体電解質とは異なる酸化物、リチウム化合物およびオキソ酸化合物を含む材料で構成された被覆層P12を形成する工程である。
これにより、固体電解質の粒界抵抗が低く、イオン伝導度に優れ、緻密度の高い固体電解質で構成された複合固体電解質成形体の製造に好適に用いることができる固体電解質複合粒子を効率よく製造することができる。
以下、各工程について説明する。
[2-1]混合液調製工程
混合液調製工程では、リチウム化合物とリチウム以外の金属元素を含む金属化合物とが溶解しているとともに、第1の固体電解質の粒子が分散している混合液を調製する。
より具体的には、例えば、第2の固体電解質が下記式(1)で表されるガーネット型の固体電解質である場合、混合液調製工程では、Mを、Nb、TaおよびSbよりなる群から選択される少なくとも1種の元素としたとき、金属元素Mを含む金属化合物、リチウム化合物、ランタン化合物およびジルコニウム化合物が溶解しているとともに、第1の固体電解質の粒子が分散している混合液を調製する例が挙げられる。
Li7-xLa(Zr2-x)O12・・・(1)
(ただし、式(1)中、Mは、Ta、Sb、Nbの中から選ばれる1種以上の金属元素であり、0.1≦x≦1.0を満たす。)
以下の説明では、第2の固体電解質が上記式(1)で表されるガーネット型の固体電解質であり、上記混合液を調製する場合について、中心的に説明する。
当該混合液を構成する各成分の混合の順番は、特に限定されないが、例えば、リチウム化合物が溶解したリチウム原材料溶液と、ランタン化合物が溶解したランタン原材料溶液と、ジルコニウム化合物が溶解したジルコニウム原材料溶液と、金属元素Mを含む金属化合物が溶解した金属原材料溶液と、第1の固体電解質の粒子とを混合して得ることができる。
また、このような場合、例えば、リチウム原材料溶液、ランタン原材料溶液、ジルコニウム原材料溶液および金属原材料溶液は、第1の固体電解質の粒子との混合に先立ち、予め、混合されていてもよい。言い換えると、例えば、第1の固体電解質の粒子は、リチウム原材料溶液と、ランタン原材料溶液と、ジルコニウム原材料溶液と、金属原材料溶液との混合溶液に、混合されるものであってもよい。
上記のような場合、第1の固体電解質の粒子は、分散媒に分散された分散液の状態で、前記の溶液との混合に供されるものであってもよい。
上記のように、混合液調製工程において、複数種の液体を用いる場合、これらの溶液、分散液について、構成成分としての溶媒、分散媒は、共通の組成を有していてもよいし、異なる組成を有していてもよい。
混合液調製工程では、混合液中におけるリチウムの含有率が、上記式(1)の化学量論組成に対して、1.05倍以上1.2倍以下となるようにリチウム化合物を用いるのが好ましい。
また、混合液調製工程では、混合液中におけるランタンの含有率が、上記式(1)の化学量論組成に対して、等倍となるようにランタン化合物を用いるのが好ましい。
また、混合液調製工程では、混合液中におけるジルコニウムの含有率が、上記式(1)の化学量論組成に対して、等倍となるようにジルコニウム化合物を用いるのが好ましい。
また、混合液調製工程では、混合液中におけるMの含有率が、上記式(1)の化学量論組成に対して、等倍となるように金属元素Mを含む金属化合物を用いるのが好ましい。
リチウム化合物としては、例えば、リチウム金属塩、リチウムアルコキシド等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。リチウム金属塩としては、例えば、塩化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、酢酸リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、(2,4-ペンタンジオナト)リチウム等が挙げられる。また、リチウムアルコキシドとしては、例えば、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムプロポキシド、リチウムイソプロポキシド、リチウムブトキシド、リチウムイソブトキシド、リチウムセカンダリーブトキシド、リチウムターシャリーブトキシド、ジピバロイルメタナトリチウム等が挙げられる。中でも、リチウム化合物としては、硝酸リチウム、硫酸リチウムおよび(2,4-ペンタンジオナト)リチウムよりなる群から選択される1種または2種以上であるのが好ましい。リチウム源としては、水和物を用いてもよい。
また、ランタン源としての金属化合物であるランタン化合物としては、例えば、ランタン金属塩、ランタンアルコキシド、水酸化ランタン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。ランタン金属塩としては、例えば、塩化ランタン、硝酸ランタン、硫酸ランタン、酢酸ランタン、トリス(2,4-ペンタンジオナト)ランタン等が挙げられる。ランタンアルコキシドとしては、例えば、ランタントリメトキシド、ランタントリエトキシド、ランタントリプロポキシド、ランタントリイソプロポキシド、ランタントリブトキシド、ランタントリイソブトキシド、ランタントリセカンダリーブトキシド、ランタントリターシャリーブトキシド、ジピバロイルメタナトランタン等が挙げられる。中でも、ランタン化合物としては、硝酸ランタン、トリス(2,4-ペンタンジオナト)ランタンおよび水酸化ランタンよりなる群から選択される少なくとも1種であるのが好ましい。ランタン源としては、水和物を用いてもよい。
また、ジルコニウム源としての金属化合物であるジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウム金属塩、ジルコニウムアルコキシド等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。ジルコニウム金属塩としては、例えば、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウム、オキシ酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等が挙げられる。また、ジルコニウムアルコキシドとしては、例えば、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ジルコニウムテトライソブトキシド、ジルコニウムテトラセカンダリーブトキシド、ジルコニウムテトラターシャリーブトキシド、ジピバロイルメタナトジルコニウム等が挙げられる。中でも、ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムテトラブトキシドが好ましい。ジルコニウム源としては、水和物を用いてもよい。
また、金属元素Mのタンタル源としての金属化合物であるタンタル化合物としては、例えば、タンタル金属塩、タンタルアルコキシド等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。タンタル金属塩としては、例えば、塩化タンタル、臭化タンタル等が挙げられる。また、タンタルアルコキシドとしては、例えば、タンタルペンタメトキシド、タンタルペンタエトキシド、タンタルペンタイソプロポキシド、タンタルペンタノルマルプロポキシド、タンタルペンタイソブトキシド、タンタルペンタノルマルブトキシド、タンタルペンタセカンダリーブトキシド、タンタルペンタターシャリーブトキシド等が挙げられる。中でも、タンタル化合物としては、タンタルペンタエトキシドが好ましい。タンタル源としては、水和物を用いてもよい。
また、金属元素Mのアンチモン源としての金属化合物であるアンチモン化合物としては、例えば、アンチモン金属塩、アンチモンアルコキシド等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。アンチモン金属塩としては、例えば、臭化アンチモン、塩化アンチモン、フッ化アンチモン等が挙げられる。また、アンチモンアルコキシドとしては、例えば、アンチモントリメトキシド、アンチモントリエトキシド、アンチモントリイソプロポキシド、アンチモントリノルマルプロポキシド、アンチモントリイソブトキシド、アンチモントリノルマルブトキシド等が挙げられる。中でも、アンチモン化合物としては、アンチモントリイソブトキシドが好ましい。アンチモン源としては、水和物を用いてもよい。
また、金属元素Mのニオブ源としての金属化合物であるニオブ化合物としては、例えば、ニオブ金属塩、ニオブアルコキシド、ニオブアセチルアセトン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。ニオブ金属塩としては、例えば、塩化ニオブ、オキシ塩化ニオブ、蓚酸ニオブ等が挙げられる。また、ニオブアルコキシドとしては、例えば、ニオブペンタエトキシド等のニオブエトキシド、ニオブプロポキシド、ニオブイソプロポキシド、ニオブセカンダリーブトキシド等が挙げられる。中でも、ニオブ化合物としては、ニオブペンタエトキシドが好ましい。ニオブ源としては、水和物を用いてもよい。
混合液の調製に用いる第1の固体電解質の粒子としては、例えば、前述した母粒子P11と同様の条件を満足する粒子を好適に用いることができる。
なお、第1の固体電解質の粒子としては、例えば、固体電解質複合粒子P1の製造過程における粉砕や凝集等を考慮して、母粒子P11の条件とは異なる条件、特に、粒径の条件が母粒子P11とは異なるものを用いてもよい。
前記溶媒、前記分散媒としては、特に限定されず、例えば、各種の有機溶媒を用いることができるが、より具体的には、例えば、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、有機酸類、芳香族類、アミド類等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上の組み合わせである混合溶媒を用いることができる。アルコール類としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、アリルアルコール、2-n-ブトキシエタノール等が挙げられる。グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。ケトン類としては、例えば、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、アセト酢酸メチル等が挙げられる。エーテル類としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。有機酸類としては、例えば、ギ酸、酢酸、2-エチル酪酸、プロピオン酸等が挙げられる。芳香族類としては、例えば、トルエン、o-キシレン、p-キシレン等が挙げられる。アミド類としては、例えば、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。中でも、前記溶媒、前記分散媒としては、2-n-ブトキシエタノールおよびプロピオン酸のうちの少なくとも一方であるのが好ましい。
また、本工程で調製する混合液は、オキソアニオンを含んでいるのが好ましい。
これにより、最終的に得られる固体電解質複合粒子P1中にオキソ酸化合物を好適に含有させることができ、前述した効果をより好適に発揮させることができる。また、本工程よりも後の工程で、オキソアニオンを含ませる場合に比べて、固体電解質複合粒子P1の生産性を優れたものとすることができる。また、最終的に得られる固体電解質複合粒子P1中における不本意な組成のばらつきをより効果的に防止することができる。
本工程において、混合液を、オキソアニオンを含むものとして調製する場合、前述した被覆層P12形成用の原料としての各種金属化合物として、オキソアニオンを含む金属塩を用いることが好ましいが、混合液の調製に、前記各種金属化合物とは異なる成分として、オキソアニオンを含むオキソ酸化合物をさらに用いてもよい。
オキソアニオンとしては、例えば、ハロゲンオキソ酸;ホウ酸イオン;炭酸イオン;オルト炭酸イオン;カルボン酸イオン;ケイ酸イオン;亜硝酸イオン;硝酸イオン;亜リン酸イオン;リン酸イオン;ヒ酸イオン;亜硫酸イオン;硫酸イオン;スルホン酸イオン;スルフィン酸イオン等が挙げられる。ハロゲンオキソ酸としては、例えば、次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、次亜臭素酸イオン、亜臭素酸イオン、臭素酸イオン、過臭素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン、ヨウ素酸イオン、過ヨウ素酸イオン等が挙げられる。
なお、オキソ酸化合物は、混合液調製工程よりも後のタイミングで添加してもよい。
[2-2]乾燥工程
乾燥工程では、混合液調製工程で得られた混合液から液体成分を除去して、固体状の混合物を得る工程である。なお、ここでの固体状の混合物には、その一部がゲル状となっている混合物も含むものとする。
本工程で得られる固体状の混合物は、混合液中に含まれていた液体成分、すなわち前述した溶媒や分散媒の少なくとも一部が除去されたものであればよく、前記液体成分のすべてが除去されたものでなくてもよい。
本工程は、例えば、混合液調製工程で得られた混合液に対して、遠心分離機による処理を施し、上澄液を除去することにより行うことができる。
遠心分離により上澄液から分離された沈殿物に対して、さらに、前記混合液との混合、超音波分散および遠心分離の一連の処理を所定回数行ってもよい。これにより、被覆層P12の厚さを好適に調整することができる。
また、本工程は、例えば、熱処理を施すことにより行ってもよい。
この場合、熱処理の条件は、溶媒、分散媒の沸点や蒸気圧等にもよるが、当該熱処理での加熱温度は、50℃以上250℃以下であるのが好ましく、60℃以上230℃以下であるのがより好ましく、80℃以上200℃以下であるのがさらに好ましい。
また、当該熱処理での加熱時間は、10分間以上180分間以下であるのが好ましく、20分間以上120分間以下であるのがより好ましく、30分間以上60分間以下であるのがさらに好ましい。
前記熱処理は、いかなる雰囲気で行ってもよく、空気中や酸素ガス雰囲気中等の酸化性雰囲気中で行ってもよいし、窒素ガスや、ヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガス等の非酸化性雰囲気中で行ってもよい。また、前記熱処理は、減圧または真空下、加圧下で行ってもよい。
また、前記熱処理中において、雰囲気は、実質的に同一の条件に保持してもよいし、異なる条件に変更してもよい。
また、本工程では、上記のような処理を組み合わせて行ってもよい。
[2-3]酸化物形成工程
酸化物形成工程は、乾燥工程で得られた固体状の混合物に熱処理を施して、前記金属化合物を反応させて酸化物を形成することにより、第1の固体電解質の粒子を母粒子P11として、その表面に、第1の固体電解質とは異なる酸化物、リチウム化合物およびオキソ酸化合物を含む材料で構成された被覆層P12を形成する。
本工程において形成される酸化物は、母粒子P11を構成する第1の固体電解質とは異なるものである。
本工程での熱処理は、一定の条件で行ってもよいし、異なる条件を組み合わせて行ってもよい。
本工程での熱処理の条件は、形成される前駆酸化物の組成等にもよるが、本工程での加熱温度は、400℃以上600℃以下であるのが好ましく、430℃以上570℃以下であるのがより好ましく、450℃以上550℃以下であるのがさらに好ましい。
また、本工程での加熱時間は、5分間以上180分間以下であるのが好ましく、10分間以上120分間以下であるのがより好ましく、15分間以上60分間以下であるのがさらに好ましい。
本工程での熱処理は、いかなる雰囲気で行ってもよく、空気中や酸素ガス雰囲気中等の酸化性雰囲気中で行ってもよいし、窒素ガスや、ヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガス等の非酸化性雰囲気中で行ってもよい。また、本工程は、減圧または真空下、加圧下で行ってもよい。特に、本工程は、酸化性雰囲気中で行うのが好ましい。
[3]複合固体電解質成形体の製造方法
次に、本発明の複合固体電解質成形体の製造方法について説明する。
本発明の複合固体電解質成形体の製造方法は、前述した本発明の固体電解質複合粒子P1を複数個含む組成物を、成形して、成形体を得る成形工程と、前記成形体に対して熱処理を施すことにより、前記被覆層の構成材料を酸化物である第2の固体電解質へと変換し、前記第1の固体電解質および前記第2の固体電解質を含む複合固体電解質成形体を形成する熱処理工程とを有する。
これにより、固体電解質の粒界抵抗が低く、イオン伝導度に優れ、緻密度の高い固体電解質で構成された複合固体電解質成形体の製造方法を提供することができる。
[3-1]成形工程
成形工程では、前述した本発明の固体電解質複合粒子P1を複数個含む組成物を、成形して、成形体を得る。
本工程では、前記組成物として、前述した粉末P100そのものを用いることができる。また、粉末P100を用いる場合、例えば、含まれる固体電解質複合粒子P1の条件、より具体的には、固体電解質複合粒子P1の平均粒径や、固体電解質複合粒子P1を構成する母粒子P11の大きさや組成、被覆層P12の厚さや組成等の条件が異なる2種以上の粉末P100を混合して用いてもよい。さらに、前記組成物として、粉末P100に加えて、他の成分を含むものを用いてもよい。
このような他の成分としては、例えば、固体電解質複合粒子P1を分散させる分散媒、正極活物質、負極活物質、固体電解質複合粒子P1以外の固体電解質粒子、固体電解質複合粒子P1の被覆層P12の構成材料で例示した材料で構成された粒子、バインダー等が挙げられる。
特に、複合固体電解質成形体として後に詳述するような正極合材を製造する場合には、前記組成物は、前記他の成分として正極活物質を含んでいるのが好ましい。また、複合固体電解質成形体として後に詳述するような負極合材を製造する場合には、前記組成物は、前記他の成分として負極活物質を含んでいるのが好ましい。
また、分散媒を用いることにより、例えば、前記組成物をペースト状等とすることができ、前記組成物の流動性、取り扱いのしやすさが向上する。
ただし、前記組成物中における前記他の成分の含有率は、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましく、5質量%以下であるのがさらに好ましい。
また、前記組成物を用いて成形体を得た後、当該成形体の形状の安定性や、本発明の方法を用いて製造される複合固体電解質成形体の性能向上等の目的で、当該成形体に他の成分を付与してもよい。
成形体を得るための成形方法としては、各種成形方法を採用することができ、例えば、圧縮成形、押出成形、射出成形、各種印刷法、各種塗装法等が挙げられる。
本工程で得る成形体の形状は、特に限定されないが、通常、目的とする複合固体電解質成形体の形状に対応するものである。なお、本工程で得る成形体は、例えば、後の工程で除去される部位や熱処理工程での収縮分等を考慮して、目的とする複合固体電解質成形体とは異なる形状、大きさのものとしてもよい。
[3-2]熱処理工程
熱処理工程では、成形工程で得られた前記成形体に対して熱処理を施す。これにより、被覆層P12を酸化物である第2の固体電解質へと変換し、第1の固体電解質および第2の固体電解質を含む複合固体電解質成形体を得る。
このようにして得られる複合固体電解質成形体は、第1の固体電解質と第2の固体電解質との密着性に優れているだけでなく、複数個の固体電解質複合粒子P1に対応する各領域での密着性にも優れており、これらの間に不本意な空隙が生じることが効果的に防止されている。したがって、得られる複合固体電解質成形体は、固体電解質の粒界抵抗が低く、イオン伝導度に優れ、緻密度の高い固体電解質で構成されたものとなる。
熱処理工程での前記成形体の加熱温度は、特に限定されないが、700℃以上1000℃以下であるのが好ましく、730℃以上980℃以下であるのがより好ましく、750℃以上950℃以下であるのがさらに好ましい。
このような温度で加熱することにより、得られる複合固体電解質成形体の緻密度を十分に高いものとしつつ、加熱時に、固体電解質複合粒子P1、特に、Liのような比較的揮発性の高い成分が不本意に揮発することをより確実に防止することができ、所望の組成を有する複合固体電解質成形体をより確実に得ることができる。また、比較的低温での加熱処理を行うことにより、省エネルギー、複合固体電解質成形体の生産性の向上等の観点からも有利である。
本工程中において、加熱温度は変更してもよい。例えば、本工程は、比較的低温に保持して熱処理を行う第1の段階と、第1の段階後に昇温して比較的高温での熱処理を行う第2の段階とを有するものであってもよい。このような場合、本工程における最高温度が前述した範囲に含まれているのが好ましい。
本工程における加熱時間は、特に限定されないが、5分間以上300分間以下であるのが好ましく、10分間以上120分間以下であるのがより好ましく、15分間以上60分間以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
本工程は、いかなる雰囲気で行ってもよく、空気中や酸素ガス雰囲気中等の酸化性雰囲気中で行ってもよいし、窒素ガスや、ヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガス等の非酸化性雰囲気中で行ってもよい。また、本工程は、減圧または真空下、加圧下で行ってもよい。特に、本工程は、酸化性雰囲気中で行うのが好ましい。
また、本工程中において、雰囲気は、実質的に同一の条件に保持してもよいし、異なる条件に変更してもよい。
本発明の複合固体電解質成形体の製造方法を用いて得られる複合固体電解質成形体は、通常、原料として用いる本発明の固体電解質複合粒子中に含まれていたオキソ酸化合物を実質的に含まないものである。より具体的には、本発明の複合固体電解質成形体の製造方法を用いて得られる複合固体電解質成形体中におけるオキソ酸化合物の含有率は、通常、100ppm以下であり、特に、50ppm以下であるのが好ましく、10ppm以下であるのがより好ましい。
これにより、複合固体電解質成形体中における好ましくない不純物の含有率を抑制することができ、複合固体電解質成形体の特性、信頼性をより優れたものとすることができる。
本工程で形成される第2の固体電解質は、被覆層P12の構成材料とは異なるものであればよいが、第1の固体電解質および第2の固体電解質が、実質的に同一であるのが好ましい。
これにより、複合固体電解質成形体中における第1の固体電解質と第2の固体電解質との密着性を向上させ、複合固体電解質成形体の機械的強度、形状の安定性、複合固体電解質成形体の特性の安定性、信頼性等をより優れたものとすることができる。
なお、ここで、実質的に同一とは、組成が同一であると見なすことができることを言う。
[4]リチウムイオン二次電池
次に、本発明を適用したリチウムイオン二次電池について説明する。
本発明に係るリチウムイオン二次電池は、前述したような本発明の固体電解質複合粒子を用いて製造されたものであり、例えば、前述した本発明の複合固体電解質成形体の製造方法を適用して製造することができる。
このようなリチウムイオン二次電池は、固体電解質の粒界抵抗が低く、イオン伝導度に優れたものであり、優れた充放電特性を有する。
[4-1]第1実施形態のリチウムイオン二次電池
以下、第1実施形態に係るリチウムイオン二次電池について説明する。
図2は、第1実施形態のリチウムイオン二次電池の構成を模式的に示す概略斜視図である。
図2に示すように、リチウムイオン二次電池100は、正極10と、正極10に対して順に積層された固体電解質層20と、負極30とを有している。また、正極10の固体電解質層20に対向する面とは反対の面側に正極10に接する集電体41を有し、負極30の固体電解質層20に対向する面とは反対の面側に負極30に接する集電体42を有している。正極10、固体電解質層20、負極30は、いずれも固相で構成されていることから、リチウムイオン二次電池100は、充放電可能な全固体電池である。
リチウムイオン二次電池100の形状は、特に限定されず、例えば、多角形の盤状等であってもよいが、図示の構成では、円盤状である。リチウムイオン二次電池100の大きさは、特に限定されないが、例えば、リチウムイオン二次電池100の直径は、例えば、10mm以上20mm以下であり、リチウムイオン二次電池100の厚さは、例えば、0.1mm以上1.0mm以下である。
リチウムイオン二次電池100が、このように、小型、薄型であると、充放電可能であって全固体であることと相まって、スマートフォン等の携帯情報端末の電源として好適に用いることができる。なお、後述するように、リチウムイオン二次電池100は、携帯情報端末の電源以外の用途のものであってもよい。
以下、リチウムイオン二次電池100の各構成について説明する。
[4-1-1]固体電解質層
固体電解質層20は、前述した本発明の固体電解質複合粒子を用いて形成されたものである。
これにより、当該固体電解質層20についてのイオン伝導率は優れたものとなる。また、正極10や負極30に対する固体電解質層20の密着性を優れたものとすることができる。以上のようなことから、リチウムイオン二次電池100全体としての特性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
固体電解質層20の厚さは、特に限定されないが、充放電レートの観点から、1.1μm以上1000μm以下であるのが好ましく、2.5μm以上100μm以下であるのがより好ましい。
また、負極30側に析出するリチウムの樹枝状結晶体による正極10と負極30との短絡を防ぐ観点から、固体電解質層20の測定重量を、固体電解質層20の見かけ体積に固体電解質材料の理論密度を乗じた値で除した値、すなわち焼結密度を50%以上とすることが好ましく、90%以上とすることがより好ましい。
固体電解質層20の形成方法としては、例えば、グリーンシート法、プレス焼成法、鋳込み焼成法等が挙げられる。固体電解質層20の形成方法の具体例については後に詳述する。なお、固体電解質層20と正極10および負極30との密着性の向上や、比表面積の増大によるリチウムイオン二次電池100の出力や電池容量の向上等を目的として、例えば、正極10や負極30と接触する固体電解質層20の表面に、ディンプル、トレンチ、ピラー等の三次元的なパターン構造を形成してもよい。
[4-1-2]正極
正極10は、電気化学的なリチウムイオンの吸蔵・放出を繰り返すことが可能な正極活物質で構成されたものであればいかなるものであってもよい。
具体的には、正極10を構成する正極活物質としては、例えば、少なくともLiを含み、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群より選択されるいずれか1種以上の元素により構成されるリチウムの複酸化物等を用いることができる。このような複酸化物としては、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiMn、LiCr0.5Mn0.5、LiFePO、LiFeP、LiMnPO、LiFeBO、Li(PO、LiCuO、LiFeSiO、LiMnSiO等が挙げられる。また、正極10を構成する正極活物質としては、例えば、LiFeF等のフッ化物、LiBHやLiBN10等のホウ素化物錯体化合物、ポリビニルピリジン-ヨウ素錯体等のヨウ素錯体化合物、硫黄等の非金属化合物等を用いることもできる。
正極10は、導電性やイオン拡散距離を鑑みると、固体電解質層20の一方の表面に薄膜として形成されているのが好ましい。
当該薄膜による正極10の厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上500μm以下であるのが好ましく、0.3μm以上100μm以下であるのがより好ましい。
正極10の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、PLD法、ALD法、エアロゾルデポジション法等の気相堆積法、ゾルゲル法やMOD法といった溶液を用いた化学堆積法等が挙げられる。また、例えば、正極活物質の微粒子を適当なバインダーとともにスラリー化して、スキージーやスクリーン印刷を行って塗膜を形成し、塗膜を乾燥および焼成して固体電解質層20の表面に焼き付けてもよい。
[4-1-3]負極
負極30は、正極10として選択された材料よりも低い電位において電気化学的なリチウムイオンの吸蔵・放出を繰り返すいわゆる負極活物質で構成されたものであればいかなるものであってもよい。
具体的には、負極30を構成する負極活物質としては、例えば、Nb、V、TiO、In、ZnO、SnO、NiO、ITO、AZO、GZO、ATO、FTO、LiTi12、LiTi等のリチウムの複酸化物等が挙げられる。また、例えば、Li、Al、Si、Si-Mn、Si-Co、Si―Ni、Sn、Zn、Sb、Bi、In、Au等の金属および合金、炭素材料、LiC24、LiC等のような炭素材料の層間にリチウムイオンが挿入された物質等が挙げられる。
負極30は、導電性やイオン拡散距離を鑑みると、固体電解質層20の一方の表面に薄膜として形成されているのが好ましい。
当該薄膜による負極30の厚さは、特に限定されないが、0.1μm以上500μm以下であるのが好ましく、0.3μm以上100μm以下であるのがより好ましい。
負極30の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、PLD法、ALD法、エアロゾルデポジション法等の気相堆積法、ゾルゲル法やMOD法といった溶液を用いた化学堆積法等が挙げられる。また、例えば、負極活物質の微粒子を適当なバインダーとともにスラリー化して、スキージーやスクリーン印刷を行って塗膜を形成し、塗膜を乾燥および焼成して固体電解質層20の表面に焼き付けてもよい。
[4-1-4]集電体
集電体41,42は、正極10または負極30に対する電子の授受を担うよう設けられた導電体である。集電体としては、通常、十分に電気抵抗が小さく、また充放電によって電気伝導特性やその機械構造が実質的に変化しない材料で構成されたものが用いられる。具体的には、正極10の集電体41の構成材料としては、例えば、Al、Ti、Pt、Au等が用いられる。また、負極30の集電体42の構成材料としては、例えば、Cu等が好適に用いられる。
集電体41,42は、通常、それぞれ、正極10、負極30との接触抵抗が小さくなるように設けられている。集電体41,42の形状としては、例えば、板状、メッシュ状等が挙げられる。
集電体41,42の厚さは、特に限定されないが、7μm以上85μm以下であるのが好ましく、10μm以上60μm以下であるのがより好ましい。
図示の構成では、リチウムイオン二次電池100は、一対の集電体41,42を有しているが、例えば、複数のリチウムイオン二次電池100を積層し、電気的に直列に接続して用いる場合、リチウムイオン二次電池100は、集電体41,42のうち集電体41だけを備える構成とすることもできる。
リチウムイオン二次電池100は、いかなる用途のものであってもよい。リチウムイオン二次電池100が電源として適用される電子機器としては、例えば、パーソナルコンピューター、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、音楽プレイヤー、タブレット端末、時計、スマートウォッチ、インクジェットプリンター等の各種プリンター、テレビ、プロジェクター、ヘッドアップディスプレイ、ワイヤレスヘッドホン、ワイヤレスイヤホン、スマートグラス、ヘッドマウントディスプレイ等のウェアラブル端末、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ドライブレコーダー、ページャー、電子手帳、電子辞書、電子翻訳機、電卓、電子ゲーム機器、玩具、ワードプロセッサー、ワークステーション、ロボット、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS(Point of Sales)端末、医療機器、魚群探知機、各種測定機器、移動体端末基地局用機器、車両、鉄道車輌、航空機、ヘリコプター、船舶等の各種計器類、フライトシミュレーター、ネットワークサーバー等が挙げられる。また、リチウムイオン二次電池100は、例えば、自動車や船舶等の移動体に適用してもよい。より具体的には、例えば、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車等の蓄電池として、好適に適用することができる。また、例えば、家庭用電源、工業用電源、太陽光発電の蓄電池等にも適用することができる。
[4-2]第2実施形態のリチウムイオン二次電池
次に、第2実施形態に係るリチウムイオン二次電池について説明する。
図3は、第2実施形態のリチウムイオン二次電池の構成を模式的に示す概略斜視図、図4は、第2実施形態のリチウムイオン二次電池の構造を模式的に示す概略断面図である。
以下、これらの図を参照して第2実施形態に係るリチウムイオン二次電池について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池100は、正極として機能する正極合材210と、正極合材210に対して順に積層された、電解質層220と、負極30とを有している。また、正極合材210の電解質層220に対向する面とは反対の面側に正極合材210に接する集電体41を有し、負極30の電解質層220に対向する面とは反対の面側に負極30に接する集電体42を有している。
以下、前述した実施形態に係るリチウムイオン二次電池100が有する構成と異なる正極合材210および電解質層220について説明する。
[4-2-1]正極合材
図4に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池100における正極合材210は、粒子状の正極活物質211と、固体電解質212とを含んでいる。このような正極合材210では、粒子状の正極活物質211と固体電解質212とが接する界面面積を大きくして、リチウムイオン二次電池100における電池反応速度をより高めることが可能となっている。
正極活物質211の平均粒径は、特に限定されないが、0.1μm以上150μm以下であるのが好ましく、0.3μm以上60μm以下であるのがより好ましい。
これにより、正極活物質211の理論容量に近い実容量密度と高い充放電レートとを両立しやすくなる。
正極活物質211の粒度分布は、特に限定されず、例えば、1つのピークを有する粒度分布において、当該ピークの半値幅が0.15μm以上19μm以下とすることができる。また、正極活物質211の粒度分布におけるピークは、2つ以上あってもよい。
なお、図4では、粒子状の正極活物質211の形状を球状として示したが、正極活物質211の形状は、球状に限定されず、例えば、柱状、板状、鱗片状、中空状、不定形等の様々な形態をとることができ、また、これらのうちの2種以上が混合されていてもよい。
正極活物質211としては、前記第1実施形態で正極10の構成材料として挙げたものと同様のものを挙げることができる。
また、正極活物質211は、例えば、固体電解質212との界面抵抗の低減や電子伝導性の向上等を目的として、表面に被覆層が形成されていてもよい。例えば、LiCoOからなる正極活物質211の粒子の表面に、LiNbO、Al、ZrO、Ta等の薄膜を形成することで、リチウムイオン伝導の界面抵抗をさらに低減することができる。前記被覆層の厚さは、特に限定されないが、3nm以上1μm以下であるのが好ましい。
本実施形態において、正極合材210は、前述した正極活物質211に加えて、固体電解質212を含んでいる。固体電解質212は、正極活物質211の粒子間を埋めるように、または、正極活物質211の表面に接触、特に密着するように存在する。
固体電解質212は、本発明の固体電解質複合粒子を用いて形成されたものである。
これにより、当該固体電解質212についてのイオン伝導率は特に優れたものとなる。また、正極活物質211や電解質層220に対する固体電解質212の密着性は優れたものとなる。以上のようなことから、リチウムイオン二次電池100全体としての特性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
正極合材210中における正極活物質211の含有率をXA[質量%]、正極合材210中における固体電解質212の含有率をXS[質量%]としたとき、0.1≦XS/XA≦8.3の関係を満足するのが好ましく、0.3≦XS/XA≦2.8の関係を満足するのがより好ましく、0.6≦XS/XA≦1.4の関係を満足するのがさらに好ましい。
また、正極合材210は、正極活物質211、固体電解質212のほかに、導電助剤、結着剤等を含んでいてもよい。
導電助剤としては、正極反応電位において電気化学的な相互作用が無視できる導電体であれば、いかなるものを用いてもよく、より具体的には、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素材料、パラジウム、プラチナ等の貴金属、SnO、ZnO、RuOやReO、Ir等の導電性酸化物等を用いることができる。
正極合材210の厚さは、特に限定されないが、1.1μm以上500μm以下であるのが好ましく、2.3μm以上100μm以下であるのがより好ましい。
[4-2-2]電解質層
電解質層220は、正極合材210との界面インピーダンスの観点から、固体電解質212と同一または同種の材料で構成されることが好ましいが、固体電解質212とは異なる材料で構成されたものであってもよい。例えば、電解質層220は、前述した本発明の固体電解質複合粒子を用いて形成されたものであるものの固体電解質212とは異なる組成を有する材料で構成されたものであってもよい。また、電解質層220は、本発明の固体電解質複合粒子を用いて形成されたものではない他の酸化物固体電解質、硫化物固体電解質、窒化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質、水素化物固体電解質、ドライポリマー電解質、擬固体電解質の結晶質または非晶質であってもよく、これらから選択される2種以上を組み合わせた材料で構成されていてもよい。
結晶質の酸化物としては、例えば、Li0.35La0.55TiO、Li0.2La0.27NbO、および、これらの結晶を構成する元素の一部をN、F、Al、Sr、Sc、Nb、Ta、Sb、ランタノイド元素等で置換したペロブスカイト型結晶またはペロブスカイト類似型結晶、LiLaZr12、LiLaNb12、LiBaLaTaO12、および、これらの結晶を構成する元素の一部をN、F、Al、Sr、Sc、Nb、Ta、Sb、ランタノイド元素等で置換したガーネット型結晶またはガーネット類似型結晶、Li1.3Ti1.7Al0.3(PO、Li1.4Al0.4Ti1.6(PO、Li1.4Al0.4Ti1.4Ge0.2(PO、および、これらの結晶を構成する元素の一部をN、F、Al、Sr、Sc、Nb、Ta、Sb、ランタノイド元素等で置換したNASICON型結晶、Li14ZnGe16等のLISICON型結晶、Li3.40.6Si0.4、Li3.60.4Ge0.6、Li2+x1-x等のその他の結晶質等を挙げることができる。
結晶質の硫化物としては、例えば、Li10GeP12、Li9.612、Li9.54Si1.741.4411.7Cl0.3、LiPS等を挙げることができる。
また、その他の非晶質としては、例えば、LiO-TiO、La-LiO-TiO、LiNbO、LiSO、LiSiO、LiPO-LiSiO、LiGeO-LiVO、LiSiO-LiVO、LiGeO-ZnGeO、LiSiO-LiMoO、LiSiO-LiZrO、SiO-P-LiO、SiO-P-LiCl、LiO-LiCl-B、LiAlCl、LiAlF、LiF-Al、LiBr-Al、Li2.88PO3.730.14、LiN-LiCl、LiNBr、LiS-SiS、LiS-SiS-P等を挙げることができる。
電解質層220が結晶質で構成されている場合、当該結晶質は、リチウムイオン伝導の方向の結晶面異方性が小さい立方晶等の結晶構造を有するものであるのが好ましい。また、電解質層220が非晶質で構成されている場合、リチウムイオン伝導の異方性が小さくなる。このため、上記のような結晶質、非晶質は、いずれも、電解質層220を構成する固体電解質として好ましい。
電解質層220の厚さは、1.1μm以上100μm以下であるのが好ましく、2.5μm以上10μm以下であるのがより好ましい。電解質層220の厚さが前記範囲内の値であると、電解質層220の内部抵抗をさらに低くするとともに、正極合材210と負極30との間での短絡の発生をより効果的に防止することができる。
電解質層220と負極30との密着性の向上や、比表面積の増大によるリチウムイオン二次電池100の出力や電池容量の向上等を目的として、例えば、電解質層220の負極30と接する表面には、例えば、ディンプル、トレンチ、ピラー等の三次元的なパターン構造を形成してもよい。
[4-3]第3実施形態のリチウムイオン二次電池
次に、第3実施形態に係るリチウムイオン二次電池について説明する。
図5は、第3実施形態のリチウムイオン二次電池の構成を模式的に示す概略斜視図、図6は、第3実施形態のリチウムイオン二次電池の構造を模式的に示す概略断面図である。
以下、これらの図を参照して第3実施形態に係るリチウムイオン二次電池について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池100は、正極10と、正極10に対して順に積層された、電解質層220と、負極として機能する負極合材330とを有している。また、正極10の電解質層220に対向する面とは反対の面側に正極10に接する集電体41を有し、負極合材330の電解質層220に対向する面とは反対の面側に負極合材330に接する集電体42を有している。
以下、前述した実施形態に係るリチウムイオン二次電池100が有する構成と異なる負極合材330について説明する。
[4-3-1]負極合材
図6に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池100における負極合材330は、粒子状の負極活物質331と、固体電解質212とを含んでいる。このような負極合材330では、粒子状の負極活物質331と固体電解質212とが接する界面面積を大きくして、リチウムイオン二次電池100における電池反応速度をより高めることが可能となっている。
負極活物質331の平均粒径は、特に限定されないが、0.1μm以上150μm以下であるのが好ましく、0.3μm以上60μm以下であるのがより好ましい。
これにより、負極活物質331の理論容量に近い実容量密度と高い充放電レートを両立しやすくなる。
負極活物質331の粒度分布は、特に限定されず、例えば、1つのピークを有する粒度分布において、当該ピークの半値幅が0.1μm以上18μm以下とすることができる。また、負極活物質331の粒度分布におけるピークは、2つ以上あってもよい。
なお、図6では、粒子状の負極活物質331の形状を球状として示したが、負極活物質331の形状は、球状に限定されず、例えば、柱状、板状、鱗片状、中空状、不定形等の様々な形態をとることができ、また、これらのうちの2種以上が混合されていてもよい。
負極活物質331としては、前記第1実施形態で負極30の構成材料として挙げたものと同様のものを挙げることができる。
本実施形態において、負極合材330は、前述した負極活物質331に加えて、固体電解質212を含んでいる。固体電解質212は、負極活物質331の粒子間を埋めるように、または、負極活物質331の表面に接触、特に密着するように存在する。
固体電解質212は、前述した本発明の固体電解質複合粒子を用いて形成されたものである。
これにより、当該固体電解質212についてのイオン伝導率は特に優れたものとなる。また、負極活物質331や電解質層220に対する固体電解質212の密着性を優れたものとすることができる。以上のようなことから、リチウムイオン二次電池100全体としての特性、信頼性を特に優れたものとすることができる。
負極合材330中における負極活物質331の含有率をXB[質量%]、負極合材330中における固体電解質212の含有率をXS[質量%]としたとき、0.14≦XS/XB≦26の関係を満足するのが好ましく、0.44≦XS/XB≦4.1の関係を満足するのがより好ましく、0.89≦XS/XB≦2.1の関係を満足するのがさらに好ましい。
また、負極合材330は、負極活物質331、固体電解質212のほかに、導電助剤、結着剤等を含んでいてもよい。
導電助剤としては、正極反応電位において電気化学的な相互作用が無視できる導電体であれば、いかなるものを用いてもよく、より具体的には、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素材料、パラジウム、プラチナ等の貴金属、SnO、ZnO、RuOやReO、Ir等の導電性酸化物等を用いることができる。
負極合材330の厚さは、特に限定されないが、1.1μm以上500μm以下であるのが好ましく、2.3μm以上100μm以下であるのがより好ましい。
[4-4]第4実施形態のリチウムイオン二次電池
次に、第4実施形態に係るリチウムイオン二次電池について説明する。
図7は、第4実施形態のリチウムイオン二次電池の構成を模式的に示す概略斜視図、図8は、第4実施形態のリチウムイオン二次電池の構造を模式的に示す概略断面図である。
以下、これらの図を参照して第4実施形態に係るリチウムイオン二次電池について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
図7に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池100は、正極合材210と、正極合材210に対して順に積層された、固体電解質層20と、負極合材330とを有している。また、正極合材210の固体電解質層20に対向する面とは反対の面側に正極合材210に接する集電体41を有し、負極合材330の固体電解質層20に対向する面とは反対の面側に負極合材330に接する集電体42を有している。
これらの各部は、前述した実施形態での対応する各部位について説明したのと同様の条件を満足しているのが好ましい。
なお、前記第1~第4実施形態において、リチウムイオン二次電池100を構成する各層の層間または層の表面には、他の層が設けられていてもよい。このような層としては、例えば、接着層、絶縁層、保護層等が挙げられる。
[5]リチウムイオン二次電池の製造方法
次に、前述したリチウムイオン二次電池についての製造方法について説明する。
本発明に係るリチウムイオン二次電池の製造方法では、前述したような本発明の固体電解質複合粒子を用い、前述した本発明の複合固体電解質成形体の製造方法を適用することができる。
[5-1]第1実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法
以下、第1実施形態に係るリチウムイオン二次電池の製造方法について説明する。
図9は、第1実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法を示すフローチャート、図10および図11は、第1実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法を模式的に示す概略図、図12は、固体電解質層の他の形成方法を模式的に示す概略断面図である。
図9に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池100の製造方法は、ステップS1と、ステップS2と、ステップS3と、ステップS4とを備えている。
ステップS1は、固体電解質層20の形成工程である。ステップS2は、正極10の形成工程である。ステップS3は、負極30の形成工程である。ステップS4は、集電体41,42の形成工程である。
[5-1-1]ステップS1
ステップS1の固体電解質層20の形成工程では、本発明の固体電解質複合粒子を用いて、例えば、グリーンシート法により固体電解質層20を形成する。より具体的には、以下のようにして固体電解質層20を形成することができる。
すなわち、まず、例えば、ポリプロピレンカーボネート等の結着剤を、1,4-ジオキサン等の溶媒に溶解した溶液を用意し、当該溶液と、本発明の固体電解質複合粒子とを混合することでスラリー20mを得る。スラリー20mの調製には、必要に応じて、さらに、分散剤や希釈剤、保湿剤等を用いてもよい。
次に、スラリー20mを用いて固体電解質層形成用シート20sを形成する。より具体的には、図10に示すように、例えば、全自動フィルムアプリケーター500を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の基材506上に、スラリー20mを所定の厚さで塗布して固体電解質層形成用シート20sとする。全自動フィルムアプリケーター500は、塗布ローラー501とドクターローラー502とを有している。ドクターローラー502に対して上方から接するようにスキージー503が設けられている。塗布ローラー501の下方において対向する位置に搬送ローラー504が設けられており、塗布ローラー501と搬送ローラー504との間に基材506が載置されたステージ505を挿入することによりステージ505が一定の方向に搬送される。ステージ505の搬送方向に隙間を置いて配置された塗布ローラー501とドクターローラー502との間においてスキージー503が設けられた側にスラリー20mが投入される。上記隙間からスラリー20mを下方に押し出すように、塗布ローラー501とドクターローラー502とを回転させて、塗布ローラー501の表面に所定の厚さのスラリー20mを塗工する。そして、それとともに、搬送ローラー504を回転させ、スラリー20mが塗工された塗布ローラー501に基材506が接するようにステージ505を搬送する。これにより、塗布ローラー501に塗工されたスラリー20mは、基材506にシート状に転写され、固体電解質層形成用シート20sとなる。
その後、基材506に形成された固体電解質層形成用シート20sから溶媒を除去し、当該固体電解質層形成用シート20sを基材506から剥離し、図11に示すように、抜き型を用いて所定の大きさに打ち抜き、成形物20fを形成する。本処理は、前述した本発明の複合固体電解質成形体の製造方法での成形工程に対応する。
その後、成形物20fを加熱する加熱工程を行うことにより、本焼成体としての固体電解質層20を得る。本処理は、前述した本発明の複合固体電解質成形体の製造方法での熱処理工程に対応する。したがって、本処理は、前述した[3-2]熱処理工程で説明したのと同様の条件で行うのが好ましい。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
なお、焼成後の固体電解質層20の焼結密度が90%以上となるように、塗布ローラー501とドクターローラー502とによってスラリー20mを加圧し押し出して所定の厚さの固体電解質層形成用シート20sとしてもよい。
[5-1-2]ステップS2
ステップS1の後、ステップS2へ進む。
ステップS2の正極10の形成工程では、固体電解質層20の一方の面に正極10を形成する。より具体的には、例えば、まず、スパッタ装置を使用し、アルゴンガス等の不活性ガス中で、LiCoOをターゲットとしてスパッタリングを行うことにより、固体電解質層20の表面にLiCoO層を形成する。その後、酸化雰囲気中で、固体電解質層20上に形成されたLiCoO層を焼成することにより、LiCoO層の結晶を高温相結晶に転化させ、LiCoO層を正極10とすることができる。LiCoO層の焼成条件は、特に限定されないが、加熱温度を400℃以上600℃以下とし、加熱時間を1時間以上3時間以下とすることができる。
[5-1-3]ステップS3
ステップS2の後、ステップS3へ進む。
ステップS3の負極30の形成工程では、固体電解質層20の他方の面、すなわち、正極10が形成された面とは反対側の面に負極30を形成する。より具体的には、例えば、真空蒸着装置等を使用して、固体電解質層20の正極10が形成された面とは反対側の面に、金属Liの薄膜を形成して負極30とすることができる。負極30の厚さは、例えば、0.1μm以上500μm以下とすることができる。
[5-1-4]ステップS4
ステップS3の後、ステップS4へ進む。
ステップS4の集電体41,42の形成工程では、正極10に接するように集電体41を形成し、負極30に接するように集電体42を形成する。より具体的には、例えば、型抜き等により円形としたアルミニウム箔を正極10に押圧して接合し集電体41とすることができる。また、例えば、型抜き等により円形とした銅箔を負極30に押圧して接合し集電体42とすることができる。集電体41,42の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm以上60μm以下とすることができる。なお、本工程では、集電体41,42のうち一方のみを形成してもよい。
なお、固体電解質層20の形成方法は、ステップS1に示したグリーンシート法に限定されない。固体電解質層20の他の形成方法としては、例えば、以下のような方法を採用することができる。すなわち、図12に示すように、粉末状の本発明の固体電解質複合粒子を、ペレットダイス80に充填し、蓋81を用いて閉塞し、蓋81を押圧することにより、一軸プレス成型を行うことにより、成形物20fを得てもよい。その後の成形物20fに対する処理は、前記と同様にして行うことができる。ペレットダイス80としては、図示しない排気ポートを備えたものを好適に用いることができる。
[5-2]第2実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法
次に、第2実施形態に係るリチウムイオン二次電池の製造方法について説明する。
図13は、第2実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法を示すフローチャート、図14および図15は、第2実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法を模式的に示す概略図である。
以下、これらの図を参照して第2実施形態に係るリチウムイオン二次電池の製造方法について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
図13に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池100の製造方法は、ステップS11と、ステップS12と、ステップS13と、ステップS14とを備えている。
ステップS11は、正極合材210の形成工程である。ステップS12は、電解質層220の形成工程である。ステップS13は、負極30の形成工程である。ステップS14は、集電体41,42の形成工程である。
[5-2-1]ステップS11
ステップS11の正極合材210の形成工程では、正極合材210を形成する。
正極合材210は、例えば、以下のようにして形成することができる。
すなわち、まず、例えば、LiCoO等の正極活物質211と、本発明の固体電解質複合粒子と、ポリプロピレンカーボネート等の結着剤と、1,4-ジオキサン等の溶媒との混合物としてのスラリー210mを得る。スラリー210mの調製には、必要に応じて、さらに、分散剤や希釈剤、保湿剤等を用いてもよい。
次に、スラリー210mを用いて正極合材形成用シート210sを形成する。より具体的には、図14に示すように、例えば、全自動フィルムアプリケーター500を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の基材506上に、スラリー210mを所定の厚さで塗布して正極合材形成用シート210sとする。
その後、基材506に形成された正極合材形成用シート210sから溶媒を除去し、当該正極合材形成用シート210sを基材506から剥離し、図15に示すように、抜き型を用いて所定の大きさに打ち抜き、成形物210fを形成する。本処理は、前述した本発明の複合固体電解質成形体の製造方法での成形工程に対応する。
その後、成形物210fを加熱する加熱工程を行うことにより、固体電解質を含有する正極合材210を得る。本処理は、前述した本発明の複合固体電解質成形体の製造方法での熱処理工程に対応する。したがって、本処理は、前述した[3-2]熱処理工程で説明したのと同様の条件で行うのが好ましい。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
[5-2-2]ステップS12
ステップS11の後、ステップS12へ進む。
ステップS12の電解質層220の形成工程では、正極合材210の一方の面210bに電解質層220を形成する。より具体的には、例えば、スパッタ装置を使用し、アルゴンガス等の不活性ガス中で、LLZSTO(Li6.3La3Zr1.3Sb0.5Ta0.27)をターゲットとしてスパッタリングを行うことにより、正極合材210の表面にLLZSTO層を形成する。その後、酸化雰囲気中で、正極合材210上に形成されたLLZSTO層を焼成することにより、LLZSTO層の結晶を高温相結晶に転化させ、LLZSTO層を電解質層220とすることができる。LLZSTO層の焼成条件は、特に限定されないが、加熱温度を500℃以上900℃以下とし、加熱時間を1時間以上3時間以下とすることができる。
[5-2-3]ステップS13
ステップS12の後、ステップS13へ進む。
ステップS13の負極30の形成工程では、電解質層220の正極合材210と対向する面とは反対の面側に負極30を形成する。より具体的には、例えば、真空蒸着装置等を使用して、電解質層220の正極合材210と対向する面とは反対の面側に、金属Liの薄膜を形成して負極30とすることができる。
[5-2-4]ステップS14
ステップS13の後、ステップS14へ進む。
ステップS14の集電体41,42の形成工程では、正極合材210の他方の面、すなわち、電解質層220が形成された面210bとは反対側の面210aに接するように集電体41を形成し、負極30に接するように集電体42を形成する。
なお、正極合材210および電解質層220の形成方法は、上記の方法に限定されない。例えば、正極合材210および電解質層220は、以下のように形成してもよい。すなわち、まず、本発明の固体電解質複合粒子と、結着剤と、溶媒との混合物としてのスラリーを得る。そして、得られた当該スラリーを全自動フィルムアプリケーター500に投入し、基材506上に塗工して、電解質形成用シートを形成する。その後、当該電解質形成用シートと、上記で説明したのと同様にして形成した正極合材形成用シート210sとを重ねた状態で加圧し、これらを貼り合せる。その後、貼り合せて得られた積層シートを型抜きして成形物とし、当該成形物に対して、酸化雰囲気中で焼成を行い、正極合材210と電解質層220との積層体を得てもよい。
[5-3]第3実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法
次に、第3実施形態に係るリチウムイオン二次電池の製造方法について説明する。
図16は、第3実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法を示すフローチャート、図17および図18は、第3実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法を模式的に示す概略図である。
以下、これらの図を参照して第3実施形態に係るリチウムイオン二次電池の製造方法について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
図16に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池100の製造方法は、ステップS21と、ステップS22と、ステップS23と、ステップS24とを備えている。
ステップS21は、負極合材330の形成工程である。ステップS22は、電解質層220の形成工程である。ステップS23は、正極10の形成工程である。ステップS24は、集電体41,42の形成工程である。
[5-3-1]ステップS21
ステップS21の負極合材330の形成工程では、負極合材330を形成する。
負極合材330は、例えば、以下のようにして形成することができる。
すなわち、まず、例えば、LiTi12等の負極活物質331と、本発明の固体電解質複合粒子と、ポリプロピレンカーボネート等の結着剤と、1,4-ジオキサン等の溶媒との混合物としてのスラリー330mを得る。スラリー330mの調製には、必要に応じて、さらに、分散剤や希釈剤、保湿剤等を用いてもよい。
次に、スラリー330mを用いて負極合材形成用シート330sを形成する。より具体的には、図17に示すように、例えば、全自動フィルムアプリケーター500を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の基材506上に、スラリー330mを所定の厚さで塗布して負極合材形成用シート330sとする。
その後、基材506に形成された負極合材形成用シート330sから溶媒を除去し、当該負極合材形成用シート330sを基材506から剥離し、図18に示すように、抜き型を用いて所定の大きさに打ち抜き、成形物330fを形成する。本処理は、前述した本発明の複合固体電解質成形体の製造方法での成形工程に対応する。
その後、成形物330fを加熱する加熱工程を行うことにより、固体電解質を含有する負極合材330を得る。本処理は、前述した本発明の複合固体電解質成形体の製造方法での熱処理工程に対応する。したがって、本処理は、前述した[3-2]熱処理工程で説明したのと同様の条件で行うのが好ましい。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
[5-3-2]ステップS22
ステップS21の後、ステップS22へ進む。
ステップS22の電解質層220の形成工程では、負極合材330の一方の面330aに電解質層220を形成する。より具体的には、例えば、スパッタ装置を使用し、アルゴンガス等の不活性ガス中で、LiCOとLiBOの固溶体Li2.20.80.2をターゲットとしてスパッタリングを行うことにより、負極合材330の表面にLi2.20.80.2層を形成する。その後、酸化雰囲気中で、負極合材330上に形成されたLi2.20.80.2層を焼成することにより、Li2.20.80.2層の結晶を高温相結晶に転化させ、Li2.20.80.2層を電解質層220とすることができる。Li2.20.80.2層の焼成条件は、特に限定されないが、加熱温度を400℃以上600℃以下とし、加熱時間を1時間以上3時間以下とすることができる。
[5-3-3]ステップS23
ステップS22の後、ステップS23へ進む。
ステップS23の正極10の形成工程では、電解質層220の一方の面220a側、すなわち、電解質層220の負極合材330に対向する面とは反対の面側に、正極10を形成する。より具体的には、例えば、まず、真空蒸着装置等を使用して、電解質層220の一方の面220aに、LiCoO層を形成する。その後、LiCoO層が形成された電解質層220と負極合材330との積層体を焼成することにより、LiCoO層の結晶を高温相結晶に転化させ、LiCoO層を正極10とすることができる。LiCoO層の焼成条件は、特に限定されないが、加熱温度を400℃以上600℃以下とし、加熱時間を1時間以上3時間以下とすることができる。
[5-3-4]ステップS24
ステップS23の後、ステップS24へ進む。
ステップS24の集電体41,42の形成工程では、正極10の一方の面10a、すなわち、正極10の電解質層220が形成された面とは反対側の面10aに接するように集電体41を形成し、負極合材330の他方の面、すなわち、負極合材330の電解質層220が形成された面330aとは反対側の面330bに接するように集電体42を形成する。
なお、負極合材330および電解質層220の形成方法は、上記の方法に限定されない。例えば、負極合材330および電解質層220は、以下のように形成してもよい。すなわち、まず、本発明の固体電解質複合粒子と、結着剤と、溶媒との混合物としてのスラリーを得る。そして、得られた当該スラリーを全自動フィルムアプリケーター500に投入し、基材506上に塗工して、電解質形成用シートを形成する。その後、当該電解質形成用シートと、上記で説明したのと同様にして形成した負極合材形成用シート330sとを重ねた状態で加圧し、これらを貼り合せる。その後、貼り合せて得られた積層シートを型抜きして成形物とし、当該成形物に対して、酸化雰囲気中で焼成を行い、負極合材330と電解質層220との積層体を得てもよい。
[5-4]第4実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法
次に、第4実施形態に係るリチウムイオン二次電池の製造方法について説明する。
図19は、第4実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法を示すフローチャート、図20は、第4実施形態のリチウムイオン二次電池の製造方法を模式的に示す概略図である。
以下、これらの図を参照して第4実施形態に係るリチウムイオン二次電池の製造方法について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
図19に示すように、本実施形態のリチウムイオン二次電池100の製造方法は、ステップS31と、ステップS32と、ステップS33と、ステップS34と、ステップS35と、ステップS36とを備えている。
ステップS31は、正極合材210形成用シート形成工程である。ステップS32は、負極合材330形成用シート形成工程である。ステップS33は、固体電解質層20形成用シート形成工程である。ステップS34は、正極合材210形成用のシートと、負極合材330形成用のシートと、固体電解質層20形成用のシートとの積層体を所定の形状に成形する成形物450fの形成工程である。ステップS35は、成形物450fの焼成工程である。ステップS36は、集電体41,42の形成工程である。
以下の説明では、ステップS31の後にステップS32を行い、ステップS32の後にステップS33を行うものとして説明するが、ステップS31、ステップS32、ステップS33の順番は、これに限定されず、これらの順番を入れ替えて行ってもよいし、同時進行的に行ってもよい。
[5-4-1]ステップS31
ステップS31の正極合材210形成用シート形成工程では、正極合材210形成用のシートである正極合材形成用シート210sを形成する。
正極合材形成用シート210sは、例えば、前記第2実施形態で説明したのと同様の方法により形成することができる。
なお、本工程で得られる正極合材形成用シート210sは、当該正極合材形成用シート210sの形成に用いられたスラリー210mから溶媒を除去したものであるのが好ましい。
[5-4-2]ステップS32
ステップS31の後、ステップS32へ進む。
ステップS32の負極合材330形成用シート形成工程では、負極合材330形成用のシートである負極合材形成用シート330sを形成する。
負極合材形成用シート330sは、例えば、前記第3実施形態で説明したのと同様の方法により形成することができる。
なお、本工程で得られる負極合材形成用シート330sは、当該負極合材形成用シート330sの形成に用いられたスラリー330mから溶媒を除去したものであるのが好ましい。
[5-4-3]ステップS33
ステップS32の後、ステップS33へ進む。
ステップS33の固体電解質層20形成用シート形成工程では、固体電解質層20形成用のシートである固体電解質層形成用シート20sを形成する。
固体電解質層形成用シート20sは、例えば、前記第1実施形態で説明したのと同様の方法により形成することができる。
なお、本工程で得られる固体電解質層形成用シート20sは、当該固体電解質層形成用シート20sの形成に用いられたスラリー20mから溶媒を除去したものであるのが好ましい。
[5-4-4]ステップS34
ステップS33の後、ステップS34へ進む。
ステップS34の成形物450fの形成工程では、正極合材形成用シート210s、固体電解質層形成用シート20s、および、負極合材形成用シート330sをこの順に重ねた状態で加圧し、これらを貼り合せる。その後、図20に示すように、貼り合せて得られた積層シートを型抜きして成形物450fを得る。
[5-4-5]ステップS35
ステップS34の後、ステップS35へ進む。
ステップS35の成形物450fの焼成工程では、成形物450fを加熱する加熱工程を行うことにより、正極合材形成用シート210sで構成された部位は正極合材210となり、固体電解質層形成用シート20sで構成された部位は固体電解質層20となり、負極合材形成用シート330sで構成された部位は負極合材330となる。すなわち、成形物450fの焼成体は、正極合材210、固体電解質層20、負極合材330の積層体である。本処理は、前述した本発明の複合固体電解質成形体の製造方法での熱処理工程に対応する。したがって、本処理は、前述した[3-2]熱処理工程で説明したのと同様の条件で行うのが好ましい。これにより、前述したのと同様の効果が得られる。
[5-4-6]ステップS36
ステップS35の後、ステップS36へ進む。
ステップS36の集電体41,42の形成工程では、正極合材210の面210aに接するように集電体41を形成し、負極合材330の面330bに接するように集電体42を形成する。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例えば、本発明の固体電解質複合粒子は、前述した方法により製造されたものに限定されない。
また、本発明をリチウムイオン二次電池に適用する場合、当該リチウムイオン二次電池の構成は、前述した実施形態のものに限定されない。
例えば、本発明をリチウムイオン二次電池に適用する場合、当該リチウムイオン二次電池は、全固体電池に限定されず、例えば、正極合材と負極との間に多孔質なセパレーターを設け、セパレーターに電解液を含浸させたリチウムイオン二次電池であってもよい。
また、本発明の固体電解質複合粒子は、セパレーターの製造に適用されるものであってもよい。このような場合、優れたデンドライト耐性が得られる。
また、本発明をリチウムイオン二次電池に適用する場合、その製造方法は、前述した実施形態のものに限定されない。例えば、リチウムイオン二次電池の製造における工程の順番は、前述した実施形態と異なるものとしてもよい。
また、本発明の複合固体電解質成形体の製造方法は、前述した成形工程および熱処理工程以外の工程を有していてもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[6]固体電解質複合粒子の製造
(実施例1)
まず、ランタン源としての硝酸ランタン六水和物と、ジルコニウム源としてのテトラブトキシジルコニウムと、アンチモン源としてのトリ-n-ブトキシアンチモンと、タンタル源としてのペンタエトキシタンタルと、溶媒としての2-n-ブトキシエタノールとを所定の割合で含む第1の溶液を調製し、リチウム化合物としての硝酸リチウムと、溶媒としての2-n-ブトキシエタノールとを所定の割合で含む第2の溶液を調製した。
次に、第1の溶液と第2の溶液とを所定の割合で混合し、LiとLaとZrとTaとSbとの含有比率が、モル比で、6.3:3:1.3:0.5:0.2の混合液を得た。
次に、第1の固体電解質としての平均粒径が7μmのLiLaZr12粒子:100質量部に対し、上記の混合液:500質量部を加え、アズワン社製の温調機能付超音波洗浄器US-1を用いて、55℃にて、発振周波数38kHz、出力80Wの条件で、2時間、超音波分散を行った。第1の固体電解質であるLiLaZr12粒子としては、以下のようにして製造したものを用いた。すなわち、まず、リチウム源としてLiCOの粉末:2.59質量部、ランタン源としてLaの粉末:4.89質量部、ジルコニウム源としてZrOの粉末:2.46質量部を用意し、これらをメノウ鉢で粉砕、混合して混合物を得た。次に、この混合物1gをSpecac社製の内径13mmの排気ポート付きペレットダイスに充填し、6kNの加重でプレス成型して成形物としてのペレットを得た。得られたペレットをアルミナ製の坩堝に納め、大気雰囲気において1250℃で8時間焼結してLiLaZr12で構成された固体電解質ペレットを得た。その後、この固体電解質ペレットを、メノウ鉢を用いて粉砕し、平均粒径7μmのLiLaZr12粒子を得た。
その後、遠心分離機にて10000rpmで3分間の遠心分離を行い、上澄液を除去し、得られた沈殿物を、シャーレに入れて、Ar雰囲気中で、180℃×60分間の乾燥処理を行い、液体成分を蒸発させた。その後、Ar雰囲気中で540℃×60分間の加熱処理を施すことにより、第1の固体電解質の表面に付着した混合液の固形分を仮焼成し、酸化物を含む被膜を形成した。
その後、仮焼成により得られた粉末について、前記と同様にして、前記混合液との混合、超音波分散、遠心分離、乾燥、仮焼成の処理を所定回数繰り返し行うことにより、第1の固体電解質であるLiLaZr12で構成された母粒子と、その表面に設けられた被覆層とを有する固体電解質複合粒子の集合体である粉末が得られた。前記被覆層は、前記第1の固体電解質とは異なる酸化物であるパイロクロア型の結晶相で構成される前駆酸化物と、LiCOとLiNOとを含む材料で構成されたものであった。
(実施例2~11)
混合液の調製に用いる原料の種類・使用量を調整して混合液の組成が表1~表3に示すものとなるようにするとともに、第1の固体電解質を表1~表3に示すものとし、さらに、第1の固体電解質と混合液との混合、超音波分散、遠心分離、乾燥および仮焼成の一連の処理の繰り返し回数を調整した以外は、前記実施例1と同様にして固体電解質複合粒子を製造した。
(比較例1~4)
前記実施例1~4で用いた第1の固体電解質の粒子に被覆層を形成することなく、当該粒子をそのまま用いた。言い換えると、本比較例では、固体電解質複合粒子の代わりに、被覆層で被覆されていない固体電解質粒子を用意した。
(比較例5~8)
混合液の調製に用いる原料の種類・使用量を調整して混合液の組成が表3および表4に示すようにオキソ酸化合物を含まないものとなるようにした以外は、前記実施例1~4と同様にして固体電解質複合粒子を製造した。
(比較例9)
まず、前記実施例1と同様にして混合液を調製した。
次に、当該混合液をチタン製のビーカーに入れた状態で、Ar雰囲気中、180℃×60分の第1の熱処理を施すことにより、ゲル状の混合物を得た。
次に、上記のようにして得られたゲル状の混合物に対して、Ar雰囲気中、540℃×60分間の第2の熱処理を施すことにより、灰状の熱分解物である固体組成物を得た。
このようにして得られた固体組成物は、パイロクロア型の結晶相で構成される前駆酸化物と、リチウム化合物とを含むものであった。この灰状の熱分解物を、メノウ鉢で粉砕した後、この混合物1gをSpecac社製の内径13mmの排気ポート付きペレットダイスに充填し、6kNの加重でプレス成型して成形物としてのペレットを得た。得られたペレットをアルミナ製の坩堝に納め、大気雰囲気において900℃で8時間焼結してLi6.3LaZr1.3Sb0.5Ta0.212で構成された固体電解質ペレットを得た。また、得られた固体組成物中における前記前駆酸化物の含有率に対するオキソ酸化合物の含有率の比率、すなわち、固体組成物中における前駆酸化物の含有率をXP[質量%]、固体組成物中におけるオキソ酸化合物の含有率をXO[質量%]としたときのXO/XPの値は、0.024であった。
本比較例では、この灰状の熱分解物である固体組成物を用いた。言い換えると、本比較例では、固体電解質複合粒子の代わりに、前記実施例1の被覆層の構成材料と同様の材料で構成された粒子を用いた。
(比較例10、11)
前記混合液として、前記実施例2、3で用いたのと同様のものを用いた以外は、前記比較例9と同様にして、灰状の熱分解物である固体組成物を製造した。
前記各実施例に係る固体電解質複合粒子の試料を、FEI製FIB断面加工装置Helios600で薄片状に加工して、各種の分析手法により、元素分布や組成を調べた。日本電子製JEM-ARM200Fを用いた透過電子顕微鏡の観察と制限視野電子回折の結果から、固体電解質複合粒子の被覆層は、数100nm程度以上の比較的に大きなアモルファス領域と、30nm以下のナノ結晶からなる集合体の領域から構成されていることが確認された。また、日本電子製の検出器JED-2300Tを用いたエネルギー分散型X線分析とエネルギー損失分光分析により、前記各実施例に係る固体電解質複合粒子の被覆層のアモルファス領域からリチウム、炭素、酸素が検出され、ナノ結晶からなる集合体の領域からランタン、ジルコニウム、元素Mが検出された。
前記各実施例および比較例5~8の固体電解質複合粒子の製造に用いた混合液の組成、固体電解質複合粒子の製造条件を表1、表2、表3、表4にまとめて示し、前記各実施例および各比較例の固体電解質複合粒子の条件を表5、表6にまとめて示す。なお、比較例1~4、9~11については、これらの表に、固体電解質複合粒子の代わりに、最終的に得られた粒子の製造条件、当該粒子の条件を示した。また、表6中において、比較例9~11については、粒子の組成を被覆層の構成材料の欄に記載し、粒子の平均粒径を被覆層の厚さの欄に示した。また、表5、表6中には、被覆層中におけるオキソ酸化合物の含有率をXO[質量%]、被覆層中における前駆酸化物の含有率をXP[質量%]、被覆層中におけるリチウム化合物の含有率をXL[質量%]としたときの、XO/XPの値、XL/XPの値、XO/XLの値も示した。また、前記各実施例および比較例5~8の固体電解質複合粒子について、走査型電子顕微鏡(FEI社製XL30)を用いた測定により、反射電子像を得たところ、いずれも、リチウムを含む第1の固体電解質で構成された母粒子の表面に被覆層が形成されていることが確認された。また、前記各実施例の固体電解質複合粒子を構成する被覆層について、TG-DTAで昇温レート10℃/分で測定したところ、300℃以上1,000℃以下の範囲における発熱ピークは、いずれも、1つのみ観測された。このことから、前記各実施例の固体電解質複合粒子を構成する被覆層は、実質的に単独の結晶相で構成されていると言える。また、前記各実施例の固体電解質複合粒子では、いずれも、母粒子中における、第1の固体電解質以外の成分の含有率は、0.1質量%以下であり、被覆層中における、前記第1の固体電解質とは異なる酸化物、リチウム化合物およびオキソ酸化合物以外の成分の含有率は、1質量%以下であり、固体電解質複合粒子は、母粒子および被覆層で構成されたものであり、母粒子、被覆層以外の構成は備えていなかった。また、前記各実施例の固体電解質複合粒子の集合体である粉末では、当該粉末中における前記固体電解質複合粒子以外の構成の含有率、すなわち、母粒子および被覆層を備える構成粒子以外の構成の含有率は、いずれも、5質量%以下であった。また、前記各実施例の固体電解質複合粒子では、母粒子の外表面に対する被覆層の被覆率は、いずれも、10%以上であった。前記各実施例の固体電解質複合粒子の被覆層を構成する前駆酸化物は、いずれも、パイロクロア型の結晶を有するものであった。また、前記各実施例の固体電解質複合粒子の被覆層中に含まれる前駆酸化物の結晶粒径は、いずれも、20nm以上160nm以下であった。
Figure 0007415451000001
Figure 0007415451000002
Figure 0007415451000003
Figure 0007415451000004
Figure 0007415451000005
Figure 0007415451000006
[7]評価
前記各実施例および各比較例について、以下の評価を行った。
[7-1]焼成後の緻密性の評価
前記各実施例および各比較例で最終的に得られた粒子の集合体である粉末について、それぞれ、1gのサンプルを取り出した。
次に、これらの各サンプルを、それぞれ、Specac社製の内径13mmの排気ポート付きペレットダイスに充填し、6kNの加重でプレス成型して成形物としてのペレットを得た。得られたペレットをアルミナ製の坩堝に納め、大気雰囲気において900℃で8時間焼成して焼成体を得た。
得られた焼成体について、形状測定と重量測定から焼成体の空隙率を求めた。空隙率が少ないほど、緻密性に優れていると言える。なお、前記各実施例および各比較例に係る焼成体は、いずれも、液体成分の含有率が0.1質量%以下、オキソ酸化合物の含有率が10ppm以下であった。また、前記各実施例では、被覆層の構成材料から生成した第2の固体電解質は、いずれも、立方晶ガーネット型の結晶相を有するものであった。
[7-2]イオン伝導度の評価
上記[7-1]で得られた各実施例および各比較例に係るペレット状の焼成体について、それぞれ、両面に直径8mmのリチウム金属箔(本荘ケミカル社製)を貼り付けて活性化電極とし、交流インピーダンスアナライザーSolatron1260(Solatron Anailtical社製)を用いて交流インピーダンスを測定してリチウムイオン伝導率を求めた。当該測定は、交流振幅10mVにて、10Hzから10-1Hzの周波数領域にて行った。当該測定によって得られたリチウムイオン伝導率は、各焼成体におけるバルクのリチウムイオン伝導率と粒界のリチウムイオン伝導率とを含む総リチウムイオン伝導率を示すものである。この値が大きいほど、イオン伝導度に優れていると言える。
これらの結果を表7にまとめて示す。
Figure 0007415451000007
表7から明らかなように、本発明では優れた結果が得られた。これに対し、比較例では、満足のいく結果が得られなかった。
P100…粉末、P1…固体電解質複合粒子、P11…母粒子、P12…被覆層、100…リチウムイオン二次電池、10…正極、10a…面、20…固体電解質層、30…負極、41,42…集電体、210…正極合材、210a…面、210b…面、211…正極活物質、212…固体電解質、220…電解質層、220a…面、330…負極合材、330a…面、330b…面、331…負極活物質、500…全自動フィルムアプリケーター、501…塗布ローラー、502…ドクターローラー、503…スキージー、504…搬送ローラー、505…ステージ、506…基材、80…ペレットダイス、81…蓋、20m…スラリー、20s…固体電解質層形成用シート、20f…成形物、210m…スラリー、210s…正極合材形成用シート、210f…成形物、330m…スラリー、330s…負極合材形成用シート、330f…成形物、450f…成形物、S1~S4…ステップ、S11~S14…ステップ、S21~S24…ステップ、S31~S36…ステップ

Claims (9)

  1. 少なくともリチウムを含む第1の固体電解質で構成された母粒子と、
    前記第1の固体電解質とは異なる酸化物、リチウム化合物およびオキソ酸化合物を含む材料で構成され、前記母粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層と、を有し、
    前記酸化物の結晶相がパイロクロア型結晶であり、
    前記オキソ酸化合物は、オキソアニオンとして、硝酸イオン、硫酸イオンのうちの少なくとも一方を含んでいることを特徴とする固体電解質複合粒子。
  2. 前記第1の固体電解質は、酸化物固体電解質である請求項1に記載の固体電解質複合粒子。
  3. 前記第1の固体電解質は、ガーネット型酸化物固体電解質である請求項1または2に記載の固体電解質複合粒子。
  4. 前記母粒子の平均粒径は、1.0μm以上30μm以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載の固体電解質複合粒子。
  5. 前記被覆層の平均厚さは、0.002μm以上3.0μm以下である請求項1ないしのいずれか1項に記載の固体電解質複合粒子。
  6. 前記被覆層は、前記母粒子の表面の10%以上の面積を被覆している請求項1ないしのいずれか1項に記載の固体電解質複合粒子。
  7. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の固体電解質複合粒子を複数個含むことを特徴とする粉末。
  8. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の固体電解質複合粒子を複数個含む組成物を、成形して、成形体を得る成形工程と、
    前記成形体に対して熱処理を施すことにより、前記被覆層の構成材料を酸化物である第2の固体電解質へと変換し、前記第1の固体電解質および前記第2の固体電解質を含む複合固体電解質成形体を形成する熱処理工程とを有することを特徴とする複合固体電解質成形体の製造方法。
  9. 前記熱処理工程での前記成形体の加熱温度は、700℃以上1000℃以下である請求項に記載の複合固体電解質成形体の製造方法
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